IPEの果樹園2020

今週のReview

4/27-5/2

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消費から貯蓄へ ・・・コロナ債をめぐる対立 ・・・アメリカのシステムを変える ・・・新マーシャル・プラン ・・・パンデミックと米中の社会モデル ・・・経済回復のための富裕税 ・・・財政赤字の貨幣化 ・・・ロックダウンのトレードオフ ・・・トランプ再選戦略 ・・・ロックダウン解除の論争

長いReview

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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 消費から貯蓄へ

FT April 19, 2020

We are entering the new age of American austerity

Rana Foroohar

アメリカはこれまで世界における「最後の消費者」であった。しかし、それは変わるだろう。IMFが「ロックダウン大不況」に注目し、コロナウイルス危機からの迅速な回復を願っても、アメリカは緊縮の新時代に入る。

現在の経済は消費によって成立している。1980年代から、アメリカは消費者と企業に貯蓄より債務を促し、成長を高めるため、金融部門の拡大とバブルを繰り返し生じた。2008年の金融危機後もそうである。パンデミックはその崩壊と経済変化を加速し、公的債務の増大、サプライチェーンの再編、ハイテク導入による労働市場の変化を避けられない。

多くの点で、アメリカ人は1929年の崩壊とその後の変化を観ている。それはより多く生産し、より多く貯蓄し、消費を減らす時代であった。

当時も、技術革新と安価な融資で、1920年代の好況は不平等を極度に拡大し、人びとは借り入れを増やして消費した。また、彼らは初めて株式投資した。それらが1929年に崩壊したのだ。その経験は世代の行動パターンを変えた。アメリカ人の貯蓄率は1930年代初めのゼロ水準から第2次世界大戦中の28%まで上昇した。

今と同じように、1930年代も政府は一層の不況を避けるために大規模に支出した。連邦政府の支出はGDP3%から10%に上昇し、1940年代末の40%まで上昇し続けた。予算赤字も増大したが、今と違って民間部門の貯蓄率は高かった。彼らは中国人に見えた。強制的な割り当てで消費を抑え、輸出と軍需生産で所得が増えた。

同じことを再現するのは無理だろう。サプライチェーンを再編して国内が最工業化し、賃金も上昇するとしたら、労資双方に利益だ。しかし短期的には、脱グローバリゼーションのコストが生じる。政府は何でも救済しているが、それは生産性を上げるケインズ主義的なインフラ投資と違い、コストを高め、成長を抑える。

将来、アメリカ人は債務を返済しなければならず、より多く貯蓄する。そのため政治家たちは、非生産的な債務を減らし、税制の抜け穴を閉じることから始めるべきだ。連銀もバランスシートを縮小する。アメリアは新しい緊縮の時代に入る。


 コロナ債をめぐる対立

PS Apr 23, 2020

COVID-19 and Europe’s New Battle of Ideas

DANIEL GROS

ECBはまさしく金融市場を落ち着かせるためにすべてのことをした。しかし、EU諸国は重要な問題に答えないままだ。ブロックとして、財政的な苦境にある国を支援することができるか、支援する意志があるか?

表面的には、加盟諸国が相互に保証するコロナ債の発行に関する論争である。しかし、実際は革新的な金融手段が、財政政策や、ユーロそれ自体にまで関わる将来の方向を決める論争である。

Markus Brunnermeier, Harold James, and Jean-Pierre Landauは、その研究(The Euro and the Battle of Ideas)で、ユーロ圏解体の危機におよぶ2010-14年の論争を、そのアイデアの役割に注目して分析した。フランスとドイツが、国内の論争を支配する基本的な経済のアイデア・考え方に従って、対立する立場を取っていた。

今回の衝突はドイツとイタリアである。イタリアではコロナ債を、ヨーロッパの連帯を示す当然の手段とみている。COVID-19の危機はどの国の政府も予測できなかった。イタリアはパートナーから支援を受けるべきだし、それが唯一の受け入れ可能な解決策だ。

多くのドイツ人は、コロナ債に道義的な危険を感じている。恐るべきユーロ債発行に道を開くからだ。それは、ドイツの納税者がイタリアの借金を支払う義務がある、という意味だ。

