(前半から続く)
● デジタル通貨の時代
The
Guardian, Mon 1 Jul 2019
The
Guardian view on Facebook’s Libra: funny money
Editorial
FT July
1, 2019
Central
banks should issue digital currencies of their own
Jean-Pierre Landau
デジタル化は、通信、組織化、相互作用、移動、貿易を変えた。今や、貨幣を変えつつある。電子決済のできる携帯電話が、貨幣と同じように、契約なしに、安価に、簡便に、参加者同士で、国境を越えて利用できる。銀行口座を持たない生活が可能になり、銀行はなくても携帯電話が普及した世界で、金融の包摂が進む。
中国のTencent and Ant Financial、アメリカのFacebookと27社によるLibraなど、多くの企業がデジタル経済のシナジー効果を狙っている。
政府や中央銀行にとって、デジタル貨幣は多くの新しい課題を示している。1.交換手段として物理的な貨幣が消滅しつつある。銀行の信用は口座から現金を引き出せることだった。しかしキャッシュレス社会では市民が国家貨幣を求めない。預金と、金融の安定性は、別物だ。
2.金融システムが細分化していく。ネットワークやプラットフォームの経済ロジックは、利用者の最大化、そして、閉鎖システムへの進化である。彼らは「デジタル通貨圏」を創るだろう。
3.国境を越えるデジタル通貨が、通貨間競争を激化させる。自国通貨の国際化に利用する国もあるが、「デジタル・ドル化」として、自国経済を外国通貨に侵略される国もある。こくさいつうか・金融システムが激変する可能性がある。
主権国家には様々な権力がある。法貨を受領させ、納税の義務を課し、現金を受け入れさせ、発行主体を登録させる。技術革新で現金が消滅するなら、中央銀行はデジタル貨幣(CBDC:Central Bank Digital
Currency)を発行するべきだ。
CBDCが金融政策や金融の安定性に持つ意味を検討しなければならない。政策の効果が、マイナス金利も含めて、改善されるだろう。しかし、銀行の取り付けが起きやすくなる。われわれの社会の民間と公共とのバランスが問い直される。
デジタル・ドル化を抑えるには、デジタル通貨をできる限り現金と同じように機能させるべきだ。それは銀行預金に代替するのではなく、それを補完する。
PS Jul
1, 2019
The
Coming Libra Panics
STEPHEN GRENVILLE
利用者のデータやプライバシーに関するFacebookの悪評を考えるなら、Libraに関する批判が多いのは当然だろう。しかし、Libraは、既存のApple Pay,
PayPal, WeChatなどと違って、既存の銀行システムに依拠しない、デジタル世界通貨を発行する、という計画だ。
「われわれはテキスト・メッセージと同じように簡単に通貨を送る」とFacebookの幹部は語った。Libraは、安定した主要通貨のバスケットにリンクした民間通貨なのか?
