IPEの果樹園2020
今週のReview
4/20-25
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ロックダウンと支援策 ・・・イタリアのユーロ圏離脱 ・・・社会が砕ける ・・・危機を生き抜いた人々 ・・・アメリカのパンデミック ・・・パンデミック後の秩序 ・・・IMFによる支援策 ・・・民主主義と不平等 ・・・パンデミック後の経済 ・・・アマゾンの改革 ・・・天変地異と秩序
[長いReview]
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主要な出典 FP: Foreign Policy,
FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York
Times, PS: Project Syndicate, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● ロックダウンと支援策
FT April 12, 2020
Mobile cash is
the best way to help Africa fight Covid-19
Faure Gnassingbé
多くの貧困家庭とインフォーマル・ワーカーをかかえるアフリカでは、自宅にとどまれと命じることは単に貧困を増やすだけである。
われわれの医療システムは脆弱であり、遺体安置所も墓地もいっぱいであり、満足できる状態にはない。われわれも人々の物理的な距離を取る必要がある。しかし、同時に、何百万もの市民に対する社会的給付を用意する必要がある。
アフリカの労働者のおよそ85%は、小農民、食べ物の行商人、ゴミ拾い、輸送システムの運転・保守管理人、遊牧民的な商人として、インフォーマル経済に属している。その多くは日々の稼ぎで暮らしている。彼らに自宅から出るなと命じることは、その家族が食事を得られないことを意味する。
彼らを支援する最も効果的な方法は現金給付である。それゆえ西アフリカのトーゴでは、先週から、政府が申請者に携帯電話で最低賃金の30%を給付することを始めた。女性がその最も多くを占めるだろう。
人びとが、コロナウイルスによる死と、飢餓による死と、その間で選択を強いられることは避けねばならない。携帯電話による現金給付は迅速で、透明で、処理が容易である。
アフリカ諸国には、世界貿易や財政圧力も問題となっている。かつてない国際的な支援が必要だ。問題は医療や衛生にとどまらない。西アフリカが抱えるテロの広がりを思えば、これは安全保障問題である。ともに戦ってほしい。
NYT April 12, 2020
Some Countries
Face an Awful Question: Death by Coronavirus or by Hunger?
By Ruchir
Sharma
貧しい諸国は、厳格な外出禁止ではなく、緩い形でしか実施できない。社会保障制度がない国では、完全なロックダウンは多くの飢餓と餓死を意味するからだ。
感染者の多くは、中国から北半球の豊かな温帯諸国に増えている。しかし、最悪の経済的落ち込みは新興市場、熱帯諸国で生じており、第2次世界大戦以来の激しさになるだろう。
ブラジル、トルコ、メキシコを含む、主要新興市場6か国は、株価が70%も下落した。多くの国で2008年の最安値を下回った。
欧米諸国は大規模な刺激策や補償を与えているが、豊かな諸国は国債を発行して、自由に支出できる。しかし、新興諸国にはそのようなぜいたくは許されない。もし彼らが債務によって支出を増やせば、投資家の信用を失う、通貨価値が急落する。それは多くの場合、金融危機になる。
すでに投資家はアメリカの安全な資産に逃げ始めた。それは新興市場の通貨を安くし、債務の支払い能力を損なう。多くの国がIMFに救済融資を求めている。世界貿易の拡大によって新興市場は利益を受けてきた。パンデミックが世界貿易を一気に縮小させる。
新興市場では職を失っても社会的給付はない。そもそも多くの人々がインフォーマル経済で働いている。
新興市場の政府が豊かな諸国と同じようなロックダウンや景気刺激策、社会保障の実施は不可能だ。1つだけ、彼らに有利なことは、人口の多くを若者が占めていることだ。高齢者に比べて、コロナウイルスの影響が軽くて済むと思われる。
The Guardian, Mon 13 Apr 2020
The Guardian view
on poorer nations and Covid-19: the G20 must act
Editorial
FT April 13, 2020
