IPEの果樹園2020

今週のReview

1/27-2/1

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社会民主主義の可能性 ・・・ロシアの独裁体制 ・・・トランプ支持の理由 ・・・中国経済の減速と技術革命 ・・・絶望死の無い社会 ・・・気候変動の抑制策 ・・・香港の抗議デモは続く

長いReview

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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 社会民主主義の可能性

FP JANUARY 15, 2020

HOW CLIMATE CHANGE HAS SUPERCHARGED THE LEFT

BY ADAM TOOZE

気候変動の緊急事態は、世界中にラディカルな政治を広めており、環境保護のラディカリズムが左派の政治運動として登場している。

しかし、左派の復活は、旧いジレンマと、新しい変化した世界における挑戦に直面する。気候変動は人類の責任ではなく、その化石燃料に依拠して、利潤動機による拡大を続けた資本主義の責任である、と左派は示すだろう。

左派は資本主義を批判し、また、グローバルな協調にも積極的である。気候変動を抑える政策は、同時に、資本主義と社会的な不平等の構造を改革することを目指すだろう。

もし英米のグリーン・ニューディールを支持する左派が政権を握れば、気候変動は抑制できるだろうか? 20世紀半ばの危機の基本的教訓は、西側の資本主義的民主主義体制が挑戦を受けたことではない。どのような進歩も、ソビエト体制の変幻自在な暴力との同盟において、実現可能になったということだ。1945年以後、われわれはソ連と対峙し、世界を分割し、核による人類絶滅で脅迫し合った。

現在の明白な問題とは、気候変動に関する、西側と中後港との関係だ。ヨーロッパはソ連との間にパイプライン網を張り巡らせた。この点で、西側はソビエト体制の政治や倫理をめぐる困難な問題を無視した。中国において、気候変動の姿勢が急速に変化したものの、グリーン・デタント(環境対策における緊張緩和)として、協力関係を結ぶことは西側にとっての難問であり、特に、左派はこの挑戦に応えねばならない。


 ロシアの独裁体制

FT January 17, 2020

A demographic trap and low growth are Putin’s biggest challenges

John Dizard

ロシアのニュースは、まるで19世紀の長い小説を読むようだ。制裁、諜報機関、砂漠の国における傭兵、ウクライナにおける陰謀、外国の選挙に対する介入。

しかし、プーチンとロシアの指導部が最も懸念すべき問題は1つだけである。人口減少と低成長の罠だ。

シリコンバレーであれ、クレムリンであれ、いかなるシステムも不死を求める。プーチンは、内閣改造だけでなく、制度の改革、国家権力の分散化を演説で示した。ウクライナとクリミアへの侵攻で、ロシアが経験した西側の制裁は、ロシアに、大きな犠牲を払っても、金融の対外債務依存を減らし、厳格な予算管理、社会的な緊縮を通じて、安定化を達成させた。

ロシアの証券市場は高騰し、金融政策も正統的である。しかし、プーチンが企業に情報開示を求め、汚職追放や、石油富豪のモデルを否定するのには理由がある。近隣諸国に流出する若者と才能ある人々を、ロシアにとどめねばならないからだ。

FT January 18, 2020

Russia’s political shake-up: Putin forever

Henry Foy in London and Max Seddon in Moscow

2008年にプーチンが4度目の大統領に就任したとき、モスクワの情報インサイダーたちは、だれがプーチンに後継者として指名され、ロシアを運営するのか、という噂が飛び交った。

水曜日、プーチンはその問題に明確な答えを示した。彼は自分を指名したのだ。

70分間の演説で、いろいろな問題に答えたが、最も重要なことは、彼の周りで影響力を高める者や、略奪者になろうと夢見る者たちに、石を投げて殺したことだ。プーチンは、習近平が「終身国家主席」であるように、今や事実上の「終身大統領」である。

プーチンが権力を得たのは、ボリス・エリツィンが、民主的な初代大統領として、権力の座を退くという前例のない決断をしたからだ。そのときKGBの元エージェントで、諜報機関のトップであった人物が、クレムリンに移った。

それはロシア史を通じて、民主的な権力移譲の最初のケースであった。しかし、プーチンの体制では、ロシアの安定や安全保障がプーチン個人の存在としてイメージされ、多くの人は、プーチンが後継者に平和的な権力移譲を行う、とは想像できなくなった。

結果的に、それは与党の支持率を低下させた。また改革派に対して、プーチンの周囲に集まるナショナリスト、諜報機関と結びついた反動的なシロビキのクラン(部族集団)が、その権力を強めた。

