IPEの果樹園2019

今週のReview

7/8-13

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スーダンの弾圧と国際政治 ・・・プーチン=トランプのリベラリズム批判 ・・・EUECBのトップ人事 ・・・労働者に投資せよ ・・・イランの核武装は避けられない ・・・デジタル通貨の時代 ・・・金融政策は理解されているか ・・・香港の抗議デモ

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 スーダンの弾圧と国際政治

FP JUNE 28, 2019

Seeking to Secure Power, Sudan’s Military Ruler Hires Lobbying Help

BY JUSTIN LYNCH, ROBBIE GRAMER

FT June 30, 2019

Middle East’s power struggle moves to the Horn of Africa

Tom Wilson in Khartoum and Andrew England in London

スーダンの民主化デモを軍隊が襲撃したとき、最初に非難されたのはRSFRapid Support Forces)だった。Omar al-Bashir4月に失脚してからスーダンを支配している軍人たちは、明確なメッセージを送った。民衆の要求に従って、民政に移管する気はない、ということだ。

RSFだけでなく将軍たちの行動を観るなら、それは地域の支援者たちを問題にすることになる。サウジアラビアとアラブ首長国連邦UAEだ。スーダンの活動家たちは、強力な湾岸諸国が弾圧に承認を与えた、と疑っている。

サウジアラビアとUAEは、弾圧を事前に知っていた、という主張を強く否定する。両国は地域の安定性を促している、という。スーダンとは歴史的に経済・政治関係があった。スーダンは、アフリカとアラブ世界とを結ぶ橋であり、紅海に長い海岸線を持つ国だ。

その主張に反して、両国の積極的な介入姿勢が問われる。「アフリカの角」を管理するために、その港やインフラに莫大な投資を行っている。

襲撃の10日前に、スーダンで最も強力な軍事指導者、RSFの司令官Mohamed Hamdan Dagaloは、サウジアラビアの都市ジェッダでムハマド皇太子と会っていた。また同じ週、スーダン軍事評議会の議長であるLt Gen Abdel Fattah al-Burhanは、UAEの事実上の指導者、アブダビの皇太子を訪れていた。UAEは、Bashir失脚後、軍事評議会に30億ドルの支援を約束した。

サウジアラビアとUAEは、スーダンの諸党派間で「生産的な対話」を求めた、というが、彼らの関心は将軍たちが彼らの利益を守ることだっただろう。そこには、イエメンにおけるイランの仲間、フーシ派反政府軍と戦うサウジアラビアの連合軍に、スーダンが軍を派遣し続けることも含まれた。両国は、エジプトで2011年に起きたような混乱を避け、軍事支配体制が継承されることを望んでいる、と専門家は指摘する。

2011年の「アラブの春」以来、リヤドとアブダビは、彼らが望む形に地域を積極的に作り変えようとしてきた。彼らの目には、各地の政治的イスラム主義の台頭にはイランの影響がある、と見える。オバマ政権が2015年にイランとの核合意を結んでから、リヤドとアブダビは地域の敵対者を積極的に攻撃する政策を展開し始めた。今は、スーダンの首都ハルツームでそれが示された。

2017年、湾岸諸国はカタールに禁輸措置を取った。カタールがイスラム主義を支援し、イランに接近した、という理由だ。また、トルコがカタールに接近し、アフリカにも関心を示していることを懸念している。

サウジアラビア、UAE、カタールは、豊富な石油資金を使って、貧しいアフリカ諸国を支援してきた。湾岸諸国は、石油の消費市場として西側を向くだけでなく、地域の農業資源として、また港湾や経済利益について、戦略的な国籍を追求する。アフリカの角の貿易、安全保障、地政学的重要性により、地域の軍事化は続くだろう。

民主化弾圧は、スーダンがそのダイナミズムの中にあることを示した。

FP JULY 2, 2019

From Camel Herder to Dictator

BY ALEX DE WAAL


 プーチン=トランプのリベラリズム批判

NYT June 28, 2019

Trump Fast-Forwards American Decline

By Roger Cohen

ロシアの大統領、ウラジミール・プーチンは、「リベラリ思想は時代遅れだ」とFinancial Timesに語った。その使命を越えて長生きしすぎたのだ、と。トランプはそれを喜んだようだ。日本のG20サミットで、トランプは指を振って、「選挙に手を出すなよ、(プーチン)大統領」と笑顔であいさつした。

