IPEの果樹園2020

今週のReview

3/30-4/4

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コロナウイルスとアメリカの不況 ・・・パンデミック後の世界 ・・・パンデミックと経済保障 ・・・誰のための救済策か ・・・パンデミックと大国の能力 ・・・大量検査が必要だ ・・・パンデミックと経済・哲学の変化 ・・・パンデミックと発展途上国

長いReview

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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 コロナウイルスとアメリカの不況

NYT March 26, 2020

Why Is America Choosing Mass Unemployment?

By The Editorial Board

木曜日のニュースは、先週、アメリカの失業者が300万人も増えたことを伝えた。アメリカ近代史において初めてだ。

政治家たちは、この大量失業を、コロナウイルス危機の不幸な、避けられない兆候とみなす。しかし、雇用者の激減は不可避ではなかった。それは何百万ものアメリカ人の生活を損なった、公共政策の失敗による災害だった。アメリカの経済と社会に、将来にわたる痕跡を残すだろう。

痛みはもっとも貧しい人々に集中する。彼らはコロナウイルス危機の前から、不平等な経済成長に10年も苦しんでいた。

連邦政府は失業を防ぐことができただろう。アジア諸国が実施したように、検査システムと、目標を絞った隔離政策により、コロナウイルスを制御できる。また多くのヨーロッパ諸国は、ウイルスの拡散を抑制できなかったが、その後、経済を大規模にロックダウンしながら、雇用を守ることにした。デンマークは雇用者が支払う賃金の90%を補償する。オランダでも、売り上げの少なくとも20%が落ち込んだ企業は、同様に80%の補償を申請できる。ドイツでは、パートタイム労働者の仕事も維持できる。いずれの計画でも、労働者たちを職場にとどめることが目的だ。

職があることは単に賃金を得ることではない。独立心、アイデンティティー、生きる目的が関係ある。賃金を補償するだけでは十分でない。

アメリカの企業は長い間、不況期に労働者たちの自由を削減するために闘ってきた。エコノミストたちは、資源配分の改善、弱い企業をつぶして強い企業が拡大する、と考えてそれに同調した。それは疑わしい。たとえ利益があるとしても、それを得るのは株主だ。ヨーロッパのモデルは、もっと労働者に有利であり、その所得をアメリカよりも早く増大させた。

経済の縮小は、住宅バブルでも、ウォール街の投機でもなく、ウイルスによって起きた。企業と労働者の関係を維持することが、ウイルスの解決後に急速な回復をもたらす。

アメリカはもっと雇用を、特に中小企業を維持するべきだ。


 パンデミック後の世界

FP MARCH 20, 2020

How the World Will Look After the Coronavirus Pandemic

BY JOHN ALLEN, NICHOLAS BURNS, LAURIE GARRETT, RICHARD N. HAASS, G. JOHN IKENBERRY, KISHORE MAHBUBANI, SHIVSHANKAR MENON, ROBIN NIBLETT, JOSEPH S. NYE JR., SHANNON K. O'NEIL, KORI SCHAKE, STEPHEN M. WALT

ベルリンの壁崩壊やリーマンブラザーズの倒産と同様に、コロナウイルス危機は世界を遮断する事件である。その影響の大きさはまだ想像するしかない。パンデミック後のグローバル秩序を、指導的な研究者に尋ねた。

Stephen M. Walt ・・・パンデミックは国家とナショナリズムを強化するだろう。すべてのタイプの国家が非常事態に対する手段を使用し、その手段を手放すことを強く嫌うだろう。

コロナウイルスは西側から東側へのパワーシフトをさらに促す。欧米よりも中国がパンデミックに強い体制であることを示すだろう。西側のブランドは劣化する。

世界政治の紛争をもたらす性格は変化しない。1918-19年のインフルエンザもグローバルな協力を実現しなかった。ハイパーグローバリゼーションは一層の後退を避けられない。

コロナウイルス危機後の世界は、より開放的でない、より成長の低い、より自由の少ない世界になる。パンデミックの恐怖、計画の不足、指導力の欠如は、人類をより問題の多い時代に向かわせる。

