IPEの果樹園2019
今週のReview
11/18-23
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マイナス金利の世界 ・・・アメリカ大統領選挙と富裕層 ・・・中国の台頭に対処する ・・・イギリスの総選挙 ・・・チリの暴動と政治家たち ・・・ブルームバーグの立候補? ・・・超富裕層の富への増税 ・・・民主主義は機能しない ・・・中国の資本自由化 ・・・香港は破滅の縁に立っている ・・・トランプ弾劾公聴会 ・・・アイルランド統一と内戦
[長いReview]
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主要な出典 FP: Foreign Policy,
FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York
Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● マイナス金利の世界
YaleGlobal, Thursday, November 7, 2019
Global Economy Struggles With Negative Rates
Will Hickey
世界は、マイナス金利に直面し、貯蓄者と銀行とのジレンマを生じている。また、長期と短期の利回りが逆転している。数週間や数か月の融資に対する金利の方が、数年の融資に対する金利よりも高いのだ。これらの現象は2009年の金融危機から広がった。今や、世界の投資適格な債券発行の30%、17兆ドル近くがマイナス金利の領域にあり、増大し続けている。
もっとも顕著なデンマークでは、住宅ローンがマイナスになっている。銀行が、住宅購入者にローンを組むと、それが最終的に返済される額は少なくなる。スイスでは、銀行預金が高額になると、金利を得られるのではなく、手数料を支払うことになる。
もちろん、マイナス金利ローンは「フリーランチ」ではない。銀行はマイナス金利でもさまざまな手数料を取る。結果は、融資の拡大が止まることだ。経済活動を刺激するのには、もはや役立たない。
発展した諸国でマイナス金利が広がると、ドル高になって、インドネシア、トルコ、ナイジェリアのような発展途上諸国がドル建の巨額の債務を、じりじり安くなる自国通貨でみて、返済するのが苦しくなる。
ATMなど、さまざまなサービスが有料化され、金利に頼る高齢者の生活が苦しくなり、年金基金は、歴史的に見て保守的な投資家であるが、支払い不能の基準となる7%、8%の利回りを求めて苦悩する。
もし世界最大の経済であるアメリカがマイナス金利になれば、金融市場に巨大な穴が開くだろう。トランプ大統領は、他国に比べて連銀がもっと早く金利を下げないから、ドル高によって経済を損なっている、と不満を述べる。しかし、アメリカ政府が保証する財務省証券がわずかでも高いことで、世界中から投資を引き寄せている。
利回りを求めて、さまざまな危険な投資を増える。キャリー・トレードもそうだ。高額紙幣によるタンス預金が増える。
経済活動を刺激する新しい方法が求められる。企業の設立を容易にし、政府の巨大国有企業を民間企業に転換する。
多くの発展途上諸国では、官僚の支配や規制が多く、国有企業による独占も広く見られる。しかし、ビットコインやリブラのような暗号通貨、AI、5G通信統合が普及すれば、もっと自由に企業の能力が解放されるだろう。
VOX 08 November 2019
The impact of negative interest rates on banks and firms
Carlo
Altavilla, Lorenzo Burlon, Mariassunta Giannetti, Sarah Holton
PS Nov 12, 2019
Is Economic Winter Coming?
RAGHURAM G. RAJAN
何がアメリカの次の不況を起こすのか? かつて、金利の引き上げが不況をもたらした。しかし、今はインフレが高まって金利を上げるような様子はない。
それは、消費の減少である。その原因は、たとえば、レイオフだ。中国との合意は期待できず、ヨーロッパや日本とも貿易摩擦が激化して、生産が落ち込むだろう。
そして、地政学的なリスクだ。サウジアラビアとアラブ首長国連邦とイランとの対立に、アメリカの関与した衝突が起きる。石油価格は急騰するだろう。
次の不況を起こすのは、ホワイトハウスである。
● アメリカ大統領選挙と富裕層
NYT Nov. 7, 2019
Centrists, Progressives and Europhobia
By Paul Krugman
NYT Nov. 12, 2019
Who’s Afraid of Elizabeth Warren?
