IPEの果樹園2020
今週のReview
10/19-24
*****************************
Amazonを分割せよ ・・・トランプの戦略 ・・・企業の責任 ・・・地政学的衝突 ・・・ナゴルノ・カラバフ問題 ・・・COVID-19に対処する ・・・ブレグジットランド ・・・垂直農場の革新 ・・・経済思想は変わる ・・・新しい難民協定 ・・・スコットランド独立と通貨
[長いReview]
******************************
主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL International, VOX: VoxEU.orgそして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● Amazonを分割せよ
NYT Oct. 8, 2020
Don’t Let Amazon Get Any Bigger
By Stacy Mitchell
われわれは、Amazonが創意工夫に満ちているからだ、と信用しがちである。ジェフ・ベゾスは、アメリカの消費者に届ける物流を、UPSやFedExに対抗して構築した。AmazonのAlexaは、音声によるデバイスやウェブアクセスにおける支配的なオペレーティング・システムである。
しかし、今週、下院司法委員会は長い報告書を出した。それによれば、Amazonは他の企業が市場に到達するための隘路となっている。Amazonが、他企業に対するその強力な指令的立場を利用し、配送システムを支配し、ビジネスから排除している。
民間の権力集中が危険な状態にならないよう阻止することは、民主主義社会に必要なチェック・アンド・バランス機能であり、議会の責任である。委員会はそのためのいくつかの提言を行っている。なかでも、Amazonを分割し、他の企業と「構造的に分離する」という示唆は重要だ。
ベゾスは、ある分野の優位を利用して、急速に他の分野にも進出する。特にそのデータ集積やAlexaの普及は、製品の優劣に関係なく、競争する相手企業に不利をもたらし、Amazonの製品が優位を与える。それはアメリカの活力を奪う脅威になる。投資家たちは、Amazonの周囲に広がる新興企業の「デス・ゾーン」を語っている。そこでは競争が失われ、新規参入企業は敗退する運命にあり、投資を集められない。
「機能的分離」は過去にも行われた。20世紀の初め、議会は鉄道業を、財の生産と流通から分離した。また議会は、情報通信業と銀行業にも、同様のアプローチを取った。
しかし、公平で開かれた市場を再生するには、それだけでは不十分だ。われわれは支配的なプラットフォーマーが、他企業を差別することがないよう、合意的なアクセスを提供するルールを必要としている。
ジェフ・ベゾスは、かつて創意に富むスタートアップ企業であったが、今では侵攻不能となった帝国の支配者だ。
FT October 14, 2020
Weakened democracy is another harm caused by Big Tech
Marietje Schaake
FT October 15, 2020
With Amazon’s power comes great responsibilities
● トランプの戦略
NYT Oct. 8, 2020
Trump Is Killing the Economy Out of Spite
By Paul Krugman
トランプは執念深い人物だ。
トランプは、もし敗北した場合、選挙結果を受け入れないだろう。そのとき、どのような混乱、棒慮億事件が起きるのか、だれにもわからない。
その問題とは別に、敗北してもトランプは、なお、2カ月半もホワイトハウスにいる。彼はこの時間を、どれほど破壊的に、彼の再選を拒んだアメリカに対する復讐に費やすのだろうか。
火曜日、われわれはその前兆を観たのかもしれない。トランプはまだ敗北していないが、多数のアメリカ国民が必要としている経済回復策の財政支援パッケージに関する交渉を、突然、打ち切った。
もし連邦政府が、失業者への寛容な給付、中小企業が継続するための援助をしなければ、何百万もの家族が家賃を支払えなくなり、多数の事業が閉鎖されるだろう。州政府、地方政府は財政赤字を許されておらず、パンデミックと不況で財源が枯渇している。すでに教育現場で90万人が職を失った。
もちろん、財政支援がなければ成長は減速し、あるいは、不況に落ち込むというマクロ経済的な理由がある。この警告は、「大きな政府」を支持する進歩派民主党員が主張したことではなく、ウォール街のアナリストや、連銀のパウエル議長が発したものだ。
問題は、なぜトランプは投票日の1カ月前に取引をやめると選択したのかだ。もちろん、財政刺激策は、11月3日に景気を好転させるには間に合わない。しかしアメリカ人を苦境から救い出す姿勢を示すことは、明らかに、トランプの政治的利益になる。
私が知る限り、だれも納得いく説明を示せない。そこに観るのは、執念深さだけである。彼を不当に扱った、とみなす人々、アメリカ人すべてに対して、激しく憤慨しているのだろうか。
PS Oct 9, 2020
Trump’s Helter Skelter
ALEX HINTON
暴動、戒厳令、内戦という話が、奇妙なことだが、もはやそれほど珍しくなくなっている。ミシガン州で、ウィットマー知事を誘拐し、州政府の転覆を煽動する計画を立てていた容疑で、民間武装集団が逮捕された。それはアメリカの極右政治が準備していることを示唆するものだ。
来月の大統領選挙が危機に向けて悪化する、という世紀末の警告が急速に増えている。アメリカが最悪の事態に備えるべき6つの理由がある。
第1に、政治、社会、経済状況が著しく不安定化している。それは、過去数十年間の破滅的事態(人道に反する犯罪、戦争犯罪、エスニック・クレンジング、ジェノサイド)のリスクを評価したモデルが示している。
国連のモデルでは、アメリカは多くのチェック・ボックスを満たす。パンデミック、不況、高失業、大規模抗議、自然災害、政治的分断、など。1つか2つでも警戒すべきだが、アメリカは半分以上に当てはまる。
第2に、アメリカには、大規模な暴力、人権弾圧の歴史がある。
第3に、政治的な敵視と暴力を正当化する、特に極右からの暴力がある上に、トランプは有色人種を容赦なく非難している。
第4に、憲法が保障するチェック・アンド・バランスをトランプは破壊し、騒乱を予防できない。
第5に、妥協を拒み、情勢を悪化させる触媒がある。選挙結果に関する争い、武装集団の行進、抗議デモ。
第6に、虐殺をもたらすような導火線に満ちた政治情勢。
51年前、連続大量殺人犯、チャールズ・マンソンは「ヘルター・スケルター」(大混乱)を呼びかけたが、今や、アメリカ大統領が奨励している。
NYT Oct. 9, 2020
Talk Radio Is Turning Millions of Americans Into Conservatives
By Paul Matzko
FT October 11, 2020
Donald Trump must not be how American democracy dies
Madeleine Albright
私は難民としてニューヨークに着いた。11歳だった。すぐに、誇りあるアメリカ市民になった。後に外交官として、この国の民主的諸制度と、尊敬すべき選挙過程を、しばしば目指すべきモデルとして示した。外国の友人たちもそうだ。
しかし、銀の匙をくわえて、口から出まかせを言う大統領のせいで、アメリカの民主主義は目に見えて崩壊しつつある。
今年の選挙はコロナウイルスの感染リスクがあるために、混乱と膨大な数の不在者投票があると予想されている。さらに、内外から選挙への干渉があるだろう。虚偽の情報を流して、国民が民主的な制度に寄せる信頼を破壊しようとする。
いかなる選挙も完全無欠ではない。投票用紙をめぐる争いはあるものだ。しかし今年は、トランプ大統領自身が、小さな逸脱でも陰謀に結びつけるだろう。急進的な左派にも同じような考えがある。もし投票結果が最高裁に持ち込まれたら、バイデン支持者はその判定を支持できないだろう。
