(前半から続く)
● パンデミックと大国の能力
FP MARCH 23, 2020
The Death of
American Competence
BY STEPHEN M.
WALT
シンガポールでさえ、そのウイルス対策は金本位制といえるものだが、数百の感染者を出している。にもかかわらずアメリカのドナルド・トランプ大統領の政権は出遅れた。でたらめな、調子の外れた対策を採った。それはアメリカに数兆ドルの負担と、避けることができた多数の死者を出すだろう。
100年以上にわたり、アメリカが世界に対して大規模な影響力を駆使したのは、3つの柱があったからだ。第1に、経済と軍事とが結びついた強さだ。世界最大の、高度に発達した経済を持ち、最高水準の大学と研究所、豊富な資源を持った。
第2の柱は、同盟諸国からの支持だ。彼らはアメリカを支持することが自国の利益になることを知っていた。アメリカは常に自己利益を理由に行動したが、他国も同様の利益を持っていることが説得を容易にした。
第3の柱は、アメリカの能力(力量・技量)に対する信頼だ。彼らはアメリカの強さとその目標を知っており、アメリカ政府は彼らの服従を確信していたから、アメリカの指導力を期待できた。もし他国がアメリカのパワー、知恵、実効力を疑うなら、アメリカのグローバルな影響力は当然減少するだろう。
ベトナムにおける大失策でさえ、アメリカの能力に関する信仰を完全に終わらせることはなかった。実際、冷戦終結、湾岸戦争の電撃的な勝利はベトナムの悪夢を払しょくした。アメリカのリベラルな民主主義と資本主義の組み合わせは、他国が見習うべきモデルのように思われた。それに加えて革新的な技術の波はアメリカから次々に世界へ波及した。
しかし、この25年間は、アメリカが、責任ある指導力と能力にとって欠かせない重要な評価を、注目すべき速さで破壊してきた。ビル・クリントンの醜聞、9・11に関する警告のG・W・ブッシュによる見落とし、エンロンやマドフ、ハリケーン・カトリーナ(2005年)とマリア(2017年)、アフガニスタンとイラクの戦争、リビア、イエメン、シリアなどへの軍事介入、ウォール街の金融崩壊、ボーイングの新型機開発ミス、共和党が支配するワシントン。
そしてコロナウイルスCOVID-19が襲来した。トランプの危機管理は、警告や予測があったにもかかわらず、最初からひどい失敗であった。彼の長い経歴が示すように、指導者ではなくショー・マンである。金を使って人々をだまし、複雑なビジネスを管理するより、責任を回避するのがうまい。
問題は、アメリカの歴史や文化に由来する部分もあるだろう。規準が緩和され、人びとの責任が問われない傾向が強くなった。アメリカ企業のCEOたちは企業経営をゆがめ、ゴールデンパラシュートで莫大な富により私腹を肥やして逃げた。
ロナルド・レーガンが大統領になるときまでに、アメリカ人は政府を「敵」とみなし、「強欲を善」とみなすように言われてきた。市場が全てである。公職は軽蔑され、税金を吸い上げるだけの悪人たちだ、と。多くの公的機関が空洞化した。こうした傾向の神格化が、ドナルド・トランプである。指導者に、これほどナルシストの、失策と詐欺の長い経歴を持つ、顕著に資格を欠いた、自慢するだけの男を選ぶアメリカという国を、だれも真剣に扱わないのは当然だ。
この傾向は逆転できるのか? 文化を法律によって変えることはできない。アメリカ人は政治システムを真剣に再考し、改革すべきだろう。何カ月も、何十億ドルもかけて、2020年の大統領選挙は、3人の白人高齢男性から1人を選ぶ。これはシステムに深刻な欠陥があることを示すものだ。4年の任期を与えるために1年かけて決めるのも、時代錯誤の代表人制度も。有権者の力を奪う点で許すことのできない失敗だ。
政治改革はアメリカ人にかかっている。
● 金融危機とパンデミック
PS Mar 23, 2020
This Time Truly
Is Different
CARMEN M.
