IPEの果樹園2020

今週のReview

3/30-4/4

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コロナウイルスとアメリカの不況 ・・・パンデミック後の世界 ・・・パンデミックと中央銀行 ・・・パンデミックと経済保障 ・・・誰のための救済策か ・・・パンデミックと大国の能力 ・・・日本企業のアキレス腱 ・・・大量検査が必要だ ・・・パンデミックと経済・哲学の変化 ・・・パンデミックと発展途上国

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 コロナウイルスとアメリカの不況

NYT March 20, 2020

How to Avoid Complete Economic Destruction

By The Editorial Board

VOX 22 March 2020

The supply side matters: Guns versus butter, COVID-style

Richard Baldwin

NYT March 22, 2020

A Plan to Get America Back to Work

By Thomas L. Friedman

NYT March 22, 2020

This Stimulus Bill Will Not Save the Economy From Collapse

By Robert Kuttner

1929年に株価が暴落したとき、ダウは9月のピーク381.17から19327月の最安値41.22まで下落した。アメリカ人の少数しか株を保有していなかったで、経済全体に影響するまで、3年という時間がかかった。失業は最初、緩やかに増加し、1933年前半に最高の25%に達した。GDPも徐々に減少し、30%が失われた。

コロナウイルス危機による不況は、それより早く、深いものになるだろう。1929年の株価暴落が10年におよぶ不況になったのは、その広範な影響に対抗するだけの政府の行動が、遅すぎたし、臆病過ぎたからだ。われわれはパンデミックに対して同じ過ちを犯すべきではない。

ルーズベルト政権が十分な支出を行ったのは、第2次世界大戦が始まったからだった。

NYT March 23, 2020

Will Our Economy Die From Coronavirus?

By Paul Romer and Alan M. Garber

NYT March 26, 2020

Why Is America Choosing Mass Unemployment?

By The Editorial Board

木曜日のニュースは、先週、アメリカの失業者が300万人も増えたことを伝えた。アメリカ近代史において初めてだ。

政治家たちは、この大量失業を、コロナウイルス危機の不幸な、避けられない兆候とみなす。しかし、雇用者の激減は不可避ではなかった。それは何百万ものアメリカ人の生活を損なった、公共政策の失敗による災害だった。アメリカの経済と社会に、将来にわたる痕跡を残すだろう。

痛みはもっとも貧しい人々に集中する。彼らはコロナウイルス危機の前から、不平等な経済成長に10年も苦しんでいた。

連邦政府は失業を防ぐことができただろう。アジア諸国が実施したように、検査システムと、目標を絞った隔離政策により、コロナウイルスを制御できる。また多くのヨーロッパ諸国は、ウイルスの拡散を抑制できなかったが、その後、経済を大規模にロックダウンしながら、雇用を守ることにした。デンマークは雇用者が支払う賃金の90%を補償する。オランダでも、売り上げの少なくとも20%が落ち込んだ企業は、同様に80%の補償を申請できる。ドイツでは、パートタイム労働者の仕事も維持できる。いずれの計画でも、労働者たちを職場にとどめることが目的だ。

職があることは単に賃金を得ることではない。独立心、アイデンティティー、生きる目的が関係ある。賃金を補償するだけでは十分でない。

アメリカの企業は長い間、不況期に労働者たちの自由を削減するために闘ってきた。エコノミストたちは、資源配分の改善、弱い企業をつぶして強い企業が拡大する、と考えてそれに同調した。それは疑わしい。たとえ利益があるとしても、それを得るのは株主だ。ヨーロッパのモデルは、もっと労働者に有利であり、その所得をアメリカよりも早く増大させた。

経済の縮小は、住宅バブルでも、ウォール街の投機でもなく、ウイルスによって起きた。企業と労働者の関係を維持することが、ウイルスの解決後に急速な回復をもたらす。

アメリカはもっと雇用を、特に中小企業を維持するべきだ。

NYT March 26, 2020

On Coronavirus, We’re #1

By Paul Krugman


 アメリカ大統領選挙

FP MARCH 20, 2020

How Will the Coronavirus Pandemic Reshape the U.S. Election?