フランス、スペイン、イタリアはこれを理解できない。既存のイタリア政府債を保証することなど求めていないからだ。コロナウイルス危機の追加コストを共通の債券で調達したいだけである。しかし、オランダやドイツの政治家はそれを疑う。もっと巨額の、制御されない手段が次に出てくる、と。

実際、イタリアその他で、コロナ債がユーロ債への途であると夢見る多くの者がいる。彼らは共通の債務手段が「通貨同盟」を完成するために必要である、と考える。危機は、その目標を達成する絶好の機会なのだ。

ドイツ人は、危機で、従来の慎重な財政政策アプローチを強く確信するだろう。なぜなら、彼らが多年にわたり均衡財政を維持したからこそ、労働者たちを支援し、企業が危機を克服することもできるのだから。しかし、「緊縮策」を長期にわたり批判してきた人たちは、ドイツが巨大な財政赤字を出すことに、自分たちの主張の正しさを確信する。結局、現時点に財政赤字が増えることには誰も反対していない。

残念ながら、問題は危機の後だ。政府はできるだけ早く財政赤字をなくし、債務を減らすべきか? あるいは、政府は金利が低い間は財政赤字を続けるべきか? この闘いは、ユーロの将来を決定的に変えるものだ。

回復はかなり先になるから、今は問題にならない。しかし、それが決まらない間は、コロナウイルス危機に対しても共通の戦略を立てられない。


 新マーシャル・プラン

The Guardian, Tue 21 Apr 2020

Coronavirus is the biggest disaster for developing nations in our lifetime

Ian Goldin

アフリカ諸国には人工呼吸器が1つもない。貧しい国にはUKのような水準のセーフティー・ネットは存在しない。COVID-19の最大の惨禍は発展途上諸国に広がりつつある。政府が感染を抑えるためにロックダウンを行ったため、経済的危機として始まった。

ロックダウンの即座に現れる効果は飢餓である。すでに干ばつや異常気象、最近のイナゴの大量発生により、食糧不足が起きていた。それが一気に悪化した。国際的な支援が必要だ。

アフリカ諸国は2020年に440億ドルの債務を返済しなければならない。これを償却するグローバル・マーシャル・プランが必要だ。アメリカとヨーロッパ諸国の政府は、ビジネスを維持するために8兆ドルを支出する。それに比べて、わずかな額でしかない。世界GDP3%である。

われわれはグローバリゼーションの「バタフライ効果」を知った。自分たちの健康は他者の健康に依存している。


 パンデミックと米中の社会モデル

PS Apr 23, 2020

What COVID-19 Reveals About the US and China

ANDREW SHENG, XIAO GENG

中国は厳格なロックダウンを行い、新規感染者数を劇的に減らした。他方、アメリカは対策が遅れ、分裂している。その結果、感染者が増え続け、死者数も増大している。この違いはしばしば政治の違いとして説明されるが、成長モデルの違いが重要である。

アメリカでは、数十年も続いたネオリベラル政策の結果、債務に依存した消費が増えた。アメリカ人は貯蓄するより消費し、USドルがグローバルな準備通貨であるため、財政赤字と経常赤字を膨張させた。中国など、新興市場の世界市場参加により、連銀の拡大的な政策にもインフレ率は低いままだった。

アメリカは、金融システムが過度のレバレッジによって、実体経済を離れて拡大した。電子決済の発達にもかかわらず、現金、小切手、クレジットカードに依存し続け、ハイテクのプラットフォームは債務依存経済の膨張を「一方通行」のダイナミズムに終わらせた。すなわち、Uberなど、販売を最適化するプラットフォームは、労働者への訓練や保護を最小化するものだった。

こうしたアメリカ・モデルは、金融、環境、社会面で持続不可能だと分かっていた。特に、急拡大する不平等だ。債務・消費サイクルの破綻は、連銀・財務省が介入して破滅を回避した。

中国モデルは、こうした欠陥の多くを免れている。高貯蓄と、過度の消費ではなく、輸出と投資が成長を支えてきた。ハイテクのプラットフォーム、特にフィンテックは、伝統的経済をデジタル・エコシステムに広い範囲で結びつけた。利用者は消費と収入を共に増やすことができた。それは中国経済を構造的・組織的に回復力の高いものにした。

