IPEの果樹園2020

今週のReview

10/12-17

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2次南北戦争 ・・・ロックダウンから長期的問題へ ・・・歴史的偉業 ・・・トランプのコロナ陽性 ・・・第2次冷戦 ・・・アゼルバイジャンとアルメニアの紛争 ・・・バイデンが世界を救う ・・・「なぜ彼らはあんなことをしたの?

[長いReview

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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 第2次南北戦争

PS Oct 2, 2020

The Next Civil War?

ELIZABETH DREW

アメリカの首都は、1860年の南北戦争前夜以来なかったような、緊張状態に包まれている。

トランプは、容赦なく先例や規範を破壊し、自分の行動をチェックすることを絶えず無能化した。

言葉だけでなく、本当に銃撃戦が起きないとしたら幸運かもしれない。トランプは最初の選挙戦でも、就任後も、暴力を煽ったきた。しかし討論会で、白人至上主義の極右暴力集団である「プラウド・ボーイズ」について訊かれたとき、「下がって、(戦闘に)待機せよ!」と鼓舞した。

トランプを好むのは極右の集団だけである。その政治的才能や知性には大きな疑問が生じる。トランプが権力を保持することは、アメリカの立憲体制に、かつてない試練となっている。

PS Oct 2, 2020

The Republican Threat to the Republic

JOSEPH E. STIGLITZ

ネロがローマを焼いたことは有名だが、トランプはカリフォルニアが燃えているとき自分の所有する赤字のゴルフコースでゴルフしていた。そして、COVID-19でアメリカ人は20万人以上が死亡しているが、今や彼自身が感染した。ネロと同じように、トランプが冷酷で、人間性を欠く、もしかすると狂気の政治家として記憶されるのは疑いないことだ。

9月末の大統領討論会では、トランプが大統領にふさわしくないことを示しただけでなく、多くの人が精神の健全さを疑っただろう。確かに、過去4年間で、ワシントン・ポストの数えるところでは、約2万の嘘や誤解を招く記述を行った。世界は、この常習的な虚言の新記録を目撃している。

私がインディアナ州、Garyでの子ども時代に、アメリカ憲法の優れた点として、司法の独立性と、権力の分割、適切に機能するようなチェック・アンド・バランスの重要性、を学んだ。1990年代に世界銀行のチーフ・エコノミストであったとき、私たちは世界中を旅して良い統治や良い制度に関して教えたが、しばしば、そのモデルがこうした考え方であった。

もはやそうではない。トランプと彼に従う共和党は、アメリカの民主的なプロジェクトに影を落とし、われわれの諸制度や憲法がいかに壊れやすいか、そして、人によっては欠陥があるか、を思い知らせたからだ。

敵対する一方の側がもはやルールに従わないとき、より強いガードレールが必要だ。幸い、われわれはすでに地図を持っている。昨年初めに議会下院が出したThe For the People Act of 2019である。投票権を拡大し、党派的な選挙区の変更を制限し、倫理規範を強化し、民間政治献金による政治的影響を限定する。しかし、ますます国民の多数派が支持しないような政治を推進する共和党は、これを拒むだろう。

彼らが公然とアメリカの民主主義に対する戦争状態を叫ぶのは、多数が支持しないような政策を掲げているからだ。有権者の投票を妨害し、司法や連邦政府を政治的に利用し、少数支配を永久に制度化しようとする。

アメリカ国民に残された唯一の選択肢は、すべてのレベルで、選挙に圧勝することだ。もし敗北すれば、民主主義の敵が世界中で勝利するだろう。


 ロックダウンから長期的問題へ

NYT Oct. 8, 2020

Capitalism Is Broken. The Fix Begins With a Free Covid-19 Vaccine.

