IPEの果樹園2020

今週のReview

3/9-14

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トランプとコロナウイルス ・・・民主党大統領候補争い ・・・コロナウイルス・ショックへの対応 ・・・権威主義体制 ・・・アフガニスタン和平 ・・・モディのイスラム教徒差別 ・・・プラットフォーム企業への監視・規制 ・・・ジョー・バイデンの勝利 ・・・コロナウイルス・ショックと1970年代 ・・・エリザベス・ウォレン退場

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 トランプとコロナウイルス

NYT Feb. 27, 2020

When a Pandemic Meets a Personality Cult

By Paul Krugman

これがトランプ政権の対策である。コロナウイルスは、アメリカにとって良いことだ。また、それはニュースメディアや民主党がばらまいた戯言だ。たいしたことではないから、もっと株を買うべきだ。いずれにせよ、ウイルスは指導者の管理下にある。この指導者は科学を信じない。

ドナルド・トランプが当選して以来、われわれは心配だった。この政権は危機に対応できるのか? 幸い、今まで深刻な問題は起きなかった。自作自演のイラン危機を除けば。しかし、コロナウイルスはまさに恐れていたものかもしれない。

トランプのパンデミック対策は数年前に始まっていた。就任してすぐに、トランプは疾病管理予防センター(CDCP)の予算を削り始めた。グローバルな疾病の発生に対してCDCPが投入できる資源は80%も削減された。またトランプは国家安全保障会議のグローバル・ヘルス・セキュリティー部門を完全に閉鎖した。

2年以上も前に、CDCPの尊敬された前所長であるTom Friedenは、「われわれは微生物が上陸するままに放置されている」と断言した。しかしトランプ政権は、安全保障の脅威がどこから来るか、先入観を持っていた。非白人(ブラウン・ピープル)を恐れ、科学を敵視する。

そんなアメリカへ、コロナウイルスはやってきた。

トランプ信奉者たちの最初の反応は、ウイルスは中国の問題だ、であった。中国にとって悪いことは何でも、アメリカにとって良いことだ。商務長官Wilbur Rossは、これで「アメリカに雇用が一層早く戻ってくる」と喜んだ。

2014年に、右派の政治家とメディアは疫病の発生を政治的な武器に利用した。オバマ政権がエボラ・ウイルスの対策で失敗している、とトランプ自身も100回以上ツイートした。(実際の対応は効果的だったが。)

コロナウイルスを風邪と思っているかもしれないが、それは違う。むしろ1918年のスペイン風邪に近いだろう。5000万人が死亡した。

金融市場は、これがデタラメとは思っていない。木曜日の午後までに、ダウは先週から3000ポイント以上も下げた。急落で政権は、人々が死ぬことを恐れている、と思った。政権の主席エコノミストが、ウイルスは封じ込められた、と宣言した。もっと株を買うべきだ、と。それはCDCPの見解と矛盾していた。市場の下落は続いた。

トランプは政権の疾病対策における指導者を発表した。マイク・ペンス副大統領だ。医療の専門家がトップではなくなり、何でもペンスの許しが要る。

ペンスの経歴は、公衆衛生の特別な立場を示す。彼は、たばこで人が死ぬことはない、と宣言した。また繰り返し、進化論はデタラメだ、と述べた。インディアナ州知事のとき、彼はHIVの感染拡大を防ぐのに有効なプログラムを阻止し、その代わりに祈りを主張した。

トランプの危機対策とは、全く自分本位の、アメリカ国民ではなくトランプを守るために行われる。事実がトランプにとって良く見えないなら、彼とその同盟軍はメッセンジャーを攻撃し、メディアと民主党を非難する。そして科学者がわれわれに情報を与えないようにする。

FT February 28, 2020

Donald Trump’s populist genius even extends to his revolting diet

Wendell Steavenson

PS Mar 5, 2020

From Dreyfus to the Donald

NINA L. KHRUSHCHEVA


 民主党大統領候補争い

NYT Feb. 27, 2020

No, Not Sanders, Not Ever

By David Brooks

NYT Feb. 28, 2020

Bernie Sanders Can Beat Trump. Here’s the Math.

