IPEの果樹園2019

今週のReview

9/30-10/5

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西側民主主義モデルの崩壊 ・・・最高裁判断によるジョンソンの後退 ・・・中国共産党支配の不安 ・・・金融グローバリゼーションと危機、経済停滞 ・・・資本と労働とのパワー・バランス ・・・日韓基本条約の背景 ・・・イランとの新しい核合意とノーベル賞 ・・・カシミールの転換 ・・・ウクライナ・スキャンダルと弾劾審査 ・・・香港に未来はあるか?

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 西側民主主義モデルの崩壊

The Guardian, Fri 20 Sep 2019

The west’s self-proclaimed custodians of democracy failed to notice it rotting away

Pankaj Mishra

民主主義に関するアングロ・アメリカンの嘆きの声は、ボリス・ジョンソンがドナルド・トランプに加わって自由世界の指導者となってから、さらに大きくなった。

非常に長い間、英米は自分たちこそがグローバルに民主主義を保存し、推進するものだとみなしてきた。そして、外国の敵と戦ってきた。冷戦から「テロとの戦い」まで、その皇帝のような振る舞いは諸民族、特に、アジアやアフリカの人民を苦しめた。または、ロシア人や中国人の独裁体質を、アフリカの部族主義を、そしてイスラム、すなわち、「アラブの心」を非難した。

しかし、膨大な書物や論説が示すこうした分析は、民主主義の敵を恐るべき外国人や劣等な文化に観てきたが、世界で最も偉大な民主主義のトップに立つ金髪の白人が民主主義をいじめるとは、その読者に警告しなかった。はっきりしたことは、文明の破壊者たちが外から侵略したのではなく、すでに何年もわれわれを支配していた、ということだ。

民主主義に関するイデオロギー的な言説が、民主主義がその内側から、内外で、いかに空洞化したのか、われわれの多くは理解することに苦しんでいる。世界最大の民主主義国家、インドの目をみはる現実を考えるのが良い。インドはヒンドゥー至上主義に堕落し、カシミールにおいては、自ら1947年に解放された同じ人種差別の帝国主義を実施した。

西側民主主義の脆弱さは、大英帝国に隷属させられたアジア人、アフリカ人には、長く明らかなことだった。ガンディーは、民主主義を文字通り、人民の支配、とみなしたが、西側では「名目的でしかない」と書いた。「富裕層と何百万もの飢えた農民とが大きな格差を示す限り」、民主主義は実現しないだろう。・・・ガンディーは予告した。今は「名目的な民主主義国も、本当は全体主義国家になるだろう。」なぜなら、弱者を極限状態に追いやり、少数の資本家的な所有者たちが繁栄する体制は、たとえあからさまではない形でも、暴力なしには維持されないからだ。

インド憲法の起草者の1人、BRアンベードカルは警告した。11票の原理は政治的な平等を授与するが、醜い社会的・経済的な不平等には手を付けない。「われわれは、可能な限り早く、この矛盾を取り除かねばならない。」さもないと、「不平等に苦しむ人々は政治的な民主主義の構造を吹き飛ばすだろう。」

西側の政治家やビジネスマン、ジャーナリストたちが、大量殺人に加担したと責められるモディを称賛したことは、けた外れのスキャンダルである。しかし、主要な政治サークルではそんなことを誰も言わない。なぜなら、民主主義と自由市場のインドは、われわれの思考を支配するレーガンとサッチャーのイデオロギー的な末裔たちにとって、非白人の偉大な希望の国だから。

民主主義による西側の実験は、1945年以後に広く採用された、社会福祉体制があって初めて成果を上げた。

早くも1979年、ケンブリッジの政治学者、ジョン・ダンは不満を述べた。民主主義の現実は「かなり表面的」である。金融化された資本主義により、1980年代以降、現実はさらに虚弱なものになっている。正式な平等を約束する政治システムと、耐え難い不平等を生み出す社会・経済システムとの間にある亀裂は、さらに拡大している。それは究極的にデマゴーグたちを育てた。彼らが今では我々を支配する。近代民主主義は、何十年も、道徳的、イデオロギー的な破産に向かっていたのだ。規制されない資本主義は、切れ目なく、政治的、環境的な破局をもたらしたが、広報官たちは受け入れない。英米の勝利の歴史に酔っているからだ。

彼らの民主主義、民主主義の敵、友、自由世界、そういった類の単純化した思考が、現代世界でまき散らし、破滅をもたらしたのと同様のことが、彼らの国で起きている。

The Guardian, Sun 22 Sep 2019

What is it about Britain that has produced such a litany of failed leaders?