BY EMMA ASHFORD, MATTHEW KROENIG

NYT March 21, 2020

It’s Time to Protect the 2020 Election, Too

By The Editorial Board

FT March 25, 2020

Donald Trump’s mysterious resilience — and his coronavirus risk

Janan Ganesh

NYT March 26, 2020

An Open Letter to President Trump

By Thomas L. Friedman


 パンデミック後の世界

FP MARCH 20, 2020

How the World Will Look After the Coronavirus Pandemic

BY JOHN ALLEN, NICHOLAS BURNS, LAURIE GARRETT, RICHARD N. HAASS, G. JOHN IKENBERRY, KISHORE MAHBUBANI, SHIVSHANKAR MENON, ROBIN NIBLETT, JOSEPH S. NYE JR., SHANNON K. O'NEIL, KORI SCHAKE, STEPHEN M. WALT

ベルリンの壁崩壊やリーマンブラザーズの倒産と同様に、コロナウイルス危機は世界を遮断する事件である。その影響の大きさはまだ想像するしかない。パンデミック後のグローバル秩序を、指導的な研究者に尋ねた。

Stephen M. Walt ・・・パンデミックは国家とナショナリズムを強化するだろう。すべてのタイプの国家が非常事態に対する手段を使用し、その手段を手放すことを強く嫌うだろう。

コロナウイルスは西側から東側へのパワーシフトをさらに促す。欧米よりも中国がパンデミックに強い体制であることを示すだろう。西側のブランドは劣化する。

世界政治の紛争をもたらす性格は変化しない。1918-19年のインフルエンザもグローバルな協力を実現しなかった。ハイパーグローバリゼーションは一層の後退を避けられない。

コロナウイルス危機後の世界は、より開放的でない、より成長の低い、より自由の少ない世界になる。パンデミックの恐怖、計画の不足、指導力の欠如は、人類をより問題の多い時代に向かわせる。

Kishore Mahbubani ・・・パンデミックはグローバル経済の基本的な方向を変えないだろう。むしろ、すでに始まった変化を加速する。すなわち、アメリカ中心のグローバリゼーションから、中国中心のグローバリゼーションに向かう。

アメリカ人はグローバリゼーションや国際貿易に対する信用を失った。アメリカ大統領がトランプであろうが、変わろうが、自由貿易協定は有毒だ。他方、中国は確信を維持している。それは歴史的な理由によるものだ。中国の指導者たちは、1842-1949年、「恥辱の世紀」を、自分たちの慢心や世界から中国を切り離そうとした無駄な努力の結果と考えている。それに対して、この数十年の経済的復活は、グローバルな関与によるものだ。国民も、中国文化の復活と、世界のどこでも競争できることに自信をもっている。

アメリカには2つの選択肢がある。1つは、グローバルな支配的地位を守ることに第1の優先順位を与える。それは、中国との政治的・経済的なゼロサム・ゲームになるだろう。もう1つは、アメリカ国民の福祉を改善することに第1の優先順位を置く姿勢だ。彼らの社会条件は悪化しつつあるが、中国と協力して改善できる。賢明な助言者は、協力を進める。しかし、アメリカの対中関係がこれほど悪化しているのを考慮すれば、賢明な助言は無視されるだろう。

G. John Ikenberry ・・・危機は西側のさまざまなグランド・ストラテジーの間で論争を刺激する。しかし、パンデミックが経済的損失と社会的な破壊を拡大することで、ナショナリズム、大国間の対立、戦略的な市場の分断が加速する。

しかし、1930年代、40年代のように、それに対抗する国際主義の動きが次第に現れるだろう。フランクリン・D・ルーズベルトなどの政治家は、戦前から戦中にかけて、国際主義をめざした。1930年代の世界経済は、現代社会が感染に弱いことを示した。

アメリカにとっての脅威は、他の大国ではなく、近代社会の2面性であった。FDRら、国際主義者の目標は、新しい保護措置と、相互依存を管理する能力を備えたオープンなシステムを再建することだった。アメリカは、国境の内側にとどまって繁栄できないと同時に、開放型の戦後秩序には多国間の協力を促すグローバルなインフラを築く必要があった。

それゆえ、アメリカと他の民主主義諸国は、脆弱性を意識する破局を経験する中で、同様の変化を遂げるだろう。すなわち、最初なナショナリズムであるが、長期的には、実践的な、保護を組み込んだ、国際主義に向かう。

Laurie Garrett ・・・パンデミックを経て、グローバル・サプライチェーンは組み替えられるだろう。

The Guardian, Sun 22 Mar 2020

Coronavirus exposes society’s fragility. Let’s find solutions that endure once it’s over

Kenan Malik

FT March 23, 2020

Nationalism is a side effect of coronavirus

Gideon Rachman

NYT March 24, 2020

Finding the ‘Common Good’ in a Pandemic

By Thomas L. Friedman

NYT March 24, 2020

7 Medical Leaders to Politicians: Save Lives, Not Wall Street

By J. Larry Jameson

NYT March 24, 2020

Economic Stimulus Is the Wrong Prescription

By Edward P. Lazear

不況を予想して景気刺激策を取るのは間違いだ。連銀は、事業の継続が困難な分野へ、流動性を供給するべきだ。政府は、コロナウイルス危機が続く期間に事業を維持し、労働者への賃金が支払えるような支援を行うべきだ。

FP MARCH 24, 2020

Is $2 Trillion Too Little, Too Late?

