(前半から続く)


 2つの1989

PS Jun 2, 2019

Deng Xiaoping’s Victory

IAN BURUMA

1989年春、中国の大規模な抗議デモは、北京の天安門広場に集まったが、反共産主義革命は失敗したように見えた。63-4日の弾圧と並行して、中欧では政治的自由が勝利した。最初はポーランドとハンガリーで、その後、政権崩壊は東欧全体に広がった。2年以内に、ゴルバチョフの改革によって亀裂を生じたソ連邦も内部から崩壊した。

これらの民主化革命は、その数年前に起きた北東アジアや東南アジアの「人民パワー」反乱に続くものだった。リベラルな民主主義が永久に勝利した、と考えた者は多かった。資本主義と開かれた社会とは共生関係にある。それに代わるものはない。

中国は異常値だと思われた。しかし、鄧小平は資本主義を受け入れたのではなかった。それは権威主義的な資本主義であった。鄧は、「先に豊かになる」、「裕福であること」を称賛したが、それは天安門広場に戦車を導入したイデオロギーと同じであった。そして、外国投資家が去ることを心配したが、世界は13億人の市場をあきらめないだろう、と共産党は考えた。

その後の経済の拡大は、都市の教育を受けた住民に大きな利益をもたらした。彼らの多くが1989年のデモに参加した学生だった。シンガポールの裕福な市民、あるいは日本の市民が示すように、それは同じ取引だ。もちろん、これら2国は独裁国家ではないが。・・・政治にかかわるな。一党支配体制の権威を疑うな。お前たちが豊かになる条件を守ってやる、と。

今や、中国の人々は、天安門事件のことを聞かれると、ナショナリズムによって反発する。ロシアのプーチンは、中国ほど成功していないが、同じモデルを採用した。ハンガリーなど、中東欧でも、一党支配体制の資本主義が繁栄している。

中国は異常値ではなかった。非リベラルな資本主義が、世界中の専制支配者に、魅力的なモデルになった。30年前に共産主義体制を倒した諸国でもそうだ。中国がその先駆者である。

NYT June 2, 2019

After Tiananmen, China Conquers History Itself

By Louisa Lim

The Guardian, Mon 3 Jun 2019

China continues to deny Tiananmen, but we won’t let the world forget

Rowena Xiaoqing He

FT June 3, 2019

Beijing, Berlin and the two 1989s

Gideon Rachman

アメリカやヨーロッパで1989年と言えば、それはベルリンの壁崩壊を意味する。しかし、その5か月前に、中国の軍隊は天安門広場に戦車を乗り入れて、民主化運動を粉砕していた。今週は、その30周年である。

当時の西側からは、ベルリンの事件が世界的な重要性を持つように見えた。中国は大きいが、貧しい、低開発国であった。他方、ソ連は第2の超大国で、冷戦を続けていたのだ。ベルリンは明らかに北京より重要だった。

30年経って、その評価は疑わしい。おそらく、未来の歴史家は、1989年の最も重要な事件は天安門で起きた、と結論するだろう。天安門の弾圧によって中国共産党は権力を固め、21世紀の台頭する中国が、民主主義ではなく、専制国家である現状をもたらした。

中国の専制支配体制は、もはや例外ではない。世界の民主主義は後退している。しかし、民主主義の不安は、西側自身の問題、特にドナルド・トランプが大統領に当選したことだ。

ソ連崩壊は、専制支配体制が経済的に繁栄できないことを示したはずだった。しかし、中国はこれを否定した。その後のインターネットの拡大も、中国の一党支配体制を終わらせるはずだった。これも中国は否定し、ますます豊かになって、しかも専制的である。中国政府の支援で、ハイテクのグローバル企業、AlibabaTencentが誕生している。そして、高度な監視社会を築いている。

専制国家のまま中国が台頭し続けていることは、西側の考え方を逆転させた。中国との貿易やグローバリゼーションを受け入れることは、西側の政治的価値を広めることにならなかった。