国家評議会は、今は、単なる諮問機関でしかないが、その任期も影響力も法律によって制限されない、強大なパワーを得るだろう。ロシアは専制体制を強化し、民主主義の規準からさらに遠くなる。何かが変わったふりをするけれど、すべてはそのままだ。

しかし、ペレストロイカを企画した者たちもそうだった。簡単に勝利できると思って戦争を始める者も。国民投票に勝てると思って、敗北した者たちも。すべて間違いだった。


 トランプ支持の理由

NYT Jan. 22, 2020

Why Trump Persists

By Thomas B. Edsall

なぜトランプへの支持が続くのか? アメリカの有権者は、憤慨しているけれど、寛容さ、感情移入、誠実さを、多くの人が思っているほど、持たないからだ。

トランプの当選とその3年間は、国民全体が移民、人種、平等、公平をめぐって、深く迷った状態にあった。

もし信念の体系が反移民政策や人種差別を正当化するために使われるなら、すなわち、外部者への敵意、孤立した感覚、外部の脅威に対する敏感さが、移民に対する共感、人種の平等という信念の体系、すなわち、開放性、新しい経験を受け入れる姿勢、信頼感とともに、アメリカという国家に深く浸透しているとしたら、どうだろうか?

ある政治心理学者は考える。移民、人種、ホームレスに関するトランプの保守主義が、より「自然な」「初期状態」である、とは思わない。2つの信念体系の良いバランスを保つコミュニティーが、人類の発展史において、繁栄する傾向があった。正しいバランスを見出すことが重要だ。あまりにも多様性や複雑さを好むなら、「多くの人々がそれに対する寛容さ」を超えてしまうだろう。

われわれの時代のパラドックスとは、リベラルな民主主義を減らす方が、究極的には、リベラルな民主主義を確保できる、ということだ。

受け入れるコミュニティーの構成要素が変化するスピードが最も重要である。すでに多様な場所においては、より多様になることに問題はない。しかし、相対的に同質的な場所では、たとえ小さな絶対数の新規参加者でも、例えば難民のように、混乱し、文化的な不安が活性化する。

部族主義tribalismを非難するのは間違いだ。それは多くの人々が脅威に対して反応し、集団間の競争で仲間のまとまりを強め、チームへの忠誠を強め、境界線や領域を守る行動である。

リベラリズムは発展における贅沢な感情である。それは人々が、ネガティブな刺激はますます抑制され、減少していると感じるときに現れる。困難な時代には、限られた財への競争が激化し、リベラルが右にシフトする。

資源が希少なとき、負荷が強いと感じるとき、援助が重要ではなく、二次的なときには、リベラルは保守的に行動する。十分な理由と、改革を信じて、他者を助けるように求められたとき、保守派はリベラルのように行動する。

国民に広がるあいまいさは、政治党派のより大きな問題を示している。彼らはトランプに対する嫌悪感を共有しているが、中道から左派まで、イデオロギー、社会、経済問題で、連携することはむつかしい。民主党の連合が一緒に行動するための、共通の基礎はあるか?


 中国経済の減速と技術革命

FT January 20, 2020

How I became a China sceptic

Gideon Rachman

中国の富、パワー、威信は、上海の高層ビルと同じように、急速に高まっている。

私は、多くの懐疑論に対して、常に反対だった。中国の台頭は本当だ。その影響は世界におよぶ。世界はアジアになるだろう。

しかし、疑いが生じ始めている。中国経済の減速、香港の抗議デモ、それ以上に、習近平主席の周りに築かれていく個人崇拝に対して、疑念を持ったからだ。

習の時代は、ますます、一党支配ではなく、個人支配の様相を示している。

NYT Jan. 20, 2020

How Technology Saved China’s Economy

By Ruchir Sharma

最近、中国の空港に降り立った。そこは技術革命の真っただ中にあった。パスポートはスキャナーが自動で読み取り、それぞれの言語で応答した。デジタルでの支払いが現金に代わり、紙幣を使う者は店員から白い目で見られる。

ホテルのドアは顔認証で開くため、鍵が要らない。ロボットのルーム・サービス、ドローンによる配達、都市の交通信号は調整されて渋滞を減らしている。

中国の外からは、こうした技術が「自動化された権威主義体制」の前兆とみなされている。ビデオカメラと顔認証が法律違反を阻止し、「市民スコア」が政治的信頼度について市民を順位づける。ウイグル自治区で大規模に展開されているものだ。

しかし、中国全体では技術に対する信頼が高い。プライヴァシーに対する懸念は低い。ビッグ・ブラザーを恐れるとしても、それは表に出さない。沿岸部を旅する中では、人びとがハイテク大国としての中国の台頭を誇りにしていた。

