IPEの果樹園2019

今週のReview

6/3-8

***************************** 

民主主義と選挙 ・・・Brexitとファラージ ・・・欧州議会選挙 ・・・モディの勝利 ・・・アメリカの貿易戦争 ・・・安倍外交と日銀 ・・・ドラギの遺産 ・・・現代貨幣理論(MMT) ・・・新しいグローバル・ガバナンス

[長いReview

****************************** 

主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 民主主義と選挙

NYT May 24, 2019

How Trump Wins Next Year

By Bret Stephens

6億人以上のインド人が、この6週間に投票し、世界最大の民主的選挙が行われた。ドナルド・トランプが勝った。

1週間前、数百万人のオーストラリア人が投票した。ドナルド・トランプが勝った。

EU加盟諸国の市民たちが、おおむね効果のない、しかし、シンボリックに重要な欧州議会の選挙を行っている。ここでも、トランプ主義が領土を得るだろう。

フィリピンではドゥテルテが、イスラエルではネタニヤフが、ブラジルではボルソナーロが、イタリアではサルヴィーニが勝利した。そして、過去の趨勢が正しければ、イギリス保守党でもっともトランプ的な、ボリス・ジョンソンがテリーザ・メイを継いでイギリス首相になるだろう。

ここに共通するのは、単に右派ポピュリズムの脅威ではない。それは、われわれのイデオロギーに対する侮辱である。すなわち、自国生まれより移民を重視するイデオロギー。国民的な利益やローカルな利益より、グローバルな、あるいは、トランスナショナルな利益を重視するイデオロギー。多数派よりも、人種、エスニック、性差のマイノリティーを重視するイデオロギー。ノーマルな者より、罪深い者を重視するイデオロギー。

それは、長期的な、見えない善のために、直ちに、目に見える代価を支払え、と言う者たちへの犯行である。温暖化対策として、マクロンの示したガソリン価格引き上げに、反対した「黄色いベスト」のスローガンがそうだ。「マクロンが心配するのは地球の終わりだが、われわれは月末の支払いが心配だ。」

だから私は、トランプが経済の崩壊や外交ショックを招いても、来年、再選されるのではないか、と思う。もちろん、トランプ政権は毎日のように恥知らずなカーニバルを示している。保守派は、99%の人々よりも1%の富裕層を重視し、庶民ではなく大企業に奉仕する点で、リベラルや進歩派よりも罪深い。

しかし、左派には一層深刻な問題がある。左派のアプローチは、政治を利己的な行動に反対することとみなす。気候変動や、移民の問題でも、柔軟さを欠く。それは、道義的な優位の感情に従って、政治的敗北の山を築く。

この30年間で、最も成功した中道左派の指導者は、ビル・クリントンとトニー・ブレアであった。彼らは自由市場の利益を信じ、法と秩序の重要さ、西側の価値の優位、庶民のモラルを健全な意味で尊重していた。この枠組みでは、リベラルが勝利したのだ。

しかし、トランプのような人物と闘わなかった。

アメリカで、トランプを倒せる人物を見つけることだ。トランプ主義者たちの勝利は、デマゴギーや偏見によるものだ。文化、社会、経済の不確実さがポピュリスト的な不安を高める。そして、トランプたちの競争相手には、魅力がない。

NYT May 25, 2019

Don’t Let Nationalists Speak for the Nation

By Jill Lepore

FT May 29, 2019

Elizabeth Warren is underpriced in the Democratic race

Janan Ganesh

ウォレンElizabeth Warrenは、バイデンやサンダースに劣る第3位である。しかし、彼女はアメリカについての計画を持っている。学者の経歴があるけれど、有権者の関心を引きつける、政治的な魅力のあるストーリーがない。しかも、女性であることに偏見がある。

しかし、長期的には政策を問われるだろう。ウォレンは左派とクリントン中道派を継承している。高額納税者で、競争的市場を支持している。それはバイデンやサンダースにはないものだ。

NYT May 29, 2019

Democrats, Do Your Damned Duty!

