IPEの果樹園2020
今週のReview
1/20-25
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英王室とキング・ドナルド ・・・ソレイマニ将軍の暗殺 ・・・プーチンの時代 ・・・政府の目的 ・・・連合王国の終わり ・・・台湾と香港の勝利 ・・・カルロス・ゴーン記者会見 ・・・サルヴィーニとメルケル ・・・米中貿易戦争の停戦合意 ・・・国際貿易・金融システムにかかる圧力 ・・・トランプはファシストか
[長いReview]
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主要な出典 FP: Foreign Policy,
FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York
Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● 英王室とキング・ドナルド
NYT Jan. 9, 2020
Good for Meghan and Harry
By The
Editorial Board
「その後、2人は幸せに暮らしました。」という物語を子供に語りたいなら、木曜日のロンドンで出た新聞は隠しておくことだ。
The Sunは「ハリーとメーガンが王室離脱で内戦」。The Daily Mailは「女王が激怒した。ハリーとメーガンは、やめます。」と書いた。イランが戦争を始める予感に震えても、イギリス議会がBrexit法案を通過させても、タブロイド紙はハリー王子とその妻メーガン(the Duke and Duchess of Sussex)による王室離脱をMegxitとして冒頭に掲げた。2人はインスタグラムに声明を出した。「財政的に独立」して、イギリスと北米の間でバランスを取る、と。
追放された者や、解任された者はあったが、これまで王位継承権を辞退した者はいなかった。エドワード8世が王座を蹴ってイギリスを去り、アメリカの離婚したことがある女性と結婚した。最近では、エリザベス2世の2番目の息子、アンドリュー王子が、性暴力の加害者であるジェフリー・エプスタインとの関係を理由に追放された。
2人が結婚して以来、強い関心が集まったが、新聞には多くの話があふれた。しかし、彼らに同情する記事は少なかったし、細かい詮索と、特に侯爵夫人には悪質な人種差別が示された。最初からタブロイド紙はメーガンの家族や王室内の問題をひどい形で取り上げた。
王室の伝統は、世界や王の家族が変化の激流や、不満、スケンダルで圧倒されても、禁欲的にその公務を果たすところにあった。Netflixの連続ドラマが描くように。
しかし、王室の真の価値は、単に、テープ・カットやタブロイド紙に際限なく話題を提供することではない。王様と女王は世界との間で条件を定める一連の寓話になる。今度の話では、ハリス王子とメーガン妃は、旧秩序からの亡命者として嘆くのではなく、現実世界で自分たちの財宝を求めるために、その特権をある程度まで放棄する現代の王族である。
「その後、2人は幸せに暮らしました。」となるかもしれない。
The Guardian, Fri 10 Jan 2020
The royals are a true soap opera. And that’s bad for republicans
Jonathan
Freedland
NYT Jan. 10, 2020
Why America Needs a Royal Family
By Jennifer
Weiner
ハリーとメーガンの王室騒動を観ていると、わたしは1つの結論に達した。われわれ、アメリカ人も、自分たちの王室を持つべきだ。
あなたの不満はわかる。われわれは独立革命を戦ったのだから、王室はない。王族には多くの金がかかる。ヨーロッパ諸国は、その理由で、王室を狭く限定している。帝国主義とエリート主義の不快な雰囲気を継承する、旧時代のシステムに参加することを拒否したのだ。彼の妻は人種差別の標的になったから。
まったくその通りだ。
私のイギリス政府に関する知識は学校の世界史の記憶と “The Crown” の3つのシリーズだが、首相と議会は民主的に選ばれ、実際に統治している。同時に、選挙を経ない王族が、儀礼的な式典を行う。王と女王はお城に住んで、豪華な宝石と衣装を身に着ける。
それには金がかかるが、税金で支払う代わりに、彼らは公的な生活を送り、結婚式には素晴らしい衣装を着て、富裕な人びとを集める。バルコニーに立って手を振る。イングランドの著名人・スターたちが集まる、世界最長のリアリティー・ショーである。それが時代錯誤の浪費か、有益な気晴らしかは、観る人によって異なるだろう。最近も、美しいプリンセスがパパラッチに追われて悲劇的な死を遂げた。