トランプが開始した貿易戦争は、これまでの条件が中国に有利であった、と考えている。

FP JUNE 3, 2019

China’s Complacent Generation

BY MICHAEL AUSLIN

The Guardian, Tue 4 Jun 2019

The west is complicit in the 30-year cover-up of Tiananmen

Ai Weiwei

FP JUNE 4, 2019

30 Years After Tiananmen: How the West Still Gets China Wrong

BY MELINDA LIU

FP JUNE 4, 2019

Tiananmen Crushed Asia’s Wave of Rebellion

BY NITHIN COCA

アジアにおける民主化の流れは、1989年に大きく変わった。しかし、中国が貿易や投資でその影響を拡大し、民主化を抑制するとしても、アジアには新しい民主化の世代が育っている。弾圧が続けば、それにまして民主化を求める声も強まる。


 サンダースとウォレン

NYT June 2, 2019

Bernie Sanders: I Know Where I Came From. Does President Trump?

By Bernie Sanders

私の父は、17歳の時、一文無しでこの国にやってきた。大学に入るために家を出るまで、私は最初の18年間を3.5部屋の家に住んだ。それはブルックリンの家賃を制限した住宅だった。母の夢は自分の家を持つことだったが、われわれにはできなかった。塗料の販売員だった父の給与では、基礎的な必要を満たすだけだった。

お金がないことによる家族生活の影響を、若いときに私は学んだ。

われわれは世界史上でも最も裕福な国であり、トランプ大統領によれば、経済は「好景気」にある。しかし、ほとんどのアメリカ人は全く、あるいは、少ししか貯蓄がなく、毎日の支払いに追われている。

NYT June 5, 2019

I Want to Live in Elizabeth Warren’s America

By Farhad Manjoo

ウォレンElizabeth Warrenの選挙戦は、私の人生で最も印象深いものだ。彼女には本物のアイデアがある。彼女の存在が、2020年の選挙戦を変えるだろう。


 サイバー空間の戦争

PS Jun 3, 2019

The End of the World As We Know It

JOSCHKA FISCHER

PS Jun 3, 2019

Deterrence in Cyberspace

JOSEPH S. NYE

サイバー空間における抑止力は可能か。

PS Jun 3, 2019

China’s New World Media Order

WU’ER KAIXI , CHRISTOPHE DELOIRE

中国は、インターネットにおける「万里の長城」を築いている。それは一帯一路に匹敵する「新しい世界メディア秩序」を目指している。


 弾劾すべきか

PS Jun 4, 2019

To Impeach, or Not to Impeach

ELIZABETH DREW


 金融政策の評価

FT June 3, 2019

Inflation Targeting and Financial Stability by Michael Heise

Review by Claire Jones

26000億ユーロで、あなたは何を買うか? もしインフレを買いたいなら、その結果は乏しいだろう。

金融危機以来、ECBは金利をゼロ以下に下げ、26000億ユーロを債券購入に支出した。それはユーロ圏諸国のGDP40%に等しい。そしてEU加盟の北欧諸国で論争が起きた。

成長は回復し、1930年代のようなデフレを回避したが、物価は上昇しない。5年後のインフレ率を、市場は1.3%と予想する。目標の2%には全く届かない。

なぜ物価は上がらないのか? インフレが消えた。それはユーロ圏だけでなく、アメリカ、イギリス、日本でも、中央銀行を苦しめている。

Heiseは、インフレ目標を間違ったゲームとみなす。金融政策の効果は、グローバリゼーション前とは、全く違って、小さくなった。特に、金融危機以後だ。銀行は多額の現金を持っても融資しない。需要は弱く、物価は上がらない。

中央銀行の債券購入はバブルの条件を作っている。しかし、金融緩和をやめることもできない。デジタル経済化、グローバリゼーションの価格競争、高齢化、などが金融政策による物価への影響を打ち消してしまう。その影響は議場に限られている。

中央銀行は、1.物価の管理に限界があることを認め、2.もっと広い視野でインフレ目標を考えるべきだ。

VOX 03 June 2019

Sound at last? Assessing a decade of financial regulation: A new eBook

Patrick Bolton, Stephen Cecchetti, Jean-Pierre Danthine, Xavier Vives

FT June 4, 2019

Why Taiwan poses a threat to the US bond market

Robin Wigglesworth

FT June 4, 2019

Political instability is no longer confined to emerging markets

Mohamed El-Erian

アルゼンチン、ブラジル、ベネズエラではなく、ヨーロッパやアメリカで、ますます多くのケースが、混乱する政治によって経済が制約されることを示している。経済の脆弱性が政治的な介入を誘発し、経済手段が政治的な「武器になる」“weaponisation”

