IPEの果樹園2019

今週のReview

11/18-23

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リベラルな民主主義の幻想 ・・・中国の台頭に対処する ・・・イギリスの総選挙 ・・・ブルームバーグの立候補? ・・・超富裕層の富への増税 ・・・香港は破滅の縁に立っている ・・・トランプ弾劾公聴会 ・・・アイルランド統一と内戦

長いReview

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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 リベラルな民主主義の幻想

SPIEGEL ONLINE 11/08/2019

Interview with Robert Kagan

Permanence of Liberal Democracy 'Is an Illusion'

Interview Conducted by René Pfister

アメリカの著名な保守派であるケーガンRobert Kaganは、ヨーロッパに「大人になれ」と警告した。

・・・トランプはシリアからの米軍撤退の結果を考慮しなかっただろう。彼は支持者たちが米軍撤退を好むと考えた。それは正しい。

・・・共和党の議員が反対しても、トランプは気にしない。2016年の選挙で、トランプは共和党に対抗して勝ったのだから。

・・・ヨーロッパが、中東におけるアメリカの役割を引き受けることはできないだろう。軍事力を行使すれば、市民の犠牲や誤爆などが必ず起きる。ドイツは第2次世界大戦後、平和的な国家であるように求められた。

・・・リベラルな民主主義が人類の繁栄する条件と信じられてきたが、それは幻想だ。アメリカがヨーロッパの民主化過程を支持したことで、それが実現した。アメリカが築いた国際貿易体制もそれを可能にした。しかし、特に、イラク戦争、金融危機の後、アメリカ国民はヨーロッパの防衛にかかわることを嫌うようになった。

・・・再統一後のドイツはヨーロッパの最大国になった。アメリカがヨーロッパから撤退すれば、ドイツの経済的な支配に対する近隣諸国の怨嗟が高まるだろう。それらの国はNATOEUから離脱するかもしれない。反対に、ドイツでも怨嗟が生じるだろう。

・・・そうだ。ヨーロッパは大人になるべきだ。1990年代後半のEUと今のEUは全く異なる。UKの離脱、東欧におけるさまざまな非リベラリズム、フランスはナショナリストが勝利する寸前であった。

・・・再選されたら、トランプがNATOを抜けるかもしれない。世界中で非リベラルな勢力への支持が広まっている。かつては確実であった行動様式が溶解しつつある。トランプがさらに4年を務めるなら、リベラルな世界秩序は崩れ去る。


 中国の台頭に対処する

FT November 13, 2019

How the US should deal with China

Martin Wolf

中国は、世界の覇権国の地位からアメリカを失脚させるだろう。そして、まったく異なる世界を創る。しかし、この終着点を避けることは、まだ可能である。

重要なことは、中国の台頭に正しく対処することだ。しかし、この点で、アメリカは恐ろしいほど間違っている。

他の条件が同じであれば、国家の経済規模を決めるのは人口だ。アメリカが巨大な人口を持つ、最大の経済規模を持つ富裕国である。しかし、中国の人口は、アメリカとドイツの関係ほど、さらに巨大である。

アメリカの1人当たり経済産出額が中国をはるかに上回ることは、永久に続かないだろう。しかし、中国の人民がアメリカの経済水準を達成することは必ずしも確実ではない。習近平主席が中国のブレジネフLeonid Brezhnev書記長になる可能性もある。

ブレジネフは、1964年から1982年のその死まで、経済や政治の改革についてすべてのアイデアを否定し続けた。彼は、共産主義の正統性と共産党の規律を強調した。それはソビエト連邦にとって悲惨なことであり、その保守主義はソ連崩壊にも直接の責任があった。

習が同じ結末を迎える可能性もあるが、その活気ある市場経済と研究熱心な官僚たちが、この罠を回避することもあるだろう。

アメリカが中国の成長を止めることは、もはやできないだろう。世界最大の経済になった中国に対しても、アメリカはなお3つの優位を持つだろう。法の支配する民主主義、自由市場経済、経済的に強大な同盟諸国。しかし、トランプはこれらを破壊しつつある。