3つの事実を覚えておくべきだ。第1に、投票手続きは、多年のわたり党派に関わらない専門家が監督した。第2に、小さな間違いは避けられないが、修復できるし、投票過程の全体を非難してはならない。第3に、それでもソーシャルメディアや新聞の党派色は問題を生じる。火災が起きるかどうかにかかわらず、煙が充満するだろう。事態の推移は、両党の指導者、法律、学会、ジャーナリズムの指導者たちの姿勢にかかっている。
The Guardian, Sun 11 Oct 2020
Is Donald Trump a bully or bold protector? That depends on whom you ask
Arlie Hochschild
NYT Oct. 13, 2020
This Year From Hell
By Susan E. Rice
私たちは疲れ果て、挫折を感じ、悪い予感に苦しむ。
しかし、2021年に向けて希望を持つべきだ。変化は近い。
何度も深呼吸して、私は想像する。
未来には、能力のある、感情を分かち合う大統領が指導力を発揮するだろう。科学を信じて、アメリカ国民を守る政策を実行する。COVID-19は抑えられ、本当に効果のあるワクチンが開発される。それは、無料で、公平に、接種される。議会は迅速に救済策を合意し、アメリカの普通の市民たちを助け、公立学校など、地方政府のサービスを支援し、中小企業を救済する。
息を吐き出すと、私は健康な眠りに就く。大統領は敵を個人攻撃するツイートなど書かない。ルールや規範を尊重する。法律は彼にも同じように適用されると理解している。私は、アメリカ国民すべてに奉仕する大統領を求めている。自分のポケットを満たすために納税額を減らし、自分の権力を保持するために連邦政府を腐敗させたりすることはない。
バラク・オバマは、ホワイトハウスの大統領執務室の床に、大きなカーペットを敷いた。その淵には言葉が書いてあった。「道徳世界の弧は長いが、それは正義の方に曲がっている。」 それは、しばしば、マーチン・ルーサー・キング牧師が述べたと言われる。歴史は直線ではない、という意味だ。
進歩は最後には支配するが、それまでに何度も厳しい後退を味わう。われわれの夢は実現しない。
しかし、経験から言えるのは、努力することだ。1人ではできないことも、2人ならできる。進歩は自動的に起きるのではない。われわれが起こすのだ。
2021年にアメリカを改善させよう。
PS Oct 14, 2020
What the US Election Is Really About
ERIC POSNER
来月のアメリカの選挙は、政策に関するものでも、ドナルド・トランプ大統領に関するものでもない。アメリカの憲法システムを問うものだ。たとえトランプが再選されても、独裁者にはならないだろう。真の問題は、中央政府がこの国で果たす役割である。
トランプ主義は、ワシントンDCの無責任で利己的な政治エリートとみなす人々への、怒りから生まれた、一連のポピュリズムの中で最新のものである。この物語は独立前から始まった。アメリカ独立革命は、遠く離れた、利己的な、ロンドンのエリートに対する反乱であり、それは中央政府の権力に対する論争に引き継がれた。
批判者は、新しい憲法の創設は、この国を支配するエリートを創り、それゆえ、植民地を独立国家(州)にして勝ち取った主権を否定した、と論じた。それは直ちに、エリートに挑戦するポピュリズムを生んだ。連邦主義エリートを転覆しようとした、1800年、ジェファーソン・デモクラシー、その後、ジェファーソンのエリートを転覆した、1829年、ジャクソニアン・デモクラシーである。
どちらも、アメリカ独立革命を率いたエリートたちは、自治政府をもたらすという大衆への約束を破った、という信念によるものだった。解決策は、政治権力を大衆に戻すこと、フランチャイズや民主主義を拡大し(州の裁判権)、中央政府の権力を制限することだ。
ポピュリズムの波は、奴隷制と南北戦争の論争に勢いを奪われたが、19世紀後半に復活した。それは南部と中西部の農民が中心となった。彼らは、2大政党が彼らを無視し、銀行や鉄道会社が彼らを搾取している、と確信していた。政治システム全体を腐敗していると攻撃するジャクソンは彼らのヒーローであり、人民党を結成して要求を実現しようとした。
次の大きな波は1930年代の大不況で現れた。ルイジアナ州知事、上院議員になったヒューイ・ロングのような政治家たちが、富者から貧者への再分配を約束して権力を得た。
最後の波は1960年代、バリー・ゴールドウォーターが共和党の大統領候補になったときだ。連邦政府(「大きな政府」)はアメリカの諸問題のすべてに責任がある、と主張した。同じ反エリート主義は、反人種差別、反帝国、反冷戦、反ベトナム介入の左派にもあった。
ポピュリズムの主張は単純で、強力だった。状況の悪化は、中央政府とそれを動かすエリートのせいだった。連邦政府が標的になった。それは遠くにあって、官僚たちの顔は見えないからだ。
ポピュリスト運動はすべて、その内部矛盾で燃え尽きた。ポピュリストはエリートを憎むが、彼ら自身のエリートを権力に送り込むしか、支配権を握ることは不可能だった。政治的な前進を目指して運動は勢いを失い、あるいは、既存政治家たちに利用され、権力を失った。
トランプのポピュリズムはトランプから離反すべきだろう。そのポピュリズムの源は、文化的リベラリズム、経済停滞、不平等に対する怒りである。ポピュリズムは、後から見れば、不合理である。しかし、彼らが政府や大衆に関心を向けたのは、正当な嘆きであった。トランプによる制度や規範の破壊はニヒリズムに向かいつつある。
トランプを権力の座に就けた21世紀のポピュリズムが燃え尽きたのかどうか、まだわからない。
PS Oct 14, 2020
Policing Truth in the Trump Era
ROBERT SKIDELSKY
ソーシャルメディアの上で起きる論争が支配的な時代に生きる。間違った情報を流すことで利益を上げている企業が、われわれの情報インフラを支えている。企業は、こうして集めた情報を広告に利用し、売っている。
「真実とは何か?」 という問題に答えが見いだせない。それはその人の観方次第だ。3つの要因、人間心理、メッセージ拡散の技術、ポストモダニズムの文化、がその意味を変えた。
それは民主的な議論に必要な共通の基礎となり、陰謀論が人びとを支配する。プラットフォーマーはフェイク情報が政治を歪めることを知っているが、真実でなくても、影響力のある話を拡散することは利益になる。
情報の確認せよ、という注意喚起の追加は、見せかけの是正策でしかないだろう。
NYT Oct. 14, 2020
Biden Is Not Out of the Woods
By Thomas B. Edsall
FT October 15, 2020
Even if Trump loses, Trumpism will live on
Edward Luce
トランプの敗北、トランプ主義の消滅を予想して、安堵するのは間違いだ。まだ、トランプの勝利は起こりうる。
たとえ彼が負けても、あまりにも激しく分断されたアメリカで、彼らが一掃されることはないだろう。すでに共和党はトランプの影響を受けて変質した。トランプ主義の強硬派が多く当選している。最高裁の変化は長く残る。アメリカのキリスト教右派は、その目的のためには手段を択ばなくなった。
彼らは、アメリカがアメリカでなくなることを恐れている。その理由は、ある意味で、エスニックの多様性が増したことだ。
アメリカの情報文化は、2016年以上に、今の方が劣悪である。大量のフェイク、もしくはフェイクに近い情報を受けて、アメリカ人はソーシャルメディアを消費する。Facebookはこうした情報操作の手段としてますます強大になった。QAnonのような悪質な陰謀論が何千万人にも届いていることなど、数年前には想像できなかった。
大衆文化にデジタル技術がおよぼす破壊的影響は、統治をますます困難にしている。この問題を解決しなければ、バイデンはコロナウイルス対策も実施できない。
トランプ主義を生んだ条件は、今も変わっていない。政治の党による分裂状態、ブルーカラー労働者の絶望死、中国の脅威、中産階級に不安定さが増している。
FT October 16, 2020
Can Facebook and Twitter put the brakes on the flood of disinformation?
