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「キャリア形成支援と就職活動について」
2007年度文学部・社会学部父母懇談会(京都)講演集

ただいまご紹介いただきました社会学部産業関係学科の浦坂と申します。今日は絶好の行楽日和でして、冷泉先生の大変教養の香り高いご講演もこの後に控えておりますのに、いささか現実的すぎるといいますか、情緒のかけらもないお話になるかもしれません。短い時間ではございますが、おつきあいいただいて、ご一緒に考えていただければと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

「キャリア形成支援と就職活動について」ということで、お子様方は大学に入学され、今まさに大学生活を満喫されているのではないでしょうか。この4年間、卒業を目指して頑張る中で、あるタイミングで卒業後の進路選択をしなければならない。具体的には、入学後2年半を経過した3回生の秋頃から、今は大半の学生が就職活動を始めることになっています。3回生のお子様がいらっしゃる場合は、そろそろ今頃の時期から動き始めなければならないというタイミングになっています。もしその気配もないとか、素振りも見せないという状況でしたら、少し心積もりをお尋ねいただいた方がいいかもしれません。

進路選択に関しては、基本的には学生が自ら考えて選びとるということが一番いいわけです。皆様方の学生時代を思い返していただくと、そうだったのではないでしょうか。自分でやった、当然そういうことだったと思います。私の学生時代を思い返しましても、今から15年くらい前になりますが、大学が何かしてくれたということは一切記憶にありません。学部の事務室の片隅に、送られてきた求人票、資料などが封もあけずにドンと積まれていまして、見たかったら見てもいいよという感じだったんです。就職部もありませんでしたので、そんなものなのか、と。それはそれで普通だと思っていました。ただ時代は流れて、今はとてもそんなことでは大学もまずいことになっていまして、どこの大学にも就職部なり、キャリアセンターなりが設けられていて、求める学生に対しては、きめ細やかな支援が行われているのが実情です。

本学も例外ではなく、この立派な建物の2階にキャリアセンターが設けられています。お帰りの際に覗いていただいて、どんな感じなのかご覧になってください。広いスペースで、資料なども大変充実しています。最近はそれだけでは飽き足らず、正課に組み込んで、つまり授業として単位を与えて支援するということも行われるようになってきました。こういうことを一生懸命やっていますと、受験生に対しても、受験生の親御さんに対しても、企業に対してもアピールする。あの大学はとても就職の面倒見のいい大学だという評判が高まるということで、どこの大学も競ってやるようになってきています。

だからでしょうか、就職関連ランキング、つまり就職についてどれだけ一生懸命取り組んでいるかが、色々なメディアを通じて流布されています。その一つとして、朝日新聞社が10年以上前から『大学ランキング』という分厚い冊子を毎年発行しています。最新の2008年版が今年春に発行され、そこでも就職関連の5項目についてのランキングが出されています。比較のために関関同立で並べてみました(表1)。項目としては、「就職支援部門の職員数」「就職担当教員数」「インターンシップ参加学生数」が各大学のデータに基づいてのランキングで、「役に立つ大学」「就職支援に熱心」というランキングは、ダイヤモンド社が独自に上場企業500社あまりに対して調査を行い、それを朝日新聞社が転載しています。関関同立の中で一番成績がよかった、ランキングが高かった順位を太字にしています。これを見ていただいて、いかがでしょうか。どのような感想をお持ちになられるでしょうか。

就職担当教員というのは、文科系学部はあまり関係がないかもしれません。主に理科系学部で、大学の研究室と企業のつながりが密接になり、その研究室を通じての就職というルートも生じます。必然的に教員の果たす役割が大きくなり、就職担当教員の力は無視できない要因になるそうです。理科系学部の有無や数、大きさによっても変わってきますので、本学は4大学の中では一番成績がいいのですが、この点は注意しなければなりません。「役に立つ大学」はいいとして、「就職支援に熱心」というあたりが、割に成績が悪いといいますか、やはり立命館大学がかなり気を吐いている。総じてランキングに出てくる項目については、立命館は抜かりなくおさえているなと思い知らされるわけです。関西大学は就職支援部門の職員が多いのですが、大学の就職部、キャリアセンターは、在学生に対する支援が基本です。ところが関西大学は、他に先駆けて卒業生に対する支援も手掛けています。ご存じのように、いったん就職しても、かなり早い段階で辞めてしまう人も多く、その後はハローワークに行くしかないんですね。あるいは自分で民間の職業紹介機関を利用する場合もありますが、そういう人たちに手を差し伸べたのが関西大学なんです。そういう意味で、その取り組みは注目されていますし、ランキングにも関係しているかもしれません。

