IPEの果樹園2020
今週のReview
4/20-25
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ロックダウンと国際支援策 ・・・イタリアのユーロ圏離脱 ・・・社会が砕ける ・・・危機を生き抜いた人々 ・・・アメリカのパンデミック ・・・パンデミック後の秩序 ・・・IMFによる支援策 ・・・民主主義と不平等 ・・・パンデミック後の経済 ・・・アマゾンの改革 ・・・天変地異と秩序
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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● ロックダウンと国際支援策
FT April 13, 2020
New
issuance of SDRs is vital to help poorer countries
先週、IMF専務理事Kristalina Georgievaは、資本逃避、輸出収入の急激な減少、パンデミックにより、新興市場と発展途上諸国が陥る苦境を描いた。こうした諸国が必要としている融資の額は「数兆ドル」におよぶ。その一部しか彼らの力では得られない。緊急の支援が必要だ。
支援は道義的にだけでなく、実際的に必要不可欠である。パンデミックとその経済的な結果は、あらゆるところにおよぶ。解決策もあらゆるところで必要だ。しかし、どうやって? その問題の多くは「金で」解決される。パンデミックは誰の罪でもない。貧しい諸国の医療体制は粗末で、その通貨は国際的に通用しないから、困難は特に強められる。
IMFの融資能力は1兆ドルあるが、それでは足りない。最もシンプルで効果的な解決策は、追加の購買力を、IMFがSDRsを新規発行することにより、支援が必要な国々に与えることだ。それは今、活発に議論されている。SDRsの最大の利点は、その1単位の価値を主要通貨のバスケットで決め、IMFのペンだけで非常に流動的な資産が創り出せることだ。まさに、この危機にふさわしい。
SDRsは加盟諸国のIMFクォータ(分担金)に比例して配分される。したがって、発行額の42%しか、支援を必要とする諸国に届かない。そうであれば、新規発行額を増やすしかない。この危機に対しては1兆SDRs(1.37兆ドル)が望ましいだろう。
さらに、追加の準備を必要としない諸国は、それを必要とする脆弱な諸国に、それを利用させることが望ましい。1つは、IMF/WHO/世界銀行が管理する特別基金を設けることだ。あるいは、それをIMFの貧困撲滅基金に寄付し、IMFが無利子で貧困諸国に融資する。債務の返済も、危機が続く間は延期する。
反対論もある。しかし、この破局に直面して、すべての手段を用いるべきだ。SDRsの大量発行は苦境にある国を救済できる。大胆に行動せよ。
PS Apr 15, 2020
Debt
Relief Is the Most Effective Pandemic Aid
GORDON
BROWN, LAWRENCE H. SUMMERS
歴史家チャールズ・キンドルバーガーは、国際協調の失敗が1930年の不況を長く、大きなものにした、と主張した。その後も、国際協調が行われた場合でも、膨大な危機のコストが生じた後であった。
ブレトンウッズ会議は世界戦争の破滅を経験してから、また、ベイカー・プランもラテンアメリカ諸国が債務危機で10年間も苦しんだ後だった。
2009年のロンドンG20は、世界金融危機のあと、早期に協調行動を取れたことで世界経済、貿易、脆弱な新興市場へのダメージを抑えた成功例であった。COVID-19の危機も発展途上国におよぶだろう。アジアで90万人、アフリカで30万人が死亡する、とImperial College Londonは推定する。
もしこうした地域で病気を抑えることができなければ、世界各地に第2次、3次、4次、5次の感染が襲ってくる。
