IPEの果樹園2020

今週のReview

3/16-21

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ブレグジットの情念 ・・・バイデンの時代は来るか ・・・コロナウイルス・ショック論争 ・・・中国とコロナウイルス不況 ・・・新型グローバリゼーション ・・・コロナウイルスと株価依存経済

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 ウォレンの退場

NYT March 5, 2020

Elizabeth Warren, Once a Front-Runner, Drops Out of Presidential Race

By Shane Goldmacher and Astead W. Herndon


 ブレグジットの情念

The Guardian, Fri 6 Mar 2020

For Johnson’s new voters, the betrayal starts now

Aditya Chakrabortty

FT March 12, 2020

Boris Johnson’s covert Brexit plan is self-isolation

Philip Stephens

イギリスの首相は、勝利した、と叫びながら、静かにブリュッセルの主張を受け入れる口実を提供した。

ジョンソンと保守党は議会の多数派を得たため、大陸とつながる橋を落とすことに集中している。彼らは国家主権に熱中し、首相は大げさな身振りが大好きだ。事実が何であれ、UKを崖から突き落とす。

ブレグジットは情念の運動である。保守党はかつて冷徹なプラグマティストたちの集まりだったが、今ではイングランド・ナショナリズムのチャンピオンだ。

ジョンソンの計画とは、コロナウイルスの用語を使えば、まさに「自主的隔離」である。EUとの交渉の中身は国民から隠されてしまった。政府は交渉による経済への影響を推計することを拒否する。

FP MARCH 12, 2020

Critics Say Trump’s Choice to Ban Travel From Europe but Not U.K. Makes No Sense

BY JUSTIN LYNCH


 バイデンの時代は来るか

The Guardian, Fri 6 Mar 2020

Coronavirus could turn Joe Biden’s defining weakness into a strength

Jonathan Freedland

バイデンの演説は、わかりにくい、焦点の定まらないものだった。しばしば文章が完結しないほどだ。しかし、今、バイデンは民主党の大統領候補指名争いでトップに立った。ドナルド・トランプと闘うために党が指名するだろう。ムードが変わった。特にコロナウイルスで、彼の弱点が長所に代わったのかもしれない。

サンダースは好んで言うだろう。「バイデンの勝利は、政治と大企業のエスタブリシュメント」が与えたものだ。しかし、それは言い過ぎだ。特に、アフリカ系アメリカ人がバイデンを強く支持している。それは民主党の重要な支持基盤である。

スーパーチュ―ズデイは多くの教訓を残した。1つは、言われているほど、資金と組織が決定的ではないことだ。ブルームバーグは5億ドルを費やして、1つの州も取れなかった。もう1つは、女性に対する偏見が強いことだ。あるいは、有権者の女性に対する偏見を予想して、人びとはウォレンを支持しなかった。

多くの女性がウォレンを熱狂的に支持し、女性大統領の誕生を願っていた。ウォレンは最も優れた民主党候補者であったと思う。しかし、逆風は強かった。人びとは有権者たちがヒラリー・クリントンに示した反感を忘れていない。

民主党の党員は、その多数が反サンダースか、サンダースを拒む者たちだ。ブティジェッジ、クロブシャーが退場し、候補者が絞られるなかで、サンダースを支持しない多数派が形成された。民主党員がよく知るバイデンに支持が集まるのは避けられない。彼らはバイデンを信頼し、好意的に見ている。バイデンの最も優れた点は、人びとに共感を示すことだ。

この恐怖に陥る国で、災害に直面する人々に、バイデンの欠点は重要な資質となった。コロナウイルスが、40年間も、政府は問題を生むもので、解決策にならない、と右派に聞かされていた国民に変化を生じた。

トランプは典型だ。連邦政府を焼き払う、とまでは言わないが、根こそぎにすると約束して当選した。彼は政府機関を削減し、その責任者を空席のまま放置し、あるいは、自分の仲間を指名して、「政府官僚」を敵とみなすFox Newsや右派ラジオの喝さいを浴びてきた。

しかし、今はどうだ? パンデミックにおびえる人々は、政府を破壊する声ではなく、政府の助けを求めている。好調なときは、「連邦政府職員」や「エリートの専門家」を攻撃すれば支持される。しかし、危機では、彼らこそが政府を動かし、人びとに安心できる対応を示す。

バイデンは50年間もワシントンに住む、政府のインサイダーである。それは彼の汚点ではなく、資産となった。

NYT March 6, 2020

Where’s Joe Biden’s Universal Child Care Plan?

