IPEの果樹園2019
今週のReview
11/4-9
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Brexitと労働党 ・・・ジョンソンの合意案と総選挙 ・・・ポピュリズムの政治経済学 ・・・ドイツとマイナス金利 ・・・イギリスとロシアを排除してはならない ・・・シリア内戦 ・・・ISISの指導者殺害
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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● Brexitと労働党
The Guardian, Wed 30 Oct 2019
People are passionate about politics again
– and they want radical solutions
Owen
Jones
2年半の間、イギリス政治はウェストミンスターとブリュッセルの廊下や会議室で展開されたパントマイムであった。
2000年になった最初の10年間、政治的無関心が政治参加に置き換わった、としばしば言われた。政党の党員数も投票率も減少から増加に転じた。大衆政治に時代である。スコットランド独立運動、ファラージ主義やBrexit推進派たち、若者主導の環境危機運動、労働党のコービン主義者たち。
それゆえ選挙結果は予測できない、浮動的な性格を強めている。政治化した民衆が単一の根本問題に関して団結する。現状維持は好まれない。
もしジョンソンが勝利すれば、イギリスとEUとのつながりを叩き壊し、経済にウェールズ規模の穴をあけるだろう。Brexitを利用して、イギリス社会をハイパー・サッチャー主義モードに改造するのだ。これに対して労働党の使命は、一世代におよぶ市場原理主義の実験を終わらせて、この実験の主要な受益者たちから富とパワーを再分配することだ。保守党も労働党も、旧秩序を破棄することになる。
この10年間の運動で、政治化した民衆は社会秩序の崩壊から脱出するよう求めている。労働党が民衆の蜂起に応えることだ。それこそジョンソンが最も恐れていることである。
● ジョンソンの合意案と総選挙
FT November 1, 2019
Why I want another hung parliament
Martin
Wolf
UKの投資が減ったのは不確実さが大きいからだ。いつ、どのように、UKはEUを離脱するのか? ジョンソンの合意案は、不確実さを悪化させたし、それがいつ終わるかもわからない。
2020年に貿易に関して合意する、というのは幻想である。カナダとEUが合意するまでにも交渉に5年を要した。UKはもっと困難だ。
ジョンソンが合意案を総選挙に賭けたのは喜ばしい。その結果は、離脱派と残留派の分裂状態によるだろう。いずれの政党も過半数を取らないことは、むしろ良いことだ。私は、保守党も労働党も、多数を得るとは信じない。
UKは新しい合意のための交渉し、それを国民に問うだろう。2大政党が、ともに愚かな考えを捨てて、冷静さを取り戻し、極端な立場から離れるだろう。
私は、ジョンソンのデマゴーグも、コービンのユートピア的な集産主義も、信じない。有権者もそうであってほしい。中道派が議会の主流になるだろう。Brexitへの過程が見直される。
しかし、残念だが、そうならないようだ。
● ポピュリズムの政治経済学
FP OCTOBER 25, 2019
The Cure for Populism Is Equal Opportunity
BY ERIC PROTZER, PAUL SUMMERVILLE
カナダ人民党(PPC)は、先進諸国の多くに広がるポピュリスト政党の1つであるが、最近の連邦選挙でひどい結果に終わった。党首で創立者のMaxime Bernierは議席を失うかもしれない。得票率は2%以下で、全国政党の第6位と消滅寸前だ。
PPCの不振は、アメリカ、UK、フランスのような他の西側民主主義諸国で、ポピュリストが成功していることと対照的だ。そこには明確に違いがある。すなわち、その経済体制の公平さだ。社会的移動性が低い、経済的成功と家族の出自が強く関係している国は、ポピュリストの政治的な混乱を生じやすい。
トランプは、(ワシントンの)「どぶさらい」を主張し、「アメリカを再び偉大にする」と叫ぶとき、アメリカに築盛された不公平の感覚を捉えていた。ファラージやボリス・ジョンソン首相が、人びとに「主権を取り戻せ」と叫んで、UKにおいて同じことをした。そのようなメッセージが広がったのは、アメリカとUKが発展した世界において最低レベルの社会的移動性しか実現できていないからだ。
カナダは、機会をもたらす公共財の供給、例えば、教育、医療、移動可能な資格で、競争を受け入れる国であり、報酬を高める機会があった。カナダは、フランス的な国家介入と、アングロサクソン型の自由市場とから、最善の要素を結合して成功している。