30年前にベルリンの壁が崩壊し、2年後にソ連も滅んだ。

個人の自由、尊厳、法の支配、民主主義。民主主義を広めることが平和と繁栄をもたらす。それがアメリカの外交を導く精神だった。

元国務次官、モスクワ大使でもあったWilliam Burnsは、1993年を振り返って書いた。「民主的社会は、経済改革の成果を速やかに出せなかった、あるいは、エスニックな自己表現を取り込むことに失敗した。そして、ナショナリズムを含む、さまざまなイデオロギーに傾斜していった。」

トランプはアメリカ外交を食いちぎった。友好諸国は混乱し、敵対国は活気を帯び、われわれが築き、70年間も維持してきた国際システムを、危険なほどに弱めた。大統領の外交に関する見方は、「ナルシスト的で、制度的ではなく」、「力任せの姿勢と事実を無視した主張」は、同盟諸国を侮辱し、専制支配者を称賛した。

外交とは、「完全な答えではなく、戦争よりもずっと小さなコストで、そうでない場合よりもすべての者の条件が改善されること」である、とBurnsは主張する。彼が指導的な役割を担ったイランとの核合意を、トランプが「最悪のディール」と呼んで離脱した。これこそ「危険な、うぬぼれの、誤った発想による博打であり、われわれの影響力を粉砕した。」

NYT June 30, 2019

The Trump Fallacy

By Greg Weiner

トランプの支持者たちは、トランプを「政治的なロビン・フッド」とみている。彼の違法な振る舞いは、より大きな善をなすものであるから、正当化できる、と。それは2重に間違った考え方だ。

1に、彼の嘘と、その政策の実現とは関係ない。第2に、アメリカの基本原則を再建する、とみなす支持者たちの考えだ。その盲信は現実とかい離している。

エドマンド・バークは、フランス革命に同じ謬見を見ていた。すなわち、すべての政治制度を破壊することで、革命派は確かに悪しき制度のいくつかを廃止した。しかし、それを成功とみなし、その犯罪を容認するには、「同じことを、そのような革命がなければ、達成できなかった」と証明しなければならない。

PS Jul 3, 2019

Cambodia Throws a Wrench into Trump’s Trade War

SAM RAINSY

PS Jul 3, 2019

Power and Interdependence in the Trump Era

JOSEPH S. NYE, JR.

たとえ中国とアメリカはリベラルな民主主義に関して意見が一致しないとしても、開放型の、ルールに依拠したシステムで、経済的、そして、生態系に関する相互依存を管理することに、共通の利益を持っている。

トランプのやり方を支持する者たちは、その成果として、北朝鮮の核兵器、中国の技術移転強制、イランの体制転換を得られると主張するかもしれない。しかし、グローバルな相互依存の中心を握る特権的な介入を過度に利用すれば、それは自己破壊的になる。アメリカの安全保障、経済繁栄も、アメリカの生活スタイルも、損なうだろう。

FP JULY 3, 2019

While Trump Isolates the U.S., It’s ‘Let’s Make a Deal’ for the Rest of the World

BY KEITH JOHNSON

FT July 4, 2019

Running down the clock on Trump is a risky bet

Edward Luce

PS Jul 4, 2019

The Next Phase of Trump’s Trade War with China

YU YONGDING


 ボリス・ジョンソン

The Guardian, Sat 29 Jun 2019

The passions blowing Boris Johnson into No 10 could yet bring him down

Nick Cohen

FT July 4, 2019

What an Ikea bed tells us about Boris Johnson’s Brexit plan

Chris Giles


 EUECBのトップ人事

FT June 29, 2019

EU closes in on plan for European Commission and ECB top jobs

Alex Barker in Osaka and Mehreen Khan in Brussels

欧州委員会の委員長として、中道左派のオランダ人、Frans Timmermansが有力だ。中道右派の候補、Manfred Weberは、欧州議会議長になることで、交渉されている。