Richard Waters
● イギリス政府
FP OCTOBER 8, 2020
Why We Still Need Democracy
BY MALKA OLDER
The Guardian, Thu 15 Oct 2020
This pandemic has been the making of England's elected mayors
Simon Jenkins
ボリス・ジョンソン首相は、市長たちを無視してきた。しかし、今では違う。
「北部の指導者」Andy Burnham, リバプールのSteve Rotheram, バーミンガムのAndy Street, シェフィールドの Dan Jarvis、ロンドンの Sadiq Khan。彼らの発言が新聞紙面の見出しを占めている。
党の選択する候補ではなく、直接選挙によって選ばれることが重要になったからだ。ロックダウンで100%所得を失う人々が、その政策決定に強い説明責任を求めるのは当然だ。ロックダウンが人々からの支持と説得力を要求する。
FT October 16, 2020
How hate became a driving force in elections
Jemima Kelly
● 企業の責任
PS Oct 9, 2020
The Public’s Business
DANI RODRIK
50年前、ミルトン・フリードマンはNYTに論説を発表し、「企業の社会的責任とは利潤を上げることだ」という主張が、フリードマンの原理として有名になった。1962年の著書で、「ビジネスが社会に対して負う責任とは、法的なルールの枠内で、利潤を追求することである」と書いた。
今年は、もう1つの考え方の20周年でもある。国連の「グローバル・コンパクト」は、フリードマンの原理に直接に対抗して、より広い社会的善の使者(エージェント)となるよう、ビジネスを説得した。156か国の1万1000社以上が署名し、人権、労働・環境基準、汚職反対を約束した。
この考え方を発展させる重要な役割を担ったジョン・ラギーは、企業の社会的アイデンティティーを育てることにも努めた。行動規範を育てることで、国民国家や国際機関が伝統的に形成していた規制の衰退により生じた空白を、ビジネスが埋めることになる。それは市場と社会の間でわれわれが必要とするバランスを調整する、重要な手段になる。
1年前、USビジネス・ラウンドテーブルもこの流れに加わった。企業の目的に関する記述を改正し、株主にとってだけでなく、従業員、顧客、下請け業者、コミュニティーのような「すべてのステークホルダー」に対する価値を生み出すことだ、とした。
しかし、企業の啓蒙された利己心が効果的かどうか、まだよくわからない。概ね修辞的なもので、広報でしかない、と言われる。逆に、幻想的な期待を高めて、逆効果(反発を買う)かもしれない。
ステークホルダー資本主義の支持者は、政府による規制の役割を否定しない。
しかし、もし企業が非常に強力になれば、規制そのものを自分で決めるのではないか? 企業が利潤を追求するときのゲームのルールは、民主的に決めるのではなく、資金の「支配的影響力」で決まる。政治過程は企業からの献金によって汚れている。
政治から献金を取り除く、という改革で、楚辺手が解決できるとは思えない。なぜなら、認識における捕獲は、資金による捕獲と同じように重要だから。規制や政策決定には、企業の直面する状況に関して詳しい情報が必要だ。その知識を生産し、広めるのは企業であるなら、環境規制、金融、消費者保護、反トラスト、通商政策に関して、政府は支配権を企業に譲ることになる。
このような状況では、政府が社会的に望ましいルールを決めることは困難だ。それゆえ、規制に関するガバナンスは新しいモードを必要とする。政府当局は企業と不断に協力することになる。それゆえ究極的には、この難問を解く唯一の解決策が、企業を民主化することなのだ。
従業員たちや地域社会に、企業のガバナンスに関する直接の発言権を与えるべきだ。企業が社会的善のための信頼できるパートナーになるのは、唯一、企業がその生活条件を変化させる人びとに、その声を聴く姿勢を企業が持つときだろう。
PS Oct 12, 2020
Post-COVID Capitalism
KLAUS SCHWAB
ネオリベラリズムの諸前提を疑うべきだ。新しいパラダイムが必要である。経済学、政治、社会の「グレート・リセット」である。
自由市場原理主義が労働者の権利や経済的保障を掘り崩した。規制緩和による底辺への競争、税の破滅的な引き下げ競争、強大なグローバル独占企業が誕生した。
「資本主義」を見直すべきだ。「資本」は、金融、環境、社会、人間、多くの相互作用によって成り立っている。企業の役割を見直さねばならない。社会の多様性が必要だ。
● 発行株式の減少
PS Oct 9, 2020
The Coming Equity Shortage
RICARDO HAUSMANN
● ビークル・カレンシー
VOX 09 October 2020
Patterns in invoicing currency in global trade
Emine Boz, Camila Casas, Georgios Georgiadis, Gita Gopinath, Helena Le Mezo , Arnaud Mehl, Tra Nguyen
ビークル・カレンシー(為替媒介通貨)の使用が拡大して、アメリカの世界貿易に占める割合が低下しても、ドルの利用は増えている。ユーロも、主にドルを侵食して、その利用が拡大している。
VOX 12 October 2020
The international dimension of a central bank digital currency
Massimo Minesso Ferrari, Arnaud Mehl, Livio Stracca
● 地政学的衝突
FP OCTOBER 9, 2020
COVID-19 Might Not Change the World
BY JOSEPH S. NYE JR.