市場市場における経済的・金融的な破たんは、サプライチェーンを介して世界に影響するだけでなく、グローバルな金融システムの安定性を脅かすものだ。豊かな国の金融システムは、すでに中央銀行に大きく依存している状態だ。新興市場が世界GDPの半分以上を占め、成長を生み出していることを思えば、その影響は深刻だ。
それゆえ、アメリカ連銀、その他の主要な中央銀行が「なんでもやる」姿勢を明確にすることは当然だ。IMF・世界銀行は世界の中央銀行として融資を拡大しなければならない。世界貨幣としてのSDRsが使用されるのは、この危機に対してでなければ外にない。
しかも、こうした支援が発展途上諸国の債務返済を通じて債券諸国に流れるのであれば、ウイルス対策として、何の意味もない。民間部門も含めて、貧困諸国の債務の免除、債務組み換えを組織的に行うべきだ。この点では、発展途上諸国のインフラ投資に大きな割合を占めるようになった中国が指導的な役割を引き受けるときだろう。
世界は過去の教訓を学び、不況のコストを抑えて、迅速かつ大胆に協力して行動するべきだ。
● イタリアのユーロ圏離脱
FT April 12, 2020
How the
next euro crisis could unfold
Wolfgang
Münchau
私の予想では、これから起こると覚悟すべき1つのシナリオがある。
先週、EU財務省会談で緊急対策が合意された。それは、投資家たちが細部を読んで、マクロ経済的なインパクトは大きくない、とみなされた。その主要な部分は、ESMによる融資、EIBからの保証、各国ごとの失業手当である。
ESMの融資が条件付きかどうかなど、イタリア人は気にしない。コンテ首相は、融資に関するいかなる侮辱にも、政権は耐えられないと結論したからだ。ECBはすでに政府債務危機に対する備えを行った。パンデミック回復基金が議論された。しかし、何の合意もなく、「コロナ債」の発行についても訴えは無視されるだろう。
私の期待は、欧州理事会が2021-2027年のEU予算を組み換える、というものだ。しかし、関心を引くとしても、12兆ユーロにおよぶEU経済に与える影響はまったくない。
つまり、各国の財政政策と、それをECBが支えるしかない、ということだ。危機はいかなる予測も超えて深刻だ。ドイツでさえ、今年のGDPを4.2%の減少と予測する。しかし、来年はV字回復する、と考えている。
それは間違いだろう。私のシナリオでは、ユーロ圏のGDPが今年、10%減少し、2021年も緩やかに回復するだけだろう。イタリア、スペインはドイツよりも悪い。債務が増え、成長が減少して、イタリアの債務/GDP比率は135%から160%か180%にも達する。私は、ECBが無限に債券を購入することはない、と思う。
ある時点で、投資家や金融機関はイタリア政府の返済能力を疑うだろう。イタリアは2008年以来、3度目の不況を経験しつつある。格付け機関は、信用格付けを下げるのではないか? もしそれが2021年、2022年であれば、イタリアは総選挙の前だ。コンテ政権の今の任期は維持できるだろうか? 政界の主流から外れたサルヴィーニが復活するだろう。
もしサルヴィーニが選挙に勝てば、イタリアは債務のデフォルトに向かうかもしれない。
● 社会が砕ける
The Guardian, Wed 15 Apr 2020
Britain
has a hidden coronavirus crisis – and it's shaped by inequality
Frances
Ryan
世界中でパンデミックが起きる中、多数の死者が出ている。
社会的な欠陥が示されている。女性たちは配偶者に権利を蹂躙される。弱い立場の子どもたちは学校にも行けない。彼らをコロナウイルスの見えざる犠牲者と見なせる。4つの壁に囲まれて、彼・彼女たちは身の安全を得られない。
イギリスには家庭内に300万人も3度の食事をとれない人がいる。150万人が食事のない日を過ごすことがある。それはお金がなく、食料が手に入らないからだ。
