IPEの果樹園2019
今週のReview
12/9-14
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ブルームバーグ立候補 ・・・資本主義の変貌 ・・・イギリス総選挙 ・・・億万長者の問題 ・・・NATO70周年 ・・・中国の儒教と立憲的秩序 ・・・独仏の大合意 ・・・第2次冷戦は始まった ・・・デモクラシーの再生に向けて ・・・スーダン革命政府
[長いReview]
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主要な出典 FP: Foreign Policy,
FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York
Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● イギリス王室の醜聞
The Guardian, Fri 29 Nov 2019
How Prince Andrew forced me to recognise the hollowness of The
Crown
Emma Brockes
FT November 29, 2019
Prince Andrew, and some right royal corporate hypocrisy
Robert
Shrimsley
1人の幼児性愛者paedophileと友人であったら、突然、すべてが失われる。
多くの「倫理的欠陥」を指摘された会計事務所KPMGでさえ、Prince Andrew,
the Duke of Yorkとの関係を断った。マネー・ロンダリングで悪名高い銀行も、学生会も、ゴルフクラブも、スポーツ団体も、もはや彼のイメージ・ダウンを見過ごせない。
● ブルームバーグ立候補
FT November 29, 2019
Michael Bloomberg: the magnate shaking up the 2020 election
Joshua Chaffin
2001年のニューヨーク市長選挙で、ブルームバーグは対立候補に2桁の差をつけられて劣勢であった。最初は低く始めて、冷徹に、最後の勝利をつかむ。「われわれが勝利するとだれも信じなかった。しかし、われわれには確信があった。」 彼は支持者たちに語った。
2020年の民主党大統領候補の指名争いで、政治経験、そしてデータと世論調査をもとに、忠実な支持者たちは、ブルームバーグの勝利に、同じ確信を持っただろう。
進歩的なアイデアが支持を広める中で、穏健派の共和党員としてニューヨーク市長になった77歳のメディア王が企てた愚かな計画だ、と軽蔑する者もいる。エリザベス・ウォレン上院議員は、億万長者への増税を選挙公約の中心に据えるが、ブルームバーグとの競争を歓迎した。「彼には人々が必要ない。かれは選挙資金をうなるほど注ぎ込めるのだ。」
3000万ドルのテレビ広告で、彼は業績を誇った。その仕事をビ-チに迫撃砲を打ち込むように広告したのだ。彼の名を冠したメディア=データ・ビジネスを立ち上げ、9・11テロ攻撃後のニューヨーク氏を復活させ、その巨万の富を気候変動や銃規制など、大義のために費やした、と。
しかし、Bloomberg LP.の性差別的なビジネス文化は#MeToo運動後の今では意味が違う。彼の子をはらんだ女性に、「殺せ」“kill it”と迫った。彼はそのことを否定するが。
ニューヨーク市長として長期に推進した、不審者へのstop-and-frisk職務質問・所持品検査戦略について、マイノリティが差別的にあつかわれた。最近になって、それを謝罪した。
ブルームバーグの選挙戦は、民主党支持者の穏健派を切り取り、また、極左派の登場を促すことになるだろう。
ブルームバーグは全くの自力で成り上がった大富豪だ。Johns Hopkins Universityで同窓生のただ1人のユダヤ人、Harvard Business Schoolを出て、ウォール街ではSalomon Brothersにおいて急速に頭角を現したが、1981年の合併後に解雇された。データ企業の投資し、証券取引のデータに関する先行企業Dow Jones とReutersを脅かす存在となる。ただし、ブルームバーグは、2700人のジャーナリストたちが候補者に関する調査報道を、ブルームバーグ本人も対立候補についても自制する、と語った。トランプについては調査報道を続ける。
2020年の大統領選挙を、最初、彼は穏健派のジョー・バイデンが選ばれるのを邪魔したくない、と考えていた。しかし、指導的な候補者たちの闘と世論調査を観て、夏に、彼は気持ちが変わったようだ。彼が勝つとしたら、民主党支持者の多くが、他の誰よりもトランプを倒せる最強の候補者として期待するときだ。
並行してデジタル・メディアにおける1億ドルの政治広告を始めている。それはこじつけのように見えるが、キャリアにおいては十分だ。
● 資本主義の変貌
FT November 30, 2019
Uber v London should not be cast as a fight to preserve capitalism
Camilla
Cavendish
The Guardian, Sun 1 Dec 2019
America is not the land of the free but one of monopolies so
predatory they imperil the nation
Will Hutton
明日、NATOサミットのために、トランプ大統領がロンドンに来る。超大国を代表するはずだが、アメリカは経済も社会も問題を抱えている。グローバルな指導力も、中国とヨーロッパからの挑戦に直面している。イギリスも、その定義しそこなったBrexitによって、大陸経済から切り離される。
しかし、これは通常の知識に反している。それによれば、EUは動脈硬化で、ダイナミックな変化を書き、準社会主義的な規制が多く、規制に対する新興企業に敵対するところだ。アメリカはその逆のイメージである。
しかし、最近の研究はそれが逆になっていることを示す。それはNY連銀の顧問で、優れたエコノミストThomas
Philippon(New York University)のThe Great Reversalである。ボリス・ジョンソンが体現している知識は、完全に、破壊されている。
過去20年間、EUの1人当たり所得は25%増大したが、アメリカは21%であった。アメリカの成長率は減速したが、ヨーロッパは安定し、ところによっては上昇している。アメリカは何を間違ったのか?
