IPEの果樹園2019
今週のReview
10/7-12
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トランプの弾劾裁判 ・・・イギリス政治のセクト ・・・アルゼンチン型の危機 ・・・香港民衆の声を聴いているか? ・・・炭鉱のカナリアは30億羽も死んだ ・・・中華人民共和国の建国70周年
[長いReview]
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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● トランプの弾劾裁判
FP SEPTEMBER
27, 2019
The
Realist Case for Impeachment
BY STEPHEN M. WALT
諸国家はアナーキーな世界に生きている。他国から自国を守ってくれる機関や制度は何もない。政治学者のJohn
Mearsheimerは、「国際システムで国家が問題にあっても、110に電話できない。」とよく言う。リアリストの国際政治は「自助」の世界だ。自分の資源と戦略によって生き延びるしかない。
だからアメリカのドナルド・トランプ大統領は弾劾されるべきだ。
しかし、ちょっと待て。外交におけるリアリズムは逆の主張ではないか? 危険な世界では、アメリカ人は大統領に自由に行動させる。そうやって、外交政策を積極的に行使し、警戒させるのだ。弾劾による憲法の危機は、敵を喜ばせるだけである。
いや、違う。
建国の父たちは、危険な世界でアメリカが生き延びることを考慮し、より強い統合を目指した。13州の連合規約から憲法に代えて、議会が宣戦布告し、軍を起こし、他の防衛策を命じる権限を与えた。大統領は、大使を指名し、条約を交渉し、外国の指導者と直接に取引する。
この200年間で、特に第2次世界大戦後は、大統領の権限が次第に拡大した。ソ連の脅威や、核兵器のもたらす緊急時の危険に応じて、巨大な軍隊と諜報機関を維持し、世界中の問題に大きな責任を持つようになった。どちらの政党の出身であっても、大統領たちは外交と安全保障に関する強い権限と秘密を求めた。秘密保持は、非効率性や秘密の漏えいを起こした。
大統領たちが信頼性を問われる1つの分野は、外国の指導者と行う、1対1の秘密取引である。危険な世界において、われわれは大統領、もしくは、彼の指名する代表たちが、戦争と平和の問題を含む、高度に繊細な諸問題を、敵国もしくは同盟国と率直に会話するよう認める。話の内容がニューヨーク・タイムズ紙の見出しに載る心配がないような形で。
それは国家安全保障のために認めるべきだが、大統領がそれを許されるのは彼が誠実であることへの信頼に依存する。アメリカ国民は、大統領が外国と取引するとき、広義の国益を実現するのであり、彼自身のプライベートな目的のためではない、と信用していなければならない。
トランプは、就任初日から、この原則を無視することを誇示してきた。彼は不動産ビジネスを手放さず、宣誓後も、少なくとも70回は宣伝している。少なくとも378回は自分の所有するリゾートで過ごし、納税者のお金をたっぷり支払っている。ウクライナのゼレンスキー大統領は、トランプとの電話会談で、自分はニューヨークのトランプタワーに宿泊している、と好意を得るよう媚びている。
内部告発者が注目したのは、ウクライナに対するアメリカの軍事援助の約束を、ウクライナ大統領から「好意a
favor」(トランプ自身の言葉)を引き出すためにトランプが利用したことだ。
トランプが求めたものは,ウクライナ政府がすでに汚れた点はないと表明していたにもかかわらず,2020年の大統領選挙で戦うかもしれないジョー・バイデンの汚職を示す材料であった.はっきり言うなら,トランプは外国政府に自分が再選されるよう手を貸せ,と求めたのだ.アメリカのウクライナに対する政策については意見の違いがあるとしても,現職の大統領が外国の権力者を,自分の再選を助けるスキャンダルを作るように促すことがあってはならない,という点に,理性ある人々は合意するはずだ.
特に重要なのは,問題が,トランプの行動がアメリカの法律に背く犯罪であったかどうかではない,という点だ.大統領に対する国民の信頼を悪用し,損なうことが,問題なのだ.彼以前の大統領たちも,外交における大失策を犯した.G.W.ブッシュのイラク戦争,オバマのカダフィ政権打倒,クリントンのNATO拡大やスーダン空爆.しかし,彼らのだれも、自分の選挙のために外交交渉を利用した、という証拠は存在しない.
ここに弾劾の第2の理由がある.いかなる人物も失敗することがある.政策の選択肢をオープンに議論し、その結果を正直に評価することは欠かせない.指導者が失敗を犯したとき,その情報にアクセスして議論できる開かれた社会が,失策を見つけ,代替案を出すのだ.スターリンのソ連,毛沢東の中国,サダム・フセインのイラクは,それができなかった.トランプは独裁者ではないが,同じ世界観を持っている.