因果関係は明白だ。食料代が値上がりし、パンデミックで失業や賃金低下が起き、社会福祉は不足し、テスコTescoに買い物に行くことさえ今はぜいたくだ。
しかし、首相官邸の記者会見を観れば、そんなことはまるで気にならないようだ。最近は、コロナウイルスを露骨に非政治化する。あたかもパンデミックは真空の中で、経済的、政治的な要素と関係ない事件であるかのように。ボリス・ジョンソンが発病したことは、コロナウイルスがとても平等な苦しみの原因であるように見えた。エリート校出身の首相も病気には勝てない。
閣僚たちは政治的な懸念に「思いやり」で対処する。国民医療サービスのスタッフたちにみんなで拍手すること。地域の避難所が閉鎖されて行き場のない虐待被害者のために家の窓にハートのマークを書くこと。
われわれは社会問題を消毒しているのだ。政府はわれわれに、感謝の身振りが不十分な財政支援の代わりになり、生活の快適さはウイルスに無防備なことと同じくらい壊れやすい、と説得する。
しかし実際には、イギリスは不平等な公衆衛生の危機を経験している。ウイルスの有毒な社会的効果は既存の分断に従って生じている。およそ200万人が危機の前にすでに栄養状態の悪い暮らしを過ごしていた。社会福祉を削減したこの10年間に、子供たちの5人に1人が、確実に食事をとれない大人と一緒に暮らしていた。
われわれの社会はすでにひび割れており、わずかな力が加わるだけで砕け散る、ということを知ったのだ。
● 危機を生き抜いた人々
NYT April 12, 2020
The Best
Response to Disaster Is Resilience
By
Madeleine Albright
私の最初の記憶は、ロンドン、ケンジントン・パーク・ロードのアパートだ。それは1940年代で、小さな台所と2つの小さな部屋があった。その建物は、ナチスが占領したヨーロッパ各地から来た難民の一時宿舎になっていた。イギリスの首都は包囲されていたのだ。
日々の生活は、食料の配給や、外出時間の制限、遮光カーテン、何もかもが不足した状態であった。
人間は回復する力を持っている。私の人生は、政府の中にいたときもそうでないときも、他の極限状況を生き延びた人たちと出会うことで豊かになった。国務長官時代に、私はウガンダで6歳の少年にあった。彼の母は集団虐殺で殺された。その少年は母の死体の下から這い出し、幼い妹を背負って、宗教団体が設けた難民キャンプまで、何マイルも歩いた。
ボストンで私は、スレブレニツァSrebrenicaの村の近郊で、自分の夫や息子たちを集団墓地に埋葬した女性たちの手を握った。タイで私が出会った少女たちは、売春のために売られた先から救出されたのだ。彼女たちは、心に傷を負いながらも、恐れずに生きる決意を私に語しながら、互いの髪を編んでいた。
大統領であったビル・クリントンは、しばしば、「ふつうの生活が静かな奇跡である」と語っていた。しかし、私たちが日ごろは「ふつう」と考えているものは、思っているほど当たり前ではなく、必然的でもない。
われわれは偉大な文明を築き、共存することを学び、破滅的な例外もあったが、平和に暮らすことを学んだ。しかし、その成果は決して障害なく達成されたものではない。人間的であることは何度も試練を受け、われわれはいつも他者から豊富な支援を受けたのだ。
冷笑的な皮肉屋が思う以上に、われわれははるかにタフで、道義的な勇気を持っている。われわれは危機を生き抜いた人々から学ぶだろう。この異常な毎日を、私たちは自分たちの関係を見直す良い機会と考えるべきだ。そして、われわれの人生を形作る、社会、経済、政治的な構造を改善することを、批判的に考えることだ。
大きな障害を乗り越えた人々がわれわれに想像力を与えてくれる。新しい日常を取り戻したとき、それは旧い日常よりも、より良い、公正で、安全なものであることを、われわれは目指すべきだ。
● アメリカのパンデミック
NYT April 14, 2020
America
Can Afford a World-Class Health System. Why Don’t We Have One?
