IPEの果樹園2019

今週のReview

7/15-20

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アメリカは貿易戦争に勝てない ・・・ギリシャにおけるシリザの敗北 ・・・香港民主化デモ、北京、台湾 ・・・ECB総裁とEUとのユーロ圏改革 ・・・アメリカ経済の評価と運営 ・・・ブレトンウッズ会議の75周年 ・・・ポピュリズムの2つの説明 ・・・多国籍企業への世界課税

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 アメリカは貿易戦争に勝てない

NYT July 4, 2019

Trump Is Losing His Trade Wars

By Paul Krugman

ドナルド・トランプの発言、「貿易戦争は良いことだ、簡単に勝てる」というのは、歴史の教科書に載るだろう。良い意味ではなく。それはディック・チェイニーの予言、「われわれは、実際、解放者として歓迎されるだろう」に並ぶ顕著な例だ。重要な政策が、しばしば、傲慢さと無知によって決まる、ということを示している。

現実に、トランプは貿易戦争に勝利しつつあるのではない。確かに、彼の関税は中国を傷つけ、他の諸外国も傷つけた。しかし、関税はアメリカ経済も傷つけた。

貿易戦争とは何か? エコノミストも歴史家も、国内政治的な理由である国が関税を課すとき、それを貿易戦争とは呼ばない。アメリカも1930年代までしばしばそうした。「貿易戦争」というのは、関税の目的が強制であること、他国に苦痛を与えて、その政策をわれわれの気に入るものに変えさせることをいう。

G20でトランプは、中国との貿易戦争を休止することに合意した。あいまいな相互の譲歩と交換に、新しい関税を課すことはやめた。

なぜトランプはその意志を押し付けないのか? 3つの理由があると思う。

1に、簡単に貿易戦争に勝てる、と思うのは、破滅的なイラク戦争に突き進んだのと同じ、独我論である。独自の文化や歴史、アイデンティティーを持ち、独立を誇りとし、外国の嫌がらせに屈服すると感じるような譲歩を強く嫌うのは、われわれだけではない。それがわかっていないのだ。

特に、ほかでもない、中国が屈辱的な降参を意味する取引に応じる、と思うのは、正気じゃない。

2に、トランプの考える「関税を武器にする権力者」は過去のイメージだ。彼らはマッキンリーの政策を懐かしそうに語る。しかし、単純な問いを答えてみるべきだ。「それらの製品はどこで作られたのか?」

現代ではどのような製品でも、多くの国境を越えるグローバル・バリュー・チェーンの生産物である。もし中国で組み立てられた製品に関税を課せば、その効果は韓国や日本からの部品に及び、組み立て工場はアメリカではなく、ベトナムなど、他のアジア諸国に移転されるだろう。

最後に、トランプの貿易戦争は支持されない。彼の支持率も下がるだろう。そえれゆえ彼は、関税に対する報復に弱くなる。

これはどのように終わるのか? 貿易戦争は決して明確な勝者を持たず、しばしば、世界経済に長期的な傷を負わせる。1964年に、アメリカは冷凍のチキンをヨーロッパに買わせるため、軽い関税を課した。しかし、55年経ってもそのままだ。

トランプの貿易戦争ははるかに大規模だ。しかし結果は同じだろう。いくつかの些末な譲歩を得て、トランプは大勝利だと叫ぶが、皆が貧しくなるだけだ。そして、アメリカの信用はすでに大幅に損なわれ、国際的な法の支配は弱まった。


 ギリシャにおけるシリザの敗北

The Guardian, Fri 5 Jul 2019

Syriza betrayed its principles – and the Greek people. Its days are numbered

Alexander Kazamias

20151月、進歩的な世界は、EUが押し付ける緊縮策に拒否するSyrizaシリザの総選挙における勝利と、ギリシャの新しい時代を称えた。4年を経て、Alexis Tsiprasチプラスのかつてのラディカルな政党は、日曜日、死者のように投票所に向かう。シリザは今や、左派、社会民主主義者、保守派、右派ポピュリストのごった煮である。右派ポピュリストたちは、かつてシリザが反対した、ユーロ圏を崩壊に導くネオリベラルな政策を擁護している。