REINHART
FP MARCH 23, 2020
Fed Fails to
Stem Market Bloodbath as Congress Stumbles on Aid Package
BY KEITH
JOHNSON, MICHAEL HIRSH
PS Mar 24, 2020
A Greater
Depression?
NOURIEL ROUBINI
1)中国が実施したような地域の封鎖体制、2)危機対策に融資する中央銀行の非債務型融資、3)家計に直接届く「ヘリコプター型」財政支援。
世界金融危機は幸運が重なって抑え込めた。今回、世界はそれほど幸運を持っていない。はるかに深刻な世界不況になりそうだ。
● 市民の自由
FT March 23, 2020
Coronavirus
monitoring poses dangers for civil liberties
John Thornhill
● 気候変動リスク
FT March 23, 2020
We need to hit
the tipping point on pricing climate risk
Amin Rajan
● 日本企業のアキレス腱
FT March 23, 2020
Why markets
gave a big shrug to the Bank of Japan
Shigeto Nagai
ドル建の融資は日本企業のアキレス腱であった。自国における成長に制約がある日本経済は、グローバルな展開を求めている。ますます内向きになるトランプ政権が、連銀の世界に対する準備通貨発行という責任を軽視する不安があった。
● サウジアラビアの石油戦略
PS Mar 23, 2020
Saudi Arabia’s
Radical New Oil Strategy
BERNARD HAYKEL
石油資源が枯渇する前に、サルマンMohammed bin Salman皇太子は石油戦略を転換した。石油市場の変動を吸収する役割を放棄した。
FT March 24, 2020
Oil industry faces
biggest crisis in 100 years
David Sheppard
● 中国のウイルス対策
PS Mar 23, 2020
Beating
COVID-19 and the Economic Pandemic
SHANG-JIN WEI
FP MARCH 23, 2020
China’s Debt
Diplomacy Will Get a Coronavirus Boost
BY AZEEM
IBRAHIM
FT March 24, 2020
From cover-up
to global donor: China’s soft power play
James Kynge and
Hudson Lockett in Hong Kong
FP MARCH 25, 2020
How China is
Exploiting the Coronavirus to Weaken Democracies
BY PETER ROUGH
FP MARCH 25, 2020
Can Europe and
the U.S. Follow China’s Lead on Economic Recovery?
BY KEITH
JOHNSON
PS Mar 26, 2020
China’s
Misplaced Pandemic Propaganda
MINXIN PEI
● 大量検査が必要だ
FP MARCH 23, 2020
Without Mass
Testing, the Coronavirus Pandemic Will Keep Spreading
BY DEVI SRIDHAR
パンデミック封じ込めに対して、初期の大量検査が重要である5つの理由を知るべきだ。
1)感染者であることがわかれば、人びとは行動を抑制するようになる。2)感染の連鎖を切るために、その広がりを正確に知ることが必要だ。3)医療機器とスタッフを必要な地域に集中することができる。4)特定のホットスポットが生まれることがわかっており、これらを制圧することが必要だ。5)症状によって感染を知るのでは遅い。検査によって感染の拡大を抑えることが重要だ。
● プーチンは見ている
FP MARCH 23, 2020
As the West
Panics, Putin Is Watching
BY ELISABETH
BRAW
● パンデミックと経済・哲学の変化
The Guardian, Tue 24 Mar 2020
The last global
crisis didn't change the world. But this one could
William Davies
深刻な世界不況は避けられないだろう。政府や中央銀行が介入しても、人びとが家を出なくなれば、貨幣の流れは止まる。
われわれの経済危機のイメージは1970年代に形成された。それは戦後の為替レート・資本規制・賃金契約のシステムが崩壊したからだ。そして管理できないインフレの高進が起きた。それが、マーガレット・サッチャーとロナルド・レーガンの新保守主義が「救済」として現れ、減税・高金利・労働組合の解体、という新しい「治療」を受け入れさせた条件であった。
イデオロギーも変わった。危機は資本主義のケインズ主義的モデルに内包されていたからだ。生産性を超えて賃金が上昇し、利潤を食いつぶした。支配的なビジネス・スタイルも変わった。重工業から、消費の変化に機敏な対応を欠かさない弾力的生産システムになった。
産業の空間的配置も変わった。資本は、イングランド北部やアメリカ中西部のような、象徴的な旧工業地帯を廃棄した。国家の支援を得て、ロンドンやニューヨークのようなグローバルシティの金融ビジネス地区に集まった。
40年を経て、同様の変化が起きるかもしれない、と思った。しかし大きな社会的苦痛を生じながらも、2008年の世界金融危機は政策思想における転換を生み出さなかった。2020年はどうか?