VOX 29 October 2019
Many forms of populism
Dani Rodrik
ポピュリズムは、過激な保守主義と結びついている。それは金融危機など、経済ショックと、より長期的な文化的変化との、両方から説明される。後者は、例えば、都市化と関係している。
政治的な意味で、民主主義から独裁に向かうポピュリズムの危険性が重視される。しかし、経済的な意味では、ポピュリズムに一定の積極的な意味が認められる。経済的ポピュリストは、権力に対しての政治的な制約ではなく、政策への制約を拒否する。それが正しいか、間違っているかは、その状況次第である。
エコノミストたちがポピュリズムを嫌うのは、それが無責任で、持続不可能な政策を意味するからである。最後は、彼らが救済すると主張する庶民を破滅に導く。ラテンアメリカ諸国のマクロ経済的なポピュリスト政策はその代表だ。
しかし、経済政策の制約は常に望ましいものとは言えない。ルールや政策委員会に権限をゆだねると、狭隘な集団の利益に偏り、一時的な優位を長期化することにつながる。そのような場合は、効率性によってではなく、もっぱら再分配のために、その制約を緩和することが社会的に望ましい。
例えば、金融政策が独立した中央銀行によって決定されることは、1980年代、90年代のインフレ鎮静化に有益であった。しかし、低インフレの状況では、中央銀行が排他的に物価の安定性を重視することがデフレ的な偏向を経済政策に与える。
また、グローバルな貿易ルールについて、国際貿易協定の議題をますます特殊な利益集団が支配するようになっている。すなわち、多国籍企業、金融機関、製薬やハイテクの大企業だ。その結果、グローバル化の制約は、資本にとって有利な、労働者たちにとって不利なものになっている。ISDS(investor-state
dispute settlement)も、外国企業とその本国政府に有利な原則を支持し、実際には、再分配する手段となっている。外国投資家の圧力により、政府は公共の利益のためにでも、利潤にマイナスとなるような政策は採用できない。
ヨーロッパで、経済統合が強調されるときも、国境を越える取引コストをなくすために、各国の権限を犠牲にして、遠くの機関でルールが決定される。EU規模の規制、財政ルール、共通の金融政策は、ますます、ブリュッセルやフランクフルトで決定される。システムは、高度なスキルを持つ専門家や国際展開する企業にとって有利なものとなり、他の多くの人びとは排除されたと感じている。地域の民主主義の赤字と、最近のポピュリスト的な反発は、こうした、政治を排除するテクノクラートの政策決定から生じている。
多くの場合、経済政策の制約を緩和し、政策権原を選挙によって生まれた政府に返還することが望ましい。正統的な議論が政治的な展開やポピュリズムの興隆によって転覆されるときは、特にそうだ。例外的な時代には、経済政策の実験の自由が必要だ。
フランクリン・D・ローズベルト(FDR)とそのニューディールがその歴史的な例である。1933年、彼は金本位制を離脱した。それが金融政策に対する主要な(外的な)制約であった。これにより、アメリカはドルを減価させ、金利を下げることができた。生産は急速に回復した。FDRの経済イニシアティブは、その多くがポピュリスト的であった。彼は、反対する者たちを「経済的王党派」と呼んで攻撃した。それは、庶民を犠牲にして経済を支配する大企業、金融業者、産業家たちだった。
FDRの挑戦は、大不況が広めたポピュリスト的情念を緩和し、修正した。大規模な富の再分配を唱えるロングHuey Longのようなデマゴーグも生んだ。しかし、FDRは正しかった。人びとの生活を改善するだけでなく、民主主義を守るためにも、経済改革が必要だった。
一層危険な政治的ポピュリズムを阻止する唯一の道は、経済ポピュリズムしかない、という時代がある。
● ドイツとマイナス金利
FT October 30, 2019
How the euro helped Germany avoid becoming Japan
Martin Wolf
事態は加算されていく。大きな経済圏における責任を無視できない。ユーロ圏の悲劇とは、特に、その中でのドイツの役割だが、所得と支出がユーロ圏内で、またグローバルなレベルで、どのように加算されるか、思考が及ばないことにある。
このことが、ECBの政策に対するドイツ人の敵意を、部分的に説明する。最近のSabine Lautenschlägerで、ドイツ人の理事がECB理事会を辞任したのは3人目だ。この敵意は、UKにおけるヨーロッパ懐疑主義と似た長期的な結果を及ぼすだろう。それは破滅につながる。EUはUKが抜けても生き残るが、その中核的なドイツが抜けた場合、消滅するだろう。