By Bryce Covert

FT March 7, 2020

Joe Biden, last chance for a political veteran

Demetri Sevastopulo

FT March 7, 2020

At long last, the silent generation’s hour has come

Henry Mance

NYT March 7, 2020

If Joe Biden Wins

By Bret Stephens

FT March 9, 2020

A Biden presidency could not turn back the clock on Trump

Gideon Rachman

多くのヨーロッパ人は西側の同盟が復活することを願っている。トランプの大統領任期が気味の悪い脱線であった、とすぐに忘れられることも。そして、オバマの副大統領であったバイデンが、2017年の120日まで、大統領となって地政学的なカレンダーを巻き戻す。

そう考えるのは楽しいが、幻想でしかない。

トランプの大統領就任期間は、アメリカ自身と、その対外関係を、根本的に変えてしまった。アメリカ国内の政治的・社会的分断は、この4年間で野蛮な形に拡大し、回復することはむつかしい。逆に、共和党はトランプのネイティビズムと精神分裂病的な政治に従っている。たとえコロナウイルスの不況でバイデンが勝利しても、正統性を認めず、あるいは、ディープ・ステイトの陰謀とみなすだろう。

トランプはまた、米中関係を深く損なった。それはグローバルな秩序の根底にかかわる問題だ。トランプが大統領になる前のグローバリゼーションが回復することはないだろう。

NYT March 10, 2020

We’ve Been Looking in the Wrong Places to Understand Sanders’s Socialism

By Richard White

NYT March 10, 2020

Joe Biden, Not Bernie Sanders, Is the True Scandinavian

By Thomas L. Friedman

FT March 11, 2020

Biden versus Trump in the age of contagion

Edward Luce

選挙の争点は、コロナウイルス危機により、アメリカがイタリア化を防ぐことができるか、に変わってきた。どのようにパンデミックに対処するのか?

NYT March 11, 2020

How Joe Biden Wins It All

By Frank Bruni

NYT March 11, 2020

The Sanders Coalition Is Not Quite What We Thought It Was

By Thomas B. Edsall


 コロナウイルス・ショック論争

FT March 6, 2020

Business lessons from the Spanish flu of 1918

Tom Braithwaite

PS Mar 6, 2020

COVID-19 Trumps Nationalism

KEVIN RUDD

PS Mar 6, 2020

What COVID-19 Means for International Cooperation

KEMAL DERVIŞ , SEBASTIÁN STRAUSS

人類史において、危機と進歩はしばしば同時に起きた。コロナウイルスの脅威に対処するのは、第2次世界大戦において行われた国際協調の水準に等しい。これはグローバリゼーションとグローバル・ガバナンスの危機である。

2つの異なる政治的反応が起きるだろう。1つは、グローバルな相互依存を減らすことだ。行動を制限し、社会的・経済的なコストを生じる。これは戦術的な解決ではあっても、戦略的な問題は残る。目標は、グローバリゼーションをもっと危機に強くすることだ。

グローバルな「サーキットブレイカー」を導入する。グローバル・ガバナンスの制度に組み込み、明確で、透明なメカニズムとして、危機を予防する。また、システムを分散・多様化し、1つの失敗から全体が崩壊しないようにする。