中国の奇跡は市場開放から始まった。しかし今、ハイテク企業が海外において競争から排除され、国内での育成に向かっている。ソ連と違って、中国は効果的に保護し、国内の消費文化を創造して、経済成長のエンジンにした。

2015年の記憶がよみがえる。40年前に改革が始まって、最初の不況に入る恐れに直面した。2008年の世界不況を回避するために、北京は湯水のように融資を拡大したのだ。それは民間債務をGDP230%にまで高めた。

しかし、中国は2010年の2ケタ成長から6%の成長に減速するが、まだ不況ではない。それは新しいデジタル経済の台頭があるからだ。その規模は3兆ドル以上と推定され、GDP3分の1を占める。アリババやテンセントのような大企業がアンカーとなり、鉄鋼、アルミニウムのような旧産業の減少を相殺するだけでなく、債務を負わない形で拡大している。

2017年までに、中国は、ドイツと同じ、ハイテク部門のシェアを示した。過去10年間の研究開発投資額は4400億ドルを超え、すべてのヨーロッパによる投資額を超える。世界のインターネット企業上位20社のうち、9社は中国企業だ。(10社がアメリカ、1社がカナダ。)

ロボットは人の雇用を奪うだろう。しかし、全体としては、技術革新が破壊する以上に、専門職で多くの雇用をもたらす。アリババのプラットフォームだけで、数百万の小企業が利用し、3000万人の雇用をもたらした。

中国経済の成長には、高齢化と「中所得の罠」、という2つの問題がある。この2つを同時に抱えた国はない。しかし、ハイテクの普及で若者の生産性が上昇している。累積債務と金融危機のリスクも、ハイテクによって新しい預金が増えることで解消されるだろう。

中国経済が深い不況の谷を観たとき、まさに技術革命が救済に現れた。


 絶望死の無い社会

NYT Jan. 18, 2020

Are My Friends’ Deaths Their Fault or Ours?

By Nicholas Kristof

「絶望死」で亡くなった、妻と私の旧い同級生たちのことを書いたとき、その読者からの反応には醜いものがあった。

彼らは「自業自得だ。」 「身から出たサビだ。」

もっとひどいものもあった。「生存にふさわしくない者は自然淘汰される。」

亡くなったナップ兄弟たちのように、労働者階級の男女は、いたるところで、ひっそり「絶望死」を迎えている。麻薬、アルコール、自殺だ。

多くの読者は同情を寄せた。しかし、痛めつけるような侮辱を示す反応もあった。それらは、多くの失敗した政策の前提と共通する、ある種のイデオロギーを示す意味で重要だ。

すなわち、「われわれは無尽蔵な機会の中で生きている。」 「間違った選択」をする者もいるし、「自分の責任を果たさない」者もいる。こうした物語が、ナップ兄弟の不幸を侮辱する気持ちにするのだ。ある読者はコメントした。「記事は、破滅した、かわいそうな人びとのことを書いている。」・・・「彼らの重要な問題は、その弱さである。」

過去半世紀に、この種の物語がアメリカに根付いた。それは1世紀前に流行した「社会ダーウィニズム」と似ている。

しかし、考えてほしい。トニー・ブレア政権の下では、イギリスの子どもの貧困は半減した。子供たちが、突然、自己責任を示したからではない。政府の問題である。

確かに、私の友人であるナップ兄弟は失敗したのだ。しかし、彼らはその両親や祖父母に比べて、無責任とか、才能を欠くとか、勤勉でない、ということはなかった。それでも戦後の世代は所得を伸ばすことができた。

われわれは、社会を包括する戦後の資本主義モデルから、労働組合をつぶし、子供たちに投資せず、取り残された者たちを罰するような、いかさまのシステムに移行した。

もっと優れた社会にふさわしい物語とは何だろうか? 個人の責任を認めるが、集団的な社会的責任も認めるべきだ。特に、子供たちに対して社会が責任を持つ。同情心を持ち、成功した者は、すぐれた倫理観を持つ。そして、失敗した者を非難するより、黙って手を貸してやるべきだ。


 気候変動の抑制策

PS Jan 20, 2020

The Best Tool to Fight Climate Change

JEFFREY FRANKEL

気候変動が政策課題の第1であることに、すべての者が同意するだろう。しかし、問題を認めても、それに対する有効な手段は見つからない。

金融機関はそのリスクを考慮するべきだ。しかし、中央銀行や国際金融制度が持つ手段は、気候変動に対する次善どころか、3番目の有効性も示さないだろう。

最も効果的な手段とは、議会が規制や補助金を議決することではない。二酸化炭素など、温暖化ガスの排出に価格を支払わせる方法は2つある。炭素税の導入、もしくは、排出権取引である。