By Mariana Mazzucato

COVID-19による経済的な落ち込みは、資本主義についての長期的諸問題を考えるよう求めた。

パンデミックの前にも、ギグ・エコノミーの誕生で労働者は変化しやすい職場に苦しみ、交渉力の低下を実感していた。公共サービスは削られ、大企業では、株式の買戻しで株主の利益になっても、研究開発投資や労働者の報酬、訓練はなされず、長期の成長を損なっていた。企業が短期利益を追求するようになった規制緩和は、2008年の金融危機に至った。

パンデミックで事態は変化した。政府はシステムの欠陥や構造を改革しようとしている。ワクチン開発がその例だ。

パンデミックを終息させる唯一の方法は、ワクチンを開発し、世界中で、すべての人に無料の接種を広めることだ。そのためには、公共部門が開発を促し、価格を決め、供給体制を整備し、特許や競争を、集団的に公衆衛生に資する形で行うことだ。WHOが特許をプールするべきだろう。

国際的に、諸政府が協力して、知的財産、価格、製造に関する強いルールを決める。ワクチンの世界的普及と利用に関する目標に合意し、そのための生産管理に影響力を行使する。巨大製薬会社は、治療やワクチンで法外な利益を上げない契約にする。

これはCOVID-19にとどまらない。企業を処罰するのではなく、諸集団が利益を共有するためだ。経済成長をすべての市民にとって有益なものにする。労働条件を改善し、政府と民間のバランスを変え、企業の株価引き上げ・短期利益志向を抑える。また、「グリーン・リカバリー」を実現する。

景気刺激策だけでは問題を解決できない。より包括的な、持続可能な経済を創るために投資する。2008年の金融危機後はそれに失敗した。公共の利益を反映した投資が欠かせない。デンマーク、フランス、ベルギー、ポーランドは、タックス・ヘイブンを利用する企業が政府資金を利用させない法律を創る。ECBは(資金供給に対して)銀行が2021年まで配当を支払わず、ボーナスを抑えるように求める。アメリカでは、エリザベス・ウォーレン上院議員のような指導者が、連邦最低賃金引き上げ、企業の取締役会に労働者や利益集団の代表を入れる民主化、配当、株式買戻し、ボーナスの制限を求めている。

COVID-19は健康と経済を襲う大きな脅威であるが、今、変わらなければ、地球の温暖化も解決できないだろう。


 歴史的偉業

PS Oct 6, 2020

Learning from Rabin

RICHARD HAASS

すべての暗殺が歴史の転換点を示すわけではない。たとえフェルディナンド皇太子が暗殺されなくても、第1次世界大戦は起きただろう。すでに戦争の舞台は準備されていたからだ。別の何かが発火点になっただろう。

しかし、25年前のイスラエル首相、ラビンが極右のユダが人過激派に暗殺されたことは、ほとんど確実に、中東の転換点となった。ラビンは彼の同世代で、唯一の、イスラエル占領下で暮らすパレスチナ人と和平を結ぶ意志と能力を持つ指導者であったからだ。妥協が必要であることを理解し、リスクを評価し、イスラエルの多数派に妥協することが賢明であると説得できるほど、強い指導者であった。

イスラエルの防衛省であったとき、ラビンは占領下のパレスチナ人を厳しい手段で弾圧し、抗議デモを粉砕した。ラビンにとって、秩序を維持する法的・政治的な必要性と、死者を最小にする道義的な要請があった。死者を出さないような強制手段は、彼にとって正しい選択だった。

しかし時を経て、ラビンは、強制するだけでは成功しない、と結論した。政治的、経済的な動機が欠かせない。首相となって2期目に、ラビンはパレスチナ解放機構PLOを、そのテロの歴史にもかかわらず、交渉相手として受け入れた。そして、1993年、1995年に、オスロ合意を結ぶ。それはパレスチナ人の大幅な自治権を認める道を開いた。

われわれは、オスロ合意が完全には実現しなかったことを知っている。ラビンは暗殺された。その後の和平交渉は失敗した。アラファトは死んだ。パレスチナ国家はどこにもない。

こうしたすべてのことが、最近のイスラエルとUAE、バーレーンとの外交的な前進につながる。アラブ諸国の政府は、イランの脅威を逃れ、イスラエルの技術とアメリカの武器を得るために、パレスチナ問題が解決しなくても、イスラエルとの関係正常化を選んだ。

イスラエルは占領したヨルダン川西岸への入植を続けており、妥協の余地は失われる。パレスチナ人の次世代の指導者は、ラビンのように、平和のために妥協する意志と能力を示すだろうか?

