IPEの果樹園2020
今週のReview
3/23-28
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アメリカの市民社会統合 ・・・コロナウイルス・ショックへの対応 ・・・ピケティが描く人類の貧困 ・・・ドル体制の改革
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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● アメリカの市民社会統合
PS Mar 12, 2020
The US
Needs A Draft
CHARLES
C. KRULAK
私がベトナムで若い海兵隊員であったころ、アメリカ国内は大きく分裂しており、国の半分のアメリカ人が他の半分を信頼しなかった。それは非常に気の重いことだった。いま、それは3分の1である。しかしアメリカ市民の鬱屈が解消したのではない。悲観主義的な無関心、無思慮な党派主義、仲間の市民に対する非アメリカ的な憤慨に代わっただけである。
アメリカの歴史で、経済不況と市民の対立、政治的分断は、外部の敵以上に、しばしば団結を損なった。今、脅威は国内にあり、しかも、認定することがむつかしい。しかし、その効果は明白だ。アメリカ人の団結を根本から弱体化している。
若い男女をアメリカ国内の決定的に重要な事項に奉仕させる軍隊を創設する新しい法案を起草するときである。それによってわれわれの民主主義が機能するように改善し、人びとがもっと感謝するような制度にする。政府は2年間の徴兵を国民の義務とし、異なるバックグラウンドを持つアメリカ人が国民的なサービスに奉仕する。それは、地理、人種、エスニック、信仰、社会経済的なバリアによる相違を乗り越えて、市民的アイデンティティーを深く実感させるだろう。
アメリカには大きな違いがあるから、の中身を決めるのは、州とローカルなレベルに委ねるべきだ。それは、ホームレスや退役軍人への支援、学校で取り残された者たちへの支援、地方における橋や道路、公園を整備したニューディール期のWPA(Works Progress Administration)、医療サービスの不足を補うこと、薬物依存の人々、高齢者への支援である。若者たちは自分たちだけのコミュニティーを超えて、その視野を拡大できるだろう。
最も重要なことは、この計画がアメリカ人の分断を乗り越える長期の過程を促すことだ。
● コロナウイルス・ショックへの対応
PS Mar 13, 2020
Trump’s
Global Recession
ANDERS
ÅSLUND
コロナウイルスによる成長減速と世界規模の金融パニックで、世界不況が始まるのはほぼ確実である。その発生過程と解決策は、チャールズ・キンドルバーガーの本が描いたようになるだろう。
アルゼンチンとレバノンがすでにデフォルトになった。旅行会社や航空会社は次に破産する。世界中で流動性が不足し、典型的には、周辺地域の諸国を金融逼迫が襲う。人びとが自国の通貨を売ってドルやユーロに逃避するからだ。
金融パニックを抑えるには、2つのことが重要だ。政治的協力と、政府による膨大な流動性の供給である。
2008年の危機は、当時、混乱したように見えたが、後から考えると、ほぼ理想的であった。ジョージ・W・ブッシュ大統領がワシントンでG20サミットを開いた。その共同宣言は、成長の回復と金融システムの改革のために協力する、という意志を示した。G20の指導者たちは開放型の世界経済を守った。
アメリカの財務相と連銀は、次々に金融機関を救済した。議会は大規模な財政刺激策を成立させた。それでも金融市場が底を打ったのはリーマン倒産から半年後であった。
残念ながら、現在は2008年のような行動が取れないだろう。特に、アメリカの政策担当者が内外で信頼されていない。トランプ自身が信用を欠き、ナショナリズム、保護主義を支持し、専門家の助言を聞かない。パウエル連銀議長に関する市場の信認を損ない、ムニューシン財務長官は低い地位にとどまる。EU、ECB、IMFのトップは信認であり、メルケルとマクロンは国内の支持が弱まり、ボリス・ジョンソンはブレグジットに忙殺されている。
金融市場では、かつてないほど債務が累積しており、特にアメリカは第2次世界大戦以来で最も政府債務のGDP比が高くなっている。
このまま行動が変わらないなら、長く厳しい世界不況が来るだろう。
PS Mar 13, 2020
The
Pandemic Stress Test
RAGHURAM
G. RAJAN
