IPEの果樹園2021
今週のReview
2/15-20
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21世紀の大国 ・・・株式市場と投機の民主化 ・・・富裕税 ・・・ナワルニーとプーチン ・・・民主主義と真実のメディア ・・・技術革新のゆがみ ・・・中国の成長消滅 ・・・弾劾裁判後のトランプ支持者 ・・・自然界を含む経済学
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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● 21世紀の大国
SPIEGEL International 04.02.2021
From Brussels to the Rest of the World
How Europe Became a Model for the 21st Century
An Essay by Ullrich Fichtner
政治風刺漫画の世界では、ヨーロッパはカタツムリやヒドラ、蛇の穴や豚舎として描かれる。欧州連合は、病人であり、車椅子の老婆、悲しむ女性に無視された子供。ヨーロッパは、空気の抜けた気球、エンジンのないレースカー、脱線した列車、沈没船、大きすぎて滑走路が見つからないジャンボジェット機。大陸は、EU首脳たちが集まる不毛の山頂、ファイルのゴミの山、牛乳とワインの海がたくさんある汚された土地。ヨーロッパは、不安定なカードの家、ぼろ家、燃えている小屋、崩れかけた寺。それはいつも破滅状態だ。
こうしたすべての風刺にもかかわらず、EUは世界の最強国家の1つである。
カリフォルニアのハイテク企業はEUの規制に従って製品を作る。ガーナやエクアドルのコーヒー生産者も、McDonald, Subway and Wendyのようなファーストフードのチェーン店も、Adidas, Nike, and Zaraも、EUの規制に従っている。Microsoft, Google, Apple, Intelは互いに訴訟を起こしているが、サンフランシスコやニューヨークだけでなく、欧州委員会の仲裁を求める。一般データ保護規則(GDPR)が示す、ヨーロッパのデータ保護は、急速に世界標準になり、どの企業もどの国も無視することはできない。EUの炭素排出規制もそうだ。
現代のグローバリゼーションとは、「ヨーロッパ化」である。
近代史においては、指導的な大国がその能力と原則を示し、他の諸国が従った。18・19世紀のイギリスとフランス、20世紀、両大戦後のアメリカがそうだ。しかし、1980年代から、アメリカは規制緩和を推進し、新しい金本位制を示す役割を放棄した。EUは、その真空を埋めたのだ。
ユーロをめぐる崩壊論は間違いだった。EUはすでに多くのことを実現した。平和の維持、気候の保護、自然破壊の終焉、住民の保護、繁栄、生活向上、幸福の追求。ほとんどのヨーロッパ人は、これらが自明であると信じている。もはやそれらをほとんど聞かず、麗々しく称賛することもない。しかしEUは、何世紀にもわたって人々が互いに引き裂かれた大陸全体を、21世紀のモデルに変えた。
それはこれ以上にない21世紀の大国そのものだ。
● 株式市場と投機の民主化
NYT Feb. 4, 2021
Pumps and Dumps and Chumps
By Paul Krugman
理性的な世界なら、小さなゲーム機販売企業GameStopの株価が上下するのを誰も気にしない。Redditが煽ったGameStop株はUS株市場全体の0.06%でしかない。そもそも株式市場は実物経済の余興でしかない。
しかし、われわれは理性的でない世界に暮らしている。GameStopの話は、経済や市場よりも、心理と政治の問題だ。ドナルド・トランプの4年間を経ても、われわれの社会はまだ騙されやすいままである。非常に多くの影響力ある人々がフェイクのポピュリズムに殺到する。
GameStop株に起きたことは、ソーシャルメディアで加速されたa pump and dump(虚偽の推奨によって株価を吊り上げ、人びとを巻き込んで自分だけ売り抜ける投機)である。付録として略奪的な取引が加わった。原則的に、これは違法である。しかし、GameStop株では誰も起訴されないだろう。その意図を証明することは可能だ。
明言しておくが、これはポピュリスト的な蜂起ではない。われわれの経済は多くの家族を取り残してきたが、アメリカの労働者たちが必要とするのは賃金の停滞を終わらせることであり、株式投機ではない。騒動が終われば、熱狂する取引で金を失うのが小規模の投資家たちであり、儲けるのはウォール街であると分かるだろう。