Philipponの答えはシンプルだ。アメリカ経済はますます競争をしなくなっており、それが経済を損なっている。次々に部門が、航空機もモバイル電話も、ますます少ない企業によって支配される。その場合、企業は投資や技術革新をしなくなり、価格を固定し、引き上げる。通常よりも大きな利潤(「経済的レント(地代・不労所得)」)を得るようになる。
旅客航空業は、乗客・マイル当たり2倍の利潤を得る。医療費は支払えないほど高い。薬価はヨーロッパの2倍もして、固定されている。挑戦する小企業を買収してしまい、Google, Amazon and Facebookは超独占状態だ。
この20年間で、アメリカの投資は減少してきた。価格が高く、賃金は購買力を減らし、労働者の生活は、借り入れをしない場合、実質的に窮乏化している。不平等は天井知らずで、寿命さえ短縮しつつある。
なぜこんなことが起きたのか? Philipponの答えは、政治に金がかかりすぎることだ。アメリカの選挙運動には、同じ1票を得るために、ヨーロッパの50倍も金がかかる。このことが政治過程をゆがめ、経済危機の主要な原因となっている。
企業は政治家に献金し、その見返りを求める。規制や監視、反独占政策が、企業のますます増大する市場支配力を制限できなくなる。ヨーロッパは違う。企業が自分たちの都合に合わせて規制を緩めることはできない。EUの競争促進監督局は、アメリカに比べて、政治的に独立している。
競争的市場、イノベーション、支配的企業の交代、教育・社会支出、起業、失業率、グローバル・スタンダード、企業統治、環境保護のための金融政策、すべてにおいてEUはアメリカに勝る。
この選挙は、最近のイギリスが地政学だけでなく、地経学において失敗してきたことを示すものだ。
FT December 1, 2019
Consciously decoupling the US economy
Rana Foroohar
アメリカは国家安全保障の脅威を理由に、世界とのデカップリングを考えている。最近のWilbur Ross長官の言葉では、それはHuaweiだけでなく、中国の第5世代通信技術や一帯一路を受け入れるヨーロッパにも当てはめる。
外交評議会CFRは、大西洋圏の同盟国間協力による21世紀デジタル経済覇権を求めているが、それと矛盾している。CFRの新自由主義的な発想と、分割された世界、中国に対抗するアメリカの産業政策推進は、どのように結びつくのか?
