(前半から続く)
● アフガニスタン
FP MAY 26, 2019
Afghanistan’s Air Is Deadlier Than Its War
BY IVAN FLORES
● イギリス王室
FP MAY 26, 2019
Archie Windsor Isn’t the Symbol You Think He Is
BY ERIC
KAUFMANN
アーチーArchieの誕生は、イギリスが多文化主義になったことの象徴ではなく、トルコやハワイと同じように、イギリスでも民族が消滅する未来に向かう象徴だ。
● イギリス労働党
The Guardian, Mon 27 May 2019
Corbynism is now in crisis: the only way forward is to oppose
Brexit
Paul Mason
The Guardian, Wed 29 May 2019
Instead of kicking out Alastair Campbell, Labour should listen to
him
Jonathan
Freedland
The Guardian, Thu 30 May 2019
Labour needs a reboot – and it could start with bringing back Ed
Miliband
Owen Jones
● 安倍外交と日銀
FT May 27, 2019
Shinzo Abe takes his Donald Trump charm offensive the extra mile
Demetri
Sevastopulo
日本の首相、安倍晋三ほどアメリカ大統領を喜ばせるのがうまい政治指導者はいないだろう。
トランプは2016年の選挙戦で、しばしば日本を攻撃していたが、その日本に着いたトランプは、「日の昇る国に戻ってきた」と上機嫌だった。
即位したばかりの天皇成仁の迎える最初の国賓であり、ゴルフを一緒にして、国技館で大相撲を見て、アメリカ大統領杯を優勝力士に与えた。新しい天皇の時代に最初の国賓となることを、多くの指導者は喜ぶはずだ。そして、日本にはトランプの期限を取る多くの懸念材料がある。
エア・フォース・ワンから東京を見れば、スカイツリーは星条旗の色に輝いているのを観ることができた。マクロン大統領やメルケル首相に、トランプの接待コンテストで、安倍は勝利した。
「エンターテインメント外交」と呼んで日本の新聞は騒いだが、批判する声もあった。安倍はトランプの怒りを回避できたが、貿易摩擦を有利に解決したわけではない。
FT May 28, 2019
Japan’s dormant central bank may have to rouse itself once more
Takuji Okubo
日銀にはまだ何ができるか?
日銀は、1999年、近代史で最初にゼロ金利を採用した中央銀行である。2001年に量的緩和、2010年にETFで株式を購入し始めた。2016年後半、日銀はイールドカーブを管理して長期金利を目標にする新しい分野を築いた。
しかし、この2年間は休眠状態であった。世界経済が好調であったし、日銀は一層の緩和が持つ深刻な副作用を認識していたからだ。すでに日本の金融機関は日銀の政策を批判している。マイナス金利は銀行のマージンを失わせた。日銀のETF保有額は全体の80%に達し、株式市場をゆがめている。
しかし、平和なときは終わった。日銀は行動に備えておくべきだ。
日本の輸出が、特にアジア向けで、急速に減少してきた。民間消費や投資も減少している。日銀にはまだ何ができるか?
