IPEの果樹園2020

今週のReview

4/27-5/2

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消費から貯蓄へ ・・・コロナ債をめぐる対立 ・・・石油価格下落と救済 ・・・アメリカのシステムを変える ・・・新マーシャル・プラン ・・・パンデミックと米中の社会モデル ・・・経済回復のための富裕税 ・・・財政赤字の貨幣化 ・・・ロックダウンのトレードオフ ・・・トランプ再選戦略 ・・・ロックダウン解除の論争

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 ボリス・ジョンソンの内閣

The Guardian, Sun 19 Apr 2020

This crisis is stress testing the strengths and frailties of our national institutions

Andrew Rawnsley

The Guardian, Mon 20 Apr 2020

Boris Johnson is the wrong man in the wrong job at the wrong time

Polly Toynbee

首相官邸に復帰する前だが、別荘で病状の回復したボリス・ジョンソンの、あまりにも無能なコロナウイルス対策について攻撃が始まった。

1人のインサイダーが政府の内情をthe Sunday Timesに暴露した。「ボリスはいかなる会合の議長も務めなかった。国民の休暇を楽しんだ。週末は仕事をしなかった。まるで20年前の地方自治体における旧弊に従う首長のようだった。緊急時の計画を進める真剣さがなかった。まさに、彼がそうなるのではないか、と人びとが恐れるような惨状だった。」

疫病対策のためにボリス・ジョンソンを選出した者は誰もいない。保守党内の小さなグループ、高齢の幹部たちが、ブレグジットを理由に彼を選んだ。ジョンソンは楽しく、陽気で、大衆に好まれた。何よりブレグジット投票で勝利したのだ。その「陽気な精神」こそ、まったくパンデミックにはふさわしくない。

間違った時期に、間違った職を得た、間違った男である。

ジョンソンの内閣には、コロナウイルス対策の専門家が1人もいない。保守党政権は、かつて緊縮策として、感染症の緊急設備を40%も削減した。NHS(国民医療サービス)は、ついに我慢できなくなって、政府のいい加減な目標や計画を批判した。事実だけを語るように、と要求した。

FT April 23, 2020

How politics thwarted the UK’s Covid-19 response

Philip Stephens


 消費から貯蓄へ

FT April 19, 2020

We are entering the new age of American austerity

Rana Foroohar

アメリカはこれまで世界における「最後の消費者」であった。しかし、それは変わるだろう。IMFが「ロックダウン大不況」に注目し、コロナウイルス危機からの迅速な回復を願っても、アメリカは緊縮の新時代に入る。

現在の経済は消費によって成立している。1980年代から、アメリカは消費者と企業に貯蓄より債務を促し、成長を高めるため、金融部門の拡大とバブルを繰り返し生じた。2008年の金融危機後もそうである。パンデミックはその崩壊と経済変化を加速し、公的債務の増大、サプライチェーンの再編、ハイテク導入による労働市場の変化を避けられない。

多くの点で、アメリカ人は1929年の崩壊とその後の変化を観ている。それはより多く生産し、より多く貯蓄し、消費を減らす時代であった。

当時も、技術革新と安価な融資で、1920年代の好況は不平等を極度に拡大し、人びとは借り入れを増やして消費した。また、彼らは初めて株式投資した。それらが1929年に崩壊したのだ。その経験は世代の行動パターンを変えた。アメリカ人の貯蓄率は1930年代初めのゼロ水準から第2次世界大戦中の28%まで上昇した。

今と同じように、1930年代も政府は一層の不況を避けるために大規模に支出した。連邦政府の支出はGDP3%から10%に上昇し、1940年代末の40%まで上昇し続けた。予算赤字も増大したが、今と違って民間部門の貯蓄率は高かった。彼らは中国人に見えた。強制的な割り当てで消費を抑え、輸出と軍需生産で所得が増えた。

同じことを再現するのは無理だろう。サプライチェーンを再編して国内が最工業化し、賃金も上昇するとしたら、労資双方に利益だ。しかし短期的には、脱グローバリゼーションのコストが生じる。政府は何でも救済しているが、それは生産性を上げるケインズ主義的なインフラ投資と違い、コストを高め、成長を抑える。