コロナウイルス・ショックは、世界が深く相互に結びついている状態、脆弱な地位にある人々に関して社会的な対話が必要なこと、グローバルな協力と専門的な知識のある者たちが指導力を発揮する必要、を思い起こさせる。
公衆衛生の危機だけでなく、2つの点で経済的な衝撃をもたらす。1つは、サプライ・チェーンが止まること。もう1つは、需要の落ち込みである。外食、ショッピング、旅行をやめてしまう。間接的な影響として、特に中小企業には大きなストレスが生じる。被雇用者のレイオフと、消費者の警戒感である。債務や税金が支払えない。
世界経済は2008年以降も決して完全に回復しなかった。それどころか、危機に至った問題は解決されないまま、債務を積み上げている。しかも政府はグローバルな貿易・投資のシステムの信頼を損なう行動を繰り返してきた。
ウイルスの感染拡大を抑えるためには、検査、厳格な隔離、そして社会的な距離を取ることが重要だ。それに加えて、将来も、コロナウイルスは消滅せず、再発し続けるだろう。世界規模の対策を採るための指導力が求められる。
しかし、G20にも、アメリカ大統領にも、それは欠けている。むしろ中国や韓国が示すベストプラクティスを世界が学ぶことだろう。さらに、米中貿易戦争を停止、最近課された高関税を廃止することが効果的である。
国内では、特に、インフォーマル部門、ギグワーカーへの支援が必要だ。発展した諸国で、いかに多くの労働者が、不安定な、低賃金の部門において増大してきたか、このパンデミックが示すだろう。現金給付はシステムが彼らを見捨てないというメッセージである。それに加えて、社会保障や経済的機会を拡大しなければならない。
ポピュリストやその政党は専門家たちを軽蔑し、攻撃してきた。そして不安定な職にある人々を政治的な支持の拡大に利用しようとした。パンデミックの重要な意味は、災害を予防する専門機関を削減したことが失敗であったことを認め、彼らに対する国民の信頼を回復することだ。そして政治的には、階級戦争ではない形で、不安定な職において苦労する労働者たちを適切な政策で支援することである。
もし専門家たちがこの危機を解決できなければ、さらに多くの死者、分断、混乱、悲惨な状態に向かう。
NYT March 13, 2020
Trump’s
Chernobyl
By Serge
Schmemann
1986年の春、The Timesの局長として、私は家族とモスクワに住んでいた。
4月26日、チェルノブイリ原発で原子炉が爆発し、放射能が広い範囲に拡散した。われわれは知らないことに関する不安と格闘した。記者として、政府のプロパガンダと真実とを分け、個人的にも、静かに、風に乗って広がる見えない恐怖に対処しようとした。
放射能は伝染病ではないが、なお、チェルノブイリ原発事故とコロナウイルス危機には共通した性格がある。見えない敵に侵食される脆弱さの感覚。すでに自分が侵されているかもしれない恐怖。科学知識はわれわれを守れず、政治指導者たちはわれわれと違うことを優先している。
チェルノブイリ危機はソ連の歴史における重要な政治的局面で起きた。それはゴルバチョフが権力を握って、硬直化した警察国家を「グラスノスチ」と「ペレストロイカ」で改革すると約束してから、わずか1年後であった。ウクライナにおける原発の爆発と放射能汚染が、急速に、ソビエト型の自己保身の嘘と情報操作、秘密主義を復活させたのだ。
北欧からの情報で、人びとは自分たちが死の危険にさらされていることを知った。恐怖が広まり、体制によるコントロールを超えた。プロパガンダ装置は勝手な説明をまき散らすだけで、事実や警鐘が漏れるのを抑えられなくなった。旧弊により、西側を非難した。アメリカと西欧諸国がチェルノブイリ事故を利用してソ連の信用を損ない、憎しみを広めている、と。その数週間後に、ゴルバチョフが事故を認めた。
中国政府も同じような対応を示したが、デジタル革命前のソ連時代より、情報管理の能力は低かった。初期に武漢から警告したが、当局に処罰され、このウイルスで亡くなったLi Wenliang医師を多くの人々が称賛した。
トランプ大統領は再選のためにコロナウイルスを軽視してきたが、それは中国以上にひどかった。アメリカ人は、1986年のソ連、2020年の中国と違い、自分たちの命を脅かすものについてわずかの間も騙されなかった。
ソ連にとってチェルノブイリ原発事故は、すでに生命維持装置に入っていた体制に致命的なショックを与え、その死を早めた。コロナウイルス対策は、われわれに再考の時機を与え、同時に、われわれの国を含めて、世界の感染地帯に重大な変化をもたらす。
地下鉄に乗れるか? 隔離された生活で食料は手に入るのか? われわれは真実を知らされているか?
