(前半から続く)
● イギリスとロシアを排除してはならない
FT October
27, 2019
Europe
needs to solve its collective action problem
Wolfgang Münchau
FT
October 28, 2019
Britain
and Russia are Europe’s odd couple
Gideon
Rachman
イギリスとロシアはヨーロッパ大陸の縁にある。ある意味ではその結果、両国は二重のアイデンティティーを持っている。自分たちはヨーロッパであるとともに、何かそれ以上のものである、と。ロシアの領土の80%はアジアにある。大英帝国はヨーロッパの外に築かれた。北米、オーストララシア、南アジアの「英語圏」と強い文化的なつながりを持つ。
それゆえ、UKとロシアがEUの外にある2つの強国になるのは当然だ。両国はEUが集合的な巨大国家になることを心配する。周辺にある諸民族がそうであるように、ヨーロッパ大陸に単一の権力が登場することを伝統的に警戒してきた。
ブリュッセル(EU本部)にとって、究極的に、2つの憤慨する、ヨーロッパから疎外された隣国、イギリスとロシアがEUと敵対する事態は危険である。両国は、ヨーロッパの規準で見て大国であり、破滅をもたらす能力がある。
もちろん、イギリスとロシアの文化や政治は全く異なる。しかし、地政学は価値によってのみ動くものではない。感情や戦略的利益によっても動く。ソビエト崩壊後のロシアと、Brexit後のイギリスは、この点で共通している。
1990年代の経済混乱と戦略的な後退で、多くのロシア人が、自分たちの国は西側の利用された、と確信するようになった。特に、アメリカとNATOの拡大がロシアを憤慨させた。ウクライナをめぐるEUの姿勢をクレムリンは脅威とみなした。
もしBrexitが非常に深刻な悪化に向かえば、ソ連崩壊に似たような状態になるだろう。深刻な経済ショックをともなう、UK国家の分裂である。イギリスのナショナリストたちは、間違いなく、それをEUの陰謀によるものと考えるだろう。すでに、アイルランド国境問題、自由貿易協定、スコットランド独立で、ブリュッセルが人為的な問題を引き起こした、という批判がある。
事態が悪化する中で、UK(あるいは、イングランドだけ)は交渉のカードがなくなる。ヨーロッパとの安全保障や外交の協力関係を破壊し、それはEUとの敵対関係を強める。
こうした脅威をEU諸政府は深刻に考えていない。今は、それほどイギリスが混乱しているからだ。同じような軽蔑した姿勢が、1990年代のロシアに対してもあった。ロシアはバラバラに解体して、経済も崩壊していった。しかし、彼らの恥辱の感覚は膨張し、ロシアのパワーを再建する決意につながった。EUは今になって警戒している。
その教訓とは、数世紀にわたりヨーロッパの主要諸国であった国が、まったく無関係になることは決してない、ということだ。その利害は調和させる必要がある。イギリスやロシアを排除したヨーロッパの建設は、安定せず、安全でもない。
The Guardian, Wed 30 Oct 2019
Democracy is under attack in post-Wall Europe – but the spirit of
1989 is fighting back
Timothy Garton Ash
1945年の西ヨーロッパが開放された瞬間を目撃した者が、1975年に戻れば、そこには独裁者たちが復活しているのを観ただけであろう。それこそまさに、1989年のビロード革命を目撃してから30年後に、再訪した中央ヨーロッパで私が感じるものだ。
われわれが、中央ヨーロッパ、バルチック諸国、旧ソ連で、1989年からの民主化を祝福したことが間違いだったわけではない。われわれの間違いは、それが新しい正常な状態であると、歴史の進む方向が変わったと信じたことだ。今、われわれは再び同じ間違いを、逆方向において、犯している。反リベラルの、権威主義体制が勝利するのは避けられない、と信じているからだ。
厳密にいえば、非リベラルな民主主義というのは、雪団子のフライのように、矛盾した言葉である。それは民主主義が侵食されながら、まだ残っている状態を意味する。衰退はまだ、逆転可能なのだ。
PS Oct 30, 2019
What Brexit Reveals About the EU
BILL EMMOTT
FT October 31, 2019
The Berlin Wall and the rise of nationalism
Philip Stephens
2つの巨大な地震が現在のグローバルな秩序を形成した。1つは、1989年のリベラルな民主主義と開放型の市場に向かう動きであった。その後、第2の地殻を揺るがすショックが起きた。世界はナショナリズムと保護主義に戻りつつある。
国連は冷戦の眠りから覚め、アメリカ主導でグローバルな連携を組み、クウェートを占領したイラク軍を排除した。ヨーロッパ統合は世界に輸出されるモデルであった。国連が示した「住民を保護する責任」は、エスニック・クレンジングやジェノサイドを集団で止めるはずであった。