もしアルゼンチンの人々が、ペソから安定した通貨バスケットに、スマホのワン・タッチで転換できるとしたら、国内経済で問題の最初の兆候を見るや、安全な資産に殺到するのではないか? 「効率的市場」の信奉者たちは、完全な市場では、そのような移動は自動的に是正される、とわれわれが信じるように宣伝した。ペソの減価は、小さな差でもアービトレージャーの利益になるからだ。
残念だが、現実の市場は、そうではない。国内のパニックの衝撃は、預金保険もない国際資本移動を襲い、銀行取付と同じロジックが働く。もし銀行が破産すれば、あなたはすべてを失う。パニックは、自己実現的な予言になる。ペソの減価は、大幅な暴落に向かう。
現代政界では、そのような大規模な通貨間資本移動はまれである。それは資金を動かす取引コストが大きいからだ。コストの低い、規制のない方法があれば、何が起きるのか? アルゼンチンのような、通貨価値下落の長い歴史を持つ、しかも、変動レート制を採る中規模国は、資本逃避に極めて脆弱である。
価格メカニズムの利益を最大化するのだろうか? むしろ、非効率な市場から資金が大量に流出することを防ぐべきだろう。取引費用を高め、資金洗浄を厳しく規制し、国際通貨の取り付けを抑える十分な砂を撒くべきだ。50年前に、James Tobinが主張したように。
トービン税は、プライバシーや金融安定性に対処するものではないが、単位委の投機的な移動を抑え、直接投資のような、もっと有益な取引を促す。
PS Jul
2, 2019
Thumbs
Down to Facebook’s Cryptocurrency
JOSEPH E. STIGLITZ
伝統的な通貨は、これまで価値が不安定で、インフレを起こし、価値の保蔵に適さなかった。しかし今、ドル、ユーロ、円、人民元はとても安定しており、心配するとしたら、インフレではなく、デフレである。金融部門の透明性も改善された。資金洗浄など、犯罪行為に利用されないことだ。
既存の通貨や銀行システムで、本当に問題なのは、競争の欠如、金融取引を管理する企業の規制、である。アメリカの消費者たちは、Visa, Mastercard, American Express、銀行に対して、毎年、何十億ドルもレント(年貢)を支払っている。デビットカード、クレジットカードの過剰な手数料を規制する必要がある。競争を制限する契約を、オーストラリアは規制して、成功している。
われわれが問うべきなのは、Facebookのビジネス・モデルだ。彼らは、競争が利潤をゼロに近づける、とは信じていない。そのマーケットにおける支配力と政治的権力に自信を持っている。
新しいLibraの価値は、諸通貨のグローバルなバスケットで保証され、100%準備される、としよう。おそらく、国債のミックスだ。この場合、収益を生み出す源泉が存在する。利子を支払わない「預金」、すなわち、Libraに交換した伝統的な通貨である。なぜ、人々はFacebookに利子もつかない資金を与えるのか? 資産の価格変動はどう反映するのか? 税金は? 犯罪行為の取り締まりはなされない? それでも「ハイテク」通貨だから安心するのか?
もし、これがLibraのビジネス・モデルなら、政府はすぐに禁止すべきだ。少なくとも、他の金融部門と同じ透明性規制に従う必要がある。しかし、その場合、Libraは暗号通貨でなくなる。
Facebookは、これまでのように、Libraをデータ・マイニングに利用して儲けるだろう。マーケットを支配し、利潤を上げ、セキュリティーやプライバシーを損なう。銀行部門を得るには不可能な不信感をFacebookはすでに築いてしまった。自分の金融資産をFacebookに委ねるのは、愚か者である。
そこが問題だ。24億人もFacebookを利用しているのだから。Facebookは、どれほど多くのカモがいるか、知っている。
FT July
3, 2019
Germany
shows Facebook might be on to something with Libra
Martin Arnold in London
VOX 03
July 2019
Digital
currency areas
Markus K Brunnermeier, Harold James,
Jean-Pierre Landau
デジタル化は、社会、経済、情報の結びつきを根本的に変化させた。貨幣と支払システムにも革命が起きる。その結果、1961年に、ロバート・A・マンデルが示した「通貨圏」の障壁も崩壊するだろう。
●定義: われわれはデジタル通貨圏(DCA)を、支払いと契約がデジタルに行われ、(そのネットワークに特化した)デジタル通貨が使用されるネットワーク、と定義する。