ユーロが30年前にできたとき、私はユーロがEUを政治的に分裂させると恐れた。ドイツ人は理解しなければならない。ユーロはすでに彼らの利益になる形で機能している。ドイツ経済は膨大な貯蓄を行っているにもかかわらず、ユーロのおかげで安定している。ドイツ人はそのような過剰貯蓄に対して高い報酬を得ることはできない。なぜなら市場がそれを必要としないからだ。グローバルな「流動性の罠」である。貯蓄は、希少ではなく、過剰である。
ユーロがもたらすドイツにとっての利益を知りたければ、非常によく似た経済と比較することだ。それは日本である。両国は、第2次世界大戦の敗戦後、アメリカの同盟国として再生した。ダイナミックな工業製品の輸出国で、世界第3と第4の経済規模がある。高齢化が進み、出生率の世界ランキングは、ドイツが204位、日本は209位だ。
急速に高齢化し、製造業の輸出部門を持つ大国として、両国の民間部門は投資を超える過剰貯蓄を持つ。ただし、ドイツは民間部門の家計が、日本は民間部門の企業が、過剰貯蓄の多くを占める。超低金利でも、国内の民間投資はそれを吸収できない。算数の問題だが、その結果は財政赤字と資本流出になる。
ここで違いが生じる。日本では、資本流出(それは経常収支黒字でもある)が過剰貯蓄の3分の1であり、残りは財政赤字になる。ドイツでは、資本流出が全てを吸収する。なぜなら、政府は赤字を出さないからだ。
それは、ドイツ人が財政規律を尊重する美徳を示し、日本人が悪徳にふけるからではない。日本人にはGDPの8%も経常黒字を出し続けることはできないからだ。そんなことをすれば実質為替レートが不安定化し(激しい円高を招く)、また貿易相手国の怒りを買うだろう。
しかし、ドイツ人は安定した、競争的な為替レートを持っている。輸出のほぼ40%がユーロ圏内の他国に向かう。ユーロ成立後の初期に、ドイツの競争的な優位が確立されたままだ。その為替レートは加盟諸国によって平均される(ユーロ高は起きない)。ユーロのおかげで、ドイツの望む組み合わせが可能になる。民間貯蓄、財政、貿易収支、すべてが黒字になることだ。
もしユーロ圏がなければ、ドイツ・マルクは大幅に増価するだろう。低インフレの世界で、ドイツのインフレ率はマイナスになり、輸出部門の利潤と貿易黒字を損ない、多くの外国資産を持つ金融機関に損害を与える。名目金利がプラスであることも、財政黒字も、維持できないだろう。要するに、ユーロ圏がドイツを日本化から守っているのだ。
ユーロ圏の中でも、外でも、金利は低い。ドイツ人の貯蓄に高い収益を求めるなら、もっとリスクの高い投資をすることになる。しかし、国家としてドイツは、貯蓄と海外投資のバランスを変えることができる。世界経済もドイツ経済も悪化の兆候を示すとき、ドイツが民間と政府の支出、特に投資を増やすのだ。その機会は豊富に存在する。
長期金利が非常に低水準であることは、呪いではなく、祝福である。
● イギリスとロシアを排除してはならない
FT
October 28, 2019
Britain
and Russia are Europe’s odd couple
Gideon
Rachman
イギリスとロシアはヨーロッパ大陸の縁にある。ある意味ではその結果、両国は二重のアイデンティティーを持っている。自分たちはヨーロッパであるとともに、何かそれ以上のものである、と。ロシアの領土の80%はアジアにある。大英帝国はヨーロッパの外に築かれた。北米、オーストララシア、南アジアの「英語圏」と強い文化的なつながりを持つ。
それゆえ、UKとロシアがEUの外にある2つの強国になるのは当然だ。両国はEUが集合的な巨大国家になることを心配する。周辺にある諸民族がそうであるように、ヨーロッパ大陸に単一の権力が登場することを伝統的に警戒してきた。
ブリュッセル(EU本部)にとって、究極的に、2つの憤慨する、ヨーロッパから疎外された隣国、イギリスとロシアがEUと敵対する事態は危険である。両国は、ヨーロッパの規準で見て大国であり、破滅をもたらす能力がある。
もちろん、イギリスとロシアの文化や政治は全く異なる。しかし、地政学は価値によってのみ動くものではない。感情や戦略的利益によっても動く。ソビエト崩壊後のロシアと、Brexit後のイギリスは、この点で共通している。
1990年代の経済混乱と戦略的な後退で、多くのロシア人が、自分たちの国は西側の利用された、と確信するようになった。特に、アメリカとNATOの拡大がロシアを憤慨させた。ウクライナをめぐるEUの姿勢をクレムリンは脅威とみなした。
もしBrexitが非常に深刻な悪化に向かえば、ソ連崩壊に似たような状態になるだろう。深刻な経済ショックをともなう、UK国家の分裂である。イギリスのナショナリストたちは、間違いなく、それをEUの陰謀によるものと考えるだろう。すでに、アイルランド国境問題、自由貿易協定、スコットランド独立で、ブリュッセルが人為的な問題を引き起こした、という批判がある。
事態が悪化する中で、UK(あるいは、イングランドだけ)は交渉のカードがなくなる。ヨーロッパとの安全保障や外交の協力関係を破壊し、それはEUとの敵対関係を強める。