FT March 15, 2020
How
coronavirus became a corporate credit run
Rana
Foroohar
これは金融危機ではない、とトランプ大統領は言った。1987年の暴落以来、最大の下落を示した日だ。アメリカ連銀は際限ない量的緩和に乗り出したように見える。
コロナウイルス危機は金融市場の崩壊に至るのか?
今回の暴落は、グローバルな銀行業でリスクの高い取引が積み重なったものではない。コロナウイルスが消費活動と労働市場を破壊し、企業の債務を悪化させている。債券市場のパニックにつながった。
今、ウォール街の金融機関は十分な優良資産を保有しており、企業にストレスが増している。パンデミックで金融危機になる、とはだれも考えていない。しかし、ハイテク、小売り、航空、保険など、個々の企業の債務危機に銀行が巻き込まれ、グローバル金融システムにも波及する。
連銀は流動性を供給するべきだ。しかし、「流動性はワクチンにならない。」
戦時のような支援策が緊急に必要だ。理想的には、医療費を公的に負担する。まず、アメリカ奈良病院の入院費用を支援することから始めるべきだ。
FT March 15, 2020
Eurozone
stability is under threat again
Wolfgang
Münchau
先週、ECBのラガルド総裁が、前任者のドラギが、ユーロを守るために「何でもする」という2012年の約束を吹き飛ばした。債券市場から妖精は消えたのだ。
その数日前に、ヨーロッパ諸国の首脳たちは財政政策の協調を拒否していた。市場関係者には、この2つの情報を、次のユーロ危機が起きる、と解釈する者がいた。イタリア国債が直ちに売られた。
市場はパニックになっていないが、その推測は正しい。ユーロ圏の将来は危ういものである。
前回の危機とは違う。ユーロ圏の銀行は崩壊しつつあるのではない。ユーロ危機から、加盟諸国は単一の金融監督メカニズムや銀行同盟を開始した。
今回の危機はさらに大きいだろう。ラガルドのコメントは、事態を法律家の視点で見ている。それはドイツ人の多くと同じだ。法的に、彼女の言ったことは正しい。政府債券市場を安定化することはECBの任務ではない。ドラギも金融政策として、介入によってユーロ圏の崩壊を阻止したが、問題を残した。EU諸国の指導者たちが財政同盟を進めないことに、口実を与えたのだ。
2012年のドラギの約束は個人的なものだった。しかし、それは信用されたことで効果を発揮した。それゆえ、ラガルドの姿勢は深刻だ。誰かが他の方法でやるだろう、という。彼女は後で言い直したが、それは信用されなかった。
それは最悪のタイミングだった。パンデミックの真ん中で、EU指導者たちは財政政策の協調に失敗した。各国は財政支援策を独自に行うだろう。その結果、ユーロ圏諸国間の不均衡が拡大する。イタリア、スペイン、フランスの財政赤字は大幅に増える。南北間の財政ギャプが拡大する。
ユーロ圏全体の対策を示して、ECBがこれを無制限に支援することが望ましかった。しかし、そうではなかった。イタリア国債の負担を十分な成長でまかなうことはむつかしい。ECBの支援がなければ、極右だけでなく、イタリア人の多くが、ユーロ圏を離脱して為替レートとインフレ率に関するコントロールを取り戻したい、と思うだろう。
シリア難民がイタリア海岸に上陸することで苦しいときに、他のEU諸国はイタリアを助けるのを嫌がった。彼らはそれを忘れていない。コロナウイルス危機は、新しいイタリアを誕生させる。
FT March 17, 2020
The
virus is an economic emergency too
Martin
Wolf
消費が減って、商売が破綻する。
社会保障制度や社会管理の弱い国がパンデミックに脆弱である。アメリカがそうだ。病気になっても人びとは病院に行かず、働こうとする。
たとえ最後の貸し手はあっても、支払い不能は防げない。中央銀行は、家計の支出や商店の売り上げを支給できない。借り手や売り手の最後の手段は政府である。政府が行動するべきだ。