そのようなネットワークでは、公式に人工貨幣を利用するが、ネットワーク外での契約や支払には利用できない。今や、中国でTencent
や Ant Financialが典型的なように、数億人の利用者がそのようなネットワークにおいて、相互に結びつくことなく、展開している。
ネットワークは独自の計算単位を、政府貨幣とは別に利用する。たとえば、Facebookが最近発表したLibraの計画だ。
●OCA概念との類似点・相違点: 最適通貨圏(OCA)は、地理的な近接性と、調整手段としての為替レートの変更、によって示される。それは共通のマクロ経済的ショックと、十分な要素の移動性を求めている。
他方、DCAはデジタルな結びつきである。ネットワーク内で、価格の透明性は高く、価格は容易に決まり、他の支払い手段に転換することはないし、ときには、技術的に不可能である。
DCAとOCAの類似点は、どちらも取引コストを減らし、交換の摩擦を減らすことだ。
●DCAの誕生と持続性
●デジタル化と国際通貨制度: デジタルなネットワークは多くの国民経済の規模を超える。将来の国際通貨制度はDCAに依拠するだろう。
●新しい通貨間競争: デジタル通貨が内外で急速に受領されれば、しかも、ネットワーク間のスイッチが容易であれば、通貨間競争が促される。デジタル通貨間競争は、ハイエクが考えたようなマクロ経済パフォーマンス(インフレ)ではなく、多くの基準で行われる。特に重要な点は、プライバシーだ。
金融アーキテクチュアは安定的でなくなるが、人々は異なるいくつかのDCAに同時に所属するだろう。追加の情報を社会的な結びつきが、DCAの結束度を高める。交換手段として、「勝者総取り」ではなくなるだろう。
●通貨の国際化: 2つの国際化が考えられてきた。1.グローバルな価値の保蔵手段。2.国際的な支払い、交換手段。アメリカ金融市場の、大きさ、深さ、流動性、が重要だった。しかし、21世紀の通貨の国際化は、デジタル・ネットワークの大きさに依存する。
●デジタル・ドル化: デジタル通貨に自国通貨が侵食され、あるいは、自国通貨が過酷を侵食する。対策としては、中央銀行もデジタル通貨(CBDC)を発行することだ。
●国際通貨制度の新しい境界線: それは「デジタル世界通貨」を実現するわけではない。最も重要な、プライバシーに関して、ヨーロッパ、アメリカ、中国の扱い・規制は大きく異なっている。
デジタル化の究極のパラドックスは、技術的には障壁や国境を越えても、国際金融システムを分断することだ。
● トランプの通商・金融・外交政策による破壊行為
FT July
1, 2019
Currency
warrior: why Trump is weaponising the dollar
Sam Fleming in Washington
ドナルド・トランプは、ますます攻撃的に、外交問題で、アメリカの貿易・金融関係を武器として使用するようになっている。異常なほどに傲慢な通貨好戦論者である。貿易赤字の縮小を求めてそる安を喧伝し、外交の道具としてドルのグローバルな利用を異常な形で活用する。
ロシア、イラン、北朝鮮、ベネズエラ、そして他の諸国、Huaweiなどの企業にも、アメリカ政府は、ドルが支配的な国際貿易・金融関係を使って制裁を行っている。元財務省、現在はホワイトハウスに属するAdam
M Smithは、他国がアメリカ市場やドルを避けようとしても、効果的な迂回方法は見つからないだろう、という。
アメリカが世界GDPに占める割合は低下するだろうが、ドルの支配的な地位は変わらない。国際債券の60%はドル建、原油や金属など、国際商品の40%はドルで契約される。外貨準備の割合は低下したものの、62%を占めるドルが他の通貨をはるかに超えている。
昨年8月、アメリカと関係悪化したトルコは、鉄鋼やアルミニウムの関税を引き上げられ、通貨危機に陥った。アメリカ議会もトランプの経済制裁を支持している。
長期的にはドルへの依存は低下するだろう。トランプはそれを加速させる。しかし、当面、その効果は安全策としてドルの保有を増やすことに示されている。ロシアは国際取引の非ドル化を積極的に推進してきた。しかし、中国との石油取引でも、中国側はルーブルの不安定さを嫌っている。中国の「一帯一路」もそうだ。人民元はドルに代わることができない。ドルを回避する仕組みは、機能するまで、まだ時間がかかるだろう。
皮肉なことに、トランプが敵対的政策で国際不安を煽るほど、投資家たちはドル建資産に避難する。それはアメリカが創った住宅債券市場の崩壊が、世界的な金融危機として、世界の投資家たちをアメリカ国債に引き寄せたのと同じである。
PS Jul
1, 2019
A Future
Without Currency Wars?