New issuance of
SDRs is vital to help poorer countries
先週、IMF専務理事Kristalina
Georgievaは、資本逃避、輸出収入の急激な減少、パンデミックにより、新興市場と発展途上諸国が陥る苦境を描いた。こうした諸国が必要としている融資の額は「数兆ドル」におよぶ。その一部しか彼らの力では得られない。緊急の支援が必要だ。
支援は道義的にだけでなく、実際的に必要不可欠である。パンデミックとその経済的な結果は、あらゆるところにおよぶ。解決策もあらゆるところで必要だ。しかし、どうやって? その問題の多くは「金で」解決される。パンデミックは誰の罪でもない。貧しい諸国の医療体制は粗末で、その通貨は国際的に通用しないから、困難は特に強められる。
IMFの融資能力は1兆ドルあるが、それでは足りない。最もシンプルで効果的な解決策は、追加の購買力を、IMFがSDRsを新規発行することにより、支援が必要な国々に与えることだ。それは今、活発に議論されている。SDRsの最大の利点は、その1単位の価値を主要通貨のバスケットで決め、IMFのペンだけで非常に流動的な資産が創り出せることだ。まさに、この危機にふさわしい。
SDRsは加盟諸国のIMFクォータ(分担金)に比例して配分される。したがって、発行額の42%しか、支援を必要とする諸国に届かない。そうであれば、新規発行額を増やすしかない。この危機に対しては1兆SDRs(1.37兆ドル)が望ましいだろう。
さらに、追加の準備を必要としない諸国は、それを必要とする脆弱な諸国に、それを利用させることが望ましい。1つは、IMF/WHO/世界銀行が管理する特別基金を設けることだ。あるいは、それをIMFの貧困撲滅基金に寄付し、IMFが無利子で貧困諸国に融資する。債務の返済も、危機が続く間は延期する。
反対論もある。しかし、この破局に直面して、すべての手段を用いるべきだ。SDRsの大量発行は苦境にある国を救済できる。大胆に行動せよ。
PS Apr 14, 2020
Avoiding a COVID-19
Migration Crisis
MD. SHAHIDUL
HAQUE
FP APRIL 14, 2020
How to Stop a Looming
Food Crisis
BY MAXIMO
TORERO
PS Apr 15, 2020
Debt Relief Is
the Most Effective Pandemic Aid
GORDON BROWN,
LAWRENCE H. SUMMERS
歴史家チャールズ・キンドルバーガーは、国際協調の失敗が1930年の不況を長く、大きなものにした、と主張した。その後も、国際協調が行われた場合でも、膨大な危機のコストが生じた後であった。
ブレトンウッズ会議は世界戦争の破滅を経験してから、また、ベイカー・プランもラテンアメリカ諸国が債務危機で10年間も苦しんだ後だった。
2009年のロンドンG20は、世界金融危機のあと、早期に協調行動を取れたことで世界経済、貿易、脆弱な新興市場へのダメージを抑えた成功例であった。COVID-19の危機も発展途上国におよぶだろう。アジアで90万人、アフリカで30万人が死亡する、とImperial College Londonは推定する。
もしこうした地域で病気を抑えることができなければ、世界各地に第2次、3次、4次、5次の感染が襲ってくる。
市場市場における経済的・金融的な破たんは、サプライチェーンを介して世界に影響するだけでなく、グローバルな金融システムの安定性を脅かすものだ。豊かな国の金融システムは、すでに中央銀行に大きく依存している状態だ。新興市場が世界GDPの半分以上を占め、成長を生み出していることを思えば、その影響は深刻だ。
それゆえ、アメリカ連銀、その他の主要な中央銀行が「なんでもやる」姿勢を明確にすることは当然だ。IMF・世界銀行は世界の中央銀行として融資を拡大しなければならない。世界貨幣としてのSDRsが使用されるのは、この危機に対してでなければ外にない。
しかも、こうした支援が発展途上諸国の債務返済を通じて債券諸国に流れるのであれば、ウイルス対策として、何の意味もない。民間部門も含めて、貧困諸国の債務の免除、債務組み換えを組織的に行うべきだ。この点では、発展途上諸国のインフラ投資に大きな割合を占めるようになった中国が指導的な役割を引き受けるときだろう。
世界は過去の教訓を学び、不況のコストを抑えて、迅速かつ大胆に協力して行動するべきだ。
PS Apr 15, 2020
Saving the Developing
World from COVID-19
MOHAMED A.
