IPEの果樹園2019

今週のReview

10/28-9/2

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ジョンソンの離脱案 ・・・パックス・アメリカーナの終焉 ・・・社会改革としてのポピュリズム ・・・国際収支不均衡と帝国主義 ・・・香港の平和的改革

[長いReview

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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 ジョンソンの離脱案

FT October 18, 2019

Boris Johnson’s Brexit deal is a leap in the dark

Camilla Cavendish

UKが分裂するのか?

合意なしの離脱は避けられるだろう。しかし、これは非常にハードなBrexitである。しかも、長く、複雑な交渉の始まりに過ぎない。ジョンソンの合意は、メイの「取引」を何も超えていない。

Brexitが実現するには、反対側、労働党のコービンが動くことになる。効果的な解決をもたらす能力が、現在の議会と内閣にあるとは思えない。

アイルランドの安全策(バックストップ)を技術的に解決し、北アイルランドはスイスよりも良い条件になるのか?

EUが条件の交渉に応じたことはジョンソンの勝利であった。しかし、イギリスが関税同盟と単一市場の両方から離脱する、というジョンソンの考え方は大きなギャンブルだ。それは、メイの合意よりもEUから離れる。もしカナダ型の自由貿易協定を目指しているなら、それは政府自身の予想でもGDP6.7%も減少させる。

明らかに、3年の交渉を経ても、イギリスの威嚇に対してEUが分裂することはなかった。アイルランド政府の立場は、EUに反映され、イギリス政府の立場よりも強い。

ジョンソンは、関税なし、割り当てなしの、EU-UK自由貿易圏を目指す。政治宣言では、気候変動から政府補助金まで、すべてに関するオープンで公平な競争を維持する、という。労働党から支持を得るには、社会・労働規制に関して妥協する必要がある。また、コービンはEUの政府補助金・競争ルールには反対している。

根本的な対立には解決が示されていない。Brexit推進派は独自の条件で競争する自由を求める。しかし、産業界は安定性と利潤を維持するように求めている。ジョンソンの合意案がもたらす複雑さと追加コストを歓迎する企業は1つもない。政府はこの点を全く理解していない。

この国の経済の80%を占める、金融などのサービス部門取引に関して、政治的決定がもたらす影響を正しく理解している政治家はほとんどいない。

いかなるBrexitUKの統一を脅かす。ジョンソンの合意案は、北アイルランドと他のUKとを切り離すだろう。

これで「Brexitを実現した」という勝利を自慢することはやめるべきだ。これは闘いの始まりでしかない。

FP OCTOBER 24, 2019

A Diminished Nation in Search of an Empire

BY EDOARDO CAMPANELLA

Brexitの中心をなす心理劇は、イギリスのエスタブリシュメントたちが、大英帝国を失った後の世界における縮小したグローバルな役割について、その条件に満足できないことである。ボリス・ジョンソン首相のようなハードBrexit推進派は、EUを離脱して帝国の過去を復活させることに、輝かしい未来を期待している。彼らが夢見る英語圏の世界、そしてその中心にあるUKは、かつてのイギリス植民地であるUSとリンクした理想の世界である。

1962年、アメリカの国務長官アチソンDean Achesonが述べたことは有名だ。「グレイト・ブリテンは帝国を失ったが、まだその役割を見出していない。」 アイデンティティーの危機は1世紀も前に始まった、と彼は断定した。彼がそう述べてから50年以上を経たが、それはまだ終わらない。


 パックス・アメリカーナの終焉

FT October 18, 2019

The latest Syrian crisis is a warning to Europe

Gérard ErreraFrench ambassador to Nato and the UK

トランプが決定した米軍のシリア北部からの撤退は、米欧の大西洋同盟が無意味になったことを示す最新の、悲劇的な証拠である。

クルド人がキャンプで管理しているISISの容疑者たちは混乱の中で逃走し、西側の諸都市に惨劇をもたらすだろう。クルド人はシリア政府とロシアに保護を求め、ロシアがシリアとこの地域でパワーを拡大する。プーチンは、アメリカとその同盟諸国に代わって、中東のバランス・オブ・パワーで中心を占めるだろう。

ソ連崩壊以降、ヨーロッパの戦略的な価値は、アメリカにとって大幅に低下した。トランプは、前任者たちと違って、単にEUに関心を示さないだけでなく、EUの解体を公然と主張した。彼は最初からBrexitを歓迎した。

「アメリカ・ファースト」が変わらないと認めたヨーロッパの指導者たちは、その態度を変えた。ドイツのメルケル首相は「ヨーロッパは自分たちの運命を自分で決める」と述べ、フランスのマクロン大統領は「ヨーロッパの主権」という考えを支持した。