トランプが,政権や彼が支配する政策を利用して,個人的な頼みをしたことは明白だ.民主党政権であれ,共和党政権であれ,政府の安全保障にかかわった300人以上の専門家たちが,弾劾を支持する声明に署名した.
● イギリス政治のセクト
FT October
3, 2019
Sects,
lies and British politics
Simon Kuper
長い間,イギリス政治を経済学で説明する,というのがコンセンサスであった.イギリス人の多くは,自分の損益を計算し,経済的に最も有能に見える政党に投票した.
しかし,EU離脱が経済的な損失をもたらすことに依拠して国民投票を率いたキャメロンは敗北し,離脱派が勝利した.評論家たちは,経済的な苦痛によってそれを説明した.
しかし経済学は、国民投票も,その後の混乱も,説明できなかった.所得水準では投票を予想できない.むしろイギリス政治を決める新しいルールは,「人類学だよ,ばかものめ!」
国民的混乱を考える最良の視点をもたらすのは,人類学,社会学,宗教の歴史である.これらは,人々が何を信じるか,と,人々は世界においてどのように行動するか,を研究している.
イギリスの2つの主要政党は,宗派sectsである.彼らは世俗の権力ではなく,純粋さを求め,社会のルールを軽蔑している.マックス・ウェーバーは,教会とセクトとを分けて,教会の帰属は誕生によるが,セクトは決断による,と述べた.
保守党も労働党も,かつては教会のように,人々が生まれる社会階級によって帰属した.しかし両党とも,ほぼ同時に,セクトによって占領された.労働党はコービン派に,保守党はBrexit派に.その一部は,また,個人のカルトでもあった.イギリスの政治史上,ジェレミーとボリスだけがファースト・ネームで呼ばれる.
セクトは世界を2つに分ける.「われわれの側,仲間,友人」と「その他,アウトサイダーたち」である.セクトにとって外の世界は「全くの悪」であり,仲間が離脱することを邪魔する.それは,外部世界のルールに対する軽蔑となる.離脱派の指導者は,仲間を集めて命じた.「私はここを粉砕して,ブルドーザーで川に捨てる.愚か者,裏切り者,意気地なしが,理解できもしないことに投票する.」
セクトは,建設するより,破壊することに長けている.確かにセクトは長続きしない.しかし,異端派や内紛で崩壊する前に,彼らは戦後のイギリス政治で最も重要な年を支配する.
● アルゼンチン型の危機
PS Sep
26, 2019
America’s
Argentina Risk
KAUSHIK BASU
アメリカは不況に向かっている.それは2020年の大統領選挙前に始まるかもしれない.しかし,アメリカにとって,もっと深刻な危険は「アルゼンチン・リスク」である.
20世紀の最初の数十年において,アルゼンチンは世界で最も急速に成長する経済であった.才能ある人びとが流入し,移民の率は他のどの国よりも多かった.ドイツやフランスを超える,世界10大富裕国になった.
それが変わったのは1930年であった.José Félix Uriburu.中将が軍事クーデタを起こした.右翼の超ナショナリズムが高まり,移民は止まり,関税戦争が始まった.その結果は,不況というより,スローモーションの減速であった.
アメリカ経済も,今は世界を支配している.しかし,アメリカがこれほど分解し、苦しんでいる姿を観たことはない.私の経験は,1994年にさかのぼる.
私は家族とともにインドからアメリカに移住した。妻も私も心配だった。新しい社会、異なる文化になじめるか? 子供たちは新しい学校で受け入れられるか? 私たちは地方紙に音楽祭の広告を見つけ、ダウンタウンで参加した。しかし、すぐに、間違いだと分かった。これは基本的に、ゲイのカップルのパーティーだった。私たちは呆然として立っていた。そして驚いた。われわれのぎこちない様子に気づいた人たちが集まってきて、笑って、冗談を言い、子供たちとおしゃべりしたのだ。私たちは、こうした開放的で、寛容な社会にいることを理解し、喜んだ。
あれからアメリカに何が起きたのか? 少なくとも個人の行動は変わっていない。変わったのは政治だ。決して多数ではないが、それでもアメリカの庶民がなぜトランプ大統領を支持するのか、大きな謎である。彼は、庶民と違って、親切心も、礼儀正しさも、豊かな情緒もまるでない。周辺に追いやられた人々、異なる人々に関心がない。
トランプの支持率は、世界が産業革命と同じような技術の大変動を経験していることによるだろう。普通の労働者たちにとって、生活は厳しく、職は少なく、賃金は安い。失業率が低いのは、ホームレスたちが、定義上、その計算に入らないからだ。
経済的な不振により、人びとは強い指導者に、彼らのための政策改革を期待した。しかし、アメリカでトランプが求める政策は、短期的な経済の刺激だけで、長期的に大きなコストをもたらすものだ。富裕層への減税。マイナス金利。ドル安。最後は、移民や外国人への不安をかきたてた。
それはアメリカ社会にそぐわない、1930年代のアルゼンチンで指導者が求めたような、その国の成功を掘り崩すものである。
● 香港民衆の声を聴いているか?