By Jamelle
Bouie
トランプ大統領は億万長者に対して好ましい大統領だった。法人税を下げ、所得税の最高税率を下げ、相続税の免除額を引き上げた。億万長者たちを商務省など政府の主要ポストに就けた。オバマの金融規制を逆転させ、資源採取や化石燃料などの業界に好ましい政策を採った。
民主党の大統領候補指名でトップを争う2人Bernie Sanders and Elizabeth
Warrenは、富裕層とその資産に課税することを考えている。バイデンが競争から抜ければ、ウォレンが大統領候補になるだろう。トランプの頼る億万長者たちが心配し始めた。
だから、その1人であるブルームバーグMike Bloombergが民主党の指名争いに出るという話が流れたのだ。公然と、ウォレンを攻撃する者が増えた。
ビル・ゲイツは、「ふざけて言うだけだが」と断って、もしトランプとウォレンとどちらを支持するか、と尋ねられたら、それには答えず、「もっとプロフェッショナルなアプローチ」を取る候補者に投票する、と答えた。
ジェフ・ベゾスもウォレンに関する態度を公表していない。しかし、今年の初め、ブルームバーグの立候補を強く求めたのは、民主党の指名争いに懸念を強めたからだ。
Patti Cohenの評価では、もしウォレンの資産に対する増税が1982年からなされていたら、2018年の彼らの資産額は、ビル・ゲイツが970億ドルではなく、139億ドル、ベゾスは1600億ドルではなく488億ドル、ブルームバーグは518億ドルではなく123億ドルとなっていただろう。
億万長者たちが政治的意見を持つのは当然だ。しかし、彼らが次の大統領の姿勢を決めることはない。もし有権者がウォレンに決めたら、彼らはそれが人々の意志であると認めるしかない。
FT November 15, 2019
Taxing wealth should be left as a last resort
● 資本主義の危機
The Guardian, Fri 8 Nov 2019
Capitalism is in crisis. And we cannot get out of it by carrying on
as before
Michael Jacobs
この選挙は資本主義の方向を転換することになる。
もちろん、1997年に労働党は勝利した。それは政府支出や福祉政策においてサッチャー=メージャーの時代を断ったが、ニュー・レイバーは経済政策の基本モデルに対して挑戦しなかった。グローバル化、製造業の減少、金融・労働市場の規制緩和、である。2010年の保守党・自民党の連立政権は緊縮策を行った。しかし、労働党でも同じことをしただろう。財政健全化を正統的に受け入れていたからだ。
近代イギリスの2つの画期的な選挙は、1945年と1971年であった。両方とも、資本主義の旧来の支配的モデルが危機に陥ったときの選挙だった。ともに経済思想や政策に「パラダイム・シフト」が起きた。
1945年までに、戦前の自由放任経済学が死んだのは明らかだった。それは、大不況の大量失業を防ぐことができず、戦争にいたるまで何もできなかった。選挙に勝ったアトリーClement Attleeは、ケインズ経済学の新しい時代を開始した。積極的に政府は完全雇用を実現し、福祉国家が全般的な生活水準を高めた。
新しい経済モデルは30年間の黄金時代を築いたが、これも危機によって崩壊した。ニクソン大統領が1971年にブレトン・ウッズ体制を終わらせ、2年後には産油諸国が石油価格を4倍に引き上げて、UKはスタグフレーションになった。1979年の選挙で政権に就いたサッチャーは、新正統派の経済学で武装していた。自由市場、規制緩和、民営化である。
自由市場モデルも崩壊した。2008年の金融危機が決定的であった。10年間の緊縮策を経て、なお経済は、ほとんどゼロの金利水準と量的緩和策による生命維持装置を必要としている。投資は低水準で、生産性は伸びず、貿易赤字が続いている。人びとの生活水準は停滞したまま、上位1%の富が膨張している。
自由市場モデルは資本主義の三重の危機を生み出した。金融不安定性、環境の自足不可能性、政治的な支持の喪失、である。
左派だけでなく、ビジネス界の指導者たちも資本主義の危機を語っている。民間部門の成長を支えるエンジンが機能していないからだ。根本的な転換が求められている。経済をエコロジカルな基礎に向けて転換しなければならない。汚染や炭素排出量を削減し、種の多様性を維持することに、多くの投資を向けるべきだ。
実質的なマイナス金利を利用したグリーン・インフラ投資。国全体の雇用をもたらす技術革新と輸出産業を育成するよう、民間投資を促す積極的産業政策。国民所得の分配を変え、労働市場のバランスを回復する。最低賃金を引き上げ、<ギグ・エコノミー>の労働者に安定性を保障し、労働組合が集団交渉を行う部門を拡大する。それは、公共サービスの改善とともに、生産性にプラスである。独占を廃止し、住宅を含む富の分配を変える、金融部門の改革も欠かせない。