コロナウイルスが広める危機の感覚は、1970年代というより、むしろ1945年にている。生死の問題によって政策の基準が変化した。それは資本主義の危機である。
1755年、リスボンのほとんどを破壊した地震と津波が起きた。死者は7万5000人に達した。経済も崩壊し、それが再建されたときは全く異なる方針が支配的になった。イギリスの輸出に頼らない、活気ある経済を取り戻した。
自身は哲学にも重大な影響を及ぼした。ボルテールやカントがそうだ。カントはその後期の作品に書いた。もし神が人類に対する何らかの計画をお持ちなら、それはわれわれが世俗的な理由により(すなわち、市場・経済活動によって築く)「世界市民社会」を通じて、個人的にも集団的にも自律性を得る、というものだろう、と。
2020年の危機を、われわれはどう理解するのか。
● G20
PS Mar 24, 2020
The G20’s Pandemic
Moment
JIM O'NEILL
● パンデミックと発展途上国
PS Mar 24, 2020
The Arab
World’s Perfect COVID-19 Storm
NASSER SAIDI
PS Mar 24, 2020
The Virus Turns
South
ROBERTO CHANG ,
ANDRÉS VELASCO
PS Mar 24, 2020
Flattening the
COVID-19 Curve in Developing Countries
RICARDO
HAUSMANN
コロナウイルスと戦うには、感染者の急増を防ぐために、社会的な距離を取ること、さらには、封鎖をするしかない。しかし、それはマクロ経済に大きな負担となる。需要と供給がともに大きく減少するだろう。都市の封鎖は、財・サービスの供給を止めてしまう。
政府は封鎖に伴うショックを緩和するための様々な財政支援・給付を行う。その費用は、主に借り入れによって調達され、必要なら、中央銀行が融資する。
この点で、発展途上諸国は大きな限界に直面する。彼らの経済が良好な時でも、財源の確保は困難で、しばしば中央銀行が通貨を発行して、インフレ高進を生じてしまう。発展途上国の主な所得は、一次産品輸出、観光、移民からの送金であり、外国に依存するものだ。けいざいは常にドル不足、財源不足である。国際金融市場へのアクセスはなく、逆に、安全な金融資産を求めて資本がアメリカなど豊かな国へ流出する。
歳入不足や対外不均衡の経済危機に対する正統的な処方箋は、緊縮財政と通貨の切り下げ、調整コストを緩和する国際融資である。これではウイルスと戦うための財源がない。こうした処方箋を多くの国が同時に採用すれば、その効果はデフレの拡大になる。
このギャップを埋めるために、国際機関やG7、G20は行動するべきだ。特に、発展途上諸国から先進諸国の金融市場に流出する資本を還流させるべきだ。
1)アメリカ連銀はスワップ網を発展途上諸国に拡大する。2)主要諸国の中央銀行は量的緩和で債券を購入するとき、発展途上諸国の優良な債券を含める。3)ドル化もしくはユーロ化している経済では最後の貸し手がない。これらの諸国に銀行システムを守る特別融資を設定する。4)先進諸国は医療品や検査の資材を輸出禁止にしない。
コロナウイルス危機はグローバルな問題であり、その解決策もグローバルである。
FP MARCH 26, 2020
Syria’s Revenge
on the World Will Be a Second Wave of Coronavirus
BY NIKITA MALIK
FP MARCH 26, 2020
Self-Isolation
Might Stop Coronavirus, but It Will Speed the Spread of Extremism
BY STEVEN A.