国家資本主義の急速な台頭とデジタル経済の時代に、アメリカには一貫した経済戦略が欠けている。
FT December 4, 2019
How to reform today’s rigged capitalism
Martin Wolf
不平等が拡大している。それは民主的な社会を掘り崩す。しかし市場経済、グローバリゼーション、技術革新に反対するのは間違いだ。資本主義を廃棄するのではなく、改善することが重要だ。
1.競争を促す。独占的な企業行動やその利潤、価格を、競争によって改める。2.金融ビジネスを改革する。銀行の金融仲介における自己資本比率を高め、救済的介入を減らす。債務に対する税制の優遇を廃止する。3.企業は、株主利益の最大化を目標に、経営するべきではない。4.不平等を減らすさまざまな政策を実行する。5.民主主義を強化する。
● イギリス総選挙
FT November 29, 2019
Jeremy Corbyn and Boris Johnson: non-apologies and no-shows
Robert
Shrimsley
FT November 29, 2019
Exit has lost its power as a protest weapon in the UK election
Tim Harford
ハーシュマンAlbert Hirschmanは、いかなる経済、社会システム、個人、企業、組織も、一般に、効率的で、合理的な、法に従う、有徳の、あるいは、違う形で機能する行動によって効果を失う、と書いた。
そんなバカな! 周りを観ればいい。そんな優れた行動はめったにない。うまくいかないとき、われわれはその不満をどのように示すのか? 出ていく? 抗議する? あるいは、黙って耐える?
エコノミストたちは、競争的市場の研究をしてきたから、「退出」を最も強力で、率直な反応とみなす。それに代わるのは、「発言」だ。愚痴をつぶやくとか、火炎瓶を投げるとか、なんであれ不満を示す。
多くの場合、退出の方が簡単だ。アメリカ市民は他の州へ移り、イギリス市民で、その権利を持つ者は、アイルランドのパスポートを好む。限りなく多くの娯楽、ニュースを提供する会社がある。
しかし、そこには罠がある。Facebookをやめ、Googleを使わないとしても、それと異なるものはなかなかない。歯磨き粉を選ぶようなわけにはいかないのだ。
あるいは、政治は柔軟に変化すると思われていたが、今はそうだろうか? トランプ大統領は、反対する者が53-56%ほどで、驚くほど支持が安定している。彼の前任者たちの支持率は変動した。しかしトランプの支持率は凍結されている。
UKでは、政治の機能マヒが続く。選挙し、国民投票し、首相を代え、また選挙し、また首相を代え、そして、まだ次の選挙をする。政治は前進できない。誰も多数の支持する政策綱領を示せない。
ハーシュマンは、1960年代、ナイジェリアの鉄道を調査した。ナイジェリア北部のピーナツ農家は、ラゴスの港まで、800マイルのひどい道でも、トラックで運ぶ方がよい。しかし、ナイジェリア政府は鉄道を補助金で支えた。退出は脅威ではなかった。不満がある顧客たちは政府に抗議した。発言が脅威だった。
退出と発言は補完的なものだ。退出する用意があるから発言は重視される。しかし、ときには「退出」が不満を抑えることになる。特に、「発言」が時間のかかる委員会、ストライキ、選挙運動であるときにはそうだ。出ていけばいい。
それが、アメリカやUKの2大政党システムだ。ナイジェリアの鉄道のように、既存政党がシステムに支援されている。穏健派は出ていくが、過激な党派はそれを喜ぶ。
ナイジェリアはその後、内戦になった。その鉄道は何十年も停滞し続けた。イギリスの民主主義はどうか?
NYT Nov. 29, 2019
Britain’s Dirty Election
By Peter
Geoghegan and Mary Fitzgerald
イギリスの有権者はかわいそうだ。
2人の首相候補は、史上にもまれなほど不人気な人物だ。5年間で3度目の選挙になる。しかも、イギリスのひどい冬に。有権者たちは、多くの虚報、かつてない情報操作にさらされる。イギリスはもはや「フェア・プレイ」の国ではなく、嘘つき、詐欺し、デジタル犯罪者の国になった。
ソーシャルメディアが選挙の主要舞台だ。どれほど多くの有権者が、歴史的に重要な投票を、匿名のサイトやフェイク・ニュースによって判断するか。それが政治への信頼を損なっている。
こんなはずではなかった。政治をめぐる規制やルールはデジタル時代の前にできた者であり、ほとんど役に立たない。インターネットが情報操作の手段になっているのはイギリスだけではない。ソーシャルメディアと政治コンサル多とが選挙結果を決める。
これらの条件の下で、保守党は有利な選挙を進めている。彼らが勝利するとして、その代償は何か?
