(前半から続く)


 人の移動と欧州議会選挙

PS May 17, 2019

The Roots of European Division

FEDERICO FUBINI

人の移動の自由はEUの原則の1つである。しかし、EUの周辺部にある政府は、ナショナリズムによって移民流入に激しく反対している。同時に、彼らの国から、その国民、家族や友人が流出することを心配している。

1989-2017年、外国で暮らすか働く人口は、ルーマニアの20%、ブルガリアの12%、ポーランドの7%、ハンガリーの5%イタリアの3%である。その実際の数字はもっと高いだろう。最大の行き先はドイツである。

EU最強の経済を持つドイツは、2つの点で、新加盟諸国から利益を受けている。第1に、中東欧からの移民はドイツの人口減少を補っている。第2に、若い労働者への教育や訓練への投資を通じて、ドイツは1000億ユーロも利益を受けている。EU内の頭脳流出もそうだ。

2018年、ドイツの労働者の時間当たり労働コストは、ブルガリアの6倍、ルーマニアの5倍、ポーランドやハンガリーの3倍、チェコの2倍以上であった。

ドイツの自動車メーカー、アウディのサプライ・チェーンを考えてみる。ハンガリー工場でエンジンを生産し、ドイツのバヴァリアの工場に運んで自動車を組み立てている。ハンガリーでもドイツでも、労働者の生産性はほとんど同じである。しかし、ハンガリーの月当たり基本給与は、ドイツの工場労働者の、1日の1人当たり総コストより少ない。しかもアウディは、特別な税免除を得ており、ハンガリーにほとんど税金を支払わない。

鉄のカーテンの東側が低賃金であることは、西側で一般的な集団交渉による最低賃金の取り決めを無意味にしてしまった。

EUの国家補助に関するルールが、さらに事態を悪化させている。欧州委員会は、低開発地域で補助金となる税免除を許してきた。雇用創出や成長を促すためだ。かつてはイタリア南部やその他の貧しい地域がこの特例の対象だった。しかし、今では東欧である。

その意図しない結果を、BMWの工場誘致をめぐる、ハンガリーとスロバキアの優遇策の提示競争に見ることができる。

外国企業の投資は知識やスキルをもたらし、雇用や追加の所得をもたらす。中東欧諸国が境界を閉鎖し、保護主義で競争しようとは考えていない。しかし、その結果には是正すべき点が多い。地方のエリートは、ドイツ企業を誘致するために、地域の利益を無視して政策をゆがめている。

ゆがんだ税制は、東欧の賃金水準を上げず、むしろ中産階級の空洞化をもたらした。職場を失った労働者の生産性が大幅に低いわけではないのに、西側のような財・サービスも利用できないことを、人々は知っている。失望した有権者たちの多くが、「支配を取り戻せ」と叫ぶ政治家たちに投票するだろう。

FT May 19, 2019

Europe’s political centre must prove its worth

FT May 19, 2019

Brexit has changed the job of an MP for ever

Nicky Morgan

議員の仕事は決して固定していない。特に、2016年の国民投票以降、選挙区を代表する仕事はますますチャレンジの多いものになった。

議会は何を代表しているのか?

代表制議会という考え方の多くは、1774年のEdmund Burkeバークが示した演説に大きく依存する。「あなたの代表は、その判断によって、あなたへの責任を果たす。もし彼が、その判断を犠牲にしてあなたの意見に従うなら、それはあなたに奉仕したのではなく、あなたを裏切ったのだ。」

Brexitの過程では、多くの活動と論争、そして行き詰まりがあった。多くのe-mailを読んで返事を書いた。有権者たちが全く異なる意見を送ってきた。自分が議員でなくてよかった、と言うものもあった。

21世紀の、Brexit後の代表議会は、バークが知らないことだ。われわれは人々との関係を築かねばならないし、議会が判断を示し、その乱用を抑える場所であるように努めねばならない。

PS May 20, 2019

Austria and the Plot Against Europe

CHARLES TANNOCK

PS May 20, 2019

Europe’s Only Decision

CARL BILDT

NYT May 20, 2019

Is Italy’s Front-Runner a Marshmallow?