Kishore Mahbubani ・・・パンデミックはグローバル経済の基本的な方向を変えないだろう。むしろ、すでに始まった変化を加速する。すなわち、アメリカ中心のグローバリゼーションから、中国中心のグローバリゼーションに向かう。

アメリカ人はグローバリゼーションや国際貿易に対する信用を失った。アメリカ大統領がトランプであろうが、変わろうが、自由貿易協定は有毒だ。他方、中国は確信を維持している。それは歴史的な理由によるものだ。中国の指導者たちは、1842-1949年、「恥辱の世紀」を、自分たちの慢心や世界から中国を切り離そうとした無駄な努力の結果と考えている。それに対して、この数十年の経済的復活は、グローバルな関与によるものだ。国民も、中国文化の復活と、世界のどこでも競争できることに自信をもっている。

アメリカには2つの選択肢がある。1つは、グローバルな支配的地位を守ることに第1の優先順位を与える。それは、中国との政治的・経済的なゼロサム・ゲームになるだろう。もう1つは、アメリカ国民の福祉を改善することに第1の優先順位を置く姿勢だ。彼らの社会条件は悪化しつつあるが、中国と協力して改善できる。賢明な助言者は、協力を進める。しかし、アメリカの対中関係がこれほど悪化しているのを考慮すれば、賢明な助言は無視されるだろう。

G. John Ikenberry ・・・危機は西側のさまざまなグランド・ストラテジーの間で論争を刺激する。しかし、パンデミックが経済的損失と社会的な破壊を拡大することで、ナショナリズム、大国間の対立、戦略的な市場の分断が加速する。

しかし、1930年代、40年代のように、それに対抗する国際主義の動きが次第に現れるだろう。フランクリン・D・ルーズベルトなどの政治家は、戦前から戦中にかけて、国際主義をめざした。1930年代の世界経済は、現代社会が感染に弱いことを示した。

アメリカにとっての脅威は、他の大国ではなく、近代社会の2面性であった。FDRら、国際主義者の目標は、新しい保護措置と、相互依存を管理する能力を備えたオープンなシステムを再建することだった。アメリカは、国境の内側にとどまって繁栄できないと同時に、開放型の戦後秩序には多国間の協力を促すグローバルなインフラを築く必要があった。

それゆえ、アメリカと他の民主主義諸国は、脆弱性を意識する破局を経験する中で、同様の変化を遂げるだろう。すなわち、最初なナショナリズムであるが、長期的には、実践的な、保護を組み込んだ、国際主義に向かう。


 パンデミックと経済保障

NYT March 21, 2020

Forget the Trump Administration. America Will Save America.

By Anne-Marie Slaughter

ドイツのアンゲラ・メルケルが国民に向けて70%は感染すると真剣に語って、連帯を訴えているとき、Fox Newsは、ようやく、コロナウイルスがトランプ大統領への怒りを煽る民主党による捏造ではないと理解した。

他国の対策を観て、Slateは「アメリカの偽対策」というトップ記事を掲げた。アメリカ経済は弱く、その社会は結束を欠き、民主主義の中心が腐っている、と。コロナウイルス危機は、われわれの文化の深い亀裂と挫折を明確に示し、連邦政府の指導者たちの無能さを示した。

しかし同時に、われわれの最大の強さも示している。国家の指導者にその能力がないとき、他の指導者たちが立ち上がる。州知事や市長、企業の指導者、大学長たちがそうだ。ほかにもさまざまな非営利団体が行動を起こす。

ニューヨーク州Andrew Cuomo知事は、最初に、地区を封鎖する必要を理解した。市役所も最前線だ。最も影響を受けた人たちを助けねばならない。シアトルのJenny Durkan市長は、6000家族に食料と清掃サービスの支払に800ドルのクーポンを支給した。零細企業や非営利団体に対する立ち退き請求を停止させた。インディアナポリスでは、食料品店が数日で模様替えし、ドライブスルーに変わった。

Facebook, Google, Twitter, Cisco and Amazonはすべて遠隔の労働形態に変える政策を採った。オフィスの外で働くことができない場合も、契約労働者と同様に、その賃金を支払うと発表した。

