IPEの果樹園2020

今週のReview

10/19-24

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Amazonを分割せよ ・・・トランプの戦略 ・・・企業の責任 ・・・地政学的衝突 ・・・COVID-19に対処する ・・・ブレグジットランド ・・・垂直農場の革新 ・・・スコットランド独立と通貨

[長いReview

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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 Amazonを分割せよ

NYT Oct. 8, 2020

Don’t Let Amazon Get Any Bigger

By Stacy Mitchell

われわれは、Amazonが創意工夫に満ちているからだ、と信用しがちである。ジェフ・ベゾスは、アメリカの消費者に届ける物流を、UPSFedExに対抗して構築した。AmazonAlexaは、音声によるデバイスやウェブアクセスにおける支配的なオペレーティング・システムである。

しかし、今週、下院司法委員会は長い報告書を出した。それによれば、Amazonは他の企業が市場に到達するための隘路となっている。Amazonが、他企業に対するその強力な指令的立場を利用し、配送システムを支配し、ビジネスから排除している。

民間の権力集中が危険な状態にならないよう阻止することは、民主主義社会に必要なチェック・アンド・バランス機能であり、議会の責任である。委員会はそのためのいくつかの提言を行っている。なかでも、Amazonを分割し、他の企業と「構造的に分離する」という示唆は重要だ。

ベゾスは、ある分野の優位を利用して、急速に他の分野にも進出する。特にそのデータ集積やAlexaの普及は、製品の優劣に関係なく、競争する相手企業に不利をもたらし、Amazonの製品が優位を与える。それはアメリカの活力を奪う脅威になる。投資家たちは、Amazonの周囲に広がる新興企業の「デス・ゾーン」を語っている。そこでは競争が失われ、新規参入企業は敗退する運命にあり、投資を集められない。

「機能的分離」は過去にも行われた。20世紀の初め、議会は鉄道業を、財の生産と流通から分離した。また議会は、情報通信業と銀行業にも、同様のアプローチを取った。

しかし、公平で開かれた市場を再生するには、それだけでは不十分だ。われわれは支配的なプラットフォーマーが、他企業を差別することがないよう、合意的なアクセスを提供するルールを必要としている。

ジェフ・ベゾスは、かつて創意に富むスタートアップ企業であったが、今では侵攻不能となった帝国の支配者だ。


 トランプの戦略

NYT Oct. 8, 2020

Trump Is Killing the Economy Out of Spite

By Paul Krugman

トランプは執念深い人物だ。

トランプは、もし敗北した場合、選挙結果を受け入れないだろう。そのとき、どのような混乱、棒慮億事件が起きるのか、だれにもわからない。

その問題とは別に、敗北してもトランプは、なお、2カ月半もホワイトハウスにいる。彼はこの時間を、どれほど破壊的に、彼の再選を拒んだアメリカに対する復讐に費やすのだろうか。

火曜日、われわれはその前兆を観たのかもしれない。トランプはまだ敗北していないが、多数のアメリカ国民が必要としている経済回復策の財政支援パッケージに関する交渉を、突然、打ち切った。

もし連邦政府が、失業者への寛容な給付、中小企業が継続するための援助をしなければ、何百万もの家族が家賃を支払えなくなり、多数の事業が閉鎖されるだろう。州政府、地方政府は財政赤字を許されておらず、パンデミックと不況で財源が枯渇している。すでに教育現場で90万人が職を失った。

もちろん、財政支援がなければ成長は減速し、あるいは、不況に落ち込むというマクロ経済的な理由がある。この警告は、「大きな政府」を支持する進歩派民主党員が主張したことではなく、ウォール街のアナリストや、連銀のパウエル議長が発したものだ。

問題は、なぜトランプは投票日の1カ月前に取引をやめると選択したのかだ。もちろん、財政刺激策は、113日に景気を好転させるには間に合わない。しかしアメリカ人を苦境から救い出す姿勢を示すことは、明らかに、トランプの政治的利益になる。