大きな危機はラディカルな改革に対する政治的な許容度を高める。コロナウイルス危機は、その恐怖や損失が、グローバリゼーションを改善する努力を刺激する。

PS Mar 6, 2020

The Virus of Fear

IAN BURUMA

NYT March 6, 2020

Trump’s Calamitous Coronavirus Response

By Michelle Goldberg

NYT March 8, 2020

The Best Response to the Coronavirus? Altruism, Not Panic

By Richard A. Friedman

The Guardian, Mon 9 Mar 2020

Our social crisis is no longer just about inequality, it’s about life and death

John Harris

FT March 9, 2020

Act now to prevent coronavirus economic shock from spreading

Ray Dalio

PS Mar 9, 2020

Plagued by Trumpism

JOSEPH E. STIGLITZ

PS Mar 9, 2020

How Europe Should Manage the Coronavirus-Induced Crisis

DANIEL GROS

深刻なショックに直面したとき、政府・公共機関が行動しなければならない。しかし、コロナウイルスのショックに対しては、通常の金融・財政政策は効果がない。中央銀行と政府は、このことを国民に説明するべきだ。そして、公衆衛生の確保、家計の所得維持、金融システムの危機回避に全力を注ぐべきだ。

ユーロ圏が不況に陥る2つの展開に、マクロ政策は効果がない。すなわち、世界貿易の減少と、投資の減少だ。

PS Mar 9, 2020

Epidemics and Economic Policy

KAUSHIK BASU

コロナウイルスによる不況が迫っており、2008年の世界金融危機と同じように、中央銀行が対策の指導的な役割を担う、という期待がある。しかし、アメリカ連銀が金利を下げただけでは市場の混乱を招き、直後に株価はさらに下落した。

市場の乱高下は人々の確信を反映している。不安が増幅する自己実現的な恐慌になるだろう。

包括的な経済対策が必要だ。そのために、世界銀行やIMFのような国際機関が緊急タックスフォースを結成するべきだ。エコノミストたちだけでなく、医療から地政学まで、多彩な専門家を20人集めるC20だ。

C20は、たとえば1カ月と期限を決めて、危機の分析とグローバルな政策対応を示す。報告書には、政府と主要企業が採用する初期行動のリストで含まれるべきだ。そして、毎月、リストを更新する。

失われる需要は膨大だ。航空業界(IATAの推定で1130億ドル)、ホテル(ヒルトンは中国で150を閉店)、観光(中国人の観光支出は2018年に2770億ドル。それが半減する)など。

世界金融危機と違い、コロナウイルス危機は、需要を失うだけでなく、ある分野では価格を押し上げ、購入者を排除する。特に、医療サービスがそうだ。分野によって、需要を追加し、あるいは、需要を削減しなければならない。

また、多くの契約が「不可抗力」による履行停止になる。中国の場合、5000軒ほどの訴状があり、その額は538億ドルに達した。債権法規や裁判所がパンクしてしまう。政府、もしくはC20が、事態をシンプルに処理するための包括的な基準を示すべきだ。そのためには、レオン・ワルラスや、アローとドブリュー、アマルティア・センの「エンタイトルメント」研究が有益である。

PS Mar 9, 2020

The US Federal Reserve’s Debt Purchases Are a Warning

DAVID AHN, ROBERT H. DUGGER

FP MARCH 9, 2020

An Economic Pandemic

BY KEITH JOHNSON

FP MARCH 9, 2020

Truth Has Become a Coronavirus Casualty

BY SUZANNE NOSSEL

FP MARCH 9, 2020

The Coronavirus Is Putting Globalization in the ICU

BY STEPHEN M. WALT

国際政治におけるリアリストのアプローチが、コロナウイルスのようなパンデミックについて、何か特に注目してきたわけではない。しかし、ツキディデスがペロポネソス戦争の歴史を書いたとき、重要な背景として、BC430年にアテネを襲った疫病があった。歴史家たちによれば、ペリクレスのような指導者を含めて、アテネの人口の3分の1が犠牲になった。それはアテネの長期的な国力を損なった。

リアリストがコロナウイルス・ショックについて主張する第1の命題は、国家が世界政治を動かす主要なアクターである、ということだ。市民たちは、皆、重要な情報と対策を国家に求めている。「パンデミックに直面した世界に、リバタリアンはひとりもいない。」

2に、コロナウイルス・ショックによって、異なる体制の長所と短所が顕著に示される。中国やイランが示すように、権威主義的な体制は資源の動員や野心的な対策を採る点で優れている。しかし、それは権力の頂点にある者が事態を正しく認識できるときだけである。