NYT Sept.
28, 2019
The
Tenacity of Chinese Communism
By Ian Buruma
1949年10月1日、天安門広場で、毛沢東は前に出て、中華人民共和国の成立を宣言した。多くの中国人は、共産主義者でない者も、幸福であった。諸外国、日本人の邪悪な侵略、血みどろの内戦が終わって、統一されたからだ。
しかし愛国者の多くは、ある日、熱狂したことを後悔しただろう。毛は「階級の敵」だけでなく、彼に奴隷のように従う者でなければ、だれでも敵とみなした。そして、日本の侵略さえも超える殺戮を行った。文化大革命は、その過程で、200万人が犠牲となっただろう。それは単に、彼の大粛清の最後の仕事であった。
中国共産党は、ゴルバチョフの民主化革命に比べて、資本主義にうまく適応した。1989年の天安門で野蛮な弾圧を実行した後、共産党は都市階級と1つの戦術的な取引を行った。彼らが抗議デモの多くを供給した。唯一、共産党が、人々に豊かになる、秩序ある状態をもたらす。それと交換に、政治的な抗議は行わない、と。それはシンガポールの統治手法であり、実際、鄧小平はシンガポールを称賛していた。
しかし、共産党の成功には、さらに深い理由があった。それは一種の宗教のようなドグマ、儒教、である。中国歴代の皇帝は、天と人民とをつなぐ媒介者、神に近い存在として行動した。儒教は、家族が父親に従うように、権威に従うことを求めるイデオロギーとなった。
古代の儒教は、調和的な社会秩序を目指す教科書のようなものだった。最近の香港や、台湾民主化を観れば、伝統的な文化を保持する中国人が、権威主義に強く反対することがわかる。しかし、中国の支配者たちは、ヒエラルキー的社会と専制的支配を支持するために、儒教を利用してきた。
それは学生や知識人たちが「科学」と「民主主義」を掲げて行進した1919年の5・4運動のテーマであった。彼らは、何千年も中国の文化と政治を結び付けた儒教のイデオロギーを否定し、科学に代えようとしたのだ。
知識人の多くが、マルクス主義、に魅力を感じた。それは儒教が残した真空を埋め、近代的な政治と科学に、強い倫理的な要素を加えたものだったからだ。しかし、1949年以後でも、毛沢東は神聖な皇帝のようにふるまっていた。
毛沢東の死後は、鄧小平の資本主義革命が進んだが、毛沢東主義やマルクス主義に共産党の権威を求め、口先だけの称賛を繰り返した。そして、ナショナリズムが、いくらか儒教の要素を取り込んで、共産主義の旧いドグマに交代し始めた。それは一部の中国人に「精神的な真空」を生んでいる。
習近平はこの問題を意識して、党のイデオロギーに対する規律を強化し、毛沢東主義を再生した。大学、メディア、オンラインでも反体制派を弾圧している。しかし、習は毛主席ではない。皇帝のカリスマを持っていない。弾圧を強化したシンガポール・モデルが長期に成功をもたらした。それは服従を強制し、精神的、知的な生活を国家が管理するだろう。
YaleGlobal,
Tuesday, October 1, 2019
Could
Hong Kong Become Belfast?
