IPEの果樹園2019

今週のReview

6/17-22

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トランプの貿易戦争 ・・・アメリカの産業政策 ・・・関税と金融政策 ・・・イタリアの並行通貨 ・・・アメリカを再び恐れられる国にする ・・・シンガポールの自信と慢心 ・・・トランプの関税と金融政策 ・・・香港の送還条例と抗議デモ ・・・スーダンと民衆弾圧 ・・・ECB新総裁 ・・・日本人はロボットを恐れない

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 トランプの貿易戦争と新しい冷戦

FT June 8, 2019

China and the US are too intertwined to keep up the trade war

George Magnus

中国との関係を管理するアメリカの努力はすでに失敗している。アメリカの要求に対して北京は、中国の経済政策・産業政策の主権侵害だ、と主張する。中国人にとって、これは19世紀、20世紀の、西側との「不平等条約」に重なるものであり、共産党の主要な歴史観の一部である。

理想的には、政府援助や補助金の問題はWTOで扱うべきだが、トランプはWTOが嫌いだ。2国間アプローチで、よりむつかしいが、より有益な、産業や部門ごとの論争をすればよい。すなわち、地底財産権の保護や、市場アクセス、外国資本家による所有権の上限、である。

両国政府は、こうしたボトム・アップ式のアプローチを採用するべきだ。中国で活動する外国企業は、米中関係の広範なリセットを求めるトランプを支持しているが、引き続き中国の地方政府や中央政府の官僚と良好な関係を保っている。米中政府は、特別な産業や部門について、互恵性の原則に基づいて、ルールと制裁を交渉するべきである。それによって貿易戦争が一層の野蛮さを帯びることを避け、多くの企業や団体を争いから逃れさせる。

技術貿易は、鉄鋼や大豆の貿易と異なる。技術は真にグローバルな部門であり、その紛争は、2008年に銀行・金融部門がそうであったように、世界経済に対してシステミックな脅威となるほど、高度な統合を実現している。指導的な企業グループは、アメリカと中国だけでなく、UK、ヨーロッパ、そしてアジア中で、この戦争に巻き込まれ、中国やアメリカの法律に従うことを選択すると、他の法律で処罰されるリスクがある。

貿易戦争のエスカレーションは、サプライ・チェーンを分断し、ハイテク部門をバルカン化するのであり、即座にマイナスの効果を及ぼすだけでなく、明らかに、数年にわたるマイナス効果がある。経済の悪化が、中国の市場統合戦略を否定し、他の分野でも分断を招く可能性が高まる。

自己本位の関心からは自律化やデカップリングが求められる、と主張されるが、経済的理性に訴えることが遅すぎることはない。なぜなら中国経済は脆弱で、貿易戦争を回避したいと強く願っているからだ。中国はまだ、外国の技術やその輸入に頼っている。他方、アメリカの消費者と株式市場は強気であるが、2020年の大統領選挙が始まる頃、経済が容易に悪化する可能性がある。

米中の市場統合を求める経済的合理性は、和解できないような信念や行動があっても、圧倒的で、採用可能である。米中はともに、経済的・技術的に成功するか、ともにそれを失う危険がある。信頼関係を再建するための対話を続けることだ。週末、大阪におけるG20サミットはその出発点になる。

NYT June 8, 2019

Is It Too Late to Stop a New Cold War With China?

By Stephen Wertheim

オーウェルGeorge Orwellは、第2次世界大戦の勝利を祝うとともに、「冷戦」がすぐに始まると警告した。1945年のエッセー“You and the Atomic Bomb”で、彼は冷戦を「平和ではない平和」と書いた。核兵器は直接的な侵略を防ぐだろうが、超大国は他の方法で和解できない世界秩序を導く。そして、それぞれが他方を遮断し、敗退させようとする。アメリカの外交官、ケナンGeorge Kennanは、ソビエト国家を、それが崩壊するまで、封じ込めるべきだ、と進言して、冷戦のコンセンサスを形成した。

