IPEの果樹園2019

今週のReview

11/11-16

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Brexit延期と総選挙 ・・・トランプ弾劾審査 ・・・ベルリンの壁崩壊から30年 ・・・ウォレンの資本主義改革 ・・・すべての国境の開放 ・・・資源の呪い ・・・スイスの折衷モデル ・・・ドイツ国民の反ECB感情 ・・・EU離脱後のイギリス ・・・民主主義の統治不能 ・・・米中間のBTN禁止ルール

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 Brexit延期と総選挙

The Guardian, Fri 1 Nov 2019

Johnson, Corbyn and Farage are all for ‘the people’ against ‘the elite’. This could end badly

Marina Hyde

1031日にも、離脱は起きなかった。ボリス・ジョンソンの約束は、ここでも果たされないままだ。その日、私もふくめて、家々には不満が膨れ上がっていた。

選挙のときだ。警報が鳴り響く。左右のポピュリズムが良い結果をもたらしたことはない。フィリピンからブラジルまで、ベネズエラやボリビアで、こんな連中が支配して、人民のために調和ある政治が行われたところはない。

右派ポピュリズムに対抗することができるのは、左派ポピュリズムだけだ、と主張するコービン支持者もいる。そうなのか? われわれの社会は多元的であり、ポピュリストたちが主張するよりもはるかに複雑だ。

「われわれはエスタブリシュメントを信用しない」とファラージは言った。「われわれがエスタブリシュメントをやっつける」とコービンは言った。「われわれは人民の党だ」とボリス・ジョンソンは主張した。労働党こそ「真の人民党だ」とコービンは主張した。

The Guardian, Fri 1 Nov 2019

It's voters, not pollsters, who will write the story of this election

Gary Younge

選挙がどのようなストーリーを生み出し、どのような結末にいたるのか、われわれは知らない。選挙運動は始まったばかりである。人びとは投票していない。当選するのはだれか、それを決めるのは世論を形成するエリートではなく、有権者たちである。

貧しい人々が投票しない1つの理由は、彼らが選挙後も貧しいままだから。誰が当選するかは関係ない、と考える。しかし、彼らをもっと貧しくする者がいるのだから、選挙は重要だ。

しかし、それを変えることがもっと有意義だ。それは、選挙ではなく、政治の問題である。

選挙は重要である。ある意味で、すべてが変わる。この国の進路を、内外で、大きく変える厳しい選択だ。残念なことに、Brexitばかりが議論される。それは明確な決定を意味しないだろう。どのような選挙結果が出ても、それが実現することはない。この国が深く分断されているからだ。投票がその出口にはならない。

Brexitは、常に、もっと広範な危機の兆候であり、その原因ではなかった。労働が貧困からの脱出であるより、陥穽になってしまった国に、われわれは暮らしている。30人のクラスには、そのすべてに、9人の貧しい子供たちがいる。子供に食べ物を配る慈善団体the Trussell Trustは、保守党が政権に就いてから、14000箱から58万箱に増えた、という。選挙は、何よりも、この星の環境を守ることと、われわれが社会としてできることとを結びつけるべきだ。

そのさまざまな方策を多くの政党が提案している。しかし、1つだけまったく触れない政党がある。それは保守党だ。彼らがこの選挙を、Brexitについて決定する選挙、と考えるのは当然だ。ほかには何もしていないから。彼らのメッセージは、「Brexitを達成する。」 その意味は、「Brexitとは、Brexitである。」

彼らが示すのは、一部の緊縮策を緩和し、その他の最悪の部分を強化する、ということだ。規制を何であれ探し出して、切り刻む。

そこで、選挙が問題になる。マーガレット・サッチャーは、1983年に勝利した。そのとき保守党は685000票、得票率で1.5%を失ったが、37議席も増えたのだ。自由党・社会民主党の支持が高まることで、保守党が狙うのは、この勝利の再現だ。

彼らは貧困、強欲、規制緩和、緊縮策、ハードBrexit、不平等の拡大の政治に多数が反対する国において、反対派が団結できないこと、戦略的に勝利する意志がないことを願っている。

幸いなことに、外にも多くの可能なストーリーがある。子供たちを育て、この星を救う。

FT November 2, 2019

Boris Johnson’s scorched-earth election policy could backfire

Camilla Cavendish

FT November 2, 2019

UK politics: Boris Johnson’s Brexit election gamble

George Parker and William Wallis

NYT Nov. 2, 2019

Will Great Britain Become Little England?

