IPEの果樹園2019

今週のReview

12/16-21

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21世紀の社会主義 ・・・イギリス総選挙 ・・・NATOの危機 ・・・エチオピアの危機 ・・・スーダン連立政権 ・・・サーベイランス資本主義 ・・・ヘリコプター・マネー ・・・故ボルカーの評価 ・・・ファストファッション ・・・不平等と良い職場 ・・・ポピュリズムの生成メカニズム ・・・香港デモの指導者と非暴力

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 21世紀の社会主義

NYT Dec. 5, 2019

I Was Once a Socialist. Then I Saw How It Worked.

By David Brooks

私は、大学にいたころ、社会主義者だった。大企業はすべての者が共有する。利潤最大化ではなく、すべての者の利益に基づいて決定する。

社会主義者が支持されるのはなぜか、私にはわかる。貧困や不平等の中でわれわれは暮らすべきなのか? 人々を利潤よりも優先するべきではないか? 公正な社会でこそ最善の人生が過ごせるはずだ。社会主義は、いかなる時代でも、人びとの強烈な信仰の対象、宗教である。

しかし、ジャーナリストとして働き出してから、すぐに気が付いた。政府職員たちは希望する社会を設計することなどできない。彼らが悪人だとか、愚か者だからではなく、世界が複雑すぎるからだ。

私は、資本主義が、社会主義にできないことを、うまく成し遂げることを理解した。それは、人びとが何かを行うことを助ける、学習プロセスなのだ。資本主義は、市場、価格シグナル、フィードバックの群れである。それはあなたを、1日も欠かさず、競争的な利潤動機によって、学習し、革新するように促すのだ。

社会主義は経済を計画し、価格や市場シグナルに介入するが、利潤動機を排除し、抑圧する。どれほど巨大なコンピューターも、資本主義の学習プロセスを創り出せなかった。人類の生活水準は、資本主義が現れるまで、ほとんど変化しなかった。その後、平均的な人間に利用できる財とサービスの数は100倍にも増えた。資本主義は、人類史における貧困の減少にも大きく貢献した。

自由市場のシンクタンクThe Fraser Instituteによれば、規制が少ない、自由貿易、所有権の確立、を基準に諸国を順位づけると、最も自由な経済は、香港、アメリカ、カナダ、アイルランド、ラトビア、デンマーク、モールシャス、マルタ、フィンランドである。1人当たりGDPの平均額はアマン6770ドルだ。最低の順位にある諸国のそれは、6140ドルである。

私は社会主義の病状をすぐに学び、次第にホイッグになった。

私にとっての最初の経済的英雄は、アレグザンダー・ハミルトンである。彼は無一文でアメリカに来て、トマス・ジェファーソンのような、巨大な土地寡占体制における支配者が経済を動かすのを観た。そして、だれもが資本家になることこそ、その解決策だった。彼は信用市場を創って、資本を流動的な形で取引し、より多くの人が投資に利用できるものにした。

私の2人目の英雄はエイブラハム・リンカーンだ。彼は貧しい生まれで、ホイッグとして活躍した。奴隷制よりも、銀行やインフラ整備を多く語った。大学に土地を与えて、人びとが資本家として競争するスキルを学べるようにした。

資本主義の問題に対する答えは、資本主義を広め、より公平にすることにある。

すべての人類のシステムと同様に、資本主義はつねに不均衡を生じる。この1世代で、グローバルな不平等は減少したが、その反面、アメリカの低熟練労働者たちはベトナム、インド、マレーシアの労働者と競争するようになった。豊かな諸国の国内で、不平等は拡大した。

また、教育も技術進歩に追いついていない。多くの人びとが、不十分な学校教育、家庭環境、近隣地区に育って、優れた資本家になるスキルを得ていない。

しかし、さまざまな改善策が取られている。政府が全て間違っている、市場のダイナミズムを奪う、と考えてはならない。スカンジナビア諸国は、福祉国家で支援するが、非常に自由な市場を持っている。

私は家族とともに、ユダヤ人移民の歴史に属する。多くの人びとが、移民として、アメリカにやってくる。私は彼らが好きだ。彼らは足で資本主義を選んだ。資本主義は、100年の社会実験を経て、社会主義に勝利した。今は、アメリカ、カナダ、デンマークの民主的な資本主義と、中国やロシアの権威主義的な資本主義とが争っている。