COVID-19のパンデミックは、大きな損害をもたらしているが、地政学のバランスを変えるものではないだろう。
第1の神話は、パンデミックは歴史的な転換点だ、というものだ。
第2の神話は、第2次世界大戦後のグローバリゼーションの時代が終わった、というものだ。
第3の神話は、リベラルな民主主義が後退し、厳格な対処法を取ることができる権威主義的な政治モデルが興隆する、というものだ。
第4の神話は、中国がソフト・パワーにおいてもアメリカに対する長期的優位を得た、というものだ。
これらの神話は正しくない。しかし、神話を否定することが、地政学的なバランスの永続化を支持するわけではない。
FP OCTOBER 9, 2020
China’s Belt and Road Initiative Is a Mess, Not a Master Plan
BY LEE JONES
新しい冷戦の中で、中国は「一帯一路」戦略Belt and Road Initiative (BRI)を追求する。
しかし、BRIは、債務を利用する征服の拡大戦略ではない。習近平の「独創的アイデア」を称賛することで生じた、政治的企画でしかない。中国の国有企業や銀行は、十分に計画を立てていない。現地の政府や業者との癒着、汚職は激しい反発も、利益関係者の支持も生んでいる。しかし、中国がそれを計画的に利用しているわけではない。
西側は、むしろ、これを敵視するより、奨励する方がよい。中国の失敗が拡大するだろう。
しかし、南の途上諸国が開発を進めるには、もっとより選択肢がある。西側はBRIに代わるプロジェクト融資を行うのだ。そして、南の側のプロジェクト評価や監視能力を高める。また、市民社会を支援して、情報の透明性や計画への市民参加、自国内での調達や雇用を求め、監視する。
もっと言えば、西側は中国を適するより、協力すれば良い。アジア開発銀行がそうだ。BRIは融資の改善に向かうだろう。
The Guardian, Sun 11 Oct 2020
China’s reckless ambition could be the biggest threat to a Biden victory
Simon Tisdall
PS Oct 12, 2020
The Logic of Sino-Western Détente
JIM O'NEILL
FT October 13, 2020
Three strongmen and their battle for the Middle East
Gideon Rachman
プーチンVladimir Putin, エルドアンRecep Tayyip Erdogan、サルマンMohammed bin Salmanには多くの共通点がある。地域的な野心を持ったナショナリストであり、権力を集中し、国内の政治的反対派に対して冷酷な独裁者である。3人ともリスクを厭わず軍事力を行使する。
これら3人の強権指導者は個人的関係を重視する。マフィアのボスのように、今日の友は、明日の敵だ。その結果、彼らの利害対立は、中東から北アフリカ、コーカサスにまで紛争を生じている。苦しむのは市民だ。
プーチンとエルドアンとの関係は特にそうだ。シリア、リビア、そして今やナゴルノ・カラバフで戦争している。それでも両国は注意深く関係を維持している。トルコはNATOに憤慨してロシアから地対空ミサイルを購入し、トルコの2016年クーデタで、危うく政権を失いかけたエルドアンを真っ先に支持表明した。
それは両者が本能的に互いをよく理解しているからだ。ともに反米的で、中東におけるアメリカの役割が後退するとき、その真空地帯に影響力を拡大している。他方、サルマンはアメリカと非常に緊密な関係を保っている。
3人を結び付けるのは、国の内外において暴力を好んで行使することだ。クリミア併合、シリア内戦、ナワルニー殺害を試みたという疑いを持たれるプーチン。イエメン戦争、カタール封鎖、ジャーナリスト暗殺の疑いを持たれるサルマン。エルドアンは、シリアとリビアにトルコ軍を送り、東地中海ではギリシャとの戦争が起きるリスクを冒した。アルメニアと紛争に関わるアゼルバイジャンに武器を送り、国内の反対派にはますます激しい弾圧を加えている。
3者はゼロサムの闘いにあるが、プーチンはサルマンを助けることもあり、逆に、石油戦争では打撃を受けた。シリア内戦では敵対するロシアとトルコも、その最も重要な目標は、ロシアがアサド体制の維持であり、シリア内の飛び地としてクルド勢力が国家建設に向かうことを阻止するエルドアンと、両立可能である。ただし、そのバランスは慎重に維持されているが、容易に崩壊するものだ。モスクワは旧ソ連圏の紛争にトルコが介入することを座視できない。
3人の指導者は、外国における軍事介入と、国内の安定性との、微妙なバランスに立っている。かつてプーチンのクリミア併合に際して、ロシア人たちは、テレビと冷蔵庫の選択だ、と冗談を言った。冷蔵庫は空っぽでも、テレビには軍事的な勝利のニュースがいっぱいだ。クリミア併合で高まった支持率も、経済の低迷でナショナリストの熱狂は冷め、冷蔵庫の不満が高まっている。エルドアンも、サルマンもそうだ。
国内経済が悪化する中で、強さを示すために国外へ目を向ける。3者が衝突する危険は高い。
NYT Oct. 13, 2020
China Got Better. We Got Sicker. Thanks, Trump.
By Thomas L. Friedman
COVID-19は中国のチェルノブイリになるはずだったが、結局、西側にとってのウォータールーになった。パンデミックで国民を守ることに関して、中国政府はアメリカ政府よりはるかに優れている。
500年前に始まった歴史の逆転は終わった。当時、中国は世界経済の4分の1を占め、はるかに優れた政府を実現していた。
アメリカの問題は多い。特異な個人主義的文化、地方・州・連邦の間で高度に分割された政治権力、脆弱な公共医療システム、分断された政体、政治を侵食した共和党のビジネスモデル、ソーシャルメディアと陰謀論に依存する多くの人々。
しかし、何よりこの大統領だ。再選のために、国民を分断し、信頼を破壊する戦略を取る。
NYT Oct. 14, 2020
Is Germany Turning Against Russia?
By Anna Sauerbrey
FP OCTOBER 14, 2020
Counter China by Making Guam a State
BY EYCK FREYMANN
PS Oct 15, 2020
Europe’s Futile Search for Franco-German Leadership
JOSEF JOFFE
NYT Oct. 15, 2020
America Has No Reason to Be So Powerful
By Stephen Wertheim
FP OCTOBER 15, 2020
Forget Counterterrorism, the United States Needs a Counter-Disinformation Strategy
BY BRIAN RAYMOND
FP OCTOBER 15, 2020
To Prevent Proliferation, Stop Enrichment and Reprocessing in the Middle East
BY VICTOR GILINSKY, HENRY SOKOLSKI
中東地域内では、誰も、原子炉の使用済み燃料を再処理しない。ウラニウムを濃縮しない。これを核拡散防止の金本位制にするべきだ。
● 議会の取引
NYT Oct. 9, 2020
Let’s Make a Deal
By The Editorial Board
FT October 13, 2020
Act now to prevent a tragic economic ending
Megan Greene
● ナゴルノ・カラバフ問題
FP OCTOBER 9, 2020
What Negotiations Over Nagorno-Karabakh Could Look Like
BY LARA SETRAKIAN
双方は、さらに被害が拡大することを避けるために、交渉の席に戻った。しかし、仲介する国はどこか?
