(前半から続く)


 経済回復のための富裕税

FT April 20, 2020

Amazon thrives in the crisis but still faces risks

John Thornhill

The Guardian, Tue 21 Apr 2020

Richard Branson's bailout plea proves there's no one more shameless

Marina Hyde

ブランソンRichard BransonUKで人気の実業家だ。そういう商標Britain’s Best-Loved Businessman™を登録している。しかし、料金の支払で病院を訴え、14年間もこの国に税金を支払わなかった男が、Virgin Atlantic airlineの救援資金を5億ポンドも申請している。

NYT April 21, 2020

A Wealth Tax Is the Logical Way to Support Coronavirus Relief

By Daniel Markovits

コロナウイルス危機は、深刻な不平等に苦しむアメリカを襲った。現在、そして将来の、コストの多くが、すでに苦境にある人々に集中する。コロナウイルス危機の対策には莫大な備蓄が必要だが、それをわれわれが豊かな数十年の蓄積から引き出すべきである。アメリカは富裕税を制度化するべきだ。

パンデミック危機への支援策は、およそ2兆ドルに達するだろう。しかし、その債務の返済は若い世代に残される。彼らはすでに親の世代よりも貧しくなっている。そうではなく、支援策を1度だけの富裕税で調達するべきだろう。最も富裕な人びとは、不平等が拡大するこの時期に富を蓄積した。

細部を問わない、基本的なアイデアはこうだ。アメリカの最も富裕な家族、上位5%は、57兆ドルの資産を保有する。それは家計の資産全体の3分の2である(1960年には2分の1であった)。250万ドルを控除額とすれば、95%の家計は課税されない。これにより5%の税率で最富裕層から2兆ドルを徴収できる。

コロナウイルス危機の影響は、富裕層と貧困層に同様に感染が広がるとしても、大きく異なる。富裕層は、庭に囲まれた快適な住宅や、あるいは、田舎の別荘に避難する。貧困層は、しばしば密集地域にあるアパートの小さな部屋に住み、日々の必要物を買うのにも苦労している。富裕層は安定した職を、遠隔で続けることができる。

不平等は子供たちの将来にも深く影響する。富裕層のプライベート・スクールは早期にオンライン教育に移行するが、パブリック・スクールは、特に貧困地区では、オンライン教育の実施がむつかしい。夏季休暇でさえ、富裕層と貧困層の間で教育の差が生じる。

富裕税は、常に、激しい政治論争になってきた。バーニー・サンダースとエリザベス・ウォーレンも富裕税を掲げて大統領予備選に立候補した。それは進歩派に強く支持されたが、多くの反対も受けた。その結果、極端に裕福な者だけに限定し、税の徴収に問題を生じる案になった。超富裕層は資産を海外に移し、高度な税回避手段を利用できる。また継続的な富裕税の徴収は、将来の行動に影響を与え、資本蓄積を減らし、技術革新や成長を損なう危険がある。

COVID-19は政治状況を大きく転換した。超党派で、1度限りの富裕税を、国民的危機への連帯として徴収するなら、こうした欠陥は是正できる。もし憲法修正16条に違反すると保守派の最高裁判事が富裕層に与して政治に介入するなら、議会は彼らと闘うべきだ。


 ガーナの経験

FT April 20, 2020

Know The Beginning Well: An Inside Journey Through Five Decades of African Development, by KY Amoako

Review by David Pilling

ガーナ人のエコノミスト、経験を積んだテクノクラートであるKY Amoakoは、ガーナ独立の60周年記念で「なぜアフリカは今も貧しいのか?」という問題を考察した。

彼にとって、エンクルマKwame Nkrumahはガーナ独立の英雄であった。しかし、エンクルマも1966年にクーデタで権力を失った。アフリカの夢も砕けた。

この本は、問題に答えることができなかった。しかし、諸制度がどのように機能するか、どのように失敗するか、についての興味深い記録である。包括的な成長、繁栄に向かう途を描くには、歴史を知ることが重要だ。

PS Apr 20, 2020

Empowering Africa’s Digital Entrepreneurs

PERSEUS MLAMBO, LYDIA CHISECHE NGOMA


 財政赤字の貨幣化

PS Apr 20, 2020

Monetary Finance Is Here

ADAIR TURNER

COVID-19のパンデミックに対応して、アメリカ連銀は財務省証券の無制限購入を、イングランド銀行は2000億ポンドの国債購入を、ECB7500億ユーロのユーロ圏(加盟国政府)債券購入を決めた。中央銀行は財政当局の赤字を貨幣化するだろう。問題は、それを明確に示すかどうか、だけである。