将来、アメリカ人は債務を返済しなければならず、より多く貯蓄する。そのため政治家たちは、非生産的な債務を減らし、税制の抜け穴を閉じることから始めるべきだ。連銀もバランスシートを縮小する。アメリアは新しい緊縮の時代に入る。

FT April 20, 2020

The clean-up of the non-bank sector needs to begin now

Mark Sobel


 コロナ債をめぐる対立

FT April 19, 2020

Italy is in more danger than the eurozone will acknowledge

Wolfgang Münchau

先週、イタリアの政府債券がドイツの同じ債券に対して2%ほど高くなった。ECBPandemic Emergency Purchase Programmeを用意しているから、返済の不安を感じる理由はない。

もっと別の理由がある。パンデミックで政府の赤字が増え、GDPが縮小する。債務のGDP比は上昇するだろう。イタリアの場合、136%から180%に跳ね上がる。

それを融資するとしたら、マリオ・ドラギ前ECB総裁のOMTを再現するしかない。その場合、ECBEMSの融資条件をイタリアが受け入れねばならない。イタリア政府は、それを後悔している。イタリア議会の多数はEMSを受け入れず、明らかに、ECBOMTをしない。

イタリア政府の債券は返済不能になりそうだ。

イタリアがデフォルトになり、しかし、ユーロ圏に残るとしたら、それはECBが支持するときだけだ。しかも、イタリアの民間銀行はイタリア国債を大量に保有しているから、そのままでは倒産する。債務削減を行うことは可能である。銀行は国有化され、投資を償却し、預金を守る。

それに失敗すれば、ユーロ圏を離脱する、という妖怪が現れる。それはありそうにないが、ブレグジットもそうだった。同様に、イタリアの政治家たちは悪いことを何でもEUのせいにしている。連立政権の多数派である「5つ星運動」は、支持を拡大するために反EU感情を利用するかもしれない。

マクロンはEU諸国に警告し、連帯のためのユーロ債発行を求めた。しかし、ドイツやオランダは、パンデミックをリスクに対する保険であるとは考えていない。連帯、チャリティー、あるいは、ギフトである。イタリアがデフォルトになるときの、金融部門や自国経済に及ぼす破滅的影響を観ようとしない。

デフォルトやユーロ圏離脱は避けられる。しかし、政治がそれを阻めば、ユーロ圏崩壊への準備はあるのか?

FT April 19, 2020

How to secure the future of the eurozone

PS Apr 20, 2020

Disunited States

ANA PALACIO

PS Apr 20, 2020

Solidarity Is Not What Europe Needs

YANIS VAROUFAKIS

PS Apr 20, 2020

The EU Should Issue Perpetual Bonds

GEORGE SOROS

COVID-19によるパンデミックの長期的なコストを抑えるために、1兆ユーロの基金European Recovery Fundを設けるべきだ。それに必要な資金は永久債で調達する。

永久債は、イギリスがナポレオン戦争や第1次世界大戦の戦費調達のために発行した。アメリカでも1870年代に行われ、その後も発行された。

永久債は、利払いのみで償還する必要がなく、コストがかからない、資金調達時期を分散できる、ECBの債券売買による金融調節手段にふさわしい、という利点がある。

FT April 22, 2020

Why the European Central Bank can save the eurozone

Martin Wolf

FT April 22, 2020

The merits of Spain’s proposed recovery fund are irrefutable

Martin Sandbu

FT April 22, 2020

Don’t repeat the mistakes of the Greek bailout

George Papaconstantinou

PS Apr 22, 2020

Spain Is Leading the Way on Perpetual Bonds

GEORGE SOROS

NYT April 22, 2020

Europe Needs to Come Together. But Not Like This.

By Jochen Bittner

善のために力を行使するスパイダーマンは私たちに教えた。大きな力を持つ者は大きな責任を負う。それは闘争において特に正しい。ドイツはどうか?