HAROLD JAMES
貿易・通貨戦争の1930年代の悪夢がよみがえる。トランプ政権の「アメリカ・ファースト」が実行されれば、通貨戦争が勃発するのは時間の問題だ。
2008年の金融危機後、当時のブラジル財務大臣が、アメリカの低金利政策について、本格的な通貨戦争だ、と主張した。日本とヨーロッパも同様の政策を採り、減価政策は先進経済のひそかな景気回復策となった。
2012年、ユーロ危機はドルに対する減価が進んでから、やっと落ち着いた。他方、UKのエコノミストたちは、ユーロ圏諸国に対して、より弾力的な為替レートを採れたUKは危機を緩和できた、と指摘している。いずれにせよ、危機が沈静化したのは主要中央銀行が同時にQEを行ったからだ。21世紀の通貨戦争は、あいまいな、壊れやすい停戦状態にある。
政治家が決める限り、国民通貨は明らかに経済的武器である。それゆえ1944年のブレトンウッズ会議では、安定した為替レートを保証する枠組みに合意した。アメリカは交渉を指導し、関税・貿易戦争から自由な開放型国際秩序を確立すると約束した。他国には、対外不均衡を抑えるしか、他に選択肢がなかった。
その後も、貿易摩擦は常に通貨論争につながった。対立が激化すると、当然、トランプは他国の金融政策を攻撃した。中国の人民元は安く操作されているとか(間違いだ)、ECBがQEを続けることも批判した。1930年代と同様、地政学のゼロサム・ゲームで考える者は、通貨戦争を好む。
ブレトンウッズ体制を設計したケインズは、巨額の黒字や赤字を蓄積する国を処罰する制度と、「バンコール」とよぶ普遍的な合成通貨を基礎として、新しい世界金融システムを計画した。ドラギが指摘したように、ユーロの起源も競争的な通貨の切り下げを止めることだった。1960年代のロバート・A・マンデルなど、国民通貨ではなく、一般的通貨を求める意見は繰り返し示された。
今や技術革新が、グローバル通貨を達成できるものにした。先月、Facebookは、デジタル・コイン、Libraの計画を発表した。銀行口座を持たない17億人を含む、世界の貧しい人々が利用できる。それは、金融投機ではなく、交換手段として、Bitcoinなどのブロックチェーン通貨に反対する試みだ。「マイニング(採掘)」と称して、Bitcoinは人為的な希少性を課した。Facebookに対する非難はあるが、複数の資産に依拠するデジタル通貨は、批判者の言うような、不安定化をもたらさない。
真の普遍的通貨があれば、利用者は財、サービス、そして労働も、自国通貨で示さなくなる。1つの領土でも複数の通貨が存在する世界は、前近代にあった、金貨と銀貨が互いの価値を変動して表す仕組みになるだろう。それは悪いことではない。
金と銀の価値が変動するから、賃金はより柔軟に変化して、失業者は減るだろう。グローバル通貨の利用が拡大し、通貨戦争は減るだろう。経済ナショナリズムによる混乱とは無縁な、21世紀のグローバル金融システムが実現する。
その実現のカギは、ユーロがすでに始めているように、国民国家と貨幣との関係を断つことだ。
FT July
3, 2019
US
aggression on the dollar will prove costly
By: Guest writer
● 気候変動
FT July
1, 2019
The
perilous politics of climate change
Gideon Rachman
PS Jul
1, 2019
Germany’s
Green Wave
MICHAEL BRÖNING
FT July
4, 2019
EU’s
rising carbon prices fuels industrial output exodus fears
Benjamin Jones
● 金融政策は理解されているか
PS Jul
1, 2019
Does
Japan Vindicate Modern Monetary Theory?