私が知る限り、だれも納得いく説明を示せない。そこに観るのは、執念深さだけである。彼を不当に扱った、とみなす人々、アメリカ人すべてに対して、激しく憤慨しているのだろうか。

PS Oct 14, 2020

What the US Election Is Really About

ERIC POSNER

来月のアメリカの選挙は、政策に関するものでも、ドナルド・トランプ大統領に関するものでもない。アメリカの憲法システムを問うものだ。たとえトランプが再選されても、独裁者にはならないだろう。真の問題は、中央政府がこの国で果たす役割である。

トランプ主義は、ワシントンDCの無責任で利己的な政治エリートとみなす人々への、怒りから生まれた、一連のポピュリズムの中で最新のものである。この物語は独立前から始まった。アメリカ独立革命は、遠く離れた、利己的な、ロンドンのエリートに対する反乱であり、それは中央政府の権力に対する論争に引き継がれた。

批判者は、新しい憲法の創設は、この国を支配するエリートを創り、それゆえ、植民地を独立国家(州)にして勝ち取った主権を否定した、と論じた。それは直ちに、エリートに挑戦するポピュリズムを生んだ。連邦主義エリートを転覆しようとした、1800年、ジェファーソン・デモクラシー、その後、ジェファーソンのエリートを転覆した、1829年、ジャクソニアン・デモクラシーである。

どちらも、アメリカ独立革命を率いたエリートたちは、自治政府をもたらすという大衆への約束を破った、という信念によるものだった。解決策は、政治権力を大衆に戻すこと、フランチャイズや民主主義を拡大し(州の裁判権)、中央政府の権力を制限することだ。

ポピュリズムの波は、奴隷制と南北戦争の論争に勢いを奪われたが、19世紀後半に復活した。それは南部と中西部の農民が中心となった。彼らは、2大政党が彼らを無視し、銀行や鉄道会社が彼らを搾取している、と確信していた。政治システム全体を腐敗していると攻撃するジャクソンは彼らのヒーローであり、人民党を結成して要求を実現しようとした。

次の大きな波は1930年代の大不況で現れた。ルイジアナ州知事、上院議員になったヒューイ・ロングのような政治家たちが、富者から貧者への再分配を約束して権力を得た。

最後の波は1960年代、バリー・ゴールドウォーターが共和党の大統領候補になったときだ。連邦政府(「大きな政府」)はアメリカの諸問題のすべてに責任がある、と主張した。同じ反エリート主義は、反人種差別、反帝国、反冷戦、反ベトナム介入の左派にもあった。

ポピュリズムの主張は単純で、強力だった。状況の悪化は、中央政府とそれを動かすエリートのせいだった。連邦政府が標的になった。それは遠くにあって、官僚たちの顔は見えないからだ。

ポピュリスト運動はすべて、その内部矛盾で燃え尽きた。ポピュリストはエリートを憎むが、彼ら自身のエリートを権力に送り込むしか、支配権を握ることは不可能だった。政治的な前進を目指して運動は勢いを失い、あるいは、既存政治家たちに利用され、権力を失った。

トランプのポピュリズムはトランプから離反すべきだろう。そのポピュリズムの源は、文化的リベラリズム、経済停滞、不平等に対する怒りである。ポピュリズムは、後から見れば、不合理である。しかし、彼らが政府や大衆に関心を向けたのは、正当な嘆きであった。トランプによる制度や規範の破壊はニヒリズムに向かいつつある。

トランプを権力の座に就けた21世紀のポピュリズムが燃え尽きたのかどうか、まだわからない。


 企業の責任

PS Oct 9, 2020

The Public’s Business

DANI RODRIK

50年前、ミルトン・フリードマンはNYTに論説を発表し、「企業の社会的責任とは利潤を上げることだ」という主張が、フリードマンの原理として有名になった。1962年の著書で、「ビジネスが社会に対して負う責任とは、法的なルールの枠内で、利潤を追求することである」と書いた。

