(前半から続く)


 アフガニスタン戦争

SPIEGEL ONLINE 12/06/2019

Losing Afghanistan

Why a Deal with the Taliban May Be Inevitable

By Christoph Reuter

NYT Dec. 10, 2019

Lots of Lessons From Afghanistan; None Learned

By The Editorial Board


 エチオピアの危機

PS Dec 6, 2019

Ethiopia’s Peace Prize Challenge

BINIAM BEDASSO

アビーAbiy Ahmed首相がノーベル平和賞を受賞したエチオピアが岐路にある。20205月の総選挙で民主体制に移行するのか、あるいは、政治不安とエスニック間の暴力、抑圧的な権威主義体制に戻るのか?

この10年間、エチオピアは幅広い成長を遂げた。アビーは、多数の政治犯釈放、亡命していた反政府派の帰還、政党結成の自由化、メディアの検閲廃止などの改革を進めた。その過程で、エスニックな暴力が高まっている。ある著名な活動家がソーシャルメディアに載せた政府への疑念をきっかけに、暴動が起き、86人が死亡した。

その経済と政治の連鎖反応は、チリ、香港、レバノンと似ており、ある意味で、アメリカやイギリスでも起きている。人口の大きな割合で経済的排除や政治的抹殺があると、人びとはその地位を守るためにナショナリストや分離主義者を支持するようになる。エチオピアの市民社会は空洞化しており、悪質な利益集団が政府機関を乗っ取り、若者たちにはスキルや情報がなく、まともな職に就けない。

若者たちは不均衡を理解し、ソーシャルメディアによる動員に応じるだけの教育は受けている。効果的な政府機関が再建されるより早く、彼らの自由は拡大した。政府の権力が動揺し、支配的な集団の連携が崩壊することで、政府は不満に対処できず、それが歴史的な情念と結びつく。

社会的動員は、健全な民主主義の特徴である。しかし、何十年も権威主義体制に支配されたエチオピアでは、人びとが政策や社会的大義ではなく、自分の社会的・経済的利益を守るために政治的パワーを確保しようとし、来年の選挙に向けて準備する。選挙の勝者が全てを取ると予想することで、不信感が蔓延している。

ナショナリズムは政策論争の武器になる。指導者たちは、長期にわたる文化的、歴史的な苦悩を追加する。こうした攻撃的姿勢は、エスニックな違いで分割された連邦制によって、選挙を混乱させるだろう。法の支配は弱く、エスニックな緊張状態が高まっているからだ。ハンガリーからベネズエラまで、もっと発展した諸国でも、投票は社会を分断し、紛争を刺激する。UKEU離脱もそうだ。

エチオピアの指導者たちは、早急に、選挙後の秩序に関するゲームのルールを交渉すべきだろう。そうすることで、各政党はもっと政策論争に集中する。投票は民主主義にとって重要だが、万能薬ではない。

FT December 9, 2019

Abiy Ahmed must try to separate ethnic from electoral politics

Ellen Johnson Sirleaf


 低金利と財政赤字

PS Dec 6, 2019

Government Debt Is Not a Free Lunch

KENNETH ROGOFF

政府債務に対する金利は何十年ぶりの低水準であるから、いずれの先進諸国も日本の水準(最も保守的な推定でもGDP150%を超えている)まで債務を増やしても問題ない。そうエコノミストたちは主張している。

しかし、何の問題もない、と考えるのは間違いだ。

1.税収に対する別の要求があることを忘れている。それは年金受給者への約束だ。給付を抑制しても、高齢化や低成長によって、年金支払いに税金を使うことが増えてくる。

2.次の金融危機でも、金利が大幅に引き下げられるとは限らない。気候変動、サイバー戦争など、予想外の危機、攻撃的な実験的金融政策の反動。世界で最も重要なアメリカ経済が政治的に機能しなくなっている。

3.債務を利用するべき多くの目的があり、政府にはリスクのない選択肢などない。


 スーダン連立政権

FP DECEMBER 6, 2019

The Enemies of Sudan’s Democracy Are Lurking Everywhere

BY REBECCA HAMILTON

スーダン人には誇りとする抵抗の歴史がある。独立以来、2つの政権を倒した。しかし、バシールOmar al-Bashir大統領の体制は違った。抵抗運動は、体制の冷酷な秘密警察に破壊された。