By Charles M. Blow

FT May 30, 2019

Nancy Pelosi cannot hold the line on Trump impeachment

Edward Luce


 Brexitとファラージ

NYT May 24, 2019

Britain on the Brink of Boris Johnson and Chaos

By Roger Cohen

シャーロック・ホームズは説明した。「不可能なことをすべて消去して、そこに残ったものが、いかにありそうにもないとしても、それが真実に違いない。」

この場合、不可能なものとはBrexitである。テリーザ・メイは、どうしてもBrexitを実現できなかった。「BrexitとはBrexitだ。」 それは有名なセリフだったが、実現する勇気も工夫もなかった。

もしボリス・ジョンソンが首相になれば、「合意なしの離脱」に向かうだろう。しかし、ジョンソンには多くの敵がいる。多くの困難に直面すれば、政権は崩壊する。

ジョンソンが首相になるとき、EUにも選挙があり、Brexit党を率いるファラージが勝利するだろう。保守党も労働党も敗北する。アイルランドやスコットランドとの緊張は高まる。

1つ、確かなことは、もし総選挙なら、ジョンソンが保守党を率い、コービンが労働党を率いた選挙になる。ジョンソンは労働党内のユダヤ人差別を広めた。これでは、多くの理性ある人が、どちらにも投票したくない、ということだ。

議会には、多数が支持するBrexitがない。愚かなことを実現するのに、良い方法はない。

メイが去っても、景色が変わるだけで、イギリス議会の機能は回復しない。第2の国民投票だけがそれを解消するだろう。

ホームズの公式に従って、他のすべての選択肢は消えた。

NYT May 24, 2019

Theresa May Had One Job — Brexit. She Failed.

By The Editorial Board

The Guardian, Sun 26 May 2019

The Guardian view on the Conservative leadership: unserious contenders

Editorial

FT May 27, 2019

The forces of Brexit compromise lose in the European elections

Robert Shrimsley

FT May 28, 2019

The Euro elections will leave Boris Johnson dancing to Nigel Farage’s tune

Robert Shrimsley

FT May 28, 2019

It is time for realism on Brexit, not Tory fantasy

できたばかりのBrexit党を率いてファラージが勝利したことは保守党を痛撃した。また、2度目の国民投票を主張する自由民主党も支持を集めた。それは離脱強硬派よりも多い。そして、政治的な三角取引を狙った労働党のコービンも敗北した。

国益を基準に考えるなら、EUとは緊密な関係を維持し、安全保障や外交でも協力するべきだ。合意なきBrexitは間違っている。有権者に判断する機会を与えることだ。

NYT May 28, 2019

Nigel Farage Is the Most Dangerous Man in Britain

By Richard Seymour

ナイジェル・ファラージは、人間の姿をしたイギリス危機である。UKIPを率いて保守党支持層を破壊し、離脱派の勝利を得た。今また、Brexit党を率いて復活し、欧州議会選挙で躍進した。

それは最高のタイミングだった。庶民の生活水準と賃金が低下し、議会やメディアへの信頼は底にあった。

彼は矛盾した存在だ。資本主義的ポピュリストである。金融街でキャリアを積んだが、浮動的な金融資本主義によって打ちのめされた人々から支持を得ている。彼の人種差別は、特に東欧の移民労働者に向けられている。しかし、労働者階級が支持基盤であるとは限らない。多くの高齢者、白人労働者、中枢から見放された地方の人々から支持を集めている。

ファラージは、保守党のような政党組織を築かない。イタリアの5つ星運動に刺激されて、インターネットにおけるシェアリングや投票を基礎にする「デジタル・プラットフォーム」を唱えている。伝統的なUKIPを捨てて、クラウド・ファンディング、政治の起業家に徹している。

ソーシャル・メディアによるゲーム、関心の株式市場で、敏捷に動き回る。クリックを集めて、敵を倒す。議会はあまりにも弱く、信頼を失っているから、こうした攻撃が「民主主義」の復活に見える。