FT December 1, 2019
An election to define and shape the UK — and the NHS
Nicola Sturgeon
FT December 2, 2019
In Britain’s dire election, truth is the first casualty
FT December 3, 2019
Boris Johnson shows he cares more about winning than governing
Robert
Shrimsley
PS Dec 3, 2019
The Calm After Britain’s Brexit Election
ANATOLE
KALETSKY
ボリス・ジョンソンが勝利して合意なきBrexitになることを恐れる声が再現した。また、マルクス主義者のジェレミー・コービンが首相として、産業国有化、1970年代の階級闘争復活、NATO解体を始める、と恐れられている。
しかし、どちらも起きないだろう。ジョンソンが当選したら、その素晴らしい離脱を完成するために、金融市場の不安を刺激することは何もしない。たとえコービンが首相になるとしても、議会の過半数を握ることはない。
選挙の結果が何であれ、UKとEUとの経済関係は、長期において、変化しないだろう。
The Guardian, Wed 4 Dec 2019
How Boris Johnson and Brexit are Berlusconifying Britain
William Davies
かつてないほど、メディアは内輪の議論になっている。現在のカオスをもたらした触媒は保守党を支配する保守主義だ。それはBrexitの危機と、ボリス・ジョンソンの機会主義による。保守党の選挙スローガンはたった1つだ。「議会は人民を裏切っている。」
かつては、民主主義にとって、「権力の分割」が重視された。三権分立だ。しかし、今は違う。経済と国家とを分割する。インターネットが、垂直の分割を消した。文化やコミュニケーションがそうだ。ニュース、放送、雑誌、舞台、娯楽など、かつては分けられていた。今は混ざっている。政治風刺とニュースに違いはない。
ある意味で、「ベルルスコーニ化」が生じている。政治とメディアとビジネスで、有名人が同じように扱われる。少数の有名人が信頼される。
FT December 4, 2019
UK election: the tactical fight to beat Boris Johnson
John Burn-Murdoch
in London and William Wallis in Birkenhead
FT December 5, 2019
Unrealistic election pledges will leave the UK disappointed
Chris Giles
FT December 5, 2019
Why Leave will win the Brexit battle
Simon Kuper
たとえ労働党が少数与党で連立し、2度目の国民投票を行っても、残留派は敗北するだろう。残留派が多数を占めるが、彼らは国民投票を好まない。Brexitに疲れ、それが終わることを願う。
FT December 6, 2019
Britain’s fateful election offers no good choices
● 億万長者の問題
PS Nov 29, 2019
The Billionaire Problem
SIMON JOHNSON
億万長者の問題は悪化している。市場経済は、たとえば、革新によるフロンティアの拡大をもたらす。それは生産過程や生産物の創造的な才能から公共の福祉をもたらすが、同時に、億万長者を生み出す。そして彼らは、富を用いて自分たちの利益を守ることができる。
億万長者の問題は新しいものではない。イギリスの東インド会社、西インド諸島へアフリカ奴隷を売ったヨーロッパ人たち、炭鉱の所有者たち。急速に豊かになった者はすべて、政治的な影響力を持って、ほしいものを何でも手に入れた。恐るべき乱用についても免責された。
アメリカは特に億万長者の問題に影響された国だ。建国の父たちには、産業革命以前の平和な時代の知識しかなく、億万長者の政治支配を想像できなかった。アメリカの指導者たちは、政府よりも、民間企業に新しいことを委ねるのを好んだ。ドイツでは国営の電信事業が成功していたが、アメリカでは民間で行われた。製鉄、鉄鋼、鉄道、すべてがそれに従った。
1960年代から、アメリカでは反税闘争が高まって、(金融部門を含む)規制緩和に向かう強い圧力を生んだ。そして多くの政治献金が企業から流れ込んだ。
ロビーイングは2つの重要な結果をもたらした。1.新規参入がむつかしくなった。既存企業を保護し、実効税率を下げた。財源が枯渇し、教育や研究、インフラに公共投資できなくなった。2.特にデジタル分野では、初期において参入が可能だった。最近、Facebook, Amazon, and Uberは成功した。しかし、今では、こうした巨大企業の支配的株主たちが、カーネギー、ロックフェラー、モルガンと同じ行動を示している。反競争的で、反労働組合だ。
新しいアイデアが巨大な富をもたらすのであれば、連邦政府の科学補助金が、アイデアを生かす企業の初期から国民に富を分配するよう、直接、その利潤に参加すべきである。
FT November 30, 2019
Before we soak the rich, we need to figure out who they are
Merryn Somerset
Webb
PS Dec 4, 2019
Why Countries Should Tax Global Income
RICARDO
HAUSMANN
ある国の国民が税金を支払うのは、その国の領土内で小桁所得に対してだけだろうか? あるいは、どこであれ、すべての所得に対してであろうか?