しかし今回は違った。経済状態が崩壊した。パンの価格が一晩で3倍になった。家族を養うために、失うものは何もないと感じた。抵抗は何カ月も続き、女性や子どもも参加した。2019411日、軍隊がバシールを辞任させた。

軍隊の支配を人々は望まなかった。バシールの辞任後の数週間、彼らは軍の兵舎の前に座り込んだ。63日に座り込みの人びとが襲撃された。犠牲者は、政府のRapid Support Forces (RSF)が棍棒を持って襲い掛かり、建物から狙撃した、という。

今は移行政府が成立している。その使命は、スーダンの新しい革命の支柱である、自由、平和、正義、をもたらすことだ。しかし、移行体制が崩壊する脅威は多く存在する。

FP DECEMBER 9, 2019

Sudan’s New Government Can’t Succeed If It Remains on the U.S. Blacklist

BY HALA AL-KARIB, EL SADIG HASSAN


 サーベイランス資本主義

FT December 7, 2019

Sundar Pichai: Alphabet’s cautious new helmsman

Richard Waters

FT December 9, 2019

How to take back control from the Big Tech barons

Rana Foroohar

現代の超富裕層は、過去の富裕層と何が違うのか? シリコンバレーの著名な投資家と議論した。

アメリカの起業が減った。不平等と政治的な分極化が進んだ。しかし、私は楽観論を語った。19世紀の鉄道王たちも分割されたのだから。しかし、彼はそれに反対した。彼らは選挙の結果を変えたわけではない、と。

過去においても、億万長者は政治に介入した。鉄道王のThomas Scott1876年の大統領選挙でRutherford B Hayesを、その富とコネで助けた。第2大陸横断鉄道が、その見返りだった。

FacebookGoogleAmazonはそれと何が違うのか? 彼らが富を使って政治団体や政治家への献金をするだけでなく、もっと詳細に、個人の選択を変えることができる力を持った、ということだ。彼らが創り出したものは、サーベイランス資本主義、とよばれている。

オンラインで、さらにオフラインでも。ハンドセット、スマートフォン、スマートカー、センサー、ますます増大する消費者情報、スマートシティ。個人は砂粒のように切り離されている。異なる価格、異なる広告、異なる情報を観て、個人は行動パターンを変えてしまう。ますます多くのデータがシェアされ、アルゴリズムはわれわれの行動を予測する。われわれを好きな商品に向けて誘導する。

裁判所はいまだに、2016年のアメリカ大統領選挙、UKBrexit国民投票、その他のヨーロッパ選挙で、オンラインの情報操作が作用したかどうか、結論を出せない。

民主党の大統領候補争いに優勢なエリザベス・ウォレンは、ハイテク大企業を分割する意志を示している。しかし、たとえFacebookを分割しても、サーベイランス資本主義は死滅しないだろう。個人に対するトラッキングとマイクロターゲッティングを禁止するしかない。それは行き過ぎだ、と思っていた。しかし、アメリカの市場競争を回復するだけでなく、世界でリベラルな民主主義への信頼を取り戻すには、それしかないと思うようになった。

PS Dec 9, 2019

How Trolls Overran the Public Square

J. BRADFORD DELONG


 ヘリコプター・マネー

FT December 7, 2019

The consequences of ultra-low US unemployment

Gavyn Davies

FT December 8, 2019

The Federal Reserve will have to be creative in the next recession

Willem Buiter

アメリカを次の不況が襲うとき、財政・金融政策で効果的に緩和することは難しいだろう。金利を下げる余地がないからだ。

連銀はマイナス金利政策を取りたくない。それは金融部門を混乱させ、そもそも憲法に違反する恐れがある。銀行を通じて預金者に課税するに等しいからだ。

非伝統的な金融政策は好まれない。総需要におよぶ伝達経路が欠けている。債務を過度に負う民間部門は融資を求めない。消費者が債務を増やすこともなかった。ドル安による刺激を得るにも、アメリカの輸出部門は小さすぎる。

財政政策による刺激しかない。景気循環に対する平準化のみなら、財政の持続性は問われないだろう。市場が債券を吸収しないなら、連銀が債務を自発的に貨幣化すればよい。景気平準化のための「ヘリコプター・マネー」である。その点では、いわゆるMMTが正しい。

原則として、中央銀行は公的債務を貨幣化できる。中央銀行の独立性とは、それをすることも、拒むこともできる、という意味だ。連銀は3つの目標に対して、すなわち、完全雇用、物価の安定、長期金利の安定化のために、それを行う。

