IPEの果樹園2019

今週のReview

12/16-21

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21世紀の社会主義 ・・・イギリス総選挙 ・・・スーダン連立政権 ・・・サーベイランス資本主義 ・・・故ボルカーの評価 ・・・不平等と良い職場 ・・・香港デモの指導者と非暴力

[長いReview

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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 21世紀の社会主義

NYT Dec. 7, 2019

Finland Is a Capitalist Paradise

By Anu Partanen and Trevor Corson

私たちはアメリカ市民だった。私たちの家族の未来は明るいはずだった。しかし、私たちは、それがとても不確実で、不安を感じていた。

私たちの所得は、独立契約の、テンポラリーなギグワークから生じていた。医療保険は常に不安の源だった。年ごとに、民間の保険契約、フリーランスのための法外な保険契約、複雑で、しかも金のかかるオバマケアを渡り歩いた。子供がいたので、デイケアのコスト、将来には破産しそうな教育コスト、優良な学区の住宅費用、塾の支払いが待っていた。さらに、大学の授業料だ。

こうしたことを熟慮していたときに、私たちの1人、Anuは生まれ故郷で仕事の機会を得た。フィンランドのヘルシンキだ。

トランプ大統領を含むアメリカ人の一部には、北欧と言えば、持続不可能な、抑圧的な、「社会主義的な乳母国家が多い」ところである。私たちが移住を考えていると、アメリカの友人たちは励ましてくれた。ソビエト型の官僚国家に行くわけではない。シリコンバレーのベンチャー投資家である友人は、子供が3人もいて、とても羨ましがった。

今、1年以上を過ごして、私たちはここで暮らすこととアメリカで暮らすこととの、途方もない違いを知った。それはアメリカ人には想像を絶することだろう。

ここで暮らすことで、私たちは自由が増えたと実感した。フィンランドでは、自動的に、税金による国民皆保険にカバーされる。申請書類の山も請求書も要らない。子供は、すばらしい、プロフェッショナルの、倫理的な多様さを考慮した、デイケア・センターに行く。費用は、月に300ドルほどだ。公立のデイケアには上限があり、すべての家族に政府が補助する。もしここに住み続ければ、娘は世界最高水準のK-12教育システム(幼稚園から高等学校まで)に、まったくコストなしに、どの地区に住んでも、行くことができる。大学の授業料も無料である。

多くのアメリカ人は、それを聞くと、フィンランド市民と企業が、自由と機会、富を失う代償を支払っている、と思うかも知れない。しかし、フィンランドは世界で最も裕福な国の1つであり、成功している多くのグローバル企業が本社を置いている。

サンダース上院議員やコルテス下院議員は、しばしばアメリカで、過激な主張をする、として汚名を着せられる。しかし、フィンランドなら、その政策は普通の主張であり、特に社会主義的でもない。国民皆保険や無料の大学教育は、北欧諸国の人びとなら、21世紀の競争に生き残るために企業のビジネス環境を整備する基本条件、と考える。


 イギリス総選挙

SPIEGEL ONLINE 12/06/2019

A Political Shift in Northern England

Ground Zero of the Brexit Class War

By Jörg Schindler

イングランド北部が最近のUKで最も重要な選挙を決定するだろう。そこはかつて労働党の地盤であったが、Brexitが全てを変えた。

ジョンソンは大きな博打を打った。保守党を驚異的なスピードで右に移動させた。穏健派の保守党員を除名し、リベラルな有権者を無視した。現在、保守党は少数派政権だ。ロンドンやスコットランドでは議席を失うだろう。もし保守党が議会の多数を得るとしたら、それは労働党から多数の議席を奪うときだ。

その結果、Wiganのような貧しい街が選挙戦の主戦場になった。ジョンソンは、伝統的な労働党の赤い地区を、保守党のブルーに染めようとしている。

北部イングランドがサッチャーに対する反抗を示した1980年代以降、保守党はこの地域で選挙に勝てないと考えられてきた。しかし、Brexitがこの状況を変えた。脱工業化とグローバリゼーションの時代を経て、旧炭鉱地帯の有権者たちはこぞってEUからの離脱に投票し、いまなお離脱していないことに憤慨している。これがジョンソンの狙いに合致する。

保守党は、北部の中年白人層、大学卒業資格のない、地方居住者たちが、労働党のBrexitに対する姿勢を嫌っている、と観る。ジョンソンらはそのみじめな暮らしについてお世辞を並べ、財政支出を約束する。11月後半の長雨で多くの家庭は避難し、首の高さまで水没する地域があった。泥沼になった街を、ジョンソンは長靴を履いて訪問した。