それが言葉だけでないためには、「ヨーロッパの利益」を定義し、集団でこれを守らねばならない。NATOは、その技術や貿易、金融、サイバー・セキュリティに十分な投資をしないことで、無意味になった。ヨーロッパは、ロシア、中国、アメリカに対して防衛する力がない。アメリカのドルや、国家を超えた制裁・法の強制がもたらす支配から逃れられない。これに対して、もっとユーロを強化し、ヨーロッパ・レベルで積極的な産業政策を実行するべきだ。

リベラルな民主主義、人権、事実に依拠することは、大西洋同盟の基礎であった。それが脅かされている。ヨーロッパは地政学と基本的価値を守るべきであり、シリアにおいてそれが試されている。

ベルリンの壁が崩れたとき、ゴルバチョフは東ドイツの指導者たちに警告した。「歴史は遅れた者を処罰する。」

ヨーロッパは同じ運命を避けるために行動せよ。

NYT Oct. 21, 2019

This Is the True End Of Pax Americana

By Ian Buruma

ところが共産主義の懸念が消滅してから,ヨーロッパでも日本でもアメリカの安全保障に対する異存が問題となっていた.パックス・アメリカーナは,もっと責任と負担をヨーロッパや日本が引き受ける形に移行しなければならない,とわかっていたのだ.それを,緩やかな,秩序ある移行にすることが,問題であった.

シリアにおけるクルド人に対するトランプの危険な態度変更は,その意味で重大であった.EUは,今なお,共通の問題意識や外交政策を示せない.日本には,アメリカに代わる何らの同盟関係もない.

もっと深刻な危険は,トランプがアメリカの理想を否定したことだ.トランプはリベラルの価値を声高に否定し,ロシアのプーチンや北朝鮮の金正恩を仲間として受け入れた.独裁者に対する何の道義的なチェックも存在しない.

これこそが真にパックス・アメリカーナの終焉である.


 社会改革としてのポピュリズム

FP OCTOBER 19, 2019

The Upside of Populism

BY DARON ACEMOGLU, JAMES A. ROBINSON

技術変化、経済成長、一部の者だけが利益を受けるグローバリゼーションの時代である。不平等が拡大し、社会不安が高まっている。金融パニックの後、国中に不況が広まった。移民への攻撃と、旧き良き時代への懐古。制度への信頼は失われ、新しい運動の指導者たちは、政治家の陰謀は庶民の利益に反している、と主張する。「浮浪者と億万長者が増えている。」

これは2010年代のアメリカではなく、1890年代を描いたものである。陰謀を巡らすエリートたちとは、鉄道、鉄鋼、石油、金融の大富豪たちだ。政治的コネにも依拠した「泥棒貴族」たちである。移民攻撃の言説を広またのは共和党ではなく、1982年オマハ綱領を掲げた左派ポピュリストの人民党であった。

彼らの不満や社会運動がアメリカの民主主義と自由を破壊する、と恐れる者は多かった。しかし明らかになったのは、ポピュリズムが制度の崩壊に向かうのではなく、その改革に向かう可能性だった。それは、経済的、政治的な不平等が拡大することに対して、広範な反発が広がり、より持続可能な姿を取り戻すのを助ける、そして、必要な運動を意味した。今もそうだ。

19世紀の人民党は次第に衰退し、中産階級を含む幅広い進歩派に変化した。既存制度を解体するより、新しい制度の設立を要求するようになる。政治・経済制度を改革することで、アメリカの民主主義と自由を回復した。上院も直接に選挙で選ばれるようになったし、富裕層が政治過程を支配することはむつかしくなった。1913年、進歩派は最高裁判決を翻し、修正第16条で、連邦所得税を導入した。進歩派はそれによって富裕層からの再分配が可能になると考えた。

民主主義と自由が生き延びることは容易なことではない。それは常に、異なる利益と社会勢力の闘争である。自由は、ある集団がこの綱引きに勝った結果ではない。逆に、一方が強くなりすぎると、自由は失われる。われわれはこの細い回廊を見つけなければならない。

もし国家とエリートがあまりにも強力になれば、それは他者を弾圧し、沈黙させる、専制国家に向かう。中国がそうだ。しかし非エリートが動員され、権力と戦い、それがあまりにも強くなれば、その結果は自由ではなく、国家の能力が崩壊する事態である。今のメキシコがそうだ。ベストのシナリオでは、社会が国家の諸機関を支配し、信頼し、国家が経済を規制し、公共サービスを供給し、法律の執行を効果的に行うのを許す。