まるでシティの金融取引だ。彼は政治の危機を、自分のイメージで作り変え、利益を得ている。

The Guardian, Wed 29 May 2019

Forget Boris Johnson. The Tory leader could come from the centre

Martin Kettle

FT May 29, 2019

UK politics: the epic fight to the Brexit finish line

George Parker in London

FT May 30, 2019

Britain is now stranded in Brexit limbo

Philip Stephens

もう十分だ。イギリスはBrexitをどうするか、決心しなければならない。残留と離脱の間で、夢想の国に住み続けることはできない。ハロウィーンが最終期限だ。

しかし、国民は分裂し、議会は機能せず、慣性がもっとも強く働いている。

ジョンソンBoris Johnsonなら違うことを言うのだろうか。しかし、彼にも妄想しかないだろう。首相になったら、なんでもできる、というわけだ。ケーキを持つのも、食べるのも。不都合なことには耳をふさいで、国歌を歌うだけだ。

現実には、分裂した国民には議会が機能しない。メイが去るのを残念に思う者は1人もいない。彼女の交渉姿勢は頑迷で、ばかげたものだった。様々な点で国益を損なって、保守党の分断を避けただけであった。

労働党のコービンJeremy Corbynも、冷笑的な姿勢で、Brexitを混乱させた責任を負うべきだが、メイはBrexitを保守党の成果として主張し続けた。

保守党にも、少数の冷静な、プラグマティストはいる。

国内の混乱と国際的な評価の下落で、イギリスは「失われた時代」を迎えるだろう。EUの体制も変化するから、積極的な合意はなく、期限の再延期もあるだろう。もっと折衷的なBrexitを、2016年に目指していたら、広く支持されただろう。

いっそBrexitを放置して、最も他の政策課題について議会は議論することが望ましい。Brexitの地獄を逃れるなら、他の問題はそれほど困難ではない。


 欧州議会選挙

NYT May 25, 2019

The European Parliament Is a Disaster

By Jochen Bittner

ドイツは、欧州議会選挙を、本当の選挙の単なるテストとみなしてきた。この春の選挙はいつもより関心が高い。それは、大陸中で反EUの勢力が議席の3分の1を占めそうだからだ。親欧州の官僚たちにとっては、それが同盟の外にいると思っていた蛮族が、今や内側から同盟を崩し始めたように見えるだろう。

残念ながら、欧州議会は、欧州全体に及ぶ政党が欧州全体の民衆の利益を代表する、という使命を果たしていない。欧州の民主主義を示すことなく、市民たちの意見をゆがめている。欧州議会を解体して、異なる機関に代えるべきだ。それは各国の関心をより正しく反映するものであり、欧州上院と呼ぼう。

欧州議会はEUの初めからあったが、それが有権者によって選出されるようになったのは1979年からだ。市民たちを立法府に近づけることが意図されたが、その可能性を生かしていない。投票率は低下し続けてきた。ブリュッセルから権力を取り戻す、と約束する、反EUの勢力が危険な反発を生じている。

1つの教訓は、欧州議会が無駄な、無意味なもの、と誤解されていることだ。実際は、欧州市民の生活の多くの面に関わっている。EU条約の核心は、補完性、の原則にある。何がEUによって行使される権力であるべきか、何はそうでないか、そのバランスを決めるのが欧州議会である。

しかし、欧州議会はこの使命を果たさず、欧州委員会、すなわち、EUの行政府に反対している。

2に、欧州議会が代表しているのは、欧州の人民ではない。民主主義の「民衆demos」は、自分たちの代表を知っており、説明を求めるはずだ。28の民族、24の言語、さまざまな政治文化のある欧州では、それがむつかしい。

実際、まったく異なる政策を掲げる、異なる国の政治集団が、欧州議会で統一会派を形成している。これでは、どの政策を支持して有権者が投票したらよいのか、わからない。

解決策はある。各国議会だ。今は、各国議会が欧州の立法にほとんど関わっていない。欧州議会を欧州上院に代えて、各国の政党が、各国の選挙によって議員を出すようにすれば、彼らは各国議会を反映し、欧州議会とのチェック・アンド・バランスが機能する。