こうした脅威をEU諸政府は深刻に考えていない。今は、それほどイギリスが混乱しているからだ。同じような軽蔑した姿勢が、1990年代のロシアに対してもあった。ロシアはバラバラに解体して、経済も崩壊していった。しかし、彼らの恥辱の感覚は膨張し、ロシアのパワーを再建する決意につながった。EUは今になって警戒している。
その教訓とは、数世紀にわたりヨーロッパの主要諸国であった国が、まったく無関係になることは決してない、ということだ。その利害は調和させる必要がある。イギリスやロシアを排除したヨーロッパの建設は、安定せず、安全でもない。
● シリア内戦
FT October 30, 2019
A European security force in Syria is a
courageous idea
Constanze Stelzenmüller
先週、ドイツの国防相Annegret Kramp-Karrenbauerは、この時代の深刻な人道的危機を封じ込めるために、通常には行わないような、勇気ある提案を示した。
アフガニスタンは「諸帝国の墓場」と言われてきた。しかし、西側諸国の墓場は、シリアである。8年におよぶ内戦は中東を不安定化した。サウジアラビア、カタール、イラン、そしてイランが支援するヒズボラが介入した。ロシアが地域における影響力を拡大した。
西側の諸政府が行動しなかったことが破滅を加速したのだ。Kramp-Karrenbauerの提案は、防衛負担の目標を達成するためでもあるが、その要点は、シリアにおけるヨーロッパの消極性を批判するものだ。それは道義的な無責任さだけでなく、ヨーロッパの安全保障を損なう。
アメリカ人が言うように、もしテーブルに席がないのであれば、あなたはメニューに載っている。つまり、喰われる側だ。
● ISISの指導者殺害
NYT Oct.
27, 2019
Al-Baghdadi
Is Dead. The Story Doesn’t End Here.
By
Thomas L. Friedman
ISISの指導者Abu Bakr al-Baghdadiが死んだことは、確かに、よかった。ISISにレイプされた女性たち、斬首されたジャーナリストたち、暴行を受けた何万人ものシリアとイラクの人びとにとって、それは正義と言えるだろう。
しかし、話はこれで終わらない。多くの予想外の意味を持っている。
記者会見でトランプは、繰り返し、アメリカの諜報機関の人びとを称賛した。しかし、彼は知らないのか? 同じ人々が前の大統領選挙でロシアが介入していると教えたはずだ。ヒラリーではなく、あなたに投票するように、ロシアが介入した。
同じ諜報機関が、ホワイトハウスの権力乱用をチェックして、あなたがウクライナ大統領にジョー・バイデンの捜査を頼んだことを問題視し、弾劾審査が始まった。
ISISのal-Baghdadiを追いつめた諜報機関が、憲法に従って、ホワイトハウスでも、ロシアでも、ISISでも、民主主義に対する内外の脅威を阻止しようとしている。
これで中東が平和になると思うなら、それはあなたの無知を示すだけだ。オバマ政権がOsama
bin Ladenを殺害したときと同じである。
中東の混乱は、宗教のイデオロギーよりも、ガバナンスの崩壊によって起きている。汚職と不正義があふれる社会こそ、過激な行動を広めるのだ。
トランプはシリアから米軍を引き上げたが、アメリカの石油企業が利益を出せる油田地帯には軍を残すことにした。彼は、イラク戦争に反対したことを自慢し、われわれはその支払いをイラクの油田地帯の占領によって求めるべきだ、と考える。
それは将来の困難をもたらす処方箋だ。アメリカはむしろ、中東各地における、穏健な、民主的社会を守るべきだろう。
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The Economist October 19th 2019
Who can trust Trump's America? The consequences of betraying the Kurds
Turkey and Syria: No way to say goodbye
Kurdish homelands: No fixed abode
India v China: Forced smiles
Bello: An equatorial earthquake
Free exchange: Rich economics
(コメント) トランプ大統領の命じた、シリア北部からの米軍撤退は、北朝鮮やイランとの宥和的・敵対的な外交について、私たちの心に根本的な疑念を生じます。
クルド人が国家を持てなかったことが、これほど深刻な、社会を維持する条件の欠落であることを想うと、国際秩序の基本が国家からなっていることに同意するしかありません。