Timmermanはオランダの元外務大臣で、6か国語を話す。現在の欧州委員会の最初の副委員長だった。

PS Jul 2, 2019

The ECB Needs New Inflation Rules

MICHAEL HEISE

FT July 3, 2019

Lagarde, von der Leyen: Meet the EU’s next leaders

Alex Barker and Michael Peel in Brussels, Claire Jones in Frankfurt and Ian Mount in Madrid

The Guardian, Wed 3 Jul 2019

The Guardian view on Europe’s top jobs: the good, the bad and the compromise

Editorial

FT July 3, 2019

ECB cashes in on Lagarde’s alliance-building skills

Ben Hall

FP JULY 3, 2019

Christine Lagarde Won, but This Isn’t a Game

BY ADAM TOOZE

EUの頂点のポストをめぐる駆け引きは強烈だ。ドイツのメルケル首相が大阪サミットでディールを試みたが失敗した。それは、おそらく、彼女の経歴の中でも最悪のものだ。しかし、盟友のドイツ国防大臣Ursula von der Leyenを欧州委員会の委員長に就けることで、彼女は面目を保った。

ヨーロッパは、その行動のたびに、ユニークな超国家政治に向かっている。すべての関心は、政策論争より、政治である。その結果は、明らかに、ヨーロッパ規模の民主主義ではない。

欧州議会選挙ではなく、再び、各国の指導力が最優先である。フランスとドイツは、それぞれ重要なポストを得た。ドイツのvon der Leyenが欧州委員長、フランスのChristine LagardeECB総裁だ。

東欧諸国は、その発言力を示した。何より、メルケルの提案をつぶしたのは彼らの反対である。IMF専務理事になる前、Lagardeは、フランスで、」中道右派の2人の大統領、シラクとサルコジに仕えた。

国籍、政党、政治的アイデンティティー。それらが選考過程で重視されるものだ。政策に関する能力ではない。しかし、ECB総裁は違う。EUで唯一、真に連邦的な制度であり、単に最も強力なポストであるだけでなく、欧州委員会の委員長よりもはるかに重要だ。

アメリカ連銀に次いで重要な中央銀行であり、ユーロはドルに対抗する唯一の通貨である。2019年初めから、ユーロ圏は重大な問題を抱えている。金融政策による刺激を求める圧力はアメリカ以上に強く、同時に、イタリア財政の健全性は引き続き懸念材料だ。財政の悪化と銀行の弱さが循環する構造となっており、唯一、ECBだけがこれを切断できる。

ECBの独立性、というのは名目でしかない。Lagardeは法律家や政治家であって、エコノミストではない。中央銀行の経験もない。市場操作の経験もない。中央銀行家を超人のように見なす時代は終わったのだ。

ドイツ連銀の総裁であるJens Weidmannも有力候補であったが、残念ながら、ドイツの保守的な考えを代表してきた。特に、2012年のドラギ総裁の発言を批判したことは破滅的な意味を持った。

かつてLagardeがサルコジの下で、危機克服にはヨーロッパ共通のアプローチが必要だと提案したが、メルケルはこれを粉砕した。その結果、サルコジに冷遇されたのだ。ユーロ危機に直面すれば、今度はECB総裁として、より大きなパワーを行使する。

FT July 4, 2019

EU leaders’ choice Von der Leyen starts MEP charm offensive

Mehreen Khan in Strasbourg

FT July 4, 2019

New EU leaders will soon be put to the test

PS Jul 4, 2019

The Lessons of the EU Leadership Fight

DANIELA SCHWARZER

欧州議会が認めれば、ドイツ国防大臣Ursula von der Leyenが欧州委員会委員長、ベルギー首相Charles Michelが欧州理事会議長、スペイン外務大臣Josep Borrellが共通外交・安全保障政策上級代表、そしてIMF専務理事Christine LagardeECB総裁となる。そのメンバーは印象的である。

グローバルな不安が増す時代に、これらの候補者たちがEUを強化するのは良いことだ。しかし、EUそれ自体には、なお内部に、解決されねばならない多くの課題がある。特に、指導的ポストの候補者指名過程、Spitzenkandidatenである。それによれば、欧州議会の最大の会派が委員長を指名する。