世界課税を制度化するには、情報の共有システムが必要だ。
● 図書館
FT November 29, 2019
Want to build democracy? Then build libraries
Nilanjana Roy
読書家のために、生涯で1度は訪れてみたい100の図書館リストを作る。世界で最も美しい公共図書館リストも。
発展途上国にも図書館ネットワークはあるが、図書館文化が繁栄しているのは、中国を例外として、少数の豊かな諸国だ。安定した民主主義や言論の自由がある。
公共図書館が民主主義にとって重要なことを理解しているのは、権威主義者やポピュリストたちだ。知的なセンターを攻撃することは、独裁者の進む1つの道標である。エジプトでも、トルコでも。
アメリカでは、3年目に入ったトランプ政権が、公共図書館の予算を大幅に削減しようとしている。インドのモディ政権と与党BJPは、自分たちの知的文化を広めることを重視している。
もし民主主義を守りたいなら、世界中にもっと、もっと多くの図書館を建てるべきだろう。
FT December 4, 2019
Past grudges overshadow present woes in India’s public discourse
Henny Sender
● NATO70周年
SPIEGEL ONLINE 11/29/2019
NATO Turns 70
Political Disputes Overshadow Alliance Anniversary
By Matthias
Gebauer, Konstantin von Hammerstein, Peter Müller and Christoph Schult
NATOは軍事的に成功したが、同時に、政治的な問題児になった。エマニュエル・マクロンはそれを「脳死状態」と言い、ドナルド・トランプは「時代遅れ」と述べた。
その首脳会談は、最高機密の監視体制で行われる、と思うだろうが、だれでも歓迎されている。NATO事務総長Jens
Stoltenbergは、自身の携帯電話を会議のテーブルにおいて、自分の発言を録音した。ベルリンに確実にメッセージを届けるために。
マクロンの「脳死」という表現は、治療の方法はなく、最終的な状態だ。しかしStoltenbergは、NATOという患者を診てきた結果、70歳でも回復する力がある、と考える。
当然、加盟諸国間の意見はさまざまだ。気候変動についても、シリアやイランについても。「われわれが成功した結果、こうした意見の違いが増えたのはパラドックスである。」
NATO第5条に関する限り、そして、これこそがNATOの核心であるが、危機など存在しない。NATOは生きている、とスロヴァキアの外相Miroslav Lajcakは語る。しかし、彼はマクロンの計画に懐疑的だ。ヨーロッパが、アメリカから独立した軍を持つことは望ましくない。
トランプが強調するNATOの分担だけでなく、その支出に関する疑問もドイツから示されている。しかも、中国との将来の関係はNATOに深刻な対立を生じる。あるNATO幹部は言った。「ロシアはいくつかのハリケーンの集まりだ。」 「しかし、中国は、気候変動に似ている。」
ドイツ外相Heiko Maasは、NATOの戦略的な方針を専門家が再評価するよう提案した。マクロンは、その主導権を事務総長から独立させ、よりラディカルな評価を求める。
しかし、ドイツのNATO大使Hans-Dieter Lucasは、予想される将来において、NATOに代わるものは考えられない、と語った。
FP NOVEMBER 29, 2019
Emmanuel Macron’s Year of Cracking Heads
BY PAULINE BOCK
FT December 1, 2019
Nato needs to reassert its common purpose
FT December 2, 2019
Trump, Obama and their battle with the ‘blob’
Gideon Rachman
両者はその思想を嫌っているが、決定的な点について、ドナルド・トランプとバラク・オバマの外交政策は非常によく似ている。
2人とも、中東からアメリカを切り離そうとした。そして、アジアに焦点を向けた。2人とも、アメリカの有権者が戦争を嫌っていることを重視した。そして、NATOの同盟関係に不安を生じた。アフがニスランをめぐる外交の変遷もよく似ている。
もちろん、違いはある。オバマは国際条約を重視したが、トランプはその価値を疑い、パリ協定も離脱した。トランプの激しい保護主義は、オバマだけでなく、戦後の大統領すべてと反対だ。
しかし、後世の歴史家は、この2人の明らかな連続性を語るだろう。アメリカはグローバルな関与を減らし、より穏当な国際的役割に引き下げたのだ。
NYT Dec. 3, 2019
Will Europe Ever Trust America Again?
