第54回中日理論言語学研究会

日 時:2022年02月20日(日)
開催方式:zoom(オンライン)


ご報告:

関係者の皆様へ: 先にご案内させていただいた第54回中日理論言語学研究会は、2月20日(日)、Zoomオンラインにて83名の方々にご参加いただき、成功裏に終わりましたことをご報告申し上げます。
本研究会では、自然言語において「時間と空間」という概念が如何に表現されているのかを巡り、シンポジウム形式で研究発表を行いました。冒頭で、座長の定延氏から趣旨説明があり、テーマの重要性と本研究のいきさつについてお話がありました。
続いて、まず、木村氏が「中国語における直示時点の空間把握」について、横軸系直示的時間詞は、既存事実(過去と現在)ならば<前>、非既存事実(未来)なら<后>で示されるのに対し、縦軸系直示的時間詞は、既存事実ならば<上>、非既存事実なら<下>で示されることを指摘しました。次に、井上氏が「継続表現の意味ー日本語・中国語・韓国語ー」について、多くの言語事実を挙げ、日本語の「シテイル」は動作の存在(動態性消去)を表し、 韓国語の"ha-ko iss-ta"は場面の属性(近視眼的表現)を表し、中国語の"在V/V着"は動作が終わらずに続いている(変化なし)を表していることを観察しました。最後に、定延氏が「モノとデキゴトに基づく日中間の認識」について、日本語母語話者の時間認識はモノとデキゴトの認知とつながっていて、大規模な時間単位はモノとして、小規模な時間単位はデキゴトの目盛として認知され、大規模な時間単位の個数に関して中国語は敏感だが、日本語はそうではないと主張しました。このような違いの背景に、集合的なイメージングに関して,日本語は積極的だが中国語は消極的という違いがあると指摘しています。
最後にディスカッションを行い、フロアからの質疑応答や発表者同士の意見交流が行われ、大いに盛り上がった研究会となりました。お忙しい中、ご発表・ご参加いただいた皆様に心より御礼を申し上げます。

次回の第55回中日理論言語学研究会は2022年7月に開催予定です。詳細は追ってご連絡させていただきます。皆様のご参加を心よりお待ちしております。

それでは、今後ともご指導・ご鞭撻の程、何卒よろしくお願い申し上げます。




<発表者及び発表題目(敬称略、順不同)>
(発表概要(PDF)を一部公開いたします)


シンポジウム:「時間と空間」

木村 英樹(東京大学名誉教授):
「中国語における直示時点の空間把握」(PDF)


井上 優(日本大学):
「継続表現の意味」(PDF)


定延 利之(京都大学):
「モノとデキゴトに基づく日中の時空間イメージ」(PDF)






※著作権は発表者にあり、引用される場合「中日理論言語学研究会第54回研究会発表論文集」を明記すること