アメリカでは、選出された公務員が、その妻や子供たちは選出されたわけではないが、公式の役割を果たす。アイスランドのように、選出された大統領と首相とが、前者は式典を、後者が統治を担うとよいだろう。われわれにはすでに王冠をかぶったミス・アメリカがいる。あるいは、テレビで王様と女王を選ぶリアリティー・コンテストを開催してもよい。もっとも輝いているカップルを世界に向けたアメリカ代表にしてもよい。
王族になるには、4インチのヒール靴で、3時間も冷静に握手しなければならない。外国の名士たちを、たとえ彼らの言葉がわからなくても、歓待しなければならない。奇妙な帽子をかぶっても似合って見えなければならない。
王様・女王を決めるために投票することだ。その勝者をホワイトハウスに入れて、大統領はもう少し地味な建物に移す。大統領が統治し、王族はテープ・カット、国賓との晩さん会、感謝祭には七面鳥に恩赦を与え、クリスマス・ツリーに点灯する。王族たちには給与を与え、われわれの重視する価値に従ってもらう。新しいNetflixのシリーズは「野球帽の王様」だ。
何よりも、大統領が王様になる可能性を根絶するのがよいだろう。権力は、王冠のない、勤勉で、カメラに映りたがらない人物に与える。王冠は、権力を与えられないが、スポットライトを好む人物に与える。皆が知っているように、チャールズ皇太子は退屈な王様かもしれないが、良い政治家になれるだろう。他方で、われわれの破滅的な大統領は、少なくとも、その破壊を封じ込めることができる。キング・ドナルド・トランプ1世だ。
The Guardian, Sun 12 Jan 2020
Now Harry and Meghan are going, time to look at the true royal
horrors
Catherine
Bennett
● ソレイマニ将軍の暗殺
FP JANUARY 9, 2020
Is Preemptive Assassination the New Trump Doctrine?
BY HAROLD
HONGJU KOH
Spiegel International 10.01.2020
The U.S. Versus Iran
A Dangerous New Era in the Middle East
By Markus
Becker , Konstantin von Hammerstein , Christiane Hoffmann , Peter Müller , René
Pfister , Maximilian Popp , Tobias Rapp , Christoph Reuter , Alexandra Rojkov ,
Marcel Rosenbach , Raniah Salloum , Christoph Scheuermann , Fidelius Schmid ,
Christoph Schult und Wolf Wiedmann-Schmidt
FT January 11, 2020
US vs Iran: the costs of an erratic president
Edward Luce in
Washington and Najmeh Bozorgmehr in Tehran
FT January 13, 2020
Lies over downing of aircraft shake Iran’s trust in its rulers
Najmeh
Bozorgmehr in Tehran
PS Jan 13, 2020
Trump’s Iranian Precipice
JAVIER SOLANA
アメリカのドナルド・トランプ大統領が、また1つ、無意味な外交政策を決定した。ソレイマニ将軍の暗殺は、無謀で、挑発的で、近視眼的な行動だ。
アメリカの問題の核心にあるのは、イランに関する明確な目的がないこと、したがって、明確に定義された戦略がないことだ。それは破滅に向かう方針だ。
イランの体制自体が、イランが影響力を拡大している諸国も含めて、失策によって反政府デモに苦しんでいた。トランプの行動は、デモ隊を鎮静化して、イラン政府の姿勢を強化するものだった。
トランプの米軍撤退論は、NATOの中東における分担を損なう。しかも、逆に、この混乱で米軍は増強される。オバマの掲げたアジア旋回はまだ実現していない。
アメリカは不都合な問題を抱える。アメリカは同じことを核武装した北朝鮮もするのか? イランは2015年の核合意を守っていたが、それでもアメリカは一方的に離脱した。では、トランプ政権は北朝鮮との非核化交渉を、どのように合意するつもりなのか?