By Ivan Krastev
FP DECEMBER 3, 2019
Don’t Blame Turkey for NATO’s Woes
BY SINAN ULGEN
FT December 4, 2019
Trump and Macron clash as Nato leaders gather
Michael Peel in
London and Laura Pitel in Ankara
PS Dec 4, 2019
The Day After NATO
JOSCHKA FISCHER
何度も消されたはずだが、NATOは生き延びた。今また、鶏小屋に狐が入り込んだ。
その狐はフランスのマクロン大統領だ。最近、NATOを「脳死状態」とよんだ。言葉の選び方は問題だが、トランプ大統領下でアメリカの戦略が大きく変わったことにより、ヨーロッパ市民は長く前提してきた集団安全保障を見直す時が来た。
これで絶体絶命をNATOが感じた最初の危機ではない。2014年以前も、アフガニスタンの安全保障に関わったとき、ロシアがクリミアを併合し、ウクライナ東部に戦争を拡大したとき、NATOはよみがえった。
そして、トランプだ。ルールに依拠した国際システムの指導力を放棄し、ナショナリスト、保護主義、ユニラテラリシトの外交を推進した。ヨーロッパは、第2次世界大戦後、初めて、自力で防衛しなければならないことを知った。あまりにも長い年月、アメリカに依存したために、ヨーロッパには現在の過酷な地政学的環境に生きる用意がない。それは、どこよりも、ドイツにおいて明らかだ。
ナショナリストのアメリカ、攻勢を強める中国、デジタル革命の進行、その中で、ヨーロッパは自律的に防衛力を保有するという幻想を持つべきではない。EUは経済的な試みだった。
近代史におけるヨーロッパの2つの挑戦は、中央における混乱(ドイツ)と、防衛されていない東部(ロシア、そして中国)にあった。NATOは、この両方に対する答えであった。地理的にロシアに近い諸国、ポーランド、バルチック諸国は、NATOによるアメリカとの防衛力の統合が不可欠であり、ほかの選択肢はない。
トランプの意図とは関係なく、ヨーロッパは自身の統合と主権を再生しなければならない。NATOという同盟がすでに失われたかのように行動することで、ようやく、NATOは維持されるだろう。
PS Dec 4, 2019
Macron’s NATO Mistake
DOMINIQUE MOISI
FT December 5, 2019
Crisis, what crisis? The US needs Nato as much as ever
Philip Stephens
イギリスで行われたNATO首脳会談で、ボリス・ジョンソンはドナルド・トランプとかくれんぼに徹した。なぜなら、イギリスの有権者はトランプを嫌っているからだ。
NATOの将来は、もちろん、アメリカにかかっている。しかし、アメリカがNATOを負担しているのは、それがアメリカの国益であるからだ。アメリカの今の主要な挑戦国は中国である。太平洋は動けず、大西洋のつながりと、中国が伸ばすヨーロッパへのつながりが対抗している。
● 中国の儒教と立憲的秩序
PS Nov 29, 2019
Hong Kong Says No to the China Dream
CHRIS PATTEN
馬建Ma Jianは、その政治風刺小説China Dreamの始めに、オーウェルGeorge Orwellへの謝辞を書いている。オーウェルは、『1984年』や『動物農場』を書いたが、馬は彼が「すべてを予見していた」と書いた。
馬の本の標的は中国共産党だ。共産党は「中国人民の心を監獄に入れ、その体を虐待する。」
私は香港の警察官たち(そして、その家族)にいくらか同情する。彼らは正しく行動したが、それは良い政府、責任ある政府に代わって行動するためだ。
もし中国の指導者たちが賢明なら、行動を改めるだろう。香港政府が市民たちと対話し、真実と和解を図る機関として、調査委員会を活用する。
香港市民は自由な社会で、法の支配の下に暮らすことを望んでいる。それが彼らの夢だ。習の夢に魅了されるものがどれほど少ないかを、地区選挙は示した。
FT December 2, 2019
New Hong Kong councillors face a different set of civic concerns
Joseph Leahy