最低でも、病気による欠勤に失業保険を適用する。フリーランス労働者を含めて、危機の間は支給を継続する。それがむつかしければ、政府は全国民に小切手を配る。
Emmanuel
Saez and Gabriel Zucmanは、政府が「最後の買い手」として行動するよう求めている。失われた需要を補い、企業は賃金を支払い続ける。株価を維持する。100年に1度のパンデミックに対する行動であるから、モラル・ハザードは起きない。破綻する企業は、これでも破綻するだろう。
所得を維持し、倒産による長期コストの発生を抑える。ユーロ圏内では、債務能力の限界にある赤字国を支援する。グローバルには、新興諸国の医療・経済危機を抑える。
戦争では、政府が支出を制限されない。今もそうだ。大災害を防ぐために、今すぐ大規模に、しかも、協力して行動せよ。
VOX 17 March 2020
Helicopter
money: The time is now
Jordi
Galí
コロナウイルス危機に対する医学的な対応策は、同時に、さまざまな形で経済に直接的な影響を及ぼす。
多くの部門で生産と販売が減少する。GDPの直接の減少は避けられない。病気の蔓延する間、財・サービスの消費が減少する。これは耐えられないことではない。
残念ながら、生産の減少が雇用の減少(それゆえ、次の所得と消費の減少)をもたらすなら、間接的な効果が増大する。それを抑えるには、企業が雇用と固定経費の支払を維持することだが、それに応じて融資を増やす銀行はないだろう。企業の債務が増えて、バランスシートが悪化するからだ。
コロナウイルス危機を回避するには、政府が介入し、この間接的効果を最小化することだ。政府が、影響を受けた企業や自営業者に、彼らの債務を増やすことなく、その支払を資金援助する。それは政府からの財源の移転であり、即時(かつ恒久的)税免除も含まれる。
残念ながら、この戦略は問題を民間から政府に移すことでしかない。政府は増税するか、金融市場で借り入れて債務を増やすことになる。たとえEUが政府債務の上限を引き上げても、結果的にコロナウイルスで大きな影響を受けた国のデフォルト・リスクを高め、直ちにスプレッドを拡大する。中央銀行が国債を大規模に購入する量的緩和QEを行ってリスクを緩和できるが、政府債務の増大は変わらない。
幸い、増税や債務に代わる、もう1つの方法がある。それはタブーとされていることが、政府が追加の財源として、央銀行から直接に、返済するものではない資金移転を受けることだ。このような市場介入を「ヘリコプター・マネー」という。
中央銀行は貨幣を創りだせる。より適切には、中央銀行の口座に債権を付与できる。この債権は返済されない。中央銀行から政府への移転である。それは中央銀行が政府債券を買って、直ちに償却するに等しい。政府の債務は増えない。
それにはいくつか問題がある。
1.政府が誰に、どれくらい、財源を移転するのか。これは2次的な問題だ。2.法的に見て、このような介入は違法である。しかし、例外的な状況で、神聖なルールを緩和することはあった。3.それを繰り返す政府は、インフレを生じやすく、個人の行動をゆがめて、効果を失う。しかし、パンデミックの危機に限定すれば、それは起きない。中央銀行は市場の評価に注意している。
他に有効な選択肢がない、あるいは、望ましくない結果が避けられないときだけ、ヘリコプター・マネーは用いられるはずだ。それを使うとしたら、今がそうである。
The Guardian, Wed 18 Mar 2020
The
Covid-19 crisis is a chance to do capitalism differently
Mariana
Mazzucato
コロナウイルス危機が世界に与えるストレスの規模と深刻さは、1918年のスペイン風邪に匹敵する。グローバルな行動がなければ、感染は止められない。政府が行動するしかない。
1980年代から、政府は前に立たず、ビジネスが富を動かし、創り出すことを許してきた。政府が介入するのは、問題が起きたときだけだった。甚大なシステミック・ショックが起きるまでは動かない。だから準備は不足していた。公共サービス・公共財の供給機関は弱体化し、放置されていた。
