IPEの果樹園2020

今週のReview

5/18-23

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企業と失業者の救済 ・・・COVID-19の最適な対策 ・・・パンデミックと富裕層 ・・・トランプのウイルス対策 ・・・東南アジアの時代 ・・・世界不況から戦争へ

長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 企業と失業者の救済

FT May 8, 2020

How to save pandemic survivors from the scourge of unemployment

Richard Layard

次の重要な問題は大量失業である。パンデミックの期間に、休職中のものを除いても、すでに英米などで、労働者の10%以上が失業している。

ロックダウンが終わっても、新規雇用は少なく、レイオフや企業の倒産が続くだろう。過去の不況が示すように、長期の失業が真の困難をもたらす。長期に仕事に就かなかった者を、雇用者は好まない。何度も休職して失敗する経験は、労働者を絶望させる。

時が経つと、失業手当で暮らす人は労働市場に参加しなくなる。そしてますます抑鬱状態になり、参加することをあきらめる。それは本人にとっても、経済にとってっも、良くないことだ。

パンデミックによる休職制度が突然に終了し、大量の失業者が生まれることを阻止する必要がある。労働者は雇用されたまま休職し、企業は政府から賃金の80%を得ている。この制度が終われば、労働者たちに仕事はなく、解雇されるだろう。

ドイツの制度から学ぶべきだ。ドイツでは、労働者が労働時間を短縮して雇用されることを、政府が支援している。

さらに、よりラディカルなアプローチが必要だ。失業手当を1年で終わらせ、その後は彼らに仕事を保障するべきだ。そのために、民間企業、政府、ボランティアを含めて、長期失業のリスクにさらされた労働者を雇用する者に補助金を支給する。

多くの国で、こうした制度は機能している。雇用者は仕事の質を提示して、競争的に補助金を適用に応募する。これは失業手当を受け取る条件として仕事を義務付けることとは異なるものだ。

仕事の保障とは、「あなたは仕事をする資格があります。これらの仕事をすれば、報酬を支払います。」という意味だ。公的資金は各職場に6か月間支給される。そして、その後は補助金がなくても仕事が継続することを政府は望む。もし継続しないなら、他の仕事に就くだろう。

こうした仕組みは政府の支出を増やすが、他方で、社会福祉や税金、GDPの面でプラスになる。イギリスは、2009年に、若者に対する同様の仕組みthe Future Jobs Fundを作った。政府は支出の半分を、こうした形で節約できた、と推定されている。

不況で最も深刻なダメージを受けるのは若者である。経歴の最初に受けた悪条件は、その後に影響する。ロックダウンの補助金が支給されるのは、より高齢の労働者だけだ。

積極的労働市場政策とは、失業手当に条件を付与するもので、その価値が歴史的に示されている。ドイツのハルツ改革は、フランスに比べて、失業水準を急速に低下させた。

不況による失業と違い、今回の失業は政府がもたらしたものだ。最も影響を受ける人々を保護する義務がある。それは経済にとってもよいことだ。

FT May 8, 2020

Free markets must be protected through the pandemic

FT May 10, 2020

Here is how banks can help save the economy

Thomas Huertas

FT May 12, 2020

The world needs a new attitude towards debt

The Guardian, Wed 13 May 2020

The Guardian view on the UK economy: deep depression and a huge bill ahead

Editorial

FT May 13, 2020

Japan models a new look for national security

Leo Lewis

日本企業への外国投資に関する新しい規制が、先週、公表された。それは安全保障に従って決められるというが、意図したように、混乱している。

ビジネスに対する日本政府の姿勢は、コロナウイルス危機によって強められた。

日本政府は、安全保障に占める企業の役割について、より全体的な・統一的な見方を採ってきた。世界第3位の経済を望ましい内容に維持したいと考えている。外国からの投資を促す財務省も、保護主義的な枠組みを採用する政府に従う。

日本に限らず、アジアでも、アメリカでも、グローバリゼーションに対する攻勢が強まっている。サプライチェーンの脆弱性が問題になっている。なんでも必要な物は市場が提供する、という前提が、コロナウイルス危機で通用しなくなった。

