IPEの果樹園2019
今週のReview
7/1-6
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イスタンブール市長選挙 ・・・米中新冷戦の将来 ・・・ボリス・ジョンソン ・・・イランとアメリカ ・・・トランプの間違った政策 ・・・香港民主化デモ ・・・ユーロ圏改革 ・・・Brexitの幻想と現実 ・・・Libraデジタル通貨の時代 ・・・社会契約の再建 ・・・トランプとウォレンのドル安政策 ・・・民主党の大統領候補者争い ・・・ポピュリストの時代 ・・・サルヴィーニの変身
[長いReview]
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主要な出典 FP: Foreign Policy,
FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York
Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● イスタンブール市長選挙
FP JUNE
21, 2019
What
Istanbul’s Voters Want
BY FARIBA NAWA
与党Justice
and Development Party (AKP)の市長候補、Binali
Yildirimが、野党候補Ekrem Imamogluに、わずか1万3000票で敗れたとき、彼らは驚いた。
最大の人口をもつ、最も裕福な都市、イスタンブールはトルコの政治を決定する。エルドアンも市長として、イスタンブールを巨大な政治マシーン、すなわち、財源と草の根運動の拠点とした。
春の市長選挙に敗北したことは打撃であった。25年の支配を、AKPは容易に手放そうとしなかった。そして選挙委員会に調査を命じ、委員会は無効票が多く、再投票が必要と結論した。
野党Republican
People’s Party (CHP)は、再投票を勝利の簒奪と考えたが、憤慨し、あきらめるより、支持者たちを情熱的な選挙運動に向けた。
AKPは疑いなくイスタンブール市民の生活を改善した。水道や医療の改善、マイノリティーや女性の権利を高めた。そのせいで、エルドアンは高い支持を得たのだ。
しかし、最近は、与党の姿勢に市民の反発するものが増えた。たとえば、国際女性デーに、警察はデモ隊を催涙ガスで弾圧した。大統領を批判するジャーナリストや批判的な主張をする者を逮捕し、侮辱罪で訴えた。
イスタンブールの有権者たちは、トルコの活発な民主主義を守ろうとしている。支持政党が違っても、彼らは投票による市民たちのパワーを信じている。今でも、トルコの選挙は非常にクリーンである。
利害の重なることはあるが、有権者たちは分極化している。低所得の、信仰に篤いAKP支持者たちは、過去20年間で中産階級に上昇し、そのことを恩義として、AKPに投票する。時間とともに批判的な意見も増えたが、なお、AKPに忠実である。
野党はバラバラであり、強い指導者が存在しない。あるいは、弱小な第3党に投票する、という有権者も、彼の良心に従うだけだ。
FT June
24, 2019
Istanbul
loss marks tectonic shift for Turkey
David Gardner
Ekrem Imamogluはエルドアンの地盤であるイスタンブールで、彼の元首相Binali Yildarimを、9%も差をつけて破り、市長になった。エルドアンとAKPは、2002年後半に政権を執ってから、13回連続で選挙や国民投票で勝利し続けていた。そのシナリオが狂った。
2016年半ばにエルドアンに対するクーデタがおきた後、逮捕われたジャーナリストの1人は、この結果を「政治的地殻変動」が起きた、とツイートした。
FT June 25,
2019
Losing
Istanbul should prompt a rethink by Recep Tayyip Erdogan
NYT June
24, 2019
A New
Dawn in Turkey After Erdogan Loses Istanbul
By Selim Koru
PS Jun
25, 2019
Istanbul
Shows How Democracy Is Won
DARON ACEMOGLU , JAMES A. ROBINSON
エルドアンRecep
Tayyip Erdoğan大統領が指名した選挙委員会が、5月に、イスタンブールの市長選挙の結果を否定したとき、世界は懸念した。しかし今、2度目の選挙結果を心配するのは、エルドアンである。
フィリピン、ブラジル、ハンガリー、ポーランドなど、他のポピュリスト指導者たちと同様、エルドアンも選挙によって権力を獲得し、その後、権威主義的な政策や制度の変更を進めてきた。現代のポピュリストたちが、以前のピノチェトのような独裁者と違うのは、権力を軍事クーデタや敵対者の拷問、投獄、殺害によって獲得するのではないことだ。
しかし、現代のポピュリストたちの弱点は明らかだ。それは投票である。エルドアンは、権力獲得後も、17年間の連続する選挙勝利を続けてきた。それは、敵陣営を分断し、経済的に収奪し、文化的に追い詰める中で、組織的に支持者を動員して選挙の環境を勝利にむけて固めたからだ。
それでも国民の不満は高まっていた。野党が、従来は伝統的なイデオロギーに制約されていたが、もっとプラグマティックな目標を掲げる、柔軟な候補者を立てたことで、さまざまな反対派が協力したのだ。その目標とは、社会福祉、市民サービス、無駄の解消、汚職撲滅、そして、再選挙を求めた政府に対して、民主主義の再生、である。
FP JUNE
25, 2019
Imamoglu
Won the Vote, but Can He Save Istanbul?