発展した諸国や中国で、伝統的には、より安定性を欠く新興経済が示してきた現象にさらされている。かつて、選挙結果を決めるのは経済状態だ、と言われた。今、ますます政治が経済を決めるようになっている。

FT June 5, 2019

Jay Powell says Fed is ready to act if trade wars hit economy

Brendan Greeley in Chicago

アメリカ連銀のパウエルJay Powell議長は、貿易戦争が激化する中で経済の拡大を維持するのに適当であれば、金利を下げる用意がある、と発言した。

FT June 6, 2019

Debt and populism test Italy’s bedraggled polity

FT June 6, 2019

Investors are counting on Jay Powell to save them

Gillian Tett

ニューヨークでアメリカの金利に関して金融関係者の会合で質問した。9割以上が、次は金利引き下げを予想した。4分の3が、これから1年間で、2度か3度の切り下げを予想していた。

これは驚きだ。1か月前に、今年の金利引き下げを予想する声は3分の1だった。6か月前なら、多くの投資家は金利引き上げを考えていた。

明確な景気後退も、金融危機もないまま、これほどの変化が起きた。それを説明するのは、基礎的なデータだけではなく、心理的な要因だろう。

1つは、地政学。産業の国有化を支持するジェレミー・コービンがイギリス首相になる可能性。規制の強化を主張するエリザベス・ウォーレンが民主党大統領候補になる可能性。反エスタブリッシュメントの政治集団がヨーロッパでさらに多くの政権を執る可能性。さらに、2020年にドナルド・トランプが再選される可能性。

市場の誰もが知っている行動規範はなく、こうした場合に、投資家は国債を買う。

2は、連銀そのものだ。パウエルがトランプの金利引き下げ要求に従うか、という政治劇を予想してきた。しかし、それだけではない。金融政策のアプローチが変わったのだ。構造的変化が起きた、と連銀は確信しつつある。人口変動や技術革新により、インフレは長期的に低く維持されるだろう。金利の「中立的な」水準が低下した。

投資家たちが見方を変えるのは当然だ。彼らは、「パウエル・プット」の時代に入った、と考えている。株価の下落を避けるために、連銀は何でもするだろう。この話が1990年代の悪名高い「グリーンスパン・プット」より良い結末を迎えるように希望する。当時、アラン・グリーンスパン議長は世界金融危機の条件を生み出す手伝いをした。

FT June 6, 2019

Testing time for Federal Reserve’s safety net for global equities 

Katie Martin


 トランプの関税

NYT June 3, 2019

Trump Makes America Irresponsible Again

By Paul Krugman

メキシコがアメリカに向かう難民を阻止しなければ関税を引き上げる、というのは、まったく違法である。アメリカの通商法は、大統領が関税を設ける多くの理由を挙げているが、移民を減らすことはそれに含まれない。

それは明らかに国際協定の違反である。また、多くのアメリカ国民の生活を悪化させ、多くの製造業の職を破壊し、アメリカ農民を傷つける。

しかし、トランプは関税を「すばらしい」と言う。アメリカの関税史は素晴らしいものではない。実際、それは外国人ではなく、アメリカ国民への課税である。2017年の減税でアメリカの中産階級が得た所得以上に、トランプの関税は奪った。

より重要なことは、1930年代に至るまで、関税は汚職と特殊利益の汚水溜めであった。1934年の互恵通商法が、ようやく、近代的な通商システムを実現した。トランプはそれを大幅に後退させた。

トランプの関税政策は、アメリカが超大国として、いかなる合意も尊重せず、世界に及ぼす影響を無視して自国の利益を実現する、無法な国であることを示した。何であれ、彼の気に入らないことには、関税引き上げを主張する。

1次世界大戦後のアメリカは、国際連盟に参加せず、移民に対する門戸を閉ざした。むしろ、それに比べて知られていないことだが、1930年、スムート=ホーリー関税法を通過させる前に、アメリカは急激に保護主義に傾いていた。