By Anne
Case and Angus Deaton
3月に議会が承認したコロナウイルス対策法案は、31億ドルの薬とワクチンの開発・生産も含んでいた。超党派の支持は珍しい。だが、製薬会社がロビー活動で、価格の抑制や新薬のための特許を無効にする試みをくじいた。それは珍しいことではない。
価格統制というアイデアは、医療サービス業者にとって極悪人の言うことだ。彼らの基本的なビジネスモデルが破壊される。そのモデルでは、政府が彼らの承認し、特許を与え、彼らが求めるどんな価格でも支払うのだ。政府と制約会社は仲良く手を組んで、裕福な世界で最悪の医療成果を、最大のコストを支払って享受する。
アメリカの医療サービス産業は良い健康状態を創り出すことは下手だが、われわれから金を搾り取って自分たちの利益にすることはうまい。それは不平等を拡大するエンジンである。
医療費の高騰が、大学卒業資格のない男性の収入を半世紀にわたり減少させた主要な要因だ。それは低熟練職の減少にもつながった。雇用者が提供する医療保険システムは、建物解体の破壊球であり、教育を受けていない労働者たちの労働市場を破壊し、「絶望死」の増加につながった。
● パンデミック後の秩序
PS Apr 17, 2020
A
Post-COVID-19 Digital Bretton Woods
ROHINTON
P. MEDHORA, TAYLOR OWEN
グローバルなパンデミックが、以前は考えられないようなことを合法化した。政府はビジネス、医療を保障し、個人の行動を規制しつつある。
最後には、パンデミックにかかるコストを支払う日がやってくる。政府は今以上に、ビジネスや個人が税の公平な分担を支払うように求める必要がある。それはすでに、デジタル革命において始まっている問題だ。
無形資産の取引が中心となる世界の諸制度を考察するときが来た。第2次世界大戦以来、グローバル・インバランスの国際機関は変わっていない。その再構築が迫られている。
2019年11月、EU諸国は、多国籍企業のEU各国で得た利潤を報告するよう求めルールを否決した。それは、Amazon, Facebook, and Googleのようなプラットフォーマーが自国の市民たちから得た収入に正しく課税するため、必要な措置であった。
アイルランドが示すように、各国政府は税率を引き下げるグローバルな競争に巻き込まれている。彼らを包括するガバナンスや政策協力がないため、税制の公平性や効果が歪められているのだ。デジタル世界のプラットフォーマーとその社会政治的基礎とは切り離されてしまい、コロナウイルス危機後の世界で予算を考えるとき、その差を無視することができない。
われわれはデジタル世界の軍備拡大競争の中にある。ソフトウェア開発と、デジタル・データの収集、デジタル・ビジネス・モデルが、インターネットの利用拡大でさまざまな衝突を生じている。新しい法、規制、倫理の基礎が求められる。管理されない、ハイパー・グローバリゼーションの時代に広がったパンデミックの脅威は、米中の、経済・地政学・技術における分断を深めている。
データのプライバシー、監視技術、アルゴリズムに内在する差別化、それらに対して、諸政策は情報エコシステムの一体性を問われている。パンデミック後のデジタル世界を考えるニュー・ブレトンウッズ会議が必要だ。
プラットフォーム経済、人工知能AI、監視国家、クォンタム・コンピューター、それらがすべて大規模なデータ収集を求めており、影響力の集中した結び目をなしている。意思決定の集権化、データを管理する者のパワーの拡大は明らかだ。政策決定は非常に困難である。勝者が全ての利益を独占し、民主的な諸制度にも影響力を及ぼす。国家や健康に対する予想外の脅威と、新しい地政学的なブロックが形成されつつある。