不況の予想は株価を下落させる。日銀は市場の浮動性を抑えるためにETFをさらに購入する。しかし、それだけで不況が悪化するのを防げないだろう。特に、海外の中央銀行が金利を下げた場合、円高が生じる。
円高の破壊的影響を防ぐために、政府は為替市場に円売り介入をする。しかし、金融政策の追加緩和が伴わなければ効果は期待できない。また、直接の介入はトランプの怒りを招くかもしれない。
マイナス金利をさらに進めるとしたら、日本の銀行システムに対する保護が必要だ。その活力を失わせる恐れがある。1つのメカニズムは、ECBが行った「TLTRO」(貸出条件付きの流動性供給オペ)である。日銀が、ゼロコストの融資を行う。それを銀行は企業や家計に融資するのだ。
それでも銀行の利潤は低いままであり、自己資本も不足している。日銀は流通市場で銀行の発行する劣後債を購入する計画を検討すべきだ。10年前に行ったことだ。そのような銀行への資本供給には批判がある。しかし、そうしなければ破壊的な円高が進む。これまで積み重ねた、デフレからの脱却は無駄になってしまう。
PS May 29, 2019
Japan’s Government Must Exit Coal
JAN ERIK
SAUGESTAD
FP MAY 29, 2019
Tokyo Keeps Defending World War II Atrocities
BY S. NATHAN
PARK
● 中国は超大国にならない
FT May 27, 2019
Beijing’s relentless march to eliminate poverty
Lucy Hornby in
Nujiang Prefecture, China
FT May 27, 2019
Today’s China will never be a superpower
Charles Parton
中国は決して超大国にならない。
中国は今世紀半ばまでに、超大国、さらには、グローバルな超大国になりたがっている。習近平は第2の「100年目標」を掲げた。2049年までに、「強い、民主的な、文明化した、調和した、近代的、社会主義国家」になることだ。それは中華人民共和国の建国100年となる年だ。
しかし、中国の担うコストは今とは比べられない。軍事支出も、国内の治安活動に比べても劣っているだろう。人口は急速に高齢化し、社会保障のコストが増す。環境破壊の修復コストは考えることも恐ろしい。
2049年に中国がアメリカの現在の1人当たりGDPに追いつくには、アメリカが全く成長しないとしても、中国は年6%で成長し続けねばならない。そのような成長が維持できるとは思えない。人民元の国際化を考えても、固定レートは失われるだろうし、そのとき国民は人民元を売って海外に資本逃避する。
改革を進めるうえで根本的な問題は、共産党が経済力のレバーを渡さないことだ。すなわち、経済的利益が強まり、「代表なくして課税なし」という声を抑える。
それでなくても、長期の成長は3つの問題に直面する。1.債務問題、2.人口問題(労働力不足、男女比のゆがみ)、3.水不足。それは、農業、工業、生活スタイルに大きな変化を要求する。
長期的な問題を、競争的な複数政党制ではなく、共産党の単独支配があるから、着実に実行できる。そう言われてきたが、30年前と違って、共産党は市場に学ぶ柔軟性を失った。習は、独立した司法、自由なメディア、市民社会、政治家の説明責任、を拒んでいる。
ナショナリズムやハイテク社会は、ソ連がそうであったように、その代わりにはならないだろう。
PS May 29, 2019
Unforgettable Tiananmen
CHRIS PATTEN
ゴルバチョフを国賓として迎えることが北京の重要行事であった。共産党指導部は、ゴルバチョフに対して、中国の秩序ある共産党体制を示すことを強く望んでいた。ソ連は、ペレストロイカの下で、崩壊しつつあった。しかし、自由を求める声がお祭りのように起きていた。
趙紫陽らは、学生たちの意見を聞く姿勢を示した。しかし、より強硬な長老たちは支配権を失いつつあることを恐れた。彼らは戦車と人民解放軍で、抗議する人々を弾圧した。
共産党の指導者たちは、4000年の文明を共産党が体現している、と言う。そうではない。1949年の共産主義革命では多くの地主を殺害し、大躍進を唱えて大規模な飢饉を生じ、文化大革命と暴力を広めたのが、中国共産党CPCだ。
共産党は、天安門の虐殺を国民の記憶から抹殺しようとしてきた。歴史は、共産党の独裁体制にとって、あまりにも危険である。中国を他国のモデルにするとき、ふさわしくない。
しかし香港では、1990年以来、毎年6月4日に、10万人以上が集まって、北京で行われた野蛮な弾圧を記念する抗議集会が開催されている。少なくとも、この自由都市は、天安門の虐殺を忘れなかった。香港政府が、集会を組織する者たちを告発しないように望む。
FT May 30, 2019
Chinese and US navies must bring down tensions
Zhou Bo