しかし、イスラエルもラビンから学ぶべきだ。ラビンは、イスラエルがユダヤ人の民主的国家であり続けるためには、パレスチナ人の国家が分離するべきだ、と理解した。それ以外の道は、パレスチナ人をイスラエル市民とし(ユダヤ人国家ではなくなる)、彼らの投票権を否定することだ(民主的国家ではなくなる)。

ラビンはこの道を拒否した。


 トランプのコロナ陽性

The Guardian, Sun 4 Oct 2020

Trump, Covid and empathy for the world's least empathetic man

Robert Reich

今日、私は少しの間、ドナルド・トランプに同情した。このかわいそうな男はCOVID-19に感染し、入院した。

ジョー・バイデンは彼の回復を祈っている。カマラ・ハリスは心のこもった言葉を送った。

だが、ちょっと待て。バイデンの選挙運動はトランプに対するネガティブなTV広告を中止したが、トランプ陣営はやめずに続けている。

もしトランプではなくバイデンが感染したらどうなっただろうか? バイデンを、弱い、衰えた、老人と攻撃してきた。マスクをしたバイデンをバカにしてきたから、「やっぱりマスクなんて無駄だ」と言うだろう。「地下に隠れても感染するのさ。」

そもそもトランプは本当に感染したのか?  トランプはあらゆる嘘をつく。もしかしたら、1日か2日で再登場し、元気になって、余裕いっぱい宣言する。「COVID-19はたいしたことじゃない。」 ヒドロキシクロロキンで治った。自分が強くて、力に満ちていたからだ。金のかかる治療など信用するな。

他方で、トランプは税金逃れの問題から注意をそらす。自分が失敗したビジネスマンだ、ということも気にしない。

しかし、アメリカが方針を見失った最大の要因はパンデミックだ。トランプが、そのウイルスを広めたからだ。

共和党のマッコーネルとトランプは、最高裁判事の指名を進めている。それはかつて、共和党がオバマの任期が残り1年ほどしかないのに上院で投票すべきでない、次期大統領が指名すべきだ、と「ルール」をでっち上げたことに、まったく反している。

他方で、バイデンは最高裁判事の増員によるバランスの回復を語らないし、民主党の指導者たちは、有権者が「フェアではない」と思う、と反対する。ワシントンDCとプエルトリコを州にして上院のバランスを変える、というアイデアも同様だ。

しかし、相手は全く違うゲームをしている。トランプとその協力者たちは、権力を維持、拡大するために何でもやる。

控えめで、民主主義に依拠する社会を望むのか? 邪悪さと、むき出しの力に依拠する社会を望むのか?


 第2次冷戦

FT October 5, 2020

A new cold war: Trump, Xi and the escalating US-China confrontation

Gideon Rachman in London

米中の軍事力の差は縮小したが、中国はアメリカのような同盟諸国のネットワークを持たない。「ワルシャワ・パクト」に匹敵する「北京協定」はない。

しかし、もしアメリカが中国の台湾侵攻を座視すれば、アメリカの同盟システムはその衝撃に耐えられないだろう。他方、もし米中が軍事的エスカレーションを抑えるなら、中国は別の意味で優位を展開する。それは貿易だ。中国を最大の貿易相手とする国は100か国以上あり、アメリカは57カ国である。ハイテク技術でも、モバイル決済、AI、医薬品で、中国はアメリカを超えるかもしれない。