しかし今、ポピュリズムが支持され、反移民感情が豊かな西側諸国に広まっている。国際平和のための利益をもたらすヘゲモンとして、パックス・アメリカーナは友好国から支持されていた。しかし、2001年の9・11でアメリカはユニラテラリズムに変わった。っ民主主義を推進するという国が、B52爆撃機から指令するとき、民主主義の価値が損なわれた。2008年の世界金融危機は、リベラルな民主主義とグローバリゼーションに関わる幻想を吹き飛ばした。
● シリア内戦
FT October
27, 2019
The
west’s focus should shift to boosting civil society in Syria
Nicholas Haslam
SPIEGEL
ONLINE 10/28/2019
Wolfgang
Ischinger on Northern Syria
German
Defense Minister's Proposal 'Deserves Recognition'
Interview Conducted by Christiane Hoffmann
SPIEGEL
ONLINE 10/28/2019
War
Games
German
Syria Proposal a Risk for Merkel Ally
By DER SPIEGEL Staff
FP
OCTOBER 28, 2019
Putin and
Erdogan’s Deal for Syria Can’t Last
BY
CHRIS MILLER
トルコとロシアは合意した。しかし、それは続くのか?
FP
OCTOBER 28, 2019
Putin
May Want to Be an Emperor, but Russia Isn’t an Imperial Power
BY ALEXANDER J. MOTYL
FT October 30, 2019
A European security force in Syria is a courageous idea
Constanze Stelzenmüller
先週、ドイツの国防相Annegret Kramp-Karrenbauerは、この時代の深刻な人道的危機を封じ込めるために、通常には行わないような、勇気ある提案を示した。
アフガニスタンは「諸帝国の墓場」と言われてきた。しかし、西側諸国の墓場は、シリアである。8年におよぶ内戦は中東を不安定化した。サウジアラビア、カタール、イラン、そしてイランが支援するヒズボラが介入した。ロシアが地域における影響力を拡大した。
西側の諸政府が行動しなかったことが破滅を加速したのだ。Kramp-Karrenbauerの提案は、防衛負担の目標を達成するためでもあるが、その要点は、シリアにおけるヨーロッパの消極性を批判するものだ。それは道義的な無責任さだけでなく、ヨーロッパの安全保障を損なう。
アメリカ人が言うように、もしテーブルに席がないのであれば、あなたはメニューに載っている。つまり、喰われる側だ。
FP OCTOBER 30, 2019
Russia Is the Only Winner in Syria
BY REESE ERLICH
YaleGlobal, Tuesday, November 5, 2019
US Retreats From Syria and the Middle East
Dilip Hiro
● ISISの指導者殺害
NYT Oct.
27, 2019
Al-Baghdadi
Is Dead. The Story Doesn’t End Here.
By
Thomas L. Friedman
ISISの指導者Abu Bakr al-Baghdadiが死んだことは、確かに、よかった。ISISにレイプされた女性たち、斬首されたジャーナリストたち、暴行を受けた何万人ものシリアとイラクの人びとにとって、それは正義と言えるだろう。
しかし、話はこれで終わらない。多くの予想外の意味を持っている。
記者会見でトランプは、繰り返し、アメリカの諜報機関の人びとを称賛した。しかし、彼は知らないのか? 同じ人々が前の大統領選挙でロシアが介入していると教えたはずだ。ヒラリーではなく、あなたに投票するように、ロシアが介入した。
同じ諜報機関が、ホワイトハウスの権力乱用をチェックして、あなたがウクライナ大統領にジョー・バイデンの捜査を頼んだことを問題視し、弾劾審査が始まった。
ISISのal-Baghdadiを追いつめた諜報機関が、憲法に従って、ホワイトハウスでも、ロシアでも、ISISでも、民主主義に対する内外の脅威を阻止しようとしている。
これで中東が平和になると思うなら、それはあなたの無知を示すだけだ。オバマ政権がOsama
bin Ladenを殺害したときと同じである。
中東の混乱は、宗教のイデオロギーよりも、ガバナンスの崩壊によって起きている。汚職と不正義があふれる社会こそ、過激な行動を広めるのだ。
トランプはシリアから米軍を引き上げたが、アメリカの石油企業が利益を出せる油田地帯には軍を残すことにした。彼は、イラク戦争に反対したことを自慢し、われわれはその支払いをイラクの油田地帯の占領によって求めるべきだ、と考える。
それは将来の困難をもたらす処方箋だ。アメリカはむしろ、中東各地における、穏健な、民主的社会を守るべきだろう。
NYT Oct.