EL-ERIAN
PS Apr 15, 2020
The Moral
Crisis of the Pandemic
JEREMY ADELMAN
● イタリアのユーロ圏離脱
FT April 12, 2020
How the next
euro crisis could unfold
Wolfgang
Münchau
私の予想では、これから起こると覚悟すべき1つのシナリオがある。
先週、EU財務省会談で緊急対策が合意された。それは、投資家たちが細部を読んで、マクロ経済的なインパクトは大きくない、とみなされた。その主要な部分は、ESMによる融資、EIBからの保証、各国ごとの失業手当である。
ESMの融資が条件付きかどうかなど、イタリア人は気にしない。コンテ首相は、融資に関するいかなる侮辱にも、政権は耐えられないと結論したからだ。ECBはすでに政府債務危機に対する備えを行った。パンデミック回復基金が議論された。しかし、何の合意もなく、「コロナ債」の発行についても訴えは無視されるだろう。
私の期待は、欧州理事会が2021-2027年のEU予算を組み換える、というものだ。しかし、関心を引くとしても、12兆ユーロにおよぶEU経済に与える影響はまったくない。
つまり、各国の財政政策と、それをECBが支えるしかない、ということだ。危機はいかなる予測も超えて深刻だ。ドイツでさえ、今年のGDPを4.2%の減少と予測する。しかし、来年はV字回復する、と考えている。
それは間違いだろう。私のシナリオでは、ユーロ圏のGDPが今年、10%減少し、2021年も緩やかに回復するだけだろう。イタリア、スペインはドイツよりも悪い。債務が増え、成長が減少して、イタリアの債務/GDP比率は135%から160%か180%にも達する。私は、ECBが無限に債券を購入することはない、と思う。
ある時点で、投資家や金融機関はイタリア政府の返済能力を疑うだろう。イタリアは2008年以来、3度目の不況を経験しつつある。格付け機関は、信用格付けを下げるのではないか? もしそれが2021年、2022年であれば、イタリアは総選挙の前だ。コンテ政権の今の任期は維持できるだろうか? 政界の主流から外れたサルヴィーニが復活するだろう。
もしサルヴィーニが選挙に勝てば、イタリアは債務のデフォルトに向かうかもしれない。
PS Apr 15, 2020
Toward a
European Reconstruction Fund
GUY VERHOFSTADT,
LUIS GARICANO
FP APRIL 16, 2020
Europe Needs an
Alexander Hamilton, Not More Budget Hawks
BY DALIBOR ROHAC
FT April 17, 2020
FT Interview:
Emmanuel Macron says it is time to think the unthinkable
Victor Mallet
in Paris and Roula Khalaf in London
● 社会が砕ける
FT April 12, 2020
A Brexit
extension would face serious opposition even during coronavirus
Tim Bale
The Guardian, Wed 15 Apr 2020
Britain has a
hidden coronavirus crisis – and it's shaped by inequality
Frances Ryan
世界中でパンデミックが起きる中、多数の死者が出ている。
社会的な欠陥が示されている。女性たちは配偶者に権利を蹂躙される。弱い立場の子どもたちは学校にも行けない。彼らをコロナウイルスの見えざる犠牲者と見なせる。4つの壁に囲まれて、彼・彼女たちは身の安全を得られない。
イギリスには家庭内に300万人も3度の食事をとれない人がいる。150万人が食事のない日を過ごすことがある。それはお金がなく、食料が手に入らないからだ。
因果関係は明白だ。食料代が値上がりし、パンデミックで失業や賃金低下が起き、社会福祉は不足し、テスコTescoに買い物に行くことさえ今はぜいたくだ。
しかし、首相官邸の記者会見を観れば、そんなことはまるで気にならないようだ。最近は、コロナウイルスを露骨に非政治化する。あたかもパンデミックは真空の中で、経済的、政治的な要素と関係ない事件であるかのように。ボリス・ジョンソンが発病したことは、コロナウイルスがとても平等な苦しみの原因であるように見えた。エリート校出身の首相も病気には勝てない。