Wiganの市庁舎で、Steve Dawber8万人の市長を務める労働党政治家だ。その経歴は、40年前、Heinzの缶詰をパックする工場で働いたことに始まる。当時、Heinzには14000人が働いていたが、今では機械化されて、年に約10億個の缶詰を処理する1200人が働くだけだ。

Wiganの繊維工場は、かつての炭鉱町にあったが、鉱山の閉鎖とともに終わった。しかし、ロンドンの政府に対する憤慨が高まったのは、銀行・金融危機が起きてからだ。何十億ポンドも銀行救済に投じた後、2010年に保守党政権で首相となったキャメロンは、財政緊縮の新時代を告げた。

政府の野蛮な歳出削減が、労働党の地盤である北部イングランドを強烈に破壊した。数えきれないほど多くの図書館、スイミングプール、若者たちのクラブや公共施設が閉鎖された。賃金は低迷し、多くの家計が脆弱になった。保守党政権の社会支出カットによって、貧困が急増した。

その6年後に、Brexitの国民投票が行われた。離脱推進派は、ヨーロッパからの外国人労働者と、無慈悲なブリュッセルの官僚たちが、人々の苦しみの原因だ、と宣伝して成功した。UK全体で52%が離脱を支持したが、Wigan64%だった。

コービンJeremy Corbynは、繰り返し保守党政権の緊縮策を攻撃した。ジョンソンの保守党は、富裕層のための、富裕層の政権だ、と。労働党は830億ポンドの公共投資を約束する。大企業や富裕層に課税し、「社会転換基金」を設立する、という。北部は最も多くそれを受け取るだろう。それは人々に支持されているが、コービンに実行できるとは思えないようだ。どんな約束をしても、コービンのBrexitに関する姿勢がマイナスだ。

選挙後に、もし政権を執れば、コービンはEUとソフトなBrexitを再交渉し、それを国民投票にかける、という。Brexitをやめることも選択肢に含む。それはロンドンとイングランド南部の有権者に強く支持される。しかし、北部の労働党支持者たちは、裏切りだ、と感じた。彼らは、たとえ生活が悪化しても、離脱を求めている。

コービンの階級戦争を唱える伝統的な演説も、もはや労働党の支持層をひきつけない。エリート校出身のジョンソンが北部労働者の友人としてふるまう。

Wiganの人びとは、少なくとも、ジョンソンを支持していない。しかし、生涯を通じて労働党に投票してきた老婦人も、今回は労働党に投票しない、と言う。

The Guardian, Wed 11 Dec 2019

The Tories can’t offer tax cuts – there will be no money left after Brexit

Simon Wren-Lewis

2大政党の政策公約が大きく異なることを説明するコメントがほとんどない。

労働党は、支出を増やすことについて多くの提案を行っている。大学授業料をなくす。学校や幼児教育に投資する。医療サービス、地方政府、ソーシャルケア、大学融資、公務員の給与にも支出を増やす。それは高所得者や企業に対する増税でまかなう。また、住宅建設、経済のグリーン化を含む、公共投資を大幅に増やす。その財源は債券発行である。また、年金給付年齢の引き上げによる損失を受ける女性に補償する。

保守党の公約は、対照的に、何もない。おそらく、その理由は簡単だ。Brexitである。

Brexitは、両党の経済計画を評価する上で重要だ。労働党の政権下では、Brexitが起きないだろう。保守党はいかなるソフトBrexitの含まれる国民投票にも反対するだろうから。保守党政権の下では、ノーBrexit(約束通り1年しかEUと交渉しないなら)か、ハードBrexit(合意なしの一方的離脱)になる。ハードBrexitでも中期的に経済的なダメージが大きく、ノーBrexitならさらに大きい。

労働党政権の支出は政府債務を増やすが、保守党政権のノーBrexitがもたらす債務の増大ははるかに大きいだろう。それだけ経済的ダメージを受けるからだ。保守党のマニフェストがあれほど何も約束しないのは、Brexitで、政府は財源を得られないからだ。

労働党の計画は、需要を大幅に増やす。その成果は経済の余剰生産力、企業が価格を引き上げるか、投資と生産性を増やすか、によって変わる。生産力余剰は少ないから、インフレ圧力を抑えるためにイングランド銀行が短期金利を上げ、GDP増は小さい、とエコノミストたちは考える。金利上昇は小さく、GDPを大きく増やすという予測もある。