YaleGlobal, Tuesday, June 4, 2019
Ghosts of Tiananmen Still Haunt China’s Rulers
Mike Chinoy
● ドラギの遺産
PS May 27, 2019
The ECB’s Changing of the Guard
LUCREZIA
REICHLIN
ECBは、アメリカ連銀や日銀に比べて、非伝統的な政策を採用することがむつかしい。それは分配に及ぼす効果が強く、ユーロ圏内に地理的な差を生じるからだ。
FT May 29, 2019
Mario Draghi’s policy bazooka may be his most precious legacy
Megan Greene
多くのアナリストによれば、マリオ・ドラギの最大の遺産は、彼がユーロを守るためにECBは「何でもする」と発表したことだ。
しかし、それから何年かたって、考えてみると、もっと重要な遺産があるとわかった。TLTROsとよばれる低コストローンの特別プログラムだ(発音は“teltrows”)。
ECBには、銀行が預金を保有している。ECBは、マイナス金利で銀行に融資し、この銀行の預金を増やすのだ。市場金利を下回る、望みのマイナス金利を付けることができる。それが事実上、銀行への補助金だ。他方で、銀行は市場金利や、マイナス金利で民間に融資できる。ECBは、貯蓄を促すために、預金金利を上げることもできる。
それは資源配分をゆがめる副作用や、ECBの資産を大きく損なう危険もある。もしECBが資産を失えば、デフォルトすることはないが、政府は資本増強をすることになり、政治的な反対があるだろう。次に不況やユーロ危機が起きるなら、こうしたことを考慮して、ECBはTLTROsを使う決断をするだろう。
● 現代貨幣理論(MMT)
PS May 27, 2019
Modern Monetary Inevitabilities
ROBERT DUGGER
現代貨幣理論MMTにとって最も重要な問題は、その政治的条件を明確にすることだ。
MMTは、インフレではなくデフレが、中央銀行の主要な関心になった、という新しい認識から生まれた。アメリカのような、高債務、高赤字経済において、デフレは特に深刻な脅威である。なぜなら、デフレが消費を減らし、債務者の不安を強めるからだ。デフレの圧力は支出を減らし、株価を下げ、全般的な債務の縮小を引き起こす。
連銀が2%のインフレ目標を達成できないことは、経済のディスインフレ傾向を抑える手段が連銀にないことを意味する。産業の集中、労働者の交渉力低下、分配の不平等化、高齢化、インフラや気候変動に対する投資不足、技術革新による失業、など。他方で、アメリカ政治は、教育など、長期の成長を促す投資より、富裕層への減税のような、戦略を欠くものになっている。
MMTが必要な変化を示す。政府は自国通貨で必要なだけ投資を行い、中央銀行はそれを必要なだけ国債購入により融資できる。受け入れられないような高いインフレを生じない限り。
Kenneth Rogoff や Lawrence H. SummersからPaul Krugmanまで、MMTを批判するエコノミストは、さまざまな政治的立場から、多くいる。しかし、Galbraith と Ray DalioはMMTを支持する。それは歴史的な債務の循環における政策変化を意味している。
Dalioは著書(Principles for Navigating Big Debt Crises)で、中央銀行が好況から、突然、重い債務を負う経済に直面する、と指摘する。投資を刺激するために金利を引き下げ(金融政策Ⅰ:MP1)、次の局面では、資産価格を維持し、債務縮小の加速を抑える国債購入(量的緩和QE)(MP2)、さらに、その両方が効果を示さないとき、MMTのようなMP3が始まる。それは公共投資や、消費者への「ヘリコプター・マネー」まで、さまざまな形がある。
1940年代初め、アメリカは第2次世界大戦に参加し、戦争に勝つための最優先課題に政治的合意があった。連銀はMP3を実行した。アレクサンダー・ハミルトンは、1781年、国家の富を追加するための国債は「過度の債務」ではない、と答えた。
今も、アメリカの将来世代から見て、持続的成長をもたらす高速鉄道建設を融資するなら、MMTを実行できる。
FT May 29, 2019
States create useful money, but abuse it
Martin Wolf
● トルコ、ロシア
FP MAY 28, 2019
Turkey and Russia are Bitter Frenemies
BY GALIP DALAY
FT May 29, 2019
Turkey’s Erdogan is caught between two fires
David Gardner
● メルケル
SPIEGEL ONLINE 05/28/2019
A Dim View of the World
Will Merkel Be Followed by Darkness?