EUの諸政府は集まってコロナ債の発行について議論した。いくつかの国は債券発行が経済の回復に不可欠だ、と主張した。しかし、ドイツ、オランダなど、北欧諸国はそれに強く反対した。

コロナ債は連帯のシンボルである。イタリアのコンテ首相が、共通債として救済パッケージを求めるのはよくわかる。しかし、2つの点を考えるべきだ。1) ユーロ危機よりも影響は偏って生じている。2) ドイツなどは支援に前向きだ。しかし、支援することとユーロ圏の基本原理を否定することは違う。すなわち、ユーロ圏は個別の政府を救済しない、という原則だ。

コロナ債は、ドイツ人にユーロ成立時の約束を破るものとみえる。それは、ドイツ国内における右派ポピュリスト政党を刺激し、また、中枢の政治家にもユーロ懐疑論を広めるだろう。

コロナ債が認められないことは南欧のポピュリストを刺激する。イタリアのサルヴィーニはEU諸政府が合意した5000億ユーロの救済パッケージに「イタリアは物乞いではない」と憤慨する。

しかし、コロナ債は必要ない。まず、救済基金は条件が付かない。パンデミックはユーロ危機と明確に区別されている。さらに、ECBは追加の政府債購入を決めている。そして、ヨーロッパが必要とする資金はコロナ債どころではないだろう。新しいマーシャル・プランである。

医療体制を整備し、起業にふさわしい条件、気候変動に応じる新技術を、大陸規模で投資する必要がある。

FT April 23, 2020

Covid-19 is resetting the way we talk about the economy

Wendy Carlin

PS Apr 23, 2020

COVID-19 and Europe’s New Battle of Ideas

DANIEL GROS

ECBはまさしく金融市場を落ち着かせるためにすべてのことをした。しかし、EU諸国は重要な問題に答えないままだ。ブロックとして、財政的な苦境にある国を支援することができるか、支援する意志があるか?

表面的には、加盟諸国が相互に保証するコロナ債の発行に関する論争である。しかし、実際は革新的な金融手段が、財政政策や、ユーロそれ自体にまで関わる将来の方向を決める論争である。

Markus Brunnermeier, Harold James, and Jean-Pierre Landauは、その研究(The Euro and the Battle of Ideas)で、ユーロ圏解体の危機におよぶ2010-14年の論争を、そのアイデアの役割に注目して分析した。フランスとドイツが、国内の論争を支配する基本的な経済のアイデア・考え方に従って、対立する立場を取っていた。

今回の衝突はドイツとイタリアである。イタリアではコロナ債を、ヨーロッパの連帯を示す当然の手段とみている。COVID-19の危機はどの国の政府も予測できなかった。イタリアはパートナーから支援を受けるべきだし、それが唯一の受け入れ可能な解決策だ。

多くのドイツ人は、コロナ債に道義的な危険を感じている。恐るべきユーロ債発行に道を開くからだ。それは、ドイツの納税者がイタリアの借金を支払う義務がある、という意味だ。

フランス、スペイン、イタリアはこれを理解できない。既存のイタリア政府債を保証することなど求めていないからだ。コロナウイルス危機の追加コストを共通の債券で調達したいだけである。しかし、オランダやドイツの政治家はそれを疑う。もっと巨額の、制御されない手段が次に出てくる、と。

実際、イタリアその他で、コロナ債がユーロ債への途であると夢見る多くの者がいる。彼らは共通の債務手段が「通貨同盟」を完成するために必要である、と考える。危機は、その目標を達成する絶好の機会なのだ。

ドイツ人は、危機で、従来の慎重な財政政策アプローチを強く確信するだろう。なぜなら、彼らが多年にわたり均衡財政を維持したからこそ、労働者たちを支援し、企業が危機を克服することもできるのだから。しかし、「緊縮策」を長期にわたり批判してきた人たちは、ドイツが巨大な財政赤字を出すことに、自分たちの主張の正しさを確信する。結局、現時点に財政赤字が増えることには誰も反対していない。

残念ながら、問題は危機の後だ。政府はできるだけ早く財政赤字をなくし、債務を減らすべきか? あるいは、政府は金利が低い間は財政赤字を続けるべきか? この闘いは、ユーロの将来を決定的に変えるものだ。

