(前半から続く)


 権威主義体制

PS Feb 28, 2020

Liberal Democracy and Its Enemies

CHRIS PATTEN

リベラルな民主主義の失敗は、政治におけるポピュリズムに広まりに現れている。1930年代の経験を思い出すことは、今こそ必要だ。

FP MARCH 1, 2020

The End of Eastern Europe’s Great Liberal Hope

BY PAUL HOCKENOS

The Guardian, Tue 3 Mar 2020

The crisis of the centre-right could rot the European Union from within

Jan-Werner Müller

権威主義的な政権に対して強い対抗措置を取らず、むしろ補助金や投資を行い続けている。それは欧州議会の中道右派勢力がハンガリーやポーランドの与党を仲間に入れているからだ。

「ヨーロッパ」に参加することは、かつて、権威主義の復活を抑える防波堤とみなされた。しかし、ハンガリーとポーランドの人びとは、権威主義的な政府のもとにあり、ヨーロッパに裏切られたと感じている。結局、ヨーロッパの中道右派の危機は、その内部から生じている。


 アフガニスタン和平

NYT Feb. 28, 2020

How Afghans Can Work Together to End the War

By Aref Dostyar

FP MARCH 2, 2020

The United States Wants Peace. The Taliban Wants an Emirate.

BY ANCHAL VOHRA

FT March 3, 2020

A fragile peace accord in war-scarred Afghanistan

PS Mar 3, 2020

How Not to Leave Afghanistan

RICHARD N. HAASS

これはアフガニスタン政府を含まない、タリバンとアメリカ政府との合意である。タリバンの姿勢は武装解除されず、恒久的な政治的安定に至る道も含まれてはいない。選挙、権力の分担、憲法、そして、信仰の自由や女性の権利。こう言ったことは約束されない。

アメリカはアフガニスタン政府に、別の合意を結ぶ。米軍が撤退する条件に関してだ。米軍が残ることが、タリバンが約束を守るように、圧力となる。そしてアメリカは、アフガニスタン政府に、経済、外交、諜報、軍事の、長期的な支援を約束する。

アメリカは、最小限の重要な目標に戻った。それは、アフガニスタンがテロ組織の温床になるのを阻止することだ。そのために米軍は駐留し続ける。財政的な負担は、アメリカにとって必要である。

NYT March 4, 2020

An Afghan Bargain Likely to Fail

By Susan E. Rice

FP MARCH 4, 2020

U.S.-Taliban Peace Deal Under Fire

BY STEFANIE GLINSKI

FT March 5, 2020

Donald Trump is cutting the knot with Afghanistan

Edward Luce

タリバンは、交渉のための時間と有利な条件をすべて持っている。厳しい言葉を吐く不動産業者のように、タリバンはトランプが戻れないと知っている。トランプは米軍を削減し、逃げ出すと約束したからだ。

トランプは、ほかに良い案はない、と言うだろう。

これはいつもの政治ショーだ。米軍は撤退し、タリバンの捕虜を釈放する。それと交換に、タリバンはテロを否定し、弱体な、交渉を嫌っているアフガニスタン政府と話し合うことに合意する。

タリバンがカブールを支配するのは時間の問題だ。

911を記念し、トランプがキャンプデーヴィッドにテロ集団の指導者を招待したことで、ジョン・ボルトンが辞任した。しかし、交渉は6カ月遅れたが、選挙まで8カ月しかない。トランプはこれ以上の遅れを受け入れられない。

問題は、この汚れた合意を投票日までタリバンが守るか、ということだ。

トランプはこの米軍撤退を、和平合意として売り込む必要がある。ワシントンの外では、その中身に関心がない。昨年、シリア北部でクルド人部隊を見捨てたときも、トランプはその代償を支払わなかった。バイデンも、サンダースも、海外からの米軍撤退を批判することはないだろう。

しかし、世界はアメリカ外交を観ている。

かつてオバマが増派で失敗したとき、故リチャード・ホルブルックを特使に任じ、地域外交を任せた。ホルブルックは、ロシア、イラン、パキスタン、インド、中国を含む協定で、安定と不干渉を実現しようとした。

それはアメリカにしかできない長期の外交戦略だった。残念だが、オバマはホルブルックの話を聞かず、トランプにはホルブルックも、外交を行う忍耐もない。

アメリカの失敗は、他国の民が血で支払う。


 日本

FP FEBRUARY 28, 2020

Japan’s Economy May Be Another Coronavirus Casualty

BY WILLIAM SPOSATO

FT March 4, 2020

Experience with disasters helps Japan Inc adapt to coronavirus outbreak

Kana Inagaki in Tokyo

PS Mar 4, 2020

Will American Populism Damage Japan?