By René Pfister
● 北朝鮮
PS May 28, 2019
Kim Jong-un’s Moneyball Strategy
KENT HARRINGTON
北朝鮮と、中国、ロシアは、あたかも協力して役割を分担しているように見える。中国とロシアは、北朝鮮の核保有を戦略的な視点で許容できる。その体制が崩壊することも、ソウルによる半島の再統一も、望まない。
中国、ロシアの戦略は、朝鮮半島の問題だけに限らない。金正恩は、トランプと違って、長期の戦略を目指している。
PS May 29, 2019
A Practical Approach to North Korean Denuclearization
LEE JONG-WHA
● 金融危機の回顧
PS May 28, 2019
A Guidebook for Financial Crisis Managers
HOWARD DAVIES
ウィンストン・チャーチルは『第2次世界大戦』を書いた。その機会を持ったことを、彼は喜んだ。
世界金融危機の中心にいた3人はどうか? Hank Paulson,
Ben Bernanke, and Tim Geithnerが、危機の歴史を書いている(Firefighting:
The Financial Crisis and Its Lessons)。
第1に、彼らは自己資本を強化する、預金保険のシステムを、ノンバンクを含む金融システムに採用した。第2に、バルカン化した監督機関の問題を指摘しながら、金融監督のシステム全体を改革しなかった。第3に、トランプ政権と議会に、財政規律の再建を提案した。
VOX 28 May 2019
The Irish crisis: Lessons for small central banks
Patrick Honohan
FT May 31, 2019
Warning lights are flashing for emerging market investors
Jonathan
Wheatley
● 気候変動
FT May 29, 2019
Further inaction on climate change is simply not an option
António
Guterres
PS May 30, 2019
The Case for Carbon Tariffs
ADAIR TURNER
● 通貨操作
FT May 29, 2019
Which countries are manipulating their currencies?
By: Colby Smith
● 新しいグローバル・ガバナンス
PS May 29, 2019
Closing the Global Governance Gap
KEMAL DERVIŞ
技術革新の波及が社会・政治変化と進歩、経済成長をもたらす。グーテンベルグの印刷術がそうだった。教会が独占してきたコミュニケーションを民主化し、印刷術を禁止したオスマントルコは衰退した。その後の蒸気機関、鉄道などもそうだ。
現在の技術革新も体制を転換させる力がある。新技術とその社会・政治・経済的な帰結を効果的に統治する方法を発見することが、21世紀の最大の課題である。
技術革新の中核を占めるのは、AI、インターネットと、それを補完するサイバー・アプリ、バイオテクノロジー、ビッグデータである。これらはグローバル・バリュー・チェーンを確立してグローバリゼーションを拡大し、情報の急速な拡散、金融フローの増大を導いた。また、その規模の経済は、Amazon, Huawei, and Facebookのように、多くの分野で企業収益をほとんどの国家のGDPよりも大きくした。
政治制度はこの展開に遅れている。普通の市民たちによる革命がエジプトのムバラク大統領を失脚させたが、それは必ずしも民主主義を強化しなかった。デジタル・プラットフォームは独裁体制やテロリストたちに悪用され、でたらめなニュースが流れた。選挙過程に介入され、深刻な分断と混乱を社会にもたらした。
また、グローバル企業による準独占もしくは独占状態のパワーは、低税率の土地へ利潤を移す能力とともに、各国の規制や政府の力を弱めた。
テクノロジーと結びつく公共財の「最も弱いリンク」が、さまざまな問題を生じている。たった1つか少数の国が従わないことで、すべての国に影響する問題を解決する集団的な努力は破壊されてしまう。たとえば、企業による税回避、サイバー犯罪、核拡散、テロ組織とその資金調達、伝染病だ。グローバル・ガバナンスは価値ある公共財である。