最終的にソ連は崩壊した。しかしオーウェルは、冷戦が第3国の介入をもたらす、と予測した。すなわち、「中国が支配する東アジア」だ。最近まで、彼の予測は間違いのように見えた。

今、トランプ大統領は中国との貿易戦争をエスカレートさせている。政治家、政策担当者、評論家たちは、両党から、彼にもっと先へ進むよう求めている。われわれは中国内遠野連戦の始まりを目撃しているようだ。

もしそうであれば、トランプはハリー・トルーマンだ。トランプの方がもっと辛らつだ。彼は「われわれの国をレイプした」奴らに復讐する、と誓う。それが制裁や関税だ。

オバマ政権の最後にも、ワシントンの官僚たちは中国が自由化と協力から離れることを懸念した。特に、ウイグル人の扱いだ。こうした懸念は正当なものだが、オバマは協力の利益を強調した。

トランプ政権になって、特にこの1年で、冷戦のパニックがワシントンに広がった。国務省のKiron Skinnerは、ケナン的な理論で、「まったく異なる文明」である中国との長い「戦い」を描いた。アメリカが反中国の姿勢に向かったのは、アメリカ側の不安が大きな理由であった。

トランプは排外的で、アメリカの問題の原因を、1980年代の日本や、その後は中国のような非西側の国に求めた。オルト・ライトの総帥であるバノンSteve Bannonが、中国はアメリカが直面する生存に対する脅威である、と断言したのは当然だ。

トランプの選出は、外交専門家たちをパニックに陥らせた。彼らは「孤立主義」を恐れ、アメリカのパワーを救出しようとした。それが、中国封じ込め、である。北京は理想的な敵である。地球規模の反撃を組織する理由になり、しかし、直ちに戦争が起きるわけではない。中国への強硬姿勢は、民主党と共和党が協力できる数少ない問題である。

これは、タカ派の共謀が不正直であるとか、不合理であるという意味ではない。アメリカがその利益を定義し、グローバルな支配を維持しようとするなら、中国はそれを脅かす。中国封じ込めは、かつてのソ連に対する十字軍と同じように、現時点で、すべてのものの利益である。貿易の利益、資本主義の拡大、組織労働者の利益。少なくとも、冷戦が行き詰まり、ベトナムで多くの死者を出すときまでは。

当時のコストは甚大であった。今もそうなるだろう。例えば、トランプは地球温暖化を否定しており、世界最大の温暖化ガス排出国、中国を非難している。しかし、温暖化を止めるなら米中は協力し、地球を救うための競争に資源を用いるべきだ。アメリカ人は権威主義的な中国と我慢して生きることができる。しかし、地球が生存不可能な状態になれば、死滅する。

リベラルはタカ派は、自由が生き残るために、という。しかし彼らは、トランプが権力を握ることも阻止できなかったのだ。中国を支配し、自分たちの意志に従わせると思うのか。冷戦は、非リベラルな勢力を抑制するより、むしろ蔓延させるだろう。トランプのようなデマゴーグたちが、「赤(中国)の脅威」を「イエロー・ペリル」に転化し、自国民の安全を守ると称して権力を集中する。

かつてウォレスHenry Wallace商務長官をトルーマンは解任した。ウォレスは再軍備や世界中の軍事基地に反対したのだ。それはソ連を不安にし、抑えるべき戦争を招くから、と。そして第1次冷戦がはじまった。

われわれは第2次冷戦を回避できるのか?

FT June 10, 2019

Businesses cannot ignore the US-China cold war

PS Jun 10, 2019

Should the Russians Hug the Chinese?