COOK
● Facebook
NYT March 24, 2020
Facebook, Don’t
Exploit Us in Our Time of Need
By Melissa J.
Gismondi
● 道義的挑戦
FT March 25, 2020
This pandemic is
an ethical challenge
Martin Wolf
FT March 26, 2020
End the
dog-eat-dog mentality to tackle the crisis
Gordon Brown
FT March 26, 2020
Eurozone
leaders should use their existing tools
● パンデミックとユーロ危機
The Guardian, Wed 25 Mar 2020
The shock of coronavirus
could split Europe – unless nations share the burden
Adam Tooze and
Moritz Schularick
VOX 25 March 2020
Coronavirus and
financial stability 2.0: Act jointly now, but also think about tomorrow
Arnoud Boot, Elena
Carletti, Hans‐Helmut
Kotz, Jan Pieter Krahnen, Loriana Pelizzon, Marti Subrahmanyam
コロナウイルス危機に対する全欧型財政協力が、長期的に、金融的な安定性を維持するだろう。
● ステークホルダー資本主義
FT March 25, 2020
Covid-19 is a
litmus test for stakeholder capitalism
Klaus Schwab
コロナウイルス危機は「ステークホルダー資本主義」にとってどんな意味があるのか? 数か月前に、多くの企業がその採用を訴えたはずだが?
思い出しておこう。ステークホルダー資本主義とは、企業の長期的な繁栄と生命力を目標とし、社会の中に企業を埋め込むものである。企業によっては、それが単なるリップ・サービスでしかなく、短期的な株主資本主義を変えていないかもしれない。
主要企業は、過去数年、株価の買戻しを進めてきた。そうやって短期的に利潤を増やし、重役たちのボーナスを増やしたのだ。逆に、危機への準備金や戦略的な投資は失われた。政府の介入がなければ、こうした危機に対応できない。支援を求めて殺到する。
あるいは、ボーナスや被雇用者への賃金支払いをどうするのか? 重役たちへのボーナスや給与を放棄・削減し、賃金支払いを優先する企業もある。しかし、多くは逆だ。
FT March 25, 2020
Making a case
for ‘Corona bonds’
Justin
Urquhart-Stewart
FT March 25, 2020
Banknote virus
fears won’t stop Germans hoarding cash
Martin Arnold
in Frankfurt
PS Mar 25, 2020
Will the US
Pandemic Response Strengthen Workers?