ということで、本学の就職ランキングは決して悪くはないけれど、ダントツにいいというわけでもないという現状を把握していただきました。こういうデータが公になりますと、順位も気になりますし、もう少し頑張らないといけないのかな、もっと支援する必要があるんじゃないかな、と焦りがちになります。ただその一方で、こんなことをやりだしたらキリがないんじゃないか、一体どこまで大学が進路選択の面倒を見なければいけないのかという話にもなります。大学は、自分の進路を自分の手でつかみとれないような学生を社会に送り出してしまっていいのかという根本的な疑問に直面してしまうわけです。

本学の就職支援は、ランキングの見方によっては何となく手薄なのかなと思ってしまいがちですが、裏を返せば、学生が自分の力で進路を見つけているんだから、別に支援する必要がなかったという側面も、もちろんあったと思います。ただ、今の厳しい状況を考えますと、多少なりとも面倒見の部分は必要なんだろうと思いますが、さらに一歩進んで、正課にまで組み込む、授業で単位を与えてまで支援をするというのであれば、少なくともその場限りの面倒見で終わってはならないのではないかと考えます。面倒見以上に、大学本来の役割である教育的な内容、これがきちんと担保されていないと、単に就職活動の手助けをして単位まで与えるというおかしなことになりかねません。

本学でも、キャリア形成を支援する科目は設けられていまして、「キャリア科目」と呼ばせていただきますが、そういう目で本学の「キャリア科目」を見ますと、意図した上でのことかどうか分かりませんが、なかなかよく考えられているといいますか、志が高いな、と。手前味噌ですが、そういうふうに思ったりするところがあります。もちろん、大学本来の役割を踏まえて、それを見失っていないのであれば、ごく当たり前のことなのかもしれません。ご一緒に見ていきたいと思います。

「キャリア科目」には、キャリア形成支援のための講義に加えて、インターンシップなどの企業での実習も含まれています。各学部で独自に設置し、その学部の学生だけが受けられる科目まで視野に入れるともう少し広がりますが、キャリアセンターが「キャリア科目」として把握し、どの学部の学生でも受講できるのは「キャリア開発と学生生活」「キャリア形成とインターンシップ」の2科目です。いずれも1セメスター(春学期または秋学期だけ)の2単位科目です。2002年、2003年から始まりましたので、5、6年経過しています。

「キャリア開発と学生生活」は、2回生以上が受講します。科目名からもお分かりのように、入学間もない学生を対象として、学生生活の延長線上に自分自身のキャリアを描いてみよう、そして職業を意識してみようというのが目的です。本年度の受講生は115名で、うち文学部が4名、社会学部が13名でした。はっきりいって少ないです。必修科目などと、時間割上のバッティングがあったのかもしれません。担当教員は4名で、文学部哲学科の工藤先生が当初から科目代表者をされています。他に、言文センターの中村先生、2名の嘱託講師の先生が担当されています。

授業の内容を詳しく書いたものをシラバスといいますが、昨年度の「キャリア開発と学生生活」のシラバス(注)をご覧ください。教員による論点提示の後、それに関連する実務家、現場の方にゲストスピーカーとして来ていただいて、お話していただく構成になっています。この授業の特長は、何といっても多彩なゲストスピーカーをお招きし、現場に立脚したお話を聴けることなのですが、単なる現場紹介、職業紹介で終わってしまわないように、学術的、学問的な見方を教員がフォローして進めていると聞いております。

「キャリア形成とインターンシップ」は、3回生以上を対象とし、今出川校地で提供されています。基本的には3回生です。夏休みに、企業によって違いますが、概ね2週間程度、インターンシップという実習(就業体験)に行きます。それを前提に、行く前に9コマ、行った後に4コマの授業を設定して、事前学習、事後の振り返りで構成されている授業です。今年度の受講生は181名で、うち文学部が10名、社会学部が9名と、やはり少ないです。どうしてこんなに少ないのかと思いまして、一体どこの学部が多いのかと調べてみますと、法、経済、商、政策学部が多いことが分かりました。