NINA L. KHRUSHCHEVA

FT June 12, 2019

Americans may not be ready for a new cold war

Janan Ganesh

NYT June 13, 2019

The World Grows More Dangerous by the Day

By François Delattre


 アメリカの産業政策

FT June 9, 2019

Plans for a worker-led economy straddle America’s political divides

Rana Foroohar

ドナルド・トランプは、「アメリカを再び偉大にする」Make America Great Againと唱えてきたが、それはアメリカ国内で何も変えなかった。常に、現実の、もしくは、脅しの関税を使って、敵を、そして同盟国も罰することだった。現状を破壊する能力は示したが、アメリカに持続的で、長期の成長を創りだす方法は何も持っていない。

2020年の大統領選挙を戦う者は、共和党の候補でも、それを示すだろう。21世紀の産業政策を通じて、アメリカを再び偉大にする。

先週、ウォレンElizabeth Warrenは「経済的愛国心のための計画」を発表した。それは、まるでトランプの経済顧問、ナヴァロが述べたような中身だ。「いわゆる『アメリカ』の大企業は、経済を支配し、アメリカ人に対する忠誠を放棄している。」 民主党は、グローバリゼーションにもっとも傷ついたいくつかの州の支持を取り戻さねばならないからだ。

アメリカ人は長い間、国家計画や「社会主義」を疑ってきた。間違った選択をして、債務を増やし、二重経済を創る。ウォレンは、アメリカの資本より、アメリカの労働者の利益を優先する、と言う。例えばドイツのように。ドイツは国際貿易に参加して成功し、同時に、国内では産業と労働者を支持している。彼女の答えは、「経済開発省」を創設して、アメリカ人の職場を改善し、研究開発に資金を供給する、というものだ。

消費者主導の経済から、労働者主導の経済へ。それは共和党の大統領候補を目指す者たちにも見られる発想だ。たとえばマルコ・ルビオMarco Rubioだ。共和党の主流派にも、トリクル・ダウン理論への疑いがある。「中国製造2025」はアメリカの政治家にも影響を与えている。

それはもちろん産業政策だ。アメリカ人が嫌う言葉である。しかし、ハミルトンの開発モデルに回帰するものだ。国立銀行を設立し、初期の共和国において、水力や資本を投資家に供給する政府・民間パートナーシップを始めた。その後、リンカーンもルーズベルトも、アイゼンハワーもケネディーもハミルトンから学んだ。

超党派のアイデアで、他の世界を損なわずに、「アメリカを再び偉大にする」というのは、最近のもっともよいニュースだ。


 関税と金融政策

FT June 9, 2019

The Fed thinks it is 1995 all over again

Gavyn Davies

PS Jun 10, 2019

Unconventional Thinking about Unconventional Monetary Policies

BARRY EICHENGREEN

先進諸国の政策金利は、不幸にして、低い水準で固まっている。正常な経済状態を保つ「自然利子率」が、数年間も、低下傾向を示してきた。アメリカの推定値は2.25-2.5%であり、それは連銀の現在の金利水準である。金融引き締めは、インフレ目標や成長の達成を損なうことになる。

次の不況が来るとき、連銀には金利を下げる余地が非常に少ない。マイナス金利の実験を行った中央銀行もあるが、それは商業銀行の利潤を損ない、銀行システムを弱めた。それゆえ、不況に対して中央銀行は量的緩和QEを再び行うことになる。

もしQE4が採用されたら、中央銀行の権限を超えた、という、それ以前のQE批判が生じるだろう。中央銀行が金融市場をゆがめた、イールドカーブの情報を乱した、中央銀行のバランスシートを過度のリスクにさらした、と。

反対する政治家たちは、中央銀行を政治家による「監督」の下に置くことを主張する。中央銀行の独立性は、ますます多くの非難にさらされる。独立性を守るために、中央銀行はQEを控えるべきだったし、将来も避けるのが最善だ、という意見がある。

しかし、QEの反対派は、そう考えない。もし世界金融危機の後に先進諸国の中央銀行がQEを採らなかったら、デフレの病が広まり、危機後の不況はもっと厳しかっただろう。批判家たちは何を言っただろうか? 金融政策の決定者が眠っていたとしても、非難は避けられないし、事態の悪化から、独立性は生き延びられなかっただろう。

モラル・ハザードについて、もう1つのQE批判がある。たとえば、イタリアの財政赤字に対する市場規律が失われた、と言うわけだ。しかし、それは違う。中央銀行は最後の貸し手として行動し、制限なしに政府の債券を購入したのだ。