今年は、もう1つの考え方の20周年でもある。国連の「グローバル・コンパクト」は、フリードマンの原理に直接に対抗して、より広い社会的善の使者(エージェント)となるよう、ビジネスを説得した。156か国の11000社以上が署名し、人権、労働・環境基準、汚職反対を約束した。

この考え方を発展させる重要な役割を担ったジョン・ラギーは、企業の社会的アイデンティティーを育てることにも努めた。行動規範を育てることで、国民国家や国際機関が伝統的に形成していた規制の衰退により生じた空白を、ビジネスが埋めることになる。それは市場と社会の間でわれわれが必要とするバランスを調整する、重要な手段になる。

1年前、USビジネス・ラウンドテーブルもこの流れに加わった。企業の目的に関する記述を改正し、株主にとってだけでなく、従業員、顧客、下請け業者、コミュニティーのような「すべてのステークホルダー」に対する価値を生み出すことだ、とした。

しかし、企業の啓蒙された利己心が効果的かどうか、まだよくわからない。概ね修辞的なもので、広報でしかない、と言われる。逆に、幻想的な期待を高めて、逆効果(反発を買う)かもしれない。

ステークホルダー資本主義の支持者は、政府による規制の役割を否定しない。

しかし、もし企業が非常に強力になれば、規制そのものを自分で決めるのではないか? 企業が利潤を追求するときのゲームのルールは、民主的に決めるのではなく、資金の「支配的影響力」で決まる。政治過程は企業からの献金によって汚れている。

政治から献金を取り除く、という改革で、楚辺手が解決できるとは思えない。なぜなら、認識における捕獲は、資金による捕獲と同じように重要だから。規制や政策決定には、企業の直面する状況に関して詳しい情報が必要だ。その知識を生産し、広めるのは企業であるなら、環境規制、金融、消費者保護、反トラスト、通商政策に関して、政府は支配権を企業に譲ることになる。

このような状況では、政府が社会的に望ましいルールを決めることは困難だ。それゆえ、規制に関するガバナンスは新しいモードを必要とする。政府当局は企業と不断に協力することになる。それゆえ究極的には、この難問を解く唯一の解決策が、企業を民主化することなのだ。

従業員たちや地域社会に、企業のガバナンスに関する直接の発言権を与えるべきだ。企業が社会的善のための信頼できるパートナーになるのは、唯一、企業がその生活条件を変化させる人びとに、その声を聴く姿勢を企業が持つときだろう。


 地政学的衝突

FT October 13, 2020

Three strongmen and their battle for the Middle East

Gideon Rachman

プーチンVladimir Putin, エルドアンRecep Tayyip Erdogan、サルマンMohammed bin Salmanには多くの共通点がある。地域的な野心を持ったナショナリストであり、権力を集中し、国内の政治的反対派に対して冷酷な独裁者である。3人ともリスクを厭わず軍事力を行使する。

これら3人の強権指導者は個人的関係を重視する。マフィアのボスのように、今日の友は、明日の敵だ。その結果、彼らの利害対立は、中東から北アフリカ、コーカサスにまで紛争を生じている。苦しむのは市民だ。

プーチンとエルドアンとの関係は特にそうだ。シリア、リビア、そして今やナゴルノ・カラバフで戦争している。それでも両国は注意深く関係を維持している。トルコはNATOに憤慨してロシアから地対空ミサイルを購入し、トルコの2016年クーデタで、危うく政権を失いかけたエルドアンを真っ先に支持表明した。

それは両者が本能的に互いをよく理解しているからだ。ともに反米的で、中東におけるアメリカの役割が後退するとき、その真空地帯に影響力を拡大している。他方、サルマンはアメリカと非常に緊密な関係を保っている。

3人を結び付けるのは、国の内外において暴力を好んで行使することだ。クリミア併合、シリア内戦、ナワルニー殺害を試みたという疑いを持たれるプーチン。イエメン戦争、カタール封鎖、ジャーナリスト暗殺の疑いを持たれるサルマン。エルドアンは、シリアとリビアにトルコ軍を送り、東地中海ではギリシャとの戦争が起きるリスクを冒した。アルメニアと紛争に関わるアゼルバイジャンに武器を送り、国内の反対派にはますます激しい弾圧を加えている。