かつてはアメリカだった。ロシアも常に影響力を持っていた。しかし、以前に比べて、今回の紛争にロシアは深く関与しない。トルコが強い姿勢を示している。
アメリカとロシアがいないなら、ヨーロッパがその役割を果たせるか? マクロン、メルケル、OSCEミンスク・グループが重要になる。しかし、トランプ政権が抜けた。国連も関与する。
アルメニアとアゼルバイジャンは、ともに感情的に領土を主張する。民主主義、自治、自決権を主張し、エスニック・クレンジングの恐怖がある。
流血を避けるためには、すべての関係者を宥和しなければならない。ナゴルノ・カラバフを国連の委任統治領にする。移行期間をロシアに託す。住民の移住を含めて、住民投票を行う。こうした交渉事項が、しだいに硬直化する双方の姿勢によって見失われた。
しかし、それに代わる選択は戦争の拡大である。地域全体が恐怖に引き裂かれる。
FP OCTOBER 9, 2020
Without Russian Aid to Armenia, Azerbaijan Has the Upper Hand in Nagorno-Karabakh
BY ROBERT M. CUTLER
The Guardian, Sat 10 Oct 2020
War has broken out on the edge of Europe. What's behind it?
Thomas de Waal
異なる視点の迷宮に入ることで、人的な犠牲が増え続ける。
FT October 11, 2020
Putin contends with a neighbourhood in turmoil
● COVID-19に対処する
The Guardian, Sat 10 Oct 2020
Continual lockdowns are not the answer to bringing Covid under control
Devi Sridhar
ベトナムやニュージーランドの戦略からイギリス政府は何を学ぶべきか?
問題は、どうやってウイルスの感染拡大を抑え、医療崩壊を防ぎながら、経済を回復するか、である。ロックダウンは、ウイルスも、その感染力も変えるわけではない。時間稼ぎになるだけだ。ロックダウンが長引けば、人びとは疲れ、怒りを示す。
残念ながら簡単な解決策はない。われわれはこのウイルスの影響をまだ理解し始めたばかりだ。免疫が持続するのかどうか、再感染することが分かっている。検査、追跡、隔離の厳格なシステムを整備することが基本である。そして入国者を厳しくチェックする。
われわれはアジアの成功例から学ぶべきだ。
The Guardian, Sun 11 Oct 2020
The Guardian view on Boris Johnson's Cop26: ask if GDP growth is sustainable
Editorial
FT October 11, 2020
East-west divide: winners and losers in the Covid economy
Robin Harding in Tokyo, Ben Hall in London and Davide Ghiglione in Rome
PS Oct 12, 2020
The Great Reallocation
AGUSTÍN CARSTENS
危機の最初の数か月は、流動性逼迫の問題であった。政府は攻撃的な金融緩和と財政刺激策で対応した。しかし今、パンデミックが続く中で、危機は新しい局面に入った。企業の支払不能危機が迫っている。政府は、どのようにして企業を支援しながら、それを生き残れない企業ではないように選別できるのか?
支援策がなければ、大規模な倒産の波が起きるだろう。問題は、パンデミック後の経済の様子が全く異なったものになる、ということだ。
消費者の行動、支出パターンは、パンデミック前の姿に完全には戻らないだろう。リモート、eコマースなど、デジタル化は加速している。ソーシャル・ディスタンシングも続けられる。
かつて反映していたビジネスが衰退する。政府がそのようなビジネスを支援すれば、その影響は金融部門におよび、より大きな経済を委縮させて、雇用が失われる。どの企業を支援するべきか、選択するのは非常にむつかしい。企業の長期的な活力を観るのは、融資に関わる経験を積んだ銀行の仕事である。
資源の再配置は危機の次の局面で進むから、政府は財政・金融政策ではなく、構造改革を目標にしなければならない。それは二重の過程だ。幅広い財政支援策は次第に縮小していく。同時に、激しいダメージを受けた部門から資源を解放し、パンデミック後の繁栄する部門に異動するのを助ける。
破産処理や労働者保護制度は、企業の再編に合わせて調整される。将来に向けた産業政策が明確に示される。インフラ整備、気候変動の抑制、医療サービスの充実に、多くの投資が行われる。技術革新の利益が広く享受されるように、所有権や金融システムを含めて、規制と法律が調整される。
民間と政府のステークホルダー。債権者、債務者、中央銀行、財政当局、裁判所、社会保障、労働監督局、地方政府など。政府は保護主義の要求を抑え、国債卿y等を推進する。
大幅な積極的構造改革を含む経済支援策が、より早く、力強い、回復をもたらす。
The Guardian, Thu 15 Oct 2020
Britain's Covid-19 strategy simply adds up to many more jobless people
Larry Elliott
● ブレグジットランド
The Guardian, Sun 11 Oct 2020
We'll move on from the EU vote but we are now stuck in our tribe. Welcome to Brexitland…
Robert Ford and Maria Sobolewska
終わりは見えたようだ。国民投票から4年半で、イギリスのEU離脱は終着点に達した。
離脱派と残留派の政治的「部族」が、何でも悪意に満ちた論争をする、なんてことはもうないだろう。漁業権や関税に関する正常な交渉に代わる。パンとバターの問題こそ、われわれにとって重要だ。
しかし、正式なブレグジット交渉は終わっても、ブレグジットランドBrexitlandは永久に続く。
ブレグジットは、何十年もかかって形成されたアイデンティティーと価値に関する有権者の中の根深い分断を活性化した。それは消えることがない。イギリスは、大規模な移民流入、エスニックな多様性の増大、高等教育の拡大によって変貌した。EU離脱に関する国民投票は、それらに新しい政治的分断、離脱派と残留派が加わって、別々のアイデンティティーを共有した。
ブレグジットの部族主義はあらゆる問題に浸透していった。高等教育も、環境保護も、COVID-19の対策でも。彼らの見解は分裂を深め、合意形成を妨げる。有権者の外観や優先順位に、根本的な違いがある。離脱派は、伝統的社会のアイデンティティーを愛し、急激な社会変化に不安を感じる。残留派は、近年の開放性や移動性の増大を歓迎し、それを加速しようとする。
しかし、その違いは程度の差である。受け入れる変化の速さについて、違いがある。離脱派の多くは、偏見や差別を社会病理とみなし、批判するが、人種差別の意味を限定的に理解する。残留派の多くは、反人種差別主義の大義を確信しており、彼らがそれを拡大して解釈することに反対する意見を理解できない。
ブレグジットランドの対立の核心はここにある。急激な社会変化によるアイデンティティー問題には、あいまいな形で協働する感受性と相手への敬意を要する。しかし、「われわれと彼ら」という分断の政治がそれを破壊する。
党派的人びとは、自分たちの集団に最善のもの、敵対者には最悪のものを観る。党派的なステレオタイプ思考を、われわれは慢性的に利用している。複雑な世界を理解するために便利だから。しかし、その分断効果は強烈で、しばしば異なる視点から物事を観ることができなくなる。
政治的な反対派を邪悪な存在とみなすこと(Demonising)は、短期的な優位をもたらす。しかし、長期的には党派的ステレオタイプが有権者の心を支配する。
FT October 11, 2020