右派の新民主主義党との最大の違いは、左翼政党である、と主張することだが、ばかばかしい。政府は一貫して、トロイカ(欧州委員会、ECBIMF)のネオリベラルな改革実現に多大の情熱を注いだ。

シリザが支配した4年間は、アイデンティティーの喪失、信頼を失い続けるものだった。政権にあるシリザは、妥協と後退に満ちており、政治的な方向性は靄に包まれ、形も中身も失った旧左派の亡霊になった。

その多くが2015年夏、多くの条件が付いたトロイカの救済融資をチプラスが受け入れる、という大逆転にさかのぼる。そこには2060年までの緊縮策、2114年までの民営化による国際基金の積み立て、が含まれている。その中身に加えて、シリザの詐欺的な手法が、ギリシャの進歩派勢力に深刻な政治的・文化的悪夢を生じた。欧州議会選挙で、投票所の出口調査は示していた。「約束を破ったシリザを罰したい。」

チプラスはトロイカのネオリベラルな改革を称賛し始めた。安価な融資、財政の健全性、回復へ進む道を得た、と。かつて「ギリシャ経済を絞首刑にする」と非難していた3.5%の予算黒字目標を超過しない、とチプラスは誇った。

チプラスにはギリシャの改革を進める知的な関心も政治的原則もなかったのだ。その経過が日曜日の選挙における敗北につながっている。彼はポピュリストではなく、機会主義者である。チプラスが親交を深めるのは、ドナルド・トランプ、ベンヤミン・ネタニヤフ、そしてサウジアラビアだ。

FT July 8, 2019

Kyriakos Mitsotakis has long road ahead to complete Greek revival

Ben Hall, Europe Editor

日曜日の総選挙によって、ビジネスに好意的な中道右派のKyriakos Mitsotakisミツォタキスが政権を握ることになった。新民主主義党(ND)は議会の絶対多数も得た。ミツォタキスは、投資を刺激し、経済にアニマル・スピリッツをあふれさせるため、減税、国有資産の売却、官僚制の削減ができるだろう。

金融市場は興奮している。株価は大きく上昇し、債券利回りは下落した。しかし、ミツォタキスが既得権層を、自分の政党も含めて、黙らせ、経済に本当の競争圧力を導入し、国家を近代化するのか、というのは別問題だ。

ちょうど4年前、国際債権団と対立して、チプラスがもっと良い条件を求めて失敗したとき、ギリシャは奈落の底へ落ちた。資本規制が導入され、ビジネスの信頼は粉砕された。ギリシャ国民はチプラスの無謀な試みで、さらに苦しい緊縮計画を味わった。

チプラスは緊縮策を破棄するという約束を守れなかったが、数か月後の選挙で再選され、穏健化した。プライマリー・バランスでGDP3.5%の黒字を出す約束に縛られた。いくつかの重要な改革を進め、経済が安定化して投資も回復していた。ギリシャは昨年、第3次救済計画から脱した。チプラスはEU諸国から信用されるようになった。北マケドニアの名称をめぐる紛争は、EUNATOによるバルカン諸国の安定化に資する形で合意し、チプラスの政治家としての信望を高めた。

ギリシャ経済の回復には、まだ多くの問題がある。銀行の不良債権。GDP183%に達する公的債務。より多くの投資と、市場改革を必要としている。マッキンゼーのコンサルタントであったミツォタキスがリベラルな近代化論者であっても、ギリシャ政府がユーロ圏の信頼を得る保証にはならない。

チプラスは権力を得て穏健化したが、今、野党となって解放された。選挙で32%の支持を得た左派の野党は、ヨーロッパに多くない。

The Guardian, Mon 8 Jul 2019

The three mistakes behind Syriza’s demise in Greece

David Adler

20151月、チプラスAlexis Tspirasはラディカル左派の猛烈な指導者として政権を執った。彼はギリシャの寡頭制に戦いを挑み、EUのテクノクラートに抵抗し、世界中の投資家たちに恐怖を与えた。

しかし、その後の4年間に、彼は、闘うと言っていたエスタブリッシュメントに、自分の魅力を売り込んだ。旧寡占家族を守り、新しい寡占的支配層を生み出した。ドイツのショイブレ財務相が「弱者に負担させる」ことを責めたほど、野蛮な緊縮策を採った。わずかな税金しかとらない、ゴールデン・ビザを与えると約束して、国際投資家たちに服従した。