BY MICHAEL HIRSH

FP MARCH 26, 2020

The Coronavirus War Economy Will Change the World

BY NICHOLAS MULDER


 パンデミックと中央銀行

VOX 21 March 2020

A proposal for a Covid Credit Line

Agnès Bénassy-Quéré, Arnoud Boot, Antonio Fatás, Marcel Fratzscher, Clemens Fuest, Francesco Giavazzi, Ramon Marimon, Philippe Martin, Jean Pisani-Ferry, Lucrezia Reichlin, Dirk Schoenmaker, Pedro Teles, Beatrice Weder di Mauro

FT March 23, 2020

Coronavirus: can the ECB’s ‘bazooka’ avert a eurozone crisis?

Ben Hall in London, Martin Arnold in Frankfurt and Sam Fleming in Brussels

ドラギ前総裁の約束がもう役に立つとは限らない。各国のコロナウイルス危機対策には、財源が不足する。ECBの方針をめぐって、財政規律に関する強硬派と柔軟派が再び政治的な衝突と駆け引きによってユーロ圏の存続を脅かす。

FT March 24, 2020

The Federal Reserve has gone well past the point of ‘QE infinity’

Michael Mackenzie

FT March 24, 2020

Strong companies must be supported — but not unconditionally 

Peter Harrison

VOX 24 March 2020

Covid Perpetual Eurobonds: Jointly guaranteed and supported by the ECB

Francesco Giavazzi, Guido Tabellini

ECBPandemic Emergency Purchase Programme (PEPP)は貴重な時間を与えるものだ。しかし十分ではない。ユーロ圏が危機を再発しないように、新しい金融手段を見出すべきだ。

われわれはユーロ圏加盟諸国が50年もしくは100年満期の債券、さらには永久債(イギリスの金融市場で取引される「コンソルconsols」とよばれる、満期のない、一定の利子を払い続けるクーポン)を発行するべきだと提案する。

ECBは金利を抑えるためにこれを購入し、政府債券市場の不安が生じないようにする。それは十分な経済的合理性に基づく金融手段である。

● コロナウイルス危機の規模は戦争に匹敵する。その融資は数世代で分担するべきだ。

● 迅速な資金調達手段が必要だ。

● コロナウイルス危機のさなかにユーロ危機を再現するような悪夢を完全に排除するべきだ。

それゆえユーロ圏加盟諸国は、その徴税能力で集団的に補償された長期債券を発行する。各国ごとに発行するが、その債券には区別がない。共通の評価を受ける。

FT March 25, 2020

Central banks must evolve to help governments fight coronavirus

Philipp Hildebrand

FT March 26, 2020

We face a war against coronavirus and must mobilise accordingly

Mario Draghi

PS Mar 26, 2020

The Helicopters Are Coming

WILLEM H. BUITER


 パンデミックと経済保障

NYT March 21, 2020

Forget the Trump Administration. America Will Save America.

By Anne-Marie Slaughter

ドイツのアンゲラ・メルケルが国民に向けて70%は感染すると真剣に語って、連帯を訴えているとき、Fox Newsは、ようやく、コロナウイルスがトランプ大統領への怒りを煽る民主党による捏造ではないと理解した。

他国の対策を観て、Slateは「アメリカの偽対策」というトップ記事を掲げた。アメリカ経済は弱く、その社会は結束を欠き、民主主義の中心が腐っている、と。コロナウイルス危機は、われわれの文化の深い亀裂と挫折を明確に示し、連邦政府の指導者たちの無能さを示した。

しかし同時に、われわれの最大の強さも示している。国家の指導者にその能力がないとき、他の指導者たちが立ち上がる。州知事や市長、企業の指導者、大学長たちがそうだ。ほかにもさまざまな非営利団体が行動を起こす。