「囚人のジレンマ」を解決するには、多次元・多チャンネルのガバナンスを築くべきだ。多次元ガバナンスは、たとえば、EUが実現している。近年、ナショナリストやEUに懐疑的なポピュリストの勢力が増大したが、欧州議会選挙はヨーロッパ規模の政治空間をもたらした。ナショナリスト政党がある一方で、親EUの諸政党が投票の3分の2以上を得ている。
EUの成功が意味するのは、補完性の原理に対する要求が強いことだ。政策の決定を、効果的な実施に合わせて、低レベルの政治単位にゆだねる。他方で、小国はグローバルな大国や大企業に対して、より大きな多国間の構造に依拠することができる。多国間の協力と、国家主権の譲渡は、効果的なグローバル公共財を供給するために必要だ。
多国間の機関では、各国の官僚制とは違い、超国家的な考え方が現れる。スタッフたちは、「よそよそしい」、「エリート的」と批判されるが、大陸規模、グローバル規模のガバナンスを提供している。
このアプローチを補完するものとして、多チャンネルのガバナンスが必要だ。すなわち、非政府の、領土に縛られないガバナンスである。Liav Orgadは、「クラウド・コミュニティー」の確立を呼びかけている。グローバルなレベルを含めて、デジタル・アイデンティティーと電子投票を行う集団だ。「ブロックチェーン」技術を用いれば、政府とは独立に、国連がアイデンティティーを付与することも可能になる。
グローバル投票は、示唆的な意味を持つだけで、各国の主権を否定するものではない。しかし、政府への圧力になるだろう。この試みにも、意見の妥協よりも両極化を促し、小国の市民が影響を持たない、などの欠陥がある。それでも、多くの若者たちはグローバルな思考を受け入れている。
技術革新や市場の変化を社会に「埋め込む」ための多次元・多チャンネル型ガバナンスが、これから起きる変化を吸収するもっとも大きなチャンスを有する。
● モンロー宣言
FP MAY 29, 2019
Let the Monroe Doctrine Die
BY KORI SCHAKE
驚くべきことだが、ジョン・ボルトンは、モンロー宣言は今もアメリカ外交において有効だ、と主張した。これは明らかにベネズエラに対した圧力だが、それ以上の意味を持つ。
モンロー宣言は、ナチズムとの戦いで、F.D.ルーズベルトによる善隣友好外交に代わった。
侵略で脅迫したり、アメリカ帝国主義の暗い歴史を思い起こさせたりすることは、アメリカの国益を前進させ、ベネズエラにプラスの変化を促す良い方法ではない。もっと地域の同盟諸国が行動するのを支援することで、コストを抑えた、地域の諸国から感謝される方法がある。
● 進歩的資本主義
PS May 30, 2019
After Neoliberalism
JOSEPH E.
STIGLITZ
新自由主義の実験は失敗した。それは、富裕層への減税、労働市場や製品市場における規制緩和、金融化、グローバル化、を進めたが、成長率は低かった。特に、上位の階層を除けば、所得は停滞もしくは低下した。
主要な政治的代替アプローチは3つだ。極右ナショナリズム。中道左派の改革派。革新的左派(もしくは、進歩的資本主義)。市場の独占的なパワーを抑制するために、政府が積極的な役割を果たす、第3のアプローチが正しい。
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The
Economist May 18th 2019
A new kind of cold war
Fiscal policy: Cocked and ready
The EU elections: Changing parliamentary perspectives
China and America: A new kind of cold war
Bagehot: The return of Mr. Brexit
Chinese business: The daughter rose in the East
Free exchange: Out there
(コメント) 米中貿易戦争を超えて、アメリカは中国を世界市場から遮断する、と決めたように見えます。これをどのように理解するべきか? しかし特集記事の要点は、私にはわかりにくい、失望するものでした。
欧州議会選挙も終わり、破滅でもなく、希望でもなく、長い政治論争が始まったようです。Brexitにおとらぬ紛糾と醜態を示すことも考えられます。ファラージやサルヴィーニは既存政治を破壊しつくす意欲満々です。
