IPEの果樹園2020
今週のReview
4/13-18
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コロナウイルス危機への対応#1 ・・・豊かな西側の外では ・・・危機後の世界に向けた政策 ・・・メルケルは行動せよ ・・・ボリス・ジョンソンの跳躍 ・・・『資本とイデオロギー』 ・・・コロナウイルス危機と経済対策 ・・・ヘリコプター・マネーの監督 ・・・スラム居住者、ホームレス、難民キャンプ ・・・サンダースの退陣と革命
[長いReview]
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主要な出典 FP: Foreign Policy,
FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York
Times, PS: Project Syndicate, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● コロナウイルス危機への対応#1
NYT April 2, 2020
The Covid-19
Slump Has Arrived
By Paul Krugman
正常な時期の2週間に申請される失業保険は50万件であるが、この2週間はおよそ1000万人が申請した。われわれは経済的な破局に直面しつつある。
政府はそれに備えているか?
通常の不況と違って、景気刺激策では意味がない。需要の不足ではなく、感染拡大を抑える「社会的な距離を取る」要請が仕事を止めているからだ。
政策の原則は、刺激策で雇用とGDPを維持することではなく、生活支援である。所得を一時的に失った人々の苦境を救済することだ。
被災地支援と中小企業融資の考え方で、2兆ドルのthe CARES Actが作られ、議会を通過したことは良いニュースだ。しかし問題は、今すぐに支援を必要とする人たちにお金が届くまで時間がかかることだ。融資は民間銀行から行われるが、そのためのガイドラインは示されていない。また、この仕組みでは州政府や地方自治体に支援が届かない。
どちらの作業も成立期には時間がかかる。オバマケアもそうだった。しかしオバマ政権の専門家チームは迅速な諸問題を解決していった。トランプ政権はどうか。トランプはあらゆる専門家を侮辱し、なんでも娘婿のクシュナーに監督させている。
州・地方政府への支援もそうだ。トランプは大規模なインフラ投資を何度も語ったが、共和党の支配する上院は支持しなかった。
The Guardian, Fri 3 Apr 2020
Forget 'recession':
this is a depression
David
Blanchflower and David Bell
PS Apr 7, 2020
Mapping the
COVID-19 Recession
KENNETH ROGOFF
PS Apr 8, 2020
Lessons from
Crises Past
GEORGE P.
SHULTZ , MICHAEL J. BOSKIN, JOHN B. TAYLOR
連邦政府や州政府、地方政府により、アメリカ経済のかつてない封鎖が命じられている。コロナウイルスの感染拡大を抑えるために必要であることはわかる。しかし、たとえ良い意図からでも、政府介入はしばしば長引き、市場の適切な機能を妨げて、有益であるより、有害になることが多い。
パンデミックに対する政策も、市場の機能を維持し、民間のインセンティブを生かすべきだ。
緊急の目的に民間部門の企業や被雇用者を規制することは最小にする。個人の責任を明確にする。政府は価格決定に介入しない。
たとえば、1971年、インフレ圧力の下にあるアメリカで、ニクソン政権は賃金・価格を統制する命令を発した。最初は機能したように見えたが、その後、経済に有害であった。対称的に、レーガン大統領は、規制緩和と税率の引き下げ、マクロ経済政策に戻し、それ以前の政府介入では達成できなかった水準を実現した。
他の原則は、市場の調整に委ねる、ということだ。1971年の夏、財政赤字とインフレで金流出が続き、ニクソンは固定レートによる金交換を停止した。そして変動レート制に移行した。それ、結局、うまく行った。フリードマンも指摘したが、1973年に中東戦争、石油禁輸、国際金融危機になるだろうと恐れたが、何も起きなかった。自由な価格システムが処理したのだ。
1990年、サダム・フセインがクウェートに侵攻したときも、石油の先物市場を閉鎖しなかった。1990年代初めのS&L危機でも、支払い不能のS&Lは閉鎖せず、高金利で資金を集めた。それは不人気だが、究極において損失を抑えた。
最後に、政策担当者は経済的影響に焦点を向けるべきだ。2008年の世界金融危機では、ベアスターンズを救済したことで、他の金融機関も救済を期待するようになった。それは失敗だ。コロナウイルス危機でも、納税者が政府からの給付を支出するように求めるべきだ。
NYT April 9, 2020
What Was the
Last Time an Economy Froze Like This?