Will Hutton

イギリスは政治指導力の危機に直面している。右派も左派も、連携を唱え、Brexit派もしくは残留派とその後の人びとを導いて、議会の多数を維持する人物が登場できない。

議会制民主主義の確信は失墜した。強権政治への信仰が高まっている。問題は右派から始まったが、左派にもある。第2次世界の副産物として、諸階級の結集がなった。政治家、金融家、ビジネスマン、メディア指導者が、1930年代から70年代には、普通の男女の生活が堅固に保たれることに配慮した。彼らはともに戦っていたからだ。弱点や特権にもかかわらず、最終的な信頼があった。

今日、そのようなものは微塵もない。プライベート・エクイティやヘッジ・ファンドの富豪たちがボリス・ジョンソンに献金して、ジョンソンは「ビジネスが最高だ」と言って首相の地位を得たが、まったく責任を感じていない。彼らは莫大な富を得るが、それは彼らが資本主義的な「海賊」であるから当然なのだ。こうした海賊たちを得た社会は幸運であり、富を創る過程には関係ない。スキル、インフラ、科学研究は良いことだが、所詮、副次的なことだ。

政治の任務は、イギリスを課税や規制からできるだけ自由にして、海賊たちによりふさわしい場所に作り替えることである。特に、EUからは自由にする。

左派でも、ブレア政権時代の遺産は何もない。イラク戦争、隠密行動、安易な支出削減、EUに関する説明不足だ。ジェレミー・コービンと支持者の集団は、今や反動と化している。

おそらく偉大な民主的指導者は、もっと風通しの良い、階級に固執しない社会であれば、登場する。そのような社会の生活実感が、指導者たちに幅広い連携を求めさせるからだ。ジョンソンにもコービンにも、それが欠けている。Brexitとは、EUとの関係の危機という以上に、われわれの社会に深く根を張る危機なのだ。

PS Sep 24, 2019

The Constitution Won’t Save American Democracy

DARON ACEMOGLU, JAMES A. ROBINSON


 最高裁判断によるジョンソンの後退

FT September 20, 2019

The time for compromise on Brexit is fast approaching

Camilla Cavendish

The Guardian, Tue 24 Sep 2019

The supreme court judgment is a devastating blow for a failed prime minister

Martin Kettle

FP SEPTEMBER 24, 2019

Now It’s Really ‘Do or Die’ for Boris Johnson

BY OWEN MATTHEWS

The Guardian, Wed 25 Sep 2019

Like it or not, Boris Johnson still has two paths to election victory

Simon Jenkins

最高裁は憲法を書き換えるわけではない。「法の上に立つ者はいない。法が優先される。」 真の政治が始まらねばならない。

これはジョンソンを有利にするだろう。右派の新聞は、離脱強硬派の意見を代表して、どこでも残留派のたくらみを見出す。判事たちは残留派の突撃隊である。「人民の敵」、メトロポリタンに暮らすエリートの道具だ。首相こそが彼らの側に立ち、エスタブリッシュメントと闘っている。

ジョンソンは今も首相である。下院は、あえて、彼に対する不信任を決議しない。もしジョンソンが合意なしの離脱を進めれば、彼が、あるいは、他の誰かを首相にして、EUに離脱期限の再延期を求めるだろう。ジョンソンがEUと新しい条件に合意すれば(それはないだろうが)、彼はBrexitを実行する選挙を行うだろう。離脱か、死か。彼を阻止する者を、すべて非難する。敵は分断されており、彼が勝利するだろう。