欧州上院は、各国議会の議会であり、各国の利害が対立する場になる。そして、ブリュッセルを非難するだけでなく、自分たちの代表する有権者が求める政策を提案するだろう。

FT May 26, 2019

America’s ‘exorbitant privilege’ is Europe’s sin of omission

Wolfgang Münchau

The Guardian, Mon 27 May 2019

The Guardian view on the EU election results: no mandate for no deal

Editorial

The Guardian, Mon 27 May 2019

How were the EU elections for Italy, France and Germany? Our panel responds

Maurizio Molinari, Christophe Guilluy and Alan Posener

FT May 27, 2019

European elections have created a more fragmented legislature

Ben Hall, Europe Editor

PS May 27, 2019

Game of EU Thrones

HAROLD JAMES

反欧州のポピュリストたち、Italy’s Matteo Salvini, Hungary’s Viktor Orbán, and America’s Steve Bannonが、親欧州の既存政党を打ち破る、という予想だった。次の欧州委員会の委員長はどのように決めるのか?

左右の対立という図式は消えた。年金、賃金、再分配。そのような問題で各国の政治は対立してきた。しかし、現実によって意味を失った。欧州もグローバル化して、福祉国家を欧州規模で再建しなければならなくなっている。しかし、その意味するところは、際限のないEU各地の対立だった。

欧州議会選挙の興味深い結果は、ポピュリストや、右派・ナショナリズム政党が勝利しなかったことだ。彼らも社会的保護を訴えた。ただし、国家内に限定された、古風な福祉主義だ。

ナショナリスト政党が有権者にアピールしたのは、汚職を攻撃したからだ。問題は国境を越えて広がっている。他方で、親欧州のグリーン・パーティーが支持された。問題を各国だけで扱うことはできない。また、リベラル派の政党も勝利した。マクロンとも協力すると表明した、カリスマ的指導者Guy Verhofstadtがいたからだ。

欧州議会は、初めて、欧州の問題を議論する議会になるだろう。2016年のUKUSが示した政治的大変動と同じように、各国の立法府は、機能せず、変わりやすい執行部に、苦しむようになる。

汚職問題に対して明確な姿勢を示して、最優先に各国・欧州レベルの解決を指導するべきだ。新しい欧州議会は、アメリカやロシアに対抗して、グローバルな課題、エネルギーや安全保障に対する協調型アプローチを示すべきだ。

FT May 28, 2019

Fragmented Europe risks paralysis

Gideon Rachman

FT May 28, 2019

The centre has held, but EU reform will be tricky

NYT May 28, 2019

Reasons for Hope and Concern in Europe’s Elections

By The Editorial Board

NYT May 28, 2019

The Far Right Is Here to Stay

By Ivan Krastev

ヨーロッパの転換点だが、曲がらなかった。

右翼とポピュリストの躍進がEUを変えると恐れられた。しかし、人々は主流派に多数を与えた。それでも明らかになったことは、彼らがいなくなることはない、ということだ。欧州議会の内側から、彼らはEUを解体するだろう。

他方で、リベラルとグリーンの躍進は驚きだった。特に若者たちはグリーン政党を支持した。EUは地球温暖化に積極的な姿勢を示すかもしれない。ブリュッセルはこの傾向を無視できないだろう。不平等や環境問題を解決しなければ、EUは支持されないことを知るべきだ。

地球の生命を守るエコロジカルなリベラル派と、自分たちの生活を守ると約束するナショナルなポピュリストが支持された。この政治的な方向は矛盾しており、持続不可能だ。

ユーロ懐疑論の脅威は退けられたが、ユーロ悲観論に代わる。

FP MAY 28, 2019

How European Politics Is Fracturing

BY ROBBIE GRAMER

FT May 29, 2019

Green party gains should embolden the EU on climate change

PS May 29, 2019

Why the EU Election Was a Win for Macron

ZAKI LAÏDI

PS May 30, 2019

Europe’s Citizens Say They Want a More Political EU

JEAN PISANI-FERRY

市民は明らかにヨーロッパの政策方向を示したが、いずれの政府もEUの政治統合に反対している。この5年間で、市民たちの望むEUを実現できるか、あるいは、EUが信頼だけでなく、市民の関心も失うのか。