より「政治的」な介入が、安全保障としてではなく、「社会的な回復力(レジリアンス)」という概念に拡大され、強調されている。日米の政府関係者は、中国に依拠するサプライチェーンの重要部分を、「グローバルな信頼のネットワーク」に再構築する計画を立てている。日本政府は中国との関係を改善しているが、コロナウイルス対策として、中国から生産拠点を日本国内に戻す企業のための補助金を設けた。

生存に関わる重要分野については、政府が投資を選別する体制をめざしている。「中核」的な国益にかかわる企業として、財務省が政府の投資機関に知らせる分野は、全体の1%強、518企業におよび、それは東京証券取引所の市場評価額の約40%である。

日本はつねに経済を諸企業とその資産や知的財産の合計で考えてきた。そこには、経済を無傷のまま維持したいという他国よりも強い願望、投資家に対する不満がある。

島国の持つ不安とみなされた感覚が、コロナウイルス危機で、世界に広まった。

FT May 13, 2020

CLOs: ground zero for the next stage of the financial crisis?

Joe Rennison and Robert Smith in London

FT May 13, 2020

America, coronavirus and the bailout refuseniks

Gillian Tett

政府は国民に、いわゆるPPPPaycheck Protection Program)を提供した。Scott Gallowayは、25万ドル請求できると理解したが、申請しなかった。彼は熱狂的なリバタリアンで、シュンペーターの「創造的破壊」を信奉していたからだ。

彼には裕福な支援者もいるから、その意見は、もし零細企業だったら違うだろう。しかし確かに、こうした支援策を出す政府には、何か問題がある。

COVID-19が襲ったとき、それはあまりにも大きな衝撃で、政府の介入や連銀の金融市場救済は当然だった。企業の倒産は、そのまま、累積的に経済全体におよんだだろう。特に、アメリカの多くの貧し家庭には社会保障がなかった。

しかし、2カ月がたって、そのロジックは正しいが、同時に、甚大なコストを生じることが分かってきた。政府の債務は急増しており、また、活力のある企業だけでなく、死んだはずの企業が生き残ってしまう。

さらに、別の問題として、救済はアメリカにおける所得の不平等を強めることだ。支援策は、中小企業を助け、個人やその子供にも1200ドルを支給した。しかし、連銀の債券・株式市場における買い支えは、こうした資産の多くを所有する富裕層に利益をもたらす。

もちろん、ムニューシン財務長官が言ったように、それは避けられない、危機の一時的コストだ。壊れたコンピューターを修理するようなものだ。ハードウェアはそのまま、修復したら、ロックダウンを解除する。

現実には、経済の「再起動」はコンピューターと違う。なぜなら経済はつねに変化するからだ。旧システムを保存することは、既得権者の利益になる。

ほかに良い方法はないのか? 理想的には、アメリカが社会保障制度を強化すればよい。労働者は、たとえ失業しても医療保険を利用できる。「創造的破壊」は、労働者にこれほど大きな苦痛を与えない。

現実には、多くの共和党員がそのようなセーフティーネットを「社会主義」として嫌っている。アメリカ人の多くも救済されるのは嫌だ。しかし、それを拒めない。アメリカの資本主義は深刻なモラル・ハザードをかかえている。

FT May 13, 2020

The Zimbabwification of Wall St

By: Paul Murphy

FT May 13, 2020

Debt should not be the only tool to get companies through Covid-19

Andrea Vismara

PS May 13, 2020

Messages from “Fiscal Space”