TERESA
GHILARDUCCI
FT March 262020
How coronavirus
is remaking democratic politics
Philip Stephens
国家が復活した。グローバリゼーション万歳。コロナウイルスが民主政治を改造する。危機からの出口は、リベラルな民主主義にとって2つある。権威主義的なナショナリズムか、諸国間の協力に依拠するオープンな世界秩序か。
コロナウイルスとの戦いで一気に出現する、国境封鎖や権力の集中は、まさに、ポピュリストたちが求めてきたことだ。しかし、ドナルド・トランプのお粗末な対応とニューヨーク州のクオモ知事とを比べればわかるだろう。危機においては能力が問われている。
パワーが市場から国家に取り戻される。民主的な指導者たちが戦時にしか許されないような強い権限を持つ。パンデミックはグローバリゼーションや資本主義の産物ではないが、その限界を示した。市場は答えではない。アメリカにおける医療システムの奪い合いを観ればよくわかる。
また、政府が数兆ドルを支出するのをっ観れば、この数十年間もわれわれを支配した先入観が崩壊する。均衡予算、公的債務、GDP比率、そんな制約を一気に吹き飛ばす。もちろん持続可能なための制約は必要だが、財政原理主義の時代は終わった。
財政負担は莫大だ。2008年の金融崩壊では資本主義や政治が転換を実現しなかった。それは大衆の不満を高め、左右のポピュリズムに力を与えた。コロナウイルス危機は、もはやそのような失敗を許さない。医療システムを再建しなければならない。リベラルな市場は政治的合意に依存している。
プーチンお情報操作や、中国の権威主義的な都市封鎖が成功した、と結論するのは早すぎる。断固として、効果的な行動を取った民主的政権は、韓国で成功した。
民主政治における政治家の能力と真実に対する正直さを再評価するときだ。トランプのホワイトハウスと州や市町村の首長とがウイルス対策で対立している。ヨーロッパでは、もっとも大胆な措置を取るために、真実について国民に語った指導者たちが、イタリア、フランス、ドイツで高い支持率を得ている。
しかし、政治間協力が再生するとは限らない。EUでも、グローバルなレベルでも、強い理由がありながら、協力した行動は実現しないだろう。
● 経済制裁の解除
PS Mar 25, 2020
A Pandemic Is No
Time for US Economic Sanctions
JEFFREY D.
SACHS, FRANCISCO RODRÍGUEZ
● ドル不足
FT March 26, 2020
What makes this
global dollar crunch different?
● 経済政策の最前線
VOX 26 March 2020
Fault lines in
fiscal-monetary policy coordination
Lucrezia Reichlin,
Dirk Schoenmaker
PS Mar 26, 2020
Toward a Coherent
Economic Strategy for COVID-19
JOHN B. TAYLOR
PS Mar 26, 2020
The Race
Between Economics and COVID-19
MOHAMED A. EL-ERIAN
世界金融危機の後も、豊かな諸国は社会・経済の分断と機能破壊を深めてきた。それは、コロナウイルス危機により、かつて発展途上諸国でしかみられなかった「破綻国家」の無秩序に対する政府の能力を破壊した。
● アメリカ連銀
FT March 27 2020
Why the US
Federal Reserve turned again to BlackRock for help
Gillian Tett
● マヤ王国
FT March 27 2020
A lost Maya
kingdom found on a farmer’s smallholding
Jude Webber
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The Economist March
14th 2020
The politics of pandemics
Latin America: How to reform Chile
Chaguan: When nationalism bites back
Climate change: Green Texas
Chile: A model country in need of remodeling
Russia: The prisoner in the Kremlin
Charlemagne: Pour decourager les autres
Bagehot: The meaning of conservatism
(コメント) パンデミックで優秀なモデルは、シンガポールや台湾、韓国が示した。日本は、検査を遅らせているケースで、判断できる対象に挙げられていない。
チリは、軍事独裁体制を抜け出し、民主化しただけでなく、社会民主主義政権が貧困を減らした成功モデルだと思っていました。首都をデモが長期におよんで破壊する、というのは、理由を知りたいことでした。記事は、いくつかの視点を挙げていますが。