回復はかなり先になるから、今は問題にならない。しかし、それが決まらない間は、コロナウイルス危機に対しても共通の戦略を立てられない。

NYT April 23, 2020

How to Make America 2.0 a More Equitable Society

By Kara Swisher


 米中対立

FT April 19, 2020

Why China is losing the coronavirus narrative

Jamil Anderlini

FT April 21, 2020

China has a chance to show global leadership

PS Apr 21, 2020

Dealing with China After COVID-19

CHRIS PATTEN

中国に対するトランプの姿勢は間違いだ。

中国に限らず、医療関係者は命がけでウイルスと闘っている。食料を運び、輸送網を維持し、街を消毒する人々もそうだ。

中国は、その人口規模と世界貿易に占める重要性から、その他伊勢に関係なく、世界的な感染症との闘いで中心的な役割を果たす。西側諸国は中国を説得し、協力させなければならない。そのとき、国際機関の役割も重要だ。

中国が情報を、正直に、迅速に提供することを求め、その間違いを見過ごしてはならない。しかし、トランプのように、経済制裁やWTOへの出資を止めるのは間違いだ。

FP APRIL 21, 2020

Singapore’s Coronavirus Success Story Hits a Snag

BY NAMITA BHANDARE

PS Apr 22, 2020

The Chinese Health Organization?

BRAHMA CHELLANEY


 石油価格下落と救済

FT April 19, 2020

Bailing out the oil industry brings a fate worse than death

Megan Greene

政府が石油産業を救済するのは間違いだ。それはゾンビ企業を作り、納税者のコストを増やすだろう。サウジアラビアとロシアの市場シェア争いに、コロナウイルス危機の不況で需要が減少したため、原油価格は大幅に下落した。

確かに石油は戦略的に重要な産業だ。しかし、そのビジネス・モデルはすでに前から破綻していた。低利融資を基礎に、シェール油田は巨額の借り入れで増えてきた。10年間でエネルギー債券市場は3倍になった。市場シェアを争い、株式収益は無視してきた。債務と石油供給量が増大し続ければ、それが崩壊するのは不可避である。

資本主義の一部である破綻を避ける理由はない。大銀行が倒産することにはならない。解雇される労働者たちを支援するのは、コロナウイルス危機で解雇された他の多くの産業と同様に、重要である。しかし、ゾンビを作るときではない。

FP APRIL 21, 2020

Oil Price Nosedive Continues as Trump’s Deal Fails to Deliver

BY KEITH JOHNSON

The Guardian, Thu 23 Apr 2020

Low demand for oil isn't good news. It could cause a financial crisis

Helen Thompson

FP APRIL 23, 2020

The Coronavirus Oil Shock Is Just Getting Started

BY NICHOLAS MULDER, ADAM TOOZE

420日、原油先物価格がマイナス40.32ドルを付けた。石油ショックもあったが、逆石油ショックもあった。石油輸出に大きく依存している国は脆弱だ。化石燃料依存から脱出する展望を持たねばならない。


 アメリカのシステムを変える

NYT April 19, 2020

Bernie Sanders: The Foundations of American Society Are Failing Us

By Bernie Sanders

世界史上で最も裕福な国であるアメリカに、所得と資産の不平等が拡大して、多くの人々が日々の暮らしに精いっぱいである。4000万人が貧困状態にあり、8700万人が十分な保険を持たず、50万人はホームレスだ。

アメリカ社会、そのシステムの基本的条件を改革するべきだ。

われわれは医療システムを持っていない。そこにあるのはビザンチン体制のネットワークだ。利潤目的な保険会社と製薬会社が支配している。

コロナウイルスは誰にでも感染する。しかし、アフリカ系アメリカ人のコミュニティーは、富裕層に比べ、病気で苦しみ、死亡する率が顕著に高い。この国の労働者階級は、糖尿病、薬物中毒、肥満、ストレス、高血圧、心臓病に苦しんでいる。感染症に非常に弱い。