事態が悪化し続ける中で、外交は1つの選択肢ではなく、義務である。すべての集団を含めた会議が必要だ。
PS Jan 13, 2020
Trump’s Near Miss with Iran
ELIZABETH DREW
FP JANUARY 13, 2020
Why Is the United States So Bad at Foreign Policy?
BY STEPHEN M.
WALT
アメリカ政府は戦略を持たなくなった。明確な目標を立てて、それを達成するための一貫した行動計画を持ち、それには他者の反応が考慮されている、という意味で。
われわれは今、野蛮な力で強制し、明確な目標を持たず、衝動を抑えられない、無知な大統領が外交を振り回す姿を観ている。ドナルド・トランプ大統領の行動は、戦争のリスクを高め、イランを核兵器開発に向かわせ、イラクが米軍撤退を要求するようになり、ヨーロッパの同盟諸国はアメリカの信頼性と判断に深刻な疑いを抱き、むしろロシアと中国が賢明で秩序をもたらすかのように見えている。
例えば、最も重要な問題は中国である。これはトランプ政権も認めている。もし戦略的に考えるなら、最小のコストで、アメリカに対するリスクを抑えて、中国の影響力を制限する方法を探すだろう。アメリカが中国の成長を止めるとか、逆転させることはできない。しかし、AIなど、先端技術を含む多くの問題で、アメリカは、できるだけ多くの国を自分の側に付けるよう努めるべきだ、と理解するだろう。アジアにおける外交的な地位を保持し続け、中国とロシアの間にくさびを打つ方法を探すだろう。二次的な諸問題により、時間や注意、政治資本、資源を無駄にしないよう努める。
実際にアメリカがしたことは何だったか?
トランプが真っ先にしたことは、TPPを破棄することだった。アジア太平洋の11か国が苦労して合意した、有益な、アメリカ経済に緊密に結びつく諸国の合意である。その後、中国と貿易戦争を始めただけでなく、他の主要な経済大国とも、貿易戦争で脅し、実際に敵対した。中国に対する統合した戦線を形成するのではなく、単独で対決したのだ。
次にトランプは、北朝鮮とのリアリティー・ショーを始めた。「炎と怒り」によって脅迫し、その後、最初の直接会談で、金正恩の中身のない約束に騙された。その成果は、米朝関係を打開することなく、核武装計画を阻止することもなく、アジア全体で、アメリカに対する信頼を損なった。
ヨーロッパの同盟諸国、中国のファーウェイ制裁、国務省の崩壊、中東、その行動は、中国に有利な条件を与えて、喜ばせた。
しかし、トランプに始まったことではない。ビル・クリントンも、バラク・オバマも、ジョージ・W・ブッシュも失敗した。他方、ハリー・トルーマンやジョージ・H・W・ブッシュの政権は、慎重に、封じ込めと国際経済機関を配置し、地域のバランス・オブ・パワーを重視して、ソ連崩壊、ドイツ再統一、湾岸戦争を平和的に解決した。どの政権も完璧ではなかった。しかし、複雑な、新しい状況に対して、何が最も重要かを見極め、同盟諸国や敵対者から望ましい反応を引き出す能力があった。言い換えれば、彼らは戦略に優れていた。
なぜアメリカ外交は失敗するのか?