大学は、新学期に学生たちが戻ってくると、コミュニティーで相互に感染を広める危険を認識した。そして授業をオンラインに移行した。専門家たちにその情報を市民に公開するよう求めた。たとえば、the Johns Hopkins UniversityCoronavirus Resource Centerは連邦機関CDCPより優れている。

これらは水平的な、開放型社会の特徴である。それはしばしば非効率的だが、トップダウンの閉鎖型社会より、革新的で、回復力に富むものだ。ただし、これは連邦政府の指導力不足を免罪するわけではない。

コロナウイルスとその経済・社会的な崩壊は、未来へのタイムマシーンである。数十年先に起きると話していたものが、数週間で起きるようになった。

多くの大学がすべての授業を1週間足らずでオンラインで行っている。教育のオンライン化は、低コストで、多くの者に参加できるメリットが顕著である。しかし、長年にわたり抵抗が強かった。実際に始まると、それはクラス授業よりも優れていると分かった。セメスターに縛る必要ない。大学間で、講義形式とオンラインとの最良ブレンドを模索する競争が始まった。

1.国中で多くの組織が再教育・再訓練に乗り出している。2.地方に特化する財・サービスとサプライ・チェーンに投資する。その方がサイバー・アタックや災害、パンデミックにも強い。33Dプリンターを組み合わせた製造業が始まる。4.ケアワーカーがもっと重視される。老人や幼児のためだけでなく、教育、助言、顧問が重要になる。優れたケアワーカーは、大企業の重役に、所得と社会的地位で対等になる。5.ユニバーサル・ベーシックインカムが実施される。それはすでに民間ベースで一定地域に行われている。


 誰のための救済策か

FT March 23, 2020

This time, small guys should get the bailouts

Rana Foroohar

前の経済危機では政府が銀行を救済した。今度は大企業を救済しようとしている。

今や大企業は2008年危機直前の金融機関のようになっている。債務、レバレッジ、金融工学による成長の幻。大企業は技術革新への再投資ではなく、最富裕層のために配当する「価値」をダウンサイジングで生み出した。

経済が崩壊しつつある今、問題は、だれが最初に救済されるべきなのか? である。

最近まで資金調達で株式を買い戻してきた民間航空会社? 多くの部品をアウトソーシングしているボーイング社のような製造業? 巨大な石油会社? クルーズ船、ホテル、病院、カジノ、レストラン?

2008年の金融システム崩壊から大恐慌を再現することは、銀行救済によって回避された。その後、これらの銀行は繁栄し、危機の前よりも豊かで、市場の集中を進めている。他方、多数のアメリカ人が返済できずに住宅を失った。こうした住宅の多くを、プライベート・エクイティが彼らから安値で買収し、今ではBlackstoneが最大の所有者になっている。

この10年間、減税や低金利で株価は上昇してきたが、多くの国民にとって、インフレ調整後の実質収入は1974年に等しい。彼らの怒りは主要政党に向かい、ドナルド・トランプやバーニー・サンダースへの支持につながった。

もし資本主義やリベラルな民主主義がコロナウイルス危機を生き延びることを願うなら、2008年の救済における失敗を繰り返してはならない。すなわち、「損失の社会化、利益の民営化」というアプローチだ。

最初に救済すべきは、市民や消費者である。

私の子どもたちはニューヨークの公立学校に通っている。学校が封鎖されてから再開できない1つの理由は、生徒たちの4分の3が貧困戦かそれ以下の暮らしだからだ。10人に1人はホームレス。子どもたちの多くは学校の無料朝食やランチで栄養を取っている。

個人に対する現金支給を直ちに始めるべきだ。理想的には資産テストが必要だろう。しかし、時間がない。小切手をもらう必要がない人は、それが必要な人に与えるよう勧めたい。たとえば、私の家に来ている掃除婦は、(外出禁止令で)家から出ることができない。

家賃、住宅債務の支払、学生ローンの返済、ウイルスに関する医療費のすべてを政府が引き受け、免除してほしい。債務免除は、その後の経済を害するものではない、と金融危機の専門家Richard Vagueは言う。

