(前半から続く)


 アメリカの若者たちは決意した

The Guardian, Sun 8 Sep 2019

It may feel like the world's ending – but America has reason to hope

Robert Reich

賃金は上がらない。記録的な不平等だ。気候変動、核軍拡、攻撃用ライフル、大量殺人、貿易戦争、薬物中毒、ロシアはアメリカの選挙に介入し、アメリカは国境において子供たちを檻に閉じ込めている。ホワイトハウスにはドナルド・トランプがいる。これで破滅が迫っていると感じないなら、どうかしている。

しかし、思い出してほしい。今と同じようなひどい時期に、この国は最大の強さを発揮した。それはわれわれの活力だ。われわれは苦境を跳ね返すだろう。

私が大学を卒業したのは1968年だ。その年、マーチン・ルーサー・キングJrが暗殺され、ロバート・F・ケネディーが暗殺された。多くの都市が暴動によって燃えた。

多くの若者がベトナム戦争に行くよう命じられた。それは勝つことのできない、正義のない戦争だった。最終的に、58000人のアメリカ人、300万人を超えるベトナム人が犠牲になった。

国家は深く分断され、11月に、リチャード・ニクソンが大統領になった。この国は2度と回復しないだろう、と私は思った。

しかし我々は回復した。環境保護法。同性婚。黒人の大統領。アフォーダブル・ケア・アクト。

アメリカ史が示すのは、特権やパワーがわれわれを押し込める陰謀を巡らすとき、最終的に、われわれは結集し、前進する、ということだ。

巨大な投機によるバブルがあった。平均的なアメリカ人の怒りは頂点に達し、行動に踏み出した。今がそうだ。

30年経てば、アメリカの有色の人口が多くなる。多様であることは力だ。人びとはより寛容で、レイシズムや外国人排斥を嫌うだろう。

若者たちはアメリカを改善すると決意している。私は40年近く教えてきたが、今の若者たちほど、この国と世界を改善したいと望む若者たちはいなかった。

しかし、希望するだけでは不十分だ。現実を変えるには、システムの権力中枢を変えるべきだ。

寡占支配者、富裕支配層は、われわれがあきらめ、運動から離脱することを何より好む。彼らはいつもそうしてきた。しかし、われわれはあきらめなかったし、あきらめない。民主主義の拡大と確立は、アメリカ建国のときから、中心のプロジェクトであった。

闘いに終わりはない。どれほど絶望的に見えようとも、われわれは闘うことをやめないだろう。


 

PS Jul 9, 2019

Ursula von der Leyen’s To-Do List

DANIELA SCHWARZER

FT September 11, 2019

A commission to stand up for Europe’s interests


 ポピュリズムはピークを越えたか?

NYT Sept. 9, 2019

How Democracy Dies, American-Style

By Paul Krugman

2018年の『民主主義の死に方』を書いたSteven Levitsky and Daniel Ziblattは、プーチンのロシア、エルドアンのトルコ、オルバンのハンガリーなど、世界中のケースを示した。1つ、また1つ、民主主義のガードレールが破壊される。国民に奉仕する制度は、支配政党の道具になる。反対する者は処罰され、脅される。こうした国は紙の上で民主主義かもしれないが、実際は、一党支配体制だ。

この1週間の出来事は、アメリカでもまさに同じことが起きている。

FP SEPTEMBER 10, 2019

Democracy Is Fighting for Its Life

BY CHARLES EDEL

YaleGlobal, Tuesday, September 10, 2019

Globalization and the Threat to Democracy

Samir Nazareth

FT September 11, 2019

The myth of a unified world populism

Janan Ganesh

ポピュリズムは、フィリピンからアメリカまで、太陽の没することのない帝国を築いた。ヨーロッパの各支部だけでなく、イギリスも、ブラジルが加わって多くの時間帯を制覇した。

しかし、各地のポピュリストたちはトランプを、選挙に勝つための教訓として観ているにすぎない。彼らの類似性には常に限界がある。その利害がかかわるのは、トランプが世界をアメリカ企業の蜘蛛の巣で見ているからだ。

疑いなく、ポピュリストたちは既存の世界秩序を破壊する。しかし、別の国際秩序を築くとは思えない。ポピュリストのためのダヴォスやブレトン・ウッズは考えられない。

かつてソビエトはイデオロギーによって世界の革命運動を指導する難しさを知った。ポピュリストもそうだ。それは「一国ポピュリズム」なのだ。

FT September 11, 2019

Is populism here to stay?