3者はゼロサムの闘いにあるが、プーチンはサルマンを助けることもあり、逆に、石油戦争では打撃を受けた。シリア内戦では敵対するロシアとトルコも、その最も重要な目標は、ロシアがアサド体制の維持であり、シリア内の飛び地としてクルド勢力が国家建設に向かうことを阻止するエルドアンと、両立可能である。ただし、そのバランスは慎重に維持されているが、容易に崩壊するものだ。モスクワは旧ソ連圏の紛争にトルコが介入することを座視できない。

3人の指導者は、外国における軍事介入と、国内の安定性との、微妙なバランスに立っている。かつてプーチンのクリミア併合に際して、ロシア人たちは、テレビと冷蔵庫の選択だ、と冗談を言った。冷蔵庫は空っぽでも、テレビには軍事的な勝利のニュースがいっぱいだ。クリミア併合で高まった支持率も、経済の低迷でナショナリストの熱狂は冷め、冷蔵庫の不満が高まっている。エルドアンも、サルマンもそうだ。

国内経済が悪化する中で、強さを示すために国外へ目を向ける。3者が衝突する危険は高い。


 COVID-19に対処する

PS Oct 12, 2020

The Great Reallocation

AGUSTÍN CARSTENS

危機の最初の数か月は、流動性逼迫の問題であった。政府は攻撃的な金融緩和と財政刺激策で対応した。しかし今、パンデミックが続く中で、危機は新しい局面に入った。企業の支払不能危機が迫っている。政府は、どのようにして企業を支援しながら、それを生き残れない企業ではないように選別できるのか?

支援策がなければ、大規模な倒産の波が起きるだろう。問題は、パンデミック後の経済の様子が全く異なったものになる、ということだ。

消費者の行動、支出パターンは、パンデミック前の姿に完全には戻らないだろう。リモート、eコマースなど、デジタル化は加速している。ソーシャル・ディスタンシングも続けられる。

かつて反映していたビジネスが衰退する。政府がそのようなビジネスを支援すれば、その影響は金融部門におよび、より大きな経済を委縮させて、雇用が失われる。どの企業を支援するべきか、選択するのは非常にむつかしい。企業の長期的な活力を観るのは、融資に関わる経験を積んだ銀行の仕事である。

資源の再配置は危機の次の局面で進むから、政府は財政・金融政策ではなく、構造改革を目標にしなければならない。それは二重の過程だ。幅広い財政支援策は次第に縮小していく。同時に、激しいダメージを受けた部門から資源を解放し、パンデミック後の繁栄する部門に異動するのを助ける。

破産処理や労働者保護制度は、企業の再編に合わせて調整される。将来に向けた産業政策が明確に示される。インフラ整備、気候変動の抑制、医療サービスの充実に、多くの投資が行われる。技術革新の利益が広く享受されるように、所有権や金融システムを含めて、規制と法律が調整される。

民間と政府のステークホルダー。債権者、債務者、中央銀行、財政当局、裁判所、社会保障、労働監督局、地方政府など。政府は保護主義の要求を抑え、国債卿y等を推進する。

大幅な積極的構造改革を含む経済支援策が、より早く、力強い、回復をもたらす。


 ブレグジットランド

The Guardian, Sun 11 Oct 2020

We'll move on from the EU vote but we are now stuck in our tribe. Welcome to Brexitland…

Robert Ford and Maria Sobolewska

終わりは見えたようだ。国民投票から4年半で、イギリスのEU離脱は終着点に達した。

離脱派と残留派の政治的「部族」が、何でも悪意に満ちた論争をする、なんてことはもうないだろう。漁業権や関税に関する正常な交渉に代わる。パンとバターの問題こそ、われわれにとって重要だ。