By Nicholas Kristof

FT November 4, 2019

Tony Blair: save Britain by supporting moderate MPs

Tony Blair

イギリスの政治は幼稚化している。1212日の総選挙は、Brexitに関するものだ、と言われているが、もしそうであれば、国民投票をするべきだ。われわれは左右からのポピュリズムが示す選挙戦を見ている。

政府とは、分析し、政策を示し、実行する、ハードな挑戦である。世界の変化を理解し、引き継がれた複雑なシステムを技術に合わせて進化させる方法を理解する必要がある。それは21世紀の産業革命だ。

しかし、政治家たちは簡単な答えしか示さない。われわれの最大の貿易相手であるEUから離脱する。あるいは、資本主義の悪役たちを追放する、と。

この選挙には2つの規準がある。1つはもちろんBrexitだ。もう1つは、ポピュリズムとの闘い、政治の中道を再建することだ。


 イギリス労働党

FT November 1, 2019

Labour is planning its own Green New Deal

Paul Mason

2017年に比べて、労働党の影の大蔵大臣John McDonnellが示す公約には戦略が加わっている。すなわち、気候変動だ。

201810月、気候変動に関する政府間パネルが温暖化ガス排出ゼロ目標を達成するまでのタイム・スケジュールを大幅に短縮した。同時に、アメリカ議会にAlexandria Ocasio-Cortez and Ed Markeyが提案した法案は、ヨーロッパの社会民主主義者たちを勇気づけた。グリーン・ニュー・ディールは、アメリカ左派の主要政策目標になり、また、労働党が財政・金融政策を示す枠組みを形成した。

McDonnellは、戦略的に2つの目標を定める。1.長期停滞と不平等が示す、自由市場経済モデルの失敗。2.われわれの星が燃えていること。それを守るには、少なくとも、年4兆ドルの炭素集約型エネルギー・ビジネスを「破棄資産」にする必要がある。

3つのメカニズムを提唱する。1.国家支出。脱炭素化を推進するNational Transformation FundThe People’s Power planにより、オフショア風力発電の51%を国家が保有し、利潤の20%を用いて沿岸部の衰退村落を活性化する。風力発電は67000人の雇用を創出する。

2.国家融資。National Investment Bankにより、クリーン・エネルギ、住宅建設、建物・輸送の後進など、主としてインフラ建設に、10年間で2500億ポンドを融資する。

3.国家による民間投資の保証。イングランド銀行による民間部門への融資ガイダンスを用いて、脱炭素化を促す。

The Guardian, Mon 4 Nov 2019

The Guardian view on Labour’s radical plans: fix the economy and democracy

Editorial


 トランプ弾劾審査

FT November 1, 2019

A Donald Trump impeachment would further divide an angry America

Lloyd Green

アメリカの冷たい内戦状態は、まさに戦争状態になった。木曜日、アメリカ議会下院が弾劾審査の手続きを正式に始めたからだ。これまでの弾劾予備投票と違い、今回は完全な党派投票になった。ドナルド・トランプの共和党側から支持票は出なかったのだ。

1998年、ビル・クリントンの弾劾審査手続きを始めたときは30人の民主党議員が支持した。1974年の投票は、リチャード・ニクソンを辞任に追い込んだが、177人の共和党議員を含む4104で審査開始を支持した。どちらも弾劾は政治問題であり、党派争いではなかった。

議会だけでなく、アメリカが変わったのだ。40年前は、たとえベトナム戦争中で、市民権運動の後遺症があっても、ジョン・F・ケネディー、マーティン・ルーサー・キングJrの暗殺後でも、アメリカはもっと同質的で、政治は党派対立に支配されていなかった。

2018年のカバナーBrett Kavanaugh最高裁判事指名手続きにおける混乱を思い出すべきだ。それがさらに強烈な情念となって噴出する。


 ベルリンの壁崩壊から30

PS Nov 1, 2019

Revolutions for Whom?