27, 2019
The World
Is Fighting More Than ISIS
By Jessica Stern
FP OCTOBER
28, 2019
The Conditions
That Created ISIS Still Exist
BY
H. A. HELLYER
FT October 30, 2019
A third, more terrible, incarnation of Isis could yet appear
David Gardner
FP OCTOBER 29, 2019
Baghdadi Is Dead But His Legend Lives On
BY AARON Y. ZELIN
● インド経済
FT October
28, 2019
Indian
economy: problems pile up for Narendra Modi
Amy Kazmin in New Delhi
PS Oct 29, 2019
The Caste of Credit in India
NAVJOT SANGWAN
● 日本のFDI規制
FT
October 28, 2019
Japan
risks chilling effect with new FDI law
● アメリカの共和党
PS Oct
28, 2019
The Silence
of the Republican Lambs
NINA L. KHRUSHCHEVA
FT October 31, 2019
How the Borgias point the way for Trump’s America
Edward Luce
● 資産課税
PS Oct 28,
2019
The
Allure and Limits of Monetized Fiscal Deficits
NOURIEL
ROUBINI
不況に向かうなら、財政赤字によって景気を刺激することが、強い政治圧力を受けて、始まるだろう。中央銀行による財政赤字の融資である。
PS Oct
28, 2019
Which Wealth
Tax?
MICHAEL
SPENCE
FP OCTOBER
28, 2019
Wall
Street Was America’s First Foe in World War II
BY MATT STOLLER
PS Oct 29, 2019
Stop Inflating the Inflation Threat
J. BRADFORD DELONG
FT October 31, 2019
It is time to treat the EU budget as statecraft
Martin Sandbu
PS Oct 31, 2019
The Great Wealth Tax Debate
JEAN PISANI-FERRY
エコノミストたちは富・資産に対する課税を支持しない。累進課税や相続税を支持する。しかし、これには問題がある。超富裕層の所得は少ない。彼らの富はキャピタルゲインである。また、相続税は政治的に支持されない。
ヨーロッパは課税方法を間違った。所得の不平等がエコノミストの論争に戻ってきたことは正しい。資産課税は万能薬ではないが、次善の策である。
● 同盟と外交
FP
OCTOBER 28, 2019
How to Tell
if You’re in a Good Alliance
BY STEPHEN M. WALT
ドナルド・トランプ大統領が、NATOの価値に疑問を示し、ヨーロッパ、アジア、北米の民主的な指導者たちと無意味な衝突を起こし、最近では、クルド人を裏切ったことに、多くの批判が示されている。しかし、すべての同盟国は同等ではなく、同盟の価値は変化する。同盟関係を見直すことは間違いではない。
同盟は慎重に選択しなければならない。何が良い同盟関係か? どのような同盟国が最良か?
非常に強力な軍事力と安全保障を保持することで、たとえ信頼できないときがあっても、アメリカは世界で最も同盟関係を望まれる国であることは変わらないだろう。ワシントンは、より厳格に同盟相手を選択することで、アメリカにとって需要でない土地での戦闘を回避できる。
アメリカが良い同盟相手であるためには、アメリカの安全と繁栄にとって直接に、重大な貢献をするときだけ、アメリカはその名誉と兵士の命をかけて戦う、と最初に約束することだ。
FT October 29, 2019
German reunification gave Europe strategic purpose
Robert Zoellick
1989年11月9日、ベルリン市民たちは、28年間、彼らを分断した壁を抜けて、東から西に流れ込んだ。1年以内に、2つのドイツは統一し、ヨーロッパにおける冷戦は平和的に終結した。30年を経て、アメリカとその他の世界は、1989-90年の外交から有益な教訓を引き出せる。
ドイツ人民、西ドイツの指導者たち。そして、アメリカのジョージ・H・W・ブッシュ大統領、ジェームズ・ベイカー国務長官、彼らが指揮した、ソ連、イギリス、フランス、ポーランド、NATOとECが、この歴史的瞬間を統一に導いた。