それに代わるのは、メイの合意案だ。愚かな下院は、これを何度も否決した。ジョンソンが狡猾であれば、議会の最後に、団結を名目として、Ken Clarkeのような長老を呼ぶだろう。彼は、メイの合意案をもとに、その人物に超党派の合意を求める。ブリュッセルはアイルランド国境問題で新しい言葉を追加し、議会の承認を助ける。それは可能である。

UK10月末にEUを離脱するだろう。残留以外、すべての選択肢はジョンソンの手に残ざれる。こうして国民投票を尊重し、保守党の離脱派は最悪の結果を回避する。政治状況は逆転し、ジョンソンは「人民の意志を実現した」と宣言して選挙を行う。

私な現在の首相ほどひどいケースを想像できないが、ジョンソンが問題ではない。ジョンソンが冷静に計算して進めば、選挙で勝利するだろう。最高裁は無視しろ。短期こそが重要だ。政治はすべての者の上に立つ。

FT September 25, 2019

Boris Johnson’s unlawful conduct has been called to account

NYT Sept. 25, 2019

Britain Now Has a Politicized Supreme Court, Too

By Christopher Caldwell

FT September 26, 2019

Jeremy Corbyn’s Labour cannot be trusted to govern


 多国間主義

PS Sep 20, 2019

There Is No Alternative to Multilateralism

JOSH FRYDENBERG, HENG SWEE KEAT, SRI MULYANI INDRAWATI, BILL MORNEAU


 中国共産党支配の不安

PS Sep 20, 2019

The Coming Crisis of China’s One-Party Regime

MINXIN PEI

101日は中華人民共和国の第70回建国記念日である。習近平主席は演説で無条件に祝福するだろう。しかし、中国共産党の幹部から党員まで、体制の将来について、懸念が広がっている。

中国共産党CPC1921年に創設された。200年におよぶ上昇と偉大な成果を誇っている。しかし、経済は持続的に減速し、アメリカとの緊張は高まっており、2021年を迎える中国共産党のムードは暗い。2049年まで、1党体制は維持できないだろう。メキシコの71年、ソ連の74年、台湾・国民党の73年を観ても、中国共産党の寿命は尽きる領域にある。

中国共産党の歴史的な条件、すなわち、毛沢東主義の大災厄から回復し、過去40年間の羽委を築いたことは、より敵対的な環境に代わっている。アメリカとの冷戦だ。アメリカの勝利は幻想かもしれないが、中国共産党の運命を断つには十分だ。

中国の経済成長を支えた諸要因、すなわち、膨大な、若い労働力、急速な都市化、大規模なインフラ整備、市場自由化、グローバリゼーションは、すべて消滅するか減退しつつある。

ラディカルな改革を進めて成長を維持することを、中国共産党は躊躇している。すなわち、非効率な国有企業を民営化し、新重商主義の貿易体制を解体することだ。それは1党支配体制の基礎を破壊する。

中国共産党は権力を維持するために、ナショナリズムを煽動するかもしれない。しかし、たとえ短期的に権力を支持しても、継続して生活水準を高めることができないなら、そのエネルギーは反体制的なものに向かう。

ネオ毛沢東主義の抑圧体制は、経済を抑圧し、大衆的抗議を抑圧し、治安コストを高め、国際的な孤立を強める。毛沢東の死から今までで、中国共産党の支配はその終わりにもっとも近づいている。

FT September 22, 2019

China: Why Taiwan is unfinished business for Xi Jinping

Lucy Hornby in Beijing

FT September 23, 2019

Shadows loom over China’s 70th birthday celebrations

George Magnus

PS Sep 23, 2019

Sustainability with Chinese Characteristics

STEPHEN S. ROACH

中国は世界最大の温暖化ガス排出国である。しかし、持続可能性を重視する経済モデルに転換することで、中国はグローバルな指導力を発揮するだろう。すなわち、化石燃料から再生可能なエネルギーへの燃料の転換、新輸送体系への転換、環境に優しいグリーン・シティへの転換、である。