進歩的な人びとには同調する者もいる。しかし彼らは知るべきだ。株価上昇に対するQAnon的な雰囲気は常にあった。株価が沈めばなおさらだ。Redditやソーシャルメディアには、ユダヤ人銀行家を非難する声が多くある。
ポピュリズムを支持するなら、そのポピュリズムが本物であることを確かめるべきだ。すなわち、アメリカ人の生活を改善する政策を要求し、陰謀論や、「エリート」に対する見せかけの文化戦争ではない。
FT February 8, 2021
The biggest lesson of GameStop
Rana Foroohar
操作された金融システムを攪乱し、正義の小規模投資家たちがヘッジファンドを倒す、GameStop株取引の熱狂はダヴィデとゴリアテにもたとえられた。
しかし、その考えは間違いだ。市場は「民主化」されていないし、スマホで株取引する人々は「包括的な資本主義」を代表するわけではない。
しかし1980年代、民主党も共和党も、政治家たちは市場と民主主義を同一視して行動した。市場の規制緩和を進め、ブレトンウッズの為替レート制度が崩壊した後、金融政策で景気変動を緩和する市場介入が増え、株式保有者の資本主義が登場した。アメリカ経済は、安定した雇用と所得の上昇に基づく繁栄から、企業も消費者も資産価格の上昇にますます注目するものに変わった。
市場の変革は企業に短期的な圧力をかけ、アウトソーシング、自動化、労働組合の削減、401kプランの確定給付年金の削除によって、コストを減らしたが、選択した投資の責任、その悪い結果のリスクを、労働者個人に負わせる。1989年、アメリカの家族の31%が株式を保有していたが、今はほぼ半分だ。私たちは皆、デイトレーダーのように見える。
アプリやソーシャルメディアで株取引をする人が増えても、市場が主導する資本主義システムを実現することはない。われわれの経済は消費支出に頼っており、それは資産価格のインフレの上に立つ。そのうえで、10代の若者たちはベッドルームから投資する。しかし、現在のような雇用が続くなら、若者たちは、ポートフォリオの価値が急落してもセーフティーネットの無い、ギグワーカーに終わるだろう。
株式投機は、いくら共有されても、民主主義ではない。
● 富裕税
FT February 8, 2021
A wealth tax is the economic buffer rich nations need
Tim Bond
パンデミックからの回復、気候変動対策、社会の「レベルアップ」はすべて不可欠だが、非常に費用がかかる。現在、多くの政府が中央銀行の印刷機を通じて資金を調達している。間もなく、政府はインフレの制御を失うか、政策目標を放棄するかを選択するしかなくなるだろう。どちらも、社会的不安につながりかねない選択である。明らかな解決策は、富裕税だ。
税金は、十分に消費することができない社会のセクターから富を再分配し、経済を刺激する。これは、連邦準備制度による歪みから解放され、金融市場が価格発見と効率的な資本配分という経済的機能に戻るのを助ける。不平等の拡大、投機的なバブルとバストのサイクル、債務水準の上昇、生産性の伸びの低下など、経済を苦しめる病気をもたらすゼロ金利と量的緩和が必要なくなる。
アメリカ経済には、最新の財政パッケージと、過剰な家計貯蓄から派生する潜在的な需要の源がある。マネーサプライの最速の成長を目撃した。インフレショックが継続的な財政赤字の現金化と組み合わさった場合、自立したインフレスパイラルが起きやすくなるだろう。
1回限りの富裕税は、おそらく毎年の増税よりも公平であろう。最も裕福な市民に1つを導入することは、最終的には経済の地獄につながるしかない債務の現金化から脱出する途だ。
● ナワルニーとプーチン
FT February 8, 2021
Vladimir Putin’s Russia is destabilising itself from within
Tatiana Stanovaya
プーチンの成功は、世界の舞台でロシア人を鼓舞しながら、生活水準の着実な改善をもたらす政権の能力に根ざしていた。現在、政権は主に人々を怖がらせ、母なるロシアが再び「包囲された要塞」であるという印象を育むことで支配している。
ロシアの社会経済問題は不快だが、克服できないものではない。しかし、体制は中途半端にまともな対応を取れない。国民の80%は、当局を完全かつ取り返しのつかないほど腐敗していると見なしている。政権は、反対派や国民との対話を拒否することで、社会的緊張が政治的抗議に変わるのは確実だ。体制がより柔軟になる知恵を持つか、さもなければ、それは明白に抑圧的国家になる。