By Beppe Severgnini

イタリア人を統治するのはむつかしい。サルヴィーニにも、欧州のポピュリスト集会にも、反対する横断幕が出た。

PS May 21, 2019

In Defense of Europe

MICHEL BARNIER

PS May 22, 2019

The Europe of Tomorrow

JAVIER SOLANA

この選挙は重要だ。難民危機、Brexit国民投票、ドナルド・トランプの大統領当選、それらがあって初めての選挙だから。

PS May 22, 2019

The EU’s Four Challenges

ANA PALACIO

ヨーロッパは選挙結果を予想して議論することを終わり、真の課題に向き合う。

1に、経済不況への転換だ。それはドイツも含めて、ユーロ圏全体に及ぶ。銀行同盟や単一市場の完成は実行されていない。

2に、リベラルな民主主義の強化である。ポピュリストへの抵抗は、オランダでも、フランスでも見られたが、成功していない。もし本当に流れを変えるなら、指導者たちは市民とのつながりを回復しなければならない。

3に、EU内のリベラルな政府と非リベラルな政府との分裂・対立を克服することだ。制裁措置は弱く、共通の目的は弱まっている。

最後に、EUの構造問題がある。BrexitEUを根本的に変えるだろう。重大な課題に応えるには、加盟諸国の政府が協議し、調整するだけでは不十分だ。

PS May 22, 2019

Will Young Voters’ Apathy Take Down Europe?

DOMINIQUE MOISI

FT May 23, 2019

Europe’s diminished far right still poses a threat

Tony Barber

FP MAY 23, 2019

Europe Is Ripe for a Return to Establishment Politics

BY JAN SUROTCHAK, DANIEL TWINING


 モディの勝利とポスト真実の時代

NYT May 17, 2019

They Peddle Myths and Call It History

By Romila Thapar

2014年のモディとBJPBharatiya Janata Party)の勝利は、ヒンドゥー・ナショナリズムを正当化するため、インドの歴史を書き換える作業を強めた。

教科書を書き換え、ソーシャル・メディアで神話をばらまき、ステレオタイプの解釈を広めた。それはイギリスの植民地統治と、ヒンドゥーとムスリムの対立で、イギリスの支配を正当化したジェイムズ・ミルの歴史書に由来する。

FP MAY 19, 2019

What Will India Look Like If Modi Returns to Power?

BY JAMES CRABTREE

FT May 21, 2019

Indian election: Narendra Modi’s incomplete project

Amy Kazmin and Lionel Barber in New Delhi

グジャラート州の繁栄はモディの政治的な成功の背景だった。モディは、彼が高めた国民の成長に対する期待に応えねばならない。

FT May 22, 2019

Corporate India has no time to waste on debts

Henny Sender

NYT May 22, 2019

Why India Needs Modi

By Steven Rattner

モディの最も重要な課題は、生産性を高めることだ。インドは中国に比べて都市化が遅く、インフラ整備が遅れている。インフォーマル部門の雇用が多い。

モディは、全国統一の消費税に向けた税制改革、破産法の整備を行った。

しかし、農業部門と雇用問題は深刻だ。労働市場の近代化は遅れている。高額紙幣の「非貨幣化」では問題が悪化し、ルピーの減価ではインフレによって農民が苦しんだ。

社会を転換させると約束する指導者として、その期待に応えることはむつかしいが、そのためには彼の国家介入主義を抑えて、幾分か、サッチャー主義を取り入れることだろう。

The Guardian, Thu 23 May 2019

The Guardian view on Narendra Modi’s landslide: bad for India’s soul

Editorial

世界はこれ以上のポピュリスト指導者を望まない。

NYT May 23, 2019

How Narendra Modi Seduced India With Envy and Hate

By Pankaj Mishra

モディが政権を執った5年間、インドは彼の感覚に苦しんだ。特に、201611月の流通貨幣額を90%も廃止したときだ。インド経済の破壊から、南アジアの核戦争リスクまで、世界最大の民主国家の指導者として、モディは危険なまでに無能である。この春の選挙戦でも、エスニック・宗教の分断を絶対視する主張を行い、恐怖や嫌悪を政治的武器とした。

モディ政権下のインドは継続的な暴力の爆発によって特徴づけられた。モディを支持するテレビのアンカーは「アンチ国民派」を攻撃し、ソーシャル・メディアで軍に暴行を促し、女性は強姦で脅され、群衆のリンチがイスラム教徒や低カーストの人々を犠牲にした。