3人の資産が、下半分の資産と同じ、また数千万人が経済困窮状態にあるような、強欲に従う、規制されない資本主義は間違っている。

トランプに反対するだけでなく、アメリカを新しい方向に変えるのだ。


 パンデミック対策

The Guardian, Mon 20 Apr 2020

We have to wake up: factory farms are breeding grounds for pandemics

Jonathan Safran Foer and Aaron S Gross

VOX 20 April 2020

Repair and reconstruct: A Recovery Initiative

Agnès Bénassy-Quéré, Ramon Marimon, Philippe Martin, Jean Pisani-Ferry, Lucrezia Reichlin, Dirk Schoenmaker, Beatrice Weder di Mauro

YT April 20, 2020

What America Can Do to Fight Mass Unemployment

By Robert Kuttner

労働者たちへの支援が遅れている。政府の処理能力が追い付かないのだ。最も支援を必要とする貧しい人々が、また、融資を必要とする中小企業が、直接に政府からの支援を受けられるように、スタッフを大幅に補充するべきだ。他方で、新卒の若者がこのままでは大量に失業してしまう。学生たちを政府が雇用し、コンピューターの事務処理や労働者、中小企業への支援に働いてもらうのが良い。

FT April 21, 2020

Covid-19 will only increase automation anxiety

Carl Benedikt Frey

VOX 21 April 2020

Necessity is the mother of invention: How to implement a comprehensive debt standstill for COVID-19 in low- and middle-income countries

Patrick Bolton, Lee Buchheit , Pierre-Olivier Gourinchas, Mitu Gulati, Chang-Tai Hsieh, Ugo Panizza, Beatrice Weder di Mauro

FT April 23, 2020

How much should it cost to contain a pandemic?

Gillian Tett

コロナウイルスで失われる命と、失われる経済的価値とを比較することは、政治的、文化的なタブーである。しかし、明らかにトレードオフがある。政府は、人命をすくために、どれくらいのコストまで受け入れるのか?

FT April 23, 2020

Pandemics and the question of resilience

Jamie Powell


 新マーシャル・プラン

NYT April 20, 2020

The World Has a $2.5 Trillion Problem. Here’s How to Solve It.

By Maitreesh Ghatak, Xavier Jaravel and Jonathan Weigel

IMF融資では間に合わない。世界はマーシャル・プランを必要としている。GSFGlobal Solidarity Fund)を設立しよう。

アメリカは指導力を示さず、中国は多国間協力に懐疑的である。ヨーロッパが動くべきだ。英仏は無利子で借入れ、ドイツは市場で債券を発行する。GSFからは融資ではなく譲許が良い。資源の公的な移転制度である。

感染の第2波を恐れるなら、行動することだ。

The Guardian, Tue 21 Apr 2020

Coronavirus is the biggest disaster for developing nations in our lifetime

Ian Goldin

アフリカ諸国には人工呼吸器が1つもない。貧しい国にはUKのような水準のセーフティー・ネットは存在しない。COVID-19の最大の惨禍は発展途上諸国に広がりつつある。政府が感染を抑えるためにロックダウンを行ったため、経済的危機として始まった。

ロックダウンの即座に現れる効果は飢餓である。すでに干ばつや異常気象、最近のイナゴの大量発生により、食糧不足が起きていた。それが一気に悪化した。国際的な支援が必要だ。

アフリカ諸国は2020年に440億ドルの債務を返済しなければならない。これを償却するグローバル・マーシャル・プランが必要だ。アメリカとヨーロッパ諸国の政府は、ビジネスを維持するために8兆ドルを支出する。それに比べて、わずかな額でしかない。世界GDP3%である。

われわれはグローバリゼーションの「バタフライ効果」を知った。自分たちの健康は他者の健康に依存している。

PS Apr 23, 2020

The Necessity of a Global Debt Standstill that Works

PATRICK BOLTON, LEE BUCHHEIT, BEATRICE WEDER DI MAURO, PIERRE-OLIVIER GOURINCHAS, MITU GULATI, CHANG-TAI HSIEH, UGO PANIZZA