米中対立には米ソ冷戦と、重要な、いくつかの異なる点がある。米中の貿易額、中国が保有するアメリカの債権、また、アメリカの大企業が中国市場に大きく依存している点は、ソ連では考えられなかった。中国社会は、ある意味で、アメリカ社会と収斂する傾向を示す。高等教育や科学研究で、中国のエリートたちは子弟をアメリカの大学に送っている。

英独や日米が戦争になったのは、核兵器が開発される前だった。核戦争による絶滅が冷戦を定義した。米ソは直接に戦わず、代理戦争を展開した。

比較論は、冷戦の終わり方を示さない。それは、米中の社会的な活力に依存するだろう。結局のところ、ソ連は内部の諸問題によって自滅したのだ。この点はアメリカと同盟諸国を不安にする。アメリカ大統領選挙でどちらが勝っても、政権移譲が平和的に行えるのか。トランプ政権はアメリカの社会的・経済的分断を暴露し、アメリカを内向きにし、その対外評価を大きく悪化させた。

上海、復旦大学のEric Liは、トランプvsバイデンの競争は、中国人に「アメリカの衰退」を実感させた。冷戦のたとえは、逆転した形で、アメリカをソ連と観る。2人の老人支配者が争う姿は、ソ連末期を想わせる(Brezhnev, Andropov and Chernenko?)。現代の中国はソ連の反対物だ。プラグマティックで、上昇しつつある、グローバルな連結によって繁栄する国家である。

習の中国にとって、問題は内部にある。Westadによれば、事実上の帝国となった中国は「国民国家」としてふるまうが、その緊張状態は、香港、チベット、ウイグル自治区に現れている。

だれが21世紀を支配するか。それは国内のシステムが決めるだろう。


 アゼルバイジャンとアルメニアの紛争

FP OCTOBER 6, 2020

A Weak Economy Won’t Stop Turkey’s Activist Foreign Policy

BY SINAN ULGEN

国連、EU、ロシアやイランでさえ、アゼルバイジャンとアルメニアの紛争に対して停戦を呼びかけた。しかし、トルコ政府だけは違う。トルコはアゼルバイジャンに明確な支持を表明し、持続可能な解決策がなければ、停戦には意味がない、と述べた。

これはトルコ政府の外交方針が転換したことを示す。国際外交に信頼を失い、影響力を確保するために地域紛争に直接介入を進んで行うようになった。こうした行動が国内の支持基盤を強化する。

ナゴルノ・カラバフ自治州は、トルコとアゼルバイジャンとの緊密な関係にとって重要な意味を持つ。言語が似ており、トルコが中央アジアに通じる道となる。

冷戦終結後、国連や西側諸国は、武力による領土の獲得に厳しく反対してきた。ナゴルノ・カラバフで国際対応は明らかなダブル・スタンダードである、とトルコは考える。

この問題は、また、この地域におけるトルコとロシアとのバランスをめぐる紛争の1つだ。問題は、トルコ政府が拡大する戦域を維持できるのか、である。

ここには、終わりの見えないトルコのEU加盟問題、トルコ国内における反米主義の高まり、もある。エルドアンは、トルコがかつての帝国の栄光を回復する、と国民に約束してきた。

トルコ経済の悪化によって外交政策に抑制が働く、と考えるのは間違いだ。経済はトルコの軍事力外交を制約するというより、むしろその源である。軍事衝突は、トルコに脅威が迫っているという意味で、政治的な団結と、強い指導力を促す。経済的福祉と安全保障とを二者択一とみなすのは間違いだ。

長期においてのみ、経済成果は選挙によって試される。

NYT Oct. 8, 2020

The Conflict Between Armenia and Azerbaijan Could Spiral Out of Control

By Lara Setrakian

ナゴルノ・カラバフはアゼルバイジャンにあるアルメニア人の分離主義者が集まる飛び地である。トルコとロシアの介入する戦争になる恐れがある。この地域への関心を失ったアメリカが関与しなければ、状況はコントロールできないような悪化に向かう。