その場合、ポピュリスト的指導者たちは、財政の制約を無視し、有権者に無責任な財政支出を約束するだろう。それは経済状態に異常な高揚を生じる。しかし、長期的には、債務のデフォルトや、あるいは債務の貨幣化によるインフレーションが避けられない。

したがって、中央銀行はQEを控えるほうが良い、と主張される。政府は財政規律の圧力を強く感じるだろう。それでも無責任な行動をとるポピュリスト指導者には、金融市場が機能する。金融市場で大幅に売られるなら、彼らの政治的な支持も失われる、と。

しかし、そうならないことも考えるべきだ。もし景気後退において中央銀行がQEを採らず、生産が大幅に減少した場合、ポピュリスト政治家たちは、主流派政治家やその指名した官僚たちが経済管理に失敗した、と責めるだろう。彼らはその証拠を得て、選挙戦で怒りをあおるだろう。さらに多くの政府がポピュリストに占められ、財政赤字は減るのではなく増えて、不安定性も増すだろう。

QEは意図しない結果をもたらす、という批判は正しいが、QEを控えることも意図しない結果をもたらす。注意せよ。

FT June 11, 2019

US regulators ill prepared for next downturn

Eugene Ludwig

PS Jun 11, 2019

America’s Unusual Recovery is Now Also its Longest

MOHAMED A. EL-ERIAN

アメリカは史上最長の好景気に入るだろう。連銀は金融危機後に、考えられないような金融緩和を行った。そのうち民間部門の自信も回復した。しかし、政府には次の不況に対する備えがない。

外国からの不況の影響があるだろう。また、弱い回復過程で、人々は不満を高めている。

アメリカはルールを重視し、世界貿易のアンカーであるべきだ。しかし、改革を推進する力を失っている。国際的な信頼が失われた。

FT June 12, 2019

The heavy cost of policing financial services

Paul Lewis

PS Jun 12, 2019

The US Economy’s Strange Decade

LARRY HATHEWAY


 イタリアの並行通貨

FT June 9, 2019

How Matteo Salvini could blow up the eurozone

Wolfgang Münchau

先週、イタリア議会で奇妙なことが行われた。並行通貨の導入に関する代議員たちの無記名投票だ。いわゆる、ミニBOTである。多くの代議士はその意味を理解しなかった、と私は疑っている。連立政権が「少額の政府債」を発行するとは、どういう意味なのか。

ミニBOTは、本物の貨幣のように見える。その額面はユーロ紙幣と同じになる。そのデザインによるが、イタリア人はミニBOTで納税できるだろう。それが理由となり、ミニBOTは支払い手段として受け入れられる十分な見込みがあるのだ。

ドラギは先週、もしそれが貨幣なら違法であり、もし債券なら債務を増やすことになる。それ以外ではない、と答えた。私は、この点で同意できない。ミニBOTは、貨幣のような性格を持った債券である。

ブリュッセルでは、欧州委員会がイタリアについて、過度の赤字国に対する手続きの最初の段階を進めている。それは最終的に、多くの段階を経て、財政的な罰金を科すものだ。財務大臣のEU理事会がこの問題をあつかわないとしても、秋に必ず再燃する。サルヴィーニは大型の所得税減税を主張しているからだ。

経済状態から見て、短期的な財政刺激策を支持されるだろう。しかし、大型の恒久的な減税は、イタリアの構造的赤字を追加する。明らかなEUルールの違反である。この対立は、財政危機を伴う可能性がある。イタリアの連立政権は崩壊するのか? しかし、2011年にベルルスコーニが失脚し、官僚に政権を奪われたのは、議会の多数支配を失っていたからだ。サルヴィーニは違う。現政権は大幅に多数を占めており、もし解散すれば、新しい選挙でサルヴィーニが勝利するかもしれない。