欧州議会はますます分裂し、EU加盟諸国との関係も変化している。独仏が協力してEUを動かす時代は去った。たとえ彼らが特定の問題で協力しても、それを阻む少数派が理事会に現れる。全会一致どころか、多数派を形成することも非常に困難だ。反対に、各国政府はますます強硬に自国の利益を追求する。同様の考えを持つ少数の国と、特別な目的を追求しようとする。

選挙結果は変化を求めている。多くの市民が伝統的な政党を見捨てたが、その多くは恐怖を感じているからだ。ヨーロッパ市民は、当然、大国間競争と安全保障の懸念、技術の革命と経済システムや社会への脅威を感じている。

EUは、加盟諸国とともに、こうした挑戦に応えねばならない。

PS Jul 4, 2019

Lagarde Is the Right Choice

PHILIPPE LEGRAIN

ラガルドChristine Lagardeは、開かれた、メリットを重視する選考過程で決めた人事ではない。欧州委員会委員長にドイツ国防大臣Ursula von der Leyenを充てる人事と合わせて、秘密交渉で進んだ。

しかし、選考過程のあいまいさにもかかわらず、ラガルドは多くのメリットを持っている。女性、フランス人、中道右派のヨーロッパ人民党の出身。法律家や政治家として、粘り強さと政治的スキルを学び、国際機関のテクノクラートを務めた。IMFにおける8年間は、その経験と地位をさらに高めた。

ユーロ危機における彼女の姿勢を批判することがある。フランス財務大臣として、ラガルドは、2010年のギリシャ債務の間違った組み換えを合意し、ユーロを解体しかねない金融危機に対して財政緊縮策を適用した。しかし、2011年、IMF年次総会であったとき、私的な会話で、彼女はECBの無制限介入とギリシャ債務免除を支持していた(当時のECB総裁、トリシェは反対だった)。

次のECB総裁には大きな課題がある。2%のインフレ目標を達成しておらず、中国の成長減速、トランプの貿易戦争、合意なきBrexitの衝撃にさらされるが、金融緩和の余地がない。ユーロ圏の内外における改革もこれからだ。

ECBがラガルドを総裁に迎えて刷新するのは、ドラギに劣らず挑戦的な時期を乗り越えるために重要だ。


 G20

FT June 29, 2019

G20 deeply divided on trade and climate change

Robin Harding, Alex Barker and Demetri Sevastopulo in Osaka

G20はなんとか全会一致の共同声明を出せた。しかし、文字の背後には、貿易と気候変動に関する深刻な亀裂がある。

貿易に関しては、誰も反対できないような積極的な原則だけが並んだ。自由、公平、無差別、解放された市場、平等な競争条件。

最大の論争は気候変動に関してであった。フランスのマクロンはパリ協定による行動を主張したが、アメリカは加わらず、トルコやブラジルも離脱する姿勢を見せた。

The Guardian, Sun 30 Jun 2019

Feel smug about western democracy? The G20 summit should make us reconsider

Nesrine Malik

来年はアラブ国家が初めてG20を開催する。その国は大国クラブへの参加として祝福されるのか? アラブ諸国のパーリア的な地位は明白だ。

確かに、2020年のサミットはサウジアラビアが開催する。そしてジャーナリストJamal Khashoggi殺害の汚名を返上するだけでなく、最近になって公表された事件の細部にも応えることが求められる。大阪サミットにおける指導者たちが並んで手を振る、ドナルド・トランプとサルマン皇太子Mohammed bin Salmanは別にして、記念撮影は、その2人が共感する良い機会であった。

G20で、まさにこのとき、プーチンはFTの記者にリベラリズムの死について語った。トランプはプーチンとの最初の会談で、親しく冗談を交わしたが、ジャーナリストたちについてトランプは「奴らを一掃することだ。フェイク・ニュースとは、なんていい言葉なんだ。ロシアにはこんな問題はないだろが、アメリカにはある。」 するとプーチンはこれに英語で答えた。「ロシアにもあるさ。同じだよ。」