KOICHI HAMADA
MMT(Modern Monetary Theory)がアメリカで注目されている。国家は、民間企業と違って、貨幣を無限に発行できる、というものだ。アメリカの革新派政治家たち、AOCやサンダースが、「雇用保障」、インフラ建設、などに連銀が貨幣を発行すればよい、と主張している。
なかには、日本がその証拠だ、と言う者もいる。巨大な政府債務があるのに、経済は回復し、生活水準も高い。アベノミクスは、大いに懸念されたが、高インフレを起こしていない。
これは間違いだ。まず、日本の債務は大きいが、保有する資産も大きいから、ネットの債務額はGDP比でアメリカと同じ水準、ドイツやフランスより低い。MMTの主張は、日本で消費税を引き上げて、財政赤字による刺激策も可能だ、という主張に、「リカードの等価説」で反対する者には有効だ。ただし、インフレが永久に来ない、ということはない。供給の限界に達することでインフレが再現するから、MMTには慎重な金融管理が求められる。
PS Jul
4, 2019
Mysteries
of Monetary Policy
ROBERT J. BARRO
なぜインフレ率がこれほど低いままなのか、金融政策の理論は、その本当の理由を理解することができない。
● 米中貿易戦争
FP JULY
1, 2019
China
and Japan’s Pragmatic Peace
BY J. BERKSHIRE MILLER
FP JULY
2, 2019
In Japan
and South Korea, Trump Boxed Himself In
BY MICHAEL J. GREEN
中国との貿易戦争でも、北朝鮮との非核化に関する交渉も、トランプは前進できない状態だ。
日本、韓国、台湾の企業は、今、そのサプライ・チェーンを中国から外へ移しつつある。なぜならトランプの関税がこの先も残ると考えるからだ。それは確かにアメリカのRobert
Lighthizer通商代表の勝利である。しかし、地域内の企業幹部は、中国の市場のために、サプライ・チェーンを並行して中国に残し、拡大している。
米中はある意味で分離するだろうが、アメリカの手が届かないところで、中国の略奪経済は安全地帯を築くだろう。WTOを破壊し、TPPを離脱したトランプは、この地域の最も緊密な友好諸国の間で、影響力を制限していくのだ。
FP JULY
2, 2019
Japan
and South Korea Don’t Have to Love Each Other to Be Allies
BY S. NATHAN PARK, WILLIAM SPOSATO
FT July
4, 2019
Warning
on pensions could breathe new life into Japanese stocks
Leo Lewis
● 香港の抗議デモ
NYT July
1, 2019
What the
Hong Kong Protests Are Really About
By Jimmy Lai
先月、香港人は、中国本土に送還することを許す条例に反対して巨大なデモを生み出した。
しかし、この条例を支持する中国政府は、もっと大きな視野でこの抗議デモを観ている。これは新しい冷戦の最初の砲撃である。名もない香港市民たちは、その意味で、中国共産党に対する闘いの最強の武器を駆使したのだ。それは、道義的な力だ。
中国でこのデモを思い出すとき、そこに見るのは、香港民衆に向けられたペッパー・スプレイや棍棒である。そこに映る中国の姿を、世界は見たのだ。それは、モンスターである。
習近平主席は、権力を得てから、その目標を明確にしてきた。中国人を汚染する、と彼が信じている、西側の影響を一掃することだ。
しかし、都合の悪い真実がある。それは香港住民が、中国の歴史上、また、他のどの都市に比べても、最も好ましい生活を送っている、ということだ。その事実が彼らに、道義的な力、を与える。
われわれと北京との闘いは、もし成功するなら、銃口ではなく、世界が称賛する道義的な力で、必要な権威を得るべきだと、指導者たちに教えるだろう。しかし、もし北京の方針が勝利するなら、駐豪は世界最大の経済だけでなく、西側にとって最も恐るべきモンスターになるだろう。
西側の道義的な権威は最強の武器になる。その前では、中国が内外の非難にさらされるから。
FP JULY
1, 2019
The
Dangerous Romance of Hong Kong Protests
BY KAREN CHEUNG
The
Guardian, Tue 2 Jul 2019
The
fight for democracy in Hong Kong is the defining struggle of our age
Simon Tisdall