そこでミニBOTが問題になる。イタリアは、単独の劇的な行動でユーロ圏を離脱できない。それを試みる政治家は失脚するだろう。

サルヴィーニは何を望むのか? ユーロ圏を離脱することか。ミニBOTで財源を得て、減税する。そして、ユーロ圏を離脱する欠かせないステップを進める。財政政策は各国の主権に属しており、欧州委員会はイタリア政府がミニBOTを発行しても止めることはできない。しかし、もしミニBOTで納税できるなら、それはユーロ建の税収を減らす。債務に対する罰金や、即座に金融危機になるかもしれない。

ミニBOTは、ローマとブリュッセルとの対立を新しい水準に引き上げる。加盟国が独自通貨を発行し始めるなら、ユーロ圏の統一は失われる。それこそ、イタリア政府のユーロ懐疑論者の目的だ。

EUは問題を慎重に扱うべきだ。サルヴィーニを政治的に追い詰めるほど、ミニBOTを利用するかもしれない。そうなればユーロ危機が再来する。そして、再びECBが救出してくれることはない。

FT June 10, 2019

Italy can no longer afford to play games with Brussels

Martin Sandbu, European Economics Commentator

PS Jun 10, 2019

Europe Must Fix Its Fiscal Rules

OLIVIER BLANCHARD

金利が極端に低く、投資家たちが公的債務は安全だとみなす、すなわち、財政的、経済的に債務のコストが低い、そのような国で、金融政策の限界を補うために、より大きな財政赤字が必要とされるだろう。

2008年の金融危機後、それに続くユーロ危機で、金融政策はユーロ圏の安定化に重要な役割を果たした。しかし、金融政策の余地は小さくなっており、同じような役割は果たせないだろう。他方、財政政策は、ケインズ主義的なマクロ政策の重要な政策でありながら、景気変動には使用されてこなかった。その結果、なお、ユーロ圏の生産は潜在的な水準に達していない。その解決には、1国ではなく、ユーロ圏の諸国が協力する必要がある。

また、ユーロ圏の財政ルールを変更することも重要だ。金利が非常に低いとき、債務/GDP比率の60%は間違った目標だ。もっと高く設定するだけでなく、その水準を超えた加盟国が赤字削減するスピードも遅くするべきだ。予算赤字もGDP比で3%を超えてもよい。

政府がいくらでも借りてよい、というのではないが、その手をあまりに難く縛るのもよくない。新しい政策ルールは、第1に、欧州委員会が加盟国の財政政策に細かいチェックをしないことだ。真に持続不可能な大量の債務を生じつつある政府に対してだけ、介入すべきである。

財政政策の余地を決めるのは市場、すなわち、投資家たちだ。日本には巨額の国債残高があるけれど、投資家たちは懸念していない。他方、イタリアの債務は、投資家たちに大きなプレミアを要求されている。問題は、欧州委員会が満足することではなく、投資家たちである。

2に、金融政策は単独で機能しない。刺激は、ECBにできないような、財政支出の増大という形になる。しかし、それは輸入増として波及し、効果が消えてしまうので、どの国も自分たちの負担で行わない。

必要なことは、それ自体で財源を生み出すような大規模な財政刺激策を協力して行うことであり、あるいは、(より論争的だが)ユーロ債を発行して、共通財源から各国の財政支出を金融することである。

それらがない限り、財政政策は引き締め過ぎで、経済活動が沈滞し、単純な解決策を主張するポピュリストが支持されるリスクを高めてしまう。


 技術の分断

FT June 9, 2019

Donald Trump’s Huawei ban could backfire badly

Michael Jacobides

トランプの決定は、フアウェイに、Googleの技術に依存することが何を意味するか教えた。もはやフアウェイのよる独自技術の開発、Googleへの挑戦を阻止することはできないだろう。

FT June 13, 2019

US-China trade war risks global technology split


 ジョンソンと合意なきBrexit

The Guardian, Mon 10 Jun 2019

Behold, the Tory leadership candidates: all in denial, all in dreamland

Polly Toynbee

保守党の党首選挙が始まり、候補者たちのプロフィールが伝えられる。

ジョンソン、元外相、ボリス・ジョンソン。元Brexit担当大臣のDominic Raab,Jeremy Hunt外相、国際開発相のRory Stewart、など。