200811月の量的緩和QE1を発表したとき、経済は崩壊する寸前であった。議会は明らかにその刺激策に同意しただろう。2008年から2013年までに、連銀のバランスシートはGDP6%から23%まで拡大した。典型的な「ヘリコプター・マネー」であった。

幸い、次の危機はそれほど深くも、長くも、ないだろう。しかし、緩やかな不況に、平準化介入は効かない。

PS Dec 11, 2019

Financial Stability Should Be Central Banking’s Prime Objective

WILLEM H. BUITER

中央銀行が物価の安定と完全雇用を追求する政策手段が失われる、という心配がある。しかし、金融の安定性を確保する、という最も重要な目標に対する中央銀行の力は失われていない。すなわち、最後の貸し手として(銀行に)流動性を供給する(LLR)と、債券市場におけるマーケット・メーカーとして(債券市場に)流動性を供給する(MMLR)である。

そのためには、融資や債券が自国通貨建てでなければならない。また、法律や規制でそれを妨げることがあってはならない。


 ケインズの警告

NYT Dec. 7, 2019

The Man Who Predicted Nazi Germany

By Jonathan Kirshner

1919128日、イギリス大蔵省の無名の官僚がヴェルサイユ条約に反対して政府代表を辞任し、1冊の本を出版した。5000部というのは、体制に反発した官僚の本として妥当な発行部数であった。

しかしこの本、『平和の経済的帰結』は歴史的事件となった。瞬く間に6刷りを重ね、十数か国に翻訳された。10万部以上が売れて、36歳の著者、ジョン・メイナード・ケインズは世界的な名声を得た。

1930年代にケインズ革命が起き、今も経済学に影響を及ぼしている。ケインズは、第2次世界大戦中、イギリス大蔵省の代表に再任され、戦後の国際秩序にとって知的な設計図を示した。

しかしケインズの本は、当時、そして今なお、誤解されている。ケインズは、条約に反対するために本を書いたのではなく、ヨーロッパの抱える経済問題を論じた。それは、脆弱なヨーロッパ秩序に関する警告だった。

ケインズは、ヨーロッパの全生活を危険にさらすほど、戦争はシステムを破壊した、と理解した。ヴェルサイユ条約はヨーロッパ経済の再編を助ける何ものも提供しない。敗北した諸帝国を良好な関係で、諸国家として安定化すること。フランスやイタリアの金融システムを崩壊から救い出すこと。そうではなく、条約はドイツに奴隷の地位を強いた。それはヨーロッパの文明全体を破滅に導く種をまいた。

若い大蔵省職員として、ケインズがパリに着いて最初にしたことは、当時、飢餓の淵にあったドイツに向けて、緊急の食糧援助を実施する交渉であった。

ケインズはその大枠が、4月には、受け入れられる可能性がある、と思った。1.賠償額の引き下げ。2.連合諸国間での戦債の放棄。3.ヨーロッパの自由貿易圏設立。4.厳しい経済状態にあるヨーロッパ諸国への新規国際融資。

しかし、それは政治的な無邪気さでしかなかった。


 トランプ弾劾決議

NYT Dec. 8, 2019

The Eight Counts of Impeachment That Trump Deserves

By David Leonhardt

NYT Dec. 10, 2019

Impeach Trump. Save America.

By Thomas L. Friedman

トランプ大統領を弾劾するべきだ。彼を弾劾しなければ、アメリカの民主主義は生き残れない。

トランプがやったことが事実であることを疑う者はいない。それでも、彼を擁護する者は、「弾劾は人民の意志を否定する」と言う。そうだろうか? トランプがウクライナでやったことが、人民の求めることなのか? そんなはずはない。

NYT Dec. 10, 2019

Two Articles of Impeachment for Trump Are Nowhere Near Enough

By Jamelle Bouie

FP DECEMBER 10, 2019

Why Putin Is Smiling

BY MICHAEL HIRSH

FT December 11, 2019

Pelosi’s attempt to chew gum and walk with Trump

Edward Luce

ペロシNancy Pelosiは、トランプがロシアと結びつていたことを弾劾訴追条項から省いた。ウクライナに関する「権力の乱用」と「議会への妨害」の2つに絞った。

ペロシのアメリカ政治を読む眼が問われている。彼女の勘は、弾劾をシンプルに、迅速に行うことが良い、と判断する。ロシアに焦点を当てれば、この2つの点を失う。同様の観点で、ペロシはトランプ政権のアメリカ・カナダ・メキシコ通商条約(USMCA)を支持した。しかし、それはとらんの成果になる。