ヒンドゥー至上主義者は、軍隊から司法、ニュース・メディア、大学まで、占領し、介入して、反対する学者やジャーナリストは暗殺や恣意的な拘束のリスクが高まった。古代のヒンドゥー教徒が遺伝子組み換えや飛行機を発明したという暴論を熱狂的に主張するにおよんで、モディとヒンドゥー・ナショナリストたちはインドを狂気の炎に投げ込んだ。

モディは選挙のために、トイレ、低利融資、住宅、電気など、さまざまな利益供与を行い、大企業からの巨額の献金を受け、かつて公正であった選挙委員会にも党派的に介入した。しかし、何より若者たちから支持されたことは重要だ。

インド憲法は、すべての個人が平等で、教育や就労の機会について、同じ権利を持つという考えを掲げている。しかし多くのインド人が経験する日々の現実は、この原理をあまりにも踏みにじるものだ。民主主義の輝く理想と、汚れた非民主主義の現実との大きな差に、インド人は住むことを強いられた。不正義と弱者、劣等者、尊厳の否定、満たされず、ねたみに沈む、深い感情が蓄積されてきたのだ。

大都市に住む支配階級との対話の可能性は、まったくないだろう。歴史が穏やかな形で、繁栄する西側と収れんする、ということはない。この見捨てられたという感覚は、1990年代にインドがグローバル資本主義を受け入れ、地方から都市圏に移動した膨大な数の人々に、アメリカ的な個人主義がもたらされると、ますます強まった。衛星テレビやインターネットは、かつては考えられないような、民間の富と消費の妄想を拡大した。同時に、インドでは不平等、汚職、縁故主義が強まり、社会的なピラミッド構造が拡大したように見えた。

しかし、インドの永久に支配し続ける植民地後の政治家たち、彼らに対する休火山のような怒りを利用する、あるいは、社会的な上昇をくじかれて沸騰する不満を自分の支持層に流し込む、そんな政治家はいなかった。2010年代の初めに、モディが現れて、そのメリトクラシー(能力主義)の讃美、伝来の特権に対する強烈な攻撃を行ったことで、彼らを政治に動員したのだ。

インドの、英語を話す旧来のエスタブリッシュメントたち、西側の諸政府は、モディを排除していた。モディが統治していたグジャラート州で、2002年、数百人のイスラム教徒が殺害された犯罪に対する悪意ある無関心、直接的な監督責任を、彼は負っていたからだ。しかし、一部の最も富裕なインド人たちに支持され、政界に復帰すると、2014年の選挙前に、インド人が苦しい過去から離れて、影響の未来に向かう、という高揚する物語で魅了したのだ。インドを国際的な覇権国家に変える、ヒンドゥーの歴史的な前進が起きる、と約束した。

それ以来、小説家のように物語を創りだす彼の能力は、ソーシャル・メディアや新聞、テレビとの相乗効果で、着実に、高まってきた。モディ政権の5年間で、インターネットを利用する人口は倍増した。安価なスマートフォンが最貧層にも普及し、Facebook, Twitter, YouTube and WhatsAppのフェイク・ニュースにさらされた。彼が選挙で最も有権者を喜ばせたのは、空爆でパキスタン人数百人を殺害し、おびえたパキスタンは捕虜のパイロットを返した、という嘘の解説だった。

モディは、取り残されたインド人の情熱を、目覚ましい経済成長に転換する錬金術師には程遠かった。しかし、ニーチェが「ルサンチマン」とよんだ感情を解放したのだ。それは、暗がりでの復讐、尽きない、飽くことのない爆発に関する、全体的な不安を呼ぶ。

多くの右翼のデマゴーグと同じである。マイノリティー、難民、左派、リベラル、その他をスケープゴートに利用して、同時に、略奪的な資本主義を加速する。不正義から解放する代わりに、彼は最も暗い感情を解放する。パキスタン人、イスラム教徒、「反ナショナリスト」の宥和論者を攻撃する、ヘイト集団に公然と許可を与える。