チプラスの変身は予想されたことだ。右派の批評家は、冷徹な現実に直面してラディカルな政治が生み出した当然の副産物だ、という。シリザの闘う姿勢を、チプラスは単に卒業した、と。他方左派の批評家は、それをEUの反民主的な構造が不可避的にもたらす結果だ、という。トロイカと戦っても勝ち目はなく、シリザの夢は最初から死んでいた。

しかし、こうした見方は、チプラスが首相として担ったもの、その政治的な究極目標に挑んだ意欲を、過小評価している。

まさに、彼が首相となった状況は容易なものではなかった。グローバル資本主義の課す制約は、さらに困難であった。船舶を所有する寡占家族を激しく攻撃すれば、彼らは単にこの国を捨てるぞ、と彼は警告された。われわれは彼が首相として味わった苦しみに共感するだろう。

しかし、何一つ、宿命ではなかった。寡占家族が国を捨てるのか、彼らの資産を差し押さえるのか。莫大な土地と資産を、ExxonMobilのような、大企業のオークションに委ねるのか。ギリシャの難民キャンプにおける過密状態、性暴力、「医師、薬、食料、飲み水」の不足をどうするのか。サウジアラビアのMohammed bin Salmanに武器を売るか、ネタニヤフに支援の笑顔を振りまくか、ドナルド・トランプから戦闘機を買うか。

つまり、チプラスはトロイカの囚人ではなかったし、そのラディカルな理想をむき出しのリアリズムに替えたわけではなかった。彼はむしろ積極的に右派政権として、自身の政府を世界に売り込んだ。

それはシリザの支持者の多くにとって、耐え難い裏切りだった。シリザの歴史的な支持基盤である若者たちは、シリザから新民主主義党の支持に変わった。年金生活者のさらに多くが支持から反対に変わった。

シリザの衰退には、政策、政党、政治理念に関して、3つの教訓があると思う。

1.反対派に迎合しなかった。左派の戦闘的姿勢を失わなかった。反対派は攻撃しやすかった。

2.運動の希望を継承する、次の政治家たちを育てなかった。チプラスだけが複雑な革新派の統一を担うシンボルとなり、彼の不安定な政治的方針、その転換に従うしかなかった。政治は社会運動の一部であり、その原則を示し、従うべきだった。

3.シリザは有権者に劇的な転換を訴え、「希望が実現する」と約束し続けた。それは支持者たちの失望につながり、不正義や裏切りを責められた。

NYT July 8, 2019

Greece Is the Good News Story in Europe

By Roger Cohen

もしヨーロッパで楽観する話を探すなら、ギリシャを試すべきだ。・・・そう、ギリシャだ。

日曜日の選挙で勝利したMitsotakisミツォタキスと新民主主義党は、チプラスと左派政権の時代を終わらせた。かつて議会の第3党になったネオナチの政党Golden Dawnは議席を失った。民主主義の崩壊を予測した報告は誇張であった。

ハーヴァード大学とスタンフォード大学で学び、マッキンゼーにいたミツォタキスは、ギリシャの名望家出身である。「アメリカ的過ぎる」、「官僚的過ぎる」という批判を乗り越えた。

選挙戦では、法人税の引き下げ、民営化、デジタル経済への転換、投資を引き寄せ、政府部門を効率化する、と約束した。それは簡単ではないだろう。ギリシャの予算は今もドイツなどの債券諸国から制約を受ける。クローニズムの遺産を排し、起業家精神と革新を優先する。

ギリシャの反アメリカ主義は克服された。緊縮策を強いたドイツが、アメリカに代わって憎まれ役だ。トルコとの新しい緊張関係は、ギリシャ人にアメリカの支持を得ることの重要さを気づかせた。トルコとその支援するキプロス領政府が、東地中海の海底油田開発で、ミツォタキス政府の交渉を要する。それは彼の信じる大西洋同盟を試すだろう。