保守派の多くが、労働党が勝利すれば、資本逃避が起き、ポンドの価値は急落する、と警告する。しかし2つの要因から、それは起きないだろう。1.金利上昇あるいはGDP成長はポンドの魅力を高める。2.労働党政権下ではハードもノーも、Brexitが避けられる。それは、国民投票以後、減価しているポンドの価値を高めるだろう。労働党は金融政策と財政ルールにおいてラディカルではない。投資家が恐れることはない。

9年間の経済停滞を経て、低金利で債務を増やすことができる今、2016年のBrexit国民投票に至った諸問題を解決するため、経済に投資するチャンスがある。選挙は、Brexitによる停滞と孤立に向かうのか、それとも、他のヨーロッパ諸国に近い、投資と再分配に向かうのか、を問うものだ。

残念だが、各選挙区で1人だけが当選する選挙制度のせいで、多くの政党が後者を望むのに、われわれはBrexitの道を進むだろう。


 スーダン連立政権

FP DECEMBER 6, 2019

The Enemies of Sudan’s Democracy Are Lurking Everywhere

BY REBECCA HAMILTON

スーダン人には誇りとする抵抗の歴史がある。独立以来、2つの政権を倒した。しかし、バシールOmar al-Bashir大統領の体制は違った。抵抗運動は、体制の冷酷な秘密警察に破壊された。

しかし今回は違った。経済状態が崩壊した。パンの価格が一晩で3倍になった。家族を養うために、失うものは何もないと感じた。抵抗は何カ月も続き、女性や子どもも参加した。2019411日、軍隊がバシールを辞任させた。

軍隊の支配を人々は望まなかった。バシールの辞任後の数週間、彼らは軍の兵舎の前に座り込んだ。63日に座り込みの人びとが襲撃された。犠牲者は、政府のRapid Support Forces (RSF)が棍棒を持って襲い掛かり、建物から狙撃した、という。

今は移行政府が成立している。その使命は、スーダンの新しい革命の支柱である、自由、平和、正義、をもたらすことだ。しかし、移行体制が崩壊する脅威は多く存在する。


 サーベイランス資本主義

FT December 9, 2019

How to take back control from the Big Tech barons

Rana Foroohar

現代の超富裕層は、過去の富裕層と何が違うのか? シリコンバレーの著名な投資家と議論した。

アメリカの起業が減った。不平等と政治的な分極化が進んだ。しかし、私は楽観論を語った。19世紀の鉄道王たちも分割されたのだから。しかし、彼はそれに反対した。彼らは選挙の結果を変えたわけではない、と。

過去においても、億万長者は政治に介入した。鉄道王のThomas Scott1876年の大統領選挙でRutherford B Hayesを、その富とコネで助けた。第2大陸横断鉄道が、その見返りだった。

FacebookGoogleAmazonはそれと何が違うのか? 彼らが富を使って政治団体や政治家への献金をするだけでなく、もっと詳細に、個人の選択を変えることができる力を持った、ということだ。彼らが創り出したものは、サーベイランス資本主義、とよばれている。

オンラインで、さらにオフラインでも。ハンドセット、スマートフォン、スマートカー、センサー、ますます増大する消費者情報、スマートシティ。個人は砂粒のように切り離されている。異なる価格、異なる広告、異なる情報を観て、個人は行動パターンを変えてしまう。ますます多くのデータがシェアされ、アルゴリズムはわれわれの行動を予測する。われわれを好きな商品に向けて誘導する。

裁判所はいまだに、2016年のアメリカ大統領選挙、UKBrexit国民投票、その他のヨーロッパ選挙で、オンラインの情報操作が作用したかどうか、結論を出せない。

民主党の大統領候補争いに優勢なエリザベス・ウォレンは、ハイテク大企業を分割する意志を示している。しかし、たとえFacebookを分割しても、サーベイランス資本主義は死滅しないだろう。個人に対するトラッキングとマイクロターゲッティングを禁止するしかない。それは行き過ぎだ、と思っていた。しかし、アメリカの市場競争を回復するだけでなく、世界でリベラルな民主主義への信頼を取り戻すには、それしかないと思うようになった。


 故ボルカーの評価

FP DECEMBER 9, 2019

What Paul Volcker Got Right About Global Finance

BY MICHAEL HIRSH

日曜日、元アメリカ連銀議長、ボルカーPaul Volcker92歳で亡くなった。ボルカーは、1970年代、80年代の激しいインフレーションを鎮静化したことで高く評価されているが、もう1つ、重要な遺産がある。生涯を通じて一貫した形で、グローバル金融市場の規制緩和に反対したことだ。