閣僚たちは政治的な懸念に「思いやり」で対処する。国民医療サービスのスタッフたちにみんなで拍手すること。地域の避難所が閉鎖されて行き場のない虐待被害者のために家の窓にハートのマークを書くこと。
われわれは社会問題を消毒しているのだ。政府はわれわれに、感謝の身振りが不十分な財政支援の代わりになり、生活の快適さはウイルスに無防備なことと同じくらい壊れやすい、と説得する。
しかし実際には、イギリスは不平等な公衆衛生の危機を経験している。ウイルスの有毒な社会的効果は既存の分断に従って生じている。およそ200万人が危機の前にすでに栄養状態の悪い暮らしを過ごしていた。社会福祉を削減したこの10年間に、子供たちの5人に1人が、確実に食事をとれない大人と一緒に暮らしていた。
われわれの社会はすでにひび割れており、わずかな力が加わるだけで砕け散る、ということを知ったのだ。
FT April 18, 2020
Coronavirus and
a bitter harvest for UK farmers
Laura Battle
● 危機を生き抜いた人々
NYT April 12, 2020
Joe Biden: My
Plan to Safely Reopen America
By Joe Biden
NYT April 12, 2020
The Best Response
to Disaster Is Resilience
By Madeleine
Albright
私の最初の記憶は、ロンドン、ケンジントン・パーク・ロードのアパートだ。それは1940年代で、小さな台所と2つの小さな部屋があった。その建物は、ナチスが占領したヨーロッパ各地から来た難民の一時宿舎になっていた。イギリスの首都は包囲されていたのだ。
日々の生活は、食料の配給や、外出時間の制限、遮光カーテン、何もかもが不足した状態であった。
人間は回復する力を持っている。私の人生は、政府の中にいたときもそうでないときも、他の極限状況を生き延びた人たちと出会うことで豊かになった。国務長官時代に、私はウガンダで6歳の少年にあった。彼の母は集団虐殺で殺された。その少年は母の死体の下から這い出し、幼い妹を背負って、宗教団体が設けた難民キャンプまで、何マイルも歩いた。
ボストンで私は、スレブレニツァSrebrenicaの村の近郊で、自分の夫や息子たちを集団墓地に埋葬した女性たちの手を握った。タイで私が出会った少女たちは、売春のために売られた先から救出されたのだ。彼女たちは、心に傷を負いながらも、恐れずに生きる決意を私に語しながら、互いの髪を編んでいた。
大統領であったビル・クリントンは、しばしば、「ふつうの生活が静かな奇跡である」と語っていた。しかし、私たちが日ごろは「ふつう」と考えているものは、思っているほど当たり前ではなく、必然的でもない。
われわれは偉大な文明を築き、共存することを学び、破滅的な例外もあったが、平和に暮らすことを学んだ。しかし、その成果は決して障害なく達成されたものではない。人間的であることは何度も試練を受け、われわれはいつも他者から豊富な支援を受けたのだ。
冷笑的な皮肉屋が思う以上に、われわれははるかにタフで、道義的な勇気を持っている。われわれは危機を生き抜いた人々から学ぶだろう。この異常な毎日を、私たちは自分たちの関係を見直す良い機会と考えるべきだ。そして、われわれの人生を形作る、社会、経済、政治的な構造を改善することを、批判的に考えることだ。
大きな障害を乗り越えた人々がわれわれに想像力を与えてくれる。新しい日常を取り戻したとき、それは旧い日常よりも、より良い、公正で、安全なものであることを、われわれは目指すべきだ。
● アメリカのパンデミック
NYT April 12, 2020
I Used to Run
the C.D.C. Here’s What It Can Do to Slow This Pandemic.
By Tom Frieden
Dr. Frieden is
a former director of the Centers for Disease Control and Prevention.
NYT April 14, 2020
America Can
Afford a World-Class Health System. Why Don’t We Have One?