現状において、金融政策は機能しない。金利を下げても、債券購入しても、消費や投資を刺激できないからだ。成長の急減は、政府が医療サービスや、解雇された労働者への支援、税の免除によって(可能な限り)相殺するしかない。それはかつてない規模の財政赤字を生じる。

赤字は政府の債券発行で賄われるが、債券の利回りを上昇させれば刺激する効果が失われる。そこで中央銀行が債券を購入し、政府は利子を抑えたまま無限に借り入れることができる。アメリカは第2次世界大戦中、この政策によって赤字を融資した。それを明確に表明することは避けたが、結果は同じである。それが恒久的な貨幣化になるかどうかは、債券を最終的に民間部門が購入し、中央銀行のバランスシートから取り除くことにかかっている。戦後も、アメリカはそうしなかった。

Milton Friedman and Anna Schwartzの金融史によれば、アメリカは戦費の15%を中央銀行の貨幣化で賄い、返済しなかった。日本銀行は25年間にわたり巨額の国債を購入したが、それを民間に売却しないだろう。明らかに、日銀による財政赤字の貨幣化は恒久的である。

中央銀行による貨幣化は、明確な恒久化である必要がない。この10年間の量的緩和QEは、事後的に、その一部が貨幣化であるだろう。

それは必ずハイパーインフレーションに至る、というのは、愚かな発想だ。デフレ的な不況において、ヘリコプターからドル紙幣をばら撒けば、人びとがそれを拾って支出する、とフリードマンが言ったのは有名だ。問題は、その規模である。

中央銀行のバランスシートや民間商業銀行の利潤圧迫を心配するのも間違っている。経済が回復すれば、そのような無利子の準備を求めることは信用創造への課税となり、爆発的な信用創造を抑える意味で、望ましいだろう。

中央銀行による財政赤字の貨幣化に反対する理由はない。それは技術的に可能であり、賢明な財政・金融当局は「正しい」量を決めることができるだろう。問題は、政治家たちが賢明ではないときだ。中央銀行家たちはそれを疑い、明確に許容するのを恐れている。

最善の策は、その事実を否定しながら、受け入れることだ。もし将来、成長率とインフレ率が回復すれば、この操作を逆転させるだろう。そうでなければ、貨幣化は恒久的である。誰もその可能性を事前に知る必要はない。このアプローチが信用され過ぎると、個人や企業は貨幣化がないと確信し、QEの逆転を恐れるだろう。それは現在の消費や投資を抑圧する。

むしろ、正直になるアプローチが良い。独立した中央銀行が、インフレ目標を守って貨幣化の規模を決定し、政府は支出の仕方を決定する。

PS Apr 20, 2020

The Myth of “Helicopter Money”

YEVA NERSISYAN, L. RANDALL WRAY

CNBCJoe Kernenは、最近、「われわれは皆MMT信奉者だ」と述べた。Willem H. Buiter Columbia University)は、アメリカのパンデミック対策は、MMTの「ヘリコプター・マネー」であろう、と述べた。

こうした意見は全て間違っている。MMTQEを支持しない。「ヘリコプターで貨幣をばら撒く」ことも勧めない。MMTは、政府が自身で貨幣を発行し、支出し、課税し、債券を販売する、ということだ。そうすることで、政府は財政の制約を受けない。

通常の操作として、財務省と連銀は協力し、政府支出と課税とが円滑に進むようにしている。パンデミックや国家の非常事態でなければ、すべて同じことである。「紙幣を印刷する」ことも、「ヘリコプターから撒く」こともない。中央銀行は、通常でも、金利を上げるために、債券を購入している。それは、財務省の赤字を融資する、という理由で行うのではない。

MMTのエコノミストたちは、以前から、国民すべてに雇用を保障する政策を支持していた。それは経済危機において、マクロ経済を安定化する。MMTは、政府支出を制約するのは、利用可能な生産能力だけである、と主張する。