かつて工業経済は、有形財・資産の生産、貿易、消費によって支配された。しかし、デジタル経済は、情報の生産、集積、保護によって成立している。生産と革新、金融利益の取得と分配に関して、まったく新しいシステムが機能している。今や価値の源は、生産や交換ではなく、知的財産権IPにある。IPの価値は、S&P500企業の価値の84%を説明する。
中国、アメリカ、EUは異なるガバナンスをめざしている。地政学的な対立を超えて、われわれはフォーラムを必要とする。言論の自由、プライバシー、パンデミックを予防する追跡・監視技術。1944年のブレトンウッズ会議は、有形財・資産の機能を規制するため、国家間の戦争状態を終わらせる国際機関を創設した。
Facebookがリブラを準備し、内容審査委員会を設けたように、最近まで、政府や立法の問題であったことが、企業のガバナンス問題になっている。パンデミック危機は、公的機関に、正確で最新のデータを知らせる必要があると理解させた。そうでなければ、公共のための効果的介入が行えない。悪意の情報操作を防げない。
米中、たった2つの国の、一握りの企業が支配するシステムが、グローバルな公共財を保護する、と信頼することはできない。WHOについて論争が起きているように、新しいグローバル・ガバナンスの機関が必要だ。それは5つの要素からなるだろう。
1) AIに関する世界宣言を行う。アルゴリズムは価値から自由ではない。世界人権宣言と同様に、それは、必ずしも細部まで、すべての国が守ることはないだろう。しかし、世界のスタンダードを示すことで、各国や地域のガイドラインになる。子供の健康や保護に関する方針も、特別なモデルはないが、その意図は明確である。多くの国が署名すれば、AI宣言が規範的な合意となる。
2) データのガバナンスが地理的に分割されるバルカン化を、外交的に、グローバルな協力で回避する新しいフォーラムになる。中国ブロック、USブロック、EUブロックが強化されることは、取引コストを増し、信頼を損ない、いずれのブロックの市民たちの利益にも反する。インド、カナダ、日本、オーストリアなどはハイブリッド・ルールになるか、どこかに依存するしかない。
3) 多国籍企業の税回避問題を解決する。デジタル経済の略奪的な性格、革新的技術に関する、最初の、戦略的行動から、集積化する経済においては、効果的な政策が失われ、国内でも国際間でも、所得と資産の分配が悪化ずる。少数の多国籍企業がIPから莫大な利益を上げている。莫大な不労所得と、課税を免れる能力について、これから先、コロナウイルス危機後の諸政府が空前の債務を負い、ロックダウンから経済を再建する苦闘に直面し、明確な見直しが求められる。
4) グローバルな無形資産を測る共通の定義と尺度を決める。
5) 共通の政策と規制の機関を設ける。すでに2008年の世界金融危機から、FSB(the Financial Stability Board)などが生まれた。
デジタル・インフラストラクチャ―は、国際システムの機能を高める集団行動を可能にする。社会的、政治的な包摂を求め、成長と社会・政治・経済コストとのバランスを取るように、市民運動の要求を強化するだろう。情報操作と偏見、政治の部族化を阻止し、グローバルな独占と不平等の出現を許さず、伝統的なガバナンスに代わる新しいアイデアの交換を促す空間を創出する。
パンデミック後に向けて、新しいブレトンウッズ会議を開催しよう。
● 民主主義と不平等
FT April 15, 2020
A better
society can emerge from the lockdowns
Amartya
Sen
コロナウイルス以前にも、世界には多くの深刻な問題があった。
国内外に不平等が広がり、世界で最も豊かな国であるアメリカに、何百万人も医療保険を持たない人がおり、苦しむ必要のない病気に苦しみ、EUの間違った財政緊縮のせいで、弱い立場の人々を公的支援がないまま放置していた。反民主主義の政治が、ブラジルやボリビアから、ポーランドやハンガリーまで支持を広げていた。
パンデミックの経験を共有して、人びとはそのような問題を解決するために協力するだろうか?
