前半から続く)


 トランプ式独立記念日

FT July 6, 2019

Donald Trump creates ‘Red Square on the Potomac’

Edward Luce

トランプは独立記念日を政治的に利用し、軍事的な色彩を強めた。それはアメリカの精神に背くものだ。

正常な独立記念日というのは、ホットドッグ、小さな町のパレード、花火、ビールと国旗だ。しかし、この独立記念日には、ソ連のような、トランプ式の「国家に敬礼せよ」があった。ポトマック河畔の赤の広場だ。

トランプには権威主義体制のガバナンスに対する羨望がある。先週、大阪G20サミットでも、イヴァンカはアメリカ版「ファースト・ドーター」であった。サウド家のように、すべては家族の中で決められる。


 ECB総裁とEUとのユーロ圏改革

FT July 7, 2019

The candidate we need as next head of the IMF

FT July 8, 2019

Christine Lagarde’s opportunity to reform the eurozone

Wolfgang Münchau

ラガルドChristine LagardeECB総裁に指名されたことは、ユーロ圏改革の構図を大きく変える可能性がある。変わるのは金融政策ではなく、EUの他の機関との将来の相互作用だ。

ほかにも、欧州委員会委員長にはUrsula von der Leyen, German defence minister; 欧州理事会議長にはCharles Michel, Belgian prime minister; EU外務・安全保障政策上級代表には Josep Borrell, Spanish foreign ministerが指名された。彼らがすべて欧州連邦支持者であることは、予期されなかった幸運な結果である。

ラガルドもそうだ。ここに初めて、EUのすべてのトップにEU改革とユーロ圏改革を推進する者が就いた。

ラガルドは、内部で対立する次の量的緩和を行うより、ECBの独立性を失わない形でEU諸機関と協力することが望ましいだろう。ドラギが述べたように、財政政策がより大きな役割を果たす必要がある。ヨーロッパ諸国の政府債が非常に低い利回りであるのは、安全な資産が不足していることを意味する。IMF専務理事とフランス財務相を務めたラガルド以上に、財政・金融協力の新時代を拓くにふさわしい指導者はいない。

理想的には、ドイツが財政黒字を永久化する憲法を改正するべきだ。それは実現しそうにない。また、イタリア政府が財政刺激策を求めることも理解できる。

ユーロ圏は、真に統合された資本市場同盟を必要としている。大規模なユーロ債市場だ。改革派のフランス、マクロン大統領や、スペイン、サンチェス首相を、ラガルドは支援できる。いわゆる新ハンザ同盟と、その指導国であるオランダは、ユーロ圏改革に反対している。しかし、欧州委員会委員長にドイツの保守派フォン・デア・ライエンを指名したことは、マクロンの英断だった。ドイツはマクロンの改革案を無視できないだろう。

ドイツはなお、「財政移転同盟」として改革を嫌っているが、ユーロ圏が求めるのは目黒経済の安定化メカニズムである。それは加盟国の財政規律とECBの救済禁止原則を強化するものだ。

ユーロ圏が進むべき道はここにある。それを選ぶかどうかは、メルケルの後継者にかかっている。

FT July 8, 2019

Why a leader’s past record is no guide to future success

Andrew Hill

VOX 08 July 2019

Euro 20/20: Twenty papers to better understand the single currency

Nauro Campos, Fabrizio Coricelli

ユーロ誕生から20周年を記念して、多くの中から20の論文を選んだ。

この20年間はでこぼこの道で、論争が続いた。2000年のオイル・ショック、9・11、ドットコム・バブルで始まった。2008年の世界金融危機は、単一通貨がまだ10年もたたないときだった。2011年ころには政府債務危機が起き、まだ回復していない国もある。

なぜユーロの効果は評価しにくいか。・・・歴史が重要だ。1969年、ブレトンウッズ体制が動揺する中で、ヨーロッパの指導者たちは単一通貨に関する議論を始めた。1979年には為替レート・メカニズム(ERM)が成立した。1980年代にはドイツ・マルクに集中し、1993年以来、ECUもしくはマルクが取引の基準になった。1999年以後は、単一市場の形成が課題となった。

金融政策の独立性を失ったのか、それは神話か。・・・論争は、マンデルの古典的な「最適通貨圏」をめぐって行われた。非対称的なショックが、労働力の高い国際移動性がなければ、通貨圏を損なうことが示された。異質な加盟国間で為替レートの調整が必要だ、とユーロは批判された。