YOICHI FUNABASHI


 モディのイスラム教徒差別

FT February 29, 2020

Narendra Modi is taking India down a dangerous path

FP MARCH 2, 2020

Why India’s Muslims Are in Grave Danger

BY RAVI AGRAWAL


 EUUK

FT March 1, 2020

The UK’s threat to walk out of EU trade talks is real

Wolfgang Münchau

The Guardian, Mon 2 Mar 2020

Europe (and yes, that includes Britain) can still be a superpower

Timothy Garton Ash

ヨーロッパの指導者がかつて、EUは超国家ではないが、スーパーパワーになるべきだ、と主張した。中国、AI、ロシア、中東、トランプの世界で、自らスーパーパワーになるしか生きることはできない。失敗すれば、バラバラの小国として自滅する。

どうやってスーパーパワーになるのか? 多数決原理を導入せよ、という。しかしそれは、超国家になることを意味し、間違いだ。多数の人民、多数の政府の中で、多数決は成立しない。

ではどうやって? それはイラン外交でやっているように。独仏英、主要3カ国がE3イラン外交を形成し、他のヨーロッパ諸国に参加を促す。超国家への改革は必要ない。

戦略思考を共有するために、国益の収れんを意識し、政治的な意志を高めることである。

FT March 2, 2020

Brexit solved with the sword of Damocles

Gideon Rachman

The Guardian, Tue 3 Mar 2020

Boris Johnson’s bluster on Brexit is about to face reality

Rafael Behr


 プラットフォーム企業への監視・規制

FT March 1, 2020

EU should regulate Facebook and Google as ‘attention utilities’

Tristan Harris

欧州委員会はデジタル・テクノロジーのプラットフォームに関する明確な規制を行う機会を逸した。

ソーシャルメディア・プラットフォームは、今や、われわれが共有する真実や社会関係を構築する仕方を仲介している。「関心抽出」ビジネスは、広告業や政治家に、個人や公共の議論を操作する高度に洗練された技術を販売している。子供や10代の若者たちには特に危険である。

意見の分極化が顕著に広がり、過激な主張、フェイクニュース、有毒な部族主義が、主要なデジタル・プラットフォームによって増幅されることを示す兆候がある。ハイテク企業は、市民の関心を離反させ、分断し、激怒させており、共通の基礎が失われている。それは民主主義に対する直接的な脅威である。

諸国が物理的な境界を警備しても、デジタルな境界線は広く開放されたままである。70か国以上で、情報操作による選挙妨害、住民投票の結果をゆがめ、独裁的な政治家の当選につながるケースが見られる。ロシアの戦闘機が領空を侵犯すればNATO軍に直面するが、EUを分断し、破壊する情報は自由に流せる。

Google, Facebook and YouTubeのようなプラットフォームはデジタル時代の公共インフラである。電話、鉄道、電力供給システムと同じように扱うべきだ。

1に、巨大な、支配的ソーシャル・プラットフォーム・ビジネスを定義する。第2に、その収益を広告や関心抽出によるのではなく、毎月の利用料金を徴収するシステムに転換させる。第3に、関心抽出は「ソーシャル・インパクト評価」を受けねばならない。その新製品が精神衛生、社会的孤立、フェイクニュース、分極化、民主主義に与える影響の点で評価される。最後に、EUは業界を監視・規制する機関を創設する。


 ジョー・バイデンの勝利

FT March 1, 2020

Joe Biden: the comeback grandpa

Edward Luce

NYT March 2, 2020

Democrats, if We Remain Divided, We’ll Fall

By Robert E. Rubin

NYT March 3, 2020

Forget Super Tuesday. It’s the Day After That Matters.

By Thomas L. Friedman

もしサンダースが民主党の候補になれば、すなわち、左派ポピュリストのサンダースと右派ポピュリストのトランプが対決すれば、サンダースは勝つかもしれないが、彼の妥協しない「民主社会主義者」の理念は何一つ実現しないだろう。

そして、おそらくサンダースは敗北し、トランプが大統領、上院、最高裁を手に入れるだろう。この国が助かる望みはない。

私は空想する。スーパーチュ―ズデイの翌朝、ペロッシ、シューマー、オバマ、そしてビル・クリントンが、バイデン、ブルームバーグ、ウォレンを議会へ招待する。そして、1人の候補に絞るまで、鍵をかけて彼らを閉じ込める。民主党中道左派の多数を代表する人物が、正々堂々と、バーニーと闘うのだ。

FT March 4, 2020

Biden’s surge proves the resilience of the political centre

Janan Ganesh

FT March 5, 2020

The stunning resurrection of Joe Biden

Edward Luce

バイデンの勝利は候補に指名されるまで勢いを保つだろうか?