香港に北京からの直接統治を認めることは許されない。「一国二制度」が危機に瀕している。
習近平は次第に傲慢な手法を認めたが、天安門事件のような国際的非難は受けたくない。香港の富と機会は重視するが、このような反政府の声を受け入れるつもりもないだろう。成長減速、統治の失敗、国家権威主義体制の拡大に、人々は不満を持っている、
香港の「二制度」とは、グローバルな文明の衝突ではなく、大きな2つのイデオロギーの衝突だ。リベラルな、民主主義的、法に依拠する統治と、権威主義的な、ナショナリスト・ポピュリストの強権支配とが、グローバルに対立している。それはわれわれの時代をめぐる闘争だ。香港のデモをわれわれは全力で支持するべきだ。習が抗議デモを粉砕するのを、許してはならない。
The
Guardian, Tue 2 Jul 2019
The
Guardian view on Hong Kong’s protests: the mood hardens
Editorial
FT July
2, 2019
Beijing
slams HK protest at legislature as a ‘blatant challenge’
Alice Woodhouse and Nicolle Liu in Hong
Kong
FT July
2, 2019
Carrie
Lam plays high-risk game with Hong Kong protests
Jamil Anderlini
法案を延期し、学生デモに対する武装警察による鎮圧を抑える。学生たちの一部が立法院の議会に侵入し、一時、占拠した。もしそれが戦術として後退することなら、香港政庁と北京の目的は何か? 香港社会は保守的である。
行政長官の選択は、まずます暴力的な対立を促すのではないか。
FT July
3, 2019
Hong
Kong stands at a perilous turning point
FT July
3, 2019
Hong
Kong protesters expose self-delusions of city’s business elite
Tom Mitchell in Beijing
NYT July
2, 2019
Hong
Kong Has Nothing Left to Lose
By Louisa Lim
NYT July
3, 2019
Why
China No Longer Needs Hong Kong
By Eswar S. Prasad
1997年、中国は香港を必要としていた。しかし、もはやそうではない。香港の制度を尊重することより、中国の国際秩序を示すためには、反政府デモを弾圧するほうが良い。
1997年には、まだWTOに加盟していない中国にとって、香港は重要な中継基地であった。中国の貿易の約半分をあつかった香港が、今では12%足らずである。香港の経済規模は、中国の5分の1であったが、今では30分の1である。1人当たり所得は中国の35倍であったが、今では5倍である。通貨の点でも、もはや中国の金融市場は香港を圧倒している。北京を、香港をしのぐ国際金融センターに育てようとしている。
世界金融危機以後、中国は香港を異なる視点で扱うようになった。中国共産党は、西側のリベラルな民主主義がもたらす混乱に代わる組み合わせ、経済的自由と、政治的・社会的自由の制限、を好む。北京は香港をショーケースとして、そのような中国型の「法の支配」、所有や契約を守らせるが、共産党の命令には従うことを、優れたものとして示そうとしている。
香港の抗議デモは、安定した経済成長、法と秩序を提供する限り、市民たちは個人的自由や政治的自由を進んで放棄している、という北京の説明と真正面からぶつかる。
中国はしばらく香港を窒息させる手を緩めるかもしれない。しかし、誤解してはならない。北京の描く香港に、国際投資家や住民が愛した香港、すなわち、自由な企業、民主主義、表現の自由、法の支配はない。
FP JULY
3, 2019
Hong
Kong on Strike
BY DOMINIC CHIU, TIFFANY WONG
FT July
4, 2019
Beijing
tightens its grip on the periphery
Jamil Anderlini
FT July
4, 2019
Hong
Kong’s protests could end as a clash between east and west
Ronald Chiu
私たちが3月後半に初めて街頭デモをしたとき、恐怖を叫ぶな、裏切者、と呼ばれた。私は、その時の絶望を思い出す。香港は死につつある。
NYT July
4, 2019
A
Movement, and a Country, Torn by Protests
By The Editorial Board
● シリア、ベネズエラ
PS Jul