Putting wind power into the UK’s sails
Dieter Helm
エネルギー問題には巨大な構想と大胆なイニシアチブのごみ貯めになっている。
今度はボリス・ジョンソン首相の番だ。先週、保守党大会で発表した。海上風力発電、水素、炭素回収・貯蓄CCSで指導者になる。
本当にできるのか? エネルギー政策は長期の問題であり、気候変動はグローバルな問題だ。
北海は海上風力発電に最適の場所である。しかし、からっぽになった油井や天然ガス開発基地がある。
政府には3つの課題がある。インフラ整備、炭素価格の決定、規制と制度。
FT October 12, 2020
How a Brexit deal, or no deal, will affect markets
Karen Ward
SPIEGEL International 13.10.2020
A Looming Disaster
Brexit Threatens to Become the Messiest of Messy Divorces
By Tim Bartz, Claus Hecking, Nils Klawitter, Peter Müller, Michael Sauga und Jörg Schindler
The Guardian, Wed 14 Oct 2020
The Conservatives are shrinking the state – to make room for money and privilege
George Monbiot
FP OCTOBER 15, 2020
Deal or No Deal Is No Longer the Point
BY JOSEPH DE WECK
● 垂直農場の革新
FT October 11, 2020
Strawberries tell the story of an era of disruption
Rana Foroohar
パラダイムの転換はゆっくり始まり、その後、一気に進む。COVID-19が示したように、気候変動もそうだ。
気候変動と、国際移民労働、脱グローバリゼーションなど、他のかく乱とが結びつく分野として、注目すべきは垂直農場vertical farmingである。巨大な多重の層に養分を含んだ水と光が正確に与えられ、作物が成長する。
遺伝子操作や新しい農地を必要とせず、フルーツや野菜を生産できる。伝統的な農法では多くの作物が、気候変動の進む中で、年中、限られた土地でしか生産できない。
アメリカの大火災では作物が焼失し、多くの農業労働者が危険にさらされた。その1つがカリフォルニアに依拠する世界最大のイチゴ生産者Driscoll’sである。わずかな温度の変化も作物を全滅させる。Driscoll’sはサンフランシスコのスタートアップPlentyと垂直農場のベンチャー企業を起こした。
こうした農場は、ハイテクの集合であり、給水システムやデータ分析ソフトに巨額の投資が要る。しかし、カリフォルニアの農場に同じ供給能力を得るより安い。垂直農場の意義はそれだけではない。収穫や配送に必要な化石燃料が削減できる。気候変動によるリスクを減らし、農薬の流出、水の浪費をなくす。消費する水は伝統農法の5%だ。
中国のスマート・シティなど新興市場で垂直農場は広がっている。長距離のサプライチェーンがなくせる。地政学的対立や移民労働者による政治危機からも解放される。工業型の低賃金外国人労働者に依存する農業は、債務の増大や予算赤字の時期に、ポピュリストの反発を刺激する。
垂直農場は、環境基準を満たしながら、新興市場諸国の増大する都市人口が、栄養価の高い農産物を求める需要を満たす。Driscoll’sの最大のイチゴ市場は、香港とアラブ世界である。
水と動力があれば、垂直農場はどこにでも行く。しかも富と技術革新をもたらす乗数効果がある。農場建設のためのプラスチック成型とLEDが大量に発明されている。労働者の3分の1は高賃金のエンジニアであり、彼らの需要が雇用を増やす。
「Intelが半導体を創るように、われわれは農産物を創る。」
● 経済思想は変わる
FT October 11, 2020
Dawn breaks on a new age of economic thinking
Martin Sandbu
深刻な経済危機は経済学を革新する。大不況はケインズのマクロ経済学を生んだ。第2次世界大戦は、福祉国家と混合経済への支持を固めた。1970年代のインフレと石油ショックは自由市場のアイデアを支配的な地位に就けた。
われわれはパンデミックによる経済危機を経験している。経済学や経済政策が変わるだろう。IMFや世界銀行がそれを示した。
IMFは、ラディカリズムには程遠い機関である。しかし、資本規制に条件付きで指示を与え、財政刺激策の有効性を確認した。財政赤字の累積が破滅的でないことも示した。
今、公共投資の長期的な減少傾向を指摘し、不確実な時代に、公共投資が民間投資を促す効果を指摘する。ソーシャル・ディスタンシングの経済活動抑制は、政府が恐れるロックダウンの効果と同じ程度に大きい。早期にロックダウンを解除しても、経済は急速に回復しない。
早期の、迅速なロックダウンは、感染予防と経済回復の双方にとって最善である。
気候変動対策、脱炭素化についても同じことが言える。環境保護と経済成長は対立しない。
政府介入は民間部門を改善に向けて誘導できる。その意味で、経済計画と積極的な国家が戻ってきた。
FT October 14, 2020
Samuel Brittan made a unique contribution
FT October 15, 2020
Raghuram Rajan: ‘Society has to find a new equilibrium’
Rana Foroohar
世界は市場と国家との闘争にあるのではなく、第3極であったローカル・コミュニティーと(市場・国家が)パワーを分け合うシステムに回帰していくだろう。ドナルド・トランプの支持者、インドのナショナリストたち、ブレグジットの支持者たちは、ともに同じものを求めている。
これは自分のインドに関する経験から得た考え方である。インド独立に際して、ガンディーは権力分散と自治政府、インドの村を活動の中心と考えた。他方、憲法の起草者であったアンベートカルは、旧い伝統とそれによって人びとを抑え込む村を否定した。パキスタンとの大分裂があったために、インドでは中央集権が強かったが、最近、ようやく分権化が支持されるようになった。
グローバリゼーションは、市場と国家の闘いではなく、市場と国家がともに拡大し、第3局のパワーを奪った。規模、効率性、ルールの統一など、市場の成長は国家の役割を必要とした。
20世紀には、各国の首都を越えて、それが超国家にまで及んだが、人びとはパワーを失い、底辺に置き去りにされた。特に、世界金融危機が明確な転換点であったと思う。市場・国家・第3局の不均衡を再調整するときが来た。
多様性と競争は良いことだ。1980年代に日本から学んだように、今は皆が中国に学んでいる。
● 新しい難民協定
FP OCTOBER 11, 2020
The World Needs a New Refugee Convention
BY JOSHUA CRAZE, JÉRÔME TUBIANA
COVID-19の危機で、極右の政治レトリックは難民を感染源として非難するようになった。
難民の権利は、常に、法(人権)と地政学の間で、あいまいな位置にあった。
1970年代の石油危機は、以前から不満のあったゲスト労働者制度について、移民労働者の削減要求につながった。
1970年代の危機において、新しい難民隔離システム、難民キャンプが制度化され、それは難民の檻cageになった。1990年代、ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアが難民申請者を領土外で阻止するシステムを導入した。
EUはトルコと協定を結び、トルコをシリア難民の檻cageにした。
パンデミックは、リベラルな国際秩序の棺桶に最後の釘を打った。1951年の難民協定はすでに時代に合わない。国連難民高等弁務官事務所の前身、国際難民機構は、難民に世界パスポートの発行を示唆して強い反対にあった。70年後、国家を失った人々が増えている。