By Chris Miller
● 豊かな西側の外では
FT April 4, 2020
Threat of
catastrophe stalks developing world
David Pilling and
Jonathan Wheatley in London, Andres Schipani in São Paulo and Amy Kazmin in
Delhi
PS Apr 6, 2020
Internationalizing
the Crisis
JOSEPH E.
STIGLITZ
先進経済を守るためにも、政府は多国間の支援体制を早急に用意するべきだ。第1に、IMFはSDRsを追加発行するべきだ。しかも発行されたSDRsを、アメリカなどの先進経済は、発展途上諸国を支援するファンドとしてプールするべきだ。
債権諸国は、債務国が支払いを停止するのを認めるべきだ。現状のまま、大量のデフォルトが発生すれば、それは先進経済にも破壊的である。そして、政府債務を再編するメカニズムを設けるのが望ましい。
FT April 7, 2020
Copycat coronavirus
policies will soon come to an end
Ivan Krastev
データがなく、コストが予測できなと不確実なコロナウイルス危機に対しては、各国政府は最も厳しい状況にある国の措置をまねて、国民の疑問をそらす。しかし、データが集まれば、各国の優劣はあきらかになる。外出禁止から、市民活動を回復する時期や方法に関して、模索は異なるだろう。
PS Apr 8, 2020
The East-West Divide
in COVID-19 Control
JEFFREY D.
SACHS
NYT April 9, 2020
Why the Wealthy
Fear Pandemics
By Walter
Scheidel
● 危機後の世界に向けた政策
VOX 03 April 2020
A progressive European
wealth tax to fund the European COVID response
Camille Landais, Emmanuel Saez, Gabriel
Zucman
ヨーロッパ諸国の政府は迅速にコロナウイルス危機に対して行動しなければならない。コストの共有化が議論されている。債務コストの共有は、ヨーロッパの統合プロジェクトに政治的な健全さを回復するだけでなく、経済的な視点からも最適である。コロナウイルス危機は、イタリアのように、財政余地の限られた国に、突然、大規模なショックをもたらした。公衆衛生の危機と財政刺激策は、そのプラスの外部性が大きいことから、連帯することが望ましい。
ESMによる限定的な条件付き融資やユーロ債の発行、パンデミック対策EU基金などが議論されている。ECBによる保証があるとしても、問題は、危機後の債務コストをどのような処理するか、である。危機の最悪期が過ぎれば、連帯感は急速に失われる。政府債務危機の失敗を繰り返してはならない。今すぐに、共通の返済戦略に合意しておくべきだ。それは、危機後のユーロ債にも政治的な有利な条件となるだろう。
20世紀前半の大規模な政府債務に関する処理を振り返れば、ドイツがその最善の経過を示した。インフレによって債務負担を処理したケース(フランスは1945-48年に50%のインフレ率、UKは1970年代に2桁インフレを続けた)に比べて、ドイツは累進的な資産税によって返済した。(債務を引いた)純資産に対して、期間を決めて、高度に累進的な課税を行った。それは戦後ドイツの経済的奇跡の条件として評価されている。
それゆえ、われわれの提案は、累進的、期限付き、ヨーロッパ全体の、純資産で最上位1%の階層に対する課税である。
それが最善である理由は、危機の間も所得のある個人は、消費が減る分、多くの貯蓄をするからだ。政府債務の増大は民間の所得を増やすことになるが、危機後は、民間の富で債務を減らすことが求められる。