NYT Dec. 7, 2019

Finland Is a Capitalist Paradise

By Anu Partanen and Trevor Corson

私たちはアメリカ市民だった。私たちの家族の未来は明るいはずだった。しかし、私たちは、それがとても不確実で、不安を感じていた。

私たちの所得は、独立契約の、テンポラリーなギグワークから生じていた。医療保険は常に不安の源だった。年ごとに、民間の保険契約、フリーランスのための法外な保険契約、複雑で、しかも金のかかるオバマケアを渡り歩いた。子供がいたので、デイケアのコスト、将来には破産しそうな教育コスト、優良な学区の住宅費用、塾の支払いが待っていた。さらに、大学の授業料だ。

こうしたことを熟慮していたときに、私たちの1人、Anuは生まれ故郷で仕事の機会を得た。フィンランドのヘルシンキだ。

トランプ大統領を含むアメリカ人の一部には、北欧と言えば、持続不可能な、抑圧的な、「社会主義的な乳母国家が多い」ところである。私たちが移住を考えていると、アメリカの友人たちは励ましてくれた。ソビエト型の官僚国家に行くわけではない。シリコンバレーのベンチャー投資家である友人は、子供が3人もいて、とても羨ましがった。

今、1年以上を過ごして、私たちはここで暮らすこととアメリカで暮らすこととの、途方もない違いを知った。それはアメリカ人には想像を絶することだろう。

ここで暮らすことで、私たちは自由が増えたと実感した。フィンランドでは、自動的に、税金による国民皆保険にカバーされる。申請書類の山も請求書も要らない。子供は、すばらしい、プロフェッショナルの、倫理的な多様さを考慮した、デイケア・センターに行く。費用は、月に300ドルほどだ。公立のデイケアには上限があり、すべての家族に政府が補助する。もしここに住み続ければ、娘は世界最高水準のK-12教育システム(幼稚園から高等学校まで)に、まったくコストなしに、どの地区に住んでも、行くことができる。大学の授業料も無料である。

多くのアメリカ人は、それを聞くと、フィンランド市民と企業が、自由と機会、富を失う代償を支払っている、と思うかも知れない。しかし、フィンランドは世界で最も裕福な国の1つであり、成功している多くのグローバル企業が本社を置いている。

サンダース上院議員やコルテス下院議員は、しばしばアメリカで、過激な主張をする、として汚名を着せられる。しかし、フィンランドなら、その政策は普通の主張であり、特に社会主義的でもない。国民皆保険や無料の大学教育は、北欧諸国の人びとなら、21世紀の競争に生き残るために企業のビジネス環境を整備する基本条件、と考える。

なぜ社会主義は、社会主義的なフィンランドより、資本主義的なアメリカが支持されるのか?

かつて、100年以上も前に、フィンランドで社会主義革命があった。工業化過程にあったフィンランドは、ロシア帝国の崩壊で独立した。労働者と借地農は惨めな条件に不満を持ち、蜂起した。資本家、保守的な地主、中上流階層は、すばやく、暴力的に対応した。内戦となり、35000人もの死者が出た。

フィンランドで再び流血の紛争が起きたのは、第2次大戦中に、隣国のソ連を多大の犠牲を払って排除したときだ。戦後、労働組合は勢力を強め、工業化し、国際化する時代に、社会主義に共感する者が増えた。労働者を代表する政治家からの圧力を受けて、経営者たちは紛争が激化するのを避けた。私有財産と新産業を守るために、戦術を変えたのだ。

戦後、フィンランドの資本主義は、政府とともに長期戦略を定め、労働者からも経営に参加させて、労働組合と話し合うようになった。資本家たちは、高度に累進的な税率が、彼ら自身の長期的な利益になることを理解した。健康的で、生産的な労働者を維持することは、そして、有益な労働市場を形成することは、技術革新に伴う急速な産業の再編や失業に対して、リスクを緩和し、ショックを緩衝・吸収するのに役立つからだ。

フィンランドに来れば、その生活の質が高く、すばらしいショッピングモール、自動車、国際的に競争力のある企業があることは明らかだ。

The Guardian, Mon 9 Dec 2019

The Guardian view on Finland’s new PM: a different type of leadership

Editorial

FT December 10, 2019

Winner-takes-all digital economy poses risk for capital markets

Philip Stafford in London

SPIEGEL ONLINE 12/10/2019

Political Economist Daran Acemoglu

'Trump Poses a Great Risk to U.S. Democracy'

Interview Conducted by Michael Sauga

・・・アメリカは中国に勝てるだろうか?