COVID-19の危機に対応できたのも、中央政府の計画化ではなく、このハイテクプラットフォームであった。ロックダウンの期間にも、Alibaba, Pinduoduoなどが内外の消費者と結び、多くの零細企業にとってのライフ・ラインを維持した。JD.comなど、ロジスティクス企業も重要だった。

TencentWeChatは家族や友人とのつながりを維持し、WeChat Payは支払いを、さまざまなアプリが政府の計画や学校を助けた。Alipayとともに、人びとの行動を追跡でき、健康の情報を管理できた。これらのアプリは、ほぼすべてのスマートフォンに導入されている。中国のスマートフォンによる貯蓄・消費・債務・所得モデルは、8億台のスマートフォンをつなぎ、ロックダウンの中でも、流動性不足を生じない。

パンデミック後、中国もアメリカも、より包括的で、回復力の高い、社会モデルを目指すだろう。しかし、アメリカの危機対応を観る限り、それは難しいようだ。


 経済回復のための富裕税

NYT April 21, 2020

A Wealth Tax Is the Logical Way to Support Coronavirus Relief

By Daniel Markovits

コロナウイルス危機は、深刻な不平等に苦しむアメリカを襲った。現在、そして将来の、コストの多くが、すでに苦境にある人々に集中する。コロナウイルス危機の対策には莫大な備蓄が必要だが、それをわれわれが豊かな数十年の蓄積から引き出すべきである。アメリカは富裕税を制度化するべきだ。

パンデミック危機への支援策は、およそ2兆ドルに達するだろう。しかし、その債務の返済は若い世代に残される。彼らはすでに親の世代よりも貧しくなっている。そうではなく、支援策を1度だけの富裕税で調達するべきだろう。最も富裕な人びとは、不平等が拡大するこの時期に富を蓄積した。

細部を問わない、基本的なアイデアはこうだ。アメリカの最も富裕な家族、上位5%は、57兆ドルの資産を保有する。それは家計の資産全体の3分の2である(1960年には2分の1であった)。250万ドルを控除額とすれば、95%の家計は課税されない。これにより5%の税率で最富裕層から2兆ドルを徴収できる。

コロナウイルス危機の影響は、富裕層と貧困層に同様に感染が広がるとしても、大きく異なる。富裕層は、庭に囲まれた快適な住宅や、あるいは、田舎の別荘に避難する。貧困層は、しばしば密集地域にあるアパートの小さな部屋に住み、日々の必要物を買うのにも苦労している。富裕層は安定した職を、遠隔で続けることができる。

不平等は子供たちの将来にも深く影響する。富裕層のプライベート・スクールは早期にオンライン教育に移行するが、パブリック・スクールは、特に貧困地区では、オンライン教育の実施がむつかしい。夏季休暇でさえ、富裕層と貧困層の間で教育の差が生じる。

富裕税は、常に、激しい政治論争になってきた。バーニー・サンダースとエリザベス・ウォーレンも富裕税を掲げて大統領予備選に立候補した。それは進歩派に強く支持されたが、多くの反対も受けた。その結果、極端に裕福な者だけに限定し、税の徴収に問題を生じる案になった。超富裕層は資産を海外に移し、高度な税回避手段を利用できる。また継続的な富裕税の徴収は、将来の行動に影響を与え、資本蓄積を減らし、技術革新や成長を損なう危険がある。

COVID-19は政治状況を大きく転換した。超党派で、1度限りの富裕税を、国民的危機への連帯として徴収するなら、こうした欠陥は是正できる。もし憲法修正16条に違反すると保守派の最高裁判事が富裕層に与して政治に介入するなら、議会は彼らと闘うべきだ。


 財政赤字の貨幣化

PS Apr 20, 2020

Monetary Finance Is Here

ADAIR TURNER

COVID-19のパンデミックに対応して、アメリカ連銀は財務省証券の無制限購入を、イングランド銀行は2000億ポンドの国債購入を、ECB7500億ユーロのユーロ圏(加盟国政府)債券購入を決めた。中央銀行は財政当局の赤字を貨幣化するだろう。問題は、それを明確に示すかどうか、だけである。

現状において、金融政策は機能しない。金利を下げても、債券購入しても、消費や投資を刺激できないからだ。成長の急減は、政府が医療サービスや、解雇された労働者への支援、税の免除によって(可能な限り)相殺するしかない。それはかつてない規模の財政赤字を生じる。