一つには、学部の特徴として、文学部、社会学部の学生は、相対的に就職というよりも進学、公務員、資格取得などに目が向いている可能性はあるかもしれません。もう一つは、この授業は全学の学生が受講しますので、なかなか時間割の都合がつかず、結果として夜の授業になっています。夜6時半から始まる6講時から2コマ連続ですので、終わるのが夜9時半を過ぎるんです。遠方から通っている学生は、物理的に難しいという問題があるかもしれません。本当のところ、文学部、社会学部がどうして少ないのかは、よく分からないのですが。担当教員は3名で、商学部の岡本先生が科目代表者をされていまして、文学部英文学科の秋篠先生と私が今年の担当となっています。

直接関わっているこの授業を通じて、教育的な内容がきちんと担保されているか、単なる面倒見で終わっていないのかということを検証していきたいと思います。「キャリア形成とインターンシップ」で学生に要求される講座アンケート及びインターンシップの前後に書くレポートの内容(注)を見ていただくと、受講生は、とにかく毎回、毎回、多くのことを書かされているということがお分かりいただけるかと思います。

二つの書く能力が、この授業では求められています。一つは、短時間に要点をまとめて過不足なく書く能力。講座アンケートがそうです。分量的にはA4で1枚くらいですが、夜9時半近くになる授業終了前後に毎回書く。結構具体的なことを短時間でまとめて書くために、2コマの授業中で何が重要だったかをきちんと把握しておかなければならない。これは出席点にもなりますので、いずれにせよ皆が書くのですが、出席になればそれでいいという殴り書きのようなものはほとんどない。丁寧に書かれています。もう一つは、インターンシップの事前、事後レポートです。実習先の企業の下調べとか業界を取り巻く状況、実習の目標を書くものと、帰ってきてからは、どういう実習だったか、その時の反省、感想を書くもの。家で作成して提出するレポートなので、分量も多く、中身も充実したものになっています。

これらのレポートは、その都度ファイルで私たち担当者のもとに届きます。今は個人情報保護がとても厳しくて、そうでなければいくつか学生の書いたものを皆様方に見ていただきたいと思うくらい中身が充実しています。回を追うごとによくなっていくんですね。内容はともかくとして、とにかく真面目に書き続ける、書き慣れていくことによって、自分の考えがどんどん明確になる。そしてさらにもっと深く考えられるようになっていることが如実に分かる、そういうものになっています。書くということは、実はすごく難しい。そう簡単に書けないと思うんです。私も書くのが仕事なんですが、文章を書く場合、朝からパソコンの前に座っていても、3行くらいしか書けないで苦しむ時もありますし、なかなか表現するのは難しい。

就職活動の中で、書くことを要求される場面はたくさん存在します。エントリーシートという自己紹介とか志望動機、大学時代に何に熱中したかなどを書いたものを企業に提出して、そこから就職活動がスタートするんですね。採用側の企業の担当者は、それを何百枚、何千枚とチェックしなければならない。学生というのは、そんなに特殊な経験をしている人が多いわけではありませんので、皆同じような感じになります。たとえばクラブ活動で仲違いしてトラブルになった時に、一生懸命話し合って解決しましたとか、アルバイトで接客をやっていて、そこでサービスについて色々考えましたとか。そういう同じような内容をずっとエントリーシートで読まなければならない。これは非常に苦痛です。そういう似たような中で、キラッと光るエントリーシートを書けるかどうか、採用側の目に止まるものが書けるかどうかということが、就職活動の最初のハードルになるわけです。そのハードルが越えられなければ、面接にも進めません。この授業は、エントリーシートを書く力のトレーニングにもなっていると思います。

またセミナー会場などで、その場ですぐに書きなさいといわれることも多々あります。就職活動だけに止まらず、社会に出て仕事をするようになってからも、ものごとをちゃんと表現できるかどうか、書くことができるかどうかで、仕事の出来不出来がずいぶん違ってしまうことは、おそらく社会人経験の長い皆様方は実感されているのではないでしょうか。この講座アンケートや事前、事後レポートは、そういうことのトレーニングにもなっているのではないかと思います。

今度は少し見方を変えまして、聞く、話す、協力するということから考えてみます。授業の最後に、インターンシップ報告会が開かれます。今年も10月10日(水)の夜に3時間かけて行われました。受講生は10人前後が1班になって、10班くらいに分かれます。その班の中で、お互いの経験を共有することになります。司会進行は、昨年度同じ授業を受講した4回生が、ボランティアで各班に2、3人加わって務めます。声をかけると、4回生は必ず参加して、司会進行を務めてくれるという伝統になっています。私たち担当者も、各班を回り、オブザーバーとして20分くらいずつ聴講するんですが、これが毎年感動ものでして、英文学科の秋篠先生は、今年からこの授業の担当者になり、初めて報告会に参加されたのですが、「よかったね、浦坂さん。」と連発されていました。私も例年どおり、いい報告会だったと思います。