ユーロ債の保有者だけが(例えばインフレで)返済を負担するのは不合理だ。資産に包括的な課税をすることが支持される。インフレは再分配が不明確で、しかも混乱をもたらす。
封鎖を命じると、脆弱な人びとが大きな負担を強いられる。高所得層は、自宅からでも働けるし、資産によってショックを免れる優れた方法が利用できる。
資産税を効果的に行うには、ヨーロッパ全体で統一した課税が求められる。
それは過去の富の蓄積に対して課税されるのであり、現在の投資や技術革新には影響しない。
その規模(200万ユーロを超える資産に1%、800万ユーロ以上に2%、10億ユーロ以上に1%)は、巨大ではなく、前例のないものでもない。
NYT April 3, 2020
Covid-19: A
Look Back From 2025
By Bret
Stephens
2025年からの手紙
5年前、CORVID-19は中国に出現した。権威主義体制が病気を広めた、という者もいた。警告する者を弾圧し、データをねつ造し、情報の自由な交換を嫌ったからだ。
数か月で明らかになった。その反対も真実だ、と。病気は権威主義体制を広めたのだ。
ハンガリーのオルバンは、ロシアのプーチン型独裁体制を確立した。フィリピンも、イスラエルも。
パンデミックは世界中の政府に強硬策を正当化する理由を与えた。野党の反対を阻み、集会を禁止し、投票を弾圧、都市の封鎖、国境の遮断、貿易制限、ビジネスへの介入、旅行規制、反対派メディアの検閲。
アメリカでは、ジョー・バイデンが、予定されていた会場の感染リスクにより、デラウェア州の自宅で民主党の大統領候補指名を受けた。バイデンはネットで選挙活動を展開したが、非常時の権力を得たトランプ大統領は容易に再選を勝ち取った。
市民の自由は減少し、政府は巨大になった。史上空前の失業は、医療保険、失業手当、住宅・食料支援をかつてない水準に引き上げた。トランプは、バーニー・サンダースが夢にも思わなかったほど、福祉国家を拡大した。
ロックダウンが解除されても、事態は何も変わらなかった。人びとは街に出ることを嫌い、企業も個人も破産した。何万件もの融資がデフォルトになって、金融危機が発生した。多くの銀行が直ちに国有化された。政府は救済した産業を抱えることになった。
発展途上諸国の危機ははるかに破滅的であった。若者が多かったが、死亡率は非常に高く、経済が停滞した。メキシコの国境地帯は無秩序と化し、ついにトランプは両党の支持で壁を建設した。
危機の初期には進歩的な政党が優位を得るように見えたが、その反対だった。
環境保護の関心は失われた。天然ガスは安く、経済破局で炭素排出量も減ったからだ。犯罪の急増で、銃規制や刑法の見直しは支持されなくなった。地方や郊外の有権者に支持されて、トランプは「アメリカ再稼働」を展開した。彼らは都市のエリートほど感染リスクを恐れていなかった。
世界中に好戦的な論調が広まった。経済にダメージを受けた体制、特に、中国、ロシア、イランは、国内不満を対外的な軍事的拡大によってそらすことを好んだからだ。軍の拡大は失業対策にもなった。コロナウイルス危機は、諸国の国境封鎖と険悪な関係を広めた。
良い面もあった。人びとは読書し、家族や老いた両親を気遣い、金銭に注意深くなり、深く思索した。精神的な豊かさは確かに成果である。
しかし今は、第46代アメリカ大統領の就任式である。マイケル・リチャード・ペンス。
FP APRIL 3, 2020
The United
States Can Still Win the Coronavirus Pandemic
BY STEPHEN M.
WALT
私はすでに、危機後の世界に関する「リアリスト」の解釈を示した。ナショナリズム、アジアへのシフト、アメリカの指導力低下、ハイパーグローバリゼーションの後退。
しかし、西側のリベラルな民主主義より、東側の非リベラルな権威主義体制が強めることは、そうでない可能性もある。危機後のアメリカ社会が、弾力的で、発明に優れ、適応力に富むなら、政府のさまざまなレベルにおけるスマートな指導力を得て、危機の最悪の局面を速やかに乗り切るかもしれない。
1年後、2年後のアメリカと世界はどうなっているだろうか?