労働党はこうした転換を準備している。そして、選挙結果によっては、自由民主党、SNP、ウェールズ党Plaid Cymruとの協力が必要だ。彼らもBrexitについてだけでなく、経済の転換で意見を示すべきだ。
PS Nov 14, 2019
A Living Wage for Capitalism
JIM O'NEILL
最低賃金を引き上げ、労働者の実質所得を増やせば、支出を増やし、住宅を購入でき、労働に代替する資本が投下されて、生産性も上昇する。
● リベラルな民主主義の幻想
SPIEGEL ONLINE 11/08/2019
Interview with Robert Kagan
Permanence of Liberal Democracy 'Is an Illusion'
Interview
Conducted by René Pfister
アメリカの著名な保守派であるケーガンRobert Kaganは、ヨーロッパに「大人になれ」と警告した。
・・・トランプはシリアからの米軍撤退の結果を考慮しなかっただろう。彼は支持者たちが米軍撤退を好むと考えた。それは正しい。
・・・共和党の議員が反対しても、トランプは気にしない。2016年の選挙で、トランプは共和党に対抗して勝ったのだから。
・・・ヨーロッパが、中東におけるアメリカの役割を引き受けることはできないだろう。軍事力を行使すれば、市民の犠牲や誤爆などが必ず起きる。ドイツは第2次世界大戦後、平和的な国家であるように求められた。
・・・リベラルな民主主義が人類の繁栄する条件と信じられてきたが、それは幻想だ。アメリカがヨーロッパの民主化過程を支持したことで、それが実現した。アメリカが築いた国際貿易体制もそれを可能にした。しかし、特に、イラク戦争、金融危機の後、アメリカ国民はヨーロッパの防衛にかかわることを嫌うようになった。
・・・再統一後のドイツはヨーロッパの最大国になった。アメリカがヨーロッパから撤退すれば、ドイツの経済的な支配に対する近隣諸国の怨嗟が高まるだろう。それらの国はNATOやEUから離脱するかもしれない。反対に、ドイツでも怨嗟が生じるだろう。
・・・そうだ。ヨーロッパは大人になるべきだ。1990年代後半のEUと今のEUは全く異なる。UKの離脱、東欧におけるさまざまな非リベラリズム、フランスはナショナリストが勝利する寸前であった。
・・・再選されたら、トランプがNATOを抜けるかもしれない。世界中で非リベラルな勢力への支持が広まっている。かつては確実であった行動様式が溶解しつつある。トランプがさらに4年を務めるなら、リベラルな世界秩序は崩れ去る。
● ベルリンの壁崩壊
The Guardian, Fri 8 Nov 2019
The Guardian view on the fall of the Berlin Wall: history’s lessons
Editorial
ベルリンの壁を通って東ベルリン市民たちが西側に殺到し、予想もしない形で冷戦は終わった。それはリベラルな民主主義の決定的な勝利とみなされた。
1990年代と2000年の最初の10年を支配したリベラル。コンセンサスは、突如として揺らいだ。その感覚が30周年の記念を暗くしている。攻撃的な右派のポピュリズムの広がりは、旧東側に限らない。
根本的な反省が始まっている。マクロンはインタビューで語った。ますます1つの市場になるヨーロッパで、その目的を示すのは、市場ではなく、コミュニティーである。ECBのラガルド新総裁は、ドイツやオランダなど、財政黒字諸国に刺激策をとるよう求めた。イギリスでも、主要政党が1970年代のような政府支出を要求している。
SPIEGEL ONLINE 11/08/2019
Interview with Mikhail Gorbachev
'It Was Impossible To Go On Living Like Before'
Interview
Conducted by Anna Sadovnikova
PS Nov 8, 2019
The Rise of Nationalism After the Fall of the Berlin Wall
GEORGE SOROS
1989年11月8日にベルリンの壁が崩壊した。私はその10年前から「オープン・ソサイアティ」という考え方を提唱し、フィランソロピー活動をしてきた。