FP OCTOBER 13, 2020
The Feds Moved Migrants in Unmarked Vans Overseas
BY AMY MACKINNON, AUGUSTA SARAIVA
● 米中対立と資本
FT October 12, 2020
The Great Wall (Street) of China
Patrick Jenkins
FT October 13, 2020
Renminbi gains as China strengthens
Diana Choyleva
人民元は強くなる。その経済・政治要因がそろっている。
COVID-19危機を早期に乗り越え、成長を回復している。人民元を安くして輸出を伸ばす戦略は取らないだろう。
中国の輸出はドル建が多く、為替レートの影響を受けない。中国政府はドルに依存する取引を減らそうと決意している。人民元安はその方針に反するものだ。
中国共産党の創設100周年が近づいている。指導部は人民元の強さや株価上昇を望むだろう。
FP OCTOBER 13, 2020
Investors Are Already Treating America Like an Emerging Market
BY MARK Y. ROSENBERG
FT October 14, 2020
Evergrande highlights risks in China’s offshore bond market
Henny Sender
● 炭素排出量の削減
PS Oct 12, 2020
The Key to Future Competitiveness
JULES KORTENHORST
NYT Oct. 12, 2020
When the U.S. and China Fight, It Is the Environment That Suffers
By Yanzhong Huang
FT October 13, 2020
China must take action now on net zero pledge
John Podesta and David Sandalow
PS Oct 13, 2020
Feeding a Greener World
ROBERT WATSON
PS Oct 14, 2020
The Recovery Needs Development Aid
KEVIN RUDD
経済危機を理由に政府は開発援助を削減している。しかし、それは逆である。景気回復には、ウイルスの感染を抑え、開発援助を増やすべきだ。
FP OCTOBER 14, 2020
Iraq’s Future Isn’t Oil, It’s Sustainable Electricity
BY LUAY AL-KHATTEEB
● 共和党とキリスト教右派
PS Oct 12, 2020
Overruling the Rule of Law
NICHOLAS REED LANGEN
NYT Oct. 12, 2020
Republicans’ Galling Bad Faith About the Supreme Court
By Michelle Goldberg
NYT Oct. 13, 2020
If Amy Coney Barrett Were Muslim
By Wajahat Ali
もしバレットAmy Coney Barrettがイスラム教徒であれば、共和党は同じように彼女を最高裁判事として支持するのだろうか?
FT October 16, 2020
The mystery of Amy Coney Barrett
● 超富裕層
FP OCTOBER 12, 2020
Trumpworld’s Corruption Is as Globalized as the Ultra-Rich the President Mingles With
BY ANANYA CHAKRAVARTI
● タイのエスタブリシュメントと王様
FT October 13, 2020
The king’s money: Thailand divided over the $40bn question
John Reed in Bangkok
The Guardian, Thu 15 Oct 2020
The Guardian view on Thailand's protests and the king: the end of deference
Editorial
タイのエスタブリシュメントは、服従の時代が終わった、ということを理解できない。それは当然だろう。エリートはこの国の変化を拒んでいるからだ。タイでは、最も裕福な1%の人々が資産の67%を支配し、世界で最も不平等な状態にある。しかしまた、この惨めな状態に、他の人々が満足できないことも当然だ。
より良い政治的・経済的な打開策が示されない限り、緊張状態は悪化し続ける。王制も、その緊張状態を生むひとつなのだ。
● スガノミクス?
PS Oct 13, 2020
The Making of Suganomics
KOICHI HAMADA
アベノミクスは正しかった。ホームレスがいなくなり、大学卒の若者は企業を探す不安がなくなった。日銀の金融政策が間違っていたのだ。米英など、主要国の金融拡大が続く中で、日銀は同じ政策を拒んだ。そのせいで円高が進み、日本企業は競争力を失った。
安倍は黒田総裁を指名し、大胆な金融緩和が始まった。菅もこれを続けるべきだ。
アベノミクスは、柔軟な財政政策でも成功した。消費税を2回延期したが、それはハト派に屈したからではない。財政のプライマリーバランスはマイナスからプラスになった。財政健全化を唱える旧思想は間違いだ。菅もこれを続けるべきだ。
アベノミクスの第3の矢はなかなか進まなかった。さまざまな抵抗があったからだ。菅はこの点で、派閥に制約されず、構造改革を求めるブレーンを集めた。その多くは製造業や銀行ではなく、サービス部門の代表だ。これがスガノミクスの核心である。
● スコットランド独立と通貨
PS Oct 13, 2020
Scotland after Sterling
BARRY EICHENGREEN
スコットランドが独立するかもしれない。
2014年の住民投票では45%しか支持しなかった。しかし、ブレグジットには60%が反対し、今や、スコットランドはUKとEUの選択に直面している。
もしUKとEUの交渉をひどいと思うなら、UKとスコットランドの離脱交渉はどうなるのか? 北海油田の収入は人口比で分けるか、面積で分けるのか? UK債務の分担はGDP比か、人口比にするのか?
通貨はどうなる? 多くの人は、スコットランド独立で独自通貨を、自国の中央銀行が管理する、と考えている。しかし、独立でポンドを失う場合、独立を支持する人は減るかもしれない。
10年前、独立派は、通貨同盟を維持する、と主張した。独立後もイングランド銀行を最後の貸し手として維持し、通貨の信用を得られる。しかし、直ちにUK政府が否定した。しかも、EUを離脱したことで、EU再加盟を願うスコットランドにとって、この可能性はなくなった。
新通貨はポンドに為替レートを固定し、カレンシー・ボードを採る、という考えもある。そして安定した価値を維持してから、EU加盟とユーロに移行する。
だがその場合、スコットランドは自国の金利に何の発言権も持たない。最後の貸し手もない。ユーロ圏に参加することも確実ではない。ポンドに固定して、ユーロとの安定性を維持できるのか。
したがって、独自通貨を持てば、スコットランドは独立した中央銀行とインフレ目標を採用するだろう。それも、インフレ目標が達成できず、変化する政治情勢の中では、人びとや投資家の信用を得られない。
それでも、スウェーデンの経験が示すように、財政の健全さを前提に、この選択肢が最もましである。ただし、スコットランドの財政赤字は巨大で、スウェーデンには遠い。一時的にスウェーデン型に頼り、最終的にはユーロ圏に参加する。
そもそも最初の1歩、新スコットランド通貨の導入は容易でない。ユーロの導入には2年の歳月をかけて準備した。
● ベトナム
NYT Oct. 13, 2020
Is Vietnam the Next ‘Asian Miracle’?