しかし、マッキノンが指摘したように「マンデルⅡ」が見失われている。異質な諸国の通貨圏にとっては、効果的なリスク分散による金融統合の利益が重要である。たとえ変動為替レートを採る諸国でも、「変動への恐怖」が強く、為替レートに関する市場介入が行われている。

さらに資本の移動性を考慮すれば、高度な通貨代替の可能性がある世界では、変動為替レートの決定が困難になる。為替レートは経済の基礎的条件から乖離し、間違ったものになりうる。

ユーロの目的とは何か? ・・・1.貿易・金融市場の統合。2.構造改革。3.コア=ペリフェリー問題。4.不況。それぞれに関する評価が必要だ。

PS Jul 8, 2019

The ECB Needs to Explain Itself

STEFAN GERLACH

FT July 9, 2019

Christine Lagarde shows how to deal with imposter syndrome

Anne-Sylvaine Chassany

PS Jul 9, 2019

The Central Banker Europe Needs

BARRY EICHENGREEN

ラガルドが、中央銀行の実務についての経験を持たず、経済学の専門的な訓練やPh.Dを持たないことは、ECB総裁になるうえで重大な欠陥とは言えない。むしろ重要なことは、健全な経済論を認識し、助言を聴く能力だ。


 アメリカ経済の評価と運営

FT July 7, 2019

US capitalism is fairer than you think

William Cline

データを慎重に検討すれば、アメリカの中産階級は決して停滞していなかった。

FT July 7, 2019

The fracturing of the global economic consensus

Rana Foroohar

PS Jul 9, 2019

Is Plutocracy Really the Problem?

J. BRADFORD DELONG

世界金融危機後の大不況が、大恐慌の教訓を生かすことに失敗したのはなぜだったのか? 最近まで、Martin Wolf Barry Eichengreenは、危機後において、右派のイデオロギーが支配的であったことを挙げた。

今、Paul Krugmanは異なる説明を示す。それは、世界の所得上位の0.01%3万人(その半分はアメリカに住む)が経済政策を自分たちに有利なものに変えたからだ、ということだ。超富裕層は失業を無視し、政府債務の増大を嫌って、財政緊縮策を求めた。

しかし、この説明は、超富裕層が自分たちの富を増やす政策を求める政治的な方法がないことを無視している。むしろ、超低金利が危機を緩和し、不況が終わったような錯覚を与えた。また、党派に分断された政治が、政府に十分な不況対策を採れなくしていた。2009年から、オバマ政権になっても、大恐慌を抜け出す公共投資の重要性は無視され、緊縮策が続けられた。

異なる政策を要求する声が存在しなかったことが重要である。1930年代なら、商工会議所や労働組合が、選挙を通じて、議員たちに積極的な支出を求めただろう。

FT July 10, 2019

Donald Trump’s boom will prove to be hot air

Martin Wolf

トランプ大統領の下で、アメリカ経済は好調さを取り戻した、とホワイトハウスのウェブサイトは書くが、冷静な評価が必要だ。

景気の上昇が最終局面に入っても、大型減税策は効果を発揮した、ということだろう。現在、失業率はさらに低下したが、インフレは起きていない。しかし、その成果は、財政赤字を増やしたことで、投資をそれほど増やしたわけではない。長期的な財政の健全さは失われた。ドナルド・トランプの主要政策とは、企業と株主に多くの利益をもたらす税制改革を、逆進的なケインズ主義により実現したことだ。

今や財政の健全さを求める政治家はおらず、右派のケインズ主義と左派のケインズ主義が対抗している。その長期的な結果はひどいものだが、どれほど先のことか、わからない。


 キム・ダロック大使の極秘メモ

The Guardian, Mon 8 Jul 2019

How can Kim Darroch represent Britain in Trump’s Washington now?