その頃のアメリカ外交は、歴史的視点と戦略的視点とを体現していた。研究者たちはソ連崩壊後のロシアに注目していたが、アメリカ政府の優先目標はドイツだった。17世紀から1871年まで、「ドイツ問題」とは、ヨーロッパ中央に、多くの小さなドイツ領邦国家が存在する危険のことであった。そこに外国の帝国が介入したからだ。1871年のドイツ統一以降は、ヨーロッパがその中枢に強大なドイツ国家を抱える問題となった。
1947年から、アメリカは西ドイツの復興を支持した。その経済再建は、ヨーロッパの統合化と大西洋の安全保障という構造の中で実現した。1989年、ブッシュとベイカーが強調したのは、アメリカが民主的な統一を支持する、ということだった。しかし同時に、その東と西で、不安を感じる近隣諸国に保証したのは、ドイツ統一がNATOとEUの枠内で行われる、という点だった。
アメリカは「ヴェルサイユ型の勝利」を避けたかった。それは次の戦争の種をまいただけだったから。また、ドイツの将来世代が恨みを持つような差別化を、アメリカは拒否した。ソ連に対しては、十分な安全保障、確実な国境線、経済的利益、政治的立場を保証した。ベイカーは、ツー・プラス・ツー方式の交渉を提案した。
東西ドイツ市民の統一を求める圧力を、われわれは交渉妥結に向けて利用した。ドイツとアメリカ以外は、統一を認める決断を嫌がっていたからだ。東ドイツの市民が、西ドイツに乗っ取られたと感じるような統一ではなく、対等と感じる合併を目指した。
外交にはタイミングが重要だった。1989-90年の外交には、迅速な行動が必要だったが、あわてて動いたのではない。ドナルド・トランプ大統領が、衝動的に行動し、素人の取引をしたが、それは計画、手続き、歴史的知見を無駄にした。彼は同盟国を侮辱し、民主主義の推進を否定した。クルド人を見捨てたことは、世界に、頼るべきではない彼の姿勢を証明した。
北朝鮮やイランに対して、核兵器や制裁だけで交渉することは間違っている。アメリカが1989年にしたように、それを補完する多くのトピックを取り上げるべきだ。軍隊、信頼醸成、経済的見通し、人権、それらのすべてが、利害を有する諸大国を含む地域的な枠組みで議論された。
30年経って、ワシントンが、アメリカとドイツとEUの間に示された離反する傾向を無視するとしたら、それは非常に愚かなことだ。他方、ドイツ人とヨーロッパ市民が団結と戦略的目標を再確立しなければ、ロシアと中国が改造するユーラシアの付属品になってしまう。
● 5G市場
FT October
29, 2019
A big part
of China’s 5G opportunity lies at home
James Kynge
● ジェノサイド
NYT Oct. 29, 2019
Samantha Power: A Belated Recognition of Genocide by the House
By Samantha
Power
● ノーベル賞
The Guardian, Wed 30 Oct 2019
If we’re serious about changing the world, we need a better kind of
economics to do it
Esther Duflo and
Abhijit Banerjee
FT October 31, 2019
Fractures appear in Ethiopia’s ethno-political mosaic
David Pilling
● 多様性と福祉
FT October 30, 2019
The false choice between diversity and welfare
Janan Ganesh
● 中央銀行と金融市場
FT October 31, 2019
The powerful forces reshaping America’s capital markets
Richard
Henderson in New York and Miles Kruppa in San Francisco
FT October 31, 2019
Do not underestimate Jay Powell in a fight with Donald Trump
Gillian Tett
FT October 31, 2019
Central bankers need political savvy more than ever
Michael Strobaek
PS Oct 31, 2019
The Monetarist Era is Over
ANATOLE KALETSKY
● ザッカーバーク
NYT Oct. 31, 2019
Aaron Sorkin: An Open Letter to Mark Zuckerberg
By Aaron Sorkin
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The Economist October
19th 2019
Who can trust Trump's America? The consequences of betraying the Kurds
Turkey and Syria: No way to say goodbye
Kurdish homelands: No fixed abode
India v China: Forced smiles
Bello: An equatorial earthquake
Free exchange: Rich economics