JAYATI GHOSH

VOX 13 May 2020

How to pay for the (pandemic) war

Francesco Bianchi, Renato Faccini, Leonardo Melosi


 COVID-19の最適な対策

FT May 8, 2020

How this crisis will take us all back to the 1970s

Robert Shrimsley

ここ数年の出来事は1970年代を思い出させる。過去の記憶に楽しみを見出すのは良いことだ。

UKはロックダウンに入り、ソーシャル・ディスタンシングや個人の接触は最小限に抑えられた。かつての最悪の部分を再現している。

家の中は全く正常に見える。先進技術が友人や職場とつながっており、たった3つのTVチャンネルではなく、インターネットがあるのだから。

しかし、家から1歩、外に出ると、そこに問題が広がっているのを観る。火星の生活がそこにある。自宅内では2020年、外には1970年代の世界だ。

1970年代の色は、茶色、そして灰色だろう。自動車に乗っても遠くには行かなかった。石油価格の高騰で、週3日間しか働けず、金もなかったから。食事はひどかった。

ウイルスとともにある生活では、パブやレストランがほとんどないだろう。労働時間も厳しく制限されるはずだ。映画館も、劇場も、外食も、ほとんどなくなってしまう。なんでも自動車の中からだ。

ソーシャル・ディスタンシングで、小店舗には1人の客しか入れない。1970年代のように、行列を気にせず、彼らは長い世間話をしている。

1970年代のような最悪の人種差別、女性差別、ホモフォビアを免れるとしても、大量失業とホームレスが、しかも最も若い人々に広まるかもしれない。

イギリスは1973年にEU(当時はEEC)に加盟した。しかし、相変わらず内向きで、けだるく、非効率であった。

ようこそ1970年代の世界へ。当時よりも楽しいことは少ないだろう。しかし、こんな時代は終わるはずだ。そして、なぜ人々が1980年代を好きだったか、思い出すだろう。

FT May 8, 2020

Markets should beware this morally hazardous approach to policymaking

John Plender

コロナウイルス危機に、中央銀行と政府は何でも、だれにでも、同様に与えるように見えるが、そうではない。回復は非常に限られている。

株式市場では、Microsoft, Apple, Amazon, Alphabet and Facebookが回復を指導している。これらの企業を合わせると、S&P500企業株式の市場評価額の5分の1以上になる。10年物の財務省証券の利回りは記録的な最低水準であり、原油価格も低迷している。新興市場の通貨はドルに対して大幅に減価している。世界の銀行株価もまだまだ回復とは言えない。

貿易紛争は終わらない。中国は、2007-08年の金融危機に対して示したような支援策を、今回は示さないだろう。

グローバリゼーションの逆転、ジャスト・イン・タイムの見直し、失業と不安に対する貯蓄の増加、短期的には、大幅にデフレ的な状況だ。

財政刺激策を早く逆転してしまうリスクがある。また、中央銀行による債務の吸収は、次第に、金融政策の効果を失わせる。超低金利でも成長は刺激できなくなる。

中央銀行の政策がモラル・ハザードをもたらし、次のバブルを期待するようになる。

すべての債務が返済されることはないだろう。中央銀行は財政赤字を貨幣化している。それはインフレで焼却されるだろう。

VOX 10 May 2020

The case for permanent stimulus

Paul Krugman

コロナウイルス危機に対して、伝統的な金融緩和政策は効果がない。私は、長期的な財政・金融支援策を提案する。

政府はGDP2%を公共投資する。インフラ建設、R&D、幼児教育、など。そのための課税はしない。それは長期にわたり低金利が続くと考えるからだ。長期停滞である。ゼロ金利にしても、完全雇用のための生産力ギャップは埋められない。日本やヨーロッパはそうした状態が続いている。

それゆえ、大規模な財政赤字による公共投資を行うことだ。債務/GDP比率を警戒する者は間違っている。利子率が成長率よりも低ければ、財政状態は長期に持続可能であり、問題ない。

たとえそれが200%に達しても、債務危機は起きない。日本がそうだ。反対派は、財政刺激策を続けても金利は上がらない、という私の前提を疑う。

この提案は、私が1990年代半ばに日本に対して示したものと同じだ。日本の拡大的政策は雇用の維持に成功しており、債務/GDP比率が高くても危機は起きていない。

欧米の多くのエコノミストたちは日本を非難していたことについて謝罪すべきだと思う。われわれは日本的問題に直面して、失策を続けている。

The Guardian, Mon 11 May 2020

We can't restart Britain's economy until we get coronavirus under control

Simon Wren-Lewis

世界中で採用されているCOVID-19の最適な対策は2段階である。第1段階は、ロックダウンで感染拡大を止める。そして、検査・追跡・隔離test, trace and isolate (TTI)インフラを整備する時間を稼ぐ。