ギリシャは、EUの中で新しい時代に入る。他方、イギリスはEUを離脱するのか。

FT July 9, 2019

New Greek government vows to get economy moving after election win

Kerin Hope in Athens

FP JULY 8, 2019

Greece’s New Prime Minister Is Just as Populist as the Old One

BY YIANNIS BABOULIAS

Kyriakos Mitsotakisと新民主主義党NDの勝利は明白だが、ポピュリズムを乗り越えることはむつかしい。勝利の宣言で、彼は「すべてのギリシャ人のための首相になる」と述べた。「われわれを支持しなかった市民たちにも信じてもらえるように。」

しかしNDは、ギリシャの財政破綻と危機の始まりに責任がある政治集団であることを忘れてはならない。もし高成長と低税率を実現することができれば、ギリシャ政治を長期に動かす勢力になるだろう。しかし、緊縮策を続けて、野党を攻撃するだけなら、その任期を終えることもむつかしい。

The Guardian, Tue 9 Jul 2019

Syriza is down but not out. Now it must fight Greece’s march to the right

Marina Prentoulis

FT July 10, 2019

Mitsotakis faces big hurdles to reform Greece


 イギリス保守党党首選挙

FT July 5, 2019

No-deal Brexit is a tripwire into economic chaos

Carolyn Fairbairn

次のUK首相はガルガンチュア的な課題に直面する。第2次世界大戦以来、これほどの変動はなかった。国家、経済の安全保障に重大な責任がある。

その中心にあるのはBrexitだ。しかし、Brexit論争にビジネス界は貢献できていない。

宿命論が支配的だ。もう疲れ果てた。誰もが飽きてしまった。合意なしで離脱すれば、それがすっきりするように見える。しかし、ビジネス界からのメッセージは、それが間違っている、というものだ。合意なしの離脱は、クリーンなものではない。UKにとってもEUにとっても、それでBrexitは終わらない。ビジネスにとって不確実さが消えるわけではない。

まったく逆だ。経済的混乱が深まって、その収拾には何年もかかる。イギリスもEUも傷つくのだ。その衝撃は、多年にわたり、4つの局面を経るだろう。

1局面はすでに経験している。昨年、4四半期連続で投資が減った。合意なし離脱のマイナス効果を恐れるからだ。

2局面は、離脱それ自体が生じる混乱だ。国境の検問が再開される。港には荷物が山積みされて、遅れが生じるだろう。倉庫は満杯になる。多くの生鮮食品はヨーロッパから来る。

3局面は、貿易の混乱を避けるためにEUとの交渉が長引くことだ。あまりにも多くのギャップや穴がある。多くの分野で非常時の計画は存在しない。輸送の免許も9カ月で切れる。

4局面は、最も深刻なものだが、イギリスの産業界が競争力を失うことだ。EU向けの輸出品は、新しい合意なしには、その90%に関税がかかる。2重の検査が求められ、広告から保険まで、サービス分野のプロバイダーは、イギリス経済の80%に及ぶが、市場アクセスを維持するためにヨーロッパに移転する。

保守党の指導者たちは、合意なしの離脱を議論するより、もっと新しい合意の形成を訴えるべきだ。

FT July 11, 2019

Will Boris Johnson’s bluster over a no-deal Brexit collide with reality?

George Parker, Sebastian Payne and James Blitz in London

FT July 12, 2019

Brexit means goodbye to Britain as we know it

Martin Wolf


 Libra批判と反論

FT July 5, 2019

Facebook fights back against Libra criticism

By: Jemima Kelly

FacebookDavid Marcusは、誤解に答えた。

「これはブロックチェーンなのか?」 ・・・最初の段階では、Libra協会の会員が取引をまとめる。個々人がブロックチェーンで取引する、確認できる、分散型のシステムではない。

「すべての者に金融アクセスを拡大することになるのか?」 ・・・お金がないから銀行口座を持てない人の問題はLibraにも解決できない。しかし、携帯電話はあっても、近くに銀行の支店がない、あるいは、銀行との取引を知られたくない、それらの人にはLibraが役に立つ。

「何のためにLibraを創るのか?」 ・・・すべての者に結びつく方法、コミュニケーションの容易さを提供するのが、Facebookの使命である。

FT July 8, 2019

Digital Cash: The Unknown History of the Anarchists, Utopians, and Technologists Who Created Cryptocurrency, by Finn Brunton