現在のアメリカでも、ポピュリズムがプラスの意味を持つことは可能である。しかし、トランプ大統領は大きく1歩後退した。ナショナリズム、排外主義は、以前と同じポピュリズムの醜い側面だ。ポピュリストたちは、本能的に、こうした間違った、機会主義的な、分断化する人物の周りに集まる。それは極度に権力を集中したエリートや専門家に対する正当な反発である。

状況はかつてよりもゼロサムに見える。集団間でプラスの連帯を形成しにくい。しかし、2歩前進することは可能である。幅広い連携が形成されれば、エリートたちに圧力を加え、積極的な妥協が成立する。医療保険制度、質の高い教育の提供、より良いインフラの整備が、優先されるべきだ。


 国際収支不均衡と帝国主義

FP OCTOBER 19, 2019

Why Trade Wars Are Inevitable

BY MICHAEL PETTIS

貿易戦争を米中の対立、ドナルド・トランプと習近平の闘いと観るのは間違いだ。

グローバルな貿易不均衡を見れば、中国は経常収支の最大の黒字国ではない。その額は約1300億ドルであり、日本の1800億ドル、ドイツの2600億ドルよりも少ない。

経常収支の不均衡は、国内の貯蓄過剰(もしくは不足)によって生じており、その原因は各国内の所得不平等化である。不平等化を逆転するまで、貿易不均衡はなくならない。貯蓄過剰の国は、他国を、すなわち、アメリカを犠牲にして、自分たちの不均衡を輸出する。アメリカがこれほど他国の過剰貯蓄をすすんで吸収しなければ、グローバルな紛争は避けられない。

貿易黒字国であることは、製造業の優れた効率性や、勤勉さ、倹約の結果ではない。日本の家計の貯蓄率は、この15年間、おおむねゼロであった。そうではなく、大幅な黒字国であるドイツ、日本、韓国は、国際競争力を高める名目で、実質的に、市民の購買力を低下させ、銀行、企業、政治エリートの利益になる政策を実施した。その結果が貿易黒字である。

中国の国内不均衡は極端であり、それゆえ焦点となっている。世界で、そして、おそらく歴史上でも、最も高い投資率が中国を経常収支赤字国にするはずだ。ところが、中国の消費率はあまりにも低い。それは国内のすべての生産物の価値を下げ、国内投資を妨げる。

通常よりも大きな利益が中国の企業や地方政府に流れている。それは家計が負担する、直接的もしくは隠された補助金である。生産性の上昇に比べて賃金は停滞し、さらに人民元の安さ、環境規制の緩さ、最も重要な実質マイナス金利は、貯蓄する家計から、借り入れる国有企業や地方政府に大きな補助金となる。

中国だけではない。ドイツも賃金を抑圧して企業に対する補助金を与えるモデルだ。2000年代の最初の10年に行われたハルツ労働改革モデルは、賃金を抑制し、不平等拡大と企業利潤の増加をもたらした。それは自動的に貯蓄率を押し上げ、巨大な経常黒字国になった。

アメリカ経済は世界最大で、最も弾力的な、最良の金融市場を持っている。世界の個人も、企業も、政府も、資産を海外に保有するとき、アメリカに置くのは当然だ。世界の過剰貯蓄の半分がアメリカにある。言い換えれば、アメリカが資本を輸入するのは、外国の貯蓄を必要とするからではなく、海外の貯蓄が多いからだ。その結果、何十年も、アメリカは貿易赤字国になっている。戦後と違って、ドイツや日本が経済を再建し、その財やサービスを吸収するだけの需要が必要になった。アメリカの消費者がカギである。

貿易理論は、こうした恒久的な不均衡を説明できない。黒字国はその過剰な貯蓄や生産物を、海外に輸出し、国内所得にかかるデフレ圧力を減らそうとする。さらに、黒字国との輸出競争で、赤字国も賃金を下げる圧力を強めるしかない。こうしたグローバリゼーション・システムでは、不平等をその原因としても、結果としても、増大させる。

アメリカ大統領は何をするべきか? 経済理論では、資本流入が投資を増やすはずだ。しかし、多くの資金を得ても企業の投資は増えない。むしろ支出は生産を超えて、貯蓄を減らしている。言い換えれば、外国からの貯蓄が流入して、さまざまな形で、国内貯蓄を減らすのだ。株価や地価が上がる。銀行が融資を増やす。ドル高、輸入増。企業の資金保有増。財政赤字による刺激策。

問題は、アメリカ経済の規模が低下したことだ。貿易相手国の黒字を吸収してやる役割は、大きなコストを意味するようになった。そのような役割を担う意志も能力も失うのは、時間の問題である。その時、グローバルな貿易・金融システムは混乱の中で停止するだろう。貿易紛争は避けられない。それはトランプの個人的な怒りのせいでも、再選戦略でもない。