アジアの成功物語は、今、そう見えているほど、優れて印象的ではなくなっているかもしれない。特に中国がデータをごまかしているなら、封鎖解除後にも感染者の爆発で発生するだろう。それはアジア諸国に影響する。民主主義と権威主義との闘いは、明確な違いに至らない。
アメリカのドルは、なお安全への逃避として、世界から資本を吸収している。それはアメリカの借り入れを容易にし、グローバルな影響力を高めている。
アメリカのポンペオ国務長官は、「中国ウイルス」の言葉をめぐってG7でも共同声明を拒否した。世界から疎んじられることが目的であるなら、これは成功だっただろう。
私のリアリストの立場は、アメリカの指導力を高める首長と矛盾しない。アメリカは国益を考慮しない形で不用意に他国の安全保障を約束すべきでない。しかし、多くの失策と虚言にもかかわらず、最期にトランプ大統領が助言を聞き入れて、アメリカのグローバルな位置を損なわないこと、正しいことをする機会を生かすことを願っている。
FP APRIL 3, 2020
How to Save
Global Capitalism From Itself
BY RAGHURAM
RAJAN
新しい技術が世界におよぶ市場の統合を進めるにつれて、競争は厳しく、要求は困難なものになって、工業諸国の小規模な製造業街は経済的な破壊の犠牲になっている。大企業は都市部に移転し、機械化は単純な労働者を不要にしたからだ。過去20年間の中国の輸出拡大は、こうした傾向を加速させた。
歴史的に見て、市場は新しい仕事を生み出した。しかし、それは繁栄する大都市のサービス部門で、高度な教育やスキルの習得が求められた。取り残された中産階級は不安定な職に就くプレカリアートになった。彼らは経済システムを公平なものとみなし、不満を強めた。
これに応じて政治はグローバリゼーションや技術革新に反対する傾向を帯びた。他方、高齢化する工業諸国では労働者が減少し、移民労働者を必要とするようになった。また若い、成長する地域への輸出も必要だった。それらはグローバルな協力によって解決しなければならない。
しかし、取り残されたコミュニティーの要求は聞かれなかった。若者は流出し、コミュニティーの財集は失われて、公共制度が維持できなくなった。衰退の悪循環が始まった。以前に比べて、アメリカ人の地理的移動性は低下した。
衰退地域の労働者たちが主導権を取り戻したいと願うのは当然だった。地域の雇用を生み出す、革新的な政策が求められた。資本主義の改革による生き残りが模索された。しかし、ローカルな政治家たちはそれを拒んだ。それは高度な意思決定が彼らから失われていたからだ。
意思決定は地方から全国の中枢都市へ、さらに国際的な機関へ、奪われた。それとともにコミュニティーの連帯も失われた。ますます不況は深刻で、長期に及び、コミュニティーの負担は大きくなった。しかし、彼らには公的な支援が十分に行われなかった。
ブレグジットが叫ばれたのは、こうした政治的主権をも求める声が強まっているからだ。彼らはハイパーグローバルな相互依存を放棄し始めた。権力を取り戻すが、市場は開放することを望む。財源を地域の復興に結びつける。
これを「補完性subsidiarity」とよぶ。スイスには多くのカントン(州)がある。外国人の比率も高い。炭素排出量のように、全国や国際間で必要な基準もあるが、最低賃金から労働時間、社会給付まで、さまざまな基準を州で決めている。
新しいコミュニケーション技術も地域の復興を助ける。オンライン・プラットフォームは地方の小規模生産者やサービス供給を可能にする。地域の復興を支えるには指導者が必要だ。有能な人びとを地域にひきつける。十分な教育やスキルを取得する機会を保障する。重要な役割を担う移民たちにコミュニティーのビザを発給する。
中央政府は、自由な発想と新しい試みを支持する資金を援助するが、コミュニティーの決定を重視する。繁栄する都市圏とリンクする復興する諸コミュニティーこそが、持続可能な資本主義への改革を支える民主主義の基礎である。
FT April 4, 2020
Virus lays bare
the frailty of the social contract
FP APRIL 4, 2020
America Is Having an Unemployment Apocalypse.
Europe Chose Not to.
BY SIMON
TILFORD
The Guardian, Sun 5 Apr 2020
Whether in the
UK or the developing world, we're not all in coronavirus together
Kenan Malik
FT April 5, 2020
US society
needs a broadband big dig to get out of its hole
Rana Foroohar
何も成長しないこの頃だが、1つだけ伸びているもんもがある。インターネットの利用だ。
実際にある商店街は廃業し、インターネット取引が増える。コロナウイルスがデジタル経済化を加速したのは間違いない。AmazonからGoogleまで、危機後の世界で、確実に、以前にもまして強大な存在になるだろう。
他方、流通や小売り、旅行代理店、観光業が回復するには、時間を要するだろう。しかし、こうした分野こそ近年の雇用を多く生み出してきた。
はっきり言って、議会が話し合っているインフラ投資は緊急支援にならない。この数週間、数か月が重要である。融資ではなく給付、債務の免除が必要だ。
ワクチンが開発されるまで、まだ1年以上も、失業の高い水準が続くだろう。1つの意志で何羽も一緒に撃ち落とす支援策が必要だ。
まず、ブロードバンドを国民全体に提供する「ビッグバン」である。パンデミックの真ん中で、ブロードバンド接続が可能でなければ、人びとは生活、仕事、教育の機会が得られない。
こうしたサービスを地方で安価に提供するこころみや新興企業に、政府の支援策が届かない恐れがある。それは中央の規制を既存のインターネット大企業、Facebook, Amazon, Apple, Netflix and Google
いわゆる “FAANG”が、政治を通じて支配しているからだ。
むしろ、インターネット取引による利益を、彼らは税金として追加に徴収されるべきだ。そして、こうした試みを政府は経済の再生の機会としなければならない。もしそれに失敗すれば、大企業に対する不満はかつてない水準に高まるだろう。
FT April 5, 2020
We may not all
be equal in the eyes of coronavirus
Angus Deaton
パンデミックは地位や富をかまわずに人々を苦しめた。歴史的な平等化の時期につながった。しかし、治療法がわかってからは、そうではなかった。
コロナウイルスもそうだ。最初は、肺だけでなく金融市場も侵し、富裕層の地位を低下させた。しかし、コロナウイルスの治療法も急速に開発されるだろう。
PS Apr 6, 2020
Will COVID-19
Remake the World?
