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「インターンシップに見る企業の姿勢と学生の想い」
2003年度文学部就職情報(春号)

今年度より学際科目「キャリア形成とインターンシップ」が新設され、インターンシップが正課として単位認定されるようになった。シラバスには、「本学就職部が受入機関(民間企業が主)と連携を図り学生を派遣するプログラムである。在学中に実社会の企業、政府、団体等での就業実習を体験することによって、@大学で学んだ社会の諸課題と、その問題解決に向けての考え方、専門知識・理論との統合を図る。Aその経験を通して、大学内外において、より高い学習意欲を喚起する。B学生が将来の自らの仕事、キャリアについて考えるに際して、より深い就業意識の形成に資することを目的とする。」とある。

私は、偶々この科目の担当教員の一人になったのだが、何分にも始まったばかりであり、まだ様子がよく分からない。4月に行われた説明会は大盛況だったようで、5月の学生面談を通じて派遣企業を決定し、6月の企業研究やビジネスマナー等の事前講座を経て、夏休みにようやく2週間のインターンシップと相成る。100社余りの企業が受入を予定しており、学生が憧れるような有名企業も多い。概ね3回生を受講対象としているが、就職活動に対する不安感とこれを何かの突破口にできればという気持ち、さらに単位としても認められるとなれば、いやが上にも関心は高まろう。

私自身、無意識のうちにインターンシップに対して敏感になっていたところ、ゼミ生の一人が、この3月に超大手電機メーカー独自のインターンシップに参加したと聞いた。採用直結型と呼ばれ、そこでの働きぶりが選考の一部となるタイプである。4月のゼミで久し振りに再会した時に、とにかくインターンシップでの体験をひたすら話し続けるのには驚いた。短期間であっても、まさに「自己変革」を引き起こすだけの刺激に満ちた、濃密な時間であったことがうかがえる。彼は結局、その企業ではなかったが、それに勝るとも劣らない一流企業の内定を得た。なるほどな、と思った。インターンシップの存在意義を、理屈ではなく直観的に理解するのは、こういうことを目の当たりにした時である。

「インターンシップに見る企業の姿勢と学生の想い」は、「働くことを覚悟させる(する)」という点で共通する。働くとはどういうことなのか。その本質を伝えたいという切実な気持ちがあるからこそ、企業は多忙を極める日常業務の合間を縫って学生と対峙する。そのパワーは、間違いなく学生の意識を根底から揺るがす。働くという点では同じであっても、目的意識と真剣さが大違いのアルバイトでは、それは恐らく困難だろう。学内のサポート体制が整備されつつある昨今、機会があればどんな型であれ参加してみるといい。希望業種であってもなくても、大企業でも中小企業でも、親切にしてもらえても邪険にされても、満足しても落ち込んでも、それはすべて思いがけない自分と出会うチャンスである。



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