しかし、中身に感心したのは、中国の女性実業家・富豪が多いことと、Amazonのベゾスが月への集団移住計画を発表したことです。
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IPEの想像力 6/3/19
The Economist May 18th 2019の特集記事は、アメリカが示す警戒感を認め、中国との衝突が避けられないことを示します。それは、単に中国が追いついたからではなく、中国の追いつき方が受け入れられないものだからです。
すなわち、1.産業スパイ、国有企業への補助金、企業買収・合併、技術や情報を国家が組織的に盗むこと、2.情報通信技術をめぐる安全保障上の妥協できない疑念、3.民主化を拒む一党支配体制、監視国家を強化し、アジアにおける覇権を目指し、アメリカの軍事的な関与を排除する攻撃的姿勢に転じたこと、がそうです。
アメリカ、もしくは、西側の同盟諸国は、世界市場に包摂することで、中国が市場による成長を実現し、政治や社会の改革を受け入れるよう促すつもりでした。それは失敗だった、とアメリカは考えます。
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しかし、民主主義も資本主義も、深く動揺し、改革の要求にさらされている時代です。米中の対立が、グローバルな秩序の構築に向けて積極的な条件になればよい、と私は思います。
IPEの講義で、受講生たちに話しました。国際秩序は、資本の空間編成、長期変動として、技術革新の波及と、その背後で進む構造変化、分配の対立を反映する、と。そのように考えるなら、米中貿易戦争は、違った視点から理解できるでしょう。
技術革新と貿易パターンが分配問題として関係するのは、特殊要素説です。「石油の呪い」に代表されるように、その国のガバナンスが構造変化の諸対立を吸収し、雇用や分配を新しいパターンに移行させる能力が問われます。
そして、技術革新の波及という意味では、二重経済とルイス・モデルが重要です。生産性が高まる部門に労働力や生産資源が移動することで、高い成長率が実現します。世界には、常に、新しい成長の極が生まれ続けるのです。
米中貿易戦争が、世界経済の成長を組織するために優位を争うであれば、軍事的な脅威ではなく、市場統合を活かして、互いに参加する企業や諸国の同意を集めるために、最も貧しい地域や人々にも、多くの機会を提供する開放的な競争を呼びかけることでしょう。
1.製品を分解し、その技術を取り入れることは、いずれの企業でも研究・開発の基本でしょう。ある意味、国家の諜報活動もそうです。しかし、それらについて、守るべきルールがあり、企業に与える特許制度がグローバルに合意されねばなりません。その基本は、グローバル社会にとって望ましい、公平な競争条件を実現する、ということです。
2.情報通信システムが(金融システムや宇宙開発と並んで)グローバルな性格を持つのは当然です。それはアメリカか中国か、と問う冷戦にするべきではないでしょう。情報通信技術の主要企業と国家は協力し、市場だけでなく、国家の安全保障においても十分な制度を確立することです。
3.ある意味では、民主化と「一党独裁」とは矛盾せず、「監視国家」とも矛盾しません。公的秩序に対する信頼を高め、脱税や違反行為を取り締まること、積極的な社会変化と安定した秩序を両立させることは、政治的な価値が何であれ、その融合した政治形態が模索され、共有されるからです。
技術革新が波及し、サプライ・チェーンが境界を越えて広がる世界を、どのように実現するのか。一方は、市場統合と「資本」のロジックで。他方は、社会的な合意と正義・政治のルールで。
これらは一致しませんが、必ずしも対立するばかりではありません。大国間の覇権争いという形で、何か、優れた答えを出せると思うのは深刻な間違いです。
富や権力に固執しない、柔軟な社会に生きる人々。あるいは、それらが急速に拡大することで自由を確保できる時代。アメリカも、中国も、現代の冷戦を、自国の政治経済秩序の延長として戦うのでしょう。その善良な部分が勝利するために、軍事的な戦争は不要です。
・・・・
朝日新聞の付録『GLOBE』。
イエメンの内戦と食糧危機を報道する写真に目が留まりました。食料は意外なほど売店に積んである。でも外から見つめる親子は店に入れない。
「出自」に支配される社会、AIによる監視社会がなぜ生まれるのか、ドイツの本と小説が紹介されています。
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