IPEの果樹園2021
今週のReview
3/1-6
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ハイテク大企業と政府との闘い ・・・債券・株式市場の過熱 ・・・1.9兆ドルのアメリカの救助計画 ・・・労働党の時代 ・・・日本の個人投資家と日米同盟 ・・・アメリカ外交と戦争 ・・・テキサスの寒波と停電 ・・・植民地の歴史と謝罪
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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● ハイテク大企業と政府との闘い
FT February 19, 2021
Australia’s Big Tech fight does not provide a model
ニュース・コンテンツへの支配をめぐるハイテク大企業とオーストラリア政府との闘いは、2つの異なる結果をもたらした。Facebookは国内でのニュースの共有をブロックし、ユーザーはそのサービスを介してニュースサイト(および一部の政府の保健および緊急サービスサイト)にアクセスできなくなった。 Googleは、オーストラリア企業とのライセンス契約、およびRupert Murdoch's News Corpとのグローバル合意に合意することを選択した。
インターネットとハイテク大企業は伝統的なメディの収入減を吹き飛ばした。それは特に、健全な民主主義の基軸である地域に根差したジャーナリズムを死滅させる。オーストラリア政府は彼らを支援するつもりだった。
技術プラットフォームは、ニュースから収益を上げるのではなく、トラフィックを増やすことでニュースグループに利益をもたらす、と主張する。しかし、彼らは利用者を大幅に奪い取って、間接的な収益を手にすることになった。検察結果にニュースが含まれないことは魅力を失わせるので、Googleは包括契約を結ぶのだろう。
しかし、政府の介入は、本質的に、企業間の戦いの一方の側に立っている。それは、「古い」メディアの世界の大きな獣の1つであるマードック帝国が新しい大きな獣から契約を結ぶのを助けた。しかし、小さな、苦労している地元の新聞社を助けるためにほとんど何もしない。
最も重要なことは、メディア業界は、ハイテク大企業が小売から出版、タクシーからホテルに至るまで、グローバルなビジネスと商取引をどのように再形成しているかの一例に過ぎないことだ。この革新の多さによってもたらされたメリットを規制しないことが重要であり(多くはパンデミックによって強化されている)、ハイテク大企業が競争を歪めたり、支配を乱用したりしないようにするには、多面的かつ多国籍のアプローチが必要だ。
あらゆる規模のメディアグループがプラットフォーム企業と団体協約を交渉する方がよい。同様に、政府と規制当局は国境を越えて協力し、準公益事業となった最大のテクノロジー企業、つまり、さまざまなオンラインセクターの「門番たち」を取り締まる必要がある。
● 債券・株式市場の過熱
FT February 20, 2021
Should equity investors worry about rising interest rates?
Michael Mackenzie
債券市場の弱気は大きく唸り声を上げて、株式投資家に深刻な問題を提起している。10年金利の上昇を本当に心配し始めるべきか?