ロックダウンは、3つの条件が整うまで続けるしかない。すなわち、新規感染者が大幅に減少し、TTIインフラが整備され、外国からの渡航者を2週間効果的に隔離する、という条件だ。

2段階は。ロックダウンを徐々に解除する。人びとは安心することで外出するようになる。政府がロックダウンを解除しても、経済は回復しない。ウイルスが完全に制御できたと、人びとが確信する必要があるからだ。それは政府が決めることではなく、消費者の判断だ。

イギリス政府が集団免疫について検討する間、不必要に時間を浪費したことは、その被害を増大させた。しかし、ロックダウンに転換してからも、より長期間、解除できないという意味で、さらに経済的な損失を増やした。これは政府の歴史的な大失策である。

NYT May 11, 2020

How to Create a Pandemic Depression

By Paul Krugman

FT May 12, 2020

Business cannot simply awake from this coma and carry on

Raghuram Rajan

パンデミックが起きたとき、1カ月もしくは2カ月のロックダウンを終われば、経済が再開されるという期待が広く存在した。

豊かな国では、中小企業に支援金や賃金の補助を支払い、大企業は低利(無利子)融資を受けた。それは、費用はかかるが、短期的なものだった。

こうした見方は過度に楽観的であるだろう。ビジネスが再開できるのは、まだ、ずっと先になる。製造業では多くのサプライチェーンが同時に再開しなければ意味がない。企業は単に昏睡状態から目覚めるのではない。何をするか、どのようにするか、すべてが変わるのだ。

期限のない融資はビジネスにとって問題である。低利融資が債務を増大させてしまう。それは投資の能力も意欲も失わせる。価値を破壊する企業が生き延び、ゾンビ企業になる。需要が弱ければ、健全な企業が回復を妨げられる。

われわれは難しい選択をしなければならない。公的資金は現存する企業を凍結するため、地代や賃金、私用されていない資源の利払いのために使用すべきではない。

むしろ、公的支援を次第に削減するべきだ。ロックダウンが長期化するにつれて、労働者を守ることが重要になって、職場を保護することではなくなる。

政府は、家賃を下げてもらう零細企業と所有主との交渉を助ける。あるいは、低利の融資をする。破産処理を助ける。再スタートを望む者に融資を与える。また、大企業は、より組織された資本を持っている。倒産すると失われる。公的に延命することはないが、企業の金融市場からの資金調達を助けるべきだ。

PS May 12, 2020

Making the Best of a Post-Pandemic World

DANI RODRIK

COVID-19の危機によって世界経済は3つの変化を経験するだろう。市場と国家とのバランスが国家に、ハイパー・グローバリゼーションと国民的自給体制とのバランスが自給体制に移り、経済成長の高い見通しが低下する。

これら3つはパンデミックの前に始まっていたことだ。より包括的な成長の世界経済へ、ネオリベラルの市場原理主義ではない、不平等や不安定さの対策を重視した大きな政府へ変化していた。それは、ジョー・バイデンの政策公約が左派に重心を移したことにも顕著に示されている。

問題は、その変化を実現する国家がどのような形を選択するか、である。旧式な国家介入主義に戻るのか、グリーン・エコノミー、グッド・ジョブ、中産階級の再生を重視する包括的経済に向かうのか。

国民国家の重心は、貿易戦争やエスニック・ナショナリズムをめざすのか、あるいは、国際興梠臆が効果的な分野ではグローバリゼーションを生かし、グローバルな公衆衛生、国際環境規制、タックス・ヘイブン対策、その他の近隣窮乏化政策を抑制する。

貿易と投資を増やすことだけが目標にせず、先進経済の国内における社会交渉、発展途上諸国の適正な成長モデルに、十分な余地を与えるのか。

COVID-19はウェークアップ・コールであった。政策選択の余地がある。世界経済を決めるのはウイルスではなく、われわれの対策である。

The Guardian, Wed 13 May 2020

Right now, the only thing staving off a collapse in the social order is the state