・・・それは疑わしい。アメリカのシステムは、第2次世界大戦の後に行っていたような、繁栄を分かち合う方法を見失っている。特に、金融危機は民主的制度や経済専門家への信頼を崩壊させた。

・・・アメリカ小屋内の地域によっては、アフリカと同じくらい、社会的移動性が低くなっている。貧困率がポルトガルやギリシャと同じ水準にまで悪化している。

・・・トランプが勝利した地区は、中国からの輸入急増によって製造業の職場が消滅したところだ。不平等の拡大、政治的な代表制への不信、それらが歴史的に政治システムを弱め、デマゴーグを登場させた共通点だ。

・・・たとえば、中世のイタリア諸都市。共和制と民主主義が、同様の不振から、民衆は強い指導者を支持したが、旧エリートとの共謀、新しい指導者の私的な利益を広める結果になった。

・・・トランプは、かつてのファシストやナチと同じである。トルコのエルドアンとそっくりだ。

・・・経済的繁栄、と政治的自由との間で、バランスを取るのはむつかしい。

NYT Dec. 11, 2019

As a Disorienting Decade Closes, a Perilous One Begins

By Roger Cohen


 イギリス総選挙

The Guardian, Fri 6 Dec 2019

The ‘Boris being Boris’ shtick is a cover for racism and lies. But it’s wearing thin

Fintan O'Toole

ボリス・ジョンソンは、漫画のキャラクターになって、人びとの注目を集めている。有名人の効果はプラスにも、マイナスにもなる。

The Guardian, Fri 6 Dec 2019

I’m a Conservative. But it is time to vote with your head as well as your heart

John Major

The Guardian, Fri 6 Dec 2019

Labour has a strong economic plan. But it still has to shift voters’ faith in austerity

Larry Elliott

The Guardian, Fri 6 Dec 2019

From Johnson’s lies to Corbyn’s promises – this election is about trust

Gary Younge

選挙まで1週間となれば、最重要課題は信頼を得ることだ。保守党の人びとが言うことは信頼できるか? 労働党の約束は信頼できるか? 保守党のすべての問題は、その指導者、ボリス・ジョンソンにある。彼はうそつきだ。それが党派的な主張ではなく、事実であることは明らかだ。過去の数々の経歴はそれを示す。

彼をよく知る者ほど、彼を全く信頼していない。彼の以前の雇用主であるthe Daily Telegraph Max Hastingsは、彼が真実と何かを認識できない、という。公私の生活においてそうだ。彼が外相として務めたメイ首相は、彼が極秘情報にアクセスするのを拒んだ。

彼が嘘つきであることは、保守党にも影響を及ぼしている。保守党の広報誌を、そのツイッター名として、“@factcheckUK”に変えた。また、ジョンソンが出席しないという理由で、気候変動の意見を党員が述べるのを拒んだ。

労働党にとっては、コービンが本気で言っているかどうかが問題ではない。富の再分配、公共サービスへの投資増、経済のいくつかの部門の国有化、といった党の野心的マニフェストは、本当に実行できるのか、と人びとは疑っている。

私は、こうした約束や政策は重要だと思う。国民の半数以上が、経済的不平等は大きすぎると考えている。鉄道、水道、エネルギーの国有化も半数以上が支持する。NHS(医療保険制度)を強化するために増税することも。

しかし、労働党が新しい約束をするたびに、私は不安になる。この国にそれができない、と思うからではない。その公約を実現するために、われわれの公共支出は平均的な開発諸国より少し多くなるが、ノルウェー、スウェーデン、フランスよりもまだ少ない。

問題は、労働党がこれを説明しきれてないことだ。国債発行、富裕層への増税、過剰な利潤への税、という提案で、人びとの十分な理解を得られていない。7年間の緊縮財政を終えても、この国には何もできない、と言われてきた人びとが、当然、疑いを抱くのだ。

この1週間で、労働党は2つのことをしなければならない。1.ジョンソンが信頼できない指導者であることを示すだけでなく、Brexitの主張に結びつけること。彼はBrexitしないし、する気がないし、できない。通商条約は複雑で、短期間には合意できない。2.労働党は新しい約束をしない。人びとは労働党がこの国を転換する政党であると理解している。今や、その公約を実行できる、ということを示すべきだ。

SPIEGEL ONLINE 12/06/2019

A Political Shift in Northern England

Ground Zero of the Brexit Class War

By Jörg Schindler

イングランド北部が最近のUKで最も重要な選挙を決定するだろう。そこはかつて労働党の地盤であったが、Brexitが全てを変えた。

この土地、Wiganに住む男性は、Darylという仮名で呼ぶが、3月に中古家具の店を開いた。Bulldog Forgeという店名だ。それはこの土地で200年も繁栄した企業Bulldog Toolsの名にちなむ。今では、その中心部を、家具店、パブ、ホテルなどが埋める。