 モディの勝利

FP MAY 25, 2019

The Modi Mystery

BY SUMIT GANGULY, HIMANSHU JHA, RAHUL MUKHERJI

多くの点で、モディNarendra Modiは政権を続けるべきではなかった。失業率は高く(データの公表を拒んでいる)、高額紙幣の廃貨は国民の大多数に大きな苦痛を与えた。税制改革も中小企業を破滅させた。

それにもかかわらず市民たちはモディに次期政権をゆだねた。インドでは、政権党が敗北するのが普通であるから、その意味でもこの勝利は注目に値する。

投票率は通常よりも高い67.11%であった。与党BJP374%を得た。最大野党の国民会議派は、わずか19.5%であり、この20年間で最低だ。

この差は選挙戦術の結果である。モディは、早速、テレビの演説で、政教分離を無意味だと宣言した。選挙戦を通じて、モディは、非合法移民、安全保障、テロリズムに関して発言し、国民の不安を刺激した。

他方、会議派は3つの失敗を犯した。1.モディに代わる指導者を示さなかった。ガンディーRahul Gandhiは、家柄はあっても、政治的な知恵とカリスマ性を欠いた。2.地方政党との連携に失敗した。3.最近、州選挙で勝利したRajasthan and Madhya Pradeshで、勝利できなかった。

それ以上に、会議派は、モディとBJPが示すヒンドゥー・ナショナリズムを倒す、多元的で世俗的な、政教分離主義の魅力的なインドを示せなかった。インドの政教分離主義とは、国家と宗教との完全な分離を求める西側と異なり、すべての信仰に平等な敬意を払うことだ。

BJPは、国家と宗教との関係を異なる意味に理解している。より偏狭な、ヒンドゥー教だけのインドを主張し、イスラム教徒は単なる準市民だ。彼らの母国はバングラデシュやパキスタンである。西ベンガル州では、非合法移民問題を利用して、18議席も取った。

今後数年で、議会で多数の占める与党と、反対派の分裂状態のため、BJPがヒンドゥー・ナショナリズムの制度化を進めるだろう。インドの多元主義を守る、新しい指導者が必要だ。

FT May 26, 2019

India badly needs someone to stand up to Modi

Jamil Anderlini

この選挙は、インドの「魂」と「思想」において、モディが敵を打ち倒す闘いであった。インドのリベラルは、弱い声しか示せなかった。

インドにおいて、モディのカリスマと全体的な政治を支配する力は、称賛するほかない。大衆を魅了する雄弁家であり、容赦ない選挙運動を展開した。議会選挙を、彼の個人スタイルに関する大統領型の国民投票に変えた。

モディの高い人気は、国民の多くの層にアピールすることから生じている。政治にとってのモディは、カレーにとってのトマトのようなものだ、とある人は語った。あなたの好みが何であれ、彼なしには語れない。彼は好みの一部になる。また、モディは自分を伝統的な敵に対する強権指導者に見せた。特に、パキスタンだ。

これまで、インドの指導者たちは、独立後の騒乱を再現する恐れから、イスラム教徒との対立を刺激しなかった。しかし、モディはそれを無視する。ヒンドゥー・ナショナリズムや政治集団の暴力を容認する姿勢を取った。それはインドの制度や民主主義に対する信頼を破壊する。

PS May 28, 2019

India’s Cult of Modi

SHASHI THAROOR

FT May 29, 2019

Narendra Modi must keep India’s tycoons onside but in check

Simon Mundy in Mumbai

FP MAY 29, 2019

Nationalism Won’t Solve India’s Job Crisis

BY ATMAN TRIVEDI


 貧困対策

NYT May 25, 2019

How Liberalism Loses

By Ross Douthat

PS May 28, 2019

Beyond Unemployment

MICHAEL SPENCE

失業だけに焦点を当てることで、多くの問題が無視されている。雇用をめぐっては、その安定性や、医療保険、ワーク・ライフ・バランス、所得と分配、職業訓練、社会的移動性、雇用機会、などが重要だ。