PS Feb 11, 2021
Putin Is Losing the Battle for Russia’s Future
ANDREI KOLESNIKOV
ロシア人が抗議者と連帯して車のクラクションを鳴らすことは、個人的な影響を与える危険性がある。抗議に対する対応は、クレムリンの過去の弾圧を超えた。それは戦争状態である。
クレムリンが命じた毒殺未遂からの回復に数ヶ月を要した後に、ドイツからモスクワに戻ったナワルニーを逮捕したことは、彼を(そして彼の同志も)道徳的権威のようなものに転換した。
プーチン政権は以前も抗議に直面した。 2011年、ロシア人は立法選挙の結果に抗議するため街頭に殺到したデモは2012年前半まで続いた。しかし、クレムリンはデモを押しつぶさなかった。 2011年後半には、プーチンが市民社会と真の対話に従事する準備があると噂され、彼の政権が崩壊の危機に瀕しているかもしれないという期待を高めた。
今回、クレムリンはデモ隊と交渉することを示唆せず、警備隊がクレムリン地区と連邦保安庁地区を取り囲み、多くの抗議者を逮捕した。これは大統領が守勢にあることを示している。
7年前のクリミア併合以来、それに対する西側の制裁は、ロシア経済を徐々に侵食した。そして、経済への国家介入は独裁政権を維持するために不可欠であり、価格統制で必然的に終わるアプローチには政治的侵食が続いた。同じように、ソビエト連邦は崩壊した。
ナワルニーは若者、特に18〜24歳の若者の間で大きな支持を得ている。言い換えれば、プーチンは将来の世代に向けた戦いに負け始めている。抗議はロシアの政治を二者択一的事件に変えた。ナワルニーか、プーチンか、どちらの側か。それはプーチンがもはや勝つと確信していないコンテストである。
● 民主主義と真実のメディア
The Guardian, Mon 8 Feb 2021
In the war of fake news versus facts, here's what the next battle should be
Timothy Garton Ash
民主主義が生き残るためには、最低限の共有された真実が必要だ。1月6日、ワシントンで国会議事堂が襲撃されたとき、アメリカは、重要な、慎重に検証された事実、つまり誰が選挙に勝ったかを、何百万人もの市民が否定することの危険性を示した。
民主主義が繁栄するためには、市民とその代表者が共有された事実に基づいて活発な議論を行う、ある種の「公共圏」が必要だ。そのような公共圏を回復することは、今や自由民主主義の更新のための中心的な仕事である。それを「事実の反撃」とよぼう。
その基本的な考え方は、2500年前の民主主義の始まりからあった。古代アテネの市民たちは、元の「公共広場」であるthe Pnyx、野外討論場に集まった。 「誰か集会で演説する者はいるか?」と伝令は尋ねた。市民なら誰でも石の舞台に上がって話すことができた。事実と議論が提示され、議論された後、政策は投票にかけられた。古代アテネ人がサラミスの海戦で侵略者のペルシャ人と戦うことを決めたのは、そして世界初の民主主義を救ったのは、この慎重なプロセスであった。
しかし、Facebook、Google、Amazon、Twitter、Apple、Netflixなど、デジタル世界の私的な超大国を引き継ぐのに十分な大きさの民主主義国はない。この場合、アメリカとEUの民主主義を合わせて、臨界量の民主主義が協調行動を取る必要がある。
バイデンの「民主主義サミット」前に、一連の提案がなされるべきだ。80カ国が同じ措置を採用することはないだろう。しかし、根底にある原則と基本的なアプローチには一貫性がなければならない。そうでなければ、すでに中国が抜けた自由なインターネットは、さらにサイバー・バルカン化を進めるだろう。
● 技術革新のゆがみ
PS Feb 8, 2021
Poor Countries’ Technology Dilemma
DANI RODRIK
経済発展は、労働力の分配を増やし続けるために、より生産的な雇用を創出することに依存している。伝統的に、貧しい国々がこの変革を遂げたのは工業化であった。工場の仕事は陰鬱であったが、農民がブルーカラー労働者になることを可能にし、結果として経済と社会を変えた。
工業化とグローバル・バリュー・チェーンへの統合は、急速な経済成長を達成するため、またはCOVID-19パンデミック後にそれを回復するために不可欠である。アフリカの若い人口のための仕事をもたらす。しかし、アフリカ製造業のルネッサンスには摩擦がある。工業化が根を下ろしているところでさえ、より近代的で、形式的で、生産的な製造部門で良い仕事が生み出されたことはほとんどない。