下院は、ペロシが1月に議長に再任されてから、10余りの法案を通過させた。

FT December 12, 2019

Election is the proper remedy for presidential misconduct

John C. Yoo


 故ボルカーの評価

FP DECEMBER 9, 2019

What Paul Volcker Got Right About Global Finance

BY MICHAEL HIRSH

日曜日、元アメリカ連銀議長、ボルカーPaul Volcker92歳で亡くなった。ボルカーは、1970年代、80年代の激しいインフレーションを鎮静化したことで高く評価されているが、もう1つ、重要な遺産がある。生涯を通じて一貫した形で、グローバル金融市場の規制緩和に反対したことだ。

ボルカーは、「小さな政府」論のチャンピオンであったロナルド・レーガン大統領に再任されたのだが、金融の規制緩和はあまりにも危険である、と警告した。金融市場はその他の財・サービスの市場と違って、パニックやマニアの行動に陥りやすい。金融市場は、普通の市場では起きないような、破滅的な崩壊を引き起こし、経済全体を巻き込む、と彼は理解していた。

ボルカーは、特に、後任であるアラン・グリーンスパンの時代に、ウォール街が進めた金融緩和に抵抗した。しかし、反対の意見を公表するのをためらった。連銀議長を批判することになるからだ。それを、後年、ボルカーは強く後悔していた。

ボルカーは、6フィート7インチの長身で、ヘビースモーカーであったが、権力者にも真実を告げる勇気があった。レーガンの時代に、大統領の意向に従わず、ホワイトハウスを訪問しなかった。中央銀行は政治から独立していなければならない、と考えたからだ。

バラク・オバマが民主党の大統領候補者として登場したとき、ジョージ・W・ブッシュの失政に深く失望していたボルカーは、改革の指導者としてオバマ支持を表明した。まだヒラリー・クリントンが優勢であったときだ。しかし、オバマ政権の初期、サマーズやガイトナーに比べて、ボルカーはまったく無視された。オバマが、金融機関の莫大な利潤や、サマーズらのやり方に憤慨して、やっとボルカーのアイデアを受け入れるようになり、ボルカーを金融改革の責任者に指名した。

ボルカー・ルールはドッド=フランク金融改革法の基調となった。ボルカーは、連邦預金保険で保護されている商業銀行を、ヘッジファンドのような、投機的、略奪的なトレーディングから、切り離すように求めた。しかし、今また、ウォール街の大銀行はボルカー・ルールを侵食する長期のキャンペーンを展開している。

ボルカーは金融改革派に強い影響を与えた。しかし問題は、アメリカの有権者が彼に従うか、である。

FT December 10, 2019

Paul Volcker, central banker, 1927-2019

Lionel Barber, Sam Fleming and David Lascelles

FT December 11, 2019

The legacy and lessons of Paul Volcker

Martin Wolf

FT December 11, 2019

Paul Volcker’s final warning for America

Paul Volcker


 ロシア国家

FT December 9, 2019

The Return of the Russian Leviathan, by Sergei Medvedev

Review by Stefan Wagstyl


 ヨーロッパの政策

PS Dec 9, 2019

The Policy Debate Europe Needs

BARRY EICHENGREEN

不況が迫っても、ECBには金融緩和の余地がない。特にドイツの世論はECBの金融緩和を支持しない。財政政策による刺激策には、ドイツなど、諸政府が反対する。EIBの投資を増やすことにも限界がある。ヨーロッパの経済政策を見直す議論が必要だ。

VOX 09 December 2019

The art of assessing public debt sustainability: Relevance, simplicity, transparency

Xavier Debrun, Jonathan D. Ostry, Tim Willems, Charles Wyplosz

VOX 09 December 2019

Financial integration and external adjustment

Andreas Fischer, Henrike Leonie Groeger, Philip Sauré, Pınar Yeşin

FT December 10, 2019

Christine Lagarde must not throw in the towel on inflation

Reza Moghadam


 ネオリベラリズム

FT December 10, 2019

Neoliberalism: pernicious ideology or vacuous insult?