何がいいのかといいますと、討論が成立しているということなんです。普段の授業でも、このあたりで活発な意見交換があってほしい、議論してほしい、もっと鋭いことをいってほしいという場面は多々あるんですが、なかなかうまくいかなくて、学生は押し黙ってしまう。指名されないように俯くとか、目か合いそうになると目を逸らすとか、そういうことになりがちなんですね。ところが、このインターンシップ報告会のやり取りを聞いていると、ちゃんと討論になっている。気をつかうのも、何とか指名されないようにするためではなく、場の雰囲気や流れをよく見て、どのタイミングで自分の意見をいえば一番効果的なのかとか、人の考えを聞く場合でも、ちゃんと集中して聞いていますよという素振りであったり、話しやすいようにしたり、それに対して効果的なコメントを挟んだり、そういうことを一生懸命しようとする姿勢が伺えるんですね。それは本当に簡単そうで、実はなかなかできないことなので、こんな学生さんばかりだったら苦労しないのに……とつい毎年思ってしまいます。

あと4回生から3回生へのバトン、人的つながりということで、「一日の長」という言葉がありますが、「一年の長」とでもいったらいいのでしょうか、4回生と3回生は、この1年の差がものすごく大きいものとしてありまして、全然レベルが違います。4回生は、就職活動を経験したことも大きかったと思いますが、自分たちが1年前に受講した授業に参加して、何とか3回生がいい方向に話を持っていけるよう色々工夫しながら尽力する。3回生もそれを受けて、恐らく来年、同じようにボランティアで参加してくれるだろうなと。「何か就活で聞きたいことがあったら、連絡してね、どんなことでもいいからね。」と4回生と3回生がメール交換をしているんですね。そういう光景はすごく微笑ましいですし、そのつながりは誇らしい限りです。

人的つながり(ヒューマンネットワーク)が様々な場面で重要であることはよくいわれていまして、たとえば転職をするにしても、人と人とのつながりがどういう効果を持つかという話は、研究でもよく扱われるトピックスです。日本社会では、なかなか一定の見解が出にくかったところがあるのですが、最近は労働市場の流動化で転職の機会も増えていますので、人的つながりの役割が再びクローズアップされてきているようです。そんな中で、同じ大学の先輩、後輩、つまり同窓生というだけでグッと距離が近くなる、そのことを肌で感じてくれたのではないかと思いますので、そのありがたさをしっかり認識して、これからも、そのつながりを大事にしていってほしいと思ったりもしました。

書く、話す、聞く、協力するという細かい部分だけではなく、インターンシップに向けて、自分自身の課題を設定し、実習先の企業や業界、仕事内容の下調べをして、実際に職場を体験し、その結果をレポートにまとめて自分でも確認した上で、仲間とも共有するという一連のプロセスを、この授業を通じて経験していることになります。この一連のプロセスは、たとえば研究して論文を書く場合でも、実は芯の部分は全く同じなんですね。もちろん勉強面だけでなく、社会に出て何か新しい仕事に取り組む場合でも、まずどこに問題があるかを認識し、それまでの経緯を踏まえた上で実際にやってみて、その結果を自分でも確認し、周りとも共有することは同じです。別に仕事でなくても、何か新しいことに取り組む、前向きにやっていくということでは全く同じだと思います。専門の内容、中身に関係なく涵養されるものであるからこそ、それを身につける、経験する場が「キャリア科目」であってもいいのかなと、この授業を通じて思いました。

もちろん問題がないわけではありません。先程、こんな学生さんばかりだったら苦労しないのに ……と申し上げましたが、あえてこの授業を受けなくても、どこでもちゃんとやっていけるだろうという、ごく一部の意識の高い学生が、そういう学生だからこそ受講しているという側面が、正直なところあります。4回生がボランティアで報告会に来てくれた時に、就職活動に関するアドバイスを3回生にしてくれるんですが、ありがちなのが「企業の名前や知名度にこだわらず、自分に合ったところを見つけられるように、中身をちゃんと見て判断しましょう。」というアドバイスなんですね。なるほどそうかと思うんですが、4回生の内定先を聞くと超一流、有名企業ばかりなので、そのアドバイスはあまり説得力をもたないんじゃないかというくらい、いいところに決まっています。そういう学生は、もちろんそのまま頑張ってくれたらいいんですが、こういう科目があることさえ知らない多くの学生をどうするか。実際、就職活動で苦しんだり、躓いたりするのは、そういう学生なんです。この点をどうするかということを、私たちはもう少し知恵を絞らなければなりません。