これらの優位を生かすには、アメリカは、中国の台頭を、同盟諸国と協力し、WTOの枠内で交渉するべきだろう。アメリカは中国人民の敵としてではなく、その生活を改善する正当な願いを認め、中国の政治システムを転換する要求も棄てるべきだ。それらは理由がないし、達成できるものでもない。そして、開放的で、ダイナミックな世界経済を維持し、中国の言論の自由や人権尊重を訴えるべきだ。超大国間の協力によって、経済進歩と平和、グローバル・コモンズを守ることが重要だ。


 イギリスの総選挙

FT November 14, 2019

One thing is certain: Britain’s election will not settle Brexit

Philip Stephens

「あなたたちはどこに向かうのか?」 海外で何度も聞いた質問だ。Brexitをめぐる痙攣で、議会がマヒし、国論が毒されて、友人や同盟諸国に混乱と悲観を生じた。きっちりした、安定的な民主主義が、どうしてこれほど道を踏み外したのか? 私はその答えを探して苦しんだ。

ボリス・ジョンソンはそうではないらしい。Brexitを達成する。と、首相は豪語する。有権者に求めるのはそれだけだ。彼がEUと合意した条件を支持せよ。そうすれば、この国は生まれ変わる。ブリュッセルへの狂気の忠誠とはサヨナラして、グローバル・ブリテンの時代へようこそ!

陽気な意味で言えば、それはナンセンスである。選挙結果にかかわらず、それでBrexitが終わらない。ジョンソンの合意は、その後の交渉のジャンプ台でしかない。ブリテンとEUの関係を決めるには何年もかかる。

違う見方では、首相の一連の嘘が現れているので、驚くほどのことはない。「彼を取引した誰をも裏切ってきた、脅迫的な嘘つきである。」

3年におよぶ論争と議会のマヒは、多くの有権者を、残留派も含めて、とにかく終わってくれるなら何でもいい、という気分にしている。労働党のコービンが首相にふさわしくない、と有権者が思っているから、なおさらだ。

ジョンソンは何の答も示していない。ヨーロッパの「シンガポール」? 英語圏の米米民主主義復活? 逆に、国際主義を一切無視した。外国との競争や移民をたたき出すバリケード?

2016年の国民投票は、これらの矛盾したBrexit推進派のEU外におけるブリテンを議論しなかった。議論を拒否したのだ。それは、だれでも何でも望むことを意味した。3年以上たっても、彼らはまだ議論を拒んでいる。

もしジョンソンが勝利したら、ブリテンはどこに向かうのか? それは、見るまで分からない。


 ブルームバーグの立候補?

NYT Nov. 8, 2019

Welcome, Mike Bloomberg

By David Leonhardt

われわれは経済不満とポピュリズムの時代に生きている。77歳のウォール街を代表する億万長者は、このような時代に、中道左派の政党にとってふさわしい候補者とは思えない。

しかし、私はブルームバーグの立候補を歓迎する。立候補者たちの現状は十分ではない。弱い候補者たちの分断。浮動票を無視した選挙戦。こうした競争にブルームバーグが参加すれば、私のような懐疑的な有権者を引き付けるだろう。

独立候補ではないから、ブルームバーグは、穏健派と進歩派の分裂を促し、トランプの再選を助けるものではない。彼はそれを理解している。

ブルームバーグは、政府が人々の生活を改善できることを知っている。

ブルームバーグは、ニューヨーク市で警察に間違った手法を取り入れたが、他方で、多くの成果を上げた。喫煙や肥満を抑制し、ゾーニング規制を緩和し、都市を再開発し、学校改革にも成果を上げた。

最大の問題は、彼がアメリカ人労働者の生活水準が停滞している原因を理解しているか、である。連邦政府のパワーを使って、税制も含めて、中産階級や貧困層のために何をするのか?