KRISTEN R. GHODSEE , MITCHELL A. ORENSTEIN

「以前よりも悪くなるものはいないだろう。多くの者がはるかに良くなるだろう。」 1989119日、ベルリンの壁が崩壊したとき、西ドイツのコールHelmut Kohl首相は東ドイツ市民に保証した。30年後の今、その約束が果たされたか、問うべきだろう。

プラハ、キエフ、ブカレストを旅すれば、輸入された消費財を並べる、光り輝くショッピングモールを観る。フランスの香水、イタリアの衣装、スイスの腕時計、もちろん、iPhoneも。次の外国旅行の計画、広場のカフェ、バーには、外国人や地域のエリートたち。共産主義時代の欠乏と孤立に比べて、中東欧の今は新しい機会に満ちている。

しかし、同じ町で、年金生活者や貧しい人々は最低限の必要な物も手に入らず、苦しんでいる。暖房、薬、食べ物の、何を優先するかで悩む老人たち。農村では、自給する農家が増えている。機会を求める若者たちは群れをなして外国に去った。経済的困窮と政治的ニヒリズムが社会の信頼を破壊し、安全で安定した権威主義的過去へのノスタルジーが増している。ポピュリスト指導者が人々の不満を吸収し、民主的制度を侵食して、経済を自分の友人や家族、支持者たちで支配する。

アメリカ農務省、世界銀行、EBRDのデータにより、1990年代の経済自由化がもたらした結果を、われわれは計測した。ヨーロッパとユーラシアの移行期(1989年から)の不況と、アメリカの大不況(1929年から)を比較した。

移行期の不況の長さと深さを3つに分類した。最も成功した諸国では、不況の深さがほぼ同じ、1人当たりGDP30%だった。中位の諸国は、深さが40%、長さは17年におよんだ(大不況は10年)。最悪の諸国は、30年経っても回復していない。1人当たりGDPは社会主義時代よりも低いままだ。

モルドバがその典型である。ソ連崩壊後、モルドバの経済状態は悪化し、1999年に最悪期を脱したが、そのとき1人当たりGDP1989年よりも66%低かった。2007年でも42%低く、2010年以降は成長したが、2016年でも1989年の水準より12%低い。グルジア(ジョージア)、コソボ、セルビア、タジキスタン、ウクライナも、1989年の水準より低いままだ。

共産主義後の経済崩壊は、何百万もの過剰な死、大規模な移民流出、共産主義時代にはなかったような社会的病理を増大させた。貧困、組織的犯罪、不平等の増大。国民全体で集計したGDPは、所得の両極化を隠している。

西でも東でも、リベラルなエリートたちは、冷戦の平和的な終結とこの30年間の経済的成功を祝福する。しかし、資本主義の導入で誰もが利益を受けたのではないことを覚えておくべきだ。社会の信頼は失われ、公的機関は信用されず、不平等への怒りが満ちている。こうした諸国でポピュリスト政党や指導者が成功している。

コールの約束とは逆のことが実現した。多くの者が以前よりも生活に苦しみ、大きな利益を受けたのは少数者だった。繁栄が多くの者に広まらない限り、1989年の革命は完成しない。

FT November 6, 2019

What America lost when the Berlin Wall fell

Janan Ganesh

冷戦終結によって、アメリカの政治家たちは敵を失い、アメリカ政治の迷走が深まった。

SPIEGEL ONLINE 11/07/2019

Angela Merkel on the Fall of the Wall

'I Wanted to See the Rockies and Listen to Springsteen'

Interview Conducted By Melanie Amann and Florian Gathmann


 経済学とナラティブ

PS Nov 1, 2019

Tales of the Economy

BARRY EICHENGREEN

Robert J. Shillerは、金融論や行動経済学で有名だ。2013年にノーベル経済学賞を受賞した。その新著は、個人の選択、マクロ経済的変動、ブームとバストの循環、金融危機における経済的物語の役割を強調して示している。

彼の主張の核心は、個人の意思決定は、教科書が示す(マクロにも金融にも影響しない)効用最大化モデルではなく、「経済的物語」を考慮しなければ、理解できない、ということだ。

たとえば、ユーロ危機に関する重要な物語は、北欧では、放蕩と放漫財政の長い歴史を持つユーロ圏南部が、温暖な地中海の気候とともに語られる。南欧では、北欧諸国の分別と倹約が、第1次・第2次世界大戦後のハイパーインフレーションの記憶とともに語られる。南欧にとって、危機はローカルな管理を超えた状況がもたらした。それを北欧諸国による支援の利己的な引き上げが悪化させた。国が違えば、有権者の全く異なる理解があるから、ヨーロッパ理事会はそれを反映し、協力は阻まれてしまう。

