同志社大学 理工学部

電気回路研究室

Laboratory for Electric Circuits and Systems, Doshisha Universitysince 1949

研究テーマ Research Themes

電気回路研究室では、半導体スイッチを用いた電力変換技術「パワーエレクトロニクス」を核とし、 理論解析と実機検証の両面から次世代のエネルギー社会を支える技術を追求しています。

01

省エネルギーモータ駆動 Energy-Saving Motor Drive

損失最小化制御による高効率駆動

モータを駆動する際には、電流によって発生する銅損、摩擦などによる機械損、さらにパワーエレクトロニクス回路に起因するインバータ損など、さまざまなエネルギー損失が生じます。これらの損失は運転速度やトルク条件によって変化するため、単純に一定速度で運転するだけでは効率的とは限りません。

そこで本研究では、モータの損失マップを活用し、駆動開始から停止までの“全体の駆動時間”を通して総エネルギー損失が最小となるような速度軌道を設計します。速度軌道の最適化には、理論的に最適解を導く変分法と、遺伝的アルゴリズムを主に用いています。

さらに、MATLAB/Simulinkによるシミュレーションによる解析だけでなく、実機(同期電動機・誘導電動機)を用いた検証を行うことで、理論の有効性を多角的に評価しています。

モータドライブ制御省エネルギー変分法遺伝的アルゴリズム
実機検証 実機検証用の模型車両
制御システム 制御システム
シミュレーション解析 シミュレーション解析
02

高機能モータ駆動 High-Performance Motor Drive

高度なトルク制御と安全性向上

電動車両は内燃機関(エンジン)車両と比較してトルク応答が数百倍速く,トルクの大きさも正確に把握できるといった利点があります。本研究ではこの特性を最大限に活かし、路面凍結時などにおけるトラクションコントロールの研究に取り組んでいます。

本研究の目的は、路面状態に応じてモータのトルクを適切に制御し、タイヤの過度なスリップを防ぐことで、電動車両の安全性と走行性能を向上させることです。

具体的には、スリップ率路面摩擦係数を高精度に推定し、路面状況の変化をミリ秒単位でトルク制御に反映させるアルゴリズムを開発しています。また、MATLAB/Simulinkを用いたシミュレーション解析に加え、小型の電動模擬車両を用いた実機実験を行うことで、提案手法の有効性を多角的に検証しています。

トラクションコントロールスリップ制御トルク制御
実機検証 実機検証用の模型車両
制御システム 制御システム
シミュレーション解析 シミュレーション解析
03

系統連系 Grid Connection Systems

再生可能エネルギーの安定供給

太陽光発電や蓄電池などの「直流」の電源から得られる電力を、家庭や工場で使う「交流」の電力網(系統)へ供給するためには、系統連系インバータによる高精度な電力変換が不可欠です。しかし、系統側のインピーダンスとの相互作用によりインバータの動作が不安定となり、安定した電力供給が難しくなる場合があります。

そこで本研究では、スマートグリッドの実現に向け、単なる変換効率の向上にとどまらず、電力網全体の安定性維持するための制御手法を開発しています。具体的には、LCLフィルタのパラメータ不平衡に起因する出力電流の歪みを解消する「逆相補償制御」や、系統との相互作用(干渉)がある条件下でもシステムの安定性を保証する「リアプノフ関数を用いた制御」などを提案しています。

さらに、MATLABSaberRDを用いたシミュレーション解析に加え、実際のインバータ回路と模擬系統を用いた実機実験を行うことで、提案手法の有効性を多角的に検証し、次世代の強靭な電力インフラを支えるパワーエレクトロニクス技術を追求しています。

スマートグリッド系統連系インバータ電力変換器安定性解析
実機検証 実機
制御システム 制御システム
シミュレーション解析 出力波形
LABORATORY KEYWORDS

キーワード解説

パワーエレクトロニクス
半導体スイッチを用いて電力を効率よく変換・制御する技術です。現代の電気製品やインフラの心臓部といえる分野です。
スマートグリッド
IT技術を駆使し、電力の供給と需要をリアルタイムで最適化する次世代電力網です。再エネ導入に不可欠なインフラです。
モータドライブ
電気エネルギーを機械的な動力へ変換するシステム全体を指します。産業機器から電気自動車まで幅広く利用されます。
インバータ(逆変換)
直流(DC)を交流(AC)に変換する装置です。太陽光発電の系統連系や、モータの速度・トルク制御に必須の回路です。
コンバータ(順変換)
交流(AC)を直流(DC)に変換する装置です。広義には電圧レベルを変えるDC/DC変換なども含まれます。
同期電動機・誘導電動機
本研究室で扱う主なモータです。磁石や電磁誘導を利用して回転し、高効率な駆動には高度な制御技術を要します。
PWM (パルス幅変調)
スイッチのON/OFF時間の比率を変えることで、疑似的に任意の電圧・周波数の波形を作り出す代表的な制御手法です。
トルク制御
モータが発生する回転力を精密に操る技術です。応答性の高いパワーエレクトロニクスによりミリ秒単位の制御が可能です。
トラクションコントロール
タイヤの空転を防ぎ、路面へ確実に駆動力を伝える技術です。スリップ率や路面摩擦係数を推定し、安全走行を実現します。
損失マップ
モータの回転数やトルクごとの損失を可視化したデータです。これに基づき、最も効率の良い駆動ルートを導き出します。
変分法・遺伝的アルゴリズム
複雑な条件から「最適解」を探す数学的手法です。総エネルギー損失が最小となる理想的な速度軌道の設計に用います。
MATLAB / Simulink SaberRD
高度な数値計算や回路シミュレーションを行うためのツールです。実機製作前に理論の妥当性を厳密に検証します。