 パンデミックと米中の社会モデル

FT April 20, 2020

How strongman leaders will exploit the coronavirus crisis

Gideon Rachman

コロナウイルス危機の前から、世界中に強権指導者のウイルスが広まっていた。中国、ロシア、アメリカ、ブラジル、フィリピン、インド、サウジアラビア、ハンガリー、香港、ベラルーシ。コロナウイルスはこれを強化している。

FP APRIL 21, 2020

There’s No Such Thing as Good Liberal Hegemony

BY STEPHEN M. WALT

リベラル・ヘゲモニー・ライトは間違いだ。すなわち、軍事力を抑えたヘゲモニーの体制がリベラルな価値を世界に広げる、という考え方である。。それは必ず失敗する。

われわれは完全な知識を持っていない。そもそも、そのような実現可能なコースはないかもしれない。多くの複雑な社会エンジニアリングをともなう。予測できない結果が生じる。多くの意図しない結果が生じる。

FT April 22, 2020

Trump, Xi and other nationalists are less united than ever

Janan Ganesh

NYT April 22, 2020

What Is the Coronavirus Doing to North Korea?

By Nicholas Eberstadt

FP APRIL 22, 2020

India Is Scapegoating Muslims for the Spread of the Coronavirus

BY SAMEER YASIR

PS Apr 23, 2020

What COVID-19 Reveals About the US and China

ANDREW SHENG, XIAO GENG

中国は厳格なロックダウンを行い、新規感染者数を劇的に減らした。他方、アメリカは対策が遅れ、分裂している。その結果、感染者が増え続け、死者数も増大している。この違いはしばしば政治の違いとして説明されるが、成長モデルの違いが重要である。

アメリカでは、数十年も続いたネオリベラル政策の結果、債務に依存した消費が増えた。アメリカ人は貯蓄するより消費し、USドルがグローバルな準備通貨であるため、財政赤字と経常赤字を膨張させた。中国など、新興市場の世界市場参加により、連銀の拡大的な政策にもインフレ率は低いままだった。

アメリカは、金融システムが過度のレバレッジによって、実体経済を離れて拡大した。電子決済の発達にもかかわらず、現金、小切手、クレジットカードに依存し続け、ハイテクのプラットフォームは債務依存経済の膨張を「一方通行」のダイナミズムに終わらせた。すなわち、Uberなど、販売を最適化するプラットフォームは、労働者への訓練や保護を最小化するものだった。

こうしたアメリカ・モデルは、金融、環境、社会面で持続不可能だと分かっていた。特に、急拡大する不平等だ。債務・消費サイクルの破綻は、連銀・財務省が介入して破滅を回避した。

中国モデルは、こうした欠陥の多くを免れている。高貯蓄と、過度の消費ではなく、輸出と投資が成長を支えてきた。ハイテクのプラットフォーム、特にフィンテックは、伝統的経済をデジタル・エコシステムに広い範囲で結びつけた。利用者は消費と収入を共に増やすことができた。それは中国経済を構造的・組織的に回復力の高いものにした。

COVID-19の危機に対応できたのも、中央政府の計画化ではなく、このハイテクプラットフォームであった。ロックダウンの期間にも、Alibaba, Pinduoduoなどが内外の消費者と結び、多くの零細企業にとってのライフ・ラインを維持した。JD.comなど、ロジスティクス企業も重要だった。

TencentWeChatは家族や友人とのつながりを維持し、WeChat Payは支払いを、さまざまなアプリが政府の計画や学校を助けた。Alipayとともに、人びとの行動を追跡でき、健康の情報を管理できた。これらのアプリは、ほぼすべてのスマートフォンに導入されている。中国のスマートフォンによる貯蓄・消費・債務・所得モデルは、8億台のスマートフォンをつなぎ、ロックダウンの中でも、流動性不足を生じない。

パンデミック後、中国もアメリカも、より包括的で、回復力の高い、社会モデルを目指すだろう。しかし、アメリカの危機対応を観る限り、それは難しいようだ。

FP APRIL 23, 2020

The Pandemic Could Tighten China’s Grip on Eurasia

BY ALEXANDER GABUEV


(後半へ続く)