南北戦争、ラッファー曲線、911、マーガレット・サッチャー、ビットコイン、銀行パニック、為替レート、マネタリズム、キューバ危機、豚コレラ、2008年の金融危機。

シラーの説明は、因果律に関して疑問が残る。外交政策において議論されてきたように、これは歴史からの類推の有効性を考えるものだ。それは理論化や行動の決定に需要な役割を果たしている。金融市場でもそうだ。

FT November 4, 2019

The politics of fiscal stimulus are problematic

Megan Greene


 ウォレンの資本主義改革

NYT Nov. 1, 2019

Did Warren Pass the Medicare Test? I Think So

By Paul Krugman

先週、ウォレンがサンダースの提案Medicare-for-all planに承認を求められることを私は心配していた。ウォレンも具体的なプランを示す必要があった。

それが示された。多くの反対論が出るだろうが、私は合格点をつけたい。彼女は本物の専門家を集めてプランを作った。オバマ政権下でMedicareを運営したDonald Berwickや、労働省の元チーフ・エコノミストであるBetsey Stevensonだ。これは左寄りのブードゥー経済学ではない。

The Guardian, Sun 3 Nov 2019

Elizabeth Warren’s project is to remake capitalism. What can British politicians learn from her?

Will Hutton

この40年間、西側民主主義国は、純粋な資本主義しか機能しない、というドクトリンに支配されてきた。しかし2019年には、論叢が起きている。資本主義は全地球を覆っているが、修正すべき問題が多くある。チリや香港の暴動、イギリスのBrexit投票やフランスの「黄色いベスト」の背後には、不満の高まりがある。

ノーベル経済学賞を得たRobert Lucasがかつて述べたような、不況の予防という経済学の中心問題は解決した、と主張するエコノミストは1人もいない。市場の規制を否定し、奇妙な財政緊縮策を擁護する者もいない。

日々の経験から、われわれはその証拠を得ているからだ。実質賃金は上がらない。顕著な不平等。公共サービスの不足、企業の悪行、プライヴェート・エクイティーの暴挙、醜い独占、フード・バンクや野宿する者の増加。

アメリカの181人の企業経営者CEOたちが、アメリカ式ステークホルダー資本主義を支持した。「企業の目的は、単に、株主の短期的利益を最大化することではない。すべてのステークホルダーのために価値を生み出すこと、広く社会を改善することである。」

イギリスの労働党や自由民主党は、アメリカにおけるウォレンやサンダースからもっと学ぶべきだ。イギリス有権者は労働党の社会主義を望んでいない。しかし、資本主義を改革することを求めている。それは、ウォレンの目指す「ステークホルダー資本主義」だ。

NYT Nov. 4, 2019

Attack of the Wall Street Snowflakes

By Paul Krugman

NYT Nov. 4, 2019

The Warren Way Is the Wrong Way

By Steven Rattner

ウォレンの改革は、アメリカ経済に多くの破壊的な効果を及ぼすだろう。やめるべきだ。

The Guardian, Tue 5 Nov 2019

A climate denier-in-chief sits in the White House today. But not for long

Elizabeth Warren

NYT Nov. 5, 2019

Elizabeth Warren Is Asking the Most Important Question on Health Care

By Jacob S. Hacker

FT November 6, 2019

Elizabeth Warren: a radical upends the Democratic race

Demetri Sevastopulo in Cedar Falls, Iowa

NYT Nov. 6, 2019

Instead of a Generational Culture War, Let’s Fight the Rich

By Farhad Manjoo

社会を「世代」で切って話すことが、しばしばある。異なる階級、民族、地理を超えて、何千万もの人々をさまざまなテーマで同様の意見を持つかのように分析する。

先月、民主党の下院議員Alexandria Ocasio-Cortezが、彼女は30歳であるが、大統領候補者に立候補している、78歳のBernie Sandersを支持すると表明した。この夏には、Ocasio-Cortez10代の環境保護運動家Greta Thunbergと、旧世代は気候変動問題を放置してきた、と糾弾した。彼女たちは、年齢を単なる心の在り方として議論した。「あなたが高齢であっても、物事を、いつもそうだったから、という理由で拒むなら、あなたも若者の運動の仲間である。」