しかし、正式なブレグジット交渉は終わっても、ブレグジットランドBrexitlandは永久に続く。

ブレグジットは、何十年もかかって形成されたアイデンティティーと価値に関する有権者の中の根深い分断を活性化した。それは消えることがない。イギリスは、大規模な移民流入、エスニックな多様性の増大、高等教育の拡大によって変貌した。EU離脱に関する国民投票は、それらに新しい政治的分断、離脱派と残留派が加わって、別々のアイデンティティーを共有した。

ブレグジットの部族主義はあらゆる問題に浸透していった。高等教育も、環境保護も、COVID-19の対策でも。彼らの見解は分裂を深め、合意形成を妨げる。有権者の外観や優先順位に、根本的な違いがある。離脱派は、伝統的社会のアイデンティティーを愛し、急激な社会変化に不安を感じる。残留派は、近年の開放性や移動性の増大を歓迎し、それを加速しようとする。

しかし、その違いは程度の差である。受け入れる変化の速さについて、違いがある。離脱派の多くは、偏見や差別を社会病理とみなし、批判するが、人種差別の意味を限定的に理解する。残留派の多くは、反人種差別主義の大義を確信しており、彼らがそれを拡大して解釈することに反対する意見を理解できない。

ブレグジットランドの対立の核心はここにある。急激な社会変化によるアイデンティティー問題には、あいまいな形で協働する感受性と相手への敬意を要する。しかし、「われわれと彼ら」という分断の政治がそれを破壊する。

党派的人びとは、自分たちの集団に最善のもの、敵対者には最悪のものを観る。党派的なステレオタイプ思考を、われわれは慢性的に利用している。複雑な世界を理解するために便利だから。しかし、その分断効果は強烈で、しばしば異なる視点から物事を観ることができなくなる。

政治的な反対派を邪悪な存在とみなすこと(Demonising)は、短期的な優位をもたらす。しかし、長期的には党派的ステレオタイプが有権者の心を支配する。


 垂直農場の革新

FT October 11, 2020

Strawberries tell the story of an era of disruption

Rana Foroohar

パラダイムの転換はゆっくり始まり、その後、一気に進む。COVID-19が示したように、気候変動もそうだ。

気候変動と、国際移民労働、脱グローバリゼーションなど、他のかく乱とが結びつく分野として、注目すべきは垂直農場vertical farmingである。巨大な多重の層に養分を含んだ水と光が正確に与えられ、作物が成長する。

遺伝子操作や新しい農地を必要とせず、フルーツや野菜を生産できる。伝統的な農法では多くの作物が、気候変動の進む中で、年中、限られた土地でしか生産できない。

アメリカの大火災では作物が焼失し、多くの農業労働者が危険にさらされた。その1つがカリフォルニアに依拠する世界最大のイチゴ生産者Driscoll’sである。わずかな温度の変化も作物を全滅させる。Driscoll’sはサンフランシスコのスタートアップPlentyと垂直農場のベンチャー企業を起こした。

こうした農場は、ハイテクの集合であり、給水システムやデータ分析ソフトに巨額の投資が要る。しかし、カリフォルニアの農場に同じ供給能力を得るより安い。垂直農場の意義はそれだけではない。収穫や配送に必要な化石燃料が削減できる。気候変動によるリスクを減らし、農薬の流出、水の浪費をなくす。消費する水は伝統農法の5%だ。

中国のスマート・シティなど新興市場で垂直農場は広がっている。長距離のサプライチェーンがなくせる。地政学的対立や移民労働者による政治危機からも解放される。工業型の低賃金外国人労働者に依存する農業は、債務の増大や予算赤字の時期に、ポピュリストの反発を刺激する。

垂直農場は、環境基準を満たしながら、新興市場諸国の増大する都市人口が、栄養価の高い農産物を求める需要を満たす。Driscoll’sの最大のイチゴ市場は、香港とアラブ世界である。