第2次世界大戦中の食糧が不足する時代に、イギリスでは栄養不良の事例が急激に減少した。食料の利用可能な量が大幅に減ることを知って、イギリス政府は、割り当てや社会的給付により、平等な配分を整備したからだ。同様のことは、医療サービスでも起きた。
その結果は驚くべきものだった。1940年代、戦争の時代に、イングランドとウェールズで、平均寿命が男性で6.5歳、女性は7歳も伸びたのだ。ともに、それ以前の10年をはるかに超える伸びであった。平等と、不利な立場にある人々に配慮する、という教訓は、戦後の福祉国家が出現するのに役立った。1948年、アナイリン・ベヴァンは、NHS(国民医療サービス)の最初の病院をマンチェスターに開設した。
政治が重要である。それは、支配者と統治される側との関係だ。戦争中、イギリスの平等な配分とは対照的に、イギリス領インドで恐怖のベンガル大飢饉が1943年に起きた。およそ300万人が死んだが、ラージ(植民地支配者)は何もしなかった。
現在、パンデミックに対する政策にも、平等は特に優先されていない。アメリカでは、アフリカ系アメリカ人が白人よりはるかに高い率で死亡している。シカゴのコロナウイルスによる死亡例の70%はアフリカ系アメリカ人であるが、彼らは住民の約3分の1でしかない。ブラジル、ハンガリー、インドでも、国内の格差が深刻な結果を生んでいる。
社会的な距離を取ることはウイルスの感染を抑えるために必要だ。しかし、それはロックダウンによる不利益を強いられる人たちへの補償とセットで行わねばならない。所得、食料、医療のアクセスを失う人々がいる。
われわれは不平等な世界に生きている。パンデミック後の世界が同じように不平等でなければならない理由はない。
● パンデミック後の経済
FP APRIL 15, 2020
How the Economy
Will Look After the Coronavirus Pandemic
JOSEPH
E. STIGLITZ・・・エコノミストは自給する考えをバカにしてきた。国境は重要ではないと考えた。今、そうではないと分かった。パンデミック後の経済システムは、短期的思考を弱め、より自給的で、経済グローバリゼーションが政治のグローバリゼーションを大きく超えてしまった事実に敏感に反応するだろう。諸国は、グローバリゼーションと自給体制との間で、より良いバランスを探す必要がある。
CARMEN
M. REINHART・・・1930年代にグローバリゼーションが終わったのは、貿易障壁や資本規制だけでなく、40%以上の国がデフォルトになったからだ。世界資本市場は1950年代かそれ以後まで再生しなかった。パンデミック不況は同じことを生じるかもしれない。
ADAM
TOOZE・・・ロックダウンの経済危機は、1914年、1929年、あるいは、1941年だろうか? 企業や家計がリスク回避と安全への逃避に向かうなら、停滞が続く。債務を累積した政府・公的機関が緊縮に向かえば、事態は悪化する。危機からの脱出には、より積極的な、未来のビジョンを持つ政府が行動する必要がある。しかし、どういう政府か? どんな政治勢力か?