By Anne Case
and Angus Deaton
3月に議会が承認したコロナウイルス対策法案は、31億ドルの薬とワクチンの開発・生産も含んでいた。超党派の支持は珍しい。だが、製薬会社がロビー活動で、価格の抑制や新薬のための特許を無効にする試みをくじいた。それは珍しいことではない。
価格統制というアイデアは、医療サービス業者にとって極悪人の言うことだ。彼らの基本的なビジネスモデルが破壊される。そのモデルでは、政府が彼らの承認し、特許を与え、彼らが求めるどんな価格でも支払うのだ。政府と制約会社は仲良く手を組んで、裕福な世界で最悪の医療成果を、最大のコストを支払って享受する。
アメリカの医療サービス産業は良い健康状態を創り出すことは下手だが、われわれから金を搾り取って自分たちの利益にすることはうまい。それは不平等を拡大するエンジンである。
医療費の高騰が、大学卒業資格のない男性の収入を半世紀にわたり減少させた主要な要因だ。それは低熟練職の減少にもつながった。雇用者が提供する医療保険システムは、建物解体の破壊球であり、教育を受けていない労働者たちの労働市場を破壊し、「絶望死」の増加につながった。
FT April 17, 2020
The US is
failing the test of the century
Edward Luce
コロナウイルスは教科書に説明されるような外生的ショックである。ウイルスは各国の回復力に対する特別なストレス・テストになった。膨大な科学的資源を持ちながら、アメリカはこのテストに落第した。さらに憂慮されるのは、時間が経っても改善しないことだ。
最大に問題は、アメリカが今も解決に向けた道筋を示せないことだ。もっと多く検査しなければ、アメリカは目を閉じで運転しているに等しい。人口の1%、320万人の検査が終わっただけだ。ペンス副大統領は1週間以内に400万人にすると約束したが、同じ日に、トランプ大統領は、だれでも検査を受けたければ受けられる、と言った。それは嘘だ。
アメリカの1日の検査数は14万件で、この2週間変わらないが、パンデミックの進行を調査するにはまるで足らない、と科学者は言う。事実を知る者はいない。
コロナウイルスの脅威に気づくのが遅れたのは、トランプだけではない。イギリスのボリス・ジョンソン首相もそうだ。両国とも、もっと早く行動しておけば、死者数は減っただろう。ソーシャル・ディスタンシングがなければ、死者はもっと増えたはずだ。ところが、その実験をトランプは望んでいる。
木曜日、トランプは5月1日から経済活動を再開するというガイドラインを示した。最悪の犠牲を出している諸州はこれに従わないだろう。アメリカ政治は連邦の真空状態を嫌い、諸州がそれを埋めるために集まっている。しかし、科学ではなく政治によって、トランプの指令に従う圧力が働いている。
検査も、ワクチンの開発も、アメリカには資源を集約する連邦の計画がない。戦争の最中に、戦車や鉄砲の生産を争ってはいけない、とニューヨーク州のクオモ知事は批判した。
トランプは国民に正しく将来を観ることも教えない。彼の見方では、アメリカの感染はすでにピークを過ぎた。経済を閉鎖し続けるより、経済を再開する方がよい。再開しなければ死者は多くなる、という。しかし、実際は感染の新しい波が起きて、第2のロックダウンになるだろう。
指導体制を欠いた国家は戦争に負ける。大恐慌、真珠湾、スプートニクの後、アメリカの団結は強まった。対称的に、コロナウイルス危機はスケープゴート探しに忙しい。ウイルスはアメリカの分断を深めただけだ。
● ロックダウンの選択
The Guardian, Mon 13 Apr 2020
Which is the
best option, lockdown or herd immunity? We're about to find out
Simon Jenkins
ロックダウンと外出禁止か、その緩和と集団免疫か? 史上最大の大量実験だ。すべてを証拠によって決めるべきだ。
The Guardian, Fri 17 Apr 2020
Only a monumental
effort of political imagination can end lockdown
Jonathan Freedland
PS Apr 17, 2020
The Grim Truth
About the “Swedish Model”
HANS BERGSTROM
● 支援策
FT April 13, 2020
WeWork’s
lessons for US real estate in a post-Covid-19 world
Rana Foroohar
FT April 14, 2020
Small
businesses deserve better rescue deals