冷戦終結後のアメリカの優位が、そのあまりにも強く、豊かで、安全な地位が、外交の失敗を無視させた。イラクとアフガニスタンの戦争で、アメリカは6兆ドルを浪費し、数年人の兵士を犠牲にした。しかし、犠牲者に対する国民の懸念を制限し、財政的には赤字を外国と将来世代から借り入れた。
アメリカには驕慢さが広まった。アメリカ人は、常に、自分たちが他国にとってのモデルであるとみなしてきたが、冷戦に勝利した後、アメリカは現代世界における成功の方程式を知っている、魔法が使えるという自信過剰を強めた。
アメリカの歴史的経験、地理的孤立、巨大な国内市場、全般的な無知が、戦略的な外交を見出す力を失わせた。特に、自分たちと全く異なる歴史や文化的要素が重要な世界の部分において、その欠落は大きかった。
アメリカの国内政治システムも、国内外のロビーに外交を支配され、失策を導く。アイデアを交換する本当の意味の共通市場、注意深い、正直な議論はなく、声の大きな、豊富な資金を持った、それゆえ、少数の裕福な資金提供者の好みに従った。
外交の決定と実行において責任を持つ機関が、時間をかけて経験から学ぶことが望ましい。しかし、現実には、何度も間違いを導いた、ひどい考えがはびこっている。イラク戦争を指導した責任あるものはだれも責任を取らず、今も重要な地位に就いている。主要紙(the Wall Street Journal, New York Times,
and Washington Post)のコラムもそうだ。
チェック・アンド・バランスが崩壊し、内外の法律を犯し、メディアは政府と共謀し、反政府勢力は沈黙させられ、大統領とそのゴマすりたちが、ますます容易に、支持を高めるための嘘をつくことができる。なんでも好みの政策を行い、公的な論争が現実世界から乖離するなら、優れた戦略を立てることは不可能だ。
われわれの外交・安全保障政策は、パフォーマンス・アート(即興芸)のようになっている。兵士や外交官の命より、テレビやツイッターで評価される方が重要なのだ。有権者をより多く楽しませることに関心がある。
FP JANUARY 13, 2020
The Global Policeman Will Always Shoot People
BY STUART
SCHRADER
PS Jan 16, 2020
Is Trump’s Iran Strategy Working?
MOHAMED A.
EL-ERIAN
● プーチンの時代
YaleGlobal, Thursday, January 9, 2020
Putin at 20
Thomas Graham
1999年に、西側がほとんど何も知らなかった人物として、プーチンは権力を握った。彼が改革派か、西側に近い人物か、誰にもわからなかった。プーチンは簡潔な報告でその目標を示した。ロシアの伝統的な価値、愛国心、強い国家と大国の地位を回復し、精神的な統一を達成する、と。
1990年代に試みたアメリカの政治経済モデルを採用することはやめた。他国の支援は当てにならない。ロシアは、経済の崩壊と深刻なシステム・リスクを経験した。富豪たちは経済を分割し、アメリカはロシアの内政に干渉し、NATOを東方に拡大した。
20年で、その姿はこれ以上ないほど変わった。クレムリンの権力と権威は回復し、富豪や外国勢力は飼いならされた。政治組織や独立のメディアも圧力に屈した。国内における西側の影響力は劇的に縮小した。軍を再建し、ウクライナやシリアでその結果を示した。ロシアは再びグローバルな舞台で恐れられ、尊敬されている。
しかし、プーチン後の時代にその成果を残すには、2つの課題がある。1.経済力の回復。2.プーチンなしに機能する、政治的な制度の確立。
The Guardian, Thu 16 Jan 2020
Vladimir Putin’s naked power grab could have unexpected benefits
Yana
Gorokhovskaia
その本当の意図はわからないが、大統領の権力を抑え、議会を強化することは良いことだ。
今、プーチンは67歳になった。今後もロシア政治で最も強力なアクターだろう。しかし、結局、彼も退場する。改革が実行されれば、政治システムは、プーチンの20年間に許されなかった、真に競争する機会を得る。そしてプーチンは政治システムの背後に去る。
The Guardian, Thu 16 Jan 2020
The Guardian view on Putin and power: he’s not going anywhere
Editorial
FT January 16, 2020