2つの点が明らかである。第1に、トランプとその選挙マシーンは、サンダースを指名させるために、バイデンを倒そうとする。ハンター・バイデンのウクライナ・スキャンダルが再燃する。

2に、民主党の新しい標語は「品格decency」である。「尊厳」や「共感」という意味も含む。サンダースは民主党を急速に左派に傾斜させた。バイデンの経済政策や気候変動に関する姿勢はオバマ政権の左派であった。

しかし、新しい標語「品格」が意味することは、火曜日の勝者がバイデンで、敗者はウォレン、ブルームバーグ、そしてもちろん、トランプであるということだ。

NYT March 4, 2020

Restoration and Reform, or Revolution?

By Charles M. Blow


 エルドアンとシリア

The Guardian, Mon 2 Mar 2020

Erdoğan is reaping what he sowed: Turkey is on the brink of disaster in Syria

Simon Tisdall

FT March 4, 2020

A war of attrition in north-west Syria is spiralling out of control

David Gardner

シリアのイドリブ県をめぐるシリア軍とそれを支援するロシアが、エルドアンが描く緩衝地帯を守るトルコ軍とが、双方に死者を出し、急速に戦争状態に突き進んでいる。

FT March 4, 2020

Erdogan’s pivot to Putin has left Turkey weaker

FP MARCH 4, 2020

Turkey Is Forcing the West to Look at Idlib

BY MUHAMMAD IDREES AHMAD

The Guardian, Thu 5 Mar 2020

The humanitarian crisis in Turkey shines a light on Europe’s failures

Elif Shafak

FT March 5, 2020

Europe must stand with Turkey over Putin’s war crimes in Syria

George Soros


 コロナウイルス・ショックと1970年代

PS Mar 2, 2020

That 1970s Feeling

KENNETH ROGOFF

コロナウイルスの長期的な結果はまだ予想できないが、次の世界不況が迫っていることは十分に予測できる。

中国は高度な債務依存経済であり、1980年代の日本のバブル景気に劣らず、維持することはむつかしい。人口学的な制約(高齢化、労働者不足)、技術的キャッチアップの終わり、景気刺激策を続けた後の住宅の過剰。

しかも新しいコロナウイルスの不況では、需要の減少と供給ショックが同時に起きる。1970年代半ばのオイルショックを思い出す必要がある。封鎖や恐怖によって人々が仕事に行かず、国境が遮断されて、グローバル・バリュー・チェーンが分断される。

全般的な供給が不足し、デフレではなく、インフレが高まるだろう。インフレを抑え込む条件は整っている。しかし、それは数十年間のグローバリゼーションが前提だ。貿易摩擦に加えて、ウイルスのパンデミックが、価格上昇の圧力を生むだろう。

またウイルスが襲う前から、世界経済は減速し始め、多くの国が過剰な債務を負っていた。過去のように、人びとは命の危険を冒しても働きに行くほど貧しくない。武漢で起きたことがそれを示す。中国政府は武漢そして湖北省を、事実上、封鎖した。そして5800万人に戒厳令下で外出を禁止し、食糧と水を供給したのだ。それはすでに6週間におよぶ。

世界不況の見込みは急速に高まっている。金融緩和と財政刺激策だけでなく、グローバル・サプライ・チェーンの対策も必要だ。最も効果的な緊急の緩和策は、アメリカが貿易戦争の障壁を解除することだ。そして、中国政府の協調姿勢とともに、アメリカ消費者のポケットに資金を給付する。

世界不況は、、分断ではなく、協力を求めている。

FT March 4, 2020

The seeds of the next debt crisis

John Plender in London


 中国とコロナウイルス・ショック

NYT March 3, 2020

China’s Coronavirus Crisis Is Just Beginning

By Geremie R. Barmé

PS Mar 4, 2020

Will the Coronavirus Topple China’s One-Party Regime?

MINXIN PEI


 ギリシャ経済

The Guardian, Wed 4 Mar 2020

Here’s why Greece’s economic ‘recovery’ has been good news for no one but the rich

Yanis Varoufakis


 エリザベス・ウォレン退場

NYT March 4, 2020

Maybe Next Time, Ladies

By Michelle Cottle

NYT March 5, 2020

Elizabeth Warren Was the Wrong Kind of Radical

By Timothy Shenk

FT March 6, 2020

Elizabeth Warren ends US presidential campaign

Lauren Fedor in Washington

ウォレンは金融消費者保護局を創設し、「大規模に、構造的に改革する」という公約で選挙運動を進めた。彼女は多くの選挙公約を並べ、「それを実現するプランがある」と繰り返し述べた。その1つが、5000万ドル以上の資産に2%を課税する資産税だ。

彼女は選挙戦を退くとき、「後悔していない」と述べた。

10年前、私はここから数ブロック離れた場所で、アメリカの何が壊れているのか、どうやって治すか、教えていたし、話したが、だれも聴いてくれなかった。」

2セントの富裕税で国民全体の児童手当、学生ローンの免除、社会保障の引き上げができる。

しかし、彼女の選挙運動は、サンダースの主張する「国民皆保険」の財源を説明するよう求められて、支持者が減り始めた。

私は、2つの道しかない、といわれた。革新派はバーニー・サンダース、穏健派はジョー・バイデンだ。私はそれが正しくないと思ったが、間違いだった。


 核拡散防止条約

NYT March 5, 2020

Can 50 Years of Minimizing Nuclear Proliferation Continue?