民主主義体制の方が情報を情報の自由に交換できる。それゆえ、問題の出現を早く察知するだろう。しかし、対策を決めて、迅速に実行する点で、民主主義に問題が生じる。ニューオーリンズを襲ったハリケーン・カトリーナ、プエルトリコを襲ったハリケーン・マリアに、アメリカ政府が対処し損ねたケースがそれを顕著に示した。

ドナルド・トランプは、専制体制の最悪の特徴と、民主制の最悪の特徴を合わせて表現している、とNYTのコラムでMichelle Goldbergは指摘した。トランプは、コロナウイルスの被害を全く軽視した。科学者たちの評価を否定あるいは無視し、地方政府と争って、連邦による効果的な協力を損ない、3年も前にオフィスを追い出された前任者たちを責めた。分裂した民主国家の頂点に独裁的な指導者を置いて、非常事態に直面したらどうなるか。これは予想された列車事故だ。

どうすればよいのか? リアリズムが与える解決策は少ない。

1.競争的な世界では、国家が他国の行動を注意深く監視しており、優れた対応があれば、それを直ちに模倣する。時間とともに、グローバルな最適対策が形成されるだろう。国家間で情報が交換され、自国に有利な方法で、それを利用し、政治的な問題にしなければ。

2.効果的な国際協力は、この場合も、むつかしい。規範や制度があることは有益だが、国債卿旅行はいつも非常にもろい。他国が約束を守らない、自国より他国に有利である、不当に大きなコストを自国が強いられる、というような議論になるからだ。

3.コロナウイルスが速やかに消滅しなければ、グローバリゼーションの逆転が起きるだろう。過去の10年ほどが示したように、楽観論は後退した。ますます多くの人が、貿易、成長、開放性よりも、自律と自分たちの生活スタイルを優先するようになった。

コロナウイルスがグローバリゼーションを否定する新しい理由に加わった。ハイパーグローバリゼーションは、金融システムを壊れやすくしたし、雇用の流出を政治問題にした。もはやグローバリゼーションの上げ潮は過ぎたのだ。国家間の境界はさらに高くなるだろう。

FT March 10, 2020

Coronavirus risks the return of currency wars

Robin Harding

コロナウイルスによる需要の落ち込みは不況を回避するための積極的な財政・金融政策を必要としている。その際、協調して刺激策を取ることが重要だ。

理想の世界では、すべての中央銀行がこの危機に対処する。健全なインフレ水準と金利は5%を超えている。需要の落ち込みに対して金利を下げるだろう。政府は目標を絞った支援策を実施する。ウイルスの影響によって諸国間の為替レートがいくらか変動するとしても、世界的な経済的緊張は生じない。

残念ながら、現実には、各国の経済状況・政策余地が異なっている。豊かな世界、特に日本とユーロ圏で、金利はゼロかマイナスであり、大規模な資産購入を続けている。政策余地はゼロに近い。アメリカには1.5から1.75%の引き下げ余地がある。メキシコは7%、ロシアは6%など、大きな引き下げ余地を持つ国もある。

すでにアメリカ連銀の金利引き下げは、ドル安と、それゆえ日本やユーロ圏の通貨価値を高めて、その経済にデフレ的な影響を及ぼした。あからさまな通貨戦争ではないが、互いの金融政策を介した通貨戦争が始まってしまう。パウエル議長が日本やヨーロッパと協議したことは重要だ。たとえ金利や財政刺激策の国際協調がむつかしくても、連銀は中央銀行間のスワップを組んでドルを供給し、対立を回避するべきだ。

かつて日本は、円高が100円の水準を超えて輸出に影響することを強く嫌い、介入した。アメリカが金利をゼロに下げるのは、日本やユーロ圏にとって大きな問題となる。ただし、コロナウイルス危機が投資家による「安全への逃避」を促せば、逆にドルが強くなる。

財政刺激策も、ユーロ圏ではドイツが消極的である。EUを離脱するイギリスが大規模な刺激策を取るかもしれない。その場合、イギリスには大幅な貿易赤字が生じて、離脱条件の交渉をむつかしくする。