2つのアプローチは等価であるが、価格と数量を規制することには重大な違いがある。不確実さと、政治的圧力だ。国際協調は困難で、50年先まで政府を縛るような合意することはできず、価格の不確実さはなくならない。

重要なことは、今すぐに、将来に向けて炭素の排出量にはますます高い価格を支払う必要がある、という予想を確立することだ。そのために、政府は今すぐ価格を導入することになる。

気候変動を強調する若者たちは、学校ストライキをするのもよいが、大統領選挙に有権者として登録し、必ず投票することだ。18-24歳のアメリカ人がより高齢の集団と同じ比率で投票すれば、トランプは確実に再選されないだろう。

トランプのいないアメリカ政府はパリ協定に復帰し、温暖化防止に効果的な手段を採用する。他国は自分たちが対策を採らないことに言い訳することができない状況になる。


 香港の抗議デモは続く

FP JANUARY 23, 2020

Hong Kong’s Greatness Is Slipping Away

BY HILTON YIP

香港における抗議デモは終わりそうにない。春節の休日まで1週間となったころ、当局は民主化デモを暴力的に弾圧した。ムーディーズは香港の信用格付けを下げた。制度とガバナンスについての懸念が強まっているからだ。

それでも市民生活は正常に続いている。1980年代のベイルートや、アイルランド内戦の際のベルファストのような状態には、まだまだ遠い。他のイギリス旧植民地に比べて、抗議デモの犠牲者は、はるかに少ない。

しかし、裕福な、グローバル商業都市としての香港は、次第に衰弱している。その最も重大な要因は、当局が抗議デモと住民に対して強硬姿勢を崩さないことだ。警察は公認されたデモ行進を催涙ガスと野蛮な方法で粉砕した。ジャーナリストや医療関係者まで襲撃した。抗議などを理由にして7000人を逮捕した。そこには多くの若者が含まれている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの所長や、Financial Timesの編集者まで、入国を拒み、追放した。香港は長く誇りにしてきた「アジアの世界都市」という看板を下ろしたのだ。

旅行者は大きく減少し、ビジネスが悪化している。しかし、強硬策にもかかわらず香港を改造することがむつかしいために、深圳を開発し、近くのマカオをカジノ都市として称賛した。新しく指名された香港の局長は、「一国二制度」を「安全保障の抜け穴」と非難し、国防法案の成立を計画している。

数少ない明るい面は、抗議活動の中に現れている。住民たちが、デモを支持する店に集まり、中国系企業の店や北京を支持する富豪たちの店を避ける運動を展開していることだ。それは香港人の愛郷心を励まし、重大な活力を呼び覚ます。

無能な指導部、活気を失わない抗議デモ、そして、住民と警察との戦争状態。香港が解決策を見出すチャンスはまだほとんど見いだせない。

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The Economist January 11th 2020

Masterstroke or madness?

France: Who rules?

Han Chinese and Uighurs: Apartheid in Xinjiang

Ethnic tension in Xinjiang: Never the twain shall meet

France: Month two

The Brexit timetable: It won’t be that easy

Ageing Europe: Old, rich and divided

Free exchange: Mourning in America

(コメント) トランプ大統領がイラクにおいてイランの軍事・政治指導者を暗殺するよう指示したことは,イランを抑止する効果をアメリカが回復するためだったのか? この殺害はイランの地域に広がるネットワークを弱めるのか? アメリカは中東の混乱から手を引くことができるのか? こうしたことを問うこともなく,トランプは決定しただろう.しかも,イランの核兵器開発を進める強硬派は意志を固め,トランプは北朝鮮の非核化を交渉する条件を著しく損なった.北朝鮮の金正恩が合意や暗殺を歓迎するはずがない.結局,制裁も抑止も,時間が経てば弱まってしまう.アメリカにとってのイラン問題は,改善されることなど少しもない.

中国のウイグル自治区におけるハイテク監視体制は,まさに現代のアパルトヘイトである.

フランスの年金改革とそれに反対するストライキ,Brexit法案を通過させた後の交渉においてイギリス政府が著しく不利になること,ヨーロッパの人口学的な分裂状態.いずれも深刻です.

Free Exchangeは,アメリカにおける「絶望死」をめぐる論争を取り上げています.