Murray Withers

FP DECEMBER 9, 2019

The Nobel Winners in Economics Are On the Right Track

BY AHMED MUSHFIQ MOBARAK, C. AUSTIN DAVIS


 ファストファッション

FT December 10, 2019

How extreme agility put Zara ahead in fast fashion

Hau L Lee

Zaraが所有するファストファッションのブランドInditexは、この20年間、しばしば年率10%を超える成長を遂げ、売上高が2018年に261億ユーロに達した。純利益率は1014%である。

Zaraのスーパーファスト・サプライチェーンは、4ないし6週間で、デザインから販売に至る。毎年24000種の製品が開発される。その革新の中心部は、スーパー・アジリティー(超迅速性)と、そのために伝統的なサプライチェーンを再編したことだ。

すべてをデザイナーたちが決めて、それが生産され、販売のため店に配達され、需要に合っていると期待する、というのをZaraはやめた。市場のシグナルを観察することから始める。その情報がデザイナーに与えられる。Zaraのデザインは、チーフ・デザイナーを置かず、市場シグナルに応じて、多数のデザイナーが分散型に細部を決定する。

スーパー・アジリティーには、即座に対応できる製造業者が求められる。Zaraは長くスペイン北西部のthe La Coruña地方に依拠してきた。本社の近くに、少量を生産する、スキルと弾力性を備えた契約生産者が存在したからだ。

海外展開にともない、二重の対応戦略を取っている。ベーシックな、安定した量で供給する、アジアの低コスト拠点と、スペイン、ポルトガル、モロッコにある、需要の予測がむつかしいハイファッション製品の、高コスト・急速・弾力拠点である。

ビッグブランドのH&Mやユニクロの追い上げもあるが、Zaraは、さらに急速な供給を行うファストファッション、AsosBoohooなどに脅かされている。また、環境保護運動からの批判にも対応しようとしている。

Zaraの成功のカギであるスーパー・アジリティーは、変化する顧客の嗜好、生産チャンネル、技術、グローバル貿易体制などに応じて、生産過程を深化させ続ける。


 女性・老人

SPIEGEL ONLINE 12/10/2019

Women at Work

Syrian Refugees Find Meaningful Jobs in Jordan

By Christoph Sydow and Philipp Breu

FT December 11, 2019

Growing up with Granny is an antidote to the loneliness epidemic

Anjli Raval


 インド市民権

PS Dec 10, 2019

The Rape of India’s Soul

JAYATI GHOSH

FT December 12, 2019

India’s citizenship bill puts secularism at risk


 不平等と良い職場

PS Dec 10, 2019

Tackling Inequality from the Middle

DANI RODRIK

不平等に対して政策による解決を試みる動きを歓迎する。極端な不平等は、政治的、社会的な反動を生む。独占的行動が広まり、技術進歩や成長を損なう。

すでに政策は多く示されている。それは3つに分類できる。1.生産前(市場に参加する個人の力を改善する教育、医療、金融支援)、2.生産(企業の雇用や革新、交渉力、規制)、3.生産後(税制や給付による再分配)の介入である。

しかし、不平等のタイプに注目するべきだ。貧困水準以下の人びとに対してだけでなく、所得分配では中流の人びとも、経済の不確実さや不安を感じている。2016年にドナルド・トランプの当選を決めたのは、最も貧しい諸州ではなく、経済機会や雇用の創出が他の地域に遅れた諸州だった。

異なる不平等が人々の不満を強めている。問題は、安定した、良い職場が少なくなったことだ。脱工業化、国際競争の激化、グローバリゼーション、中国などからの輸入品。技術革新が流通にかかわる人々に影響し、生産・事務・セールスの多数の労働者に労働条件や給与の悪化を強いた。それはまた、地理的、社会的な隔離を意味した。反映する、コスモポリタンな都市部と、遅れた地方のコミュニティー、小さな町、都市の衰退地区。

良い職場をもっと多く創りだす経済を築く必要がある。もしわれわれに大胆で、創造的な試みがないなら、旧来の、破滅的なアイデアを広める連中がのさばり始める。


 ポピュリズムの生成メカニズム

VOX 10 December 2019

Heterogeneous drivers of heterogeneous populism

Italo Colantone, Piero Stanig

グローバリゼーションとオートメーションと投票結果の関係は、ナショナリストや右翼政党に支持が増えたのは単にエ政治エリートやスタブリシュメントへの「抵抗する投票」ではないことを示している。経済の構造変化で生じる勝者と敗者が、政治に新しい亀裂を生じたのだ。敗者の連合はナショナリストや極右政党に向かった。