Simon Jenkins

The Guardian, Wed 10 Jul 2019

The Guardian view on Kim Darroch’s resignation: a grim portent

Editorial

FT July 10, 2019

Kim Darroch’s resignation shames Boris Johnson

Robert Shrimsley

FT July 10, 2019

The unexpected effectiveness of Donald Trump

Janan Ganesh

FT July 10, 2019

What Donald Trump’s ambassador would say about Britain

Roula Khalaf

駐米イギリス大使の極秘メモが漏えいした。水曜日、Sir Kim Darrochキム・ダロック大使は辞任すると発表した。

その国に関する率直な評価を述べることは大使の仕事である。もしキムが、トランプ政権のことを円滑に機能しており、戦略的な一貫性がある、と報告していたら、彼はもっと早く解任されていたはずだ。

ロンドンの政治家たちはツイッターやNYTを読むし、ボブ・ウッドワードの本も読んだだろう。キムの報告は、ショックではなく、その確認でしかない。しかし、漏えいは駐英アメリカ大使を驚かせた。ワシントンの気まぐれなボスをなだめる必要があった。

私が思ったのは、アメリカ大使がイギリス正解や首相に関して送ったメモのことだ。ほめているはずがない。

FT July 11, 2019

Donald Trump is on track to splinter the west

Edward Luce


 ブレトンウッズ会議の75周年

FT July 8, 2019

The US must avoid igniting a currency war

FT July 10, 2019

Martin Wolf on Bretton Woods at 75: global co-operation under threat

Martin Wolf in London

「われわれは国益を守る最も賢明で最も効果的な方法が国際協力であるということを認識した。言い換えれば、それは共通の目標を達成するために団結するということだ。」

これはアメリカのモーゲンソーHenry Morgenthau Jr財務長官が、1944722日に、ブレトンウッズ会議の閉会の辞で述べたものだ。

「われわれは、われわれの製品を作り、われわれの会社を盗み、われわれの仕事を破壊する他国の破壊行為から、国境を保護しなければならない。保護が偉大な繁栄と力をもたらす。」

これはドナルド・トランプが、2017120日の就任の辞で述べたことである。

ブレトンウッズ会議は、ニューハンプシャーで、まだ第2次世界大戦が終わっていないとき、194471日から22日に開催された。西側の大国は、特にアメリカは、将来のよりよい世界に向けて、事態を異なるやり方で組織しようと考えていた。

ブレトンウッズの精神が数十年後に世界を形成したのか、失敗したのか、考える機会である。それは、戦間期の国際連盟に似ている。50のエッセーを集めたRevitalising the Spirit of Bretton Woodsは、この課題に取り組んでいる。

Paul Volcker, former chairman of the US Federal Reserve ・・・ブレトンウッズの精神とは、「国際協力における共通の利益を信じ、為替レートに応じた良い行動とは何か基本ルールを信じ、多方面で「新興」諸国の発展の必要を信じること」。

世界の1人当たり所得は、人口が3倍になったために、約4倍になった。1950-2017年に、世界貿易は39倍になった。12ドル以下で生活する貧困人口は、1950年の75%から、2015年には10%に減少した。

それはすべてが円滑に進んだことを意味しない。調整可能な釘づけの為替レート体制は1971年に崩壊し、ドルと金との交換はニクソン政権において破棄された。1970年代はインフレが高進したが、大きなコストを支払って、1980年代に沈静化された。銀行や債券市場の自由化が進み、2007-2013年、世界金融危機とユーロ危機が起きた。

ドル高と日本の成功によって1980年代に保護主義が高まったが、無差別な貿易システムも次第に優遇(差別化)通商協定を増やした。

国際協調の制度化は、その焦点を、アメリカの支配から、中国の超大国への前進に移した。ナショナリズムや保護主義が広まり、アメリカが「アメリカ・ファースト」を唱えるトランプ政権になって、西側の内部に基本的な脅威がある時代となった。高所得国における脱工業化、不平等の拡大、生産性上昇の減速、予期せぬ金融危機のショック、などが政治変化と連動している。

気候変動、技術革新、特にデータの国境を越えるフロー、さらに、汚職、破綻国家、移民・難民など、協調的なグローバル経済秩序はどのように維持できるのか? ドルへの依存には問題がある。しかし、ユーロや人民元はその代わりにならない。「持続的開発目標」の達成に必要な投資は、どこから来るのか?