BY PAUL OSTERLUND
FT June
27, 2019
Turkish
democracy will struggle to survive one-man rule
David Gardner
● 米中新冷戦の将来
PS Jun
21, 2019
The
Coming Sino-American Bust-Up
NOURIEL ROUBINI
米中の新冷戦は世界経済の重要な不確実性要因になっている。世界の2大経済が、たとえアメリカ連銀や他の中央銀行が金融緩和を行っても、2020年までに世界不況や金融危機を生じるだろう。
大阪のG20サミットで米中首脳の短い会談が予定されている。貿易戦争の停戦が実現するだろうか?
2020年のアメリカ大統領選挙まで、3つのシナリオが考えられる。
第1に、トランプと習が停戦に合意することだ。中国はアメリカからもっと輸入する。関税と非関税障壁を下げ、金融やサービス分野で外国からの直接投資を受け入れ、通貨価値の安定性と外国為替取引に関するデータの透明性を確保する。
技術に関しては、中国が知的所有権の保護を強化する。中国市場にアクセスする外国企業に、その条件として技術移転を要求しない。知的財産のスパイや窃盗を一掃する。ファーウェイは、厳しい条件付きで生き残る。
第2は、この半年から1年で、米中が通商、技術、新冷戦の全面的な戦いを始めることだ。交渉再開後、急速に立場は離反していく。アメリカは残る3000億ドルの中国からの輸入に対して関税率を25%に引き上げる。中国の、ファーウェイその他のハイテク企業が、アメリカ企業から部品やソフトウェアを購入することを禁止する。
中国は自国の経済を守るマクロ刺激策を実施する。アメリカに対する、関税以外の、アメリカ企業の追放を含む、報復措置を採用する。ファーウェイは中国国内市場で生き残る。
このシナリオでは、地政学的、軍事的な対立が激化する。東シナ海、南シナ海、台湾。北朝鮮、新疆、イラン、香港で、衝突が起きることも排除できない。
第3は、停戦が成立しないが急激な悪化もせず、米中は緩やかに紛争の水準を引き上げていく。新しい分野に追加するとしても関税率は10%にとどめ、ファーウェイのアメリカ製部品購入は一時的に認めることで、遮断のオプションを温存する。中国の指導者たちは、極端な報復措置を取らないが、経済的なダメージを抑える介入を続ける。
第3のシナリオの起きる可能性が最も高い。2020年11月に、もっと公平な立場で交渉できるアメリカ大統領が現れることを、中国は待っている。
管理された紛争の激化は、トランプにとって潜在的な政治的利益になる。そして、習にとってもそうだ。トランプは、民主党が彼を弱腰と非難する余地を与えない。紛争が続くことで、不確実性に対してアメリカ連銀は金利引き下げで応じる。アメリカ経済は、減速しても、不況を避けるかもしれない。
この場合、株式市場の反応は多くの要因に依存する。投資家の心理、成長率、金融政策。財政刺激策として、トランプは民主党とインフラ投資で合意するかもしれない。関税収入を、農民や、ラストベルトの中下層所得労働者をなだめるために、支給するかもしれない。
「管理された貿易戦争」は習近平の利益にもなる。中国経済は、財政、金融、追加融資で大きな後退を避けるだろう。人民元の為替レートも安くできる。レアアースの輸出規制、中国市場における外国企業への締め付け、ボイコット。
しかし、米中はともに、数十年の対抗が続くと知っており、短期的に、全面対立で世界不況を避けるほうが良い、と考える。長期の冷戦や、サプライ・チェーンを制限するために、その準備を中期的な視点で行う。
しかし、こうした戦略は安定したものではなく、数か月で第1か第2のシナリオに代わる。停戦合意の方が両国の経済は改善するだろう。しかも交渉が不確実さを残す限り、連銀は金融緩和を行う。その効果が経済に及ぶまでに時間がかかるからだ。トランプは、貿易のディールを成功させ、しかも好景気を自慢できる。