紛争はソ連時代からあった。高度な自治権と特別な地位を認めていた。1991年、ソ連崩壊で、地域が独立を宣言し、戦争になった。1994年に停戦。この4年間に紛争が激化した。

軍事基地や首都を攻撃し、次は石油施設だ。脅威は、相互に破壊を確信するなら、抑制を促すはずだ。しかしアゼルバイジャンはトルコの支援を受け、ナゴルノ・カラバフの支配権を確立するまで戦争をやめない。アルメニア人も、最後の血の一滴まで流す、と決意している。

かつて、こうした紛争の激化を回避するためにアメリカがミンスク・グループ(欧州の紛争処理機関)を指導した。しかし今、アメリカは和平交渉に参加していない。グループは、ジュネーブの会談で、フランスとロシアの共同議長で行われたが、そもそもアメリカの指導力に合わせて設計されたものだ。1990年代の政治構造と政治的意志を反映している。当時、アメリカは旧ソ連圏の平和と発展に関与していた。

今、トルコがアゼルバイジャンに高度な武器を含む明白な支援国となっているとき、アメリカが介入する以外に暴力を止めるチャンスはない。アメリカはなお、この和平を動かすだけの関係性、レバレッジ、戦略的な資源を持っている。強力なアメリカがいなければ、交渉は進まない。

世界の警察官であることは、アメリカ人がその出費を好まず、過大な能力を求められる。しかし、積極的な外交の関与は、相対的に低コストで、地域紛争が多大な人命の損失と破壊へ向かうのを、アメリカが防ぐことになる。

もし和平が成立しなければ、2国だけでなく、世界にとっても深刻なダメージになる。


 バイデンが世界を救う

PS Oct 7, 2020

Can Biden Save the World?

KEMAL DERVIŞ

ジョー・バイデンが勝利すれば、大国間の危険な対立を防ぎ、グローバルな協力の新しい時代に向かうのか?

ドナルド・トランプが再選されれば、彼は強硬策をやめて、中国に対してもタカ派を抑え、可能ならいつでも「経済取引」に応じるだろう。さまざまな価値や人権は投げ捨てて、独裁者たちと楽しく過ごす。同盟国にも対抗国にも、取引外交を展開し、アメリカの国内市場、軍事・産業力、ドルの越境的権力を、2国間交渉で駆使するだろう。同盟や多国間主義(国際協力)を無視することで、アメリカのパワーは低下する。

アメリカのソフト・パワーも低下し、世界は3つの影響圏に分裂するだろう。US、中国、EUである。それは、ばらばらなルールや基準が市場を分断する、非効率的な世界である。気候変動への対処など、グローバルな公共財を供給するコスト分担は合意されず、米中の技術における冷戦や、誤算による軍事衝突も起きうる。

バイデンの勝利は世界を救えるのか?

米中関係だけで言えば、対立が増すかもしれない。バイデン政権は人権問題を重視するからだ。貿易、産業政策、技術など、現在の緊張状態は国際システムに残る。

しかし、伝統的な同盟子鉱、特にEUとの関係は根本的に変わる。多国間協力にも積極的であるだろう。そのような戦略の追求は、非効率で、危険な、国際秩序の解体を防ぐ。バイデンは、USEU、そしてアフリカ、ラテンアメリカ、アジアの多くの国と、共通のルール・基準を打ち立てるように努める。データ管理やデジタル課税も含めて。WTOを重視し、国際機関の改革を推進する。

しかし、アメリカはもはや覇権国ではない。バイデン政権がそのような課題をどこまで強力に推進するか、国内の利害は分散し、妥協がむつかしい。多国間の国際協力が成功するカギは、中国が国際システムに参加するよう、説得することだろう。もし中国が無制限な強硬策を望むなら、トランプの再選がベストと思うかもしれない。

しかし、中国だけでは成功しない。EUとバイデンのアメリカが合意するルールと基準、東アジア諸国も、中国の望むシナリオに従わないだろう。アメリカが多国間の国際協力を再生することは、すべての国にとって、中国も含めて、グローバルな課題を解決するうえで有益だ。

113日、バイデンが勝利するとき、民主党の国際協力を重視する者たちは、その構想を実行する勇気を持つべきだ。


 「なぜ彼らはあんなことをしたの?