既存の国際制度は改革しなければならないが、ナショナリズムが強まっている。国家は島ではない。75年前よりも、グローバルな協力が重要になっている。

「リアリスト」たちは国際協力をパイプ・ドリームだと言う。確かに、かつてアメリカが築いたような階層的秩序を築く超大国はもはやない。

Keyu Jin of the London School of Economics, one of only two Chinese contributors ・・・中国人として参加した2人のエコノミストがいる。その1人のKeyu Jinによれば、中国が目指すのは、伝統的な覇権国家ではなく、「グローバル・ネットワーク・リーダー」である。中心にある問題とは、他国が従う覇権国家なしに、この複雑で、相互依存した、環境に負荷のかかる世界に、秩序を与え、協力させる方法を見つけることである。

モーゲンソーは正しかった。トランプは間違っている。たとえ実現は困難でも、真理は単純だ。


 世界炭素銀行

PS Jul 8, 2019

The Case for a World Carbon Bank

KENNETH ROGOFF

たとえ大統領が否定しても、気候変動のコストは避けられない。それを回避するのに必要な投資額は莫大だ。二酸化炭素の排出を抑えるため、石炭に代えて、天然ガスや再生可能エネルギーへの転換を助け、発展途上国の温暖化によるコストを抑え、特に、これから最も多くの温暖化ガスを排出するアジアを参加させるため、世界炭素銀行を設立するべきだ。


 ローマとミラノ

NYT July 8, 2019

As Rome Falters, Milan Rises

By Beppe Severgnini


 中東和平

FP JULY 8, 2019

Wedge Politics Won’t Bring Israeli-Palestinian Peace

BY RONALD R. KREBS


 民主党の内紛

PS Jul 9, 2019

Could the Democrats Blow It?

ELIZABETH DREW


 億万長者と平和

FP JULY 9, 2019

Billionaires Can’t Buy World Peace

BY JAMES TRAUB


 ポピュリズムの2つの説明

PS Jul 9, 2019

What’s Driving Populism?

DANI RODRIK

現代のポピュリズムの広がりを説明するのは、文化なのか、経済なのか? ドナルド・トランプの大統領当選、Brexitを支持した多数派、ヨーロッパ諸国に広がる右派ネイティビズムの諸政党。これらは保守的な価値とリベラルな価値との対立なのか? あるいは、経済的不安や不確かな生活、金融危機、緊縮策、グローバリゼーションの結果なのか?

権威主義的なポピュリズムの源が経済問題であれば、適当な対応策がある。経済的な不正義を解消し、包括的な成長モデルを実現することだ。政治において異なる意見があっても、民主主義を損なうことはない。しかし、文化や価値観における対立には、解決策がない。リベラルな民主主義は、その内部から、矛盾を深めて崩壊するかもしれない。

Pippa Norris and Ronald Inglehartの研究によれば、権威主義的ポピュリズムは長期的な世代にわたる価値観の変化によって生じた。より若い世代が豊かで、教育水準が高く、安定した職を得るにつれて、「脱物質主義的」な価値観を持つようになる。世俗主義的(宗教的でない)、個人の自律と多様さを重んじ、信仰、伝統的な家族、集団的な統一を軽視する。高齢の世代は疎外されるようになる。「自分の国でも異邦人である」と感じる。伝統主義者は少数派になるとしても、より多く投票し、政治的な意識が高い。

Will Wilkinsonによれば、都市化が文化・政治的な選別機能を強化する。都市化は、繁栄する、多文化的な、高密度の地域を創りだすが、そこではリベラルな価値が支配的である。同時にそれは、地方や、より小さな都市のセンターを、変化の後方へ置き去りにし、人々はますます社会的な保守主義に傾き、多様性を嫌うようになる。

この過程はそれ自体で強め合う。大都市の成功は都市の価値観を強化し、遅れた地域から自ら望んで都市へ移住する人々は、一層の分極化を進める。ヨーロッパでも、アメリカでも、同質的で、社会的に保守的な地域が、ネイティビズムのポピュリストたちを支持している。

多くの研究が、ポピュリストの政治的支持と経済ショックとの結びつきを示している。David Autor, David Dorn, Gordon Hanson, and Kaveh Majlesiによれば、2016年の大統領選挙でトランプを支持した地域は、中国からの輸入が増大した地域であった。イギリスのBrexitやヨーロッパの極右ナショナリスト政党への支持も、中国製品の浸透と関係している。

文化的要因と経済的ショックの対立する説明は、よく見れば、ある種の収束を示すものだ。なぜなら文化的な趨勢の変化で、ポピュリストたちの政治的反動を説明することはできないから。それは長期的な性格の問題だ。しかし、中国貿易のショックといった経済的要因は、真空の中で起きるわけではない。社会・文化的な分断が進む状況で生じている。

文化的な要因に対する解決策は明らかでなくとも、不平等や不確実さに対する経済的な解決策は必要であり、間違いなく重要である。

NYT July 9, 2019

Who Is a Bigger Threat to His Democracy: Bibi or Trump?