中国にとっても、貿易戦争を回避し、ハイテク部門の成長を守るのは良いことだ。長期の対立を覚悟しても、短期のコストを吸収するのはむつかしい。
G20で、表面的には、米中の一時的休戦が達成できるかもしれない。しかし、数か月で、第2のシナリオ(全面戦争)に代わる可能性が高い。アメリカは中国の約束を疑っている。しかし、中国の法律を変えることは、主権の問題として中国が拒んでいる。それは中国人にとって、19世紀の帝国主義的干渉を意味する。
貿易戦争はハイテク分野に及び、ファーウェイが交渉のカードになった。安全保障の強硬派や民主党が、トランプに強硬姿勢を要求している。他方、中国も多くの報復手段を持っている。中国のサプライ・チェーンや市場に依存するアメリカ企業に打撃を与え、アメリカ財務省証券の大量売却も最後の破壊的手段である。
アメリカの指導者たちは紛争のコストを軽視している。しかし、アメリカや世界の経済は減速しつつある。またアメリカには、中国のような経済への介入手段がない。伝統的な財政・金融政策の余地も少ない。トランプは選挙を恐れねばならないが、習近平は任期の制限を廃止し、さまざまな社会管理の手段を駆使し、インターネットの検閲を行っている。
政治的に、中国は長期的な視点を採る。習は1930年代の「長征」に言及し、自身を国旗に包み、ナショナリズムを助長するだろう。全面的な経済戦争は、トランプ再選を阻む手段になる。エスカレーションが、事実上の、アメリカにおける体制転換を求めることである。
習近平は絶対的な支配者ではない。中国共産党内のさまざまな派閥が、習にアメリカへの強硬策を求めている。面目を失い、権力を失うような取引を受け入れることはできない。トランプに2年間の戦術的な利益を許すより、直ちに全面戦争に向かう方がよい。
トランプも、弱い合意よりも、全面的な貿易・ハイテク戦争を好む。譲歩すれば、民主党に責められ、右派の評論家に融和策と非難され、ブルーカラー労働者への裏切りと言われる。トランプ政権の安全保障強硬派は、まるでDr.
Strangeloveのように、中国の体制は脆弱で、経済ショックによる政治の崩壊、体制転換ができる、と信じているようだ。その結果、政府はコストを無視して封じ込めに突き進む。
合意より、全面戦争。それが米中関係の将来である。
FT June
23, 2019
US
attacks on China’s economy reflect a double standard
Xie Feng
PS Jun
24, 2019
Corporate
America in the Crossfire
ANDREW SHENG, XIAO GENG
FT June
25, 2019
Balkanising
technology will backfire on the US
Henry Paulson
グローバリゼーションが30年間続いた後、われわれは「鉄のカーテン」が下りるのを見ている。各国の経済を動かす技術が、どのようなスタンダードに従うのか? それは安全保障と競争力に関する戦いであり、解決するルールも存在しない。この戦いは、世界のある地域を中国の、他の地域をアメリカと西側の、技術やインフラに依拠する選択に向かわせるだろう。
各国のサプライ・チェーンから互いを排除する動きは、グローバルな技術革新の生態系を破壊するだろう。それはアメリカ自身の技術力を損なうことになる。なぜなら、ファーウェイへの制裁は前例となるからだ。アメリカの制裁にさらされることを避けて、アメリカ企業との契約、アメリカのサプライ・チェーンに依存しなくなるだろう。技術のバルカン化は、中国だけでなく、アメリカを傷つける。
PS Jun
25, 2019
The End
of “Chimerica”
MARK LEONARD
SPIEGEL
ONLINE 06/25/2019
The U.S.