FP OCTOBER 7, 2020

Empire of Graveyards

BY EMRAN FEROZ

戦争と悲劇、守られなかった約束、砕かれた人生の詰まった数十年を経て、アフガニスタンは何も変わらなかった。なぜか? 私はその答えを求めて人生を過ごした。

2001911日、ワールド・トレード・センターが破壊された。オーストリアで、小学校の先生はテロリストについて私に尋ねた。私はニューヨークを知らなかった。

「なぜ彼らはあんなことをしたの?」 と彼女は尋ねた。私は答えられなかった。私は9歳だった。人びとは私をからかった。そして戦争が始まることを祝った。「あなたの仲間が爆撃されるよ」と彼らは言った。

多くの町で、特にカブールで、人びとはタリバンの支配体制が崩壊するのを喜んだ。西側のメディアには、髭をそり、ブルカを捨てる映像があふれていた。しかしすぐに、それほど単純ではないことが分かった。1人の老人がカメラの前で泣いていたのを覚えている。理由もなく、彼は米兵に捕らえられ、拷問された、と。住居を爆撃された、息子や娘が死んだ、という話もあった。

何が間違っていたのか? なぜアフガニスタン人は、これほど戦争と殺戮を味わうのか? どうすれば混乱を抜け出せるのか?

2001107日、最初の武装ドローンが、南部の都市、カンダハルを襲った。タリバンの最高指導者オマーを追跡していた。当時は、彼の写真もなかった。しかし米軍と諜報員は彼を発見した、と断言した。ビン・ラディンの右腕とみなされていた。

しかし、彼らがしたことはそうではなかった。オマーを含まない、アフガン人たちが犠牲になった。こうした無差別爆撃が繰り返された。ドローンは「死の天使」と呼ばれた。

パキスタンとアフガニスタンのタリバン司令官たちは、ドローン攻撃と市民の犠牲者こそが彼らの最大の宣伝手段である、と何度も語った。「彼らはジハードに参加することを望む。親族の復讐を望む。しばしば、彼らには他の選択肢がない。」

その後、都市のアフガン人は経済の改善を観た。地方には選択肢も機会もなかったが。カブールのエリートたちは、防壁内のグリーン・ゾーンに住んだ。彼らにとって、地方のアフガニスタンは別の国だった。

私がタリバンの支配地域を訪ねたとき、ムスタファは語った。「彼らはこの国を兵器の遊び場にした。」 それは通称「すべての爆弾の母」が投下されて数週間後であった。

アフガン人の多くは今も貧しく、切り離されたまま、国家の富を奪うエリートたちが特権を維持することに奔走している。アルカイダとタリバンを追放し、アフガニスタンを改造する戦争が始まって19年後に、アメリカは敗北した。テロとの戦争は、再建、女性の権利、経済的成長、911に対する正義、民主主義を約束したが、すべてが失われ、どこにも見えない。

20年かけて何度も訪問し、国の内外で無数のインタビューをした。私は、教師に罰を受けた9歳の少年と同じ場所にいる。答はまだ見つからない。将来、見つかるのか。

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The Economist September 19th 2020