16歳、30歳、78歳の連合が、より良い未来を築くだろう。今、世界を動かしている富裕層を、その座から追放する。

NYT Nov. 7, 2019

The Big Problem With Wealth Taxes

By Daniel Hemel and Rebecca Kysar

ウォレンやサンダースの主張するような、富への課税は、アメリカの憲法によって規定されるだろう。


 すべての国境の開放

FP NOVEMBER 1, 2019

Open Borders Are a Trillion-Dollar Idea

BY BRYAN CAPLAN

世界の諸国民は、特に最も豊かな諸国民は、その行動によって素晴らしい結果をもたらすチャンスを逸している。それは、「国境を開放する」ことである。

国境の開放は、不公平なラベルで批判される。こう熟練労働者へのビザ発給、家族の呼び寄せ、難民の受け入れを増やす、というラベルだ。移民規制を撤廃する、というわけではない。しかし、それでも過剰な要求ではないだろう。国境の開放は、単に公正であるだけでなく、グローバルな繁栄をもたらす近道でもある。

低熟練のハイチ人がポルトー・プランスからマイアミへ移住した、と考えてみよう。ハイチでの彼の年収は約1000ドルだが、マイアミでは25000ドルを稼ぐことができる。なぜか? 単純化すれば、ハイチよりもフロリダにおいて、人は生産的であるからだ。政府の政策、経営、技術、そのほかにも多くが優れている。ハイチ人が貧困に苦しむ大きな理由は、彼らがハイチから来たことではなく、ハイチにいることだから。

もし壁が倒れたら、誰もが利益を受けるだろう。なぜなら移民たちは自分が創りだす新しいとみを売るからだ。彼らの新しい国の住民は、彼らにとって最高の顧客である。彼らは移住することで生産性を大きく改善するのであり、それは新しい顧客たちに与えられる。

反対論は、もっとも単純に、一夜で数百万人が移住しても受け入れられない、という。実際には、ゆっくり始まり、雪だるま式に増える。2014-18年、ヨーロッパへの人口流入もEU人口の1%以下であり、管理不可能な規模ではなかった。冷戦期の西ドイツは、もっと多くの人口を受け入れた。

文化的、政治的な反対論もある。現代の移民は英語を習得しない、という批判がある。しかし、職のアメリカ移民もそうだった。彼らは生涯、異なったアクセントに苦しんだ。しかし、その子供たちは英語を完全に習得していた。法律や秩序に従う文化がない国から来た、という批判もある。しかし、移民たちの犯罪は少なく、政治的な意見としても穏健な傾向を示す。

もしアメリカ人が残りの人生をハイチかシリアで暮らすとき、いくら支払うことで見合うだろうか? その才能を無駄にする土地から、可能性を実現できる土地へ移住する。移民たちは自分が豊かになるだけでなく、世界を豊かにする。

FP NOVEMBER 7, 2019

We Weren’t Ready for a World Without Walls

BY MICHAEL HIRSH

ベルリンの壁が崩壊した後、世界はすべての壁が倒され、ドアが開くように思われた、国際的なコミュニティーに向かう、と。

しかし、トランプがその雰囲気をつかんだように、世界はコミュニティーのメンバーに対する責任や相互の尊敬・信頼を失う方向に変わってきた。グローバル化した世界とは、むしろコミュニティーを破壊した世界だった。だから、人びとが多くの壁を築きたいと主張しているのは、驚くことではないだろう。

なぜか? それは同時に、インターネットが普及する時代でもあった。現実のコミュニティーではしないような、だれかを攻撃し、侮辱するような人々が、普通になった。トランプがやっていることだ。

民主的社会を支えていた集団的規範は、少しずつ、蒸発していった。Facebookがそうだ。それは世界の壁を超えて、グローバル・コミュニティーを建設するインフラであると自称していた。しかし、そこには規範がない。そのパワーは匿名のものだ。人びとは個人主義的にバラバラな存在となり、自分の関心だけに満足する。コミュニティーは余計だ。