By Steve Phillips

FT March 2, 2020

Generation Z’s chance to win the race for the White House

Patti Waldmeir

2020年の選挙はアメリカ史上の前例がないものだ。ベビーブーマー世代が40%を切るだろう。それは2000年には68%であった。他方、私の子どもはZ世代である。それは世論調査機関の定義によると18歳から23歳の若者たちだ。2016年には4%だったが、10%に達する。Z世代はより多様で(白人は55%でしかない)、それゆえ、ベビーブーム世代より、民主党に投票する者が多い。

FT March 2, 2020

US election may turn on voters’ view of inequality

Megan Greene

2016年に、ドナルド・トランプが大統領になったとき、彼はアメリカの過去数十年の傾向を逆転させる、と約束した。すなわち、豊かな者がますます豊かになり、貧しいものは取り残される。

先月の一般教書演説で、トランプは家計所得の中央値が今までにない高さにあると自慢した。所得の中央値は景気回復時に上昇するのが普通だ。それは所得水準の異なる階層に何が起きているかを示していない。

トップ10%の富裕層は、今なお、中央値に対する比率を上昇させ続けている。

低所得層の賃金が上昇しているのは、連銀が労働市場の均衡を高水準で保ち、失業者を取り込んできたからだ。州・市の最低賃金引き上げも重要だった。

賃金は所得の1つでしかない。議会予算局(CBO)の推定によれば、トップ1%のアメリカ全所得に占める比率は、19797.5%201612.5%、そして2021年には推定13.4%に上昇する。

3人のエコノミストThomas Piketty, Emmanuel Saez and Gabriel Zucmanは、不平等がもっと悪化していると考える。彼らの推定では、トップ1%のシェアが19799.1%201415.7%である。異なる推定もある。Gerald Auten and David Splinterは、税と移転を考慮すれば、19797.2%20148.6%であるという。

最もよく知られたジニ係数を観れば、CBOは、アメリカのジニ係数が19790.404から20180.486になった、という。完全な不平等でゼロ、完全な平等では1になる。

世論調査は、アメリカ人の10人に6人は、経済の不平等があると回答するが、10人に4人しか不平等の抑制を政策の優先課題にするべきだとは考えていない。過去の所得を超えることの方が、超富裕層との比較よりも重要なようだ。

トランプの再選は労働市場における需要の強さによるだろう。多くのアメリカ人は「アメリカン・ドリーム」を信じている。

しかし、2018年の調査では、子供たちがその親たちよりも豊かになる、と思ったのはわずか33%だった。トランプの批判者たちは、不平等の問題に取り組まねば将来は暗いだろう、という。

11月の選挙では、どちらが支持されるのか。

PS Mar 2, 2020

The Venezuela Card in the US Election

RICARDO HAUSMANN

FP MARCH 2, 2020

Grow Up About Dictators, America!

BY STEPHEN M. WALT

民主党大統領候補者指名争いは、候補者たちの独裁者に対する姿勢が最低水準になった。サンダースは、かつてフィデル・カストロが教育水準の向上に成果を上げたことを称賛したことについて謝罪し、ブルームバーグは、習近平が「独裁者ではない」と述べたことについて、謝罪した。

こうした独裁者に対する非難を繰り返すのは、アメリカがいまだに誰かの道徳に関して、何か重要な約束に関して病的にふるまう状態が続いているからだ。

道徳的な考え方は外交にとって無意味である。そんなリトマス試験紙を民主党が大統領候補に求めるのは、「素人的なアメリカの大国外交」である。そのような言及は自分の行動や現実と矛盾するしかない。また、外交問題を国内政治の延長で判断してしまう。

不完全な世界において、道徳的な好みと現実とが、避けがたい緊張を生じることを認める。それは、自国の安全保障を損なったり、状況をさらに悪化させるようなことを避けて、道徳的な好ましさを前進させることを求める。しかし、トランプがそうするように、道徳的な考慮をすべて放棄することもある。あるいは、民主党大統領候補の討論のように、薄っぺらな非難や中身のない怒りを示すことになる。

どうすれば、中国がウイグル自治区で強制的に政治教育するのを阻止できるか? 核管理の前進と交換に、北朝鮮を外交的な公認することができるのか? 考えてほしい。

PS Mar 4, 2020

What Is a Moral Foreign Policy?