NYT May 29, 2019

Cash, Food and Health Care All Help the Poor, but Something’s Still Missing

By Nicholas Kristof

パラグアイの先住民に対する支援策は成功している。豊かな世界も、貧困問題を解消するために学ぶべきだ。

貧困対策と言えば、世界中どこでも、現金や食料、きれいな水、医薬品、その他の重要な物資を与えることだ。しかし、最も重要なものは、希望である。貧困の循環を打破するには、人々が自信を回復し、彼らが得られないと思っている可能性に意識を向けることだ。

パラグアイでは、先住民族に対して、乳牛を与える。そして、その世話の仕方や、小さなビジネスを教える。コーチングを続けて、貯蓄の仕組みを提供し、その他の支援を行う。


 アメリカの貿易戦争

NYT May 26, 2019

Donald Trump’s Great Patriotic Wars

By Michelle Cottle

トランプ政権は貿易戦争の新しいスローガンを国民に示し始めた。愛国心は犠牲を求める。

関税戦争に地方で支持が低下したことを意識して、ツイッターに「愛国者農民」が最大の勝者になる、と書いた。そのときまで、トランプは農民への補助金を用意した。160億ドルだ。「大きな関税を支払うのは、中国やその他のアメリカとビジネスをする者たちだ。」

しかし、大統領は言わない。それを払うのはだれか? アメリカ人だ。

大統領の主任経済顧問Larry Kudlowは、もっと率直だ。「どちらも苦しむ。」 しかし「貿易や輸出が改善する、市場を開放する可能性がある。」 それは「苦しむ価値がある。」 「なすべきことをなせ。」

いつもは自由貿易を唱える共和党議員たちも、貿易戦争の大義を支持している。「確かにアメリカ国民は犠牲を求められるが、外国に派遣された米兵や、亡くなった英雄たちに比べて、わずかなものだ。」

彼はいつも、経済や文化の変化について、不安に駆られるアメリカ人を救う大胆な、実行できそうにない、選択をする。トランプは、アメリカを再び偉大にするMAGA、と公約した。それは決して未来ではない。より快適な過去なのだ。

トランプに解決できない問題はない。すぐに、痛みもなく、解決できる、と自慢してきた。オバマケアをやめて、もっと良いものに替える。製造業の最盛期を取り戻す。ガソリン価格を下げる。麻薬問題を終わらせる。中国と合意する。どれも簡単だ。そして、巨大な、美しい壁を建設して、しかも、その費用をメキシコ人が支払い、文化的・経済的な安全性を確立する。そんなことは、ケーキを1切れ食べるように簡単だ。

これらは夢であり、実現したものはない。

すばらしい、容易に勝てる、貿易戦争もそうだ。まったく中身はない。苦しむのは農民だけではない。製造業も高いコストを支払う。不安定化が市場を損なう。それでもトランプ政権の新しいスローガンは支持者の怒りを高め、批判の声を抑える。国家のプライドを刺激して、彼は支持者たちに、外国の競争相手や国内のグローバリストたちと、政府が闘っている、と宣伝する。

トランプは、こうした不可能な約束を振りまく性格を改めない。アメリカ産業を救済することを彼は演説し続けている。「昔を思い出そう。われわれが作っていたのだ。」 そして大統領は、NAFTAのあと、何千、何万の工場が閉鎖された、と嘆く。「全て戻ってくるぞ!」と、勝利を叫ぶ。

本当に? 大統領、あなたはそう思うのか?

PS May 27, 2019

How Will the US-China Trade War End?

ANDREW SHENG , XIAO GENG

貿易戦争は、まだ大きな痛みをもたらしていないようだ。なぜなら金融市場は中央銀行がQEで自分たちを救済してくれると仮定しているからだ(おそらく間違いであるが)。しかし、117か月間も連続して景気拡大が続いていることは、歴史的な平均は48カ月であるから、アメリカ経済がまもなく痛みのともなう景気後退に入ることを意味している。それはトランプの貿易戦争が引き金になるだろう。たぶん、そのときに米中の休戦がなるだろう。