LAURA
D’ANDREA TYSON・・・すでに始まっている労働のデジタル化と自動化が加速する。不平等が拡大する。エッセンシャル・ワーカーへの需要は強い。新しい機会を創り出す。しかし、非正規、不安定、パートタイムやギグワーカーが増えて、社会保障や給付がポータブルになる。Wi-Fiの通信環境を準備する投資が重要だ。
KISHORE
MAHBUBANI・・・アメリカ中心のグローバリゼーションから、中国中心のグローバリゼーションに向けて移行が加速する。もしアメリカが国民の生活を豊かにすることを目指すなら、中国と協力する道を選ぶだろう。
● アマゾンの改革
The Guardian, Fri 17 Apr 2020
Coronavirus
has made Amazon a public utility – so we should treat it like one
Wendy
Liu
1994年に設立されてから、アマゾンは世界で最も価値のある企業になった。現時点で資本の市場評価額が1兆ドルを超えている。
コロナウイルスがアマゾンの成長を損なうことはないようだ。むしろ、逆である。他のビジネスが縮小し、破滅する中で、アマゾンはこうした新しい環境を利用して拡大する位置にある。毎秒、1万1000ドルの注文を受けている。アマゾンはすでに、アメリカのeコマースの半分以上を占めていた。10万人の労働者を新たに雇用する計画がある。
アマゾンはますます公益事業のように見える。カナダ政府と組んで医療器具を配達し、UK政府と組んで家庭用の検査キットを配達している。アマゾンは、パンデミック前に比べて、より強くなる企業の1つであるだろう。
アマゾンは、倫理的な行動規範を持たず、株主に対する利益を追求する点で顕著な成果を上げている。アマゾンはパンデミックで利益を上げるが、それはアメリカ人のすべてにとっての利益ではない。例えば、顧客はウイルスを恐れてアマゾンに注文するが、そのリスクは単にアマゾンの労働者に転嫁されるだけだ。
120億ドルを清算した後でも、ベゾスは、現在、アマゾン発行株の11%、6000万株近くを所有している(昨年、離婚協定で、元妻が4%を所有する)。従業員も株式を所有するが、初期に幹部として雇用された者に集中している。
パンデミックで世界はより大きくアマゾンに依存するようになったが、アマゾンが動くために日々の仕事を誰が実行しているか考えるべきだ。荷物を箱詰めにし、配達しているのは、ベゾスではない。感謝するとしたら、少ない賃金で、過労状態の上に、感染リスクのある中、仕事に従事している労働者たちに対してである。
アマゾンが効果的な公益事業として機能するほど、われわれはアマゾンを公益事業として扱うべきだと考える。反トラスト法の適用、一種の国有化、分割、労働者保護や労働者支配権の強化。アマゾンの労働者たちを株主価値の祭壇に捧げて犠牲にするより、すべてのステークホルダーの要求にバランスを取るべきだ。
このようなことは不可能だと思われている。アマゾンを経営する者たちがその富とパワーを損なうような手段を採用するはずがない。
しかし、もしアマゾンが最初から労働者たちの利益に従う社会経済モデルに向けて動いていたら、その労働の成果はもっと公平に分配されていただろう。
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The Economist April 4th 2020
A brim calculus
Corporate bail-outs:
Bottomless Pit, Inc
The technology industry:
Don’t waste a good crisis
Mozambique: Gas, guns and
guerrillas
Pandemic trade-offs: Hard
choices
The gig economy: Visible
and vocal
Cuban doctors: Marcy and
money
Sweden and corvid-19:
Europe’s outlier
(コメント) インド、ロシア、アメリカの政治の在り方が問われます。
パンデミック対策が、その国の指導者の政治的計算によって、それぞれ違ってくること、経済が急激に落ち込む中で、考えられない規模の政府介入が必要になること、ロックダウンという選択とその解除に関して、深刻なジレンマがあること、ハイテクを駆使したプラットフォーマーのギグエコノミーが加速すること、産業政策や巨大企業と政治の癒着が深刻な遺産となること。
キューバが多くの医師を育て、国際支援と外貨獲得の手段として、パンデミックに成果を上げているケースと、老人たちの自己隔離と十分な医療体制を前提に集団免疫をめざすスウェーデンの特異な思想、そして、石油資源の開発をめぐる政治的混乱、不平等、軍・暴力、周辺諸国と多国籍企業。