By Thomas L. Friedman


 スーダンの弾圧

FP JULY 9, 2019

How Darfur Became Sudan’s Kingmaker

BY JÉRÔME TUBIANA

YaleGlobal, Tuesday, July 9, 2019

Two Opposing Middle East Alliances for the US

Dilip Hiro


 G20

PS Jul 10, 2019

Does the G20 Still Matter?

JIM O'NEILL


 ベネズエラ

PS Jul 10, 2019

How to Address Venezuela’s Crushing Debt Burden

RICARDO HAUSMANN , ALEJANDRO GRISANTI, JOSÉ IGNACIO HERNÁNDEZ


 メキシコ

FP JULY 10, 2019

Government Rift Deepens Mexico’s Economic Crisis

BY KEITH JOHNSON


 多国籍企業への世界課税

FT July 11, 2019

A rare chance to fix the global corporate tax system

José Antonio Ocampo

フランスは、次のG7を主催することで、「規制のある、より公平で、より平等なグローバリゼーションを通じて、不平等の問題と闘う」特別な機会を得た、と1月に発表した。

来週、フランスのChantillyに集まる財務大臣たちは、ついに国際課税体系の全面的な見直しを行い、多国籍企業に公平な負担を支払わせ、政府がより大きな財源を得るようにするだろう。

多国籍企業は支店間で利潤を移転し、税額を最小化している。たとえば、高税率の国にある企業は、知的財産を低税率(もしくは無税)の国に移動させる。このような手法は、デジタル企業やデジタル取引にとって、さらに容易になっている。Gabriel Zucmanの推定によれば、多国籍企業の海外における利潤の40%はタックス・ヘイブンに移転されている。

大衆的な怒り、インドのような世界秩序に挑戦する大国からの要求は、国際税制を改革するか、もしくは、一方的に各国の法律を変えるか、を迫っている。

国際法人税改革に向けた独立委員会The Independent Commission for the Reform of International Corporate Taxation(私が議長である)は、客観的要素(売上、雇用、資源、デジタル・ユーザーなど)に基づく、多国籍企業の利潤に関するグローバルな税の分配方式を推奨している。それは、多国籍企業による雇用が大きなシェアを示す発展途上諸国に有利な、雇用を含む方式である。

委員会は、ドイツとフランスも支持する、最低法人税率を提案している。タックス・ヘイブンにある多国籍企業の利潤は、このグローバルな最低税率に従って、本国で課税されるだろう。したがって、税の引き下げ競争(底辺への競争)を防ぐことができる。最低法人税率に合意する諸国は税の優遇策を失うが、法人税による税収を得られるだろう。これは多国籍企業の豊かな本国にとっても利益である。

国家内、そして、国家間の不平等には是正策が必要だ。諸政府は、この機会を逃してはならない。

FT July 12, 2019

France leads the way on taxing tech more fairly


 シリア内戦の終わり

FP JULY 11, 2019

Assad Hasn’t Won Anything

BY CHARLES LISTER

******************************** 

The Economist June 29th 2019

How to contain Iran

Financial Services: Can the City survive Brexit?

America and Iran: The narrowing gyre

Chaguan: What next for Hong Kong?

Gambia: Parade of horrors

Charlemagne: Back to the barricades

Financial centres after Brexit: City under siege

Mini-BOTs: Funny money

Financial crime: Cracking the shells

(コメント) アメリカとイランの対立も、BrexitによるCityの危機も、香港民主化デモと北京も、時代の重要な転換点です。

しかし、面白いな、と思うのは、EU政治の考察です。移民・難民危機に変わって、気候変動がヨーロッパ政治を翻弄し始めています。記事は、移民・難民危機の教訓から、環境問題を「文化戦争」にしてはいけない、と考えます。環境規制に反対する者を説得するとき、彼らを偏見や無知によって非難し、愚弄するのではなく、気候変動対策による経済的影響を十分に考慮し、困難を強いられる地方に対する十分な補償や対策に投資しなければなりません。