ニューヨーク州Andrew Cuomo知事は、最初に、地区を封鎖する必要を理解した。市役所も最前線だ。最も影響を受けた人たちを助けねばならない。シアトルのJenny Durkan市長は、6000家族に食料と清掃サービスの支払に800ドルのクーポンを支給した。零細企業や非営利団体に対する立ち退き請求を停止させた。インディアナポリスでは、食料品店が数日で模様替えし、ドライブスルーに変わった。

Facebook, Google, Twitter, Cisco and Amazonはすべて遠隔の労働形態に変える政策を採った。オフィスの外で働くことができない場合も、契約労働者と同様に、その賃金を支払うと発表した。

大学は、新学期に学生たちが戻ってくると、コミュニティーで相互に感染を広める危険を認識した。そして授業をオンラインに移行した。専門家たちにその情報を市民に公開するよう求めた。たとえば、the Johns Hopkins UniversityCoronavirus Resource Centerは連邦機関CDCPより優れている。

これらは水平的な、開放型社会の特徴である。それはしばしば非効率的だが、トップダウンの閉鎖型社会より、革新的で、回復力に富むものだ。ただし、これは連邦政府の指導力不足を免罪するわけではない。

コロナウイルスとその経済・社会的な崩壊は、未来へのタイムマシーンである。数十年先に起きると話していたものが、数週間で起きるようになった。

多くの大学がすべての授業を1週間足らずでオンラインで行っている。教育のオンライン化は、低コストで、多くの者に参加できるメリットが顕著である。しかし、長年にわたり抵抗が強かった。実際に始まると、それはクラス授業よりも優れていると分かった。セメスターに縛る必要ない。大学間で、講義形式とオンラインとの最良ブレンドを模索する競争が始まった。

議論はされても実現しなかった、飛行機の利用や自動車からの温暖化ガスを減らすことが、一気に実現しだ。われわれは自宅にいて交流できる。物理的に移動せず、世界中とヴァーチャルに話し合う。それは航空産業に大打撃であるが、地球にとって好ましく、われわれにも好ましことだろう。

空いたオフィスビルはどうなるのか? アマーチに改造して住宅問題の解決に役立てるべきだろう。未来の職場も開かれる。知識労働者たちが、レストランや工場から雇用を消滅させながら、今やログインして協力する。それは非常に大きな苦痛を伴うが、変化に向かう大きな機会でもある。

1.国中で多くの組織が再教育・再訓練に乗り出している。2.地方に特化する財・サービスとサプライ・チェーンに投資する。その方がサイバー・アタックや災害、パンデミックにも強い。33Dプリンターを組み合わせた製造業が始まる。4.ケアワーカーがもっと重視される。老人や幼児のためだけでなく、教育、助言、顧問が重要になる。優れたケアワーカーは、大企業の重役に、所得と社会的地位で対等になる。5.ユニバーサル・ベーシックインカムが実施される。それはすでに民間ベースで一定地域に行われている。

こうしたすべての革新は、国民全体への高速ブロードバンド・アクセスを前提する。また、政府は、インターネット・プロバイダーを規制し、もっと市民に責任を負う、インターネットサービス公共事業に転換するべきだ。