54歳のDarylは、UKで最も貧しい地区の1つに暮らす。彼は看護師、ホームレス、家庭内暴力の被害者であった。ずっと労働党に投票してきたが、今回はわからない。

ボリス・ジョンソンがもたらした選挙は、この4年半で3度目だ。首相は、Brexitの混乱が政治を妨げている、という。保守党に絶対多数を与えてくれれば、1月末にBrexitを実行し、政治を指導できる、と。UKは、ついにブリュッセルから解放される。

ジョンソンは大きな博打を打った。保守党を驚異的なスピードで右に移動させた。穏健派の保守党員を除名し、リベラルな有権者を無視した。現在、保守党は少数派政権だ。ロンドンやスコットランドでは議席を失うだろう。もし保守党が議会の多数を得るとしたら、それは労働党から多数の議席を奪うときだ。

その結果、Wiganのような貧しい街が選挙戦の主戦場になった。ジョンソンは、伝統的な労働党の赤い地区を、保守党のブルーに染めようとしている。

北部イングランドがサッチャーに対する反抗を示した1980年代以降、保守党はこの地域で選挙に勝てないと考えられてきた。しかし、Brexitがこの状況を変えた。脱工業化とグローバリゼーションの時代を経て、旧炭鉱地帯の有権者たちはこぞってEUからの離脱に投票し、いまなお離脱していないことに憤慨している。これがジョンソンの狙いに合致する。

保守党は、北部の中年白人層、大学卒業資格のない、地方居住者たちが、労働党のBrexitに対する姿勢を嫌っている、と観る。ジョンソンらはそのみじめな暮らしについてお世辞を並べ、財政支出を約束する。11月後半の長雨で多くの家庭は避難し、首の高さまで水没する地域があった。泥沼になった街を、ジョンソンは長靴を履いて訪問した。

Wiganの市庁舎で、Steve Dawber8万人の市長を務める労働党政治家だ。その経歴は、40年前、Heinzの缶詰をパックする工場で働いたことに始まる。当時、Heinzには14000人が働いていたが、今では機械化されて、年に約10億個の缶詰を処理する1200人が働くだけだ。

Wiganの繊維工場は、かつての炭鉱町にあったが、鉱山の閉鎖とともに終わった。しかし、ロンドンの政府に対する憤慨が高まったのは、銀行・金融危機が起きてからだ。何十億ポンドも銀行救済に投じた後、2010年に保守党政権で首相となったキャメロンは、財政緊縮の新時代を告げた。

政府の野蛮な歳出削減が、労働党の地盤である北部イングランドを強烈に破壊した。数えきれないほど多くの図書館、スイミングプール、若者たちのクラブや公共施設が閉鎖された。賃金は低迷し、多くの家計が脆弱になった。保守党政権の社会支出カットによって、貧困が急増した。

その6年後に、Brexitの国民投票が行われた。離脱推進派は、ヨーロッパからの外国人労働者と、無慈悲なブリュッセルの官僚たちが、人々の苦しみの原因だ、と宣伝して成功した。UK全体で52%が離脱を支持したが、Wigan64%だった。

コービンJeremy Corbynは、繰り返し保守党政権の緊縮策を攻撃した。ジョンソンの保守党は、富裕層のための、富裕層の政権だ、と。労働党は830億ポンドの公共投資を約束する。大企業や富裕層に課税し、「社会転換基金」を設立する、という。北部は最も多くそれを受け取るだろう。それは人々に支持されているが、コービンに実行できるとは思えないようだ。どんな約束をしても、コービンのBrexitに関する姿勢がマイナスだ。

選挙後に、もし政権を執れば、コービンはEUとソフトなBrexitを再交渉し、それを国民投票にかける、という。Brexitをやめることも選択肢に含む。それはロンドンとイングランド南部の有権者に強く支持される。しかし、北部の労働党支持者たちは、裏切りだ、と感じた。彼らは、たとえ生活が悪化しても、離脱を求めている。