Review by Siddharth Venkataramakrishnan


 ドイチェ・バンク

FT July 5, 2019

Deutsche is having a Lehman moment in a roaring bull market

Tom Braithwaite

FT July 8, 2019

Deutsche Bank strategy on track at last

Patrick Jenkins


 中国の景気刺激策

FT July 5, 2019

It is rash to expect a rerun of past stock market booms in China

James Kynge

中国の投資家は景気が減速すると株価の上昇を期待する。なぜなら北京が大規模な刺激策で成長率を維持しなければならない、と考えるからだ。

しかし、今回はそうではないだろう。


 欧州委員会人事

SPIEGEL ONLINE 07/05/2019

The Road to Brussels

Does Von der Leyen Have a Chance as Commission President?

By Melanie Amann, Markus Becker, Matthias Gebauer, Konstantin von Hammerstein, Julia Amalia Heyer, Christoph Hickmann, Dietmar Hipp and Peter Müller

FT July 11, 2019

Europe is finding the political will it needs to act united

Isabelle Mateos y Lago


 米中貿易戦争

PS Jul 5, 2019

Toward a Euro-Pacific Partnership

ZAKI LAÏDI, SHUMPEI TAKEMORI, YVES TIBERGHIEN

ドナルド・トランプ大統領の時代に、自由で、開かれた貿易を肯定したG20大阪サミットは勝利であった。米中会談で貿易戦争は停戦に合意し、EUはベトナム、メルコスール諸国とFTAを結んだ。

通商・貿易関係が政治的な混乱で損なわれることを多くの国が懸念している。それは関税引き上げにとどまらず、グローバルな貿易規制に関する諸問題だ。投資保護、国有企業への補助金、知的財産、環境保護、政府契約、e-コマース、データ・フロー。the Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership (CPTPP) and the EU-Canada Comprehensive Economic and Trade Agreement (CETA)はそれを含んでいる。

リベラルな諸価値と制度を守るために、アジア太平洋諸国とヨーロッパがそれぞれ結ぶ通商連携協定を一体化することが重要だ。

PS Jul 8, 2019

Can Multilateralism Survive the Sino-American Rivalry?

NGAIRE WOODS

FT July 10, 2019

Economists share blame for China’s ‘monstrous’ turn

Janos Kornai

中国の指導者たちは自国を多極化した世界の大国の1つにしただけでは満足せず、地球の覇権国になろうとしている。

それは、もちろん、世界中に兵士を派遣することではない。支配する手段は国によって異なる。しかし、本当に怖いのは中国国内で起きていることだ。

かつて鄧小平は、資本主義と共産主義の対抗関係を問わなかった。「白い猫でも黒い猫でも、ネズミを捕るのが良い猫だ。」

しかし、現在の指導者、習近平は違う。古典的な共産主義のスタイル、スターリンの時代に戻ろうとしている。すべての重要な制度や企業には共産党委員会が創られている。ある分野では、この委員会が経営を握っている。それはソビエト革命時の共産主義者のコミッサリーを思い出させる。

誰でも汚職の罪で裁判所に呼ばれる。しかし、無実の者も呼ばれて、囚人たちは拷問される。再び、死刑が増えている。

インターネットを監視できるため、表現や出版の自由を政府は完全に弾圧しない。政治的議論は小グループで行われる。ネットワークは禁止されている。反対することのリスクは増えている。

こうした中国の変化は、19世紀の科学者を描いた小説家、シェリーの「フランケンシュタイン」とよく似ている。死体は電気ショックによってよみがえったが、それは殺人に向かう怪物だった。

われわれの多くは中国の拡大に抗議する責任を感じている。それどころか、われわれは中国が怪物になるのに手を貸してきた。私だけではない。中国の活動はすべての文化に及び、技術革新にも成功している。もはや関税によって拡大を止めることは不可能だろう。

1940年代にジョージ・ケナンがソ連の「封じ込め」を唱えたように、われわれは中国の拡大を阻止しなければならない。それには「封じ込め」以上のものが必要だ。


 香港民主化デモ、北京、台湾

NYT July 5, 2019

Hong Kong Is a Work in Progress

By Regina Ip

NYT July 7, 2019

The Extraordinary Power of Hong Kongers’ Solidarity

By Stéphanie Giry

FT July 8, 2019

Xi Jinping faces his moment of truth in Hong Kong

Gideon Rachman

中国に、民主主義という妖怪がさまよっている。香港の街に広がる大規模な抗議デモは、1989年の天安門事件以来、中国共産党に対する最大の挑戦である。

北京はデモが、2014年の雨傘革命と同じように、自然に消滅することを願っている。しかし、香港の庶民に至るまで、共産党一党支配体制の下に住みたくない、という本質的なジレンマは続くだろう。抵抗運動はいつでも再燃する。