vs. China
In A
Newly Bipolar World, Europe is Caught in the Middle
By Matthias Gebauer, Peter Müller, Marcel
Rosenbach, Michael Sauga and Bernhard Zand
SPIEGEL
ONLINE 06/26/2019
EU
Commissioner on the U.S.-China Trade War
'Our
List of Countermeasures Is Ready'
Interview Conducted By Peter Müller and
Christian Reiermann
● ボリス・ジョンソン
The
Guardian, Sat 22 Jun 2019
Boris
Johnson's character should be an issue for the whole nation
Polly Toynbee
FT June
25, 2019
The real
questions we should ask ‘game-changer’ Boris Johnson
Robert Shrimsley
ジョンソンBoris
Johnsonは正しい。彼の私生活は政治と関係ない。ガールフレンドの部屋で大喧嘩しても、ほかのカップルにだってよくあることだ。しかし、命の危険があると感じた隣人は、警察を呼んだ。
ジョンソンはそれについて何も情報を与えなかった。彼の保守党党首選挙もそうだ。彼は保守党がBrexitを達成する、と主張する。新しい政治宣言と、いくつかの改善をすれば、その後に議会を解散して、Brexitが実現する。しかし、肝心の問題には答えていない。
ジョンソンが思いのままに実現することではない。保守党や議会の反対派がいる。離脱案の変更にはEUとの交渉が必要だ。わずか3カ月で何を合意できるのか。
FT June
25, 2019
Unlike
Boris, PatVal boss Luke Johnson cannot have it both ways
Matthew Vincent
PS Jun
26, 2019
Boris’s
Big Lie
GUY VERHOFSTADT
国民投票から3年経ったが、イギリスはEUを離脱していない。どのように離脱するのか、決まらないのだ。保守党の党首選に出た候補者たちの論争を聴いても、彼らが2年間のEUとの交渉から何も学ばなかったことがわかる。
残念ながら保守党の党首にはボリス・ジョンソンが優位にあり、次の首相としても、離脱キャンペーンを指導した嘘や誇張を続けそうだ。2016年、ジョンソンと仲間たちは、EU離脱で、イギリスは毎週3億5000万ドルの医療費が利用できる、と嘘の宣伝をした。また、イギリスがEUに加盟していれば、トルコから大規模に移民が流入する、と恐怖をあおった。
ジョンソンが広め続けている主な神話は、イギリスはメイの合意案を破棄できる、EUへの財政的な約束を無視できる、同時に、EUとの自由貿易協定の交渉を始めることができる。それほど愚かな主張でも、ジョンソンの支持者たちは、彼なら真のBrexitを実現できる、と信じている。
ポピュリストたちはいつもそうだが、まやかしの約束、見せかけの愛国心、外国人への非難、それらが現実に反したまま、混ざり合う。ジョンソンたちの「グローバル・ブリテン」のもそうだ。
グローバルな通商大国は、もちろん、EUである。最近、日本、韓国、カナダと合意した。EU加盟国として、イギリスは自動的に、70か国以上の国と、40以上の通商協定から利益を受けている。しかし、ジョンソンが主張するような、合意なしのハードBrexitをすれば、こうした市場の優遇的な扱いを失う。
EUは最近もメルコスールとの自由貿易協定を結ぶ交渉を終えた。7億5000万人におよぶ、双方の成長と雇用の機会を創りだす、ウィン・ウィンの合意である。EUはその集団的な購買力を駆使して、特に環境保護のためにも、グローバルなスタンダードを引き上げる。
Brexitは必要ないし、イギリスの経済利益を損なうものだ。
The
Guardian, Thu 27 Jun 2019
Boris
Johnson’s talk of ‘global Britain’ is about to look even more ridiculous
Guy Verhofstadt
● イランとアメリカ
NYT June
22, 2019
Trump
Plays Chicken With the Ayatollah
By Nicholas Kristof
FP JUNE
24, 2019
Dear
President Trump, Let’s Talk About Iran
BY STEPHEN M. WALT
イランとの核合意を破棄したことは失敗だった。私は、あなたが間違った人たちの助言を聴いていると思う。アメリカは、イランだけでなく、イランと取引あるいは投資する国を処罰する、という。それはイランの穏健派もアメリカから離反させる。
なぜこんな事態になったのか、理解するべきだ。アメリカの方が圧倒的に強いから、イランは何でも受け入れる、と考えるのかもしれない。しかし、そうではない。
イランのように、はるかに弱い国があなたに苦しめられても、言うことを聞かないとき、あなたはさらに苦しめる。あなたはいつでも、そうすることができる。それゆえ彼らは、脅されたことではなく、あなたの譲歩を求めている。それが、イラン指導者が言う、アメリカは敬意を示せ、ということだ。
彼らは言うだろう。アメリカのパワーの優位だけで降参するのではなく、公平な取引を求めている。
FT June
25, 2019
Iran and
the US are locked in a dangerous dance
Roula Khalaf
トランプは、アメリカの中東における軍事介入が成功しなかった歴史を知っており、本能的に、戦争に反対である。繰り返し制裁や挑発的発言で緊張を高め、エスカレートするが、戦争にはならないところで交渉し、合意する。トランプが「最悪」と呼んだオバマ政権の合意を、「最高」の合意に代えるだろう。
NYT June
25, 2019
Trump
Takes On China and Persia at Once. What’s to Worry About?