それでもトランプほど、当時のアメリカが国際機関を侮辱し、人種差別や独裁者を容認するようなことはなかった。今の方がもっとひどい。

FP JUNE 3, 2019

The Arab Alliance Is a Circular Firing Squad

BY HASSAN HASSAN

PS Jun 4, 2019

Trump Is Slowing US Economic Growth

ROBERT J. BARRO

FT June 5, 2019

President Trump’s Mexico tariffs will damage both sides

FT June 5, 2019

Emerging markets are the victims of a retreat from multilateralism

John Plender


 グリーン・ニュー・ディールと21世紀

The Guardian, Tue 4 Jun 2019

The climate crisis is our third world war. It needs a bold response

Joseph Stiglitz

「グリーン・ニュー・ディール」を提唱することは、気候変動危機への対応の緊急性、必要な規模と範囲を示すものだ。大恐慌に対応したF.D.ルーズベルトの「ニュー・ディール」という言葉を選んだのは正しい。しかし、第2次世界大戦のための動員がさらにふさわしい言葉だ。

そんなことができるのか? 財源はあるか? 合意を形成できるか? そのような批判は間違いだ。

正しい財政政策と合意があれば、われわれは実行できる。気候変動による生存の危機は、第3次世界大戦である。勝利しなければならない。第2次世界大戦の間、だれも「戦争する財源はあるか?」と問うことはなかった。

最近の洪水、ハリケーン、森林火災など、その被害はGDP2%である。健康被害も莫大であり、犠牲者の数はまだ推定もされていない。気候変動との戦いは、正しい財政政策によって実行可能であり、しかも、経済にとって好ましい。「ニュー・ディール」は、最高の成長率と繁栄の共有という、第2次世界大戦後の黄金時代をもたらした。

「グリーン・ニュー・ディール」は需要を刺激し、資源の完全利用とグリーン・エコノミーへの移行で、経済ブームを実現する。トランプは石炭のような過去の産業を刺激し、風力や太陽・エネルギーへの移行をくじいた。

アメリカの失業率は低いと言うが、多くの資源が低雇用もしくは非効率に配置されている。家族の育児・介護のための適切な政策、フレキシブルな労働時間が可能であれば、もっと多くの女性と65歳以上の高齢者が労働市場に参加できる。教育・医療のための適切な政策があれば、インフラや技術への投資があれば、すなわち、真のサプライサイド政策で、経済の生産能力は高まり、気候変動と戦い、適応するための、十分な経済資源を供給できる。

化石燃料への補助金をやめて、クリーン・エネルギーの生産支援に移行させる、といった容易な変更もある。幸い、アメリカのひどい税制を改善する余地は大きい。税制の抜け穴を閉じることは、財源を得て、同時に、経済効率を改善する。国立のグリーン・バンクを創れば、気候変動と戦う民間部門に資金提供できる。

2次世界大戦の動員は社会を転換した。農業経済、地方の社会が、製造業と都市社会に移行した。女性は解放されて労働市場に参加した。

「グリーン・ニュー・ディール」が、21世紀の革新的なグリーン・エコノミーを実現する。


 イギリスの地域格差

FT June 4, 2019

How to bridge England’s north-south divide

1066年にウィリアム征服王がイングランドの王位を得たとき、王国の北部、反乱の多い土地を平定するために残酷なキャンペーンthe Harrying of the Northを行った。イングランド北部の人口流出と貧困化である。

近年も、政府の南北格差解消のためのプログラムは、継続せず、不十分であった。新しいthe UK2070 Commissionの報告書は、意図的に、ドイツの東西再統一をモデルに選んだ。

FT June 6, 2019

How to bridge Britain’s regional divide

Chris Giles


 ナショナリズム

FP JUNE 4, 2019

You Can’t Defeat Nationalism, So Stop Trying

BY STEPHEN M. WALT

2011年にForeign Policyの連載コラムを始めたころ、「世界最強の軍隊・勢力Frorce」について書いた。それは、核抑止力、インターネット、神、レディー・ガガ、債券市場ではなく、ナショナリズムだった。

良い面もあるが、欠陥の多いナショナリズムはなくならない。それゆえ外交を、もっとリアリズムに依拠して抑制することだ。

YaleGlobal, Thursday, June 6, 2019

Goals for Global Society Go Into Retreat

Humphrey Hawksley

文化の相違と富の格差が大きい、インドとヨーロッパにおける最近の選挙は、価値を共有する「グローバルな社会」という概念が後退し、主権や国民国家が支配的であることを示す新たな証拠となった。