Gillian Tett

西側のポピュリズムはピークを越えたのか?

工業諸国で反エスタブリッシュメントの候補に有権者が投票した率は、2010年の7%から2017年の35%に達した。それは1930年代以来である。

最も注目されるのは、1930年代と違って、経済が好調であることだ。では、不況になれば、これはどうなるのか? もっと高まるのか、支持を失うのか?

有権者の3分の2が、経済は富裕層や権力者のために操作されている、システムは破綻している、と考えている。ポピュリズムが支持される諸国で、多くの人びと、政府は人々の幸福の面倒を見るべきだ、と答えている。

ポピュリズムが、機能不全の政治を,庶民の期待に沿う、市民に責任を負う姿に変えるのか?

FT September 11, 2019

Why rightwing populism has radicalised

Simon Kuper


 アフガニスタン和平

FT September 10, 2019

The US must get Afghan peace talks back on track

FP SEPTEMBER 11, 2019

We Lost the War in Afghanistan. Get Over It.

BY STEPHEN M. WALT

18年間の戦争、数千人の戦死者、莫大な戦費の浪費、アメリカが達成したものは何もない。

それは軍事的な敗北では決してない。政治的な目標(共和党も、民主党も、掲げたが)を何も達成しなかったという意味だ。その理由は簡単だ。7000マイルも離れた国から来た軍隊が、アフガニスタンの運命を決めることは不可能なのだ。

FP SEPTEMBER 11, 2019

In the Demise of the Taliban Peace Talks, Russia Is the Winner

BY SAMUEL RAMANI


 香港の抗議デモ

FT September 10, 2019

America must respond to the pleas of Hong Kong’s people

Kevin McCarthy

FT September 12, 2019

A fury that passes by the symbols of wealth

Leo Lewis


 北朝鮮がトランプに送るシグナル

PS Sep 10, 2019

Trump’s North Korean Appeasement

CHRISTOPHER R. HILL

シンガポールのサミット以来、トランプはその直感に従って、金正恩の説明を受け入れた。「フリーズとフリーズの交換」だ。北朝鮮は核と弾道ミサイルの開発を凍結する。アメリカは、カネのかかる、米韓合同軍事演習を凍結する。トランプは米韓の同盟関係を弱めることを気にしなかった。

トランプは、ニューヨークの不動産業者風に考える。北朝鮮は経済の回復を求めている、と。

ジョン・ボルトンがいるから、北朝鮮はアメリカの軍事行動を懸念する、というキムの説明を受け入れた。トランプはキムの慢性的な不信を緩和する。そして、彼のおじさんのような関係を維持する。

彼らに共通するのは、より広い外交関係の構築には関心がないことだ。6か国協議は死んだままだ。

北朝鮮が近距離のミサイルを発射し続けている意味は明らかだ。われわれは202011月の前に、お前にとっての問題を起こす力がある、ということだ。

トランプは、自分の北朝鮮政策を「戦略的忍耐」と見せたがっている。しかし、そうではない。これは宥和政策である。それがうまくいくかどうか、見守ることにしよう。202011月まで、まだ時間がある。

FT September 11, 2019

John Bolton’s firing ends Donald Trump’s hawkish phase

Edward Luce in Washington

数か月前、ドナルド・トランプはアイルランド首相を大統領執務室に迎えた。大統領は、安全保障担当補佐官のひげをまねしながら、「ジョン、アイルランドはお前が侵略したい国の1つなのか?」と言って笑わせた。

ボルトンがいなくなれば、トランプは北朝鮮との会談を再開し、イランのロウハニ大統領とも会い、ベネズエラの指導者を失脚させる計画は軽視する。

タリバンをキャンプ・デーヴィッドに招くというトランプの計画にボルトンが反対したことが、最後だった。911を記念し、18年間の戦争を終わらせるはずだった。ボルトンが大統領に与えた最良の助言が、皮肉な結果になった。