貿易戦争における中国への敵視によって、その意義を西側は見失っている。


 金融グローバリゼーションと危機、経済停滞

PS Sep 20, 2019

Argentina Needs Intensive Care

ANNE O. KRUEGER

アルゼンチンは、慢性的な過剰支出と過剰規制体質に苦しんでいた。2001年の危機で、経常収支赤字はGDP5%を超え、通貨価値をドルに固定していた。IMFの支援なしには、債務を支払えなかった。

通貨価値のペッグを廃止し、金融・財政政策を引き締め、IMF融資を受けたが、債務の組み換えは混乱したもので、貿易自由化、公共料金の引き上げなど、構造改革は中途半端であった。

国際商品価格のブームが終わると、財政赤字は増大し、通貨価値が急落し、危機が再発した。資本規制が再導入された。調整過程の大きな苦痛を緩和する薬はない。現大統領Mauricio Macriは、2015年にペロニストの大統領から代わったが、約束した改革を一部しか実行しなかった。有権者の支持を得るためだ。

2018年初めに、アルゼンチンは新しい危機に陥った。資本逃避が起きて、政府のドル建債務は80%も増大した。インフレ率は40%に達し、実質GDP2.5%減少した。中央銀行はインフレ目標を放棄し、政策全体の信頼が失われた。

かつてブラジルでLuiz Inácio Lula da Silva大統領が同じような危機に直面したとき、IMFは融資を行った。それは成功した。ダ・シルバは大統領になって、約束した改革を実行した。ブラジルは危機を脱出しただけでなく、数年にわたる高成長を実現した。

アルゼンチンへのIMF融資が再び必要だ。

PS Sep 25, 2019

The Puzzling Lure of Financial Globalization

ARVIND SUBRAMANIAN, DANI RODRIK

長年維持してきた資本規制を撤廃し、金融グローバリゼーションを支持する、と中国政府は発表した。対照的に、長年のブーム・バスト・サイクルを経てきたアルゼンチン政府は、新たな経済危機に直面し、通貨価値の暴落を抑えるために資本規制を再導入した。

その失敗の歴史にもかかわらず、金融グローバリゼーションは今も政策を支配している。

中国の経済成長には多くの源泉がある。市場に転換したこと、輸出と直接投資の利益、国内移民、教育と医療における毛沢東主義の遺産。そして、強力な、実効力のある政府、その開明的で、無慈悲な指導力があった。人びとは安定を希求し、経済を資本移動に委ねない、という決定が重要であった。

事実に反する、こんな歴史を想像すればよい。1990年代後半、経済的奇跡が顕著な時代に、金融グローバリゼーションの正統派を受け入れた。外国資本が中国の高収益を求めて流入し、人民元が急速に増価し、輸出型の成長を減速させ、ダイナミズムを失った。輸出を伸ばす中国の経済システムは、いまほど国民のエネルギーを集中せず、経済は外国資本の気まぐれな動きによって浮動性に苦しんだ。それは、現実のアルゼンチンの姿である。

この数十年、ほとんどすべての新興市場で、資本流入の急増と金融危機が生じた。1980年代のラテンアメリカ、1991年のインド、1994年のメキシコ、1990年代後半の東アジア、ロシア。2000年に入って、前半にブラジル、トルコ、アルゼンチン、後半から2010年代初めはバルチック諸国、ギリシャ、スペイン。2013年に「フラジャイル・ファイブ」(Brazil, India, Indonesia, South Africa, and Turkey)、現在のアルゼンチンだ。

ネオリベラルな合意は、民営化、規制緩和、貿易自由化、資本流入、財政規律、分配より成長の優先であるが、今では疑問を生じ、あるいは拒否されている。

金融グローバリゼーションが、特に、規制されない資本移動が、マクロ経済を不安定化し、金融危機の条件を形成し、輸出の競争力を奪って長期的な成長を損なうことは、多くの証拠が示している。それにもかかわらず、国内の貯蓄不足を前提に、開発経済学は金融グローバリゼーションを支持している。各地の裕福なエリートは自分たちの資産を逃避させるためにそれを支持する。グローバルな金融エリートは、資本規制を資産の没収と同一視し、私的所有権を破壊する無責任な政府だ、と非難する。