通りにあふれた群衆は、基本的な政治的権利を求めている。彼らを迎えたのは、催涙弾やゴム弾を撃ち、棍棒を振り回す暴動鎮圧部隊だった。衝突事件は日常となり、奮い立つ民衆と、孤立し、反応を示さない政府とに間にある、溝を反映していた。
これは香港のことだと思うかもしれないが、50年前の北アイルランドを描いたものだ。香港の危機は、何の解決策も見えてこない。争乱はますます“the
Troubles”と政府がよんだ北アイルランド紛争に似てきた。紛争は30年間続き、3000人の死者を出した。
カトリックが支配的な他の地域は1922年にアイルランド共和国としてイギリスから独立した。そのとき北部のプロテスタントたちは、主に、イギリスのアイルランド植民地化のためにやってきたスコットランド人たちの子孫であったが、自分たちの支配的地位を守るために疑似国家を作った。紛争は、その地域のマイノリティであったカソリック住民が、多数派のプロテスタントやイギリス市民と同じ、政治的権利、市民権を求めて、平和的な抗議活動として始まった。しかし、北アイルランド政府は無関心で、敵意を示し、警察による弾圧を支持した。
2019年の香港でも、抗議は平和的に始まった。北京が示した行政長官の提案した、容疑者を中国に送還する条例は、直ちに反対された。しかし、強い不安がそれを刺激した。富裕層だけに利益をもたらす途方もない不平等があり、多くの若者たちは取り残されたままだ。政治的な決定は、北京と同盟を組んだ、市民に関心がない大富豪たちによって支配されている。行政長官と立法会は普通選挙によって決める、という、1997年の香港返還で、イギリスに中国が約束したことに違反している。
北アイルランドの政府党虚構は、要求された市民権について徐々に譲歩したが、それは遅すぎた。カトリック住民の多くは、北アイルランド国家を違法なものとみなすようになった。特定の改革を求めることから、システム全体を破棄する要求に変わった。アイルランド共和国軍、IRAは、北とイギリスとの関係を破壊し、アイルランド統一を目指して、武力闘争を開始した。
北アイルランドにおいて、平和的な抗議活動の失敗と、警察の強硬策が、IRAとの闘争を招く結果になった。幸い、香港はまだ、そのような点に達していない。しかし、事態はもっと悪化するかもしれない。アムネスティ・インターナショナルは、香港警察の拘束者に対する拷問や不当な扱いを報告した。そして、独立した審査機関の要求を支持している。
FP OCTOBER
3, 2019
It
Is Time for the United States to Stand Up to China in Hong Kong
BY ELIZABETH WARREN
中国共産党が中華人民共和国の建国70周年を記念し、北京で軍事パレードを行っているときも、香港では人々が権利を求めて闘っている。数か月間も、警察や国家の暴力に勇敢に立ち向かう香港の抗議デモを、世界は観ていた。彼らはわれわれが支持するにふさわしい人たちだ。
香港で起きていることは、中国がわれわれに強いる挑戦と、アメリカの現在のアプローチの限界を示している。多くの問題で、例えば、気候変動でわれわれは中国と協力する必要がある。しかしまた、基本的な利益や価値が脅かされるときには、中国に断固として対抗しなければならない。
トランプ大統領は、繰り返し、間違ったシグナルを送った。アメリカは香港に関心がない、原則の問題には触れない、貿易交渉だけがトランプの関心事だ。
香港でも、世界のどこでも、彼らはわれわれに希望を観ている。われわれは彼らが弾圧されるのを座視できない。
● 炭鉱のカナリアは30億羽も死んだ
NYT Sept.
29, 2019
Three
Billion Canaries in the Coal Mine
By
Margaret Renkl
25年近くも、私の家族はこの家に住んでいる。近隣の変化は明白だ。樹木や野生の花が減った。ミツバチも、蝶も、バッタも減った。アマガエルの鳴き声や鳥のさえずりも減った。
私は、それが都市の再開発など、限られた条件で起きていると思った。私は鳥の巣をかけて世界を救おうとしてこなかった。庭に咲く野花が咲くのも待たずに草刈りをした。私は、彼らが裕福な開発地区からいなくなっても、問題ないと思っていた。
私は間違っていたのだ。Scienceに載った新しい研究が、1970年以来、30億羽に近い鳥が北米から消えた、と報告している。それはこの大陸にいるすべての鳥の29%である。
炭鉱のカナリア、という話を聞いたかもしれない。炭鉱で致死的なガスが出ると、それを警告するため、籠の中のカナリアが最初に死んで鳴き止む。逃げる時だ。鳥類学者がThe
Timesに意見を寄せた。「鳥は生物種の先行指標であり、まさに環境の健全さを示すバロメーターだ。」
昔の炭鉱と違って、われわれが逃げることのできる安全な場所などない。それにもかかわらず、現在の政府は環境保護の既存の政策を急速に後退させてきた。
われわれはかつて同じような位置にいた。その時は多くの人々が行動を要求した。1962年9月27日に、レイチェル・カーソンが『沈黙の春』を出版したときだ。読者は、除草剤が食物連鎖で及ぼす効果を知った。その結果、DDTは禁止され、食物連鎖の頂点に立つ猛禽類の数が回復したのだ。
野生生物と人類が必要とするものを、包括的に理解することが重要だ。この国の政治が変わらなければ、必要な政策は成立しない。それは不可能のように見えるだろうが、そうではない。環境保護局EPAを創設したのも、共和党のニクソン大統領だった。
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The Economist September 21st 2019
The climate issue
Conflict in the Gulf: Iran’s dangerous game
(コメント) 気候変動の視点でまとめられています。しかし、どうも理解できませんでした。何が言いたいのか、まったく切れ味がよくない、と思います。
気候変動は、その対策というか、温暖化ガスの排出削減、あるいは、それを待機中から取り除く技術や、そのための投資を組織する問題なのか? 温暖化が進むことに適応するための社会変化や資本市場、企業や移住の問題なのか? 小さな島国をどう見るか? 地政学上の変化や、中東の石油の上で展開されるかもしれない戦争、各地の紛争が受ける気候変動の影響を、私たちは評価しなければならない・・・のか?