By Thomas L. Friedman
NYT June
26, 2019
This
Isn’t About Iran. It’s About China.
By Robert D. Kaplan
世界金融危機、5G通信機器とネットワーク、サイバー戦争の時代でも、地理がなお支配している。ホルムズ海峡で起きたタンカー襲撃がそうだ。湾岸諸国が世界の原油と生産能力のおよそ半分を占めている。
オマーン湾は、オマーンとイランとを隔てるだけでなく、オマーンとパキスタンとを隔てている。パキスタンには、すでに中国が進出し、国有企業がグワダルGwadar港にコンテナの拠点を築いている。北京は、道路、鉄道、パイプラインで、中国西部と結ぶ計画である。
言い換えれば、中国はすでに中東に入っているのだ。オマーン湾は、アメリカが中東から原油を輸入する航路であるだけではない。それは、中東と、インド亜大陸、東アジアとを統合する、中国の一帯一路の結節点である。
アメリカはイランとの戦争を煽るが、中国は貿易とインフラ建設で地域を結び付ける。資源豊富な中央アジアが、中国とイランとをつなぐ地域であり、イランは単に石油だけでなく、その人口規模と戦略的な重要性から、中国が関係強化を目指す国だ。アメリカの外交政策は、イランをますます中国に近づけている。
中国には、21世紀のユーラシアを見渡す、全体の地理と文化を理解する大戦略がある。しかし、アメリカにはない。近視眼的な、選択としての戦争をイランに迫っている。
FP JUNE
26, 2019
Pompeo’s
Hollow Plan to Beef Up Security in the Gulf
BY LARA SELIGMAN
● 富裕層
NYT June
22, 2019
Notes on
Excessive Wealth Disorder
By Paul Krugman
NYT June
25, 2019
I’m in
the 1 Percent. Please, Raise My Taxes.
By Eli Broad
● トランプの間違った政策
NYT June
22, 2019
Will
America Make Trump Great Again?