しかし、そのような政党は、苦しむ個人やコミュニティーの問題を解決する政策手段を持っていない。特に、保護主義に訴えることは、中低所得の家計に大きな負担を強いる。再分配政策を実施する姿勢は見られない。

このことがポピュリスト政治家のナショナリズムや右翼政党を弱めるのか、あるいは、もっと過激な主張に向かうのか、現在の再編後、新しい政治的均衡の形は、まだ定まらない。

VOX 12 December 2019

Populism: Why in rich countries and in good times

Lubos Pastor, Pietro Veronesi

景気回復期の方が、不平等は拡大する。また、反グローバリゼーションは、特に富裕層に大きなダメージを与える。それはすべての者の所得を悪化させるが、富裕国ではポピュリズムとして支持され、より貧しい国では支持されない。


 サンダース,ブルームバーグ,ウォレン

NYT Dec. 10, 2019

Don’t Think Sanders Can Win? You Don’t Understand His Campaign

By Keeanga-Yamahtta Taylor

FT December 12, 2019

Bloomberg’s huge plutocratic gamble

Edward Luce

FP DECEMBER 12, 2019

Socialists Will Never Understand Elizabeth Warren

BY HENRY FARRELL


 パキスタン

NYT Dec. 10, 2019

How to Fix Pakistan’s Crashing Economy

By Atif Mian

パキスタンは、前から貧しかったわけではない。1980年代には、1人当たりで、インド、中国、バングラデシュよりも豊かであった。不労所得を求める既存エリートが、市場を抑圧し、宗教的な過激派を広めた。


 グリーン・ニューディール

FT December 11, 2019

Europe’s Green Deal could be the most important in a generation

Mariana Mazzucato


 EUの枠組み

FT December 11, 2019

The EU needs new relationship models for non-members to prosper

Martin Sandbu

VOX 11 December 2019

Fiscal stabilisation in monetary unions

Plamen Nikolov, Paolo Pasimeni


 香港デモの指導者と非暴力

FP DECEMBER 11, 2019

China Still Needs Hong Kong

BY HILTON YIP

FP DECEMBER 11, 2019

Xinjiang’s New Slavery

BY ADRIAN ZENZ

FT December 12, 2019

Hong Kong’s protesters need a leader now more than ever

Jamil Anderlini

日曜日、香港中心部を80万人が平和的にデモ行進した。彼らは民主主義と、警察の暴力に対する捜査を求めた。中国の国営メディアはニュースの扱いに苦慮した。「敵対的な外国勢力」が支援する、一部の暴力的集団、という北京の説明に矛盾するからだ。

中国の指導者たちは、30年間で最大の中国本土における反政府行動を終わらせる小さな機会を得た。警察に対する独立の捜査を認め、香港返還時に約束した、普通選挙に向けた現実的な提案を行うことだ。抗議デモや選挙結果を無視することは、次の大規模な暴力に至る。

抗議運動の大きな部分が過激化しているのは明らかだ。大義のために暴力が受け入れられている。マーチン・ルーサー・キングJrが述べたように、抑圧された感情は非暴力的に表れない。しかし、運動は重要な分岐点にある。

指導者のいない運動は、今や、非暴力の直接行動を唱える指導者を見出すべきだ。大義は、破壊行為の蔓延や、反対する市民を攻撃することを正当化しない。中国本土からの移住者に対する排外主義的行動もやめるべきだ。740万人の香港市民の中で、約100万人は1997年以降に本土から来た者だ。

135000万人の中国国民にとって、暴力的な抗議は無駄であり、嫌われている。共産党と戦って若者たちが勝つことは不可能であり、自分たちの街を破壊しているだけだ。

しかし、一貫して、非暴力の、抵抗運動を続けることで、その高い精神性を示す指導者は、境界を越えて同胞たちの心に訴えるだろう。暴力的な、排外主義的な運動にはできないことだ。

そのような指導者がいないとき、北京の譲歩はなく、香港は新しい暴力のエスカレーションに向かう。抵抗運動が死滅するとき、最も過激な者たちは香港住民が大義に背いていると感じる。それは当局の野蛮な反撃を許すものだ。過激な運動家が駐屯する人民解放軍を挑発する。

北京は人民解放軍を使いたくない。彼らの視点から、それよりもっと恐れることが1つだけある。それは、非暴力の抵抗運動への共感が中国本土に広がることだ。

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The Economist November 30th 2019