赤字は政府の債券発行で賄われるが、債券の利回りを上昇させれば刺激する効果が失われる。そこで中央銀行が債券を購入し、政府は利子を抑えたまま無限に借り入れることができる。アメリカは第2次世界大戦中、この政策によって赤字を融資した。それを明確に表明することは避けたが、結果は同じである。それが恒久的な貨幣化になるかどうかは、債券を最終的に民間部門が購入し、中央銀行のバランスシートから取り除くことにかかっている。戦後も、アメリカはそうしなかった。

Milton Friedman and Anna Schwartzの金融史によれば、アメリカは戦費の15%を中央銀行の貨幣化で賄い、返済しなかった。日本銀行は25年間にわたり巨額の国債を購入したが、それを民間に売却しないだろう。明らかに、日銀による財政赤字の貨幣化は恒久的である。

中央銀行による貨幣化は、明確な恒久化である必要がない。この10年間の量的緩和QEは、事後的に、その一部が貨幣化であるだろう。

それは必ずハイパーインフレーションに至る、というのは、愚かな発想だ。デフレ的な不況において、ヘリコプターからドル紙幣をばら撒けば、人びとがそれを拾って支出する、とフリードマンが言ったのは有名だ。問題は、その規模である。

中央銀行のバランスシートや民間商業銀行の利潤圧迫を心配するのも間違っている。経済が回復すれば、そのような無利子の準備を求めることは信用創造への課税となり、爆発的な信用創造を抑える意味で、望ましいだろう。

中央銀行による財政赤字の貨幣化に反対する理由はない。それは技術的に可能であり、賢明な財政・金融当局は「正しい」量を決めることができるだろう。問題は、政治家たちが賢明ではないときだ。中央銀行家たちはそれを疑い、明確に許容するのを恐れている。

最善の策は、その事実を否定しながら、受け入れることだ。もし将来、成長率とインフレ率が回復すれば、この操作を逆転させるだろう。そうでなければ、貨幣化は恒久的である。誰もその可能性を事前に知る必要はない。このアプローチが信用され過ぎると、個人や企業は貨幣化がないと確信し、QEの逆転を恐れるだろう。それは現在の消費や投資を抑圧する。

むしろ、正直になるアプローチが良い。独立した中央銀行が、インフレ目標を守って貨幣化の規模を決定し、政府は支出の仕方を決定する。


 ロックダウンのトレードオフ

FT April 21, 2020

Data gathering can liberate us from a much longer lockdown

Anjana Ahuja

ある社会はロックダウンを続け、他の社会は活動を再開しつつある。

ハーヴァード大学の科学者たちは不安になる報告書を発表した。ソーシャル・ディスタンスの期間は2022年まで続く。あるいは、もっと先まで。将来の感染拡大が医療崩壊を起こすのを避けるために。

われわれはロックダウンをやめて、医療システムを拡大することもできる。そして集団免疫を速やかに実現する。しかし、それは無責任であるだろう。感染者の推定0.7%は死亡するからだ。

ベストミックスは、ドイツや韓国がやってきたように、情報を集めて柔軟に対応することだ。大量の検査、接触者の追跡、隔離。治療法とワクチンを研究する。ケンブリッジ大学はクラウドによる調査で「正常化」のための275の方法を示した。公共の場からハンドルのあるドアを撤去し、ドローンで配達し、学校の出席を分割して回し、レンタル自転車で混雑を解消する。


 ロックダウン解除の論争

FT April 24, 2020

Lifting the UK’s lockdown or saving lives are not mutually exclusive

Martin Wolf

イギリス政府内では、いつ、どのようにロックダウンを解除するか、論争している。経済コストの抑制と人命救済とのトレードオフがある、正しい答は、ウイルスを制圧して両方を得ることだ。しかし、それは難しい。

2四半期の経済活動は35%も下がった。しかし、恐怖による短期的決定は望ましい結果をもたらさない。正しい比較は、もしロックダウンしなかったら、今はどうなっているか、である。たとえロックダウンを解除して再開しても、以前からあった不平等はさらに拡大している。