By Jamelle Bouie
PS Jun
24, 2019
Trump’s
Art of the Spin
STEPHEN S. ROACH
株価は上昇し、失業率も50年ぶりの低さである。アメリカの経済政策を批判する者はいない。客観的な、原則に基づく分析は無視される。それは大きな間違いだ。
時期を間違った財政刺激策、攻撃的な関税引き上げ、連銀への前例のない攻撃、こうした有毒な政策ミックスTrumponomicsには、もっと批判的な評価が必要だ。
政治家や評論家はいつでも政策論争を都合よく捻じ曲げるが、トランプは新しい水準を示している。連邦政府の財政赤字は今後10年間で推定1兆5000億ドルも増える。連邦債務は、2029年までに、第2次世界大戦後の最高水準、GDP比で92%を超えるだろう。こうしたことは重視されない。そして、「アメリカを再び偉大にする」として正当化された。
関税は消費者への課税であり、グローバル・サプライ・チェーンの効率性を損なう障害物だ。しかし、貿易相手国にアメリカの扱いをもっと有利にする、交渉のテコとして、それらが「武器」とみなされる。連銀の独立性に対する攻撃も、連銀の使命(雇用と物価安定の確保)を妨げるものとしてではなく、大統領のけん制として容認される。
こうした政策アプローチには3つの欠陥がある。1.意図とその影響とが結びつかない。減税は税制改革ではない。スムート=ホーリー関税法の教訓が学ばれていない。関税を「美しい」と言うのは無知である。1970年代の高インフレを鎮静化したのは、ポール・ボルカーが連銀の独立性を前提できたからだ。
2.故M.フェルドスタインが長く主張してきたように、財政赤字、関税、金融政策には関係がある。財政赤字は国内貯蓄を減らし、それが資本流入と大きな貿易赤字をもたらす。この関係を観ずに、アメリカは貿易赤字について中国を攻撃する。中国への関税は、効率的な中国の生産者から、もっとコストの高いサプライヤーに代える。それは増税と同じようにインフレのリスクを高め、金融引き締め策をもたらす。もし連銀が独立しているなら。
3.政策の影響は常に遅れる。低金利は債務への支払い負担を減らすが、だから財政赤字を増やすと、財政赤字の超過額が債務として累積する。長期的に、低金利は続かない。同様に、関税や金融政策の影響も、そのすべてが現れるには12-18カ月かかる。
現在のアメリカ政府に特徴的なことは、大統領が短期的な方便に流れることではなく、政策の効果をよく知る者がそれを抑制できないことだ。1990年代初めに設立された国家経済会議は、その役割を果たしていたが、現在の議長Larry
Kudlowは自由貿易を支持しているが、トランプ関税や連銀攻撃を擁護する。共和党も自由化を支持してきたが、大統領には迎合する。
政府が歴史や政策の合理性を無視するとき、その結末は快適なものではないだろう。
● 香港民主化デモ
FP JUNE
22, 2019
In Hong
Kong, the Freedom to Publish Is Under Attack
BY JAMES TAGER
FT June
24, 2019
Hong
Kong protesters have learnt from their 2014 predecessors
Alice Woodhouse
数千人の若者たちが黒い服を着て香港のメインストリートを埋めた。審議を中断した送還条例に抗議するためだ。それは以前の抗議運動、失敗に終わった2014年の雨傘革命の遺産であることが明白だ。
デモに集まった10代、20代前半の若者たちは、香港行政府の隣の同じ通りに集まった。それは2014年に普通選挙権を求めた3カ月に及ぶ占拠の焦点であった。再び、デモ隊に軽食を提供する拠点が現れ、催涙ガスを防ぐゴーグルや、バリケードを築くためのワイヤが供給された。群衆の奥から水を求める声が届くと、手から手へ、水のボトルが渡された。今回、デモ隊は認証を避ける手術用マスクをしていた。それは2014年の指導者たちが投獄されたからだ。
6月のデモは、香港の史上最大規模に達した。組織した者たちは、週末、2つの平和的デモが、100万人、200万人を集めた、という。しかし、6月12日の行政府に向かうデモには、150発の催涙弾、ゴム弾が撃たれた。
市民的不服従の思想が、彼らに広がっている。2014年のデモに参加し、今も投獄されている方角教授Benny Taの広めた考えだ。彼らのモットーは、格闘家ブルース・リーの言葉、“Be
water, my friend”である、日常生活を維持しながら、民衆とともに抵抗を続ける、水のように柔軟な姿勢を表している。
先週、雨傘革命の指導者の1人、Joshua Wongが釈放された。しかし、彼は今回のデモを指導していない。集団討議の後、決定はメッセージアプリで伝達された。われわれは自分の意志に従う。自分で決断する。
PS Jun
25, 2019
What
Carrie Lam Should Do Next
CHRIS PATTEN
ラム行政長官は、市民の強い反対を考慮し、送還条例をただちに取りやめ、警察の行動に関する独立の調査機関を設置せよ。
FT June
26, 2019
How Hong
Kong’s protesters can stop Beijing muting them