By Ivo H. Daalder

******************************** 

The Economist February 22nd 2020

Big tech’s $2trn bull run

The Bundesbank and the ECB: Couples therapy

Japan’s economy: Typhoon, pestilence and tax

The coronavirus epidemic: Casualties of war

Voting in Africa: Why the young and rich vote less

Arab states and the IMF: A bit too austere

The data economy: Mirror worlds

Apple in China: Red plateau

Cross border capital flows: Following the money

(コメント) パンデミックが起きる前に世界が最も強く懸念し、期待していたのは、ヴァーチャル世界のデータ独占企業が現れていることであった。GAFAMicrosoft、中国のIT大企業である。その資本規模が、アメリカ市場だけで、およそ2兆ドルだ。

特集記事は、現実生活が、ますますデータの交換や集積によって改善されるようになっており、技術革新を決定するのもデータである。ところが、このデータをどう扱うべきか、人間は正しく決めることができないままなのだ。情報を生み出すの和私たちだ。情報によるシステムは無限にコピーできる。しかし、情報を正しく保持し、交換するためのシステムを維持するのが誰か。

記事は、データを1.石油、2.太陽光、3.インフラ、とみなすアメリカ、中国、EUの議論に注目して、その姿勢の違いを明らかにする。データをめぐるナショナリズムが起きる中で、3つの異なるモデルが競い合っている。

他の記事も興味深いです。ドイツ連銀とECB、日本の景気悪化、アフリカにおける低い投票率、アラブ諸国へのIMF融資、中国とアップル、国境を越える資本移動が利用するタックスヘイブンの不透明さ。

******************************

IPEの想像力 3/9/20

コロナウイルス・ショックと世界金融危機を、同時に、経験するのでしょうか? そして、20年間の不況と、国際秩序の不安定な時期を迎える。

ドナルド・トランプやボリス・ジョンソンが政治のトップにあるとき、これらの深刻な事態を回避するために政府がすべきことは何か、答えを示す気があるのか。

私は、中央銀行がこれ以上に金融緩和を過激化することに、積極的な意味を見出せません。すでに金利はゼロかマイナスになっているのですから。

私は、政府が国民1人ずつに10万円や20万円を支給することが、積極的な解決につながるとは思えません。

伝染病の蔓延と生産システムが混乱していることに、貨幣を供給しても意味がないと思うからです。

コロナウイルスに対する検査の確立、ワクチンなど、治療法の普及で、パニックと買いだめ、空港や都市、学校の封鎖を求めない、市民的秩序を回復することが最重要な目標です。

ベーシックインカムより、子ども食堂への直接給付の方がよいでしょう。

ヘリコプター・マネーより、公共事業による雇用の拡大を今すぐに始めることです。

長期的な繁栄をもたらすために、本当に必要なことを見極めて、地方政府や各地域の自治会が人を雇用することに公的資金を提供してはどうでしょうか? そのために各主体が10年満期の債券を発行し、政府が管理して、中央銀行が融資します。

質的量的緩和の出口がないまま、日銀が非常時を理由に株や債券、土地の購入を増やし、金融危機の条件を積み重ねるのではなく、むしろ債務累積の出口につながる方策と組み合わせて実行することが求められるでしょう。

円高やデフレを恐れて金融政策をゆがめるより、アベノミクスをやめて、日銀は新政府と協力して、円高や輸入の急増を抑制し、各地域の雇用計画に大規模に融資する、と発表してほしいです。地方の経済や生活環境を都市に負けない状態に改善するため、公共投資と雇用ができることは多くあるでしょう。

原発の廃炉計画を進め、再生可能エネルギーで経済活動が維持できるように、太陽光、風力、地熱エネルギーのプロジェクトに投資することは重要です。

金融グローバリゼーションに対するポピュリストの反乱をテーマにした本を書きました。コロナウイルスがまだ出現する前に。そして、グローバリゼーションやコミュニティーの在り方を自分たちで決める民主的な仕組みを発見してほしい、と願った結びで、もうすぐ出版されます。

グローバリゼーションを逆転する動きと、それに代わるものが見いだせず、さまざまな過激な改革案が衝突する時代に入ると思います。私の予想など一気に飛び越えて、国境は閉鎖され、政治や国家の姿が変わり始めています。

******************************