2, 2019
The US
Is Still Needed in Syria
CHARLES A. KUPCHAN , SINAN ÜLGEN
FT July
3, 2019
Oil
sanctions are not the way to topple Venezuela’s Nicolás Maduro
● トランプの独立革命
FP JULY
3, 2019
Celebrating
the Trump of July
BY MICHAEL HIRSH
NYT July
3, 2019
Wishing
for a Tank-Free Fourth
By Gail Collins
NYT July
3, 2019
America
the Beautiful
By The Editorial Board
FP JULY
3, 2019
It’s
Trump’s Fourth of July Now
BY MICHAEL HIRSH
NYT July
4, 2019
Why
Trump Likes Tanks
By Elliott D. Woods
● IMFトップ人事
The
Guardian, Thu 4 Jul 2019
Osborne
thinks he could run the IMF. Maybe gaslighting a country is a useful skill
Faiza Shaheen
FT July
5, 2019
Candidates
eye prospect of succeeding Lagarde at IMF
Chris Giles in London and Kiran Stacey in
Washington
● カトリックと極右
NYT July
4, 2019
How the
Catholic Church Lost Italy to the Far Right
By Mattia Ferraresi
● アメリカ民主党
PS Jul
4, 2019
The
Democratic Nominee America Needs
ALEXANDER FRIEDMAN , JERRY GRINSTEIN
● エチオピアの革命
FP JULY
4, 2019
Abiy
Ahmed’s Reforms Have Unleashed Forces He Can No Longer Control
BY NIZAR MANEK
● 中国のテクノクラート政治
FP JULY
4, 2019
China’s
Overrated Technocrats
BY JAMES PALMER
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The
Economist June 22nd 2019
Texafornia dreaming
The Conservative leadership: Which Boris would Britain get?
Unrest in Hong Kong: China’s chance
Facebook’s new cryptocurrency: Click here to buy Libra
Chaguan: America, as seen from Beijing
Lexington: Elizabeth Warren, savior of capitalism
Charlemagne: Built on air
Bagehot: The Plato test
Libra and banking: Libralised finance
(コメント) アメリカがトランプによってどうなるか、ではなく、カリフォルニアとテキサスがどうなるか、を考えます。GDPの規模で並べると、アメリカ、中国、日本、ドイツ、という世界経済の順位は、5位にカリフォルニア、11位にテキサスが入ります。
それ以上に、2つの州の政府の在り方、人口変化、が対照的で興味深いです。さらに、中国、アメリカ、イギリス、ヨーロッパの政治力学を描く連載コラムは充実しています。詳しくまとめる時間が無くて。
プラトンの『国家』には、政治家に必要な資質として、真実を求める姿勢、専門的な管理能力、を挙げ、指導者が劣化する印として、ナルシシズムと慢心、を挙げたそうです。なるほど。
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IPEの想像力 7/8/19
国民にとって、参議院選挙の機会が政治経済の転換に活きるのか。さまざまなことが同時に起こり、あまりにも複雑な、意図された動き、意図しない結果の波に振り回される感じです。
あなたは何を観ましたか? 私は何を観たか、書いておきます。
● レバノンのシリア難民を描いたラバキー監督の映画『存在のない子供たち』が、朝の「国際情報」NHK・BS1で紹介されました。