DANI RODRIK
危機が各国の政治にある特徴を鮮明に救済策に打ち出した。それは分断をさらに強めた。危機は、世界政治や世界経済の大きな分岐点である、と言われるが、そうではない。むしろ、既に存在した傾向を強めるのだ。
NYT April 6, 2020
Will We Flunk
Pandemic Economics?
By Paul Krugman
トランプは「ふつうの風邪だ」と言った。
しかし、パンデミックが急速にやってくる。1500万人のアメリカ人が職を失う。経済は崩落しつつあるが、統計数値が間に合わない。
NYT April 8, 2020
The Magic of
Empty Streets
By Allison
Arieff
FT April 9, 2020
The danger in
the global coronavirus recovery will be inertia
Philip Stephens
FT April 9, 2020
The pandemic
and the radical change in wealth distribution to come
Merryn Somerset
Webb
FT April 9, 2020
The pandemic
will forever transform how we live
Simon Kuper
PS Apr 9, 2020
Pandemic Socialism
WILLEM H. BUITER
NYT April 9, 2020
The America We
Need
By The
Editorial Board
● メルケルは行動せよ
FT April 3, 2020
The eurozone’s
‘whatever it takes’ mantra has a problem
Adam Tooze
FP APRIL 3, 2020
A Most Lonely
Union
BY HENRY
FARRELL
FT April 5, 2020
The EU must be
forged in this crisis or it will die
Luigi Zingales
The Guardian, Mon 6 Apr 2020
The EU can
emerge stronger from the pandemic if Merkel seizes the moment
Timothy Garton
Ash
コロナウイルス危機からヨーロッパが回復するとき、何が起きているだろうか? それは3つの問いにどう答えるかによって決まる。
第1に、ハンガリーが独裁国家になっても、EU加盟国であり続けるのか?
第2に、ヨーロッパの連帯が、ユーロ圏で最も深刻な打撃を受けているイタリアの回復に何を示すのか?
第3に、ヨーロッパの中枢国家であり、ユーロ圏から最大の利益を受けている国として、ドイツは何をするのか?
スペインもコロナウイルスで最悪の被害を受けている。首相のPedro Sánchezは、ヨーロッパが「戦時経済体制」を築く必要を語り、ヨーロッパ内の新しいマーシャル・プランを呼びかけた。
ドイツの7人の指導的なエコノミストが、経済回復のための1兆ユーロを共同債として調達することを主張した。それはユーロ圏諸国政府が共同で保証する。しかし、「債務削減」や「巨額の財政黒字」という基本的問題には答えていない。
ドイツのトップ・タブロイド紙である『ビルドBild』が最近、イタリアに向けて「ドイツ人はあなたたちとともにある」という公開書簡を載せた。エスプレッソ、赤ワイン、ピザを称賛し、またすぐに会えるよ、と妙な連帯感を表明したのだ。
その数日前、記事は「ユーロはどうなる? 債務の相互保証が求められる危機だ」と書いた。しかし、ビルドの読者が考えるべきは、イタリアが必要とするのは、ドイツ人が休暇に遊びにきて、おいしいエスプレッソを飲むことではない。ドイツ人が大きな利益を得ている経済通貨同盟によって巨大な債務を負うようになったイタリアに、債務を共同保証して、経済の回復を助けることだ。
メルケルはもはや政権を維持するべきではない。大連立も望ましくない。昨年、私はそう主張した。
しかし、今はそういう問題ではない。超強力な嵐の中にある。メルケルは、EUを強化する、かつてない、最後のチャンスを得たのだ。ビスマルクは、政治家の使命を、歴史を動かす神の足音を聞き分けて、そのコートの裾をつかむために飛躍することだ、と述べた。
今、そのコートをつかめ。
FT April 6, 2020
Coronavirus: Is
Europe losing Italy?