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IPEの想像力 1/27/20

イギリス、フランス、アメリカの政府をThe Economistは評価しています。

ボリス・ジョンソン首相は、EU離脱法案を通過させた。しかし、離脱派の主張は全て間違っている。・・・131日にBrexitは実現しない。11か月の移行期間が始まる。その期間はEUのルールに従い、財政負担も続ける。・・・その後の交渉は容易でない。貿易、基準、安全保障、データ、漁業、金融サービス、研究など。期間中には合意できない。

そもそも交渉期間を固定したことは間違いだ。期限を延期できない。その後は、EU規制の下で労働者が保障されていた権利を失う。・・・将来のEUとの関係は、議会の支持を要する。しかし、ジョンソンは議会下院で絶対多数を得た。つまり、議会の反対を理由にEU側をけん制できない。・・・EUは待つだけで有利な条件を得るだろう。

フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長は、ジョンソンと会談した。・・・EU加盟国ではないイギリスに対して、第3国の扱いでしかない。人の移動の自由がなければ、財、資本、サービスの移動も自由ではない。関税と割り当てがないことに加えて、ダンピングもないよう求める。・・・労働、税制、環境、補助金など、交渉事項は多い。ジョンソンがEUから離れてイギリスが自由に動くなら、EUへの輸出はそれだけむつかしくなる。

国民投票のときから指摘されていたように、イギリスのEU向け輸出比率は大きく、EUのイギリス向け輸出比率は小さい。合意しなければ、イギリスはより大きく失う。・・・企業は不確実性を嫌う。イギリスに投資するより、確実性の高いEUのルールで投資することを好む。・・・ジョンソンはアメリカとの合意を有利な条件にできると考える。しかしトランプは、EU以上に、イギリスの弱い立場を悪用する。EUとの交渉が終わる前に、日本であれ、韓国やメキシコであれ、第3国がイギリスに有利な2国間合意を結ぶとは考えられない。皆がEUとの合意を観てから決めるはずだ。

多くの分野で合意しないまま離脱するなら、イギリス企業はさまざまな不利益を被る。そのコストは、イングランド北部や中部の産業と労働者が負う。彼らの支持を求めるなら、保守党政権はEUに妥協するしかない。名目だけの離脱で、Brexitは終わる。

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エマニュエル・マクロン大統領は、年金制度を改革しようとして、2カ月も抗議デモと対決している。マクロンのフランス改造 “transform” を強く支持する。大統領選挙で、マクロンはラディカルな改革を唱えて闘った。もっと多くの雇用を、「ポスト・サラリー」時代を、高い移動性と、職場よりも人を守る社会保障を、マクロンはめざしている。

多くの、複雑で異なった年金制度がある。個々の年金や組合の権利は低下するだろう。働いていたときの給与の60%を得る。今、法的には62歳で定年だ。しかし「特別な枠組み」で列車の運転手は50歳だ。2025年までに年金システムの赤字は80億ユーロから170億ユーロに達し、成長のための投資を奪う。フランス人たちは、寿命が20年延びれば、もっと長く働くべきだと理解する。あるいは、それを拒むなら、若者たちが負担する。社会は公正さを失うだろう。

原則を損なう妥協はすべきでない。マクロンと国民との対話が重要だ。フランスにとって何が必要なのか。街頭デモで政府を倒すのは、フランスの間違った政治的伝統だ。

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アメリカについて、労働者階級の生活水準や健康状態が悪化している。この傾向は、トランプ大統領以前から続く。アメリカは社会保障制度を整備しなかった。資本主義が「略奪者」に変化した。あるいは、コミュニティーの文化、「社会資本」を失った。

選挙、指導者、経済政策が間違い続けるのはなぜか。ナショナリズム、排外主義、ポピュリズム、その他の政治的な偏向が、経済学の限界、社会病理学として議論される。

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中国、新疆・ウイグル自治区は、イギリスの7倍の面積、イラクに匹敵する石油、ドイツを超える石炭を持つ。世界の綿花の5分の1を生産する。しかし、そこにあるのは漢民族とイスラム教徒のウイグル族とを隔離するアパルトヘイトだ。

「再教育センター」に収容し、モスクを破壊し、信仰や風俗を奪う。砂漠の向こうに巨大な農場と都市を建設して移住させる。検閲、監視カメラ、X線検査、金属探知機。

それらは、トランプ大統領が称賛する手法であり、半導体工場や、コンビニ、GAFAのビジネスモデルにおよぶ民主制の危機です。

イギリスの王族たちが戦争によって支配を拡大した。フランスやドイツでは革命と権力の集中。帝国による支配と戦争のグローバル化。奴隷制を展開し、労働者階級を創り出した。

政府は、ますます大きな権力を行使するようになった。権力が公正であるように、監視し、問い続ける必要があるのです。

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