現在の貿易戦争は、米中間でも、黒字国と赤字国の間でも起きてない。それは経済部門間で起きている。黒字国と赤字国の双方で、銀行と資本所有者たちは、賃金抑圧、利潤増、資本の移動性改善から、大幅に利益を受けている。黒字国の労働者たちは、所得低下と通貨価値の下落で、不均衡のコストを支払っている。赤字国の労働者たちは、失業率と債務が増加している。両方において、不平等を逆転し、分配の歪みを解消することが、唯一、貿易戦争を終わらせる持続的な方策である。

将来、アメリカ政府は、税制、労働者への支援、例えば、医療・教育コストの削減、社会インフラの改善、最低賃金引き上げ、さらに、労働組合を強化して、不平等を減らす必要がある。アメリカ金融市場への外国からの貯蓄の流入が不均衡のバランスをアメリカに押し付けることに対して、政府は資本流入に課税するべきだ。経常収支不均衡を過剰貯蓄の源泉で是正するだけでなく、調整のコストを銀行や投機家に負担させることにもなる。

そうしなければ、世界は恐ろしい時代を迎えるだろう。1902年、イギリスのジョン・A・ホブソンは、19世紀末のヨーロッパ帝国主義を動かしたのは、極端な不平等が国内支出を減らし、国内金融資産の収益を低下させたことだ、と主張した。資本家たちはその過剰な貯蓄と生産物を海外に押し付けるため、輸出市場を確保し、高利融資で軍需産業を拡大した。それは戦争に至った。


 香港の平和的改革

FP OCTOBER 22, 2019

Compromise Is Still (Just About) Possible in Hong Kong

BY DEREK GROSSMAN

抗議運動は5つの要求を掲げており、そのすべてを実現するよう求めている。1.送還条例の法案完全撤退。2.抗議を暴徒として表現しない。3.警察の暴行に関する独立の調査委員会設置。4.収監された活動家たちの無条件釈放。5.完全な普通選挙の実施。

正常化のためには、香港政庁と抗議活動の双方に、困難な、危険でさえあるが、妥協を受け入れる必要がある。もし誠意をもって行われれば、香港はこの苦しい期間を1つの歴史にするだろう。

少なくとも2つの要求に、ラム長官は応えることができる。警察の暴行に関する調査委員会の設置は可能である。重要なことは、警察の規律を高め、必要なら改革を行って、住民の信頼を回復することだ。

同様に、ラムは活動家たちを無条件に釈放する決断を行うべきだ。香港の行政手続きや司法システムを回避することは非常にむつかしい選択肢だが、前例のない事態に、抗議活動が沈静化されることは優先されるべきだ。

ラムが、植民地時代の非常事態特権を行使して、抗議デモにマスクを禁止したことは、自由を放棄し、権威主義体制への転換を意味すると批判された。香港政庁は信頼を再建すべきであるが、むしろ、それを掘り崩している。

デモ隊も苦しい妥協を受け入れるべきだ。普通選挙は、少なくとも今すぐには、実現できない。民主化を支持するなら、区議会選挙に民主派議員を当選させるよう全力を注ぐべきだ。もし民主派が躍進すれば、北京による香港介入は失敗である、と示せるだろう。介入は、次の一層激しい抗議活動、さらには独立運動を生むかもしれない。

最後に、ラムの辞任要求を、抗議デモは取り下げるべきだろう。ラムは、流出した会話の録音でも、辞任したくても北京が許さないのだ。たとえラムが辞めても、もっと良い長官が代わると期待することはできない。

双方が理性ある妥協を示すことで、香港は破滅の淵から生還できる。「一国二制度」による香港の主権を守るべきだ。

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The Economist October 12th 2019

The world economy’s strange new rules

India’s economy: A big stink on the brink

Privilege in South Korea: One country, two systems

Chaguan: Lessons from the square

Ecuador’s state of emergency: Will Lenin weather the storm?

The world economy: The end of inflation

Protests in Iraq: Streets of fury

Poland: RiS at the polls

Bagehot: Thatcherism today

Free exchange: Clash of the titans

(コメント) 世界の金融システムが統合化する中で、金融危機後の豊かな諸故国はインフレが消えてしまいました。とんでもなく金融緩和しているのに、物価が上昇しない。これまでの金融理論や経済学の基礎が失われてしまった、というわけです。フィリップス曲線はどこに行ったのか? 私は、グローバル・ルイス・モデルを感じます。

フィリップス曲線は死んだのではなく、ネットの世界とグローバル市場に移ったのではないか、と記事は考えます。アマゾン効果と中国効果です。それゆえ、独自の仕方で再現するときに、過度な落款で財政赤字に頼る諸国は破滅するでしょう。日本なのか?