ボルカーは、「小さな政府」論のチャンピオンであったロナルド・レーガン大統領に再任されたのだが、金融の規制緩和はあまりにも危険である、と警告した。金融市場はその他の財・サービスの市場と違って、パニックやマニアの行動に陥りやすい。金融市場は、普通の市場では起きないような、破滅的な崩壊を引き起こし、経済全体を巻き込む、と彼は理解していた。

ボルカーは、特に、後任であるアラン・グリーンスパンの時代に、ウォール街が進めた金融緩和に抵抗した。しかし、反対の意見を公表するのをためらった。連銀議長を批判することになるからだ。それを、後年、ボルカーは強く後悔していた。

ボルカーは、6フィート7インチの長身で、ヘビースモーカーであったが、権力者にも真実を告げる勇気があった。レーガンの時代に、大統領の意向に従わず、ホワイトハウスを訪問しなかった。中央銀行は政治から独立していなければならない、と考えたからだ。

バラク・オバマが民主党の大統領候補者として登場したとき、ジョージ・W・ブッシュの失政に深く失望していたボルカーは、改革の指導者としてオバマ支持を表明した。まだヒラリー・クリントンが優勢であったときだ。しかし、オバマ政権の初期、サマーズやガイトナーに比べて、ボルカーはまったく無視された。オバマが、金融機関の莫大な利潤や、サマーズらのやり方に憤慨して、やっとボルカーのアイデアを受け入れるようになり、ボルカーを金融改革の責任者に指名した。

ボルカー・ルールはドッド=フランク金融改革法の基調となった。ボルカーは、連邦預金保険で保護されている商業銀行を、ヘッジファンドのような、投機的、略奪的なトレーディングから、切り離すように求めた。しかし、今また、ウォール街の大銀行はボルカー・ルールを侵食する長期のキャンペーンを展開している。

ボルカーは金融改革派に強い影響を与えた。しかし問題は、アメリカの有権者が彼に従うか、である。


 不平等と良い職場

PS Dec 10, 2019

Tackling Inequality from the Middle

DANI RODRIK

異なる不平等が人々の不満を強めている。問題は、安定した、良い職場が少なくなったことだ。脱工業化、国際競争の激化、グローバリゼーション、中国などからの輸入品。技術革新が流通にかかわる人々に影響し、生産・事務・セールスの多数の労働者に労働条件や給与の悪化を強いた。それはまた、地理的、社会的な隔離を意味した。反映する、コスモポリタンな都市部と、遅れた地方のコミュニティー、小さな町、都市の衰退地区。

良い職場をもっと多く創りだす経済を築く必要がある。もしわれわれに大胆で、創造的な試みがないなら、旧来の、破滅的なアイデアを広める連中がのさばり始める。


 香港デモの指導者と非暴力

FT December 12, 2019

Hong Kong’s protesters need a leader now more than ever

Jamil Anderlini

日曜日、香港中心部を80万人が平和的にデモ行進した。彼らは民主主義と、警察の暴力に対する捜査を求めた。中国の国営メディアはニュースの扱いに苦慮した。「敵対的な外国勢力」が支援する、一部の暴力的集団、という北京の説明に矛盾するからだ。

中国の指導者たちは、30年間で最大の中国本土における反政府行動を終わらせる小さな機会を得た。警察に対する独立の捜査を認め、香港返還時に約束した、普通選挙に向けた現実的な提案を行うことだ。抗議デモや選挙結果を無視することは、次の大規模な暴力に至る。

抗議運動の大きな部分が過激化しているのは明らかだ。大義のために暴力が受け入れられている。マーチン・ルーサー・キングJrが述べたように、抑圧された感情は非暴力的に表れない。しかし、運動は重要な分岐点にある。

指導者のいない運動は、今や、非暴力の直接行動を唱える指導者を見出すべきだ。大義は、破壊行為の蔓延や、反対する市民を攻撃することを正当化しない。中国本土からの移住者に対する排外主義的行動もやめるべきだ。740万人の香港市民の中で、約100万人は1997年以降に本土から来た者だ。

135000万人の中国国民にとって、暴力的な抗議は無駄であり、嫌われている。共産党と戦って若者たちが勝つことは不可能であり、自分たちの街を破壊しているだけだ。

しかし、一貫して、非暴力の、抵抗運動を続けることで、その高い精神性を示す指導者は、境界を越えて同胞たちの心に訴えるだろう。暴力的な、排外主義的な運動にはできないことだ。

そのような指導者がいないとき、北京の譲歩はなく、香港は新しい暴力のエスカレーションに向かう。抵抗運動が死滅するとき、最も過激な者たちは香港住民が大義に背いていると感じる。それは当局の野蛮な反撃を許すものだ。過激な運動家が駐屯する人民解放軍を挑発する。