水と動力があれば、垂直農場はどこにでも行く。しかも富と技術革新をもたらす乗数効果がある。農場建設のためのプラスチック成型とLEDが大量に発明されている。労働者の3分の1は高賃金のエンジニアであり、彼らの需要が雇用を増やす。

Intelが半導体を創るように、われわれは農産物を創る。」


 スコットランド独立と通貨

PS Oct 13, 2020

Scotland after Sterling

BARRY EICHENGREEN

スコットランドが独立するかもしれない。

2014年の住民投票では45%しか支持しなかった。しかし、ブレグジットには60%が反対し、今や、スコットランドはUKEUの選択に直面している。

もしUKEUの交渉をひどいと思うなら、UKとスコットランドの離脱交渉はどうなるのか? 北海油田の収入は人口比で分けるか、面積で分けるのか? UK債務の分担はGDP比か、人口比にするのか?

通貨はどうなる? 多くの人は、スコットランド独立で独自通貨を、自国の中央銀行が管理する、と考えている。しかし、独立でポンドを失う場合、独立を支持する人は減るかもしれない。

10年前、独立派は、通貨同盟を維持する、と主張した。独立後もイングランド銀行を最後の貸し手として維持し、通貨の信用を得られる。しかし、直ちにUK政府が否定した。しかも、EUを離脱したことで、EU再加盟を願うスコットランドにとって、この可能性はなくなった。

新通貨はポンドに為替レートを固定し、カレンシー・ボードを採る、という考えもある。そして安定した価値を維持してから、EU加盟とユーロに移行する。

だがその場合、スコットランドは自国の金利に何の発言権も持たない。最後の貸し手もない。ユーロ圏に参加することも確実ではない。ポンドに固定して、ユーロとの安定性を維持できるのか。

したがって、独自通貨を持てば、スコットランドは独立した中央銀行とインフレ目標を採用するだろう。それも、インフレ目標が達成できず、変化する政治情勢の中では、人びとや投資家の信用を得られない。

それでも、スウェーデンの経験が示すように、財政の健全さを前提に、この選択肢が最もましである。ただし、スコットランドの財政赤字は巨大で、スウェーデンには遠い。一時的にスウェーデン型に頼り、最終的にはユーロ圏に参加する。

そもそも最初の1歩、新スコットランド通貨の導入は容易でない。ユーロの導入には2年の歳月をかけて準備した。

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The Economist September 26th 2020

Why governments get it wrong

Covid-19 and poverty: Failing the poor

The Supreme Court: After RBG

The corporate undead: Zombies at the gates

The US Navy: AI, Captain

Argentina and Uruguay: A mini-war across the River Plate

French diplomacy: Trying to square a circle

The Labour Party: Reflections on conservatism

Covid-19 and poor countries: From plague to penury

Ailing companies: The corporate undead

Companies in Japan: The return of the living dead?

Buttonwood: The bright side

Free exchange: The mop that never stops

(コメント) COVID-19による危機は、緊急避難的な金融・財政支援から、長期の回復策、構造変化、債務累積・危機に視点が変わりました。世界金融危機やユーロ危機の反省、何より、日本のバブル破裂後、債務処理を遅らせたこと(欧米エコノミストたちが「ゾンビ」とよぶ)に焦点が絞られ、日本政府・財務省・日銀・エコノミストたちがそれをどのように総括したのか、問われています。

アメリカ最高裁の党派的使命と政治イデオロギーによる支配(もはや神政政治)を解決するため、最高裁の判事を終身ではなく任期制にせよ、という提案は優れています。

ほかにも、太平洋の海軍力で中国に抜かれたアメリカがAIによる無人の戦艦(ドローンのように)を増やす、フランスのマクロン外交、労働党の保守化戦略、コロナウイルスによる貧困・債務問題。