Aditya Chakrabortty

PS May 13, 2020

Managing the Coming Global Debt Crisis

BARRY EICHENGREEN

発展途上諸国は1982年以来の最悪の債務危機を迎えつつある。当時は、債権者が3年を経て共通の対策を示した。ベイカー・プランである。幸い今回は、G20が迅速に、低所得国への債務返済猶予を宣言している。それはベイカー・プランに似ているが、問題は、ベイカー・プランが失敗であったことだ。

今回の債務危機は史上かつてない規模である。1000億ドルを超える資本が発展途上諸国から流出した。2008年の世界金融危機の後、2か月間で流出した額の3倍である。本国への移民の総金額も、今年、1000億ドル減少するだろう。石油・天然ガスを輸出する発展途上諸国はその輸出額が85%も減少する。世界貿易は32%減少し、世界金融危機後の3倍である。アフリカではバッタの被害が加わる。

国際金融システムは、今も、非常に多くをドルに依存している。発展途上諸国の民間企業はドルで借り入れを増やしている。アメリカ連銀は、“Favored 4” (Mexico, Brazil, Singapore, and South Korea)を除いて、スワップを合意していない。

ベイカー・プランは、一時的な債務返済を停止するだけで、経済が回復すると考えたが、それは幻想であった。特に、銀行は新規融資を増やさなかった。他の銀行の融資で、債務を返済するという、「ただ乗り問題」を解決できなかった。

1989年になって、ブレディー・プランが現れた。債務は償却する。銀行融資は債券に変える。投資家はさまざまな条件の中から選ぶことができた。先進経済からは政府がそれを助ける「甘味料」(優遇策)を取引に与えた。

すなわち、われわれは新ブレディー・プランを実行するべきだ。借り手の責任ではない持続不可能な債務については焼却する。それを新しい金融手段に変える。新興諸国の債券は、主に銀行システムの外で保有されているから、銀行に衝撃を与えない。大規模な転換は、新しい金融手段(GDPインデックス債、商品価格インデックス債)を導入するチャンスである。

債務危機の処理は、人道危機であり、グローバルな公共政策の問題である。IMFが国連憲章第7条に従い、危機を悪用する債権者の訴訟から債務者を保護するべきだ。


 ロックダウンとその解除

FT May 8, 2020

Plagues, paranoia and my very Tudor lockdown

Robert Armstrong

FP MAY 9, 2020

How Are Countries Reopening? Firsthand Reports From Around the World

BY AMANDA SLOAT

FT May 13, 2020

Lockdown reveals a US civil fabric healthier than many thought

Janan Ganesh


 司法の政治的利用

FT May 8, 2020

Dropping Flynn case turns Bill Barr into Donald Trump’s political sword

Edward Luce

NYT May 8, 2020

The Appalling Damage of Dropping the Michael Flynn Case

By Neal K. Katyal and Joshua A. Geltzer

FT May 13, 2020

Donald Trump and the politicisation of US justice

Michael Flynnは、Roger Stoneと同様、トランプ大統領の仲間であることから、告発を取り上げられた。アメリカは、エスニックや宗教による基礎を持たない国として、法の下で平等に扱われるということが国家の実体である。トランプがそれを損なうことは、この先も長く、アメリカの諸制度を苦しめる。


 パンデミックと富裕層

PS May 8, 2020

Global Poverty’s Sputnik Moment

STEVE HOLLINGWORTH

NYT May 8, 2020

No Return to the ‘Old Dispensation’

By Roger Cohen

FT May 12, 2020

The wealthy should welcome an opportunity to reduce inequality

Stefan Wagstyl

「死はすべての者に公平である。」 ローマ時代から言われることだが、当時も今も、それは全く真実ではない。

パンデミックもそうだ。広大な住居、休暇用の別荘、山の家、富裕層にはロックダウンでも多くの選択肢がある。ヨットで自己隔離することもできる。他方、貧困層は部屋がなく、選択肢がなく、日当たりも少ない。感染を避けて自宅にとどまるだけの金もない。