Yuan Yang
香港政庁がジャミング(通信妨害)を用いた明白な証拠はないが、それを疑う事情は存在する。北京は、2009年、新疆の暴動に対して、外部とのインターネット接続を遮断した。
高度に集中した通信手段は抵抗運動を分散型に拡大できるが、こうした遮断や介入によって、政府が住民を管理する手段となる。
PS Jun
26, 2019
Three
Lessons from the Hong Kong Protests
STEVE TSANG
中国は、香港行政長官の選考過程が、著しい欠陥を持つものだと認めねばならない。
The
Guardian, Thu 27 Jun 2019
Beijing
will not rest until it controls Hong Kong. We must keep fighting
Joshua Wong and Johnson Yeung
FT June
27, 2019
Dollar
peg shields Hong Kong from market turmoil
Henny Sender
● 金正恩
FP JUNE
22, 2019
Kim Jong
Un Wants It All
BY JEFCOATE O'DONNELL
NYT June
23, 2019
Why Xi
Jinping Is Courting Kim Jong-un
By John Delury
● ユーロ圏改革
FT June
23, 2019
Doing
‘whatever it takes’ to sustain the eurozone
Wolfgang Münchau
FT June
24, 2019
Looming
elections in Greece pose big risks for investors
Thanos Papasavvas
FT June
24, 2019
Macron
holds on to hope for shrunken eurozone budget plan
Martin Sandbu
フランスのマクロン大統領は、不況期に需要を維持する財政安定化装置をユーロ圏が持つことを願った。エコノミストたちは、ユーロ圏が需要を安定化できなかったことでユーロ危機は悪化した、という点で一致している。しかし、独仏やユーロ圏諸国間の話し合いが1年以上も続いた末に、「安定化」の言葉は消滅した。
金曜日のEUサミットで残ったのは、「収れんと競争力」のために投資と構造改革を融資する計画だ。その規模はまだ決まっていないが、小さなものになりそうだ。昨年12月に、オランダの財務大臣Wopke Hoekstraが「巨象のように始まった提案が、小さなネズミになって、今や、かごに入った。」と述べたが、彼らの勝利である。
マクロンの最初のプランを支持する者たちにとって、これは敗北である。パリはベルリンとの協力を渇望しすぎて、オランダなどの、いわゆる「新ハンザ同盟」のような、北欧諸国の待ち伏せに備えがなかった。
2017年にマクロンの経済計画を描いたJean
Pisani-Ferryは、「フランス側の戦略的な失敗があった」という。むしろ問題は、オランダが攻撃したとき、なぜドイツはあれほど受け身であったのか、である。マクロンの計画は、生産性を高めるメルケルの構造改革案でもあったからだ。
しかし、パリの野心は終わっていない。予算の枠組みにマクロ経済的な安定化を含めることは可能だ。たとえば、各国の予算と合わせて融資する割合を、景気循環に応じて変える。フランス財務相のスタッフは言う。「もし安定化に関するコンセンサスができれば、すべての法的、技術的な部品がそろう。後は使用するだけだ。」
ユーロ予算の経済機能を削減するハンザのキャンペーンは成功した。しかし、パリの戦いは政治の舞台に移行する。政府債務危機が示したように、政治家たちは何かしなければならないとき、利用可能な道具を創造的に駆使するだろう。
ネズミがかごを抜け出すかもしれない。
FT June
25, 2019
I prefer
to invest beyond Germany and the euro for now
John Redwood
FT June
26, 2019
Three
qualities the next European Council leader needs
Luuk van Middelaar
FT June
27, 2019
Negative
interest rates take investors into surreal territory
Gillian Tett
● インターネット規制
FT June
23, 2019
Governments
and tech companies can build a better internet
Nick Clegg
● アメリカの好況長期化
FT June
23, 2019
A long
economic recovery is not necessarily a better one
Rana Foroohar
● Brexitの幻想と現実
FT June
24, 2019
Should
the markets fear a Halloween Brexit?