製造業の雇用増加の大部分は小規模の非公式企業によるもので、正規の仕事の数は停滞している。この経験は、製造業の雇用の伸びが正規企業に集中していた台湾(1960年代から1970年代)やベトナム(最近)などの東アジアの急速な工業化企業の経験とはまったく対照的だ。
エチオピアとタンザニアの両方で、大企業は優れた生産性パフォーマンスを示すが、雇用をあまり拡大しない。一方、中小企業は労働力を吸収するが生産性の伸びはない。その結果、これらの経済は良い仕事をほとんど生み出さない一方で、生産性向上のメリットは製造業のごく一部に限定されたままである。
大規模な製造会社の重要な特徴の1つは、過度に資本集約的であることだ。エチオピアやタンザニアなどの低所得国では、労働者が豊富で、資本(機械設備)が不足しているため、資本投資は高くつく。標準的な経済理論では、そのような状況で、生産はより労働集約的な技術に傾くと予測している。
しかし製造技術は、主要な先進国の要素価格に対応して、時間の経過とともに次第に資本とスキルを集中的に使用するものになった。 1950年代または1960年代のテクノロジーは、より労働集約的だったかもしれないが、今日のアフリカ企業が世界市場で競争するのに役立つことはない。また、グローバル・バリュー・チェーンで使用されているテクノロジーは、特に未熟練労働者に合わせて偏っている。
先進国における最近の技術変化のパターンは、低所得国が所得水準を高め、世界中で格差を収束させることをより困難にしている。これらの変化は、発展途上国の経済のより進んだセグメント内でも、経済的および技術的二元論を深めることにつながる。
技術変化の方向性と、政府がそれを再方向付けしなければならないツールについて、公共の討論が求められる。
● 中国の成長消滅
FP FEBRUARY 8, 2021
China Will Run Out of Growth if It Doesn’t Fix Its Rural Crisis
BY MARTIN CHORZEMPA, TIANLEI HUANG
他のすべての主要経済が縮小している時期に、中国は1月下旬にGDPが2020年に2.3%成長したと発表した。しかし、その印象的な成果の下にあるのは、非常に不均衡な回復だ。過去と同様に、北京は国による投資に大きく依存し、民間投資と個人消費が弱いままである。より高い工業生産のための国家主導の投資、成長を促進するための低利融資は、将来の収益性の見込みがほとんどない、さらに多くのいわゆるゾンビ企業を形成し、中国の銀行の帳簿をさらに多くの不良債権で埋めただろう。
これは、中国の経済成長の歪んだモデルを詳しく調べた多くの人によく知られています。あまり知られていないのは、中国全土の都市で働く2億9千万人の農村部の戸籍(世帯登録)の移民労働者を含む、中国の農村部に降りかかったCOVID-19による不況の不均衡な負担である。サービスや小売など、多くの移民が働く経済部門が強制的に封鎖された。ある推定では、中国の移民労働者は約1,000億ドルの賃金を失い、回復する可能性はほとんどない。
何億人もの農村の中国人は人的資本の不足に直面し、広範な健康問題に苦しんでいる。広範囲にわたる貧血、矯正されていない近視、および寄生性腸内寄生虫。パンデミックによって悪化した中国の農村危機は、外部の観察者、さらには多くの中国人にもほとんど見えないままである。
パンデミックが発生する前に、多くの移民労働者は、中国の労働市場の需要の変化により、製造業や建設業に就職することが以前よりも困難であることに気づいていた。未熟練労働者に依存する生産が、賃金が低いままであるエチオピア、バングラデシュ、ベトナムなどの国に移動するところまで、生活費と賃金が上昇している。中国がバリューチェーンを上って知識ベースの経済に変わるにつれて、低スキル労働者の必要性は少なくなる。そして今、パンデミックは構造的失業をさらに悪化させた。中国にとって、その将来に対する実存的な問題は、何億人もの未熟練労働者が経済において生産的な役割を果たせるかどうかである。
中国には2つの道がある。1つは、韓国、台湾、香港、シンガポールなど、裕福になった数少ない旧開発途上国の道、もう1つは、メキシコ、ブラジルのように永続的な危機に瀕し続けることだ。中国が最終的にどの道をたどるかは、とりわけ人的資本に依存する。高校の学歴が50%未満の国では、中所得国の罠から逃れることができない。移行に成功した国の平均は76%である。中国の労働力のわずか30%が高校を卒業しただけである。