 超富裕層の富への増税

FT November 13, 2019

Billionaires have never had it so good

John Gapper

エリザベス・ウォレンやジェレミー・コービンが富裕層への増税を主張している。ビル・ゲイツは不満を述べた。UBSは、プライヴェート・ベンキングの顧客たちに富の弁護論を提供する。「産業全体を転換し、膨大な数の高給与の職場を創り出し、マラリアなどの病気の治療法をもたらした。」

確かに、世界の億万長者たちは、かつてよりも、その能力を反映するようになっている。とはいえ、過去においては超富裕ではなく、富裕でしかなかったが。彼らを英雄や悪魔のように描く前に、なぜそれほど豊かなのかを考えてみよう。

1.スーパースター効果。グローバリゼーションとハイテクは、GoogleFacebookのような企業の市場を拡大し、成功した企業の利潤は急速に、けた違いに大きくなっている。

2.セキュリティー効果。貧しい者は、長期の計画を立てられないから貧しいままである。億万長者はその逆である。富があれば、長期のアイデアに融資し、失敗や後退を乗り越えることができる。

3.インサイダー効果。いったん富とパワーを得ると、助言や取引仲介者が集まってくる。億万長者たちは富を預金しておくのではなく、UBSのようなプライヴェート・バンクに運用させる。そこにはインサイダーの情報がいっぱいある。

4.タックス効果。多くの国が、資本よりも所得に課税する。それは企業家の活動を促すためだ。その結果、富裕層は、平均所得の階層よりも、富の小さな割合しか課税されない。しかも、富は容易に国境を越える。国内にとどまっても、さまざまな課税回避の仕組みがある。


 香港は破滅の縁に立っている

FT November 13, 2019

The Hong Kong authorities have lost their legitimacy

香港は破滅の縁に立っている。火曜日の午後、各地の抗議活動はモロトフ・カクテル(火炎瓶)を警察に投げて、催涙弾に反撃した。数か月に及ぶ対決で、暴力は決定的な水準を超えつつある。

デモ隊と警察の双方に、暴力をエスカレートさせた責任はある。しかし、現在の危機の責任は、第1に、香港政庁と北京にある。彼らはデモ活動の真剣さと決意の固さを見誤った。譲歩は、あまりにも遅く、しかも、小さなものであった。

市民たちに支持されない香港政庁は、統治の正当性を失った。政府はますます軽雑による支配を強化した。それは警察に市民との衝突のリスクを押し付けることを意味した。もはや、法と秩序、ではなく、法の支配が問題とみなされている。

北京では、より強硬な主張が支持される兆候が見られる。中国政府は、法と教育の制度改革を示唆している。それは治安法制の強化を含むものだ。いかなる国家治安法の発動も、デモ隊の普通選挙に向けた要求を否定し、最後の抵抗を呼ぶだろう。

妥協は非常にむつかしい。しかし、暴力を抑えるために、普通選挙を約束する前例を、北京は作らないだろう。香港における治安法制と合わせて、統治の代表者を組織する可能性を示すべきだ。

FT November 13, 2019

Events in Hong Kong reveal the thin veneer of civilisation

Jamil Anderlini

ゴールディングの『蠅の王』は社会の崩壊を描いた小説だが、香港の高校教科書に載っている。

今や香港では皆が、文明と呼ぶものの壊れやすさを実生活で目撃している。香港は、部族主義と、みだらな暴力の領域に落ち込んだ。

金曜日、抵抗運動が始まってから、最初の犠牲者が出た。抗議に参加していた22歳の学生が、警察による排除の際、駐車場から転落して死亡したのだ。

現在の騒乱で最も困惑する現象は、抗議デモ参加者の大きな集団が、ある人に、身分を隠した警察や中国本土のスパイという疑いをかけ、彼らを打ちのめすことだ。しかも、ときには北京官話を話すのを誰かが聴いた、といった理由だけで。