ビジネスが公共生活で重視されることは、政府への信用を失わせた。公共財より利益を追求する官民の協力関係が支配した。たとえば、研究・開発でも、公衆衛生にとって非常に重要な医薬品でも、商業的な利益が少なければ、むしろ「大儲けできる」薬の開発が優先された。
何より、不平等化する社会で、労働者の保護やセーフティーネットが失われた。ギグエコノミーで社会的保護を得られない労働者が増えている。
しかし、コロナウイルス危機がわれわれの資本主義の見方を変えるだろう。政府がすべきことは再考される。持続可能で、包括的な成長パターンを創り出すように、市場を積極的に政府が形成し、創出する。官民協力は、利益よりも公共的関心が優先される。
第1に、危機に対する予防と対応に当たる機関に投資する。第2に、研究・開発の協力体制を組織する。コロナウイルスのワクチン開発を空前の規模で推進するべきだ。第3に、官民協力関係を、公共目的に向けて再編する。好況期には補助金を与え、利益を増やしたビジネスに、投機や不況期の過大な価格を許してはならない。
第4に、2008年の世界金融危機の教訓を学ぶべきだ。救済するだけでは意味がない。必要な、新しい経済の一部になることを条件づけるべきだ。たとえば、グリーン・ニューディールの実現、技術革新に労働者が適用するのを助ける投資である。
資本主義の革新をもたらす、この危機を無駄にしてはならない。
PS Mar 18, 2020
The ECB
Must Finance COVID-19 Deficits
PAUL DE
GRAUWE
需要と供給が同時に衝撃を受けてドミノ効果を生じている。特に固定費用が大きな企業は倒産するかもしれない。こうした企業の融資している銀行も危険である。
危機を緩和する政府も、財政危機を恐れる。金融支援策や補助金を支出する政府は、税収が減ることと重なって、財政赤字と債務比率が爆発的に上昇する。失業手当を支給し、大規模な銀行を救済するかもしれない。
2008年の金融危機と同様、需要の減少を抑える緊急の政府支出により、ドミノ的な崩壊を防ぐために間隔をあける、マクロ経済的な「ソーシャル・ディスタンシング」を行うべきだ。コロナウイルスの直撃で、政府債務残高のユーロ圏上位4大国に入る、イタリア、スペイン、フランスの債務が急増する。
そして最後のドミノ効果、ユーロ圏加盟諸国の政府間の政府の債務危機を抑えるには、政府支出がECBによって支援される必要がある。しかも、ECBの量的緩和を再開するだけでは不十分だ。それがこの危機における政府債務を増やさない、ユーロ圏加盟国への貨幣供給であるべきだ。
新しい債務はECBにより現金化される。確かに、それが法的な問題や、インフレを生じるという懸念は出るが、どちらも間違いだ。遅かれ早かれ、コロナウイルス危機だけでなく、経済のデフレを抑える必要に直面するだろう。
旧思考を捨てるべきだ。
PS Mar 18, 2020
What COVID-19
Means for International Aid
ARVIND
SUBRAMANIAN
援助には2つの種類があることを区別するべきだ。1つは、個々の途上国の成長を促す援助、もう1つは、グローバルな公共財GPGsを供給する援助だ。援助が成長にプラスであるという証拠を見出すのはむつかしいが、GPGsの供給は明らかに必要だ。すなわち、農業生産性を高める技術移転、気候変動の抑制や影響の緩和、知識・情報の普及、そしてもちろん、パンデミックの予防と対策である。
しかし、援助の圧倒的に多くがGPGsには向けられない。その理由は援助に関わる双方の利益や目的がGPGsを軽視するからだ。GPGsの供給に融資しても、その効果は遠い先で、漠然としており、援助供与国に明確な利益をもたらさない。
パンデミックを抑えるためには、開発援助の構造を変えるべきである。
FP MARCH 18, 2020
Is the
Coronavirus Crash Worse Than the 2008 Financial Crisis?