Miles Johnson
in Rome, Sam Fleming in Brussels and Guy Chazan in Berlin
FT April 7, 2020
Ana Botin: the EU’s
shared purpose requires shared financing
Ana Botin
NYT April 8, 2020
Europe Poised
to Repeat Austerity Mistakes in Coronavirus Response
By The Editorial
Board
● 危機後の経済・社会
PS Apr 3, 2020
How COVID-19 Is
Transforming Manufacturing
DALIA MARIN
FT April 5, 2020
Taking care of
our family business is the priority now
Pilita Clark
FT April 6, 2020
The US must act
to protect its most vulnerable workers
Megan Greene
FT April 7, 2020
Healthcare,
like banking, needs buffers to survive a shock
John Flint
FT April 8, 2020
Supply chains
need some love during the coronavirus pandemic
Brooke Masters
FP APRIL 9, 2020
The Normal
Economy Is Never Coming Back
BY ADAM TOOZE
● トリレンマ
PS Apr 3, 2020
Can Liberal
Democracy Survive COVID-19?
ANA PALACIO
PS Apr 6, 2020
Navigating the
Pandemic Trilemma
HAROLD JAMES
The Lancet にMatthew M. Kavanagh(Georgetown University)は、パンデミックのトリレンマを唱えた。医学的に健康な社会、健全な経済、健全な民主主義、これら3つは同時に成立しない。
ロックダウンの長期化は大恐慌を超える不況と大量失業に至る。
デジタル通信技術により、社会監視能力を格段に高める。
VOX 07 April 2020
Letter to
governments of the G20 nations
Erik Berglöf,
Gordon Brown, Jeremy Farrar
● 中国の指導力
PS Apr 3, 2020
Is This China’s
Global Leadership Moment?
KEYU JIN
FP APRIL 3, 2020
The Ugly End of
Chimerica
BY ORVILLE SCHELL
PS Apr 6, 2020
At War With a
Virus
RICHARD N.
HAASS
FP APRIL 6, 2020
Could the Pandemic
Ease U.S.-China Tensions?
BY WENDY
CUTLER, DANIEL RUSSEL
PS Apr 7, 2020
COVID-19 Will
Not Reduce Global Reliance on China
ZHANG JUN
● ボリス・ジョンソンの跳躍
FP APRIL 3, 2020
Britain’s
Post-Brexit Identity Crisis
BY JAMES CRABTREE
ボリス・ジョンソンは、UKがEUを離脱した1月31日に、彼が創りたい国についてグリニッジで演説した。
彼は、EU離脱が自由化と体制転換の瞬間である、と示した。大陸の足かせに長く苦しんだ島が、スーパーマンのように飛び立つ。ジョンソンは解釈する。クラーク・ケントが冒険に飛び立つ用意はできた。電話ボックスに飛び込んで、超能力を帯びたチャンピオンだ。自由貿易の利益を求め、自国の道を突き進むぞ。
2016年のブレグジット投票は、EU離脱を決めただけでなく、貧しい地方のコミュニティーより、繁栄する都市を優先するグローバリゼーションのモデルを拒む投票だった。コロナウイルスが分断や封鎖を求める前から、ジョンソンは世界で最もラディカルな脱グローバリゼーションの実験を指導していた。
ブレグジットの支持論はグローバリゼーションに関する多くの誤解からなっていた。多くは意図的に。今やイギリスとヨーロッパの関係は再編される。ジョンソンは、対立する未来像をバランスしている。自由貿易と規制のない「テムズ河畔のシンガポール」と、不平等を減らす国家介入主義の約束だ。それはブレグジットの究極の矛盾によって困難さを増す。すなわち、EUから離脱することが、その背景となった分断を悪化させる。
国民投票は明らかに不満の表明であったが、同時に、明確なロジックを含んでいた。残留を選んだものはEUによって利益を得ているものだ、と離脱派のゴーブは言った。