もっと悪いことは、再開が第2波の感染拡大につながることだ。それは経済活動を大きく破壊する。政権の信用も同じだ。Imperial College Londonの報告書は、4つのコストを評価した。人命、労働日、医療コスト、ソーシャル・ディスタンスによるコスト。

コストが最小の選択肢は、強い行動抑制である。もっと低レベルの行動抑制は、大量検査や追跡による新感染者の抑制に成功し、将来のシャットダウンというリスクがないことだ。現状では望めない。

現在の経済コストを、社会への投資と考えるなら、強い行動抑制は長期的に正しい選択肢である。

FT April 24, 2020

The risk of a US double-dip depression is real

Edward Luce

あなたが1つのロックダウンを十分に大きな痛みと感じているなら、2つ目のロックダウンを想像してほしい。

アメリカ経済を数週間におよぶ深刻な凍結状態にするという影響を推定するのは早すぎる。しかし、消費者や企業がリスク回避の気分を払しょくするのは非常にむつかしいだろう。外出禁止の2度目の衝撃はさらに強いだろう。選択するとしたら、今年後半にそのリスクがあると分かってロックダウンを解除する指導者などいないはずだ。

しかし、11月の投票までにV字回復を示したいという気持ちが、ドナルド・トランプには非常に強い。2度目の感染拡大が起きる可能性を、公に議論することは、政府内の科学者たちに禁じられた。7つの州(フロリダ、サウスカロライナ、テネシーなど)で、すでに自宅待機は緩和されている。タトゥー・パーラー、複合シネマ施設、ボウリング場はジョージアで自由に行ける。しかし、実際、それはスーパースプレッダーの理想的な場所だ。

解除が早すぎれば、ウイルスの抑制も、経済の回復も失われる。

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The Economist April 11th 2020

The business of survival

The euro area: Cut to the chase

The IMF: Break the glass

Covid and the company: Sinking, swimming and surfing

Race and covid-19: Woes compounded

Labour’s new leader: Socialism with a barrister’s face

Bartleby: It’s cold outside

Ructions in the oil market: Upside down

Joe Stiglitz and the IMF: Pilgrimage to the game quadrant

Free exchange: Special delivery

(コメント) コロナウイルス危機と政府、企業、銀行、EU・ユーロ、IMFSDRsの闘いが描かれている。よくわかったか、といえば、そうでもない。なぜだろうか?

コロナウイルスがもたらすストレスに、これらの解決策は役に立たない。しかし、そうすることでしか対処できない。何か、間違った手段や発想で解決を目指しているような不安が残る。

労働党の新党首や、石油価格の暴落(そして、ソフトバンク・孫正義)が、コロナウイルス危機に加わった。しかし、私たちの声は、どこにも届かない。少なくとも、今はまだ。

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IPEの想像力 4/27/20

中国の論争はわからない。激しく議論されたと思う。そして、感染拡大を阻止する厳格なロックダウンを行った。その後、パンデミックになる。EU内の論争、US内の論争、UKや日本国内の論争、中央銀行の論争、アフリカやインドのロックダウンと支援策、WHOIMFの論争。

「ワクチンと薬だけでは、パンデミックを耐えられない。言葉がなければ、激流の中で自分を保てない。言葉と思考が勁(つよ)ければ、視界が定まり、周囲を見わたせる。」と、藤原辰史氏は書いた(「人文知」軽視の政権は失敗する・・・朝日新聞4/26/2020)。

ウイルスと人類との闘いは、他の問題によって、複雑な、あるいは、残酷な形に変形していく。トランプのアメリカ、ボリス・ジョンソンのUK、モディのインド、プーチンのロシア。

もしウイルスが非常に大きく、はっきりと目視できる(赤い帽子をかぶったような)ものなら、対策は容易である。すでに議論されていることを整理すれば、

1に、感染者と非感染者を分け、感染者だけを隔離して治療する。免疫とワクチン、治療法を改善し、その情報を周知する。肺炎に対する治療薬と人工呼吸器を十分に、感染地域に、集中して配置する。

2に、感染者が多くなり、感染地域が次第に広くなれば、対策は、移動規制や外出制限、ロックダウンになってくる。感染地域には、医療チームや生活物資を個別に配達する専門のスタッフが整備される。