JOSEPH S. NYE, JR.

NYT March 4, 2020

Bernie Angry. Bernie Smash!

By Jennifer Finney Boylan

FT March 5, 2020

Wealthy Americans need not fear Bernie Sanders’s love of Nordic socialism

Martin Sandbu

NYT March 5, 2020

How Bernie Sanders Can Still Win It All

By Elizabeth Bruenig

NYT March 5, 2020

Bernie Sanders Is Going for Broke

By Paul Krugman


 ロンドン対地方

The Guardian, Fri 28 Feb 2020

If the regions are to rise, London must take a hit

Simon Jenkins


 長寿に対する社会改革

FT February 28, 2020

The world must wake up to the challenge of longer lifespans

Camilla Cavendish


 コロナウイルス・ショックへの対応

PS Feb 28, 2020

A Pandemic of Deglobalization?

HAROLD JAMES

コロナウイルスCOVID-19の流行は、長期的に考えると、個人、企業、政府でさえ、複雑なリスクに関する契約への需要を生じさせるだろう。そのようなリスクに対する保険を組み込んだ金融商品がバブルにつながる。

歴史がその例を示すからだ。1635年から37年までのオランダで起きた「チューリップ・バブル」がそうだ。チューリップのマニアが現れた時期は、致死率の高い疫病が流行した時期でもあった。それは30年戦争に参加した軍隊から広がった。

チューリップの球根に投資が殺到したのは、相続人が疫病の犠牲になることを恐れたからだ。チューリップは一種の先物市場として機能した。それはまた、複雑な契約の産物だった。

不確実な、世紀末的情勢が金融的な投機をもたらした。それは同時に、むき出しの物質的な享楽主義の条件でもあった。無神論的な奢侈、外国のエキゾチックな魅力。チューリップはもとはオスマントルコから伝来した。そして各地の排外主義やナショナリズムに至った。

黒死病が中世の繁栄を終わらせたように、COVID-19がグローバリゼーションの時代を終わらせる。

NYT Feb. 28, 2020

The Fed Can’t Save Us From Coronavirus

By Binyamin Appelbaum

株価が下落し続けて、トランプ大統領は金利が高すぎると文句を言った。市場は金利低下を予想して買いに向かった。

しかし、連銀の金融政策は魔法ではない。金利を下げてもコロナウイルスの感染は解決しない。公衆衛生・医療システムにもっと資源を振り向けることだ。

NYT Feb. 28, 2020

To Take On the Coronavirus, Go Medieval on It

By Donald G. McNeil Jr.

伝染病と闘うにはつの方法がある。中世の方法と、現代の方法だ。

現代の方法は、病原体のパワーに屈することだ。伝染は避けられず、20世紀のさまざまな発名によって衝撃を緩和する。ワクチン、抗生物質、人工呼吸器、体温検知カメラ。

中世の方法は、黒死病の時代から伝わるもので、野蛮である。国境閉鎖、港湾の検疫、恐慌状態にある市民たちを伝染病の満ちた都市に封じ込める。

人類は100年以上を経て、前者のゴム手袋ではなく、後者の鋼鉄の拳でウイルスと闘う。

中国の指導者は自身に問う。「毛沢東ならどうするか?」 官僚制により、武漢から帰還する者を誰も、自分たちの土地に入れないようにした。たとえ彼らが路上で眠るしかなくても。

ホワイトハウスも中世の方法だった。最近、中国にいた者はすべて、アメリカ人を除いて、入国を拒否した。アメリカ人には中国と韓国に渡航しないように求めた。

公衆衛生専門家の多くは、ジェット機の時代に、国家の玄関をふさぐような時代錯誤の方法は無意味だ、と考える。

しかし、トランプには当然の反応だった。壁を築くという公約で当選したトランプだが、2014年には、エボラと西アフリカで闘った英雄的なアメリカ人の医療従事者たちが感染したとき、彼らを死ぬまでそこに放置するよう唱えた。、