なぜ技術革新が加速すると株価上昇と経済停滞が併存するのか、なぜ中国は無限にバブル崩壊を延期できるのか、という頭のストレッチも興味深いです。

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IPEの想像力 10/19/20

貧困をなくすことができないか。

大都市のホームレス、孤独死、地方・農村の貧困をなくしてほしい。

日本の絶対的貧困をなくしてほしい。社会的な差別や隔離、機会の格差をなくしてほしい。

さまざまな不幸、不運、たとえ個人的な失敗に対しても、やり直せる仕組みを増やしてほしい。

病気になって、仕事をなくして、詐欺や泥棒の被害にあって、歳を取って、孤独な、惨めな暮らしに耐えるしかない暗闇を、楽しみや希望で照らしてほしい。

親の暴力や、教室でのいじめにあう子供を助けてほしい。

女性であるから、日本人でないから、というだけで不利な扱いを続ける企業や組織、社会を正してほしい。

強姦、性的暴力をなくせるように、暴力を受けた者が苦しむことを和らげ、回復を助けるように、支援できる機関やスタッフを育ててほしい。

難民キャンプで長く暮らす家族や子どもたちが、医療や教育を受けることで、その能力や意志を高め、新しい国に移住する機会を得られるような国際的仕組みを作ってほしい。

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「路上生活者を支え続けて」朝日新聞(大阪)20201018日で、NPOHomedoor」理事長、川口加奈さん(29)の偉業を知りました。

・・・ホームレスになる、って何だ? 彼女にはわからなかった。

「選択肢なんてなかったんや。ホームレスになる以外にな。」https://www.homedoor.org/about/

高卒後、派遣社員として工場で働き、給料が安いと訴えると契約更新されなかった(くび)。ぎりぎりの生活で、貯金もなく、ネットカフェを転々とする。

電話がない、住所がない、貯金がない。面接に応募しても、仕事はもらえなかった。これを貧困(ホームレス)のトライアングルとよぶそうです。

もう野宿しか選択肢はなかった。

「路上は硬いし、すごく冷たい。」

こうした「おっちゃん」たちに、川口さんは声をかけ、弁当を届けたそうです。

14歳で問題を知って、それを解決する責任があると思い、19歳で起業した。

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1018日の朝日新聞には、・・・19歳ひとり親「ご飯ない」と検索、というトップ記事がある。

大阪。男の子を出産したのは今年3月。

紙おむつも高くて買えない。毎日のおかずは具のない味噌汁。体重が57キロから40キロに落ちた。「ひとり親 ご飯ない」と検索する。

日本国内のひとり親は推定142万世帯。

2016年カンヌ映画祭の最高賞を得た映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」の1シーンが紹介されている。https://longride.jp/danielblake/

イギリス。2人の子どもを育てるシングルマザーが、慈善団体の無料の食糧をもらいに行く。

しかし母親は、空腹に耐えきれず、その場で缶詰を開けて手づかみで食べ始める。

実話による、という。

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コロナの先の社会を、いまより良い社会にしたい。そういう特集記事です。

それはリベラルな社会的理想というものでしょう。

しかし、何でも法律を作って、財政的な負担で支給すればよい、というだけでは、逆に、さまざまな反発、反動、政治的な介入を刺激したと思います。

アメリカでも、イギリスでも、規制緩和・市場万能のネオリベラリズムに対する反発だけでなく、リベラルな理想を食い物にする政治への反発、怒りがある。そう思います。

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オーストラリア、シドニーの「無料のスーパー」。

生活に困っている人に、無料で食料品を提供する。パン、野菜、果物など、欲しいものをカゴ1つ分までお金を払わず持って帰れる。

「商品」は業者の寄付。スタッフはボランティア。

5~11歳の4人の子を持つシングルマザー。掛け持ちしていたパートタイムをコロナ禍で失った。

「コーヒーや紅茶を飲むのはやめた。子供たちは牛乳を欲しがるけど、今日は手に入ったからよかった。」

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知ったからには、解決する責任がある。

ラジャンの「第3の極」や、ロドリックの「協調型ガバナンス」「企業の民主化」を紹介しました。

今の仕事を終えたら、違う生き方をして、自分の答をみつけたいと思います。

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