こうした手間のかかる政治を否定して、ポピュリズムによって権力を得た者は通貨や金融、バブルに頼ることを考えるかもしれません。

****************************** 

IPEの想像力 7/15/19

大阪の実家で母と晩ごはんを食べ、テレビの前に座ると、この町の参議院候補者たちが並ぶ選挙委員会の広報がありました。

これは、なんとも不思議な景観です。定員4人に対して12人が並びます。・・・日本維新の会・東とおる・・・幸福実現党・数森けいご・・・立憲民主党・かめいし倫子・・・オリーブの木・あだちみちよ・・・NHKから国民を守る党・尾崎全紀・・・日本維新の会・梅村みずほ・・・自民党・太田房江・・・安楽死制度を考える会・浜田たけし・・・日本共産党・たつみコータロー・・・国民民主党・にしゃんた・・・労働者党・佐々木一郎・・・公明党・杉たけひさ

比例代表選挙と複数の定員がある選挙区選挙、というシステムの性格から、こうした多数の候補者、思いもよらない不思議な(?)政党が現れるのでしょう。これは欧州議会選挙に似ているのでは、と思いました。インターネットやSNSの利用、現状に対する批判票・浮動票、話題性、など、ドナルド・トランプやイギリス独立党UKIPそしてBREXIT党に似た政治現象を感じました。

欧州議会選挙が、もしかしたら、積極的な政治の構造変化を促し、既存政党を解体して、社会の不満を吸収し、新しい要求を反映する積極的な動きであった、という意味で、この候補者乱戦の投票結果を、研究者たちはくわしく分析してほしいです。

****

しかし、そうであれば、どうしてないのか、と思いました。「70歳以上の老人のためのベーシック・インカムBI」を求める政党です。

老人のためのBIは、医療費・社会保障費・社会インフラ維持費用の削減に役立つように設計できると思います。老人たちは、資産、田畑や住宅を、子供たちに相続させ、あるいは、自治体に寄付します。老人たちは、望むなら、町や村の医療・社会福祉センターの近隣に住むことができます。安価な地区の住宅をリフォームして、共同で暮らしやすくするだけでなく、各地のケア・マネージャーたちが助けます。オレオレ詐欺をなくし、都市の縮減や開発計画にも役立つでしょう。

また、デフレや失業を解消するために、老人たちへの給付を通じて、日銀・政府はQE(量的緩和)をおこなうべきです。それは時限制の購買力として給付し、効果的に有効需要を増やすヘリコプター・マネーになります。

日本において、グローバルなメガロポリス、東京圏だけが繁栄する成長モデルは、地方の衰退を広め、所得格差を拡大しています。都市における非正規の労働者が不安定な暮らしを続けることも、外国人労働者が厳しい条件で搾取されることも、不当だと思います。地方における農業や酪農を振興するために、こうした外国人や若い家族を招くことはできないでしょうか。なぜなら、そのことが都市の労働条件も改善するからです。

都市でも地方でも、さまざまな分野でハイテク基地を集積することは、将来の成長分野を開拓するうえで重要でしょう。インターネットや物流を整備した地方に、外国企業・労働者の参加を促す。科学者や研究者、エンジニアの、家族での移住を奨励します。そのための社会インフラ(日本語教育・子供のケア・就労のあっせん・医療や年金)を整備し、住民とのコミュニケーション、ネットワークを支援します。もちろん、彼らも日本で長く(30?)暮らせば、老人たちのベーシック・インカムに参加します。

アベノミクスや、株価・金融資産を膨張させたQEに代わって、持続可能な社会への転換に向けた長期の投資・融資が重要でしょう。福島原発事故とその終わりの見えない廃炉作業、沖縄の米軍基地問題と辺野古の埋め立て、こうした問題で国民の貯蓄を費やすより、アメリカでも主張されているような、グリーン・ニュー・ディールを期待します。

グリーン・ボンドを発行し、国境を越えてグリーン・ファンド、農村開発銀行を設立するのです。

****

中井精也の「てつたび ベトナム縦断2000キロ」を観ました。成長に向けて希望を持って働けるとき、社会は一人一人の輝きを増す、と思います。

参議院選挙のごった煮が、エネルギーあふれる政治家を育て、面白い議論や、地方によって異なる活性化の試みに刺激を与えるとき、政党の名前や政治の姿もすっかり変わっているのでしょう。社会のビジョン、政策の中身について、多くの小さな討論会を有権者が組織してほしいです。

******************************