インターネットは、影の分を併存したまま拡大した。トロール、ハッカー、ボットが反映する世界だ。そして、サイバー世界の倫理的な行動の問題は、金融の世界が示す問題とそっくりだ。世界金融危機にいたったグローバル金融ビジネスは、証券化が進み、金融がグローバル化する中で、融資はパッケージとなって世界中で販売された。多くの銀行は、もはや融資をどのようにするべきか、という基準を無視していた。なぜなら、ウォール街の巨大な投資銀行が、世界中で売却するだけだから。すべての壁が失われて、責任も問われなくなった。

問題を解決する試みは、まだ、模索し始めたばかりだ。


 資源の呪い

FP NOVEMBER 1, 2019

The Time Is Right for African Nations to Break the Resource Curse

BY ZUHUMNAN DAPEL

アフリカ経済は石油価格によって浮揚してきた。特に、インフラ整備である。しかし、その弊害も顕著である。債務の累積、汚職、不平等と貧困。これが「資源の呪い」である。生活水準が石油輸出の収入によって大きく変動してしまう。この2つを切り離すべきだ。

「石油の呪い」を抜け出した国は、ノルウェイだ。2015年から石油価格が下落しても、ノルウェイの生活水準は影響を受けなかった。その理由は、精油が石油収入を信託基金the Government Pension Fund Globalにして運用しているからだ。もっぱら海外に投資し、その保有額は1兆ドルに達する。国民1人当たり20万ドルだ。

ノルウェイの民主的制度は確立された状態で、石油資源が発見された。それは汚職を最小限に抑えた。しかし、アフリカでも戦争や内戦状態が沈静化し、政治が安定してきた。

指導者たちは「資源の呪い」を脱け出すために、1.石油収入に頼った財政支出の増大を抑える。価格の急落に備えるべきだ。2.石油収入から国民への直接の配当を行う。そのために「ユニバーサル・ベーシック・インカム」が提唱されている。市民が政府を監視する動機を与える。3.中国や商業銀行からの過剰な融資を抑える。

FT November 4, 2019

Brazil Apart, by Perry Anderson

Review by Geoff Dyer


 スイスの折衷モデル

NYT Nov. 2, 2019

The Happy, Healthy Capitalists of Switzerland

By Ruchir Sharma

Bernie Sandersは、その経済モデルを、ベネズエラではなく北欧諸国に求める。豊かで、民主的で、しかも富がより平等に分配され、国民医療保険や、無料の大学教育がある。

しかし、北欧3か国(Sweden, Denmark and Norway)より、もっと豊かで公平な国がある。それはスイスだ。福祉は充実しているが、北欧に比べて税率は低く、政府b門は小さく、経済は開放的で、より安定している。

モデルに上がらないのは、タックスヘイブンという悪評があるからだろう。しかし、スイスは2015年に銀行の情報を外国の税務当局と共有することを決めた。

スイス・フランが増価して輸出競争力を損なうことも、輸出手続きの簡素さや技術に対する顧客からの信頼により、優れた特殊な分野に産業政策を絞って、製造業を維持している。スイスの地方都市は、それぞれが伝統的な製品を持っており、経済や所得分配の分散と平等化を維持している。

確かに、マイナス金利は過剰な債務を民間部門に創りだしているが、人口減少に対しては移民を柔軟に受け入れ続けてきた。それによって人口は2015-20年に3%増加する。スイスの労働市場は能力主義の公立学校によって刺激されており、世界でも優秀な大学教育を年1000ドルの授業料で受けることができる。

スイスの成功が教えるのは、政治家の言うような二者択一はなく、プラグマティックな国においてビジネスのための好環境と平等な社会は両立する、ということだ。

FT November 3, 2019

Big Tech has moved from offering utopia to selling dystopia

Rana Foroohar

PS Nov 4, 2019

Why America’s CEOs Are Talking About Stakeholder Capitalism

MARK ROE

VOX 04 November 2019

Automation and its enemies

Carl Benedikt Frey, Ebrahim Rahbari

FT November 5, 2019

Tech companies become the state, phase one

Thomas Hale

PS Nov 6, 2019

The New Anti-Capitalism

HAROLD JAMES

反資本主義の意見が高まっている。これは、以前のラッダイト運動と同じではない。複雑なゼロサムの意味を帯びるのは、金融危機だけでなく、ITAIの普及による脅威を感じていること、また、それが中国によって急速に開発されるかもしれないこと、に関係している。


(後半へ続く)