ボルトン解任は、共和党内のタカ派に反発を生むだろう。

ホワイトハウスを出たボルトンは、トランプの脅威になる。マティスが辞任したとき、メディアは大統領の意思決定に関する批判を求めたが、彼は「現職の大統領」を批判しなかった。ボルトンは違うだろう。


 「日本化」への正しい処方箋

FT September 10, 2019

Why aggressive monetary easing is pushing on a string

Richard Koo

「日本化“Japanisation”」の恐怖が再び大西洋の両岸で強まり、追加の金融緩和を求めている。低成長と低インフレが1990年から日本で続き、西側では2008年から続く。貸し手ではなく、借り手がいなくなったからだ。借りる意欲がないとき、金融政策は機能しない。

1990年にバブルが破裂し、不動産価格が90%も下落した。不動産を購入する者の健全さ、その担保能力が破壊された。

ゼロ金利でも、マイナス金利でも、借り手は過剰な債務を減らすために返済した。それが終わるのに20年を要したのだ。

家計や財務を健全化するのは、個々の家族や企業の絶対条件だった。皆が返済するとき、借り手は消滅し、経済は大幅に縮小する。経済水準が維持されるには、誰かが借り入れて支出する必要があった。

貸し出されない貯蓄は所得の流れから漏れ出す。経済がデフレ・スパイラルに入り、バランス・シート不況とよばれた。アメリカの大不況では、1929-1933年に、名目GDP46%失われた。

1990年以降、日本は大不況期のアメリカと比べて、GDP比で3倍も大きなバランス・シートのダメージを受けた。しかし日本のGDPは、名目でも、実質でも、バブルのピーク時を下回ったことがない。失業率も5.5%を超えなかった。

それは、民間部門の過剰貯蓄に対して、政府が借り入れて支出したからだ。今、日本の失業率は2.3%であり、民間部門のバランス・シートは完全に回復した。しかし、債務を返済する悪夢の経験があるため、民間部門は借り入れない。1930年代に債務を返済したアメリカ人も、死ぬまで借り入れを拒否した。この債務のトラウマは、西側のバランス・シート回復後も続くだろう。

政府は最後の借り手として経済を維持するべきだ。バーナンキもイエレンも、これを理解していた。しかし、他の中央銀行や政府は違う。

バランス・シート不況の時代に中央銀行が政府の赤字を融資することは問題ではない。自国通貨建で固定所得をもたらす資産に投資する必要がある、年金基金やその他の金融機関がある。「日本化」の正しい処方箋は、民間部門の借り入れが始まって、金融政策が機能し始めるまで、政府が最後の借り手としての役割を果たすことだ。

将来世代の負担にならないよう、独立の委員会を設置して、国債利回りを超えるような社会的利回りの公共事業を発掘するのが良いだろう。バランス・シート不況では、気候変動の破局を回避するためのような、非常に長期的な投資も、現在の低下した国債利回りに比べて、収益をもたらす。


 中央銀行家たちの防戦

FT September 13, 2019

Central banks are rethinking their roles

Gillian Tett

トランプの連銀攻撃に、中央銀行の独立性を支持する声明を、元議長たちが出した。しかし、「中央銀行の独立性」は、その意義を失っている。次の不況を避けるには、政府との協力が求められるからだ。

それは成功するのか? ポピュリズムの広まる世界で、政府との健全な協力関係は期待できない。

PS Sep 10, 2019

Did Dudley Do Right?

BARRY EICHENGREEN


 アルゼンチンとIMFの失敗

PS Sep 10, 2019

Who Lost Argentina, Again?

MOHAMED A. EL-ERIAN

2001年後半、アルゼンチンは、非難の応酬に陥って、債務のデフォルト、深刻な不況、国際的な信用を深く傷つけた。

同じことが起きている。マクリ大統領は、経済改革を唱えて国際的に称賛されたが、成長が高まらない不満を、資本流入で回復することに頼った。それは自国の利回りが低下したせいで、短期の高利回りを探すような素人の投資家たちだった。

PS Sep 12, 2019

Will the IMF Finally Learn From Argentina?

STEPHEN GRENVILLE


 内外における貧富の格差

PS Sep 10, 2019

Should We Worry About Income Gaps Within or Between Countries?