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IPEの想像力 4/20/20
「国民1人10万円支給」というのは、政策目標と効果の見えない、政治ショーではないか、という憂鬱な気分になりました。
目的に応じたタイプに分けて、支援金を給付すること。給付のプロセスを透明にすること。財源を示すこと。
たとえば、日銀が参加したパンデミック救済機構が債券を発行し、将来の(消費税ではなく)金融取引税で返済する。政府・議会の合意したタイプに応じて、適格とみなす事業に銀行が融資・投資する、あるいは、本人確認できた者に対して市町村が給付する、としたらよかったと思います。
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この<政策>が行方の知れないものであると感じるのは、コロナウイルスで所得の大幅に減った者と減っていない者とが区別できないからです。さらに、現金給付する財源が政府の債務であるなら、将来の増税や他の支出の削減が予想されること、また、給付された現金は何に使われるのか、という疑問が答えられないことから将来への不信感を生じます。
外出するな、帰省も旅行もするな、と言いながら、現金を配って何に使うのか? 店を閉じ、職を失い、生活費に困る人は(一時的に)助かるでしょう。多くの人は貯蓄するのではないでしょうか。そして、ウイルスの感染が抑えられ、治療が安心して受けられる日々になれば、お店や観光地にも行ってあげよう、というのは、もちろん、経済の回復に有益です。
しかし、感染の波が何度も世界を周回し、地域や都市を往復するのであれば、回復はなかなか現れず、経済や社会の仕組み、配置、景観が根本から変質していくのだと思います。もっと戦略的な、生産や消費の割当制、生産の新しい組織化がともなわなければ、現金給付は資源と時間の消耗につながるでしょう。
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長い目で見ると、パンデミック後の債務返済・償却について、国会がどのように議論するのか、期待しています。増税とインフレ。富裕税。タックスヘイブン廃止。金融取引やインターネット取引への課税。ハイテク大企業の規制。町の商店・工場の活性化。デジタル経済の加速とプラットフォーマーにますます支配される、パンデミック後に備えて、日本の社会を構想し、職場と暮らしを具体的に支援する仕組みを国民に説明するときです。
政治家たちに必要なのは、10万円給付ではなく、ベーシックインカム、ヘリコプター・マネー、デジタル経済化、ロボット・AIなど、未来に向けた猛勉強ではないでしょうか?
非常事態宣言でも、PCR検査でも、政治家の打算と躊躇を、ウイルスや医学の問題にすり替えていると思います。安倍首相がしないなら、小池・東京都知事や吉村・大阪府知事が、PCR検査を地域・無差別のサンプル調査することで、ウイルス対策の政治論争を転換できたと思います。
学校や商店の再開、経済回復をどのように議論するのか。増税のむつかしさをどのように説明するのか。年金・福祉・医療の問題が社会を分断することを避けているだけでは解決できません。景気が大幅に悪化し、回復が容易に期待できないとしたら、財政赤字、地域の衰退、若者の失業は深刻さを危機的水準に高めます。
ベトナムからの出稼ぎ労働者たちが町工場で働く姿だけが、希望を感じたニュースでした。
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エドワード・ルースがトランプ政権の検査体制を批判し、十分な検査を実施しない状態を「連邦政府の不在」、「目を閉じたまま自動車を運転する」と厳しく批判しました。ボリス・ジョンソンと並んで、英米の早期対応の失敗と方針転換に注目しましたが、日本の安倍晋三の名は挙げていません。
WHOへの資金を止め、中国政府がウイルスの情報を隠蔽し、あるいは、研究所からウイルスが市中に広まったと主張して、ますます国際協力の否定や米中対立を煽る。それはトランプの再選キャンペーンとして、彼の計算された情報戦なのかもしれません。しかし、経済活動再開で株価を一気に回復させることに失敗し、感染爆発の第2波、第3波を経験した場合、トランプは何を考えるのか?
国民の意識を自分に集めるために残された選択肢は、おそらく、対外的な衝突、戦争行為である。ベネズエラに侵攻し、あるいは、イランとペルシャ湾で衝突する。中東が戦場となっても、米軍が撤退するという方針は変えない。トランプなら、時機を見て、躊躇なく実行するでしょう。
中国との衝突は望まないが、金正恩の突然死や失脚があれば、朝鮮半島が米中冷戦から、支配権を争う戦場に変わるかもしれない。核兵器はどうなるのか? パンデミックはどうなるのか?
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