もし企業を救済するなら、中小・零細企業から始めるべきだ。このままでは3カ月もたない、と彼らの半数以上が調査に応えている。彼らの債務を増やす融資ではなく、給付を行うべきだ。その意味で、議会のウイルス支援法案は恥を知るべきだ。労働者に疾病手当を与える大企業を支援して、中小企業支援ではない。

大企業が政府から支援を受けるなら、労働者保護を求めるべきだ。政府は企業の優先株を得ることが望ましい。12年前の銀行救済と違って、損失だけでなく、その利益を社会化する。

The Guardian, Thu 26 Mar 2020

Universal basic income is the best way to help the self-employed

Owen Jones

「私は毎日泣いている、眠れない。」 Mish Kimaniはそう言った。彼女はウスターシャーのKidderminsterで仕立て屋を営む。1年以上続けているが、2週間前に、お客は消えた。毎月、800ポンドの経費が掛かる。収入はゼロで貯蓄もない。糖尿病でも苦しんでいるが、コロナウイルスが加わった。政府に見捨てられた、と感じている。

福祉国家はつねに亀裂を生じてきたが、10年間の財政緊縮策で一気に広がった。

ユニバーサル・ベーシックインカムが望ましい。ユニバーサル・ベーシックインカムが・クレジットを支持する政府はそれを拒んでいる。


 パンデミックと大国の能力

FP MARCH 23, 2020

The Death of American Competence

BY STEPHEN M. WALT

シンガポールでさえ、そのウイルス対策は金本位制といえるものだが、数百の感染者を出している。にもかかわらずアメリカのドナルド・トランプ大統領の政権は出遅れた。でたらめな、調子の外れた対策を採った。それはアメリカに数兆ドルの負担と、避けることができた多数の死者を出すだろう。

そしてコロナウイルスCOVID-19が襲来した。トランプの危機管理は、警告や予測があったにもかかわらず、最初からひどい失敗であった。彼の長い経歴が示すように、指導者ではなくショー・マンである。金を使って人々をだまし、複雑なビジネスを管理するより、責任を回避するのがうまい。

問題は、アメリカの歴史や文化に由来する部分もあるだろう。規準が緩和され、人びとの責任が問われない傾向が強くなった。アメリカ企業のCEOたちは企業経営をゆがめ、ゴールデンパラシュートで莫大な富により私腹を肥やして逃げた。

ロナルド・レーガンが大統領になるときまでに、アメリカ人は政府を「敵」とみなし、「強欲を善」とみなすように言われてきた。市場が全てである。公職は軽蔑され、税金を吸い上げるだけの悪人たちだ、と。多くの公的機関が空洞化した。こうした傾向の神格化が、ドナルド・トランプである。指導者に、これほどナルシストの、失策と詐欺の長い経歴を持つ、顕著に資格を欠いた、自慢するだけの男を選ぶアメリカという国を、だれも真剣に扱わないのは当然だ。

この傾向は逆転できるのか? 文化を法律によって変えることはできない。アメリカ人は政治システムを真剣に再考し、改革すべきだろう。何カ月も、何十億ドルもかけて、2020年の大統領選挙は、3人の白人高齢男性から1人を選ぶ。これはシステムに深刻な欠陥があることを示すものだ。4年の任期を与えるために1年かけて決めるのも、時代錯誤の代表人制度も。有権者の力を奪う点で許すことのできない失敗だ。

政治改革はアメリカ人にかかっている。


 大量検査が必要だ

FP MARCH 23, 2020

Without Mass Testing, the Coronavirus Pandemic Will Keep Spreading

BY DEVI SRIDHAR

パンデミック封じ込めに対して、初期の大量検査が重要である5つの理由を知るべきだ。

1)感染者であることがわかれば、人びとは行動を抑制するようになる。2)感染の連鎖を切るために、その広がりを正確に知ることが必要だ。3)医療機器とスタッフを必要な地域に集中することができる。4)特定のホットスポットが生まれることがわかっており、これらを制圧することが必要だ。5)症状によって感染を知るのでは遅い。検査によって感染の拡大を抑えることが重要だ。