Putin revamp hinges on the illusion behind Russia’s social contract
Tony Barber
● 政府の目的
FT January 10, 2020
The north of England needs social infrastructure, not just rail
Richard Layard
イギリス政府は、ついに、目標を転換し始めた。イングランド北部の経済的福祉を優先するのは良いことだが、さらに大きく、何を重視するべきか考えることだ。アメリカ建国に関わったトマス・ジェファーソンが述べたように、良い政府の唯一正当な目標とは、生活に対する配慮、幸福の追求を助けることだ。
アメリカの調査でも、投票行動を決定したのは、経済状態ではない。所得や失業という以上の、非経済的な要因だった。最も重要な要因は、身体と心の健康問題、そして人間関係だった。「お金や債務」は6番目だ。
イギリスのSajid Javid蔵相は、その支出がどの程度、人間の厚生を改善し、何ポンドに値するか、と問うべきだ。優先順位をつければ、1.メンタル・ヘルス、2.教育、3.家庭の安定、ドメスティック・バイオレンスの防止、4.都市計画やコミュニティー、ボランティアによる孤独の緩和。
高速鉄道の建設より、社会的なインフラ整備に投資するべきだ。
● ハイテク大企業
FT January 10, 2020
Big Tech and the law must learn to work together
FT January 10, 2020
Where does Amazon’s Alexa get her news from?
Aleks Krotoski
● 経済学の変貌
PS Jan 10, 2020
The Changing Face of Economics
DANI RODRIK
内外の圧力を受けて、経済学は徐々に変化しつつある。ポピュリストたちが現れて、先進的な民主主義国家を逆風が襲っている。結局、緊縮策、自由貿易、金融自由化、労働市場の規制緩和、といった主張は、すべてエコノミストたちがもたらしたからだ。
転換は経済学の中身にも及ぶだろう。経済学という学問が、そもそも、偏見に依拠しているからだ。アメリカ経済学会による2019年の調査は、女性エコノミストたちの半数が、ジェンダーの差別を感じた、と回答している。非白人のエコノミストたちの3分の1は、人種的、エスニック的なアイデンティティーによる不公平な扱いを受けた、と回答している。
多くのパネル会議が設けられた。「絶望死」に関する討論、“Economics for Inclusive Prosperity” (EfIP)の組織する会場があった。もっと多くの関心を、平均的な家族への影響、コミュニティーの役割に向けるべきだ。実証研究の重視が、経済学に新しい自由をもたらすだろう。
● ギグエコノミー
NYT Jan. 10, 2020
The Gig Economy Is Coming for Your Job
By E. Tammy Kim
● 連合王国の終わり
NYT Jan. 10, 2020
Boris Johnson Might Break Up the U.K. That’s a Good Thing.
By David
Edgerton
連合王国UKがいよいよ終わるのかもしれない。
ボリス・ジョンソン首相は先月の総選挙に勝利し、月末には、UKは1月31日にEUを離脱する、という法案を通過させた。
数十年にわたり、EUはUKがばらばらになるのを繋ぎとめてきた。今、BrexitがUKを分解する。短い幻想であった「ブリティッシュ・ネイション」も、その終わりを迎える。
ジョンソンの離脱計画は、UKを神聖なものとするアルスター統一論に対する驚くべき裏切りである。それは南のアイルランド・ナショナリストに統一への大きな機会を与える。独立を支持するスコットランド民族党SNPも議席を増やした。
それは悪いことだろうか? 実際は、そうでもないだろう。UK解体は、容易ではないが、Brexitがもたらす数少ない良いことだ。それは、アイルランドとスコットランドにとって良いだけでなく、イングランドにとってもよい。
北アイルランドは、経済的に繁栄する、社会的にリベラルなアイルランド共和国に統合する。それに反対する党派も、ロンドン政府に裏切られて、アイルランドの民族性を受け入れる。スコットランドも独立し、自分たちの決定権を回復する。