世界経済の成長と企業収益の見通しは改善しつつあり、ここ数ヶ月で株価と商品価格を急上昇させた投資家の期待を確認した。10年物の金利は世界的に、the US, Japan, China, Australia, Europe and the UKで上昇している。
債券市場を恐れるより、景気回復を祝うことだ。
PS Feb 23, 2021
Gaming Our Economies
TODD G. BUCHHOLZ
多くの政治家は、GameStopのようなソーシャルメディアを燃料とする取引の過熱を減速させるために株式取引に新しい税金を提案している。しかしそれは、急激な価格上昇がそれ自体を修正し、現実と一致する時間を延長することで、実際には事態を悪化させる。
ジェームズ・トービンは、ずっと前に金融取引税の考えを提示した。ジョー・バイデン大統領はそれを追求する衝動に抵抗するべきだ。
ゲームが私たちを操作し、私たちのホルモン分泌を利用する場合、株式取引にブレーキをかけることは理にかなっているか。そうではない。取引税による取引の減速や停滞は、急激な価格上昇がそれ自体を修正し、現実と再会するのにかかる時間を長くする。歴史によれば、取引税は流動性を奪い、ビッドとオファーの間に広いギャップを生み出すため、しばしば裏目に出る。
● 1.9兆ドルのアメリカの救助計画
NYT Feb. 19, 2021
Biden Is Going Big, and Americans Are With Him
By Timothy Egan
ジョー・バイデンは、1か月間大統領を務めた。彼の1.9兆ドルのアメリカの救助計画と、それに続く仕事・インフラストラクチャー・気候のイニシアチブがうまくいけば、彼の党は今後何年にもわたって統治することができるだろう。
バイデンは、F.D.ルーズベルトの墓からのささやきに耳を傾けて、歴史的低水準で衰退する社会を変える行動計画を提示する。大恐慌以来最大の社会的および経済的危機に直面し、バイデンは、子どもの貧困を大幅に削減し、医療を拡大し、労働者階級の家族を強化することを望んでいる。
ロナルド・レーガンがアメリカ人に、政府が問題である、と確信させてから約40年経って、バイデンは、ドナルド・トランプの任期中に失われた、政権能力を振るうことによって、反論した。
アメリカ人の3分の2は、パンデミック前の連邦最低賃金の引き上げを支持していた。8月までに、その数字は72%に上昇した。人々は彼らの敬愛するエッセンシャルワーカーの多くが貧困レベルの賃金で生活していることを知って、COVID-19が始まってから上昇した。
PS Feb 23, 2021
America’s Excessive Government Spending Must Stop
GEORGE P. SHULTZ, JOHN F. COGAN, JOHN B. TAYLOR
ワシントンの多くの人々は、現在、米国連邦政府は、経済に悪影響を与えることなく、無制限の支出が可能だと考えるように見える。彼らは間違っている。過剰な連邦支出は、深刻な経済的および安全保障上のリスクを生み出す。アメリカの財政の無謀さは止めなければならない。
COVID-19の危機は、アメリカを社会主義の方向に進める力となった。それは常に人々を苦しめたものだ。支出が過剰であることなど心配する必要がない、と言うが、それは近視眼的過ぎる。
アメリカの巨大な、増加していく政府の債務は、最終的には民間投資を圧倒し、それによって経済成長と雇用創出を遅らせる。連邦準備制度が政府の赤字支出を継続して金融する姿勢は、必然的にインフレの上昇につながる。金融市場は混乱しやすくなり、次の大きな景気後退を招き寄せる。
政策立案者が財政赤字についての誤った信念を放棄しない限り、国防費の削減に手を付ける。それは重大な戦略的過ちであり、米国の国家安全保障を弱体化させ、外国の敵を大胆にするだろう。特に今、中国はアジアで筋肉を曲げ、軍事に多額の投資をしている。
1789年から1930年代にかけて、連邦政府は均衡予算の基準を順守し、戦時中および景気後退時に財政赤字を出し、この債務を返済するために好調な時期に適度な黒字を出した。連邦財政のこの慎重な管理は、世界の金融市場におけるアメリカの確固たる地位を確立した。
F.D.ルーズベルト大統領のニューディール政策はこの規範を破った。それ以来、赤字支出がワシントンの生き方になった。過去10年間で、民主党または共和党のいずれでも、財政上の懸念は見られない。赤字と債務が有害だという信念から解放され、政策立案者は新たな赤字支出の流れを解き放った。
FT February 24, 2021
Joe Biden’s $1.9tn package is a risky experiment
Martin Wolf
どのくらいの財政刺激策が多すぎるのか?