3に、集団免疫が達成されるまで、長期に及ぶ、感染拡大の波が起きる。その影響で、経済活動が大幅に抑制され、失業や財政赤字、物資(医療から食糧まで)の供給が不足してくる。感染地域(国)、未感染地域(国)、免疫獲得地域(国)に分かれて、偏西風によって気圧配置が移動するように、ゆっくりと、あるいは、急速に、その境界線は移っていく。

その期間を、経済対策、生産・流通・消費の組織化、ごみ収集や清掃、境界線の管理が、パンデミックの原理で求められる。移動できないなら、あなたは未感染地域から、感染地域に入り、免疫獲得地域へと移っていく。移動できるものなら、未感染地域に移動させ、免疫獲得を医療的に管理するだろう。

物資の買いだめや都市脱出のパニックを起こさず、非感染者と免疫獲得者が未感染地域で生産を継続し、医療と感染者を助けることができる。その際、維持できる雇用や生活水準は、これがパンデミックであり、私たちは集団として克服する過程にある、という問題になる。

4に、文明の望ましい形、それを描く思想が変わる。次のパンデミックは予想されている。それを減らす研究や、パンデミックを管理できる居住や生活様式があらかじめデザインされるだろう。さまざまな対策と手段が、すでに知識として整理されている。

次は、そう20年くらいして、緑のリュックを担いだような、恐ろしいウイルスが広まる。死亡率はコロナウイルスの10倍だ。しかし政治指導者は、恐れないように、と市民たちを説得する。たとえ未知のウイルスでも、私たちはこれを予想し、克服する準備をしてきたから、と。

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コロナウイルス危機において、「緊急事態」「諮問委員会」「専門家会議」「指標」「戦略的」などの言葉が頻出するようになりました。

しかし、重要なことは「政治的判断」という。その理由をきかれると、「専門家会議」や「指標」のマスクで隠す。

なぜ国民が何を求めているか、具体的な対策を国会で議論しないのか? なぜ批判を受けて論争しないのか? 初期から、現在に至るまで、多くの間違いもあったはずだ。正しいことを行うために、避けられたはずの失敗を、情報を公開して、批判を受け、繰り返し評価することで対策を改善する。

間違ったことを認めない強権的な指導体制は、「陰謀論」、「情報操作」、「取材活動の制限」、「ジャーナリストへの弾圧」を、正しい対策より優先する。

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非常事態宣言を延長する。首相は、いつものような口調で、ゆったりと、説得するような長い話をした。しかし、決して説得的ではない。なぜなら、彼の口調はいつも同じで、説明の中身はない、美辞麗句や自画自賛(自分を含めた「日本」への称賛)に過ぎないからだ。

森友学園の土地売買に絡む事情は究明されたのだろうか? 確か、安倍夫人が強く支援していた学園に大阪市が土地を売却した? 汚染された土壌であるから、その費用を考慮して安く売却された? それは事実だったのか? 事実を知る職員の1人は自殺した。

加計学園の話はどうなったのか? 確か、時間の順序が合わない、虚偽の報告であり、安倍氏の個人的なコネで学園への適用が決まったという疑惑が結びついていたのではなかったか? 友人の学園が特区に申請する話を、安倍は何も知らなかった、というのは事実だったのか?

彼の釈明とは、事実を究明するのではなく、究明する者を攻撃する、文句があったら証拠を示せばよい、と言いながら、証拠になるものを次々に隠し、改ざんすることであった。説得ではなく、ついに国民が飽き、忘れるように図る、という汚い話ではなかったか?

安倍首相は、同じ口調で、国民の協力に感謝し、医療従事者に共感し、「自分たち」?への称賛をくどくどと述べた。マラソンが趣味の東京のとんかつ店主は、営業自粛に苦しみ、自殺したのではないか?

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「藤原辰史:パンデミックを生きる指針——歴史研究のアプローチ」は、パンデミックに条件の1つにオーバーツーリズムを指摘している。

https://www.iwanamishinsho80.com/post/pandemic

オリンピックや万博をやめて、パンデミックの対策に集中してはどうか。外国人観光客に頼らず、国債発行と日銀の大規模介入に頼らない、若者も高齢者も参加できる経済再生を求めて、もっと論争する力を発揮するときではないか。

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