重要な問題は、トランプ大統領の反応だ。もし選挙前に、通貨戦争によるアメリカの貿易赤字が増えていると思えば、大統領はその性格に従い、厳しい関税措置で対抗するだろう。

G20は各国に財政刺激策の目標を定め、政府が、学校閉鎖で仕事に行けない労働者たち、取引の急激な減少で支払できない中小企業を、支援するよう、求めねばならない。輸出を伸ばすことではなく、自国経済の支援が重要だ。

ウイルスと直接に戦う国だけでなく、世界が経済を支えるために協力することで、安定化と急速な回復を促すことができる。

FT March 10, 2020

Comprehensive testing is key to controlling coronavirus

PS Mar 10, 2020

The Wealth and Health of Nations

WILLEM H. BUITER

コロナウイルスの破壊的な影響を考えるとき、私たちは、富をもたらす源泉についてアダム・スミスが示した洞察に戻るべきだ。それは社会的分業であり、その程度は、市場の規模と広がりである、という。人びとは病気になり、その恐怖からも、消費を減らす。他方、重要なサプライ・チェーンが停止する。

スミス的なマイナスのサプライ・サイド・ショックと、ケインズ的なマイナスのデマンド・サイド・ショックが起きるだろう。金利や政府支出でそれを緩和するとしても、世界経済は深刻なシナリオに直面する。景気後退というより、不況である。

PS Mar 10, 2020

COVID-19 by the Numbers

ANATOLE KALETSKY

PS Mar 10, 2020

Coronanomics 101

BARRY EICHENGREEN

先週のG7会合では「あらゆる政策手段を用いて」経済への影響を抑え込む、と宣言した。しかし、コロナウイルス危機に対して、何をするべきか、何が役立つのか?

アメリカ連銀は迅速に行動した。しかし、他の主要な中央銀行と協調できなかった。それが、必要な、一貫したメッセージにならなかった理由だ。

金融政策はサプライ・チェーンを回復するものではない。問題は、金融の流れが止まった2008年と違うからだ。今は、生産が突然停止したのである。金融緩和は、隔離された工場を再開できないし、感染を心配する消費者が買い物し、旅行者が再び飛行機を利用することもない。

今起きている問題は、金融緩和で緩和できないものだ。たとえ低金利でインフレになる心配がないとしても、実体経済を刺激することは期待できない。

同様に、財政政策の効果も限られる。減税策で、労働者の健康問題や病気の広がりで止まった生産を再開させることはできない。消費者が好きなファーストフードの安全性を心配しているとき、消費税を減税しても効果がない。

優先すべきは、感染者の検査、ウイルスの封じ込め、病気の治療である。そのためには行政の効率が重要だ。感染状況と死亡者の報告は透明かつ正確でなければならない。そのためには中央銀行のような独立した機関が望ましいが、トランプのような指導者はそれを好まない。

しかし、財政支出や金融緩和は痛みを和らげる。イタリア政府は、納税や住宅ローンの支払いを延期した。中小零細企業に減税を拡大した。アメリカはもっと人々が感染チェックを受けるように、費用を政府が負担するべきだ。

財政刺激策は、その効果が外国に漏れる問題を解決する必要がある。2009年にはG2で協調した。しかし、最近のG7競争声明には欠けていた。これ以上の金融緩和は生産的でないという反対もある。財政再建のタカ派は、すでに財政が大幅な赤字であることを理由に反対する。世界不況に直面しているとき、そうした議論は間違いだ。

経済政策の効果は限定的だが、公衆衛生の分野に資源を十分に与え、国際的な協力体制を築くことで経済の安定化を推進できる。

Mainly Macro, Monday, 2 March 2020

The economic effects of a pandemic

Simon Wren-Lewis

FT March 11, 2020

Coronavirus puts worker rights and protections top of the agenda

Brooke Masters

FT March 11, 2020

Coronavirus and the comeback of the administrative state

Janan Ganesh

NYT March 12, 2020

Pandemics Kill Compassion, Too

By David Brooks


(後半へ続く)