インドのモディは、ヒンドゥー・ナショナリズムを駆使して多数派支配を拡大し、欧州議会選挙では、ポピュリスト政党が、この20年間で得票率を10%から29%まで伸ばした。

ヨーロッパ、南アジア、北東アジアで、交流するナショナリズムがグローバルな安全保障を転換するだろう。トランプとBrexitNATOを弱めている。EU離脱を進めるイギリスでは、政治家たちがEUを敵や脅威として非難するようになっている。

アメリカはインドとの戦略的な同盟関係を強化し、アジアにおける西側の影響力を維持し、インド洋と南シナ海の安全を確保しようとしている。しかし、インドの選挙で焦点となったのは、隣国パキスタンとの敵対関係だった。

政治家たちが、選挙に勝つため、宗教やナショナリズムに頼って強硬な発言をするほど、アメリカやヨーロッパの調停する影響力は失われていく。

北東アジアでもそうだ。日本と韓国は、ヨーロッパの外で民主主義が繁栄する隣国である。その優れた工業力は、「アジアの世紀」をけん引してきた。権威主義的な中国の影響力が増す中で、東京とソウルがアジアにおける政治・安全保障の同盟形成を指導するのは自然である。アメリカとの現在の2国間同盟を補完するべきだ。この3国同盟は、タイやフィリピンなどを加えて、アジア全体の安全保障同盟に向かう。

しかし、両国政府の関係は、「従軍慰安婦」のような歴史問題で、悪化している。

3地域に共通するのは、1.隣国との敵対関係を重視する。2.富や生活水準にマイナスだという証拠があっても、有権者はナショナリストたちを支持する。

ナショナリズムが興隆する過程を最も詳しく調べられた、第1次世界大戦後のドイツのケースでは、多くの新しい民主主義国家がそうであるように、左右の暴力的な脅威を受けながらも、ワイマール共和国の論争、芸術、科学が繁栄した。その後、大恐慌、貧困とハイパーインフレーションを経て、ナチズムが権力を握った。

少し前まで、1930年代と比較することは恐怖をあおるだけだと非難されたけれど、今では論争の中心になっている。

ドイツにとってナショナリズムはホロコーストを、インドにとっては国家分離の大混乱を、北東アジアにとっては太平洋戦争と原子爆弾を意味する。若者たちが歴史を学び、今すぐ新しい戦略を考えるべきだ。


 パレスチナ難民

PS Jun 4, 2019

How to Solve the Palestinian Refugee Problem

DAOUD KUTTAB


 欧州議会の誕生

PS Jun 4, 2019

A Parliament is Born

DANIEL GROS

ある意味では、欧州議会はアメリカの政治システムと共通するものになった。一方で、その体制はアメリカ議会の2つの会合である。上院は、その大きさと関係なく各州から2人が選ばれ、下院は、似たような大きさの選挙区を代表する。

他方で、欧州議会の構造は、アメリカの選挙人団と似ている。それは大統領の選出で、人口の少ない州に大きな比重を与えている。

FT June 5, 2019

Europe’s Green surge matters more than the rise of the far right

Martin Sandbu


 軍備管理

NYT June 4, 2019

Will Arms Control Foes Take Aim at Another Treaty?

By Carol Giacomo


 ロボット

FT June 5, 2019

The rise of the robots can help human workers

人類がロボットに負けるというのはSF小説によくある話だが、現実でも、AI、ロボットの普及で、アメリカの職場の半分近くが消滅する、という研究があった。しかし、ロボットは人間と協力できる。

自動化は労働者のリスクを最小化しながら、高い生産性を実現できる。しかし、人間が雇用を失うケースはある。前者のためには、ロボットと労働者との相互作用を慎重に考慮する必要がある。計画的に、また、最も熟練の低い分野で自動化による失業が発生するリスクを認めて、共存の成果を実現することだ。

FT June 5, 2019

Russian technology: can the Kremlin control the internet?