パンデミックで病院のベッドが足りないのに、多くの貨幣を支出しても何も解決しない。それは財政の制約とは関係ない。

われわれは政府が次の経済危機に備えて支出を維持する必要があり、債務を減らすために財政緊縮を求める間違った発想に反対しなければならない。

FT April 21, 2020

IMF’s $1tn lending power is not all it is cracked up to be

David Lubin

PS Apr 21, 2020

The New Digital-Payments Race

HUW VAN STEENIS

PS Apr 22, 2020

Why Libra Matters

DANTE ALIGHIERI DISPARTE

NYT April 23, 2020

The Money Machine That Can Save Cities

By Claudia Sahm


 生物兵器

FP APRIL 20, 2020

The Next Pandemic Might Not Be Natural

BY MAX BROOKS

次のパンデミックは、生物兵器としてウイルスが使用されて起きるかもしれない。


 ロックダウンのトレードオフ

FT April 21, 2020

Eran Yashiv: how to reopen society more quickly

Eran Yashiv

外出の日を分け、居住する地区を分ける。

FT April 21, 2020

Data gathering can liberate us from a much longer lockdown

Anjana Ahuja

ある社会はロックダウンを続け、他の社会は活動を再開しつつある。

ハーヴァード大学の科学者たちは不安になる報告書を発表した。ソーシャル・ディスタンスの期間は2022年まで続く。あるいは、もっと先まで。将来の感染拡大が医療崩壊を起こすのを避けるために。

われわれはロックダウンをやめて、医療システムを拡大することもできる。そして集団免疫を速やかに実現する。しかし、それは無責任であるだろう。感染者の推定0.7%は死亡するからだ。

ベストミックスは、ドイツや韓国がやってきたように、情報を集めて柔軟に対応することだ。大量の検査、接触者の追跡、隔離。治療法とワクチンを研究する。ケンブリッジ大学はクラウドによる調査で「正常化」のための275の方法を示した。公共の場からハンドルのあるドアを撤去し、ドローンで配達し、学校の出席を分割して回し、レンタル自転車で混雑を解消する。

FP APRIL 21, 2020

The Hidden Flaw in Sweden’s Anti-Lockdown Strategy

BY NATHALIE ROTHSCHILD

The Guardian, Wed 22 Apr 2020

Crunching the coronavirus curve is better than flattening it, as New Zealand is showing

Devi Sridhar

FT April 22, 2020

Wanted: a civilian army of contact tracers to end the lockdown

Donato Paolo Mancini in London

FT April 23, 2020

What the UK needs to do before leaving lockdown


 日本株式会社の死滅

FT April 21, 2020

Coronavirus should focus the minds of Asia’s entrepreneurs

Chris Razook

FT April 22, 2020

Coronavirus crisis may finally prove that ‘Japan Inc’ does not exist

Leo Lewis

安倍首相は「オール・ジャパン」と呼びかけた。しかし、日本企業は動かない。

協調的な、結束した「日本株式会社」のイメージは、言うまでもないほど、よく知られている。危機において、日本の集団的な強さが発揮されるはずだった。

しかし、長い間、日本企業はステークホルダーの利益を理由に、株主を軽視してきた。コロナウイルス危機が示したのは、日本企業が特別な行動を取ることはない、ということだった。しかも、大企業と政府との利益が一致しないことも明らかになった。企業の倒産が懸念されており、産業全体を救済する必要があるが、日本の財政はすでに巨大な債務に苦しんでいる。


 トランプ再選戦略

NYT April 22, 2020

Trump Reaches Back Into His Old Bag of Populist Tricks

By Thomas B. Edsall

トランプ大統領は再選戦略を決めた。2016年の勝利で決定的な役割を果たした諸集団の統一と再活性化を開始したのだ。それは人種的な怨嗟に満ちた白人たち、福音主義派のキリスト教徒たち、銃規制に反対し武装する銃マニアたち、ワクチン反対派、裕福な保守派である。

トランプは、再選運動と反ロックダウンの運動拡大とを、結び付けようとしている。右派政治運動に関わる、憤慨する反政府派、それはティー・パーティ―運動で広がった。今、運動の焦点はコロナウイルス対策がアメリカ的生活の多くの側面を制限していることに焦点をあてている。

零細企業、労働者階級の懸念、地方に住む白人層の反エリート主義。全米ライフル協会NRA、政府を嫌う伝統的な保守派。

反隔離の抗議運動は、選挙を、トランプと経済再開に反対する知事たちとの闘いとみなす。トランプはコロナウイルス対策の失敗を弁解する必要がない。(隔離生活からの)自由を主張するだけだ。

抗議運動は、2020年選挙を、経済再開のトランプ派と、北京・バイデンのワシントン・インサイダーとの闘い、後者はアメリカ人労働者階級を痛めつける中国と共謀している、という枠組みに変える。


 ロックダウン解除の論争

NYT April 22, 2020

Who’s Behind the ‘Reopen’ Protests?

By Lisa Graves

NYT April 22, 2020

States Are Being Crushed by the Coronavirus. Only This Can Help.