2009年の景気刺激策が少なすぎたという事実は、それが今日、正しい刺激策がそれをはるかに超える規模になる、という意味にならない。
私は、西側経済が直面する危険性を理解するためには、日本から学ぶ必要があると主張した。私はまた、パンデミックは戦争にも似た緊急事態である、と最初から認識していた。
しかし、パンデミックが金融危機や戦争と何が違うのか、認識することは重要だ。金融危機とは異なり、Covid-19は必ずしも需要を無期限に抑制する可能性のある不良な民間債務の超過を作るわけではない。むしろ、収入が多く、支出が少ない人々のバランスシートは改善される。戦争とは異なり、パンデミックは物理的な資本を破壊しない。したがって、病気への恐れが薄れると、経済は非常に力強く回復する可能性が十分にある。もしそうなら、計画された財政政策の主要部分は、「より良い再構築」ではなく、公的および民間投資の持続的増加を促すことで、短期的な救済を目指すべきである。
● 新ベバリッジ報告
FT February 21, 2021
Covid’s health legacy demands radical revamp of welfare systems
Kate Allen
コロナウイルスのパンデミックにより、何百万人もの人々が長期的な病気に苦しむ。公共政策を根本的に刷新しない限り、先進国の医療や社会福祉システムに永続的な負担がかかる。
パンデミックが発生する前でも、柔軟だが安全でない仕事への移行をテクノロジーが進め、福祉システムは労働の変化に追いついていなかった。一方、メンタルヘルスの問題が病気休暇の一般的原因になったように、病気の性質は変化している。エコノミストは、複雑で時間のかかる健康診断や承認プロセスを経ることなく、健康状態に応じて、人々が仕事に就いたり辞めたりする、労働時間を増減することが、もっと容易であるべきだ、と主張している。
短期契約、不安定な雇用、柔軟な労働、複数回の転職が、ハイテク経済では一般的であり、パンデミックにより多くの仕事でテクノロジーの導入が加速している。しかし、デジタルエコノミーはしばしば「仕事に関連する権利または手当、すなわち、失業手当、労働災害手当、出産および退職、団体交渉に従事する権利、または最低賃金規制の恩恵を受けるなど、ほとんど、または、まったく提供しない」とILO報告書は述べている。
社会は「病気や障害を負った者の才能とスキルが世界中の職場と社会の成功に貢献できる」ことを保証しなければならない。そうでなければ、パンデミックの遺産に対処できない。
● 労働党の時代
The Guardian, Sun 21 Feb 2021
Keir Starmer has caught the public mood. Now he can shape the political argument
Will Hutton
それは社会の問題だ。最初、10年以上前に、1兆ポンドをつぎ込まなければ経済を崩壊させる銀行危機が起き、イングランド銀行は資産保証と莫大な現金を銀行システムに注入した。今度はパンデミックで、イングランド銀行は再び1兆ポンドを、超過の借り入れ、緊急融資、現金支給の倍増で追加した。1兆ポンドの社会的資源を、2度、供給しなければ、想像を超える規模で崩壊が起きただろう。
どちらの危機も根底にリバタリアニズムがある。銀行システムは暴走を許され、深刻な社会的不平等と、国家権力の行使に対する致命的な躊躇によって、パンデミックが拡大している。それでも、保守党政権は、事態に強制され、すべての人を脅かす脅威を克服するために、何もかも投げ出さねばならなかった。
リバタリアニズムの名の下に、社会の最優先事項を否定したことが国民を殺す。