DANI RODRIK


 アジアと開発金融

FT September 11, 2019

Asia has a crucial role in the development of sustainable finance

Douglas Flint


 ギグエコノミーと労働者

NYT Sept. 12, 2019

You Call It the Gig Economy. California Calls It ‘Feudalism.’

By Miriam Pawel

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The Economist August 31st 2019

Democracy’s enemy within

Security in Asia: Slight club

Hungary: The entanglement of powers

The RBI’s reserves: Ravaged Bank of India?

Blue-collar workers: Reflecting back

Germany’s negative interest rates: Dear prudence

Free exchange: Meeting of minds

(コメント) 民主的な制度を利用して権力を握り,議会の多数を握り,重要なポストを支配し,次第に制度を作り変え,事実上の独裁体制を築く.それは貧しい発展途上諸国でしばしばみられる,弱い資本主義,もしくは,新生の独立国家の話だった.しかし,ハンガリーのオルバンは成功した,と紹介されている.

そして,東欧のような,共産主義体制の腐敗や政治的デマゴギーの経験がない,他のヨーロッパ諸国でも,イギリスでも,アメリカでも,同様の政治が広まっている.若者たちは国外に逃げるしかない,と記事は警告している.

中央銀行の異常な金融緩和,ポピュリスト政治家の介入,預金者たちの不安,貨幣や金融システムへの信頼が破壊される時代には,大きな反動がともなう,とわかっているのに.なぜ止めなかったか.

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IPEの想像力 9/16/19

香港,サウジアラビア,イエメン,ソロモン諸島,イスラエル、アマゾン森林火災、・・・

国際政治の変動は何に向かっているのか、安定した秩序を目指す動きであるなら、それを非難する理由はない。気候変動をもたらす化石燃料から人類が離脱し、グローバルなパワー・シフトと、それに合った秩序再編が旧秩序の支配層を脅かすのは、軋轢を生じて当然であると思うから。

戦争や暴力を用いることなく、たとえ紛争を避けられないとしても、異なる形で交渉を継続し、新しいバランスと調整のためのメカニズムを合意することが望ましい。

グローバリゼーションや金融危機について、政治経済秩序に関する根本的な不満、異議が生じたのは、それらが富や豊かさ、生活の満足をもたらすものではない、とはっきり示された事件にもかかわらず、政治が秩序やルールを積極的に変えなかったからです。

たとえ分野によっては、自由貿易や国際分業による利益があるとしても、むしろ生産技術を移転・普及させることが本当の豊かさをもたらすメカニズムであったでしょう。つまり教育や研修、ときには、直接投資として、知識と技術を移転するのです。

しかし、そのような分野が多国籍企業や金融ビジネスに支配される理由になる、とは思えません。学校や研修施設があれば、インドやアフリカへ、国際協力によって移転されるでしょう。

国際通貨・金融システムが、もっと安定した為替レートとその調整メカニズムを備えていれば、そして、短期で、異常なデリバティブ取引のもたらす収入を、そのまま個々の企業やトレーダーの所得にしてしまうような「自由化」がなければ、生産技術の長期的な移転は、もっとわずかな利益で貯蓄の国際移転と地域的な完全雇用を実現できたでしょう。

金融危機やケインズに関するスキデルスキー、伊東光晴、ロナルド・ドーア、キンドルバーガー、民主主義に関するロバート・ダールの本を読みながら、そう思いました。

あたかも金融取引が莫大な「富」を社会にもたらすかのように、資本を吸収し、銀行システムを侵食し、政治を翻弄し、巨額のボーナスと浪費文化を正当化する時代は、エリートたちに退場を求める声となって、紛争がこれからも続くでしょう。

しかし、気候変動は続き、台風の被災者は電気のない暗闇で雨漏りを心配し、原発再稼働を主張しつつ、原発事故の汚染水を大阪湾で廃棄するとか、ますます中東からの石油輸入に依存することで、ホルムズ海峡に自衛隊を派遣するのか、日銀の異常な金融緩和政策をさらに続けるのか、・・・政治の姿が、こうした怒りの声を受け止めたとは思えない。

人びとの沈黙は、デモクラシーのバージョン・アップを訴えます。

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