数日後、トランプはアメリカ大統領として初めて、北朝鮮に足を踏み入れた。金正恩に断った後で。トランプはもう特別ではない。デマゴーグのギャング団の一員である。

FT July 1, 2019

Ivanka Trump’s G20 performance puzzles world leaders

Edward Luce

FT July 1, 2019

World economy still vulnerable despite G20 tariff truce

Gavyn Davies


 移民

NYT June 29, 2019

The Treatment of Migrants Likely ‘Meets the Definition of a Mass Atrocity’

By Kate Cronin-Furman


 労働者に投資せよ

FT June 30, 2019

The silver lining for labour markets

Rana Foroohar

最近のニュースを見ても、世界が分裂を深めていることがわかる。問題を理解するには、身近なことに目を向け、特にアメリカと西欧で、労働者の経済的な分け前が減少したことを理解しなければならない。

通常、その原因として、グローバリゼーションが指摘される。最近のthe McKinsey Global Instituteの報告書は、アメリカ労働市場について、5つの理由を挙げたが、グローバリゼーションはその最後だった。むしろ、労働よりも資本が大きな報酬を得る、商品と不動産が、スーパーサイクルを示して膨張したことを挙げている。

しかし、第2の理由、経済における無形資産の重要性が増した、という点が、労働者(そして有権者)の不満を強めていると思う。それはコンピューターやソフトウェアであり、機械や工場よりもはるかに急速に価値を失う。短いライフサイクルで新技術の価格が下落し、また生産性を高める効果を失い、したがって多くの投資がそれらに向かうことで、労働者には投資されなくなった。

国内の地方にとってそれは重要だ。技術変化が旧来の工業地帯を特に激しく破壊し、ドナルド・トランプを大統領にする1つの理由になった。将来において、少数の地域が優位を得るだろう。McKinseyによれば、わずか25の都市・地域が、2030年までのアメリカの成長の60%を占める、という。技術のハブ、商品に恵まれた地域、観光業の中心地。他の都市・地域では、労働のシェアを減らし、資本を強化する各地の開発計画が進む。労働が生産コストの小さな部分を占めるようになれば、職場の海外移転は重要でなくなる。

顧客の近くに生産を移転することが重要になっている。貿易戦争が起きる前から、サプライ・チェーンの見直しが進んでいた。3DプリンターやAIのような新技術、ソーシャル・メディア世代の顧客は何週間も待ってくれない。スピードが何より重視され、近接性が評価される。

この変化はアメリカ、そして、UK、フランス、ドイツ、イタリアで、労働のシェア低下を逆転させるだろう。アメリカにおけるリスクは、労働市場の変化がすでにある政治の分断を強めることだ。「取り残された」町の多くに、ヒスパニックやアフリカ系アメリカ人が住む。将来、急速に自動化される分野に、若者たちは最初の職を見出す。他方、50代以上の労働者たちはスキルの低下による失業のリスクが高い。それは文化戦争、世代間戦争、政治的ポピュリズムに向かう。

解決策は、もっと人に投資することだ。税制を改正し、労働者に投資する企業にも、機械への投資と同様に、税を控除する。


 経済のデジタル化と地政学

FT June 30, 2019

Age of the expert as policymaker is coming to an end

Wolfgang Münchau

PS Jul 1, 2019

Farewell, Flat World

JEAN PISANI-FERRY

かつて、Gunnar Myrdal in Sweden, Andre Gunder Frank in the United States, and François Perroux in Franceは、諸国間で不平等が拡大することを警告した。しかし、その後の歴史は、貧困国の一部が急速にキャッチ・アップしたことを示している。Thomas L. Friedmanthe New York Times)が2005年に書いたように、世界は平準化した。The World is Flat.