30年後に、状況は全く変わった。国際協調の道が封鎖され、ナショナリズムが広まっている。これは避けられない結果ではなかっただろう。アメリカは唯一の超大国として責任を果たすべきだった。しかし、勝利を楽しむことにばかり関心があった。旧ソ連圏への支援は不足し、悲惨な状態となった。ネオリベラルなワシントン・コンセンサスの処方箋に従ったからだ。
金融市場がそれ自身の行き過ぎを是正するはずだったが、そんなことはしなかった。中央銀行は金融機関を守って合併させた。2008年の金融危機がその結果だが、アメリカのグローバルな支配は変わらず、ナショナリズムが広がった。
中国のソーシャル・クレジット・システムが拡大し、個人の生活を評価するようになった。
The Guardian, Sat 9 Nov 2019
In 1989, capitalism won. Today its greatest ideological challenge
is the planet
Larry Elliott
PS Nov 13, 2019
The Fall of the Berlin Wall and Social Democracy
DARON ACEMOGLU
冷戦後の世界は、西側の社会民主的契約を破棄した。それは、セーフティーネット、規制、国民的な公共サービス、再分配的な税制、労働者を長期に保護する制度である。それは最も発展した経済において、不平等を制限し、その後、減少させた。持続可能な成長を数十年にわたって実現した。
戦後の経済成長は、競争的な市場経済に依拠して実現したが、そこにおいては独占や強大なコングロマリットが解体させる規制を伴った。寛大な支援を伴う公教育や政府の技術革新補助金が役立った。労働市場の諸制度が、雇用者による労働者への過度の支配を防いだ。
社会民主主義は政治においても重要だった。ソ連や、共産主義のイデオロギーが消滅したことは、エリートたちが、革命を恐れて受け入れてきた社会民主主義の妥協を弱め、転覆した。John Maynard Keynesのような経済思想、Franklin D. Roosevelt to John F. Kennedy and Lyndon B. Johnsonのようなアメリカ大統領、北朝鮮を恐れる韓国のように、知識人や指導者たちは土地改革、教育投資、労働組合を受け入れた。
しかし、マーガレット・サッチャー、ロナルド・レーガンの政治革命、ベルリンの壁崩壊は、現在のトランプやボリス・ジョンソンにつながっている。繁栄し、安定した社会の基礎を築くために、社会民主主義的な契約を21世紀において復活させるべきだ。
FP NOVEMBER 14, 2019
Lech Walesa on Why Democracy Is Failing: ‘There Is No Leadership’
BY MICHAEL HIRSH
● ドイツの政策転換
FT November 8, 2019
Germany’s eurozone gambit could meet a swift death
Tony Barber
1521年、ルターMartin Lutherがヴォルムス帝国議会に着いた。カトリックの支配階層の前で、彼がプロテスタントの考えを擁護するためであったが、そのとき衛兵が近づいて言った。「これ坊主、お前は非常に困難なことをしているぞ。」
ドイツのショルツOlaf Scholz蔵相が、ユーロ圏の諸政府ではなく、ドイツの政界・金融界の支配層に向けて、ヨーロッパの通貨同盟を完成するアイデアを示したとき、同じことを思っただろう。
包括的な通貨同盟には、共通の預金保険がかけている。北欧諸国は南欧諸国に騙されるという疑念を持って、それを邪魔してきた。ショルツの提案は画期的なものだが、それはユーロ圏ではなく、ドイツ国内に向けて示され、しかも、ドイツ政府の合意ではない。連立政権としても姿勢が定まらない。
最近、Annegret Kramp-Karrenbauer国防相がシリアへの多国籍安全保障と派兵を提案したのと同じ、政府内の不安を感じる発言だ。
● 中国の台頭に対処する
FT November 8, 2019
The US-China supply chain shock
Gillian Tett
FT November 13, 2019
How the US should deal with China
Martin Wolf
中国は、世界の覇権国の地位からアメリカを失脚させるだろう。そして、まったく異なる世界を創る。しかし、この終着点を避けることは、まだ可能である。
重要なことは、中国の台頭に正しく対処することだ。しかし、この点で、アメリカは恐ろしいほど間違っている。
他の条件が同じであれば、国家の経済規模を決めるのは人口だ。アメリカが巨大な人口を持つ、最大の経済規模を持つ富裕国である。しかし、中国の人口は、アメリカとドイツの関係ほど、さらに巨大である。