BY ADAM TOOZE
アメリカの危機管理体制はパンデミックに対して準備していなかった。もはや不況は避けられない。必要なのは、刺激策ではなく、企業倒産と長期のダメージを抑制する全国的なセーフティーネットである。金融的な心臓まひの危険がある。
アメリカの株価が下落したとき、同時に、債券価格も下落した。これは危険である。財務省証券は安全性を求める投資家のリスク回避手段であるはずだ。ドルから投資家が逃げる兆候といえる。
中央銀行間の協力は不十分だ。スワップ網は、2007年末から、ドルによって形成された。トランプと政権の共和党ナショナリストが、グローバルな中央銀行間協力を拒むのではないか、と危惧された。しかし、そういうことは起きなかった。パンデミックで自宅を出るのも危険だと心配しているとき、ナショナリストの原則など気にしない。
新興市場を含む流動性供給はできるのか。コロナウイルス対策で優れた韓国や台湾からも、資本が流出する危険がある。中国の人民銀行は、2008年、ドルとのスワップを結ばなかった。独自に、人民元建てのスワップ網を築くようになった。
世界が最も恐れるのは、中国がドル建債券を売ることだ。そのとき、アメリカは人民元を借りるのか。アメリカ連銀は、議会の反中国派の怒りを買って攻撃されるのを恐れる。
これらすべてが政府債務を増やし、GDP比率を上昇させるだろう。しかし自国通貨を持つ国なら、中央銀行が財政赤字の一時的増加を融資できる。政府の債務負担をともなわずに、刺激策を実行できる。
FT March 19, 2020
China’s
property sector is at the epicentre of the crisis
Paul
Hodges and Daniël de Blocq van Scheltinga
中国の都市封鎖の2次的な影響として、不動産市場が悪化している。それは注五億GDPの25%を占める重要な市場である。
不動産関連企業・開発会社がキャッシュ・フローを改善する試みは、オフショア・ドル市場に影響している。そこでは不動産関連企業が主要な借り手である。
中国の不動産部門がグローバル債務危機の震源地になっている。ドルに対する人民元の下落も、不動産関連企業の債務維持コストを加えている。
PS Mar 20, 2020
What
Would Keynes Say Now?
ROBERT
SKIDELSKY
イギリスのRishi
Sunak蔵相は、大幅な赤字予算案を示して「ケインズも承認するだろう」と宣言した。FTも、道路などへの公共投資を「1970年代以来」と称賛した。しかし、この10年間、支出カットをもてはやしてきたのがFTである。
私はまだ「ケインズ復活」ということに懐疑的だ。ケインズは財政赤字だけを支持したのではない。同様に、黒字も支持した。
なぜ今なのか? 保守党政権は2010年に始めなかった。今の失業率は4%だが、当時は10%もあった。彼らは、財政健全化計画によってその余地がなかった、というだろう。勝手に決めた制約を理由に、失業者の苦痛を無視したのだ。
さらに、この時期に政府支出を増やせば、経済の循環的変動における間違った時期に拡大を刺激する。また、40年間もインフレ抑制を重視してきた政府が、そのリスクを全く無視している。完全雇用状態で需要を追加すれば、急速にインフレが進む。彼らは1970年代の「ゴー・ストップ」政策を再現するだろう。
戦争経済とは物不足の経済であり、銃を生産するためにバターをあきらめる。バターは配給制にするしかない。需要の不足が問題ではなく、需要の追加によって供給が増えないことが問題だ。
ケインズは1940年の『戦費調達論』で、イギリス市民が消費を削減する必要を理解していた。それは高価格、もしくは、増税を意味する。そしてケインズは、インフレよりも公平であるという理由で、強い累進的な課税(最高限界税率は97.5%)を支持した。
しかも、最貧困層から集めた税金は、戦後、政府が払い戻すことを提案したのだ。
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The Economist March 7th 2020
The right medicine for the world economy
The war in Syria: An ally in need
African democracy: How to beat the Big Men
Feminism in Mexico: The violet tide