ウイルスの感染が拡大するスピードと致死率が恐怖をもたらす。

結果的に、中国との船舶や航空機のつながりを遮断した。そして、軍に隔離施設を準備した。それは中世のヴェニスが、感染者が死ぬまで隔離病棟にとどめ、都市から切り離したのと同じである。

移動規制は、伝染病を防ぐ以上に、パニックと悲惨さ、死者をもたらすと言える。群衆が病院に殺到すれば、感染が広がる。工場や商店の閉鎖は賃金を失わせて、生活困窮や不況につながる。

検疫は人種差別や抑圧につながる。WHOは旅行や観光の禁止に反対した。しかし、今はそれを支持している。中国を訪問したチームは、禁止措置がウイルスの拡大を2から3週間遅らせた、と述べた。

市民の自由を制限するのは恐ろしいことだが、初期に実施されれば、命を救うことができる。キューバのAIDS危機はその最善のケースだ。

1980年代にキューバとアメリカでAIDS感染が起きた。キューバでは、アフリカに派遣されていた兵士や医師、看護師が感染した。

カストロの体制では、HIV検査が強制になった。すべての感染者は隔離キャンプに入れられた。しかし、キャンプにはバンガロー、庭園、劇団、医療ケアがあった。外にいるより、しばしば多くの食料があり、ゲイに対する差別も抑制されていた。

アメリカでは、法的な権利を守るアプローチが取られた。HIV検査も強制ではなく、個別の相談を受けてから行われた。多くの者はそれを避けた。感染源のゲイたちの浴場を閉鎖するにも、長い論争を要した。

その後、自由よりも野蛮が命を救った点で、大きな差を示した。キューバの感染率はアメリカの約6分の1であった。ニューヨーク市とキューバはほぼ同じ人口であるが、30年間で、キューバの死者は2500人以下だが、ニューヨーク市では7800人を超えた。

1918年と1919年、スペイン風邪・インフルエンザが諸国に広がった。その際、都市によって独自の対策が取られた。セント・ルイスは、パレードや試合を中止、学校、移動、行政のシステムを閉鎖した。感染者には自宅待機を命じた。死者数は少なった。

フィラデルフィア、ピッツバーグは政治的混乱と地元のビジネスからの圧力で、閉鎖を回避した。多くの死者が出た。

専門家は、国民の結束を呼びかけた。それほどの指導力は信頼があるときだけ発揮される。

FT February 29, 2020

The coronavirus alarm points to broader credit shakeout

Michael Mackenzie

PS Feb 29, 2020

Can China’s Economy Withstand the Coronavirus?

MICHAEL SPENCE

NYT Feb. 29, 2020

Is This Coronavirus ‘the Big One’?

By Nicholas Kristof

NYT Feb. 29, 2020

Here Comes the Coronavirus Pandemic

By The Editorial Board

FT March 1, 2020

What should macro policymakers do about the coronavirus?

NYT March 1, 2020

The Coronavirus Has Put the World’s Economy in Survival Mode

By Eswar S. Prasad

中国、日本、韓国を結ぶアジアの生産システムは大きく減少する。金融政策で不確実さを取り除くことはできず、経済活動の水準を維持することはむつかしい。むしろ、政府の方が重要である。すなわち、透明で正確な情報の供給を行うことだ。

FT March 2, 2020

Corporate margins are going to be squeezed

Rana Foroohar

FT March 2, 2020

Federal Reserve should not try to fight the coronavirus

Gavyn Davies

YaleGlobal, Tuesday, March 3, 2020

COVID-19: Quality Shock to Globalization

Stephen Roach

PS Mar 3, 2020

The Fiscal Fight Against COVID-19

KOICHI HAMADA

自然災害には金融政策ではなく、政府が、早急に、適切な財政支出で経済活動を維持するべきだ。日本の場合、国際の水準に言及するのは間違いだ。

NYT March 3, 2020

Can the Fed and Friends Save the Economy?