富裕層と貧困層が同じ戦いの中にあると言うのは、将軍と歩兵が同じ戦争の中にあるようなものだ。ドナルド・トランプはその点を指摘した。著名人が検査を先に受けている理由を訊かれたときだ。「たぶん、人生というのはそういうものだからさ。」 アメリカ大統領がそう言った。

多くの富裕層は公正にふるまっている。パンデミックと闘うために資金を提供している。たとえば、Alibabaの創立者であるジャック・マー、Microsoftの大富豪であるビル・ゲーツだ。

富裕層は、自分たちの利益のためにも、この貧富の格差を心配するべきだ。第1に、糖尿病や心臓病はうつらないが、富裕層も他人のCOVID-19がうつるかもしれない。第2に、富裕層も、生活の自由を大幅に奪われる。特に、若者たちの機会が失われる。たとえ富裕層でも。

また、危機は、自分たちの生活が、たとえ富裕層でも低所得の労働者たちに支えられていることを実感させる。医療サービス、郵便、警備、ごみ収集も。

最後に、経済回復だ。それが実現するには、何百万人もの労働者たちが職場に戻らなければならない。資本の所有者でも、彼らなしには、何も機能しない。

アメリカは史上最悪の貧富の格差を持つ状態でパンデミックに入った。それはロックフェラーが石油王として富を得た時代に並ぶ。

企業家たちは、グローバリゼーションやインターネット革命から他の人びとを圧倒するような富を得た。確かに多くの雇用も生み出しただろう。それでも、パンデミックの前から、取り残された人びとは不平等に苦しんでいた。Angus Deaton and Anne Caseが「絶望死」とよんだ問題だ。

2017年の著書The Great Levelerで、歴史家Walter Scheidelは、近代社会が不平等の病を慢性的に悪化させ、それを緩和したのは、戦争と疫病だけだった、と結論した。COVID-19のパンデミックは、ヨーロッパの人口の3割から5割を死滅させた黒死病に比べると小さなものだが、「革新的変化」の機会になるかもしれない、と考える。

富裕層は、パンデミックの中で、現状が持続可能かどうか、考えてみることだ。


 金融政策と為替レート

PS May 8, 2020

Keeping Up with the Fed

KOICHI HAMADA

COVID-19のもたらす世界不況は、金融緩和を行う動機になる。すでにアメリカ連銀は何兆ドルもの資金を市場に供給した。2008年の世界金融危機が起きたときも、金融緩和は為替レートの変動を通じて世界に波及した。

経済的ショックやパンデミックなど、自然災害は、その国の通貨を強くする。日本で1995年に神戸で震災が起きたとき、また、2011年に東日本で震災が起きたとき、円高が強まった。

なぜか?

為替レートは、その通貨への世界市場における需要を反映する。また、円建資産とドル建資産の供給にも関係する。ドル建資産が大量に供給されれば、円高が生じる。

災害は経済活動を低下させ、円を安くするはずだが、人びとは不安に対して現金を多く持つ。また、災害は供給も制約した。

初期には、アメリカの感染者が少なく、円高が進んだ。その後、アメリカで感染者が爆発的に増え、ドル高になった。

しかし、世界金融危機と同様、金融政策が為替レートに影響した。連銀が大量に債券を購入し、他の通貨が一斉に増価した。ドルがユーロに対して下落したのは、ECBが連銀ほど大胆に金融緩和しない、と市場は考えたからだ。

これは新興な意味がある。為替レートは輸出競争力を変える。日本はコロナウイルス対策で成功した国だが、それとは関係なく、金融緩和を示す必要があった。

FT May 11, 2020

The Fed’s Vietnam moment

Robin Wigglesworth

FP MAY 13, 2020

The Death of the Central Bank Myth

BY ADAM TOOZE

インフレは今では重要な問題ではない。中央銀行の独立性を重要な枠組みとする時代は終わった。ドイツの裁判所は多数派の意見に従わなくてよい。しかし、それが守っているのは時代錯誤のルールだ。



(後半へ続く)