Syria’s war: The battle for Idlib
Democracy in Africa: Generation game
(コメント) コロナウイルスがアメリカに達することが重大な意味を持つことに気づきます。労働者と貧困、社会保障、特に、医療保険が不完全な社会に、感染症が広がります。問題は、アメリカの経済政策、中央銀行と、アメリカの大統領選挙、ドナルド・トランプによって、深刻な世界的コロナウイルス危機に向かっています。
シリア内戦も、メキシコのフェミニズム、国際女性デーも、何が解決に向かう仕組みなのか、考えることを求めます。
民主主義? アフリカの民主主義が興味深い内容です。ボビー・ワインが登場します。次に紹介したいです。
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IPEの想像力 3/23/20
拙著『ブレグジット×トランプの時代』(萌書房)の「あとがき」を書きました。(一部省略)
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この本を手に取ってくださる読者に、何か意味のある視点や刺激的な考察を提供したいと私は思いました。なぜイギリスはEUを離脱するのか。なぜトランプがホワイトハウスに入ったのか。ありえないことが本当に起きたのです。
新型コロナウイルスが世界の株価を急落させ、国境の遮断や都市の封鎖、外出禁止令、医療崩壊のパニックを引き起こしました。マスクや食料(そして拳銃、弾丸!)の買いだめに走る人びと、さまざまな長い行列の映像に驚き、私は沈黙します。
国境線や国籍で人類を分断することに意味はありません。ウイルスから見れば、人は養分を含んだ土地でしかなく、中国人もアメリカ人も、貧困層も超富裕層も区別することなく、ウイルスは生存領域を拡大し、増殖し続けます。
感染者と非感染者とを分け、重篤化を避けるべきです。老人から人工呼吸器を奪って若者に付けることで、倫理的な罪を意識するのであれば、同じ時代を生きる世界の多くの貧困層から、差別的な文明が人工呼吸器を毎日奪っていると私たちは感じていいはずです。温暖化や自然災害の頻発、激甚化に、富裕国は罪を意識すべきではないでしょうか。
この危機の後も、金融に偏ったグローバリゼーションが再現すると思います。しかし、あなたも想像するでしょう。感染率が非常に高く、致死率が新型コロナウイルスよりもっと高い21世紀型ペストが、将来、どこかで発生するはずだ、と。
世界の大都市は完全に消滅し、それどころか文明の全域で人口が死滅するかもしれません。そして孤島や、高山の集落だけで人類は生き残り、ようやく食べる物がなくなって新型ウイルスも死滅します。何十年も、何世代もたって、人類は高い山から降り、再び海を渡って、次の文明を築き始めます。
しかし今も、ウイルスに感染する生物としては同じ人間が、土地によって異なる社会を築き、その政治や制度の在り方は大きく異なります。将来のリスクに対して医療システムをしっかり準備してきた人びと、貧困層に十分な医療や雇用の機会を提供する社会は、高山や孤島でなくても、多くの人をウイルスから守ることができるでしょう。
封鎖された武漢の市民に政府は食料を各家庭まで配給し、韓国では検査やマスクの配分が整然と行われました。雇用の再配置や基本的な生活費の支給も、一部、実施されました。世界経済が急激に悪化するという予想から、ベーシックインカムやヘリコプター・マネーが議論され、第二次世界大戦の耐乏生活やマーシャルプランが想起されています。
ガラス越しや、防護服を着て、肉親と最後に言葉を交わした人たち。葬儀も火葬も間に合わず、並べられたままの棺の列。客の数が急激に減って、お店が続けられない、職を失うと、人びとは不安と苦悩の重さに耐えています。そんな生活を変える方法が何かないのか。
封鎖された都市の中で、隣人との関係を再認識し、互いに窓から声を掛け合い、歌ったり、ダンスしたり、楽器を演奏して、励まし合う市民の姿が報道写真になっています。
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もしかしたら、次の金融危機やウイルスが現れる前に、文明と社会の質を私たちは真剣に議論し、改革を始めるかもしれません。
この本が、時代の圧力に屈することなく、未来を切り拓こうとしている人たちへの小さな声援となれば幸いです。
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