 パンデミックと経済・哲学の変化

The Guardian, Tue 24 Mar 2020

The last global crisis didn't change the world. But this one could

William Davies

深刻な世界不況は避けられないだろう。政府や中央銀行が介入しても、人びとが家を出なくなれば、貨幣の流れは止まる。

われわれの経済危機のイメージは1970年代に形成された。それは戦後の為替レート・資本規制・賃金契約のシステムが崩壊したからだ。そして管理できないインフレの高進が起きた。それが、マーガレット・サッチャーとロナルド・レーガンの新保守主義が「救済」として現れ、減税・高金利・労働組合の解体、という新しい「治療」を受け入れさせた条件であった。

イデオロギーも変わった。危機は資本主義のケインズ主義的モデルに内包されていたからだ。生産性を超えて賃金が上昇し、利潤を食いつぶした。支配的なビジネス・スタイルも変わった。重工業から、消費の変化に機敏な対応を欠かさない弾力的生産システムになった。

産業の空間的配置も変わった。資本は、イングランド北部やアメリカ中西部のような、象徴的な旧工業地帯を廃棄した。国家の支援を得て、ロンドンやニューヨークのようなグローバルシティの金融ビジネス地区に集まった。

40年を経て、同様の変化が起きるかもしれない、と思った。しかし大きな社会的苦痛を生じながらも、2008年の世界金融危機は政策思想における転換を生み出さなかった。2020年はどうか?

コロナウイルスが広める危機の感覚は、1970年代というより、むしろ1945年にている。生死の問題によって政策の基準が変化した。それは資本主義の危機である。

1755年、リスボンのほとんどを破壊した地震と津波が起きた。死者は75000人に達した。経済も崩壊し、それが再建されたときは全く異なる方針が支配的になった。イギリスの輸出に頼らない、活気ある経済を取り戻した。

自身は哲学にも重大な影響を及ぼした。ボルテールやカントがそうだ。カントはその後期の作品に書いた。もし神が人類に対する何らかの計画をお持ちなら、それはわれわれが世俗的な理由により(すなわち、市場・経済活動によって築く)「世界市民社会」を通じて、個人的にも集団的にも自律性を得る、というものだろう、と。

2020年の危機を、われわれはどう理解するのか。


 パンデミックと発展途上国

PS Mar 24, 2020

Flattening the COVID-19 Curve in Developing Countries

RICARDO HAUSMANN

歳入不足や対外不均衡の経済危機に対する正統的な処方箋は、緊縮財政と通貨の切り下げ、調整コストを緩和する国際融資である。これではウイルスと戦うための財源がない。こうした処方箋を多くの国が同時に採用すれば、その効果はデフレの拡大になる。

このギャップを埋めるために、国際機関やG7G20は行動するべきだ。特に、発展途上諸国から先進諸国の金融市場に流出する資本を還流させるべきだ。

1)アメリカ連銀はスワップ網を発展途上諸国に拡大する。2)主要諸国の中央銀行は量的緩和で債券を購入するとき、発展途上諸国の優良な債券を含める。3)ドル化もしくはユーロ化している経済では最後の貸し手がない。これらの諸国に銀行システムを守る特別融資を設定する。4)先進諸国は医療品や検査の資材を輸出禁止にしない。

コロナウイルス危機はグローバルな問題であり、その解決策もグローバルである。

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The Economist March 14th 2020

The politics of pandemics

Latin America: How to reform Chile

Chaguan: When nationalism bites back

Climate change: Green Texas

Chile: A model country in need of remodeling

Russia: The prisoner in the Kremlin

Charlemagne: Pour decourager les autres

Bagehot: The meaning of conservatism

(コメント) パンデミックで優秀なモデルは、シンガポールや台湾、韓国が示した。日本は、検査を遅らせているケースで、判断できる対象に挙げられていない。

チリは、軍事独裁体制を抜け出し、民主化しただけでなく、社会民主主義政権が貧困を減らした成功モデルだと思っていました。首都をデモが長期におよんで破壊する、というのは、理由を知りたいことでした。記事は、いくつかの視点を挙げていますが。