情勢は再び変わった。無形資産への投資、金融・為替レートにおけるデジタル・ネットワークが、世界経済の中心性を再建したからだ。世界はもはやフラット(平坦)ではない。

ますますデジタル化する経済では、ハブ・アンド・ポークの構造が多くの分野で見られる。インターネット和その構造を効率的なものにしたが、新たに生まれた集中化は政治的に利用されるようになった。「相互依存の政治的武器化」である。それは非対称性を増す大国間の地政学を再現している。

世界金融危機後も、ますます金融は集中化とドルへの依存を高めている。それは、変動レート制によってアメリカの金融政策の効果を遮断できる、という経済学の主張を否定するものになった。たとえば、韓国とブラジルの貿易不均衡を、ウォンとレアルの為替レートが決定する効果はない。国際取引ではドル建を使用するからだ。資本の流出入を抑えるためには、為替レートの変動制ではなく、監視と資本規制が必要になる。

世界では、不平等を拡大することも、キャッチ・アップすることもなくなり、大国間で地政学的争いが復活する。


 トランプのエゴによる外交

The Guardian, Sun 30 Jun 2019

The Guardian view on Trump and Kim: an unsatisfactory sequel

Editorial

FP JUNE 30, 2019

Trump Just Gave North Korea More Than It Ever Dreamed of

BY MICHAEL HIRSH

FP JUNE 30, 2019

Trump’s Ego Is Officially a Foreign Policy Crisis

BY JAMES TRAUB

イランのローハニ大統領は憤慨していた。アメリカのドナルド・トランプ大統領は、イランとの核合意を離脱すれば、嫌がらせをして、一気に屈服させることができる、と確信しているからだ。

トランプの認識力には限界がある。しかし、彼はアメリカ外交の性格に無知である。彼は自分の立場の正しさを確信しており、その見解を受け入れない者が彼に何かを起こす、とは考えない。これは、トランプ版の「帝国の慢心」だ。

2次世界大戦後のアメリカ外交は、アメリカの行動の結果を考慮する者と無視する者との闘いであった。1947年、有名な手紙で、George Kennanは、ソ連に傾くリベラル派にも、戦術もなく、モスクワを脅迫するタカ派にも、警告した。

トルーマンとアイゼンハワーは、一般に、不要な挑発を避けた。しかしケネディーは、いかなる代償を支払っても、自由を引き継ぐ、と断言した。キューバ・ピッグズ湾への侵攻と、その後の核と通常兵器の拡大。フルシチョフの周りのタカ派は、アメリカがソ連を押し戻す準備をしている、と確信した。そして、ベルリンに壁を築き、核実験禁止条約から離脱し、最後にはキューバに核ミサイルを設置しようとしたのだ。マクナマラ国防長官がのちに認めたように、すべてはソ連の能力と意図を誤解したことで起きたのだ。

ケネディー、ジョンソンがベトナム戦争に突き進んだこともそうだ。彼らは、共産主義者たちが発展途上の世界を支配する気だ、と理解した。彼らはベトナムを、グローバルなチェス盤の上で中国が進めた駒としか見ていなかった。早くも1965年には、中国がベトナムの永遠の敵であり、北ベトナムの指導者ホーチミンは、共産主義のイデオロギーを持ったナショナリストであり、自分の軍隊で勝利している、とモーゲンソーが指摘した。ワシントンが戦争を激化させる結果、ベトナムは中国に接近するだろう、と予測した。

ジョージ・HW・ブッシュは、世界情勢を深く理解する、まれな大統領であった。彼はソ連の指導者ゴルバチョフがソ連の解体を管理するのを助ける必要があると理解していた。そのためにゴルバチョフを脅すことをやめ、敵ではなく同盟者として扱った。

しかし、もちろん、ジョージ・W・ブッシュは、911後のアメリカにおいて、その正義の感覚に翻弄された。アメリカは自由と正義を守る。それはどこにおいても人民にとって正しいから。安全保障は、そこに何が起きるか、ではなく、われわれは何者か、という問題であった。まさに、イラク戦争に進む先見主義だ。

バラク・オバマは、2009年、カイロ演説で、イスラムに敬意を示し、植民地主義のもたらした害を認めた。相互を尊敬する新しい関係を築こうとしたのだ。オバマはイランにも関係改善を求め、それが失敗しても、国連安保理の制裁を引き出して、イランを交渉の席に就かせた。