しかし、インドと中国の外交的な「笑顔」、エクアドルやエチオピアの薄氷の国家状態は、単に国家をスタート地点と見なすことも間違いだと気づかせます。
戦争や貧困を解決できないのは、国家がないからではなく、正しい国家との関わり方を私たちが学び足りないからでしょう。
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IPEの想像力 11/4/19
エクアドルとエチオピアについての記事に関心を持ちました。
「それはよくある話である。南米の商品ブームは終わり、中道派の大統領が、前任者のポピュリスト政策が残した経済ダメージを修復することを求められる。政策ミス、政治的失敗、汚職などによるダメージだ。しかし、IMFは融資条件によって一層の痛みをともなう政策を押し付けた、と非難されている。・・・それはずっとアルゼンチンだったが、今は、エクアドルだ。」
石油価格の上昇と中国からの融資で、Correa前大統領は10年間のブームを実現した。莫大な投資で、道路、病院、学校を建設したのだ。政府部門の規模は倍増した。しかし、2014年、石油価格が下落し、経済も不況になった。
新大統領のMorenoは、旧政権の政策を放棄した。国民がハイパーインフレーションの中で通貨を捨てた後、通貨価値をドルに固定した。その結果、政府は財政赤字を通貨の印刷で賄えず、通貨価値の切り下げもできない。インフレは急速に鎮静化したが、企業の競争力は失われたままだ。しかもエクアドル政府の金融市場における評価は低く、政府は資金を調達できない。
Morenoには、IMF融資に頼るしか、経済回復のための政府支出を増やす手段がなかった。100億ドルの融資を受けるには、財政赤字を3年間で5%減らすことが条件だった。支出を削減するのが容易な項目もあったが、Morenoは、GDPの1.5%を目標に付加価値税(VAT)を引き上げるか、燃料補助金を削減する必要があった。
「政府は後者を選んだ。そうする理由があったのだ。化石燃料への補助金は、年間14億ドルも支出したが、環境を破壊し、社会的にも富裕層に有利であった。政府が指摘するように、補助金は貧困層ではなく、ペルーに石油を密貿易する者たちや、(石油を使用する)コロンビアの麻薬生産者たちがその利益を得ていた。」
しかし、燃料価格が急激に上昇したことで、特に、道路輸送に依存する地方の住民たちが大きな損害を受けた。貧困層への緩和策は不十分だった。先住民の連合体、バス会社、学生たち、そして前大統領Correaの支持派が、反政府で団結した。特に、最後の勢力は暴力をエスカレートさせた。破壊行為は2週間に及んだ。
今や、アルゼンチンでもエクアドルでも、旧左派のポピュリストが勢力を回復したようだ。かつてCorreaは、自分たちはIMFの教えを守らなかったから好景気になったのだ、と自慢した。
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エチオピアの首相、Abiy Ahmedは、ノーベル平和賞を受賞しました。彼について、記事の評価は非常に厳しいものです。Abiyは以前の抑圧体制から転換し、民主主義、和解、改革を支持した。多くの犠牲者と難民を生んだ、隣国エリトリアとの領土紛争を終わらせた。また、スーダンで起きた民主化勢力と軍隊との対立にも、両者の仲介を行った。
にもかかわらず、記事はそれらがまだ成功したとは言えない、と考えます。Abiyの、大胆な行動と魅力的な提案で、相手を抱き込む手法は、正式の手続きを無視しており、制度の積み重ねを否定する。エリトリアとの紛争も、国内における政治犯釈放と公正な選挙の実施も、実行できる保証はない。国内秩序の維持に失敗し、エスニック・クレンジングが起きている。政府はそれを隠すために、国際援助を断り、暴力と飢餓を悪化させた。
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アメリカが冷戦終結を平和的に導き、東西ドイツの再統一を完成できたことについて、R.ゼーリックが書いています。
「北朝鮮やイランに対して、核兵器や制裁だけで交渉することは間違っている。アメリカが1989年にしたように、それを補完する多くのトピックを取り上げるべきだ。軍隊、信頼醸成、経済的見通し、人権、それらのすべてが、利害を有する諸大国を含む地域的な枠組みで議論された。」
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私は、画家や、家具職人が、豊かに、安心して暮らすことができる国を得たい、と思います。リンゴの木を守る人や、漁に出る夫や息子の帰りを待つ人が、美しいけれど、残酷なほどに厳しいときもある自然を愛して、暮らすことのできる国を得たい、と思うのです。
エクアドルや、エチオピア、北朝鮮、イランも、この地上に暮らす人びとの上に建つ城塞です。
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