政府は、実物経済がコロナウイルスによる減速に耐えるよう、支援することを意識している。特に、中小・零細ビジネスにとって資金の支援が必要だ。しかし、支援の供給手続きを商業銀行に委ねたことは間違いだった。
The Guardian, Tue 14 Apr 2020
The Guardian
view on lockdown and community: beware social segregation
Editorial
団結は素晴らしい。しかし、それは緊張のときでもある。
VOX 16 April 2020
Work after
COVID: A new regime for independent workers
Eduardo Levy
Yeyati, Luca Sartorio
● パンデミック後の秩序
FT April 13, 2020
Coronavirus and
the threat to US supremacy
Gideon Rachman
冷戦がもっとも激しかったころ、ロナルド・レーガンは語った。もし世界が異星人に侵略されたら、諸国民の対立は解消されるだろう、と。
しかし、レーガンは楽観的過ぎだ。今、アメリカと中国はコロナウイルスという共通の脅威に直面している。しかし、両国の統一が生まれるどころか、パンデミックは米中の競争を加熱させているように見える。
中国はこの危機にチャンスを観るだろう。コロナウイルスはアメリカの弱点を襲ったからだ。世界最強の軍事力もウイルスには無意味であり、国民皆保険を欠くことは、貧困層だけでなく、突如、アメリカ社会全体を脅かすものになった。
共和党と民主党は、互いに、パンデミックを利用して大統領選挙を操作するのではないか、と疑っている。アメリカ民主主義が危険な状態にある。
他方で、中国政府は、コロナウイルスをほぼ完全に制圧した、と主張する。中国の相対的な安定化と、新しい世界不況、アメリカ政治システムの危機を加えるなら、アメリカから中国へのパワー・シフトが起き、アメリカは首位を滑り落ちるかもしれない。
しかし、過度の衰退論は間違っている。2つの点を思い出すべきだ。アメリカ・ドルとアメリカの大学だ。あなたはどの通貨を信頼するか? あなたの子どもはどの大学へ行き、どこで働くのが良いだろうか?
その答えは、USドルであり、アメリカだ。習近平の中国ではない。
コロナウイルス危機の後、アメリカ社会は変わるかもしれない。外国人排斥、長期の深刻な不況、政治的自由を破壊するような変化があれば、アメリカのソフト・パワーは失われる。
他方で、USドルも、コロナウイルス危機の対策で、それがなくいてもトランプ政権の財政赤字は膨張していたが、一気に、赤字を拡大することになった。アメリカ連銀のバランス・シートも以上に拡大している。これは、「第3世界」の諸国が示す病状に似ている。
コロナウイルスを世界にもたらした中国に制裁を科すべきだ、中国人に負う債務をデフォルトにしろ、と乱暴な議論をするアメリカの政治家もいるが、何の役にも立たない。ドルに代わるものがないことで、まだ信用は失われないだろう。その限りで、アメリカは世界の頂点に居座ることができる。
FT April 13, 2020
Oil accord highlights
the new world disorder
PS Apr 14, 2020
How the G20
Should Lead, Again
HONG NAM-KI
PS Apr 17, 2020
A Post-COVID-19
Digital Bretton Woods
ROHINTON P.
MEDHORA, TAYLOR OWEN
グローバルなパンデミックが、以前は考えられないようなことを合法化した。政府はビジネス、医療を保障し、個人の行動を規制しつつある。
最後には、パンデミックにかかるコストを支払う日がやってくる。政府は今以上に、ビジネスや個人が税の公平な分担を支払うように求める必要がある。それはすでに、デジタル革命において始まっている問題だ。
無形資産の取引が中心となる世界の諸制度を考察するときが来た。第2次世界大戦以来、グローバル・インバランスの国際機関は変わっていない。その再構築が迫られている。
2019年11月、EU諸国は、多国籍企業のEU各国で得た利潤を報告するよう求めルールを否決した。それは、Amazon, Facebook, and Googleのようなプラットフォーマーが自国の市民たちから得た収入に正しく課税するため、必要な措置であった。
アイルランドが示すように、各国政府は税率を引き下げるグローバルな競争に巻き込まれている。彼らを包括するガバナンスや政策協力がないため、税制の公平性や効果が歪められているのだ。デジタル世界のプラットフォーマーとその社会政治的基礎とは切り離されてしまい、コロナウイルス危機後の世界で予算を考えるとき、その差を無視することができない。