Max Seddon and Henry Foy in Moscow


 スーダン

FP JUNE 5, 2019

Arab States Foment Sudan Chaos While U.S. Stands By

BY JUSTIN LYNCH, ROBBIE GRAMER

FT June 6, 2019

Dreams of freedom are being crushed on the streets of Khartoum

David Pilling

スーダンにおける平和的な革命の夢は終わった。目撃者によれば、兵士たちが女性をレイプし、その犠牲者をナイル川に捨てた。情報は遮断され、状況を確認できない。

FP JUNE 6, 2019

Washington Is Turning Its Back on Sudan

BY CAMERON HUDSON


 イタリアの都市

FT June 5, 2019

Why city mayors are stepping up to tackle global problems

Gillian Tett

イタリア政治と言えば、政府、指導者、政党、議会、どれも信頼できる指導力はないだろう。しかし、違う面がある。ローマではなく、ミラノを見ることだ。近年、北部の大都市は、驚異的なスピードで経済を拡大している。プラグマティックな指導者がその長所だ。


 日銀と株価

FT June 5, 2019

Why the Bank of Japan should keep equity investors guessing

Leo Lewis


 ポピュリストの危機

PS Jun 5, 2019

As Populists Rise, Latin America’s Economies Will Fall

KENNETH ROGOFF

世界には多くのポピュリスト、強権的な指導者が登場している。特にラテンアメリカで。メキシコの左派ポピュリスト、Andrés Manuel López Obrador (AMLO), ブラジルの右派ポピュリスト, Jair Bolsonaroがそうだ。ベネズエラではHugo Chávezとその後継者Nicolás Maduroが、ラテンアメリカで最も豊かな国を破壊し、アルゼンチンでも、かつて経済を破たんさせたCristina Fernández de Kirchnerが次の大統領選挙を狙っている。

専制支配者たちが、皆、シンガポールの創設者、リー・クアンユーのように有能であるとは限らない。今のラテンアメリカの指導者には望めない。

VOX 06 June 2019

Identity, beliefs, and political conflict

Nicola Gennaioli, Guido Tabellini


 難民

NYT June 5, 2019

Food Doesn’t Grow Here Anymore. That’s Why I Would Send My Son North.’

By Nicholas Kristof

移民が生まれる最も基本的な条件は、絶望である。「ここにはもはや食料が育たない。」「だから私は息子を北へ向かわせた。」


 ノルマンディー上陸作戦の記憶

NYT June 5, 2019

The Donald Thinks D-Day Is About Him

By Roger Cohen

NYT June 5, 2019

The Fading Chords of Memory of D-Day

By The Editorial Board

NYT June 5, 2019

For France, a D-Day Ceremony Laced With Paradox

By Sylvie Kauffmann

FP JUNE 5, 2019

D-Day’s Dying Legacy

BY MICHAEL HIRSH

FP JUNE 5, 2019

The Lessons of 1944 Are in Jeopardy

BY PETER FEAVER


 アフリカ豚コレラ

The Guardian, Thu 6 Jun 2019

The Guardian view on African swine fever: bad for people as well as pigs

Editorial

欧米はアジアでン猛威をふるうアフリカ豚コレラを監視し、デンマークは43マイルの国境線に、野生のイノシシを排除するためのフェンスを建設した。

アフリカ豚コレラの流行は零細農場が現認と言われているが、大規模な工業化された農場に集約することでは問題を解決できないだろう。現代の畜産ビジネスが、畜産の集約化とグローバリゼーションによって、次の感染爆発を準備している。大規模農場は利潤を求め、政治的な影響力を行使する。

そして、われわれの健康や福祉が脅かされる。

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The Economist May 25th 2019

The great jobs boom

Big Tech and the trade war: Circuit breaker

Climate of fear: How to think about global warming and war

Labour markets: Working it

Farming: A porkalypse now

Theresa May: The bitter end

Bagehot: Double or nothing

Global warming: How climate change can fuel wars

Technology wars: Inglorious isolation

Global markets: Late in the day

Zimbabwe’s currency: A mouthful of zollars

Free exchange: The plaza discord

(コメント) 労働市場に関する特集記事に驚きました。失業率が下がっている。それは景気回復だけでなく、さまざまな労働市場の規制や法律、社会保障の給付厳格化、など、市場機能が改善されたからだ。何より、インターネットによる労働のマッチングが失業者を減らした。不安定で、生活できないような低賃金に縛られている状態は、いつの時代にもあったし、解決するべきだが、労働市場の改善を見失ってはならない。ギグエコノミーは決して重要な割合を占めていない。