By Matthew Fiedler

NYT April 23, 2020

We’re Stuck in Coronavirus Limbo

By Charlie Warzel

FT April 24, 2020

Lifting the UK’s lockdown or saving lives are not mutually exclusive

Martin Wolf

イギリス政府内では、いつ、どのようにロックダウンを解除するか、論争している。経済コストの抑制と人命救済とのトレードオフがある、正しい答は、ウイルスを制圧して両方を得ることだ。しかし、それは難しい。

2四半期の経済活動は35%も下がった。しかし、恐怖による短期的決定は望ましい結果をもたらさない。正しい比較は、もしロックダウンしなかったら、今はどうなっているか、である。たとえロックダウンを解除して再開しても、以前からあった不平等はさらに拡大している。

もっと悪いことは、再開が第2波の感染拡大につながることだ。それは経済活動を大きく破壊する。政権の信用も同じだ。Imperial College Londonの報告書は、4つのコストを評価した。人命、労働日、医療コスト、ソーシャル・ディスタンスによるコスト。

コストが最小の選択肢は、強い行動抑制である。もっと低レベルの行動抑制は、大量検査や追跡による新感染者の抑制に成功し、将来のシャットダウンというリスクがないことだ。現状では望めない。

現在の経済コストを、社会への投資と考えるなら、強い行動抑制は長期的に正しい選択肢である。

FT April 24, 2020

The risk of a US double-dip depression is real

Edward Luce

あなたが1つのロックダウンを十分に大きな痛みと感じているなら、2つ目のロックダウンを想像してほしい。

アメリカ経済を数週間におよぶ深刻な凍結状態にするという影響を推定するのは早すぎる。しかし、消費者や企業がリスク回避の気分を払しょくするのは非常にむつかしいだろう。外出禁止の2度目の衝撃はさらに強いだろう。選択するとしたら、今年後半にそのリスクがあると分かってロックダウンを解除する指導者などいないはずだ。

しかし、11月の投票までにV字回復を示したいという気持ちが、ドナルド・トランプには非常に強い。2度目の感染拡大が起きる可能性を、公に議論することは、政府内の科学者たちに禁じられた。7つの州(フロリダ、サウスカロライナ、テネシーなど)で、すでに自宅待機は緩和されている。タトゥー・パーラー、複合シネマ施設、ボウリング場はジョージアで自由に行ける。しかし、実際、それはスーパースプレッダーの理想的な場所だ。

解除が早すぎれば、ウイルスの抑制も、経済の回復も失われる。


 中国のダム建設

FP APRIL 22, 2020

Science Shows Chinese Dams Are Devastating the Mekong

BY BRIAN EYLER


 郵送による投票

FT April 23, 2020

US democracy must not fall victim to Covid-19

郵送による投票は認められるべきだ。

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The Economist April 11th 2020

The business of survival

The euro area: Cut to the chase

The IMF: Break the glass

Covid and the company: Sinking, swimming and surfing

Race and covid-19: Woes compounded

Labour’s new leader: Socialism with a barrister’s face

Bartleby: It’s cold outside

Ructions in the oil market: Upside down

Joe Stiglitz and the IMF: Pilgrimage to the game quadrant

Free exchange: Special delivery

(コメント) コロナウイルス危機と政府、企業、銀行、EU・ユーロ、IMFSDRsの闘いが描かれている。よくわかったか、といえば、そうでもない。なぜだろうか?

コロナウイルスがもたらすストレスに、これらの解決策は役に立たない。しかし、そうすることでしか対処できない。何か、間違った手段や発想で解決を目指しているような不安が残る。

労働党の新党首や、石油価格の暴落(そして、ソフトバンク・孫正義)が、コロナウイルス危機に加わった。しかし、私たちの声は、どこにも届かない。少なくとも、今はまだ。

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IPEの想像力 4/27/20

中国の論争はわからない。激しく議論されたと思う。そして、感染拡大を阻止する厳格なロックダウンを行った。その後、パンデミックになる。EU内の論争、US内の論争、UKや日本国内の論争、中央銀行の論争、アフリカやインドのロックダウンと支援策、WHOIMFの論争。

「ワクチンと薬だけでは、パンデミックを耐えられない。言葉がなければ、激流の中で自分を保てない。言葉と思考が勁(つよ)ければ、視界が定まり、周囲を見わたせる。」と、藤原辰史氏は書いた(「人文知」軽視の政権は失敗する・・・朝日新聞4/26/2020)。

ウイルスと人類との闘いは、他の問題によって、複雑な、あるいは、残酷な形に変形していく。トランプのアメリカ、ボリス・ジョンソンのUK、モディのインド、プーチンのロシア。

もしウイルスが非常に大きく、はっきりと目視できる(赤い帽子をかぶったような)ものなら、対策は容易である。すでに議論されていることを整理すれば、

1に、感染者と非感染者を分け、感染者だけを隔離して治療する。免疫とワクチン、治療法を改善し、その情報を周知する。肺炎に対する治療薬と人工呼吸器を十分に、感染地域に、集中して配置する。