われわれは、より優れたアメリカを作るために、コロナウイルス危機を利用できる。

NYT March 21, 2020

Coronavirus Gives Trump a Chance to Make Good on His Promises

By Christopher Buskirk

PS Mar 23, 2020

Insuring the Survival of Post-Pandemic Economies

ROMAN FRYDMAN, EDMUND S. PHELPS

FT March 26, 2020

The wrong kind of American exceptionalism

Edward Luce

PS Mar 26, 2020

America’s Ideological Infection

CHRISTOPHER R. HILL

PS Mar 26, 2020

The Trump Administration’s Epic COVID-19 Failure

J. BRADFORD DELONG


 ヨーロッパの刺激策

FT March 22, 2020

Europe needs a new scale of stimulus — and cash not credit

Wolfgang Münchau


 UKの対応

The Guardian, Sun 22 Mar 2020

The Observer view on the UK’s response to the coronavirus crisis

Observer editorial

FT March 21, 2020

Government loan guarantees are cheap and obvious virus fix

Steven Abrahams

FT March 24, 2020

Boris Johnson’s agenda is over — a new politics will emerge

Robert Shrimsley


 シリア内戦と難民

FT March 22, 2020

EU inaction on Syrian refugees is a stain on human conscience

Mevlut Cavusoglu

FT March 26, 2020

Middle East’s refugees are vulnerable to an explosion of coronavirus cases

David Gardner

何百万もの難民が、崩壊した医療システムしかない、軍閥や宗派の争う、一連の破綻国家に密閉されている。


 パンデミックと経済再生

PS Mar 23, 2020

A Simple Way to Help Keep the COVID-19 Economy Working

MARK ROE

PS Mar 24, 2020

A Green Reboot After the Pandemic

SANDRINE DIXSON-DECLÈVE, HUNTER LOVINS, HANS JOACHIM SCHELLNHUBER, KATE RAWORTH


 誰のための救済策か

FT March 23, 2020

This time, small guys should get the bailouts

Rana Foroohar

前の経済危機では政府が銀行を救済した。今度は大企業を救済しようとしている。

今や大企業は2008年危機直前の金融機関のようになっている。債務、レバレッジ、金融工学による成長の幻。大企業は技術革新への再投資ではなく、最富裕層のために配当する「価値」をダウンサイジングで生み出した。

経済が崩壊しつつある今、問題は、だれが最初に救済されるべきなのか? である。

最近まで資金調達で株式を買い戻してきた民間航空会社? 多くの部品をアウトソーシングしているボーイング社のような製造業? 巨大な石油会社? クルーズ船、ホテル、病院、カジノ、レストラン?

2008年の金融システム崩壊から大恐慌を再現することは、銀行救済によって回避された。その後、これらの銀行は繁栄し、危機の前よりも豊かで、市場の集中を進めている。他方、多数のアメリカ人が返済できずに住宅を失った。こうした住宅の多くを、プライベート・エクイティが彼らから安値で買収し、今ではBlackstoneが最大の所有者になっている。

この10年間、減税や低金利で株価は上昇してきたが、多くの国民にとって、インフレ調整後の実質収入は1974年に等しい。彼らの怒りは主要政党に向かい、ドナルド・トランプやバーニー・サンダースへの支持につながった。

もし資本主義やリベラルな民主主義がコロナウイルス危機を生き延びることを願うなら、2008年の救済における失敗を繰り返してはならない。すなわち、「損失の社会化、利益の民営化」というアプローチだ。

最初に救済すべきは、市民や消費者である。

私の子どもたちはニューヨークの公立学校に通っている。学校が封鎖されてから再開できない1つの理由は、生徒たちの4分の3が貧困戦かそれ以下の暮らしだからだ。10人に1人はホームレス。子どもたちの多くは学校の無料朝食やランチで栄養を取っている。

個人に対する現金支給を直ちに始めるべきだ。理想的には資産テストが必要だろう。しかし、時間がない。小切手をもらう必要がない人は、それが必要な人に与えるよう勧めたい。たとえば、私の家に来ている掃除婦は、(外出禁止令で)家から出ることができない。

家賃、住宅債務の支払、学生ローンの返済、ウイルスに関する医療費のすべてを政府が引き受け、免除してほしい。債務免除は、その後の経済を害するものではない、と金融危機の専門家Richard Vagueは言う。

もし企業を救済するなら、中小・零細企業から始めるべきだ。このままでは3カ月もたない、と彼らの半数以上が調査に応えている。彼らの債務を増やす融資ではなく、給付を行うべきだ。その意味で、議会のウイルス支援法案は恥を知るべきだ。労働者に疾病手当を与える大企業を支援して、中小企業支援ではない。

大企業が政府から支援を受けるなら、労働者保護を求めるべきだ。政府は企業の優先株を得ることが望ましい。12年前の銀行救済と違って、損失だけでなく、その利益を社会化する。

FT March 22, 2020

Force global banks to suspend bonuses and payouts

Sheila Bair

The Guardian, Thu 26 Mar 2020

Universal basic income is the best way to help the self-employed

Owen Jones

「私は毎日泣いている、眠れない。」 Mish Kimaniはそう言った。彼女はウスターシャーのKidderminsterで仕立て屋を営む。1年以上続けているが、2週間前に、お客は消えた。毎月、800ポンドの経費が掛かる。収入はゼロで貯蓄もない。糖尿病でも苦しんでいるが、コロナウイルスが加わった。政府に見捨てられた、と感じている。

福祉国家はつねに亀裂を生じてきたが、10年間の財政緊縮策で一気に広がった。

ユニバーサル・ベーシックインカムが望ましい。ユニバーサル・ベーシックインカムが・クレジットを支持する政府はそれを拒んでいる。

The Guardian, Thu 26 Mar 2020

The Guardian view on government bailouts: steadying unsteady jobs

Editorial

NYT March 26, 2020

Will the Coronavirus Make Restaurants Like Mine Extinct?

By Amanda Cohen


(後半へ続く)