インドの銀行業、韓国、エクアドル、イラン、ポーランドの政治に苦悩する人々の姿が胸を打ちます。香港に漂う天安門の弾圧、イギリスではサッチャリズムからポピュリズムへの転生、ドイツとECB総裁の金融政策をめぐる暗闘。

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IPEの想像力 10/28/19

金融恐慌の歴史を、キンドルバーガーは、ブームが生じて、熱狂から、崩壊する、市場の集団ヒステリー現象であり、「多年草」である、と考えました。それは、インフレの消えた世界でも起きるのでしょうか? もし起きるとしたら、どのような形になるのか?

日本だけでなく、金融危機後の豊かな諸国に広がったQEQQE、そして、マイナス金利は、正しい経済政策なのか? ポピュリストによる再建策と、アルゼンチンやギリシャが示すような周辺における破綻、IMFECBによる救済と破綻のサイクルが、先進経済にも及ぶのか?

インフレ目標やアベノミクスをいつまで言い続けるのか? フィリップス曲線は、物価と失業との間に一定の逆に変化する関係があることを見出し、マクロ経済の管理者たちに規準を与えるはずでした。しかし、その関係が消えた? 平坦になった? 次々に移行している?

これまでと違うことが起きると、常に、根本的な技術革新、特に、グローバリゼーションとインターネットが注目されます。Amazonは以前の市場を大きく変え、価格を下げる圧力を強めました。あるいは、そもそも物を作らないサービス部門の価格変化は、賃金やコストではなく、何か別の要因によって決まるのではないか?

新興市場諸国、特に、中国はどうか? 農村からの労働供給が途絶え、人口が減少する中で、急速にITAI、ロボットに投資を進めています。過剰投資と貧困のアンバランス、環境破壊は、J.A.ホブソン流の「帝国主義」に向かうのか? ナショナリズム、ITを駆使した社会管理、自由よりも開発を重視する政治体制の輸出が、中国の目指す国際秩序なのか?

物価が上がらず、むしろ下がってしまうのは、需要が足りないからです。豊かな諸国が消費を減らす以上に、投資が減ったのでしょう。そして、ますます輸出に活路を見出すとしたら、結局、通貨の切り下げや国際競争力を高めるコスト削減、デフレ的な競争を強めることになります。

「最後の消費者」であるアメリカ経済が、その役割を拒むとき、中国も、ユーロ圏も、インドも、それに代わることはないでしょう。国際資本移動と経常収支不均衡の調整メカニズムは、それに応じた、アメリカなしで均衡する地域経済圏や資本移動の抑制を求めます。

これは「長期停滞」なのでしょうか? 急速に高齢化するから? 開発のための十分な投資を行わないから? 豊かな諸国の不平等拡大、貧しい諸国の秩序崩壊、あるいは、気候変動への無策によって、貯蓄過剰と投資機会の減少が、世界各地で独裁や地政学的危機を増している?

金融ビジネスのカジノ化を進めた証券化と、数学モデルに依拠する経済学の過剰な合理性は、政治的共同体のメンバーから生活圏を組織する力を奪いました。それは、大恐慌や第2次世界大戦を観たケインズの解決策とは反対です。経済的な自給が望ましい。・・・特に、金融部門はローカルであること。市場がカジノに侵されないように、社会的な観点で厳しく評価し、監視すること。

民主主義や資本主義の基礎が問われます。FacebookLibraは、現代の救世主になるでしょうか?

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メガバンクでなくても、地方銀行には地域の経済に対する貢献を使命として働く有意義な分野がある、とゼミに来てくれた若い銀行員は語っていました。

マイナス金利でも、銀行は消滅しないでしょう。高齢者の資産をどのように守り、生活を維持する計画を描くか? 巨額の資産取引、海外における投資、為替レートの変動リスクを含む投機に頼らず、その土地の新しい産業が興るのを助けることが金融の使命です。貯金や融資、資産を増やすことではなく、税金や債務を正しく扱うコンサルティングや、中小企業のM&Aが、銀行業のコア・ビジネスになる。

彼女の話は、きっと正しいのだと思います。もし政府や国際秩序が、原発やカジノ、外国人観光客ではなく、ローカルな経済の成長、より平等な、持続可能な成長を優先するなら、地域を支える小さな銀行こそが繁栄を築くでしょう。彼女の話を聞いて、そんなことを思いました。

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