われわれはデジタル世界の軍備拡大競争の中にある。ソフトウェア開発と、デジタル・データの収集、デジタル・ビジネス・モデルが、インターネットの利用拡大でさまざまな衝突を生じている。新しい法、規制、倫理の基礎が求められる。管理されない、ハイパー・グローバリゼーションの時代に広がったパンデミックの脅威は、米中の、経済・地政学・技術における分断を深めている。
データのプライバシー、監視技術、アルゴリズムに内在する差別化、それらに対して、諸政策は情報エコシステムの一体性を問われている。パンデミック後のデジタル世界を考えるニュー・ブレトンウッズ会議が必要だ。
プラットフォーム経済、人工知能AI、監視国家、クォンタム・コンピューター、それらがすべて大規模なデータ収集を求めており、影響力の集中した結び目をなしている。意思決定の集権化、データを管理する者のパワーの拡大は明らかだ。政策決定は非常に困難である。勝者が全ての利益を独占し、民主的な諸制度にも影響力を及ぼす。国家や健康に対する予想外の脅威と、新しい地政学的なブロックが形成されつつある。
かつて工業経済は、有形財・資産の生産、貿易、消費によって支配された。しかし、デジタル経済は、情報の生産、集積、保護によって成立している。生産と革新、金融利益の取得と分配に関して、まったく新しいシステムが機能している。今や価値の源は、生産や交換ではなく、知的財産権IPにある。IPの価値は、S&P500企業の価値の84%を説明する。
中国、アメリカ、EUは異なるガバナンスをめざしている。地政学的な対立を超えて、われわれはフォーラムを必要とする。言論の自由、プライバシー、パンデミックを予防する追跡・監視技術。1944年のブレトンウッズ会議は、有形財・資産の機能を規制するため、国家間の戦争状態を終わらせる国際機関を創設した。
Facebookがリブラを準備し、内容審査委員会を設けたように、最近まで、政府や立法の問題であったことが、企業のガバナンス問題になっている。パンデミック危機は、公的機関に、正確で最新のデータを知らせる必要があると理解させた。そうでなければ、公共のための効果的介入が行えない。悪意の情報操作を防げない。
米中、たった2つの国の、一握りの企業が支配するシステムが、グローバルな公共財を保護する、と信頼することはできない。WHOについて論争が起きているように、新しいグローバル・ガバナンスの機関が必要だ。それは5つの要素からなるだろう。
1) AIに関する世界宣言を行う。アルゴリズムは価値から自由ではない。世界人権宣言と同様に、それは、必ずしも細部まで、すべての国が守ることはないだろう。しかし、世界のスタンダードを示すことで、各国や地域のガイドラインになる。子供の健康や保護に関する方針も、特別なモデルはないが、その意図は明確である。多くの国が署名すれば、AI宣言が規範的な合意となる。
2) データのガバナンスが地理的に分割されるバルカン化を、外交的に、グローバルな協力で回避する新しいフォーラムになる。中国ブロック、USブロック、EUブロックが強化されることは、取引コストを増し、信頼を損ない、いずれのブロックの市民たちの利益にも反する。インド、カナダ、日本、オーストリアなどはハイブリッド・ルールになるか、どこかに依存するしかない。
3) 多国籍企業の税回避問題を解決する。デジタル経済の略奪的な性格、革新的技術に関する、最初の、戦略的行動から、集積化する経済においては、効果的な政策が失われ、国内でも国際間でも、所得と資産の分配が悪化ずる。少数の多国籍企業がIPから莫大な利益を上げている。莫大な不労所得と、課税を免れる能力について、これから先、コロナウイルス危機後の諸政府が空前の債務を負い、ロックダウンから経済を再建する苦闘に直面し、明確な見直しが求められる。
4) グローバルな無形資産を測る共通の定義と尺度を決める。
5) 共通の政策と規制の機関を設ける。すでに2008年の世界金融危機から、FSB(the Financial Stability Board)などが生まれた。
デジタル・インフラストラクチャ―は、国際システムの機能を高める集団行動を可能にする。社会的、政治的な包摂を求め、成長と社会・政治・経済コストとのバランスを取るように、市民運動の要求を強化するだろう。情報操作と偏見、政治の部族化を阻止し、グローバルな独占と不平等の出現を許さず、伝統的なガバナンスに代わる新しいアイデアの交換を促す空間を創出する。
パンデミック後に向けて、新しいブレトンウッズ会議を開催しよう。
FP APRIL 17, 2020
A Global Pandemic
Bailout Was Coming—Until America Stopped It
BY ADAM TOOZE