北京は人民解放軍を使いたくない。彼らの視点から、それよりもっと恐れることが1つだけある。それは、非暴力の抵抗運動への共感が中国本土に広がることだ。

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The Economist November 30th 2019

Democracy: A clarion call

Inequality: Measuring the 1%

Indian politics: The villain of Maharashtra

Chaguan: Heroic, expendable

Nuclear weapons: Over here

Immigrant districts: In the ghettos

Global trade: It’s the end of the world…

Free exchange: Can’t buy me love

(コメント) 歓喜に沸く香港と,不安や怒りを刺激する欧米では,民主主義の全く異なる面が示されています.インド(マハラシュートラの権力闘争)や中国(出稼ぎ労働者の年金)の政治経済モデルも,民主主義とは何か,その積極的な意義を示すための仕組みが整うまでは,そう簡単に答えにならない気がします.

移民の暮らすヨーロッパの「ゲットー」について,核兵器を保有し,共有するNATOの仕組みについて,民主主義はどのように関わるべきか?

グローバリゼーション,技術革新,国際競争,住宅問題,移民・難民と社会の保守化,政治の右傾化について,社会的な基準や合意がなければ,民主的な政治は溶解する危険があるのです.

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IPEの想像力 12/16/19

ゼミで,ユルゲン・ハーバーマスの『デモクラシーか資本主義か』を読んでいます.しかし,文章がむつかしい.学生たちには,容易に歯が立ちません.

21世紀は権威主義の時代になるのか?」 という問いに,ハーバーマスは,そうではない,と考えます.なぜなら,権威主義体制は,市場経済(資本主義)と民主主義との相反するダイナミズムに対する,バランスを取ることができないからです.

ハーバーマスは,198990年以降,資本主義の「正当性」が問題である、と主張しました.資本主義と社会主義の対立は終わって,資本主義の宇宙から脱出する途はない.それでも資本主義を社会にふさわしい形に変える必要がある.馴致・飼いならす,という言葉を使います.

冷戦終結後,グローバリゼーションを称揚してきた、リベラルな資本主義という主張は,そもそも対立する2つ(資本主義・民主主義)を調和するかのように思い込んでいました.資本主義は,急速に経済を編成(それゆえ社会改造)しながら,大きな富を生み出します。しかし他方で,非常に不平等な,不安定な生き方を人々に強いました.それに憤慨・抵抗する声に,民主主義が新しい社会的な合意形成を指導し,効果的な介入手段や規制のための制度を築くことで応えなければなりません.

その用意がないまま、人びとは不安を強め、ポピュリズムが支配層の間隙をついて現れたのは,冷戦終結から世界金融危機までの「西側」の高揚感が失われたからでしょう.ポピュリストたちは、世界の現状を、人々の苦しみを無視して(富裕層、金融街、EU、ワシントン、IT企業・・・)エリートたちが肥え太った、と攻撃しました。

フェイクニュースやSNSの情報操作、ターゲットを絞った政治広告に翻弄されて、民主主義は混乱したままです。政治的な分断は、階級的な左右の立場(労働者vs資本家)においてではなく、グローバリゼーションやAIの急速な普及により新しい地位や富を得た者たち、巨大都市の専門職層と、他方で、時代から取り残された、西側の旧工業地帯、地方都市や中小の町、荒廃するコミュニティーに残された老人、高等教育を受けていない労働者たちとの間に、強く意識されるようになりました。彼らがBrexitやジョンソン、ドナルド・トランプを支持したのは当然です。

経済は減速し、社会が保守化・右傾化する中で、移民や難民を排斥し、イスラム教徒や社会的弱者を攻撃し、中国からの輸入品の急増、製造業の工場閉鎖・海外移転、グローバリゼーションを推進した国際機関や条約を、彼らは嫌ったのです。支配層と共謀した社会民主主義政党は、労働者を見捨てたと批判され、ジョンソンやトランプが、貧しい衰退地域や失業者を助けるために富裕層や企業に課税するわけがないのに、既存秩序の破壊者、新しい救世主として、ポピュリズム運動に参加する者が増えました。

資本主義も、民主主義も、期待されたようには機能していません。それに代わる新しい改革や社会政策、産業振興は手探りです。ナショナリズムや保護主義が、貧しい者の未来を暗くするとしても、政治的な支持を失うとは限りません。

極端な個人主義、政治への冷笑、社会的理想の消滅。旧秩序の破壊を呼びかけ、民主主義と称して混乱を広める暴力集団が西側に増えています。

しかし香港やアフリカでは、もしかすると、社会主義と民主主義の再発見が始まっています。

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