By Paul Krugman

FT March 4, 2020

Coronavirus shows how globalisation spreads contagion of all kinds

Ian Goldin

コロナウイルスの感染拡大は警戒されることだが、驚くことではない。グローバリゼーションが創り出したシステミックな危機である。貿易、金融、サイバー、その他のネットワークが、規模においても、相互の作用においても、急速に成長した結果、非常に複雑で不安定なものになっているからだ。

金融危機の後、各国の中央銀行は、現金不足に苦しむ金融機関に通貨供給による消火活動を行った。しかし、今回、連銀の金利引き下げにも市場はあまり反応しなかった。

市場にはすでに流動性があふれているからだ。金融緩和を繰り返してっも成長は回復しない。危機の事後的な救済は、パンデミックのような新しい脅威に対する経済の回復力を損なってしまった。

金融危機が起きた時の慢心と、パンデミックに対する無防備とは、衝撃的なほどよく似ている。金融危機に先立つス数十年の間、利潤と所得の増大が続いたことで、次の世界不況が来ることはない、と思うほど自信過剰になっていた。

世界は寿命が延びて、1918年のインフルエンザ・パンデミックの再現を防止できるほど健康だった。それは間違った自信だった。世界は相互依存を強め、中国が世界GDP5分の1を占め、グローバル・サプライ・チェーンに統合し、旅行者は毎年2600億ドルも支出している。

武漢は典型的な中国の中規模都市だ。30年間で人口が200万人から1100万人に増加した。衛生状態は悪く、規制は緩く、人と動物が密集して暮らしている。近くの空港からウイルスは36時間でどこにでも行けた。

危機が深刻になって、各国政府は国際機関を頼ったが、WHOには資源も権限もなかったのだ。権限の縮小、民営化で、公衆衛生システムが極度にストレスを受けているとき、コロナウイルスはやってきた。間違った移民政策も事態を悪化させた。

感染の爆発を孤立させる監視と介入が重要だ。特に、貧しい国が危険である。ワクチン開発をグローバルに推進し、情報と資源を共有するべきだ。

壁を高くしても、パンデミックは防げない。他の脅威もだ。

PS Mar 4, 2020

How America Can Beat COVID-19

JAMES K. GALBRAITH

FT March 5, 2020

Coronavirus will hit gig workers particularly hard

Gillian Tett

FT March 5, 2020

Coronavirus lays a political minefield

Philip Stephens

国家主権を侵すものは何か?

ウイルスは国境を尊重しない。ウイルスはポピュリストの指導者たちが振る反移民の旗を気にしない。世界にコロナウイルスが広まるのは、相互依存の証である。

ドナルド・トランプが掲げたアメリカ・ファースト政策も感染爆発には無駄だった。世界保健機構WHOに対するアメリカの分担金を削減した者こそトランプだ。

ボリス・ジョンソン首相もEUとの敵対関係に忙しかった。しかし、EU離脱がウイルスを遮断することはない。トランプが築く「メキシコ国境の壁」も、ジョンソンが約束した「主権を取り戻す」ことも、無意味で高価なことが判明する。

連銀の金利引き下げも、政府による刺激策も、この衝撃を緩和するには足りないだろう。政治家は針の筵に座っている。混乱は人々を感情的にする。ウイルスは政府の責任ではないが、危機への対策は厳密にチェックされるだろう。国民の受け取り方は現実よりも重要だ。

政治家の最高の武器は、正直さである。有権者は政治指導者に、事態を掌握し、有能で、率直に語るよう求めている。トランプとジョンソンがウイルス恐れるのは当然だ。

コロナウイルスは「フェイクニュース」と攻撃しても消去できない。トランプが侮辱した多国間の協力体制を欠いたまま、世界とアメリカは不況に向かっている。

FT March 5, 2020

Don’t give up on the Fed’s virus-fighting capabilities just yet

Robin Wigglesworth

FP MARCH 5, 2020

The Coronavirus Is Not Mother Nature’s Revenge

BY ALAN LEVINOVITZ


(後半へ続く)