私たちは19世紀の教訓を再学習している。南からの旅行者が報告したように、北の急速に工業化する町は何マイルも離れたところからにおいがした。人間の排泄物を処分する朽ちたシステムは、下水システムもなく、汚水だまりがコレラ、天然痘、結核などの病気を培養し、ほとんど通気性のない空気と教区のポンプからの汚染された水が蔓延させた。中産階級は町の西側に住むように注意を払い、偏西風が病気、悪臭、汚染を東のスラムに吹き飛ばすようにした。工場や鉱山での労働条件は言葉では言い表せないものだった。あまりにも多くの子供たちが学校に通わずに育った。社会的介入が必要であった。
自由党政府が率いた19世紀の後半には、市民社会の抗議と反発が集まった。経済力と、機能する社会と、公衆衛生の積極的な肯定が、相互につながっていることは明らかだ。国家を小さく、税金を低く、規制を最小限に抑える、リバタリアンのそういう不安は、その危険な反社会的性格によって否定された。
労働党のスターマーが言及したベバリッジは、かつてNHS(国民医療サービス)、国民教育および社会保障機構のために画期的レポートを書いた。今、何をすべきか、同じくらい効果的で、しかも、より賢く、より巧妙である必要がある。出発点は、ニューレイバーのイニシアチブの一部を復活・拡大することだ。たとえば、保守党の連立政権によって放棄されたが、子供たちのために資産を積み上げるよう親に促す子供信託基金である。
ナショナリズムとリバタリアニズムのねじれた錬金術から生まれたBrexitは、最近の3つの災害すべてに関連し、今後10年間で、貿易、生産、税金の損失をさらに10億ポンドもイギリスに強いる。
19世紀の最後の数十年が自由党の時代であったように、次の数十年は労働党の時代である。そうなるべきだ。機は熟している。挑戦する大胆さが求められる。
その通り。重要なのは社会であり、ヨーロッパである。
● 日本の個人投資家と日米同盟
FP FEBRUARY 22, 2021
The U.S.-Japan Alliance Should Pivot to China’s Human Rights Issues
BY AYUMI TERAOKA, ELLIOT SILVERBERG, CHARLES CRABTREE
ワシントンが人権アジェンダを中国に対するより広範な地政学的戦略にどのように統合し、同盟国と協力して北京の厄介で増大する虐待を抑制するかはまだ明らかではありません。前政権下で、ワシントンは新疆ウイグル自治区の残虐行為と香港の新しい国家安全保障法の責任者に一連の制裁を課した。
この地域の主要なアメリカの同盟国、日本は、「自由で開かれたインド太平洋」の概念を最初に提唱し、最も積極的な支持するが、これらの問題については明らかに声が低く、意欲を失っている。アメリカとインド太平洋同盟諸国は、日本を始めとして、中国へのアプローチを互いに整理し、人権アジェンダを最優先する、平等な地位を与えられる時が来た。
残念なことに、地域の自由秩序を維持する上で日本が中心的な役割を果たしているにもかかわらず、東京はこれまで、中国政府の違反を罰するどころか、注意することもためらってきた。確かに、菅義偉は首相となったが、最近8月に表明した香港に関する「深刻な懸念」に、経済的な制裁を実施することは控えている。
日米同盟は多くの課題に直面している。ワシントンと東京にとって、この地政学的な瞬間が同盟を新しい方向に推進する機会だ。東京は、リベラルな価値観の擁護において積極的な役割を果たすためのより野心的で柔軟なツールキットを開発し、この問題に関して他のより高度なパートナーたちに追いつくだろう。それは、自由で開かれた諸制度からなる新たなグローバル・アーキテクチャに対するバイデン政権のビジョンに勢いを加える。
● アメリカ外交と戦争
NYT Feb. 24, 2021
America Is Not ‘Back.’ And Americans Should Not Want It to Be.