Gavyn Davies
The
Guardian, Mon 24 Jun 2019
We set
four tests for Brexit. Three years on, all of them are failing
Anand Menon and Jonathan Portes
Brexitは成功だったのか? もちろん、周恩来なら、1972年にフランス革命の影響を「まだ述べるには早い」と応えたように、実現してもいないBrexitを評価することは拒むだろう。
しかし、Brexitは、事件ではなく過程である。予測される限りの将来において、Brexitがイギリス政治と経済を支配するだろう。
2017年2月、われわれはChanging EuropeのUKで、Brexitに対する4つの「テスト」を立てた。われわれは、UKとEUとの交渉ではなく、その成果に注目した。
国民投票の過程で、そして、その後も、国家の達成すべきことでは分断が続いているが、共通していることも多い。双方とも、UKは開放型の、外向きの国であること、経済成長と社会的結束が重要であること、公共サービスに投資し、改善すること、UKの国際的な影響力を保持し、しかも、われわれの運命は民主的にコントロールすること、を支持する。
投票後の終末論的な危機は起きなかったが、経済的ダメージは顕著である。EU離脱投票は、1回限りのインフレ・ショックではなく、投資・貿易・移民に持続的な影響を与えている。全体として経済は悪化し、イギリスはすでに開放的でなくなっている。社会は公平さを失い、政治的な地殻変動により、矛盾するようだが、少なくとも一時的に、UKは経済のコントロールを失った。
UKは将来、投資・貿易・移民について政策を大きくコントロールするだろう。問題は、名目的な主権の獲得が、Brexit後の政治に有権者の声を重視する変化をもたらすことだ。
もっとも困難で、不確かな問題は、人々の不満に応えることだ。UKをより公平な社会を変えるには、何をすべきか。メイは、社会の不正義を根絶し、Brexitを「リセットの瞬間」にする、と演説した。
しかし、これまでのところ、必要な国内政策のためのスペース、時間、能力を政府は示していない。EU離脱後に、これは改善されるだろうか。この3年間、政治システムのパフォーマンスを見る限り、信用できない。
FT June
24, 2019
Brexit
is an idea for a bygone era
Gideon Rachman
戦略家は、権威主義的な中国、法を無視するロシア、中東や北朝鮮の戦争を懸念する。エコノミストは貿易戦争を、弁護士は国際条約を破棄するトランプ政権の「アメリカ・ファースト」を、環境保護論者と多くの有権者は気候変動を重視する。
ドイツが、もしくは、ヨーロッパの統合がイギリスにとって最大の脅威だ、とはっきり主張する者は少ない。しかし30年前には、多くの者がそう考えた。2016年のEU離脱投票でも、彼らがBrexitの知的、情緒的な基盤であった。
1989年のベルリンの壁崩壊後にドイツが再統一し、ヨーロッパ通貨が誕生し、政治統一が議論されたことは、1990年代初め、イギリスの保守党に衝撃を与えた。ドイツの支配という旧来の恐怖がよみがえったのだ。Brexit推進派の主要人物Boris Johnson, Nigel Farage and Michael
Goveは、この時代の政治に参加した。1989年、ブリュッセルで特派員となったジョンソンは、「ヨーロッパ連邦」に関する保守党の部族的な恐怖心をあおった。
30年経って、ドイツの率いるEU帝国を恐れるのは愚かである。今やドイツは、繰り返し、その平和主義を西側同盟諸国に批判されている。ブリュッセルやパリが求める経済同盟の深化を、ドイツが拒んでいる。
現代のBrexit支持者が唱える「グローバル・ブリテン」のスローガンも、その前提は1990年代の世界だ。EUは世界経済で重要ではなくなり、アジアや新興市場に多くの機会がある。自由貿易を目指し、グローバルな金融が拡大し、アメリカはアンカーとして信頼でき、ロシアはおとなしく、中国が新興市場を刺激してくれる。
どれ1つ今では正しくない。「合意なき離脱」によっても、WTOルールがあるから大丈夫、という主張も間違っている。アメリカはWTOの紛争解決メカニズムを妨げている。米中紛争が激化する最悪のタイミングで、UKはEUを離脱することになる。
もしジョンソンが首相になるなら、30年前の幻想を捨てるときだ。EUの集団的な力を利用して、ロシアの攻勢や気候変動、貿易戦争に対処するべきであり、EU離脱を最優先する、というのは暴論だ。
The
Guardian, Tue 25 Jun 2019
Britain
is now a remain nation. We can halt this rush to Brexit
Polly Toynbee
FT June
25, 2019
The
latest Brexit fantasy is the most absurd of all
NYT June
25, 2019
A
Fanatical Sect Has Hijacked British Politics
By William Davies
VOX 27
June 2019
Brexit:
Impacts and prospects
Matthew Bevington, Jonathan Portes
FT June
28, 2019
Brexit
stimulates vexed questions on a united Ireland
Frederick Studemann
(後半へ続く)