こうした卑劣な行動はデモの大義を大きく損なうものだ。しかし、国際メディアはそれをあまり報道しない。なぜなら、民主主義の貴い目標のために闘う人々のイメージにそぐわないからだ。

最も驚くべきは、デモ隊の暴力を多くの人びとが受け入れ、許していることだろう。抗議デモは平和的に行うべきだ、という意見を支持する人は、6月の65%から、10月半ばの46%にまで低下した。平和的な抗議が失敗すれば、もっとラディカルな行動が必要だ、と彼らは言う。

同じような規範の劣化が香港警察でも顕著に示されている。かつて、世界とは言わないまでも、アジアで最も洗練された警察であった。今では、公に香港市民を「ゴキブリ」や「クズ」と呼ぶ、抗議デモ側は警察を「イヌ」と呼ぶ。それはジェノサイドの言葉である。

警察は政府側の殺し屋や犯罪組織を守っている、抗議デモに覆面の警察官が大量に紛れ込んでいる、という大衆の印象によって、モッブ集団の正義が支持されている。暴力のエスカレーションが、どれほど容易に進むか、ということを示すものだ。

デモ参加者も警察も、文明の薄皮を破壊しても罰せられない、と理解した瞬間に、ある種の直観を得る。受け入れられる行動の範囲が一気に拡大し、恥知らずな、途方もない行動が正常化されてしまう。この過程をソーシャル・メディアのエコー効果が増幅する。

国連が人的開発水準で世界7位の評価を与えた、地球上で、最も健康で、最も長寿の、最も裕福な市民の暮らす香港で、かつて考えられないような行動をすすんで受け入れることは、衝撃である。香港で文明が崩壊するなら、同じことはどこでも起きうる。

文明社会は一夜にして砕け散るが、それを修復するには、常に、何十年もかかるのだ。


 トランプ弾劾公聴会

FT November 14, 2019

Republicans keep changing their tune on impeachment

Edward Luce

弾劾審査の公聴会において,トランプに最も忠実な議員の1人であるMark Meadowsが,トランプを擁護するために発言した「だれでも何が真実かについての印象を持っている」は,保守派が相対主義を受け入れ,事実については明白に敗北したことを認める点で興味深い.

トランプの弁護側が退却するスピードこそ,注目に値する.トランプがウクライナ大統領と電話会談で,バイデンの息子に関する捜査を求めたことについて,もはや誰も疑っていない.

証言についてさまざまな欠陥を指摘しようとするが,トランプ自身はそのような弁解を全く不要と考えているのは,大きな皮肉である.彼はリチャード・ニクソンの台詞に従っているだけだ.「大統領の行動は,すなわち,すべてが合法である.」 トランプの弁護士は,先月,ニューヨークの裁判所で語った.彼が,ニューヨークの5番街で誰かを射殺しても,大統領として免責されるだろう,と.

最近,マンガがその点をうまく示していた.ニクソンは言う.・・・「私は悪人ではない.」 彼はそう強く主張した.・・・トランプは応える.「私は悪人だ.それがどうした?

NYT Nov. 14, 2019

Shame on Us for Getting Used to Trump

By Michelle Goldberg

弾劾公聴会のあと、メディアの反応には退屈だったというあくびが聞こえた。ロイターの2人のレポーターは、「重要だが、退屈」と書いた。「最高のリアリティーテレビ番組と違って、トランプの大統領政府とまでは言わないが、花火も爆発の瞬間もない。」 ABCニュースは、公聴会を評して、「ブロードウェーの大ヒット・ミュージカルが開幕した夜というより、真剣な1シーンのドレス・リハーサルという感じ。」

確かに、水曜日に新しい展開は少なかったが、それは非公開で行われた証人たちの証言が、すでに流出していたからだ。しかし、手にした事実がこの国の核心を震撼させなかったとしたら、それは弾劾公聴会を行った民主党議員たちの責任ではない。この無法状態を許したわれわれすべての責任であり、権力者の横暴が正常とみなされていることを意味する。


 アイルランド統一と内戦

FT November 14, 2019

Do the Irish want unification?