By Stephen Wertheim
「アメリカが帰ってきた」とバイデン大統領は就任以来のすべての主要な外交政策演説で宣言した。彼は、「私たちの共通の価値観のために戦う」ために同盟国と合流する、アメリカのグローバルリーダーシップの本質と彼が見るものを回復する。民主主義、人権、そしてアメリカのやり方の名の下に世界を秩序づけるというアメリカの探求である。
ドナルド・トランプの4年間の後、慣れ親しんだ習慣に戻る衝動は理解できる。しかし、これらの習慣、特にある国の武力支配の道徳化は破壊的である。重要なのは、バイデン政権が実際にアメリカ(軍隊と武器取引で第1位)を、世界でより暴力的にしないことだ。その点で、世界を従属同盟国に分割し、敵を増やし、両方に負担させるという、バイデンのより大きなビジョンは、修辞的に、外交的に高潔であっても、依然として問題を生じる。
トランプの後、アメリカ人は自分たちの国が、良い理由で悪いことをするのに満足してはならない。アメリカは「戻って」こない。われわれはそれを望まない。
● テキサスの寒波と停電
NYT Feb. 21, 2021
Why Texas Republicans Fear the Green New Deal
By Naomi Klein
テキサス州で停電が発生して以来、州の著名な共和党員は、何よりも、貧困、不平等、気候変動と戦うための進歩的な動員に、危機の責任を求めた。
天候だけでこのような危機は発生しない。テキサス人は、自由市場原理主義の40年におよぶ実験の崩壊過程を生き抜いている。それは効果的な気候変動対策の妨げにもなっている。幸いなことに、出口はあるが、テキサス州の共和党政治家が最も恐れていることだ。
90年代後半の一連の重要な決定で、スキャンダルにまみれて消滅したエネルギー会社のエンロンが、テキサスの電力部門を根本的に規制緩和することに成功した。その結果、電力の生成と配電に関する決定は規制当局から剥奪され、事実上、民間のエネルギー会社に引き渡された。当然、これらの企業は、グリッドを維持し、異常気象に備えて冗長性を構築するために、コストのかかる投資をするよりも、短期的な利益を優先した。
何十年もの間、共和党員は、私が「ショック・ドクトリン」と表現した信条で、あらゆる災害に対応した。災害が発生すると、人々は怯えて混乱する。彼らは、飲料水のために雪を沸騰させるなど、日常生活の緊急事態に集中的に対処する。政治に時間をかけず、彼らの権利を保護する能力は低下する。彼らはしばしば退行し、強力な指導者に決定を任せる。
自然災害、経済崩壊、テロ攻撃などの大規模なショックは、他のすべての人の費用で、エリートを豊かにする傾向がある、自由市場政策にひそかに輸入する理想的瞬間である。重要なのは、「ショック・ドクトリン」が危機の根底にある要因を解決することはない、ということだ。
要するに、共和党の考えは、もはや嘘ではなく、破滅に陥っている。小さな政府は、この大きな連動する問題の時代に匹敵するものではない。さらに、イギリスの前首相マーガレット・サッチャーが私たちの運命を市場に任せるとき「ほかに選択肢はない」と宣言して以来、初めて、進歩主義者は多くの問題解決の計画を準備している。問題は、ワシントンで権力を握っている民主党員がそれらを実行する勇気を持っているかどうかである。
● 米中関係正常化
PS Feb 24, 2021
How to Cooperate with China
ANDREW SHENG, XIAO GENG
西洋人が中国を理解するのに苦労するのには明らかな理由がある。第一に、中国は大陸の農業文明として非常に長い歴史を持ち、強力な中央政府と統一された政治的、社会的、経済的システムを持っている。これは、現代の国民国家と市場資本主義の発祥の地である西側で歴史的に見られた地理的断片化と政治的競争とは大きく異なる。
古代中国の哲学の影響を受け、政策立案者は、長期・実践的な、状況に依存する、複雑なシステム思考を行う。彼らは、システムが決して静的ではなく、したがって厳格なルールと手順によって適切に管理できないと考える。複雑なシステムの安定性、機能、および発展に不可欠な、継続的改革と適応的政策立案を可能にする、柔軟な関係原則がはるかに役立つ。