PS May 27, 2019

Japan Then, China Now

STEPHEN S. ROACH

「政府は偽造品やコピー商品を許さない。それはわれわれの未来を盗むものだ。もはや自由貿易ではない。」 ロナルド・レーガン大統領が日本についてそう言ったのは、19859月にプラザ合意が成立した後だ。今、多くの点でよく似たことが起き、1980年代の同じ映画を見ているような気がする。ただし、ハリウッド映画ではなくリアリティー番組であり、日本に代わって新しい悪役がいる。

1980年代、日本はアメリカの最大の経済的脅威だった。知的財産を盗んだという告発だけでなく、通貨価値の操作、国家が支援する産業政策、アメリカ製造業の空洞化、2国間の貿易不均衡があまりにも拡大していた。アメリカが不満を示すと、日本はそれを受け入れたが、大きな代償を支払った。それは、経済停滞とデフレの、およそ30年に及ぶ「失われた時代」だ。

日本と中国には、反対された重商主義だけでなく、他の類似点がある。両国は、アメリカが自国の経済問題に対するスケープゴートを外国に求める、その不幸な習慣の犠牲者であった。1980年代の日本たたきと同じく、現在の中国たたきでも、それはアメリカで、マクロ経済の不均衡が膨張していることから生じた。30年の時を隔てて、アメリカの国内貯蓄が急激に減少し、経常収支や貿易収支の赤字が膨らみ、アジアの経済的大国に紛争を仕掛ける舞台ができた。

1981年に、レーガンが政権に就いたとき、国内貯蓄率は7.8%で、経常収支は基本的に均衡していた。しかし2年半で、大幅減税により、貯蓄率は3.7%に急落した。経常収支も、財の貿易も、継続して赤字になっていた。つまり、アメリカの貿易問題とは、まさに自作自演であった。

しかし、レーガン政権はそれを否定し、日本を標的にした。日本は、1980年代前半、アメリカの貿易赤字の48%を占めたからだ。日本は、不公正で、非合法な貿易慣行を責められたが、当時の通商代表は、若きライトハイザーRobert Lighthizerであった。

2017年に、ドナルド・トランプが大統領になったときは、レーガンと違って、豊富な国内貯蓄がなかった。しかし、同様に、大幅減税を行った。今度は、「アメリカを再び偉大にする」ためだ。その結果は、景気循環による民間貯蓄の増加を打ち消して、連邦財政の大幅赤字になった。国内貯蓄率は2.8%に低下し、国際収支は深刻な赤字になった。

中国は、1980年代の日本であった。2018年のアメリカの貿易赤字は、その48%が中国に対してであった。ただし、現在はグローバル・サプライ・チェーンがあるため、米中貿易の赤字の35-40%は中国の外から輸入され、組み立てられたものだ。それゆえ中国のシェアは日本より小さい。

今の中国たたきも、アメリカのマクロ経済不均衡と関係がある。アメリカの国内貯蓄が増えなければ、中国からの輸入が、他の貿易相手国に移るだけだ。世界中のコストの高い国に移転され、アメリカの消費者は増税されたのと同じ影響を受ける。

どちらの場合も、アメリカは妄想的な議論をした。サプライ・サイド経済学、特に、減税が自動的に財源をもたらすという説明や、今の現代貨幣理論(MMT)である。貯蓄不足がマクロ経済の制約であることを否定する理由が、アメリカにある。すなわち、予算赤字を削って、貿易赤字を減らすことを支持するような、国内政治の基盤がない。アメリカはケーキを持ち、しかも、ケーキを食べたい。医療保険も、軍事予算も、大幅減税も、したいのだ。

こうしてわれわれはアメリカの同じ映画を見ている。他国を叩いて、今度は日本ではなく中国だが、財政の限度を守る気はない。ただし、映画の結末は非常に異なるかもしれない。

FT May 29, 2019

The EU and Japan struggle to harness Trump’s China trade ire

Alan Beattie

FP MAY 29, 2019

Most People Don’t Know What a Tariff Is’

BY KEITH JOHNSON

FT May 30, 2019

Why stock investors in China need to prepare for a cold war

James Kynge

VOX 30 May 2019

Trade war: The clash of economic systems threatening global prosperity: A new eBook

Meredith A. Crowley


(後半へ続く)