Simon Kuper

1921年のアイルランド分割以来,長い間の夢であったアイルランド統一の見通しが、突如として現れた.どこかの国がやった勝者総取り方式や,いい加減な議論ではなく,ほとんどすべてのアイルランド人が、ゆっくり,真剣に,公平に統合することを望んでいる.

どのようにして,何世代もブリティッシュと自覚していたプロテスタントのユニオニストを安心させるか? 480万人のアイルランド人が共和国に,190万人が北アイルランドにいる.統一は北における暴力的な内戦時代の記憶を復活させるかもしれない.幸い,ほとんどのアイルランド人はそのことを理解している.歴史から学んだ,まれな国である.

1998年の聖金曜日の合意Good Friday Agreementは、アイルランドの南北双方が住民投票で統合を支持すれば、統一する、と規定している。それはもうすぐ実現するだろう。来年、ハードBrexitが起き、スコットランドが独立を選択すれば、北アイルランドもイギリスの混乱から逃れたいと願う。そして2021年、センサスによれば、北アイルランドで初めてカトリックがプロテスタントより多くなる。

それは妖精が現れて夢をかなえてくれるようなものか? しかし今、アイルランド人は統一を望むか、確かでない。(聖金曜日から)21年で、数世代におよぶ宗派対立の傷を癒すことはできない。アイルランド共和国は、本当に、数万人の強硬派ユニオニストを受け入れるのか? 100年も切り離された今では、カトリックでも南北で異なるアイデンティティを持つ。

さらに、資金の問題がある。北アイルランドの1人当たり所得はアイルランド共和国の半分である。北アイルランドはイギリスから年間100億ポンドの補助金を受けている。これを共和国が肩代わりすると、1人当たり年間2000ユーロの負担となる。それは何十年も続く可能性がある。共和国の世論も、統一を66%が支持するが、増税が必要となると31%に低下する。

イギリスが示したように、複雑な問題に単純な答えを出して、細部を後から議論することもできる。Brexitは、ロマンチックなナショナリストの国民投票が決めた墜落コースだった。アイルランドはもっと優れた方法を示した。市民会議だ。100人の会議を2016年に開いて、研究し、諮問し、さまざまな問題を報告した。妊娠中絶を合法化する市民会議の提言は、国民投票で広く支持された。アイルランド統一も、いつか議論するだろう。

しかし、それでも、統一したアイルランドには、和解不可能な、労働者階級のマイノリティー、東ベルファストのプロテスタントたち、その中には女王陛下やユニオン・ジャックを刺青している者たちが含まれる。シン・フェイン党は、驚いたことに、ユニオニストを敗退させたがっていないようだ。

Sean “Spike” Murrayは、シン・フェインの幹部で、内戦期に12年間も投獄されていた。彼は、ユニオニストたちが統一されたアイルランド共和国で、かつてイギリス支配下のナショナリストのように、「見捨てられたと感じる」ことは望まない。21年間の、コミュニティーの境界を超えた討論がもたらした「信じがたい」教育効果である。

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The Economist October 26th 2019

British politics: Here comes the Brexit election

Latin America: Schadenfreude in the south

Chile: Pinera’s pickle

Ethiopia: The clash of nationalisms

East Germany: Thirty years after the Wall fell

Eastern Europe: Thirty years of freedom, warts and all

Chinese demography: Old, not yet rich

(コメント) イギリス総選挙の対立軸は屈折し、保守党はBrexitと社会的保守主義で労働者の支持を集め、労働党は富裕層や都市部における残留派と社会民主主義に訴える。しかし、1年後のまだ「Brexitを達成する」と議論し続けている恐れがある。

ラテンアメリカやエチオピアの政治が暴力によって改革の刺激を得るのか、そう期待するほど容易な政治社会情勢ではない、と読み取れます。それは、改革の進展が深刻な不満、アイデンティティーの危機につながることをドイツ再統一が示したからです。長い記事ですが、さまざまな問題を考えさせられます。

中国にとっても、少子・高齢化は避けられません。まだ十分に豊かでない人口・地域を抱えたまま「日はまた沈む」というわけです。

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IPEの想像力 11/18/19

フィギュアスケート・ロシア大会のエキジビジョンで、カナダのナム・ニューエン(グエン)が実に楽しくダンスしました。その姿に、カナダの優れた風土を観るのは、勝手な思い込みでしょうか?