Inflation: Off target

Deliberative democracy: Amateurs to the rescue

Banyan: No pay, no rights, no recourse

Ethnic tensions and state violence: Ethiopia’s transition is in peril

Israel and the Arab world: End of illusion

Russia’s elections: Winning from death’s door

The world economy: The 90% economy, revisited

(コメント) 金融政策はインフレ率によって正当化する時代を終わる、と考え始めています。子億歳的な海上輸送に関わる労働者たちは、感染リスクと失業の中で、帰国することもできません。エチオピアのアビイ大統領は、ノーベル平和賞を受賞したが、その後、コロナウイルスを理由に選挙を延期し、反対派を弾圧した。

中東の記事を読むと、2国家案を葬るネタニヤフはトランプと、サウジアラビアとイスラエルの国交正常化、あるいは、イランとの戦争を準備しているような気がしました。

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IPEの想像力 10/12/20

トランプの陽性判定に驚く論説や、アフガニスタン戦争についての論説に、菅政権の妄言を思い浮かべるのは、それほど異常なことではないでしょう。

Reviewをまとめながら、民主主義と戦争の論説に興味を持ちました。

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プーチンが命じたかどうか、それはわかりません。しかし、ロシアの汚職反対活動家、ナワルニーは、化学兵器ノビチョークによって暗殺されるところでした。紙一重で、ドイツの病院から「生き残った」とメッセージを送りました。

・・・ナワルニーは選挙に立候補できないし、彼の政党は存在しない。しかし、「スマート・ヴォ―ティング」というアイデアを駆使する。立候補者の中で、与党「統一ロシア」をもっとも敗退させる可能性のある候補を支援するのだ。

・・・クレムリンは選挙を操作し、支配を維持してきたが、その力は投票率が低いことに依存している。シベリアにあるロシア第3の都市ノボシビルクスでは、投票率が20%である。しかし、それは逆に、反対派が逆転するために動かす投票数も少なくてよい。人びとは何をやっても無駄だ、と思っている。クレムリンが、冷笑と無気力を国民に広めてきた。

・・・ナワルニーは「希望の戦略」を展開する。しかも、彼は生き残った。

ある意味で、民主主義諸国の政治的衰退を回復する革新が必要なのです。「小さな民主主義」と私はよびました。「熟議の民主主義」が紹介されています。有権者の特徴を反映した、普通の人々を少人数集めて、重要な問題を議論してもらうのです。

アイルランドは、国民の多数がカトリックの国ですが、熟議による合意形成と提言を受けて、「妊娠中絶」と「同性婚」を問う国民投票を行い、明白な多数による承認を与えました。

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貧しいアフガニスタンは、911テロから1カ月もたたずに、米軍の攻撃を受け、戦争状態になりました。19年を経て、アメリカは明白に敗北した、とジャーナリストは書きます。

彼が9歳の少年であったとき、教師に「なぜ彼らはあんなことをしたの?」と訊かれ、答えられませんでした。あんなこと、とは、911テロ攻撃です。犯人の多くはサウジアラビア人でしたが、アメリカはビン・ラディンを匿ったという理由でアフガニスタンに侵攻しました。

・・・テロとの戦争は、再建、女性の権利、経済的成長、911に対する正義、民主主義を約束したが、すべてが失われ、どこにも見えない。

・・・20年かけて何度も訪問し、国の内外で無数のインタビューをした。私は、教師に罰を受けた9歳の少年と同じ場所にいる。答はまだ見つからない。

今、あんなこと、とは、アメリカによるアフガニスタン戦争です。

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菅首相は、指導者ではなくフィクサーだ、とFPの記事が書きました。彼は日本を復活させる理想を描くより、権力基盤を固める裏工作と、長期の戦略を描いているのでしょう。

携帯電話料金大幅引き下げや、デジタル庁の設置、ハンコ廃止など、わかりやすい反面、重要テーマをすべて無視し、政治の矮小化を政府は意識的に進めています。学術会議任命拒否問題さえ、何か、本当に準備している邪悪なことを隠すためだったのか、と思うほどです。「間違いだった」と認めて、学術会議に積極的な諮問を、現下の重要な諸問題について、始動するべきでしょう。

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