3月に、アメリカ連銀が始動して、金融市場の安定化に世界の中央銀行が協力した。ロックダウンを命じた政府は、その生活支援を始めた。IMFの推定では、世界中で8兆ドルが、パンデミックのショックを緩和するために支出、融資、保証される。それは世界GDPの9.5%にもなる。
これほどの財政負担を行えるのはG2である。この数週間で、100か国以上から、すなわち、国連加盟国の半数以上がIMFに支援を求めた。それはいくつかの技術的問題を生じる。
同時に、今は世界が政治的な分岐点にある。複雑で、多極的な秩序が、この問題にさらされる。IMFや世界銀行に比べて、国連は効果的ではない。1国1票の掛け声だけで、各国の経済規模に応じた負担能力が発言力を表している。
重要な決定を行うのはG20に限られる。2008年の世界金融危機で、G20はIMFを復活させた。2009年4月のロンドンG20サミットで、IMFの1兆ドル増資を求めたイギリスのゴードン・ブラウン首相を、アメリカのオバマ政権が強く支持したのだ。
国際融資や投資はアメリカ、USドルに逃げ込み、貧しい諸国の資金枯渇が問題化している。ブラウンや、元財務長官のサマーズが、IMFのSDRs新規発行を提唱した。しかし、重要な点は、トランプ政権の反応だ。トランプはIMFの融資拡大やSDRs発行に、反対しないだろうか?
トランプはWHOを標的にし、国際世論と敵対している。財務省は、SDRs発行の付和雷同に加わらない、と表明している。
トランプ政権は2009年の金融危機処理に関わった幹部たちを嫌っている。また、ムニューシン財務長官が、SDRsは大部分が不適切な諸国に配分される、というのは正しい。その70%はG20が得て、本当に困っている諸国が得るのは3%でしかない。債務の返済延期の方が好ましい。
財務省は、イランやベネズエラが追加の資金を得ることを好まない。共和党の支配する議会は、かつて、オバマの提案するIMF改革に何でも反対した。中国に対して、SDRs発行の主導権を取ることで巻き返す、ということも考えられる。
しかし、トランプ政権にはビジョンがなく、財務省は基本的にIMFの財源は十分だ、と考えている。
● アメリカ連銀
FT April 13, 2020
Federal Reserve
has encouraged moral hazard on a grand scale
Jonathan Tepper
FT April 17, 2020
The Fed has
cleared one big hurdle, but more loom ahead
Gillian Tett
FT April 16, 2020
Neel Kashkari:
Big US banks should raise $200bn in capital now
Neel Kashkari
● 発展途上諸国のパンデミック
FT April 13, 2020
Cocos and AT1
look like fool’s gold
Jonathan Ford
PS Apr 13, 2020
Suspend
Emerging and Developing Economies’ Debt Payments
CARMEN M.
REINHART, KENNETH ROGOFFv
新興市場と発展途上の諸国は、医療システムの不足、財政・金融刺激策を行う力の欠如、社会保障システムの未発達もしくは不在により、人道的な危機だけでなく、1930年代以来の厳しい財政的危機に直面する。
多くの国がすぐに支払いを停止するだろう。何がなされるべきか? IMFと世界銀行は、その能力と経験を生かして、アメリカおよび主要諸国の財務踏力がそれを自国の利益になると判断すれば、債務のモラトリアムに関する公債協調を組織するべきだろう。民間の債権者たちにも、短期的に、他の選択肢はない。
PS Apr 13, 2020
COVID-19
Thrives on Inequality
CHEMA VERA
FT April 14, 2020
Only victory in
Africa can end the pandemic everywhere
FT April 16, 2020
Why we should
be selfish and provide Africa debt relief
David Pilling
アフリカ諸国の債務を免除することは、将来の債務を返済しない動機となるような、モラル・ハザードなのか? われわれは自国の問題に集中するべきか?
第1に、アフリカ諸国はコロナウイルス危機に責任がない。
第2に、アフリカ経済は成長を高めてきたし、救済により、危機後に成長を回復する。
第3に、アフリカ諸国でパンデミックが抑えられないなら、それは北半球に戻ってくる。
PS Apr 17, 2020
How Africa Can
Fight the Pandemic
ARKEBE OQUBAY
(後半へ続く)