ロシアも、EUも、理解しがたい事情を掘り下げて考察する点で、参考になります。それがどこまで十分な分析かは、慎重に考えますが。
飛び切り面白いと思ったのは、テキサスと、イギリスの保守主義再考です。
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IPEの想像力 3/30/20
欧米や日本では、民主主義に対する悲観論、軽侮する感覚が広まっているように思います。しかし、アフリカの人々はそうではない。
The Economistの記事 ( Democracy in Africa:
Generation game ) に、「もし議会がゲットーに来ないなら、ゲットーが議会に行くだろう」と語ったボビー・ワインBobi Wineが登場します。(拙著『ブレグジット×トランプの時代』萌書房、第5章) 来年、ウガンダの大統領選挙!!に立候補するらしい。
アフリカは、急速に都市化しつつあり、若者が多く集まって、十分な雇用が得られないまま、新しい文化や情報に刺激されている。政府の懐柔策や弾圧に対しても、若者たちは容易に屈服せず、革新的な政治家に呼応して急速に鍛えられていくのです。そして彼らは民主主義を求める。
アフリカの民主主義は、もちろん、多くの独裁者や異常な行動を生んできました。ヨーロッパの植民地支配から独立した国との、貿易や投資にとって、民主的制度はどうでもよかった。1970年代末でも、サハラ砂漠以南のアフリカで複数政党の民主主義があったのは、わずか3か国に過ぎなかった、という。3分の2は軍事体制で、40件のクーデタがあった。
アフリカは2000もの異なる言語、6000から10000の政治集団があり、それらを無視してヨーロッパの帝国が引いた国境線で国家が残されている。植民地支配は強制であり、部族の支配者との共謀であった。支配をねつ造し、弱い支配者は乗っ取られ、強い者が弾圧や後援によって支配を築いた。ボカサ、アミン、セセ・セコ、アバチャ、エンクルマ、モイ、バンダ。それは醜悪な独裁者の標本箱である。
冷戦の時代が終わっても、中国は新しいビッグ・ブラザー(監視国家)のハイテク技術を提供している。他方で、アメリカのトランプ政権は「民主主義」に全く関心を示さない。アフリカには地域協力の制度も欠如しており、開発や民主化のモデルを促す共通の場がない。
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吉川英治の『黒田如水』にある、一節を読んで、しばらく楽しみました。
「なかんずく、官兵衛をして「この人こそ」と信頼させたものは、城下の庶民の声である。・・・小谷の藤吉郎どのといえば、衆口一致して、
(あれは偉いそうだ・・・)という。
試みに、官兵衛自身が、何でそう彼が庶民に支持されているかを考えてみると、ほかの武将猛将とちがって、藤吉郎秀吉には、さしたる武勇の聞こえはなかった。けれど、奉行を勤めても、築城に当たっても、領政を任じられても、秀吉の職につく所、大きな成績の上がっていない場合はなかった。そして彼に使役された人間が町へもどると、口をそろえてみな彼の偉さを吹聴し、彼の姿を見るところでは、どこの占領治下の地でも、みな彼を自分たちの家長のように親しんでいる。」
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アフリカの人びとは民主主義を求めている。政治的な無気力は見られない。むしろアメリカ人が、今、権威主義体制や「強い指導者」に魅力を感じているようだ。
コロナウイルスの蔓延が、アフリカの可能性を閉ざすことはないと思う。将来、必ず、持続可能な文明圏が生まれると思う。
アフリカは広く、若い。しかし、アフリカは貧しく、栄養や治安も悪い。医療サービスはシステムを欠き、非常に悪いだろう。50年、あるいは、200年。その混乱期は、豊かな国の支援によって大きく短縮されるのではないか。その民主主義の可能性も失われない。
しかし、その間、西側に偏ってきた人類にとって、民主主義の可能性を失う時代が続くかもしれない。
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アフリカは「人口の配当」を得ていない。若者の労働力は豊富に存在するが、十分な雇用機会がないからだ。政治統合と平和、インフラ投資が、アフリカを新しい市場にすると期待されている。人口増加と技術移転があれば、積極的な雇用を生む投資が好循環をスタートさせるだろう。
2019年5月、マラウイの79歳のMutharika大統領が再選されたときも、その勝利をめぐって抗議デモが起きた。今年の2月、ついに憲法裁判所は選挙のやり直しを命じた。アフリカにおいて2度目のことである。
23歳の失業者であるMalizaは語る。「私は政府が交代してくれることを願う。その変化で、私は小さな商売を始められると思うから。今の政府の下で、そうした機会は非常に限られているから。」
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