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IPEの想像力 10/7/19
緊急事態に関する特別法として、マスクを禁止する、というのは、香港行政府の間違った選択であったと思う。
小学生・中学生の制服を着た子供たちが、黒いマスクをつけて、胸に手を当てた写真を観ただろうか。子供たちの痛切な訴えに対して、行政府のスタッフたちは何と思うのか?
18歳の高校生が警察官に銃撃され、危うく一命をとりとめたことに、しかも、政府が彼を起訴することに、学生デモや住民たちは何を思うだろうか?
香港はベルファストになるのか? とMike Chinoyは問う。なぜなら香港の今の情景は、彼が50年前に観たベルファストとよく似ているから。彼らも、最初は平和的なデモだった。市民としての基本的な権利を訴えていた。
しかし、北アイルランドの「政府」は、それを認めず、無視して、弾圧しようとした。催涙ガスや放水車、ゴム弾を使用した。催涙ガスの影響は、住民の多くにもおよび、デモ参加者たちへの同情を強める結果になった。
香港のデモ隊が催涙ガスに苦しむとき、住民たちが眼やのどを洗い流す水を提供し、介抱する友人たちを支援した。
暴力的に対抗する学生たちは、数万、数十万のデモ参加者の一部でしかない。その映像を繰り返し流して、(投票する権利を奪っておきながら)デモによる抗議それ自体を、暴力的な反政府活動として非難する。それは、むしろ行政府を孤立させるだろう。ましてやデモ隊に襲い掛かる北京政府に協力する暴徒を取り締まらず、暴力のエスカレートを容認、利用するとしたら、それは致命的な失敗となるだろう。
北アイルランド「政府」は、結局、市民的権利を認めたが、それは遅すぎたのだ。拘束者に拷問し、暴行を加えたことは、若者たちの怒りに火をつけた。警察からの暴力や諜報活動に対抗する、IRAなど、武装闘争を掲げるグループが、ベルファストだけでなく、イギリス本土でもテロ行為を繰り返すようになった。
ボリス・ジョンソンは、Brexitにおける北アイルランド問題を著しく軽視している。北アイルランドもアイルランド共和国も、EUの一部として、国境が必要なくなった。だから和平への障害は大きく緩和されたのだ。ベルファストの旧武装グループが和解したことはない。
トランプも、ジョンソンも、金融危機とその救済をめぐる政治の無能さ、人びとの不信感を刺激し、それを利用して権力を握った。また、グローバリゼーションと中国の台頭、インターネットやAIにより、人びとは十分たちの職場や地位が失われることをひどく恐れた。
弾劾審査が始まったトランプが、あるいは、2度目の国民投票や総選挙に挑むジョンソンが、どのような政治の大混乱を、自分の地位と権力のために、引き起こすのだろうか?
この英米の政治が、21世紀の民主主義のモデルではありえない。民主主義の焦点は香港や台湾に移った。香港で住民投票を行えば、中国本土との統一より、民主的な制度による自治を選ぶだろう。しかし、香港を守るアジア共同体は、まだない。
香港はベルファストになるのか? 北京や世界の主要都市は、彼らの声を聴いているか? そして、ベルファストは再び香港になる。EU内での自由や自立を求めて、平和的なデモを行う時代に帰ることができるなら。
民主主義や政治の力を恐れ、信じるなら、デモへ行け、と親は自分の子供たちを叱るはずだ。
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