By Ruchir Sharma
ベトナムはコロナウイルスの感染拡大を抑え込んだ。今年、最も成長する国になるだろう。第2次世界大戦後、輸出による高成長を実現した「アジアの奇跡」を継ぐものだ。
共産党の一党支配体制だが、しばしば懸念されるような政策の失敗を免れてきた。他の新興諸国と違って、有権者を宥和する社会支出を抑え、輸出部門、道路、港、学校に投資してきた。中国に比べて賃金水準はまだ半分だ。しかし、労働者の質は非常に良い。
共産党政府は、市場開放を支持し、多くの自由貿易協定を結んだ。労働人口の増加は減速するが、まだ人口の多くは農村に住む。彼らの都市化が成長を支えるだろう。
国有の中小企業に債務が累積すれば、他のアジア諸国の高成長が債務問題で終わったように、ベトナムにも問題が起きる。
FT October 15, 2020
Developing economies must not succumb to export pessimism
Arvind Subramanian
● オルバン劇場
FP OCTOBER 13, 2020
Orban’s Macbeth
BY DARIUSZ KALAN
********************************
The Economist September 26th 2020
Why governments get it wrong
Covid-19 and poverty: Failing the poor
The Supreme Court: After RBG
The corporate undead: Zombies at the gates
The US Navy: AI, Captain
Argentina and Uruguay: A mini-war across the River Plate
French diplomacy: Trying to square a circle
The Labour Party: Reflections on conservatism
Covid-19 and poor countries: From plague to penury
Ailing companies: The corporate undead
Companies in Japan: The return of the living dead?
Buttonwood: The bright side
Free exchange: The mop that never stops
(コメント) COVID-19による危機は、緊急避難的な金融・財政支援から、長期の回復策、構造変化、債務累積・危機に視点が変わりました。世界金融危機やユーロ危機の反省、何より、日本のバブル破裂後、債務処理を遅らせたこと(欧米エコノミストたちが「ゾンビ」とよぶ)に焦点が絞られ、日本政府・財務省・日銀・エコノミストたちがそれをどのように総括したのか、問われています。
アメリカ最高裁の党派的使命と政治イデオロギーによる支配(もはや神政政治)を解決するため、最高裁の判事を終身ではなく任期制にせよ、という提案は優れています。
ほかにも、太平洋の海軍力で中国に抜かれたアメリカがAIによる無人の戦艦(ドローンのように)を増やす、フランスのマクロン外交、労働党の保守化戦略、コロナウイルスによる貧困・債務問題。
なぜ技術革新が加速すると株価上昇と経済停滞が併存するのか、なぜ中国は無限にバブル崩壊を延期できるのか、という頭のストレッチも興味深いです。
******************************
IPEの想像力 10/19/20
貧困をなくすことができないか。
大都市のホームレス、孤独死、地方・農村の貧困をなくしてほしい。
日本の絶対的貧困をなくしてほしい。社会的な差別や隔離、機会の格差をなくしてほしい。
さまざまな不幸、不運、たとえ個人的な失敗に対しても、やり直せる仕組みを増やしてほしい。
病気になって、仕事をなくして、詐欺や泥棒の被害にあって、歳を取って、孤独な、惨めな暮らしに耐えるしかない暗闇を、楽しみや希望で照らしてほしい。
親の暴力や、教室でのいじめにあう子供を助けてほしい。
女性であるから、日本人でないから、というだけで不利な扱いを続ける企業や組織、社会を正してほしい。
強姦、性的暴力をなくせるように、暴力を受けた者が苦しむことを和らげ、回復を助けるように、支援できる機関やスタッフを育ててほしい。
難民キャンプで長く暮らす家族や子どもたちが、医療や教育を受けることで、その能力や意志を高め、新しい国に移住する機会を得られるような国際的仕組みを作ってほしい。
****
「路上生活者を支え続けて」朝日新聞(大阪)2020年10月18日で、NPO「Homedoor」理事長、川口加奈さん(29)の偉業を知りました。
・・・ホームレスになる、って何だ? 彼女にはわからなかった。
「選択肢なんてなかったんや。ホームレスになる以外にな。」https://www.homedoor.org/about/
高卒後、派遣社員として工場で働き、給料が安いと訴えると契約更新されなかった(くび)。ぎりぎりの生活で、貯金もなく、ネットカフェを転々とする。
電話がない、住所がない、貯金がない。面接に応募しても、仕事はもらえなかった。これを貧困(ホームレス)のトライアングルとよぶそうです。
もう野宿しか選択肢はなかった。
「路上は硬いし、すごく冷たい。」
こうした「おっちゃん」たちに、川口さんは声をかけ、弁当を届けたそうです。
14歳で問題を知って、それを解決する責任があると思い、19歳で起業した。
****
10月18日の朝日新聞には、・・・19歳ひとり親「ご飯ない」と検索、というトップ記事がある。
大阪。男の子を出産したのは今年3月。
紙おむつも高くて買えない。毎日のおかずは具のない味噌汁。体重が57キロから40キロに落ちた。「ひとり親 ご飯ない」と検索する。
日本国内のひとり親は推定142万世帯。
2016年カンヌ映画祭の最高賞を得た映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」の1シーンが紹介されている。https://longride.jp/danielblake/
イギリス。2人の子どもを育てるシングルマザーが、慈善団体の無料の食糧をもらいに行く。
しかし母親は、空腹に耐えきれず、その場で缶詰を開けて手づかみで食べ始める。
実話による、という。
****
コロナの先の社会を、いまより良い社会にしたい。そういう特集記事です。
それはリベラルな社会的理想というものでしょう。
しかし、何でも法律を作って、財政的な負担で支給すればよい、というだけでは、逆に、さまざまな反発、反動、政治的な介入を刺激したと思います。
アメリカでも、イギリスでも、規制緩和・市場万能のネオリベラリズムに対する反発だけでなく、リベラルな理想を食い物にする政治への反発、怒りがある。そう思います。
****
オーストラリア、シドニーの「無料のスーパー」。
生活に困っている人に、無料で食料品を提供する。パン、野菜、果物など、欲しいものをカゴ1つ分までお金を払わず持って帰れる。
「商品」は業者の寄付。スタッフはボランティア。
5~11歳の4人の子を持つシングルマザー。掛け持ちしていたパートタイムをコロナ禍で失った。
「コーヒーや紅茶を飲むのはやめた。子供たちは牛乳を欲しがるけど、今日は手に入ったからよかった。」
****
知ったからには、解決する責任がある。
ラジャンの「第3の極」や、ロドリックの「協調型ガバナンス」「企業の民主化」を紹介しました。
今の仕事を終えたら、違う生き方をして、自分の答をみつけたいと思います。
******************************