2に、感染者が多くなり、感染地域が次第に広くなれば、対策は、移動規制や外出制限、ロックダウンになってくる。感染地域には、医療チームや生活物資を個別に配達する専門のスタッフが整備される。

3に、集団免疫が達成されるまで、長期に及ぶ、感染拡大の波が起きる。その影響で、経済活動が大幅に抑制され、失業や財政赤字、物資(医療から食糧まで)の供給が不足してくる。感染地域(国)、未感染地域(国)、免疫獲得地域(国)に分かれて、偏西風によって気圧配置が移動するように、ゆっくりと、あるいは、急速に、その境界線は移っていく。

その期間を、経済対策、生産・流通・消費の組織化、ごみ収集や清掃、境界線の管理が、パンデミックの原理で求められる。移動できないなら、あなたは未感染地域から、感染地域に入り、免疫獲得地域へと移っていく。移動できるものなら、未感染地域に移動させ、免疫獲得を医療的に管理するだろう。

物資の買いだめや都市脱出のパニックを起こさず、非感染者と免疫獲得者が未感染地域で生産を継続し、医療と感染者を助けることができる。その際、維持できる雇用や生活水準は、これがパンデミックであり、私たちは集団として克服する過程にある、という問題になる。

4に、文明の望ましい形、それを描く思想が変わる。次のパンデミックは予想されている。それを減らす研究や、パンデミックを管理できる居住や生活様式があらかじめデザインされるだろう。さまざまな対策と手段が、すでに知識として整理されている。

次は、そう20年くらいして、緑のリュックを担いだような、恐ろしいウイルスが広まる。死亡率はコロナウイルスの10倍だ。しかし政治指導者は、恐れないように、と市民たちを説得する。たとえ未知のウイルスでも、私たちはこれを予想し、克服する準備をしてきたから、と。

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コロナウイルス危機において、「緊急事態」「諮問委員会」「専門家会議」「指標」「戦略的」などの言葉が頻出するようになりました。

しかし、重要なことは「政治的判断」という。その理由をきかれると、「専門家会議」や「指標」のマスクで隠す。

なぜ国民が何を求めているか、具体的な対策を国会で議論しないのか? なぜ批判を受けて論争しないのか? 初期から、現在に至るまで、多くの間違いもあったはずだ。正しいことを行うために、避けられたはずの失敗を、情報を公開して、批判を受け、繰り返し評価することで対策を改善する。

間違ったことを認めない強権的な指導体制は、「陰謀論」、「情報操作」、「取材活動の制限」、「ジャーナリストへの弾圧」を、正しい対策より優先する。

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非常事態宣言を延長する。首相は、いつものような口調で、ゆったりと、説得するような長い話をした。しかし、決して説得的ではない。なぜなら、彼の口調はいつも同じで、説明の中身はない、美辞麗句や自画自賛(自分を含めた「日本」への称賛)に過ぎないからだ。

森友学園の土地売買に絡む事情は究明されたのだろうか? 確か、安倍夫人が強く支援していた学園に大阪市が土地を売却した? 汚染された土壌であるから、その費用を考慮して安く売却された? それは事実だったのか? 事実を知る職員の1人は自殺した。

加計学園の話はどうなったのか? 確か、時間の順序が合わない、虚偽の報告であり、安倍氏の個人的なコネで学園への適用が決まったという疑惑が結びついていたのではなかったか? 友人の学園が特区に申請する話を、安倍は何も知らなかった、というのは事実だったのか?

彼の釈明とは、事実を究明するのではなく、究明する者を攻撃する、文句があったら証拠を示せばよい、と言いながら、証拠になるものを次々に隠し、改ざんすることであった。説得ではなく、ついに国民が飽き、忘れるように図る、という汚い話ではなかったか?

安倍首相は、同じ口調で、国民の協力に感謝し、医療従事者に共感し、「自分たち」?への称賛をくどくどと述べた。マラソンが趣味の東京のとんかつ店主は、営業自粛に苦しみ、自殺したのではないか?

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「藤原辰史:パンデミックを生きる指針——歴史研究のアプローチ」は、パンデミックに条件の1つにオーバーツーリズムを指摘している。

https://www.iwanamishinsho80.com/post/pandemic

オリンピックや万博をやめて、パンデミックの対策に集中してはどうか。外国人観光客に頼らず、国債発行と日銀の大規模介入に頼らない、若者も高齢者も参加できる経済再生を求めて、もっと論争する力を発揮するときではないか。

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