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Simon Tisdall の論説(“For too many people in too many countries, democracy isn’t working,” The Guardian, Sat 9 Nov 2019)が描く民主主義は、一見、日本の長期政権と対照的です。

Tisdallの懸念は、選挙過程のintegrity健全さが世界中で疑わしくなっていることです。それは西側で広く支持された選挙モデルであったが、ますますシステムの欠陥、巧妙な介入の脅威に苦しむようになった。

何度選挙しても、主要政党は十分な支持を得られず、人びとの望む改革も進まない。小政党や反政府勢力に支持を奪われている。スペインは4度も選挙したが、カタルーニャ独立問題が分断を深め、極右政党が躍進しただけだった。ドイツ、フランス、イタリア、スウェーデンでもそうだ。不安定な政権、議会の膠着状態が続く。

Tisdallの懸念は、有権者が望むものを得られず、幻滅と冷笑主義が広まっていること、それが刺激するのは、ポピュリズム、超国家主義、大規模な無投票、政治への疎外感、そして、非民主的な体制を求めるデマゴーグたちが支持されることです。イタリアのサルヴィーニのように。

そして、Tisdallの懸念は、新興の民主主義体制に向かいます。イラクでは、新たな不満の水準が民主主義の生存を脅かす。昨年、選挙で成立した政権だが、最近の反政府デモは数百人の死者を出した。抗議デモは、政治エリートの汚職と無能さを攻撃するが、次の体制は見えない。再び、サダム・フセインのような支配者が現れるのか? ジンバブエ、パキスタンシリア、ベネズエラ・・・

あるいは、中国、ロシア、エジプトでは、民主主義の原理が悪用される。そこでは、正統性を示すために偽装した自由選挙が行われる。インターネットとソーシャル・メディアは選挙やガバナンスを操作する主要な道具である。オンライン検閲やハイテクを駆使した大衆監視システムは、中国の輸出する「デジタル権威主義体制」の基盤である。他方、ロシアは外国の選挙や政治家に「影響力」を行使する。ボリス・ジョンソンは、2016年のBrexit国民投票に、ロシアが介入したのではないか、という捜査の公開を拒否した。

Tisdallは、ドイツのメディアに対するナチスやホロコーストに関するインターネット規制の法制化Network Enforcement Actが、多くの国で検閲や政治的弾圧の口実に悪用された、と懸念します。

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「桜を観る会」で、支持者たちに囲まれて、満開の桜を背景に、ハイタッチを交わす安倍首相を、さまざまな成果を上げた、と与党は称賛します。何度も選挙で勝利したリアリストである、長期政権を最大の目標に、なんでも政策を取り込んで支持率を高めたプラグマティストである、と。しかし、原発処理、QQEとマイナス金利、国債累積、外交、憲法・・・ そのどれも真正面から解決しようとしなかった。

カナダ総督となった女性Adrienne Clarksonの論説("Canada Knows How to Respond to a Refugee Crisis," NYT OCT. 7, 2015)を思い出します。それは、とても印象的でした。

https://www1.doshisha.ac.jp/~yonozuka/Review2015/101215review_s.html

長期政権は、それ自体を目標とすることで、その正当性を高めることに成功したようです。しかし、カナダ総督に比べて令和天皇がそうであるように、政治が真剣に論争し、合意形成と進路を示す民主主義の意味を、大きく損なったと思います。

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