アメリカの1人当たり経済産出額が中国をはるかに上回ることは、永久に続かないだろう。しかし、中国の人民がアメリカの経済水準を達成することは必ずしも確実ではない。習近平主席が中国のブレジネフLeonid Brezhnev書記長になる可能性もある。
ブレジネフは、1964年から1982年のその死まで、経済や政治の改革についてすべてのアイデアを否定し続けた。彼は、共産主義の正統性と共産党の規律を強調した。それはソビエト連邦にとって悲惨なことであり、その保守主義はソ連崩壊にも直接の責任があった。
習が同じ結末を迎える可能性もあるが、その活気ある市場経済と研究熱心な官僚たちが、この罠を回避することもあるだろう。
アメリカが中国の成長を止めることは、もはやできないだろう。世界最大の経済になった中国に対しても、アメリカはなお3つの優位を持つだろう。法の支配する民主主義、自由市場経済、経済的に強大な同盟諸国。しかし、トランプはこれらを破壊しつつある。
これらの優位を生かすには、アメリカは、中国の台頭を、同盟諸国と協力し、WTOの枠内で交渉するべきだろう。アメリカは中国人民の敵としてではなく、その生活を改善する正当な願いを認め、中国の政治システムを転換する要求も棄てるべきだ。それらは理由がないし、達成できるものでもない。そして、開放的で、ダイナミックな世界経済を維持し、中国の言論の自由や人権尊重を訴えるべきだ。超大国間の協力によって、経済進歩と平和、グローバル・コモンズを守ることが重要だ。
● イギリスの総選挙
FT November 9, 2019
Election 2019: fear and loathing on the campaign trail
Robert Shrimsley
The Guardian, Tue 12 Nov 2019
Farage’s Brexit move means a pact among progressives is now urgent
Polly Toynbee
FT November 14, 2019
One thing is certain: Britain’s election will not settle Brexit
Philip Stephens
「あなたたちはどこに向かうのか?」 海外で何度も聞いた質問だ。Brexitをめぐる痙攣で、議会がマヒし、国論が毒されて、友人や同盟諸国に混乱と悲観を生じた。きっちりした、安定的な民主主義が、どうしてこれほど道を踏み外したのか? 私はその答えを探して苦しんだ。
ボリス・ジョンソンはそうではないらしい。Brexitを達成する。と、首相は豪語する。有権者に求めるのはそれだけだ。彼がEUと合意した条件を支持せよ。そうすれば、この国は生まれ変わる。ブリュッセルへの狂気の忠誠とはサヨナラして、グローバル・ブリテンの時代へようこそ!
陽気な意味で言えば、それはナンセンスである。選挙結果にかかわらず、それでBrexitが終わらない。ジョンソンの合意は、その後の交渉のジャンプ台でしかない。ブリテンとEUの関係を決めるには何年もかかる。
違う見方では、首相の一連の嘘が現れているので、驚くほどのことはない。「彼を取引した誰をも裏切ってきた、脅迫的な嘘つきである。」
3年におよぶ論争と議会のマヒは、多くの有権者を、残留派も含めて、とにかく終わってくれるなら何でもいい、という気分にしている。労働党のコービンが首相にふさわしくない、と有権者が思っているから、なおさらだ。
ジョンソンは何の答も示していない。ヨーロッパの「シンガポール」? 英語圏の米米民主主義復活? 逆に、国際主義を一切無視した。外国との競争や移民をたたき出すバリケード?
2016年の国民投票は、これらの矛盾したBrexit推進派のEU外におけるブリテンを議論しなかった。議論を拒否したのだ。それは、だれでも何でも望むことを意味した。3年以上たっても、彼らはまだ議論を拒んでいる。
もしジョンソンが勝利したら、ブリテンはどこに向かうのか? それは、見るまで分からない。
FT November 14, 2019
Irresponsible election promises will hit brutal economic reality
Martin Wolf
保守党も、労働党も、無責任な約束を強調して選挙を戦っている。彼らの描く経済モデルについて、生産性、雇用、投資、対外収支を検討するべきだ。
● チリの暴動と政治家たち
FT November 8, 2019
The roots of Chile’s social discontent
Esteban
Jadresic
ラテンアメリカ諸国の中で最も発展した国であるチリで、街頭の暴力や大規模なデモが起きたことは衝撃であった。この市場型経済改革のモデル国に、何が起きたのか?