マーストリヒト条約が成立したとき、イギリスの1人当たりGDPはフランスより5分の1近く低かった。25年経って、イギリスは上に立つ。しかし、イギリスの成長はひどく不均等であった。ロンドンと他の大都市は好調だった。しかし、旧工業地帯や沿岸部はそうではない。こうした「取り残された人びと」の票でボリス・ジョンソンは政権を得た。
ブレグジットは、イギリスの成長モデルが破綻したことを示した。グローバリゼーションは、一般に言われるような、すべての国が同じルールに従う、統一した過程ではない。諸産業は世界市場で協力力を示さねばならなかった。イギリスのばあい、サービス部門は世界で2番目の輸出国になった。ロンドンがヨーロッパと世界の金融センターであり、貿易関連や、広告や経営コンサルタント、情報通信サービスでも繁栄した。
製造業に関しても、グローバリゼーションの利益を生かして、ホンダ、日産など、自動車生産がヨーロッパ市場向けに発達し、航空機部品、製薬でも企業は成功した。
しかし、こうした成功にはコストがともなった。砂時計型の労働市場が形成されることだ。中産階級はやせ細った。ハイパーグローバリゼーションの利益を、サービスや高度製造業は享受したが、スキルのない低賃金労働者はかき回され、貧困層に滞留した。中程度の熟練を持つ機械工は、その間で消滅し、金融危機前の10分の1になった。
ジョンソンのブレグジットは、2つの矛盾する展望の間でジレンマに陥る。ハードなブレグジットは、彼の政治基盤を破壊する。1つは、「テムズ河畔のシンガポール」モデルだ。課税やルールを採点限にまで緩めて、高い競争力を目指す。しかし、それが失敗する3つの理由がある。
1)シンガポールを誤解している。税率は低いが、厳しい介入主義国家である。2)ヨーロッパの統一規制と衝突する。3)イギリス国民が、これ以上の規制緩和に反対する。
The Guardian, Sun 5 Apr 2020
Trust is
essential in these times. But Boris Johnson is not a man to be trusted
Will Hutton
The Guardian, Tue 7 Apr 2020
Boris Johnson's
illness is a message to us all about the true nature of coronavirus
Martin Kettle
The Guardian, Tue 7 Apr 2020
Lockdown has
laid bare Britain's class divide
Lynsey Hanley
NYT APRIL 7, 2020
Boris Johnson
vs. the Coronavirus
By Katy Balls
● 『資本とイデオロギー』
FP APRIL 3, 2020
The Tyranny of
Property
BY KEITH
JOHNSON
『資本とイデオロギー』において、ピケティは、前著でしなかったことを2つしている。不平等が続く理由と仕組みを説明する、その傾向を逆転するためのより根本的な解決策を示す。
不平等の存在は、偶然ではなく、デザインされたものだ。世界各地の、あらゆる時代に存在する、不平等レジーム(体制)である。不平等は、富を所有する者たち、特権者たちが、より多くの富と特権を得るように、政治的・経済的なゲームを決めることで生じる。
「不平等とは、経済的なものでも、技術的なものでもなく、イデオロギー的な、政治的なものである」と、ピケティは書いている。
なぜ不利な立場の人々は団結して、経済的正義を実現するための政治改革を推進しないのか? そのような改革は歴史上に何度も起きた。不公平な経済システムは不滅のものではない。スウェーデンのケースは興味深い。
ヨーロッパでもっとも不平等な(そして、最も未開の)国であったスウェーデンが、その対極の国に変身したのだ。19世紀、スウェーデンの選挙システムは階級に依拠するものだった。より多くの富の所有者、より多くの税金を支払う者は、より多くの投票ができた。つまり多くの村で、1人の地主の方が村民よりも大きな投票数を持った。19世紀に、最上位の1%が私的所有の60%を、10%の富裕層が約60%を支配していた。
しかし、1920年代に社会民主党が登場した後、およそ80年にわたり政権を握った。そしてすべてが変わった。
『資本とイデオロギー』で、ピケティは、所有権を一時的なものに変え、会社の労働者と所有者(株主)に、より平等な力を与え、国民全体に資本を付与し、医療保険とベーシック・インカムを保障する、というラディカルな改革を提唱する。
ピケティは、社会主義国の世界連邦制が、ナショナリズムの狭隘な国境を克服し、憲法を書き換え、協力して税金を増やす、と考える。「公正な社会は、参加型社会主義と社会連邦制の基礎の上に樹立される。」
過去においても、ラディカルな解決策は考えられないものとみなされたが、突如として、そうではなくなった。
● ドイツの成功
FT April 5, 2020
Germany’s testing
success looks real — for now
Wolfgang
Münchau
(後半へ続く)