本学のキャリア形成支援や「キャリア科目」も十分とはいえませんが、お話したように面倒見だけでは終わらない、そういう支援体制をさりげなく準備しているんだということをお分かりいただけるとありがたいです。あくまでも私の個人的な思い、考えなんですが、同志社という大学は、とことん学生を信じているところがある。基本的には自分自身で、自力で切り開いていけるだろうという信頼感があるので、何もかも先回りして、全部お膳立てするようなことは絶対にしない。お子様方が、これから就職活動に向かうにあたって、悩んだり、苦しんだりしながらも、最終的には自力で乗り越えていければ一番いいと思います。それがベストですが、もしそのプロセスで立ち止まったり、足踏みしたりすることがあれば、その時は「色々な方法があるんじゃないの、ちょっと相談してみたら?」と。支援体制はさりげなく準備されていますので、お声掛けをしていただけたらと思います。

最後に情報提供ですが、「現代GP」という言葉をご存知でしょうか。GPというのはGood Practiceの略で、文部科学省による、理想的な教育実践をしている大学のプログラムを選定して助成金を支援するプロジェクトです。2007年度の「現代GP」に、本学の「アクションプラン主導型発展的キャリア教育」が採択されました。詳しくは大学のホームページをご覧いただければと思いますが、サブタイトルが「学生の主体的成長を促す体験型教養教育としての複合的キャリア形成支援プログラム」となっています。学生の主体的成長を促してこそのキャリア形成支援だと思いますので、この点が疎かになれば、学生時代は手厚く支援できたとしても、社会に出て支援がなくなった途端に行き詰まる、躓くことにもなりかねません。

あくまでも学生が主役という姿勢は貫きながらも、大学も、文学部も、社会学部も、そして教職員一人ひとりが、皆様方と力を合わせながら、今後もこのようなことに取り組んでいければと考えています。さらなるご協力をお願い申し上げまして、今日の講演を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

司会:浦坂先生、ありがとうございました。親の立場といたしまして最も関心の高いテーマの一つでございますが、大学のご指導を明晰にご説明いただきまして、かつまた貴重なご教授を頂戴いたました。誠にありがとうございました。ご質問などがございましたら承りますが。

小倉:同志社大学の1学年に何人いて、就職率が何%で、今回の科目を受講された方は120名とか、数字がほしいところがありました。もう一点は、就職ありきといいますか、大学を出てどこかの企業に勤められればいいという考えは父母として当たり前だと思いますが、起業家になるというタイプの人間を大学が養成するということは考えられていますか。大学を出たら社長になる人間をたくさんつくろう、と。そうすれば大学も、そのような人間から潤沢なお金を得られるかもしれないということについて。

浦坂:正確な数字は、今手元にありませんが、大学のホームページに就職率も含めてすべて出ていますし、お帰りの際、キャリアセンターに寄っていただいても分かると思います。ごくごく一部の学生しか「キャリア科目」を受講できていないことも事実です。企業に就職するだけでなく、若者が学生時代の活動の延長線上に起業を持ってくることはあることですが、それをキャリアセンターで明示的に支援しているという実績はないように思います。それだけの行動力がある学生であれば、むしろ自分で動いて、各種起業支援や人的ネットワークを利用しながら目的を達成するのではないでしょうか。本学主催のイベントの中には、起業家を招いての講演などもありますので、そのあたりを整理して、在学中から起業家を目指す学生に対しても支援できるような体制を整備することも、今後の課題として認識しておきたいと思います。ありがとうございました。

司会:以上をもちまして浦坂先生のご講演を終了したいと思います。今一度、先生に大きな拍手をお送りいただきたいと思います。ありがとうございました。

(注)「キャリア開発と学生生活」「キャリア形成とインターンシップ」の詳細については、浦坂純子[2006],「キャリア科目を再考する−正課としての意義とあり方−」,『大学と学生』(日本学生支援機構),第33号,pp.17-26を参考になさってください。

表1  就職関連ランキング(朝日新聞社『2008年版大学ランキング』より)

   同志社大学 立命館大学  関西大学  関西学院大学
就職支援部門の職員数 圏外 7位 31位 5位
就職担当教員数 12位 19位 圏外 圏外
インターンシップ参加学生数 21位 3位 圏外 6位
役に立つ大学 10位 11位 18位 26位
就職支援に熱心 8位 1位 13位 4位

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