最初の緊急の課題は、すべての地方のティーンエイジャーに高校を無料で義務化することだ。彼らの両親の多くは、パンデミックの最中に収入を失い、費用を支払うことができない。他の発展途上国が行ったように、中国は子供たちを学校に通わせることを条件として、地方の家族に現金を与えることを検討するべきだ。また、失業者の移民労働者がスキルを向上させるための再訓練の機会を拡大する。移民労働者の社会的セーフティーネットをオーバーホールする。
● 弾劾裁判後のトランプ支持者
PS Feb 10, 2021
Why Try Trump?
ERIC POSNER
トランプが反乱を扇動したという主張は一筋縄ではいかず、彼を無罪にすることを正当化しようとしている共和党の上院議員は、彼が何をしたとしても、それは反乱ではなかったと主張するだろう。
トランプを失格にする本当の理由は、彼がアメリカの諸機関にとって脅威であり、その無謀で、権力に狂った暴挙が選挙制度を掘り崩しかねず、今後何年にもわたって害毒をおよぼすであろうということだ。これは明確に述べるべきだ。
それから、上院共和党員たち、そしてもっと重要なことは、彼らに投票するかもしれない市民を、下院の責任者たちが、この男は二度と公職に立候補することを許されるべきではない、と説得することだ。
NYT Feb. 10, 2021
I’ve Studied Terrorism for Over 40 Years. Let’s Talk About What Comes Next.
By Martha Crenshaw
強力なタブーの崩壊に酔いしれた、大義への新参者たちは、急進化のダイナミクスの中で暴力的な極右グループを生むかもしれない。この極右の白人至上主義者、ネオナチの環境の中で権力を争うことは、脅威の不安定さと予測不可能性を強めるだろう。
グループが治安部隊からの圧力の下で地下に移動するとき、彼らは必然的にもっと秘密の組織になる。外部との接触を断ち切り、彼らは世界の終わりのカルトのように主観的な現実に入る。
テクノロジーは、極右の陰謀論者の世界が遠隔で通信することを可能にし、運動を結びつけるが、同時に、不信と侵入を恐れさせる。その結果、民主主義はプロパガンダや偽情報と戦う方法を模索し、資金の募集や調達を困難にした。政府や、Facebook、Twitterなどの民間企業は、過激派のコミュニケーション能力を制限することで、オンラインでの暴力の訴えに対応している。
しかし、政策立案者は、迅速かつ包括的な解決に向けた要求に、抵抗するべきだ。必要なのは、目の前にある証拠に照らして、対応するオプションを慎重に検討することだ。大惨事の直後にとられる行動は、合理的な計算よりも感情によって引き起こされる。そして、一度取られると、それらの措置を元に戻すのは難しい。
最大の危険は、暴力に惹かれ、武装しており、イデオロギー的信念、共有されたアイデンティティーを守ることへのコミットメント、および無関係の恐れから行動する意欲のある小グループまたは個人である。民主的な正統性を回復するための重要なステップは、彼らが代表していると主張するコミュニティが、彼らを拒否するときである。
● 自然界を含む経済学
PS Feb 10, 2021
Restoring Nature to Economics
DIANE COYLE
スミスやリカードのような、農業が今日よりもはるかに大きな経済的シェアを占めていた時代の古典派経済学者は、人間活動が自然界で起こり、自然の恵みに依存していることをよく知っていた。彼らは常に土地を分析に含めた。しかし現代の経済学は、経済の定義と測定から自然を大部分除外している。
農民が作物を売って得たお金はGDPにカウントされるが、作物に受粉するミツバチのサービスや土壌の質は、ミツバチが死ぬか土壌が失われるまで考慮されない。また、従来の経済統計には、きれいな空気によって提供されるサービスや汚染の悪影響が組み込まれていない。しかし、COVID-19の死亡率と呼吸器疾患との関係は、人的資本と将来の収入の減少という狭いレンズを通してだけでも、そのコストを明らかに示している。
経済政策立案者の仕事は、社会にプラスの利益をもたらすよう、国の資産ポートフォリオを全体として管理することである。これは、重要な生物種や生態系を含む個々の資産の減価償却、およびそれらの間の補完性を考慮に入れることを意味する。
そのような枠組みで、長期ポートフォリオ・アプローチを採用する政府は、費用がかかり、エネルギー集約的な、見苦しいコンクリートにより洪水を防ごうとせず、上流の植林と下流の湿地保全に低コストの投資を行うと決定するだろう。同様に、農民は生物多様性の喪失とミツバチの個体数の減少をよく知っているが、化学肥料への依存度が高くなり、死んだミツバチが増える悪影響についてはあまり知らない。自然地域への人間活動の侵入は、エボラやCOVID-19のような感染症の蔓延をもたらし、社会、経済、政府に莫大な費用を強いている。