コービンの階級戦争を唱える伝統的な演説も、もはや労働党の支持層をひきつけない。エリート校出身のジョンソンが北部労働者の友人としてふるまう。

Wiganの人びとは、少なくとも、ジョンソンを支持していない。しかし、生涯を通じて労働党に投票してきた老婦人も、今回は労働党に投票しない、と言う。

FT December 7, 2019

Incompetence, not ideology, is the worst thing about this election

Camilla Cavendish

The Guardian, Sun 8 Dec 2019

On the streets of a marginal seat, I’ve seen how remain disunity could seal Brexit

Timothy Garton Ash

自由民主党の運動員がPutneyの立派な邸宅の玄関で尋ねる。「私たちに投票してもらえますか?」 玄関に立つ中年男性は「ノー」と答える。「私は民主主義を支持するから。」 その意味は、国民投票で決めた離脱に従え、ということだ。

Putneyは、イングランドの民主制を育てたロンドン南西部にある。もしPutneyが保守党によって守られるなら、ボリス・ジョンソンは議会の多数を得て、1月末にEUを離脱するだろう。もし労働党が得るなら、新しい国民投票が行われ、EU残留の民主的な可能性がある。もし民主主義が過去の決定を変えることもできないなら、それは民主主義ではない。

そのためには、大規模な、戦術的投票を積み上げる必要がある。2016年の国民投票で、Putney72%が残留を支持した。多くの邸宅には、保守党を支持する残留派が住んでいる。

イギリスの不公平な1人区選挙制が、自由民主党と労働党の運動員による残留派の分断で、保守党の勝利をもたらす。

The Guardian, Mon 9 Dec 2019

Whoever wins this week, the Tories should worry about their future

John Harris

保守党はどこにいるのか?

確かに保守党とその指導者は対話に現れ、多くの票を得るようだが、奇妙なことに、ノイズの中で幽霊のような印象しか与えない。

21世紀の保守主義とは何か? そこにはひどく冷笑的な態度がある。議会に対する国民の倦怠感がピークに達する中で、「Brexitを成し遂げる」というスローガンで十分なのかもしれない。しかし、多数を得て、Brexitのノイズが鎮まったとき、保守党は何をするのか?

広く知られているように、Brexit国民投票の失敗で、キャメロンとオズボーンの推進した保守党近代化は終わった。保守党は、ナショナリズムと低俗さでリベラルなイングランド郊外を切り崩し、同時に、50歳以下の有権者から大きく離れた。サッチャー主義の後、方針は定まらず、小さな政府も自由市場も語らなくなった。

自由民主党との連立政権時代に、保守党は「レッド・トーリー」を唱え、メイは不平等の問題に関心を示して、伝統と義務を加えた国家の強化に向かった。しかし、サッチャー主義の信念は変わらず、それが政策に結びつくことはなかった。

政権党であることを自負する保守党が、Brexitに隠れて政策論争を避け、何も語ることがない。保守党が勝つようだが、その勝利はあまりにも中身のない勝利である。

それは、ジョンソン主義、とよぶべきものだ。ポピュリスト的な権威主義と将来について考えることを拒む軽薄さの混合物。イギリス支配階級がしばしばそうであるように、無思慮によって躓くだろう。

FT December 9, 2019

UK election: will the real Boris Johnson please stand up?

George Parker in Salisbury

FP DECEMBER 10, 2019

The Biggest Threat to Boris Johnson Isn’t Jeremy Corbyn

BY STEPHEN PADUANO

The Guardian, Wed 11 Dec 2019

The Tories can’t offer tax cuts – there will be no money left after Brexit

Simon Wren-Lewis

2大政党の政策公約が大きく異なることを説明するコメントがほとんどない。

労働党は、支出を増やすことについて多くの提案を行っている。大学授業料をなくす。学校や幼児教育に投資する。医療サービス、地方政府、ソーシャルケア、大学融資、公務員の給与にも支出を増やす。それは高所得者や企業に対する増税でまかなう。また、住宅建設、経済のグリーン化を含む、公共投資を大幅に増やす。その財源は債券発行である。また、年金給付年齢の引き上げによる損失を受ける女性に補償する。

保守党の公約は、対照的に、何もない。おそらく、その理由は簡単だ。Brexitである。

Brexitは、両党の経済計画を評価する上で重要だ。労働党の政権下では、Brexitが起きないだろう。保守党はいかなるソフトBrexitの含まれる国民投票にも反対するだろうから。保守党政権の下では、ノーBrexit(約束通り1年しかEUと交渉しないなら)か、ハードBrexit(合意なしの一方的離脱)になる。ハードBrexitでも中期的に経済的なダメージが大きく、ノーBrexitならさらに大きい。