不平等がその原因だという意見は多い。また、汚職やスキャンダルが増えたことも指摘される。国際的な基準でも、不平等は大きい。政治システムがエリートの不正行為を広めている。
しかし、チリは不平等と汚職に関して、数年にわたり、改善してきた国だった。
成長の遅れが原因と考える者もいる。2014年以来、2-4%しか成長していない。しかし、地域の他の諸国に比べて、不況もなく、むしろ優れている。
国民に広がった不満の原因は、もっと根本的に、政治システムと市民たちの間の距離が広がったこと、関係ない、という感覚である。投票率は最低であり、規制が利害関係者と結びついていない。
たとえば、公立の学校教育に対して、市民たちの需要は強いが、政府や学校はそれを満たそうとしない。2006年、400以上の高校が機能していないことに、学生たちは改革を要求するデモを起こした。その後、2011年には、大学から高校へ抗議活動が広がった。学生たちの要求は国民に支持されたが、今なお改革は進まない。
都市の大規模な騒乱を経て、チリの政治エリートたちは今や、一連の緊急措置に加えて、さまざまな政策の変更を打ち出している。その性急さと国民との距離は、むしろ危険である。ポピュリスト政策が社会進歩の能力を奪ってしまうだろう。しかも、人びとの不満が鎮まる保証はない。
政治家たちはシステムの失敗を認めて、人びとと対話を始めるべきだ。それが、社会不満の根源を解消するための、最初のステップである。
NYT Nov. 8, 2019
Latin Americans Are Furious
By Jorge Ramos
ラテンアメリカに広がるカオスは、3つの視点で理解できる。不平等、抗議とソーシャル・メディア、そして、権威主義的な政治。
● ブルームバーグの立候補?
NYT Nov. 8, 2019
Run, Mike, Run!
By Bret Stephens
ブルームバーグMichael Bloombergが大統領として立候補するべき2つの理由がある。第1に、彼は素晴らしい大統領になるだろう。第2に、民主党候補として、トランプを倒すことができるだろう。
今は弾劾審査に憤慨するトランプだが、それを生き延びて、11カ月先に、彼の敵たち“Sleepy Joe,”
“Crazy Bernie,” or “Uber Left Elizabeth Warren”を倒すことは容易だろう。
億万長者を否定する世論が強い中で、ブルームバーグは指名されるのか? それは、分断されたアメリカでも、彼が勝利できるからだ。
ブルームバーグには、選挙資金、富裕層、共和党の文化戦争、統治能力、穏健派の支持、本物の成功した企業家、すべての点で、トランプ再選の優位を消す力がある。民主党が、2020年の選挙に決して負けることはできない、と確信するなら、ブルームバーグを指名するだろう。
NYT Nov. 8, 2019
Welcome, Mike Bloomberg
By David
Leonhardt
われわれは経済不満とポピュリズムの時代に生きている。77歳のウォール街を代表する億万長者は、このような時代に、中道左派の政党にとってふさわしい候補者とは思えない。
しかし、私はブルームバーグの立候補を歓迎する。立候補者たちの現状は十分ではない。弱い候補者たちの分断。浮動票を無視した選挙戦。こうした競争にブルームバーグが参加すれば、私のような懐疑的な有権者を引き付けるだろう。
独立候補ではないから、ブルームバーグは、穏健派と進歩派の分裂を促し、トランプの再選を助けるものではない。彼はそれを理解している。
ブルームバーグは、政府が人々の生活を改善できることを知っている。
ブルームバーグは、ニューヨーク市で警察に間違った手法を取り入れたが、他方で、多くの成果を上げた。喫煙や肥満を抑制し、ゾーニング規制を緩和し、都市を再開発し、学校改革にも成果を上げた。
最大の問題は、彼がアメリカ人労働者の生活水準が停滞している原因を理解しているか、である。連邦政府のパワーを使って、税制も含めて、中産階級や貧困層のために何をするのか?
NYT Nov. 12, 2019
Why I Like Mike
By Thomas L.
Friedman
(後半へ続く)