(コメント) トランプ大統領の命じた、シリア北部からの米軍撤退は、北朝鮮やイランとの宥和的・敵対的な外交について、私たちの心に根本的な疑念を生じます。
クルド人が国家を持てなかったことが、これほど深刻な、社会を維持する条件の欠落であることを想うと、国際秩序の基本が国家からなっていることに同意するしかありません。
しかし、インドと中国の外交的な「笑顔」、エクアドルやエチオピアの薄氷の国家状態は、単に国家をスタート地点と見なすことも間違いだと気づかせます。
戦争や貧困を解決できないのは、国家がないからではなく、正しい国家との関わり方を私たちが学び足りないからでしょう。
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IPEの想像力 11/4/19
エクアドルとエチオピアについての記事に関心を持ちました。
「それはよくある話である。南米の商品ブームは終わり、中道派の大統領が、前任者のポピュリスト政策が残した経済ダメージを修復することを求められる。政策ミス、政治的失敗、汚職などによるダメージだ。しかし、IMFは融資条件によって一層の痛みをともなう政策を押し付けた、と非難されている。・・・それはずっとアルゼンチンだったが、今は、エクアドルだ。」
石油価格の上昇と中国からの融資で、Correa前大統領は10年間のブームを実現した。莫大な投資で、道路、病院、学校を建設したのだ。政府部門の規模は倍増した。しかし、2014年、石油価格が下落し、経済も不況になった。
新大統領のMorenoは、旧政権の政策を放棄した。国民がハイパーインフレーションの中で通貨を捨てた後、通貨価値をドルに固定した。その結果、政府は財政赤字を通貨の印刷で賄えず、通貨価値の切り下げもできない。インフレは急速に鎮静化したが、企業の競争力は失われたままだ。しかもエクアドル政府の金融市場における評価は低く、政府は資金を調達できない。
Morenoには、IMF融資に頼るしか、経済回復のための政府支出を増やす手段がなかった。100億ドルの融資を受けるには、財政赤字を3年間で5%減らすことが条件だった。支出を削減するのが容易な項目もあったが、Morenoは、GDPの1.5%を目標に付加価値税(VAT)を引き上げるか、燃料補助金を削減する必要があった。
「政府は後者を選んだ。そうする理由があったのだ。化石燃料への補助金は、年間14億ドルも支出したが、環境を破壊し、社会的にも富裕層に有利であった。政府が指摘するように、補助金は貧困層ではなく、ペルーに石油を密貿易する者たちや、(石油を使用する)コロンビアの麻薬生産者たちがその利益を得ていた。」
しかし、燃料価格が急激に上昇したことで、特に、道路輸送に依存する地方の住民たちが大きな損害を受けた。貧困層への緩和策は不十分だった。先住民の連合体、バス会社、学生たち、そして前大統領Correaの支持派が、反政府で団結した。特に、最後の勢力は暴力をエスカレートさせた。破壊行為は2週間に及んだ。
今や、アルゼンチンでもエクアドルでも、旧左派のポピュリストが勢力を回復したようだ。かつてCorreaは、自分たちはIMFの教えを守らなかったから好景気になったのだ、と自慢した。
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エチオピアの首相、Abiy Ahmedは、ノーベル平和賞を受賞しました。彼について、記事の評価は非常に厳しいものです。Abiyは以前の抑圧体制から転換し、民主主義、和解、改革を支持した。多くの犠牲者と難民を生んだ、隣国エリトリアとの領土紛争を終わらせた。また、スーダンで起きた民主化勢力と軍隊との対立にも、両者の仲介を行った。
にもかかわらず、記事はそれらがまだ成功したとは言えない、と考えます。Abiyの、大胆な行動と魅力的な提案で、相手を抱き込む手法は、正式の手続きを無視しており、制度の積み重ねを否定する。エリトリアとの紛争も、国内における政治犯釈放と公正な選挙の実施も、実行できる保証はない。国内秩序の維持に失敗し、エスニック・クレンジングが起きている。政府はそれを隠すために、国際援助を断り、暴力と飢餓を悪化させた。
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アメリカが冷戦終結を平和的に導き、東西ドイツの再統一を完成できたことについて、R.ゼーリックが書いています。
「北朝鮮やイランに対して、核兵器や制裁だけで交渉することは間違っている。アメリカが1989年にしたように、それを補完する多くのトピックを取り上げるべきだ。軍隊、信頼醸成、経済的見通し、人権、それらのすべてが、利害を有する諸大国を含む地域的な枠組みで議論された。」
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私は、画家や、家具職人が、豊かに、安心して暮らすことができる国を得たい、と思います。リンゴの木を守る人や、漁に出る夫や息子の帰りを待つ人が、美しいけれど、残酷なほどに厳しいときもある自然を愛して、暮らすことのできる国を得たい、と思うのです。
エクアドルや、エチオピア、北朝鮮、イランも、この地上に暮らす人びとの上に建つ城塞です。
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