中国の政策決定のもう一つの注目すべき特徴は、個人の利益よりも集団的生存を強調する傾向である。たとえば、アメリカとは異なり、中国はシステムの腐敗と崩壊に関する豊富な経験を持っている。中国の指導者たちは、それが引き起こすかもしれない不安定性と、再建の難しさをよく知っている。したがって、彼らは、たとえそれが個人に短期的なコストを課すとしても、既存のシステムを保存し、展開し、強化することに忠実である。
今のところ、中国は「内部循環」への依存度を高めることで中国のサプライチェーンと市場の回復力を高める「二重循環戦略」を実施するなど、独自の再生をめざしている。しかし、その戦略は協力を排除するものではない。
西側に協力する用意ができるとき、中国に体制転換のような禁じ手を求めずに、新しいグローバルな社会契約を考案することが避けられない。それは、まず、国連や、IMF、世界銀行、WTO、WHOなど、国際機関を改革することを意味する。
このプロセスは、すべての利害関係者を巻き込み、共有された物語の発展を促進し、各国がグローバルな集団の内で役割を発見できる。そのようなシナリオでは、アメリカと中国は、グローバルな支配を争うのではなく、グローバルなコモンズを保護するために彼らの役割を果たします。
● 植民地の歴史と謝罪
FT February 24, 2021
The west is too obsessed with its colonial guilt
Kamel Daoud
アルジェリア生まれで、フランスの尊敬される歴史家Benjamin Storaが、待望の報告書を出したことは激しい論争となっている。
エマニュエル・マクロン大統領の委託により、この報告書は、アルジェリアの132年にわたる、しばしば残忍な占領を受け入れ、両国間の和解を促進するためのフランス国家による試みである。しかし、それはフランスの行動について謝罪しなかった。
かつての植民地の権力とその植民地との関係を調べるとき、焦点はほとんど悔い改めにある。植民者が過去を贖うのに十分なことをしたか。それがどこまで不足しているか。道徳的または歴史的な観点から、植民者は暴力的な占領の重荷を負っており、こう問われるのは正当である。しかし、支配の絆が正義の概念を歪めることを本当に理解しようとするなら、このアプローチは近視眼的である。
植民者の罪だけに焦点を合わせると、植民地化された人々は永遠に犠牲者の状態に固定する。しかしこれは、西洋の学者のアプローチ、現在は旧植民地国家に住んでいる旧植民地の知識人のアプローチ、そして植民地の過去を利用して自分たちの利益を促進する旧植民地エリートのアプローチである。
フランスとアルジェリアの場合、彼らの関係の暴力的な歴史、両国の地理的近接性、フランスにある大規模なアルジェリア移民コミュニティ、フランスの土地で起きた最近のジハード主義者の攻撃のために、世界的な関心がある。テロリストたちは宗教だけでなく、彼らの行動を正当化するために、アルジェリアの両親たちが苦しんだ不正を利用した。
反論が許されない独立戦争の物語により正当性を構築し、どんな犠牲を払っても、その記憶を生かし続ける政権にとって、フランスの謝罪はむしろ破局である。アルジェリアでは、イスラム主義者、進歩主義者、世俗主義者、保守派はほとんどの問題で意見が対立するが、フランスを非難することでは一致団結する。
報告書はアルジェリアがフランスとの戦争の記憶に戻り、再び永遠の敵に焦点をあてて、群衆を動員することになった。しかし実際、体制はいつもひどく恐れてきた。こうした復讐劇はいつか閉じられる。そして、力強い、幸福な国を築くために、政府には責任があるのだから、もはや過去のことであると認める必要がある、ということだ。
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The Economist February 6th 2020
The real revolution on Wall street
Fiscal stimulus in America: How much is too much?