たとえ外貨ではなく、自国通貨による借り入れであっても、金融グローバリゼーションの危機はなくならない。低成長と低金利(さらにマイナス金利)とを続けている「先進経済諸国」の「日本化」は、外国からの借り入れを増やすよう促している。それは浮動性と危機を増やし、ダイナミズムを破壊するだろう。


 ジェネラル・モーターズ

NYT Sept. 21, 2019

The General Motors Century

By Anna Clark

ジェネラル・モーターズの急激な興隆は、1910年代を通じて、アメリカ中西部を改造しただけでなく、アメリカの経済と社会の絶大な変化を反映していた。

19196月、デトロイトに現れたGM本社は、15階立てて、30エーカーのフロア面積があった。地球上で最大のオフィスの1つであった。3500室に加えて、15のボーリング場、2つのスイミングプールがあった。


 モディの経済モデル

FP SEPTEMBER 21, 2019

Everyone Thinks the Economy Is Issue No. 1 for India’s Modi. It’s Not.

BY RONOJOY SEN


 EUと難民救出

FT September 22, 2019

Europe cannot close its doors to refugees and migrants

Filippo Grandi

EUは、海で苦しむ難民を救出しなければならない。彼らに手を差し伸べ、救出する力がある。NGOだけに委ねるべきではない。

EUは、また、体系的な上陸システムを必要としている。救出する国に支援を与え、難民たちを加盟諸国が引き受けるシステムだ。迅速で、公正な申請と審査の手続き、家族の再統合を助けるべきだ。

難民たちを拒むことは、ヨーロッパの基本的な価値を放棄することである。


 資本と労働とのパワー・バランス

FT September 23, 2019

Organised labour has returned

Rana Foroohar

ジェネラル・モーターズのストライキは合意に至った。先週、全米自動車労組が、12年間で初めて、ストライキに入り、世界的に注目された。それはアメリカにおいて、組織労働者の活動が復活していることの政治的な表明でもある。

多くの労働者は、不平等の拡大、退職後の不安、医療費など、生活費の高騰、経済の浮動性に不満を強めているからだ。しかし、組織労働者の活動を、グローバリゼーション、金融化、デジタル経済において消滅することへの最後のあがき、と観る者がいる。彼らは間違っているだろう。

若い、多文化の、低雇用状態に苦しむ、2000年以降に生まれた労働者たちが、最近、組合に参加している。7年前、ニューヨークで始まった、ファストフードや小売店の労働者を組織し、時給15ドルを要求する運動は、全国規模に拡大し、政治的影響力を持った。そのような組合の1つ、SEIUは、サービス経済やギグエコノミーにおいて、すべての労働者に組合を組織する権利を、民主党の大統領候補者たちに求めている。

ビジネス界も、この動きを無視できないだろう。短期的には、それはコスト増である。カリフォルニア州の「ギグエコノミー」に対する労働者の組織化に関する立法化は、UberLift30%も追加のコストを強いる。

しかし、「知識」経済において、企業の価値を決めるのは何より人的資本である。労働者を満足させ、その福祉を改善することは、投資家たちにとっても企業に求めるものである。資本市場は、それ自体、資本と労働とのパワー・バランスの変化を反映する。

1980年代以来、G20諸国では労働の分配率が低下し続けた。資産価格は上昇したが、賃金の停滞を補うものではなかった。こうした経済モデルは再考されるだろう。富の清算と富の分配は循環している。ある点を超えれば、そのバランスは逆転する。

FT September 23, 2019

The limits of the pursuit of profit

Andrew Hill in London

FT September 23, 2019

Big Business: A Love Letter to an American Anti-Hero, by Tyler Cowen

Review by John Plender


(後半へ続く)