この報告とは逆に、市場の機能が脅かされる懸念は、気候変動を放置していることです。世界の脆弱な土地から戦争が広がることを示します。

米中貿易戦争が、技術分野の分断におよぶこと、Huaweiへの制裁を支持する論調も意外でした。他方、世界の資本市場は下降局面を待っています。ジンバブエの通貨、プラザ合意の評価、ともに、現代の迷走の先を示す中身ではない点が残念です。

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IPEの想像力 6/10/19

天安門事件とは何だったのか? 鄧小平と趙紫陽の民主化をめぐる方針の対立が背景にあった、という趙紫陽の元側近の声を、NHKの番組は伝えました。

1989年、ゴルバチョフは失敗し、鄧小平は成功した、と、現在の結果からみて、その「政治」は評価されるわけです。天安門事件30周年に多くの市民が集会に参加した香港で、その「一国二制度」が北京からの介入によって無効になるかもしれない。そのような不安が強くなりました。

香港政庁の民主的な選挙をめぐって、大きな反対運動が起きました。2014年、雨傘革命です。かつて「愛国教育」に反対した学生指導者たちが、北京による香港の教育への介入、行政長官や議会の選挙に対する介入に抗議したのです。学生たちは実際に模擬選挙を行い、市民たちに、自分たちの政府を持つべきだ、と集会を開いて熱烈に訴えました。

一部、香港政府から対話を模索する動きはあったものの、香港中心部の占拠を催涙ガスと放水車で解散させました。その後も、中国からの投資やビジネスの影響が強まり、次第に運動家たちを議会から排除してきたようです。市民運動家の間にも、完全な分離・独立を主張する者や、中国本土の民主化に取り組む者など、方針の違いが現れ、選挙における支持も減りつつある、という記事を読みました。

上海から香港への高速鉄道開通にも反対運動がありました。しかし、今回、中国本土に容疑者を送還することを認める条例は、一気に反対運動「反送中」への支持を広げました。BBCNYTのサイトを見ると、推定100万人の市民が通りを埋めつくす情景に、深い感銘を覚えます。参加者の1人は語っています。・・・中国本土の法律や司法システムは信用できない。恣意的に罪を負わす。政治的な理由で、だれでも送還されることが恐ろしい。人々に沈黙を強いるものだ、と。

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米中貿易戦争の背景には、市場競争というより、中国の「権威主義的」システムに対する不信感があります。

香港は、新しい世界議会なのです。

アメリカや西側諸政府が拒む中国とは、天安門事件や香港の抗議活動から、政府が民衆のエネルギーを吸収しない姿勢です。硬直的な権力が、人々に暴力による沈黙を強いるのです。反対運動を弾圧することによって、多くの才能ある人々が抹殺され、中国を去ってしまうでしょう。

グローバリゼーションは問われています。民主主義はどこにあるのか? 帝国と強権指導者が、グローバルなハイテク企業と組むことで、高い成長率を実現できるのか? 一握りの都市富裕層が成長の果実を独占し、それに反発する人々はポピュリズムに向かい、あるいは、ナショナリズム、人種差別主義、排外主義、宗教指導者などを支持します。

経済圏が国境を超えて貿易や投資の流れを拡大するのであり、社会的・政治的な価値を共有できる豊かな民主主義諸国が、もっと柔軟に、世界の変化の衝撃を吸収する必要があります。それは化石燃料からの離脱や、移民・難民に対するグローバルな合意を制度化する試みとして始まると思います。

次の金融危機は迫っているのに、政府も中央銀行も、従来の政策手段は使えないか、大きな逆効果を生じそうです。

安全保障、社会的な防衛、治安活動、それらを提供する、グローバルな都市化、グローバルな選挙権・発言力を、香港だけでなく、世界が組織しなければなりません。技術革新とともに、雇用と教育に対する権利を、環境に対する十分な配慮を求めています。

市民革命と社会主義革命とが、双方から秩序を作り変えて、米中貿易戦争は終幕に向かうのでしょう。

アニメの好きな日本人は、「風の谷の民主主義」が世界不況によって、静かに、各地で広まることを想像します。

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