飛び切り面白いと思ったのは、テキサスと、イギリスの保守主義再考です。

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IPEの想像力 3/30/20

欧米や日本では、民主主義に対する悲観論、軽侮する感覚が広まっているように思います。しかし、アフリカの人々はそうではない。

The Economistの記事 ( Democracy in Africa: Generation game ) に、「もし議会がゲットーに来ないなら、ゲットーが議会に行くだろう」と語ったボビー・ワインBobi Wineが登場します。(拙著『ブレグジット×トランプの時代』萌書房、第5章) 来年、ウガンダの大統領選挙!!に立候補するらしい。

アフリカは、急速に都市化しつつあり、若者が多く集まって、十分な雇用が得られないまま、新しい文化や情報に刺激されている。政府の懐柔策や弾圧に対しても、若者たちは容易に屈服せず、革新的な政治家に呼応して急速に鍛えられていくのです。そして彼らは民主主義を求める。

アフリカの民主主義は、もちろん、多くの独裁者や異常な行動を生んできました。ヨーロッパの植民地支配から独立した国との、貿易や投資にとって、民主的制度はどうでもよかった。1970年代末でも、サハラ砂漠以南のアフリカで複数政党の民主主義があったのは、わずか3か国に過ぎなかった、という。3分の2は軍事体制で、40件のクーデタがあった。

アフリカは2000もの異なる言語、6000から10000の政治集団があり、それらを無視してヨーロッパの帝国が引いた国境線で国家が残されている。植民地支配は強制であり、部族の支配者との共謀であった。支配をねつ造し、弱い支配者は乗っ取られ、強い者が弾圧や後援によって支配を築いた。ボカサ、アミン、セセ・セコ、アバチャ、エンクルマ、モイ、バンダ。それは醜悪な独裁者の標本箱である。

冷戦の時代が終わっても、中国は新しいビッグ・ブラザー(監視国家)のハイテク技術を提供している。他方で、アメリカのトランプ政権は「民主主義」に全く関心を示さない。アフリカには地域協力の制度も欠如しており、開発や民主化のモデルを促す共通の場がない。

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吉川英治の『黒田如水』にある、一節を読んで、しばらく楽しみました。

「なかんずく、官兵衛をして「この人こそ」と信頼させたものは、城下の庶民の声である。・・・小谷の藤吉郎どのといえば、衆口一致して、

(あれは偉いそうだ・・・)という。

試みに、官兵衛自身が、何でそう彼が庶民に支持されているかを考えてみると、ほかの武将猛将とちがって、藤吉郎秀吉には、さしたる武勇の聞こえはなかった。けれど、奉行を勤めても、築城に当たっても、領政を任じられても、秀吉の職につく所、大きな成績の上がっていない場合はなかった。そして彼に使役された人間が町へもどると、口をそろえてみな彼の偉さを吹聴し、彼の姿を見るところでは、どこの占領治下の地でも、みな彼を自分たちの家長のように親しんでいる。」

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アフリカの人びとは民主主義を求めている。政治的な無気力は見られない。むしろアメリカ人が、今、権威主義体制や「強い指導者」に魅力を感じているようだ。

コロナウイルスの蔓延が、アフリカの可能性を閉ざすことはないと思う。将来、必ず、持続可能な文明圏が生まれると思う。

アフリカは広く、若い。しかし、アフリカは貧しく、栄養や治安も悪い。医療サービスはシステムを欠き、非常に悪いだろう。50年、あるいは、200年。その混乱期は、豊かな国の支援によって大きく短縮されるのではないか。その民主主義の可能性も失われない。

しかし、その間、西側に偏ってきた人類にとって、民主主義の可能性を失う時代が続くかもしれない。

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アフリカは「人口の配当」を得ていない。若者の労働力は豊富に存在するが、十分な雇用機会がないからだ。政治統合と平和、インフラ投資が、アフリカを新しい市場にすると期待されている。人口増加と技術移転があれば、積極的な雇用を生む投資が好循環をスタートさせるだろう。

20195月、マラウイの79歳のMutharika大統領が再選されたときも、その勝利をめぐって抗議デモが起きた。今年の2月、ついに憲法裁判所は選挙のやり直しを命じた。アフリカにおいて2度目のことである。

23歳の失業者であるMalizaは語る。「私は政府が交代してくれることを願う。その変化で、私は小さな商売を始められると思うから。今の政府の下で、そうした機会は非常に限られているから。」

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