トランプは、もちろん、ジョージ・W・ブッシュのような自己催眠型の理想主義に苦しむことはない。彼の盲点は、信念ではなく、エゴだ。これまでは、アメリカの巨大なパワーがあったから、結果を気にすることなく、他国をいじめる本能に従うことができた。彼の、戦争を嫌う性格が、好戦的な顧問たちの助言を拒むように願うしかない。

他方、民主党の大統領候補たちは、外交政策を、国内の価値を延長して語っている。確かに彼らが言うように、アメリカは18年間も戦争し続けているし、外交と開発援助で問題を解決するのが良いだろう。しかし、われわれが生きる現実の世界には、それは十分に当てはまらない。オバマがかつて述べたように、世界をありのままに学ぶべきだ。

FP JUNE 30, 2019

One Small Step for a President, One Giant Leap for Pyongyang

BY ANDRAY ABRAHAMIAN

FT July 1, 2019

Donald Trump’s casual treatment of South Korea may embolden the North

Bronwen Maddox

NYT July 1, 2019

The Trump-Kim Meeting Was Great TV. It Was Also Something Much More Important.

By Joel S. Wit


 リベラリズムとは何か

The Observer, Sun 30 Jun 2019

The Observer view on liberal values being as vital to the world order as ever

Observer editorial

プーチン主義がリベラリズムに代わる統治のモデルだ、というのは吐き気がする。グロズヌイやアレッポで市民たちを虐殺したのはだれか? 今もなお、イドリブで無辜の民を殺害し続けているのはだれか? Anna PolitkovskayaAlexander Litvinenkoを殺害したのはだれか? ウクライナ上空でマレーシアの民間航空機MH17を撃墜し、298名を殺題したのはだれか? 

FT July 2, 2019

The Russian oligarchs are gone. Long may they prosper!

Henry Foy

FT July 3, 2019

Liberalism will endure but must be renewed

Martin Wolf

リベラリズムとは何か? アメリカ人は、保守主義の反対がリベラリズム(リベラル)だと考えるが、それは違う。アメリカは、リベラルな考えで移民が作った国である。ヨーロッパにおいて、リベラリズムとは権威主義の反対である。

リベラルの語源は、ラテン語の自由な人、すなわち、奴隷の反対である。リベラリズムは哲学ではなく、その人の態度である。個人の人間性を信じ、人は自分のことを自分で決める、その能力を信じる。自分の計画、自分の意見、自分で公共の生活に参加する。

人々の活動の自由は、経済的・政治的な権利として保障され、制度がこれを守る。法の独立性が何より重要だ。経済主体として市場で協力し、自由な新聞や、政党の組織化が保証される。私的な利益と公共目的は区別され、汚職は処罰される。市民意識と寛容さが重要だ。

個人の自由と大きな政府とは、どちらもリベラルであることができる。そのバランスはいろいろだ。しかし、プーチンのロシアはリベラリズムの敵である。Anders Aslundが論じたように、ロシアのクローニー資本主義は、ツァー(ロシア皇帝)による専制国家の伝統にしたがうものだ。プーチンは、1990年代に、萌芽的な資本主義と民主主義の制度、法の支配、を絶滅させた。垂直的な権力の管理をクローニーに委ね、彼らは国家に制限のない権力を行使する。

しかし、プーチンが1つだけ正しい点は、リベラリズム、リベラルな民主主義が困難に陥っている、という主張だ。特に、移民の流入と不平等の拡大に、効果的な対応策を示していない。大衆の不満は、リベラルな民主主義の規範を無視する指導者に権力を与えた。微妙なバランスが崩れている。「非リベラルな民主主義」とは、リベラルでも、民主主義でもない。

リベラリズムはユートピアの計画ではない。永遠に進歩する作業なのだ。人間の行動を信じて、共に生きる技術である。それは出発点でしかなく、たえざる適応と調整が求められる。プーチンには、こうした考えがない。強制力と虚偽に依拠する社会秩序のほかは、考えることができない。われわれはそうではない。プーチンよりももっとうまく、もっと素晴らしい秩序を築くだろう。

FT July 3, 2019

Populists beware: liberalism can be a fighting creed too

Janan Ganesh


 イランの核武装は避けられない

NYT June 30, 2019

Trump’s Iran Strategy Will Fail. Here’s Why.