地区評議員のJeremy Youngに会った。香港の山岳地区だ。彼の選挙戦の焦点は、イノシシ対策だ。反政府派の候補者が金融センターとしての生存にかかわる重要問題、北京による自由の浸食などを問題にしている。しかし、Youngは明確に、中上流階層の住む、この地区の問題を選んだ。エスタブリシュメントのための自由党に属する。
イノシシの問題は些細なことに見える。しかし、ほとんど6カ月に及ぶ香港の反政府デモにより、住民投票と化した選挙で、18地区の1つを除くすべてで民主派候補が勝った。イノシシを取り上げた彼は生き延びた。
キャセイパシフィック航空の経営者の息子として、彼は中西部地区評議会の議席を守った唯一の候補になった。それは香港中心部とその周辺を含む。
若い、民主派の活動家たちは「5要求」を掲げて、地区評議会選挙を闘った。要求には、習近平主席の恐れる普通選挙もある。民主派の勝利を喜び、彼らにとっての国家にも近い“Glory to Hong Kong”を歌う者たちもいた。しかし、多くは勝利に衝撃を受けた。
激しい口論が公園でも起きていた。かつては非政治的であった香港で、政治論争が家族を分断している。新しい地区委員たちが取り組むべきは、イノシシのような身近な問題である。労働者の地区で当選した、民主派の大学生Eason Chanは、病院の待ち時間を短縮したい、と言う。
希望があるとしたら、ゴルバチョフのような指導者が中国に現れて、香港で普通選挙を実施してくれることだ、とChanは言った。「われわれは街頭で闘いたくない。なぜわれわれは立候補したのか? それは制度が機能しないからだ。」
ただちに普通選挙を実現することはできない。イノシシに餌をやるのは間違っている。
FP DECEMBER 2, 2019
After Trump’s Hong Kong Democracy Act, China Is Still Winning
BY FARAH JAN,
J. MELNICK
PS Dec 3, 2019
China’s Quest for Legitimacy
ROBERT
SKIDELSKY
リベラルな民主主義は正統性の危機にある。人びとはリベラルなエリートによる政府を信頼していない。欧米ではポピュリストが成功し、トルコ、ブラジル、フィリピンなど、各地で権威主義的政府が生まれている。リベラルな民主主義は世界中で政治から消えつつある。
民主主義を共有する諸国は戦争しない、と言われた。「歴史の終わり」というフクヤマの予言は裏切られ、ロシアとも、中国とも、新しい冷戦を懸念する声に変わった。イデオロギーを共有する国との間だけで、国際的な覇権が平和的に移行する、と言う主張もそうだ。中国は明らかに西側主導の国際システムに挑戦している。
しかし、Lanxin Xiangは新著(The Quest for
Legitimacy in Chinese Politics)で、この見解に明確に反対している。その焦点は、西側ではなく、中国の支配の危機だ。Xiangは、それに対して、中国も儒教を近代化して、その上に立憲的な民主制を築くだろう、と考える。
Xiangは愛国者であり、西側の知識人が中国の成長がもたらした歴史的成果を過小評価し、中国の文明を排除してきた歴史を強く批判する。モンテスキュー、ヘーゲル、マルクス、アダム・スミス。その後は社会ダーウィニズムが中国の文明を否定し、人種的に優れた西側による劣った人種の支配、として西側文明をユニバーサルに正当化した。もしアメリカが世界征服を目指す新しいプロテスタントなら、EUは宗教改革以前のカトリック教会である、と考える。
YaleGlobal, Thursday, December 5, 2019
Double Whammy for China
Frank Ching
FT December 5, 2019
Alibaba’s debut in Hong Kong signals change in Beijing’s mindset
Daniel Shane
● 民主党大統領候補争い
NYT Nov. 30, 2019
The Case for Bernie
By Ross Douthat
バイデンは高齢だ。ウォレンは国民解医療保険制度に手を焼いている。
サンダースは、今なら、かつてオバマがまとめた、非常に多様な民主党支持層の連携を再現できるかもしれない。
NYT Dec. 2, 2019
America’s Red State Death Trip
By Paul Krugman
FP DECEMBER 4, 2019
For the 2020 Democrats, It’s America First, Too
BY COLUM LYNCH
(後半へ続く)