まだ幼い少年、ザインが、難民キャンプで暮らす苦しみを描いているようです。ザインが妹の幸せを願う気持ちによって、彼らの不幸と闘い続けること、大人たちが創り出した戦争や貧困に、理由もなく子供たちが巻き込まれ、大きな苦痛を強いられること。食料も、水もなく、妹は児童婚の相手に奪われてしまいます。
ラバキー監督は、この映画を観て、路上の子供たちを見る観方が変わった、という観客の声を紹介し、子供たちの境遇について、対話や議論が起きることを望んでいる、と述べました。子供たちの経験を演技として指導することはできない。ザインや他の子供たちを難民の中から選んだ。彼らは演じているのではない。ザインは周りの大人やカメラマンを気にしなかった、と述べています。
難民として、大人たちの作った理不尽な世界を生きる子供たちの痛み。その感覚をなくしてしまったのか、と反省しました。ぜひこの映画を観に行こうと思います。
● 「国際情報」が伝えたトップ・ニュースは4つありました。1.ギリシャの選挙、2.香港のデモ、3.イランのウラン濃縮、4.ドイツ銀行の大幅人員削減。
1.ギリシャの選挙では、政府債務危機とトロイカによる救済融資をめぐって対立したシリザ政権のチプラスが敗北しました。ゼミ生たちと読んできた本(田中素香『ユーロ危機とギリシャ反乱』)の結末を見る思いです。しかし、これが結末とは言えないでしょう。
The Economistは、チプラスを政治家として称えました。既存政党を破って急進左派政党が現れたのは、ユーロ危機と緊縮策の過程で大きな苦痛を強いられた労働者、貧困層の声を集めて正当な民主主義の力でした。救済融資の条件をめぐって闘った過程も、国民投票に訴えたガッツも、若い指導者として称賛されるでしょう。何より、債権国の強いる条件を満たしたことを、彼は誇りました。
2.香港の100万人を超える抗議デモから、一部の学生たちは、いよいよ立法院に突入し、一時、占拠することで、暴力的なエスカレーションが懸念される局面に入っていました。
しかし、このニュースは違います。香港島ではなく、九龍半島側の高速鉄道の駅周辺で、平和的なデモを展開した、ということです。本土からの観光客に香港の抗議の声を示します。彼らはSNSやデモの写真を、友人、家族に送るでしょう。なぜ香港から本土の裁判所に送ることが許せないのか、観光客たちは不思議に思うかもしれません。しかし、抗議デモのある政治を体験します。
3.トランプ政権はイランに対する制裁、禁輸措置、外交圧力を強化してきました。それは、戦争を始めることに等しい、と考えます。イランも無人機を撃墜し、ウラン濃縮の核合意による限界を超えた、ということです。
しかし、イランは核合意の履行を主張し、経済制裁を解除するように求めています。戦争を求めているのは、トランプ(とその反イラン同盟諸国)です。
4.ドイツ銀行は投資銀行部門を大幅に削減しました。これは、チプラスの敗北以上に、ドイツの金融界、ユーロ危機をめぐるメルケルの敗北かもしれません。
世界に、核武装のエスカレート、貿易・通貨戦争、人種差別や女性差別、ポピュリズム政治を拡大するトランプは、就任演説で予告した「大殺戮」についての妄想を、アメリカのパワーでグローバルに実現しているようにみえます。
● 朝日新聞の連載記事「問う 2019参院選」を読みました。言葉を選んで、事実を探します。
1.「嘲笑する政治」を続けるのか ・・・民主党政権を「悪夢」といって笑う。自分が相手より上位にあり、見下し、排除する意識。国会は、鑑定が成立させたい法案を通す場として下請け化した。政策に異を唱える人を攻撃する風潮。
2.非正規の女性に目を向けて ・・・女性は「」結婚か、仕事か」の二者択一を迫られていた。シングル女性を引き付けた「派遣」という働き方。自由度が高い、さまざまな会社を経験できる、事務職の即戦力。正規雇用へのステップ。夢はかなわず、今の時給は1500円。これまで政治は直視してきただろうか。
3.くすぶる不安、「未来」に責任を 4.首相の密談外交、見えぬ将来 ・・・
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安倍首相。あなたの頼りとするトランプは、「最大限の圧力」をやめて、金正恩と非武装地帯で握手した。彼の関心は、核廃絶より朝鮮戦争の終結。日本政府は、植民地支配に対する補償交渉も準備しているのか。そして、あなたの頼りとするプーチンは・・・
安倍首相。安保法制と自衛隊海外派遣の合法化、憲法改正論を推進し続けて、得られた日米同盟の最高・最強の瞬間は、ホルムズ海峡への有志連合や、イラン核保有を(一時的に)阻むトランプの空爆シナリオに巻き込まれる。そして、アジアでも、中東でも、核兵器は拡散する・・・
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