パンデミックは、お金は価値の尺度として不十分だ、という古い重要な教訓を含め、多くの教訓をもたらす。病院のポーターから配達ドライバーまで、「エッセンシャルワーカー」は最低賃金で働く者が多い。現在、自宅で学校の授業を監督する人、またはレストランが封鎖中に追加の料理をしている人は、家庭内での無給労働の価値を新たに理解するだろう。
2020年3月以降、人々が公園へのアクセスに置く価値は飛躍的に高まった。経常的に自然から得ている価値の多くは測定されず、あまりにも少ししか支払われず、エコノミストたちはそれを無視する。
それらはもはや持続可能ではない。
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The Economist January 23th 2020
Technology and geopolitics: Betting all the chips
Russia: The return
Equatorial Guinea and the IMF: Who will blink first?
Chinese youth: Generation Xi
Russia: Into the lion’s den
Bagehot: Think small
Semiconductors: A new architecture
America’s recovery: Fire without fury
(コメント) すべてのモンがインターネットとつながり、情報を駆使する世界では、文明の血液となではいえませんが、脳細胞が半導体のチップです。それは莫大な投資額であり、グローバルな産業転換です。半導体の生産者が、台湾のTSMCと韓国のサムソンという2社の寡占になっているのは、市場としてだけでなく、地政学的にも新興な問題です。アメリカは中国で生産される半導体を締め出す規制を課し、またAmazon、Google、Microsoftなどが、新興企業も加わって、独自の半導を生産するようになっています。
ロシアに帰還したナワルニーの意図と政治・社会背景、ブレグジット後のイギリス政治がめざす方向、亜米利加の景気刺激策をめぐる論争、など、読みごたえがあります。
特集記事の、中国を変える若者たち、ポスト90年代、の姿も印象的です。
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IPEの想像力 2/15/21
中国の台頭を恐れるより、中国の衰退を恐れるべきだ。
ときおり、そう警告する論説を読むときも、中国のイメージは台頭する(むしろ復活する)世界帝国であり、新しい国際秩序の先頭を歩むアジア強国でした。
しかし特集記事(The Economist January 23th 2020)を読んで、そうではないな、と思いました。これまでに読んださまざまな論説が、星雲状に集まる核があるとしたら、中国の若者たちを考察する特集記事がそうでした。”Jiulinghou”(post-90s)という、1990-1999年に生まれた若者たちのことです。
「90年代生まれ」の若者たちは、1億8800万人いる、ということです。当然、日本の人口と比べてしまうので、多いなあ、と思います。彼・彼女たちは、1989年の天安門事件以後に生まれています。「70年代生まれ」は、1976年の毛沢東の死後、子供時代を過ごしました。「80年代生まれ」は、ケ小平の下で、改革開放が進む時代に育ちました。しかし、「90年代生まれ」が生きたのは、習近平が権力の頂点に立った時代です。それ以前の中国を知りません。すなわち内戦や貧困、飢餓はもちろん、改革の時代も、独自の急成長も、直接、知らない世代です。
記事の冒頭に、毛沢東の肖像がかかる天安門広場で、毎朝、日の出とともに行われる国旗掲揚のセレモニーを、多くの人々が見つめる情景があります。肌を刺す厳しい北京の冬でも、セレモニーに参加する市民の列は絶えない、と。
なぜ中国共産党が支持されるのか? その答えは世代によって異なるようです。帝国主義的支配、特に、日本の侵略を打ち負かした。朝鮮戦争を含む、大戦争の勝利という記憶。毛沢東という指導者のカリスマと秩序の混乱を恐れる。文化大革命、権威、文化、支配エリートの剥奪。毛沢東の死後、権力闘争にケ小平が勝ったのは何が理由であったのか。国民生活の疲弊や、カンボジア内戦とベトナムとの戦争・・・?