By Narges Bajoghli

NYT July 1, 2019

Iran Is Rushing to Build a Nuclear Weapon — and Trump Can’t Stop It

By John J. Mearsheimer

トランプ大統領は、イランが核兵器を保有しないことを確実にしたい、という。しかし、彼の政策は、まったく逆の効果を持つ。テヘランは核武装する強力な動機を与えられるだろう。同時に、アメリカがそれを阻止することはますますむつかしくなる。月曜日、イランの新聞は、彼らが2015年の核合意で要求されたウラン濃縮の限界に達した、と述べた。

この1年のアメリカによるイラン外交は、イランの指導者たちに2000年の最初の10年で核武装しておくべきだった、ということを鮮明に示している。

まだ軍事衝突は起きていないが、アメリカはイランに宣戦布告しているに等しい。広範な経済制裁を科して、イランに屈服を求めている。ポンぺオ国務長官は、アメリカやその同盟諸国の利益に従って、イランは外交政策を変えねばならない、と宣言した。「最大限の圧力」をかけることで、トランプ政権は主権国家イランの生存を脅かす。

歴史が示すように、大国が敵に対して激しい処罰を科す場合、禁輸、制裁、包囲、空爆、それらが標的となった国を降伏させたことはほとんどない。1990年代に10万人のイラク市民を犠牲にしたアメリカの制裁もそうだった。ナショナリズムは強烈だ。指導者が敵に降伏するより、ともに戦う。

国家は強制圧力に降伏するのを嫌う。なぜなら、降伏することで、強国の要求がエスカレートするからだ。

イランはすでに、制裁を我慢するだけでなく、報復すると表明している。その場合、トランプ大統領は再び報復し、制裁をエスカレートするだろう。両国は、古典的な制裁エスカレートのスパイラルに入る。イランは、確実に、自身で核兵器を持とうとする。それはイランにとって究極の抑止力となる。なぜなら敵は、核武装した国に攻撃しないからだ。特に、その国が第1撃を生き延びる場合に。

核武装は、明らかに、イランの戦略的な条件を改善する。もちろん、ワシントン、テルアビブ、リヤドはそれを何よりも嫌う。しかし、その結果は避けられないだろう。アメリカはイランと戦争し、占領しないだろう。強硬派はイラン空爆を主張するが、それは核保有をせいぜい数年遅らせるだけだ。

トランプの政策はアメリカの立場を身動きできない位置に追い込む。イランの指導者たちは、当然、トランプを信用しない。たとえ合意しても、トランプは離脱することを知っている。もしトランプが緊張を緩和するために制裁を解除すれば、それは交渉の席に就くためにテヘランが要求していることだが、アメリカ国内の強硬派に責められる。イスラエル、サウジアラビア、その他の湾岸諸国も彼を責める。

イランの核武装を避けるわずかな可能性は、アメリカが政策を逆転させることだ。まず、トランプは強硬派を切り離す。究極的には、2015年の核合意に戻ることだ。制裁を緩和し、経験ある、公正な姿勢の代表を送って、交渉する。トランプは、共和党からも、有力な資金提供者からも、イスラエルやサウジアラビアのような同盟国からも、批判されるだろう。その嵐に耐える必要がある。

残念だが、トランプは政治的コストを払って失敗した政策を逆転するより、イランへの圧力を強める。その失策の結果は、イランが核保有国になることだ。

FP JULY 1, 2019

How Close Is Iran to a Nuclear Bomb, Really?

BY LARA SELIGMAN

SPIEGEL ONLINE 07/02/2019

Former Secretary of Defense Panetta on Iran

'You Can Create Chaos, but You'd Better Have a Plan'

Interview Conducted by Roland Nelles

FP JULY 2, 2019

Iran Isn’t Trying to Build a Bomb Tomorrow. It Wants Sanctions Relief.

BY GÉRARD ARAUD, ALI VAEZ

FT July 3, 2019

The complex brinkmanship behind Iran’s nuclear response

Andrew England


(後半へ続く)