2010年から意識を失っていたリップ・ヴァン・ウィンクルが、突然、今、目覚めたら、何を思うだろうか。彼が見るものすべて、候補者たちが直面しているのは、イギリスの財政緊縮策の結果である。

ところが、候補者たちは次々に減税を唱えている。それほど減税すれば、どの公共サービスがまた削減されるのか。政権を担う能力がある、真剣な政党とは、まるで思えない。

FT June 11, 2019

Militant politics are breaking Britain’s constitution

Robert Shrimsley

FT June 11, 2019

Northern Tories have designs on old Labour heartlands

Sebastian Payne

FT June 12, 2019

Tory candidates’ tax pledges are irresponsible

FT June 14, 2019

A no-deal Brexit would be a lunacy wrapped up in a stupidity

Martin Wolf

合意なきBrexitの何が間違っているのか?

1.破壊的な影響。平和時に、主要な通商協定を一夜にして破棄する国はない。

2EUの協力はほとんど得られない。EUとは、道路、鉄道、空港、金融市場でつながっている。アイルランド国境の問題もある。EUUKを処罰しないが、第3国になる。その変更は大きい。

3.長期のコストは、EUよりも、UKにとって大きい。主要な市場を失い、サプライ・チェーンが破壊される。

4Brexitは交渉の終わりではない。より弱い立場になって、交渉を続けることになる。

5EUは、UKがより大きく苦しむことを知っている。同じコストでも、EUGDPUK6倍だ。

6.パートナーとしてのUKの信用が破壊される。

FT June 14, 2019

Boris Johnson takes a step towards becoming UK prime minister

Robert Shrimsley


 アメリカを再び恐れられる国にする

NYT June 9, 2019

Heroes of the Great Patriotic Trade War

By Paul Krugman

FT June 10, 2019

Donald Trump is making America scary again

Gideon Rachman

ドナルド・トランプの国内の批判者は、しばしば、彼をマフィアのボスにたとえる。

トランプの外交は、モッブの行動に負うものがある。彼は、「アメリカを再び偉大にする」と言う。それは、いわば、抑止力の回復だ。

彼らの理論によれば、オバマはあまりにも専門家的で、理詰めだった。マフィアの親分のように、モスクワのプーチンのモッブ、北京の習近平一家は、オバマ政権を弱腰と見て、自由にふるまった。だからアメリカは、もっと恐ろしい大統領を必要としている。喜んで野球のバットを振り回すような。

トランプを支持する部族集団は、これが有効に働いている、と思っている。たとえば、先週のメキシコだ。トランプが関税を上げると脅せば、メキシコ政府は、すぐに、なだめるための行動を起こした。すなわち、より多くの治安維持部隊を国境線に送り、メキシコ国内で難民手続きを増やした。

イランとの核合意を離脱したこともそうだ。そして、中国にも適用しようとする。フアウェイの幹部をカナダで逮捕させ、フアウェイと取引する外国企業まで制裁する、と主張している。国境を超える強制力の行使だ。

アメリカを訪れるビジネスマンは、逮捕されるかもしれないし、入国を拒否されるかもしれない。アメリカを回避してビジネスを行うことは、アメリカ市場の規模と技術的なつながりのために、非常に困難だ。トランプの武器は関税であり、彼の気分で選択される。また、ドルは世界の準備通貨であるという事実から、ドル建の取引を行うすべての国が、遠くから、アメリカの法律を強制される。

このアメリカに対する脆弱さをどうするべきか、他の諸国は頭を痛めている。ドルを世界通貨から追い出すことは、長く、困難な過程である。それに代わる通貨には欠陥がある。ロシアのルーブルも、中国の人民元も。中国の通貨当局は、人民元が完全な交換性を持てば、中国から大規模な資本逃避が起きて、自分たちのシステムに何か恐ろしいことが起きると心配する。

EUは法の支配を提供し、ユーロこそ十分な市場規模と、完全な交換性を持つ。しかし、ユーロの制度はまだ建築途中で、危機の記憶も生々しい。

こうして「アメリカを再び恐ろしい国にする」というトランプ政権は、それが成功するほど、人々から嫌われる。市場規模と並んで、アメリカのシステムに対する信頼こそが、グローバル経済の中心的役割をアメリカに与えてきた。しかし、トランプの経済的破壊力が増すほど、その信頼は損なわれ、外国人はアメリカを避ける道を探すだろう。

最終的には、それが見つかるはずだ。

PS Jun 11, 2019

Can Global Rules Prevent National Self-Harm?