労働党政権の支出は政府債務を増やすが、保守党政権のノーBrexitがもたらす債務の増大ははるかに大きいだろう。それだけ経済的ダメージを受けるからだ。保守党のマニフェストがあれほど何も約束しないのは、Brexitで、政府は財源を得られないからだ。

労働党の計画は、需要を大幅に増やす。その成果は経済の余剰生産力、企業が価格を引き上げるか、投資と生産性を増やすか、によって変わる。生産力余剰は少ないから、インフレ圧力を抑えるためにイングランド銀行が短期金利を上げ、GDP増は小さい、とエコノミストたちは考える。金利上昇は小さく、GDPを大きく増やすという予測もある。

保守派の多くが、労働党が勝利すれば、資本逃避が起き、ポンドの価値は急落する、と警告する。しかし2つの要因から、それは起きないだろう。1.金利上昇あるいはGDP成長はポンドの魅力を高める。2.労働党政権下ではハードもノーも、Brexitが避けられる。それは、国民投票以後、減価しているポンドの価値を高めるだろう。労働党は金融政策と財政ルールにおいてラディカルではない。投資家が恐れることはない。

9年間の経済停滞を経て、低金利で債務を増やすことができる今、2016年のBrexit国民投票に至った諸問題を解決するため、経済に投資するチャンスがある。選挙は、Brexitによる停滞と孤立に向かうのか、それとも、他のヨーロッパ諸国に近い、投資と再分配に向かうのか、を問うものだ。

残念だが、各選挙区で1人だけが当選する選挙制度のせいで、多くの政党が後者を望むのに、われわれはBrexitの道を進むだろう。

The Guardian, Thu 12 Dec 2019

Johnson or Corbyn? Democracy is in trouble when we’re obsessed with leaders

Lea Ypi

FP DECEMBER 12, 2019

Is Britain’s Election Really About Brexit?

BY ANAND MENON

FT December 13, 2019

Uneasy echoes of Old Vienna resound in Brexit Britain

Frederick Studemann


 NATOの危機

FT December 6, 2019

How to fix Nato

Peter Ricketts

フランスのマクロン大統領がNATOを「脳死状態」とよんだことは、70周年を迎える軍事同盟の加盟諸国に衝撃をもたらした。ドイツのメルケル首相やアメリカのトランプ大統領はマクロンを批判したが、新思考に向けた明確な呼びかけになったことは確かだ。

マクロンの不満は、現在のNATOに明確な戦略的目的がないことだ。アメリカは中国に対抗することを最優先にしている。トランプの取引を求め、ヨーロッパの統合を敵視する外交は、ヨーロッパの同盟諸国に摩擦を生じる。マクロンは、特に、トランプがシリア北部から軍を撤退させたことに憤慨した。

指導者たちは、慎重に、「前向きの思考」を目指すべきだ。1.集団的防衛を定めた第5条の確認。2.政治的諮問の充実。3NATOを損なわない形で、ヨーロッパの防衛力を強化。

アメリカが明確なコミットメントを示すべきだ。また、マクロンは不用意に「ヨーロッパの主権」や防衛力を強調して、まだ防衛力がないままで、アメリカがますますヨーロッパに関与しなくなることを避けるべきだ。

明白に単一の敵に対峙するときでなくても、政治的同盟が形成されているなら、NATOは維持できるだろう。それは中国に対する姿勢であり、特に、トルコと他の加盟諸国との価値観や国益が相違することである。

PS Dec 6, 2019

What EU “Geopolitical” Power Will Cost

DANIEL GROS

新しい欧州委員長Ursula von der Leyenは、EUが、中国やアメリカに対抗して、地政学的なパワーになるべきだ、と考える。軍事力や中央情報局を持たないから、EUは地政学的目的を経済政策によって追求してきた。

EUは、経済規模において、中国やアメリカに匹敵する。

NYT Dec. 5, 2019

NATO Is Full of Freeloaders. But It’s How We Defend the Free World.

By Bret Stephens

NYT Dec. 6, 2019

Europe Has Learned How to Deal With Trump — and Without Him

By Sylvie Kauffmann

FT December 7, 2019

Macron and Merkel risk doing Putin’s work

Willem Aldershoff

FP DECEMBER 8, 2019

How to Say Emmanuel Macron in German

BY PAUL HOCKENOS

FT December 9, 2019

Why Europe will choose the US over China

Gideon Rachman

NATOが初めて、公式に中国の影響力に言及した。

PS Dec 12, 2019

Which Way for Europe on China?

CARL BILDT


(後半へ続く)