香港に本当の意味での選挙を許せば、同様の運動が本土で起きる、という問題を生じる。香港の騒乱は、中国政府が慎重に広めてきたイメージ、最高の信頼と有能さ、を破壊した。

香港は150年以上も植民地として支配された特別な場所だ、という説明は、中国の他の土地と同じような弾圧を進める現実に合わない。新聞は事実を伝えられず、Joshua Wongのような民主化の活動家は本土への旅行を禁止されている。

北京の反応は、ナショナリズムへの刺激だ。「100年の恥辱」を教育されてきた世代が、香港を愛国心がない、外国の手先だ、と攻撃する。しかし、それは習近平の願望を否定することになる。習は、台湾を取り戻すことではなく、香港を失うことで記憶されるだろう。

それゆえ、香港政庁は一時的な戦術的譲歩を示した。しかし、一部のデモ隊は本当の民主的機関ではない立法院を占拠して破壊しようとした。北京は香港に議会を認めて、それが先例となること、独立を主張する政党が議会で多数を占めることを恐れている。

改革ではないとしたら、それは弾圧だ。しかし、その選択も危険である。大規模な逮捕、投獄は、殉死者を出し、さらなる抗議デモを呼ぶ。軍を展開すれば流血の鎮圧行動に至り、国際的非難、経済制裁、香港経済への将来の信頼は失われる。100万人を殺戮することは道義に反する。

北京は、ソ連を崩壊させたのはゴルバチョフの失策であった、と確信している。東ベルリンで反体制デモを観たゴルバチョフは、ソ連軍を動かすことを拒んだからだ。しかし、それは誤算ではなく、道義による選択であった。習近平も問われるだろう。

PS Jul 8, 2019

The Limits of Mass Protest in a Dictatorship

IAN BURUMA

香港のデモには指導者がいない。それは政党のような組織ではない。その有利な点を意識しているが、同時に多くの異なる意見がそのまま伝わり、暴力的な行動も起きる。1989年の天安門広場でも、経験ある活動家は政府による武力弾圧の危険を重視して、平和的な方法に転換するよう訴えた。

街頭デモだけで民主主義の政府を変える効果を持つことは困難だ。ベトナム反戦デモは大規模に続けられたが、その後も数年は戦争を止められなかった。2011年のウォール街選挙運動は、何ら効果的な改革を生まなかった。

民主主義の政府には、再選のために選挙民の意識を受け止める必要がある。しかし、独裁体制の下では、それは難しい。たとえガンディーでも、ヒトラーに対する非暴力のデモは無駄である。

香港の民衆にとって、何が有効な政治的手段なのか。もし小さなチャンスがあるとしたら、北京政府が国際的な威信を高めたいと願っていることだ。そして、香港が中国本土の民衆に支持されることだろう。暴力を抑えて、平和的な方法で抗議を続けることが、中国本土の人々の共感を得る。

FP JULY 10, 2019

Xi Jinping Is Tsai Ing-wen’s Best Poster Boy

BY HILTON YIP

香港の抗議デモは、台湾の大統領選挙に向けて、祭英文大統領の再選にプラスとなっている。祭は、中国との関係を悪化させた、と国民党に非難されてきた。カリスマ性を欠き、中国による脅しや外交的孤立によって、支持率は低下していた。

しかし、香港の民主化デモを支持する姿勢は一貫しており、国民党の候補者たちとは異なっている。中国の圧力に抗するため、アメリカとの関係を強化し、東南アジアや南アジアへの経済支援と連携を築く経済戦略を採っている。米中貿易戦争は、その意味でも、祭英文に有利である。


 メルケル後継者

FP JULY 5, 2019

Merkel’s Final Mistake Is Her Chosen Successor

BY PETER KURAS


(後半へ続く)