DANI RODRIK

トランプのように、安全保障を理由に関税を引き上げることは、グローバル・ガバナンスを乱すものだ、と主張するだろう。しかし、国際ルールや国際機関が各国の政策を規制することが望ましい、とは言えない。国際機関も、国内政治より少ないが、特殊利益や団体によって影響を受ける。

国際ルールではなく、民主的なルールで高められたグローバル・ガバナンスが政策を規制することだ。

FP JUNE 11, 2019

How China Could Shut Down America’s Defenses

BY KEITH JOHNSON, LARA SELIGMAN

PS Jun 13, 2019

Tariff Man’s Bark Is Worse than His Bite

ANNE O. KRUEGER

FP JUNE 13, 2019

China Is Bluffing in the Trade War

BY SALVATORE BABONES


 鴻海と台湾大統領選挙

FT June 10, 2019

Foxconn: why the world’s tech factory faces its biggest tests

Kathrin Hille in Taipei

世界最大の電機製品契約製造会社、鴻海Hon Hai、もしくは、Foxconn Technology Groupほどグローバリゼーションの時代を示す企業はない。豊富な低賃金労働力の供給を受けて巨大な工場を経営し、近接するサプライヤーの群、自由貿易、電子機器の大衆市場が示す飽くことのないグローバルな需要を前提していた。

過去15年間、Foxconnは、さまざまなブランド、Apple, Dell and Huaweiなどから、パソコン、スマホの製造依頼を受けてきた。しかし、台北郊外で、このApplei-Phoneを組み立てる世界最大の企業、中国における最大の民間雇用主であるFoxconnは、生存の計画を示した。

45年前にこの会社の創設したTerry Gouが、引退して、台湾大統領選挙に立候補する、と発表した。しかし、さらに大きな挑戦は、政治からの脅威と、AIからの脅威という、2つに対抗して生き残ることだ。それらは台湾のビジネスモデルを破壊する力がある。

Foxconnは、米中貿易戦争のど真ん中にいる。その懸念から、鴻海の株価は2年間で半分に下落した。台湾の契約製造業企業は工場を中国から移転させ始めた。「第1の問題は、十分な労働供給がないこと。第2に、サプライヤーのネットワークがないことだ。」

台湾企業は決して多様化をしなかったし、少量でマージンの高いもの、高い技術のものを作ろうとしなかった。

Pegatronは、インドネシアやベトナムに工場を建設している。しかし、将来のことは予想できない。移動するより、自動化やロボットかもしれない。Foxconnも、巨大な工場で農村からの女子労働者が続けて自殺してから、工場の自動化を試みてきた。しかし、目標を下回っている。

テリー・ゴウは、演説で、台湾のハイテク産業が米中の橋渡しになる。アメリカに行ってその再工業化を助ける、と述べた。

彼の選挙運動は容易でない。しかし、彼は闘う気だ。


 モディとヒンドゥー・ナショナリズム

FT June 10, 2019

In glorifying Gandhi’s killer, Indian hardliners are creating a new icon

Amy Kazmin

FP JUNE 13, 2019

How Hindu Nationalism Went Mainstream

BY KANCHAN CHANDRA

特にBJPは、インドのナショナリズムをヒンドゥー教の拡大・支配に同一視する。

FP JUNE 13, 2019

Modi’s Nationalism Is Spoiling His Global Brand

BY MICHAEL KUGELMAN


 ハイテク企業の規制

FT June 10, 2019

The case for not regulating Big Tech

John Thornhill


(後半へ続く)