California v Texas v covid-19: Life, liberty
Lexington: The courage of Adam Kinzinger
Brexit: The view from the city
Bagehot: Riding high
Retail investing: Transfer of power
Urban turmoil: Tales of the city
(コメント) なんでも市場にすることで効率化できる。経済学は、原則、そのような社会組織化の思想です。有価証券を取引するというのは、チョコやバナナを取引する市場ではないから、まったく違う話なのか、と言えば、そうではない。むしろ、牧草や穀物の取引がむつかしい時代から、鉄道によって、標準化によって、市場の規模と取引の容易さが飛躍的に改善されてきた歴史を、現代の株式市場、企業の債券、土地や住宅などに延長して考えます。株式市場の高騰と富裕層への再分配を嫌う政治の時代に、市場改革で対抗する記事かもしれません。
アメリカといえばコロナウイルス、というだけではなく、1.9兆ドルの財政刺激策、テキサスの寒波と大停電、トランプ党の蠢動、という新種の論争が広がります。
他方で、イギリスではボリス・ジョンソンが怪気炎を上げています。ふと読んでみた書評が強烈な印象を残しました。パキスタン、カラチの最貧困地区で、都市封鎖と重武装兵によりギャング団を撲滅した「8日間の作戦」を描く女性ジャーナリストの作品です。
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IPEの想像力 3/1/21
今、ワクチン接種のスピードが世界各地のガバナンスを測る基準となっています。
イギリスのボリス・ジョンソン首相は、その「政治資本」を大いに増大させたようです。The Economist の記事を読んで、私は菅首相のことを考えました。専門家の基準を理由に緊急事態宣言を解除するかどうか、迷っている日本の首相です。
・・・政治資本は、「首相の貴重な資源である。」それは「支持者たちを活気づかせ、反対派を打ちのめす。あいまいな夢を正当な勝利に変える。」 ボリス銀行は、今や、大幅な黒字をかかえたのだ。イギリスは人口の14%がワクチン接種を終えた。ドイツ2.4%、フランス2.3%。
問題は、彼がこの資本を何に使うのか、である。
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対照的に、菅首相が「政治資本」を急激に失っているのは明白です。政治資本が黒字になったときと同様、それが急激に減少したとき、すなわち、株価暴落や通貨危機でも、政権を担う気力があるなら、次に何をするのかが問われます。
より最近の調査(BBCが紹介するイギリス政府データ)では、100人当たりワクチン接種回数は、イギリス31.27人、ドイツ7.37人、フランス6.97人、アメリカ22.73人、ロシア2.67人、中国2.8人、オーストラリア0.13人、日本は0.1人未満です。
記事は、ジョンソンが、選挙で公約したイングランド北部の産業振興ではなく、スコットランド独立を思いとどまらせるためにUK統合の積極的再生計画に投資すべきだ、と考えます。その要点は3つの具体的な政策です。
第1に、社会保障制度をCOVID-19の変化に耐えられるよう改革する。それには増税がともなうかもしれません。非常に困難で、政治家は避けてきた問題です。しかし、今は違う。無策のコストは、改革の障害を越えるほど大きくなったから。昨年、2万5000人がUKで死亡した。NHSの大原則、無料の医療サービスを守るために、国民を説得せよ、と。
第2に、高齢者の健康だけでなく、子ども・若者の教育を保証する。特に、貧困層の子どもたちに。ウイルス感染で、彼らが不当に大きな不利益を強いられているからです。
第3に、外交において、ブレグジット後の構想を立てる。EU離脱を祝うより、ワクチン接種の混乱を利用してEUに再接近するべきだ。国民国家の幻想を捨てて、イラン、気候変動など、ドイツやフランスと協力することにイギリスの利益がある。
もしボリス・ジョンソンが日本の首相なら、何を推進するでしょうか?
第1に、医療・社会保障制度を改革する。認知症の高齢者は家族に介護させる、家族がいない、十分な貯蓄がない高齢者たちが日本の社会保障にとって重荷である、というだけでは、コロナウイルス後の債務・経済負担に耐えられないでしょう。高齢者と医療の在り方を変え、社会的なダイナミズムを高めるような、積極的取り組み、新しい社会モデルを見つける。
第2に、若者や女性、日本に住む外国人労働者たちの、職場における安定した地位と権利、社会保障を明確に整備する。
第3に、日本の外交において、韓国、中国との関係は、常に、もっとも重要な条件です。植民地と戦争の歴史的記憶や謝罪を避けることなく、日本の安全保障も、経済的繁栄も、両国とともに達成するという姿勢、心に届く言葉や行動を示すことです。
失われた政治資本を嘆くより、危機を、将来に向けたチャンスに変える政治的な手を打つ姿勢が、指導者には問われていると思います。
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