Democracy: A clarion call

Inequality: Measuring the 1%

Indian politics: The villain of Maharashtra

Chaguan: Heroic, expendable

Nuclear weapons: Over here

Immigrant districts: In the ghettos

Global trade: It’s the end of the world…

Free exchange: Can’t buy me love

(コメント) 歓喜に沸く香港と,不安や怒りを刺激する欧米では,民主主義の全く異なる面が示されています.インド(マハラシュートラの権力闘争)や中国(出稼ぎ労働者の年金)の政治経済モデルも,民主主義とは何か,その積極的な意義を示すための仕組みが整うまでは,そう簡単に答えにならない気がします.

移民の暮らすヨーロッパの「ゲットー」について,核兵器を保有し,共有するNATOの仕組みについて,民主主義はどのように関わるべきか?

グローバリゼーション,技術革新,国際競争,住宅問題,移民・難民と社会の保守化,政治の右傾化について,社会的な基準や合意がなければ,民主的な政治は溶解する危険があるのです.

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IPEの想像力 12/16/19

ゼミで,ユルゲン・ハーバーマスの『デモクラシーか資本主義か』を読んでいます.しかし,文章がむつかしい.学生たちには,容易に歯が立ちません.

21世紀は権威主義の時代になるのか?」 という問いに,ハーバーマスは,そうではない,と考えます.なぜなら,権威主義体制は,市場経済(資本主義)と民主主義との相反するダイナミズムに対する,バランスを取ることができないからです.

ハーバーマスは,198990年以降,資本主義の「正当性」が問題である、と主張しました.資本主義と社会主義の対立は終わって,資本主義の宇宙から脱出する途はない.それでも資本主義を社会にふさわしい形に変える必要がある.馴致・飼いならす,という言葉を使います.

冷戦終結後,グローバリゼーションを称揚してきた、リベラルな資本主義という主張は,そもそも対立する2つ(資本主義・民主主義)を調和するかのように思い込んでいました.資本主義は,急速に経済を編成(それゆえ社会改造)しながら,大きな富を生み出します。しかし他方で,非常に不平等な,不安定な生き方を人々に強いました.それに憤慨・抵抗する声に,民主主義が新しい社会的な合意形成を指導し,効果的な介入手段や規制のための制度を築くことで応えなければなりません.

その用意がないまま、人びとは不安を強め、ポピュリズムが支配層の間隙をついて現れたのは,冷戦終結から世界金融危機までの「西側」の高揚感が失われたからでしょう.ポピュリストたちは、世界の現状を、人々の苦しみを無視して(富裕層、金融街、EU、ワシントン、IT企業・・・)エリートたちが肥え太った、と攻撃しました。

フェイクニュースやSNSの情報操作、ターゲットを絞った政治広告に翻弄されて、民主主義は混乱したままです。政治的な分断は、階級的な左右の立場(労働者vs資本家)においてではなく、グローバリゼーションやAIの急速な普及により新しい地位や富を得た者たち、巨大都市の専門職層と、他方で、時代から取り残された、西側の旧工業地帯、地方都市や中小の町、荒廃するコミュニティーに残された老人、高等教育を受けていない労働者たちとの間に、強く意識されるようになりました。彼らがBrexitやジョンソン、ドナルド・トランプを支持したのは当然です。

経済は減速し、社会が保守化・右傾化する中で、移民や難民を排斥し、イスラム教徒や社会的弱者を攻撃し、中国からの輸入品の急増、製造業の工場閉鎖・海外移転、グローバリゼーションを推進した国際機関や条約を、彼らは嫌ったのです。支配層と共謀した社会民主主義政党は、労働者を見捨てたと批判され、ジョンソンやトランプが、貧しい衰退地域や失業者を助けるために富裕層や企業に課税するわけがないのに、既存秩序の破壊者、新しい救世主として、ポピュリズム運動に参加する者が増えました。

資本主義も、民主主義も、期待されたようには機能していません。それに代わる新しい改革や社会政策、産業振興は手探りです。ナショナリズムや保護主義が、貧しい者の未来を暗くするとしても、政治的な支持を失うとは限りません。

極端な個人主義、政治への冷笑、社会的理想の消滅。旧秩序の破壊を呼びかけ、民主主義と称して混乱を広める暴力集団が西側に増えています。

しかし香港やアフリカでは、もしかすると、社会主義と民主主義の再発見が始まっています。

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