90年代に生まれた若者たちは、共産党の権威に逆らったりしない。中国が豊かになったこと、国際的な地位が高まっていくことを誇りに思っている。権威主義的な国家や共産党の支配を肯定的に観ている。マルクス主義、ナショナリズム、西側の基本的諸価値を否定するイデオロギーを、愛国主義に求める。そして、子供のときから、学校では「習近平思想」を学習する。
しかし、中国の高成長(その条件)は、パンデミック前にも消滅していたが、いよいよ、それが明白になった。若者として、猛烈に働いて、より高い地位や所得を求めるより、「生きがい」を求めるようになった。大学を出て、都市の大企業に就職するとか、ハイテク分野で起業するとか、そういった夢は、嘘ではないが、非常に限られた成功例でしかない。それがわかったら、都会生活の極端な競争、環境破壊、所得や地位の格差、不平等に、もっと異なる生き方を模索し始める。そんな若者が増えているという。
一人っ子政策は子供を甘やかした。しかし、その弊害で男子の人口は女子より多く、4000万人も結婚できない。都市より田舎暮らしを理想化し、環境保護、気候変動対策を支持する。さらにフェミニズム、ゲイ、LGBTの権利を訴え、農村の貧困や都市下層の不当な扱いを憤る。そんな若者たちが中国の政治を変え、次の国際秩序に最も重要な発言力を得るだろう。
共産党はそれを十分に意識している。
ドナルド・トランプの暴言とアメリカ政府が示した中国への攻撃、侮辱、アメリカ国民に広まったアジア人への差別は、中国の若者たちに、アメリカや西側のリベラルな価値も民主主義も、偽善である、と教えた。コロナウイルス対策の競争で、欧米は敗北し、アジアが、特に中国が勝利した。そういう政府の宣伝は、国際秩序の将来にも影響するだろう。
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奈良の平城宮跡を散歩しました。だだっ広いだけだと思っていたら、とても中身のある展示と解説に感銘を受けました。奈良時代の生活水準や身分の違い、食生活まで、やたらに勉強になります。・・・そうか、貴族は蛸の干物まで食べていたのか。
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中国の若者たちだけでなく、激しい競争によりグローバルな産業構造の変化が絶え間なく進んでいる。しかも半導体生産の2つの巨大企業は、台湾と韓国、2つの地政学的危険地帯から発したTSMCとサムソンだ。
地政学を呑み込みながら、それでもグローバルな産業の再編、工業化とハイテク化の波は続きます。中国の台頭はもちろん重要ですが、中国やアジアを含めて、世界経済は、半導体、電気自動車、鉄鋼業、再生可能エネルギー、農業・食糧生産、ワクチンなど医薬品生産・・・そして、情報経済とプラットフォーマー規制をめぐり、数年ごとに、すっかり変貌するでしょう。
日本が停滞しているとしたら、老人ばかりが密室で協議するからです。若者たちは中国の「90年代生まれ」に共感し、新興産業は激変する世界の一部を生きているはずです。
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