イングランドも、UK内の支配的民族でありながら、その枠組みは機能していなかった。大都市、特にロンドンに住む、活気ある、ヨーロッパに近い若者たちは、高齢化し、衰退し、ヨーロッパを嫌う他の地域と、分断状態を深めていた。
腐食したブリティッシュ・ネイションと国家の制約を離れて、イングランドはようやく大げさな幻影と手を切りことができる。イングランドはGDPで世界第8位の国でしかない。スコットランドにある原子力潜水艦の基地とともに、核保有もやめるだろう。
イングランドは、UKに固執し、偏狭で、領地回復を唱える国になる必要はない。世界における正しい地位を理解すれば、EUを敵視することを改める。脱工業化に苦しんだスコットランドがEUを支持するように、イングランドも進歩的なスコットランドをモデルとみなし、民主的なナショナリズムに向かう。
UK解体は途方もない話ではない。連合王国UKは「古く」もなく、「安定的」でもなかった。ブリティッシュネスは、帝国の一部として成り立った。UKや、インドや植民地を含むコモンウェルスは、第2次世界大戦のプロパガンダである。兵士たちは「王と国」のために死んだ。しかし、その国に名前はなかった。
1945年以後、「ブリテン」はUK国民国家になった。それは大英帝国が崩壊したために、現れた創作物の1つである。その後、1970年代まで、UKは経済、政治、イデオロギーの単位として、その他の世界と区別された。しかし、2つの国民政党が支配するUK国民国家は、わずかな期間でしかない。1970年代から始まったグローバリゼーションと、ヨーロッパとの経済統合の深化は、このUKを解体した。
退廃したブリティッシュ・ナショナリズムが、連合を破壊している。2016年以前から現在に至るまで、Brexit推進の中に自分たちを見出した。EU離脱がUKを再び偉大にする、と言うが、それは間違いだ。
イングランドの若者たちは、その他のブリテンでも、EU残留を強く支持した。彼らはブリュッセルからの解放ではなく、イギリス政府やイギリス議会、老人たちの自滅的な憤慨から解放される必要がある、と理解している。
帝国から現れた新しいUKは数十年で、今や解体され、新しいイングランドが誕生する。
The Guardian, Sun 12 Jan 2020
Remainers aren’t going to vanish on 31 January. We fight on, sure of
our cause
Will Hutton
● 台湾と香港の勝利
FP JANUARY 10, 2020
Taiwan’s War on Fake News Is Hitting the Wrong Targets
BY NICK ASPINWALL
NYT Jan. 10, 2020
Taiwan’s Election is a Vote About China
By Wu Jieh-min
たとえ経済・政治的発展が同じ水準に達しても、中国との統合を望まない。回答者の73%が、そして20-34歳では、回答者の93%がそう答えた。
中国は台湾を経済的な利益で統合指示に向けようと意図したが、それは失敗だった。
FT January 12, 2020
China’s dream of using Hong Kong as model for Taiwan’s future is dead
Jamil Anderlini
香港の抗議デモが激しくなることで、台湾の祭英文は支持率が回復し、大きな勝利をつかんだ。「中国語を話す人びとにとって、台湾が民主主義の唯一の土地である。」 祭はそう主張した。それは非常に優れた、狡猾なメッセージであった。
彼女の勝利は、中国が「一国二制度」により平和的に台湾を統一する、という主張を否定することになる。そして、もし香港のデモが再びエスカレートする中で、台湾がそれを支持するなら、北京は武力統一の最大の機会を得るかもしれない。
NYT Jan. 12, 2020
When Populism Can’t Beat Identity Politics
By Nathan F.
Batto
FT January 13, 2020
Hong Kong citizens head to Taiwan to celebrate a momentous vote
Nicolle Liu
FP JANUARY 13, 2020
Taiwan’s Voters Show How to Beat Populism
BY LEV NACHMAN
FP JANUARY 15, 2020
Taiwan Deserves to Be a Normal Country
BY SALVATORE
BABONES
(後半へ続く)