復讐心や、権力、支配への妄想を駆使して、モディは感覚による政策を、他の政治家なら破滅したような失策でも、公の精査の対象から免れる。ポスト真実の時代にモディが得た最大の勝利は、われわれが未来を恐れる理由である。

FP MAY 23, 2019

It’s Modi’s India Now

BY RAVI AGRAWAL

FT May 24, 2019

Narendra Modi should opt for reform, not division


 日本の漫画

FT May 17, 2019

Riotous works of manga burst into life at the British Museum

David Pilling

大英博物館で、日本の漫画文化に関する特別展がありました。


 イランの正常化交渉

NYT May 18, 2019

Don’t Fight Iran

By Ross Douthat

FP MAY 21, 2019

How to Prevent an Accidental War With Iran

BY STEVEN SIMON, RICHARD SOKOLSKY

FT May 22, 2019

The next Middle East conflict may be one of accident, not design

Roula Khalaf

イランは北朝鮮と異なる。その体制も、社会も、また歴史や経済状態も。

イランはアラブ世界に軍備を備えた代行者を配置している。テヘランは、否定したまま、近隣諸国を苦しめる能力がある。アメリカとの関係は長い敵対の歴史だ。互いに許さない。

また、近隣諸国も重要だ。北陽線は韓国がアメリカとの仲介に全力で取り組んでいる。しかし、イランの近隣諸国は、いずれも様々な目的で、アメリカがイランの体制を転換することを願っている。

中東の戦争は、いずれかが計画する形ではなく、誤解や偶発的な衝突から起きるだろう。

NYT May 23, 2019

A Deal for Iran: Normalization for Normalization

By Bret Stephens

アメリカとイランの、公平で、対照的な合意は、その異なる立場を反映したものである。完全な正常化と交換に、完全な正常化を。

トランプは、戦争を望んでいないが、戦争になるかもしれない。しかし、両国の目標は、正常化である。・・・正常化normalizationとは何か?

アメリカから見れば、それは経済制裁や外交の制裁を直ちにやめることだ。アメリカ大使館をテヘランに開き、イラン大使館をワシントンに開く。イランとアメリカの諸都市を結ぶ直行便が飛ぶ。双方向の貿易と直接投資、イランと取引する企業への制裁もやめる。数万人のイラン人留学生がアメリカの大学に入学し、数万人のアメリカ人旅行者がイランの都市を訪れる。

イランから見れば、正常化とは、イランが普通の国家として行動することだ。世界第4位の石油埋蔵量を持つ、普通の国家として、イランは地下工場で進めたウランやプルトニウムの濃縮計画を取りやめる。普通の国家なら、アルゼンチンのテロリストによる殺害、ワシントンのレストランにおけるサウジアラビア大使暗殺、デンマークやフランスにおける暗殺や爆破を行わない。シリアのアサド政権に対する軍事・財政・輸送支援を行わず、タリバンへの武器や兵員補充の支援を行わず、特に、イエメンの反政府勢力に対して、最近、メッカに向けて発射されたようなミサイルを提供しない。ゲイの人々を処刑したり、女性を投獄したり、アメリカのジャーナリストを含む、外国人を逮捕したりしない。

要するに、正常化と正常化の交換とは、イランが、アメリカの圧力によってではなく、自ら核武装を放棄し、人権を守り、国際的に認められた行動を取ることを意味する。

体制転換を空爆によって達成するのではなく、時間をかけて正常化することだ。

FP MAY 23, 2019

Even Conservative Iranians Want Closer Ties to the United States

BY FOTINI CHRISTIA, ELIZABETH DEKEYSER, DEAN KNOX


 天安門事件と歴史改変

The Guardian, Sun 19 May 2019

China wants us to forget the horrors of Tiananmen as it rewrites its history

Louisa Lim and Ilaria Maria Sala

198964日を記憶することは、決して中立の任務ではない。それは市民としての義務であり、中国国境を越えて広がる国家の嘘に反対する抵抗の行為である。

その日、共産党は戦車を送って、北京中心部の天安門広場から政府に抵抗する者たちを排除した。数百人、もしかすると数千人が殺害された。その後の歳月を経て、ますますハイテクの検閲と管理手段を駆使して、この暴力的な弾圧の証拠と記憶を、中国政府は組織的に消去してきた。

北京は歴史を操作するだけではない。文明全体を、単一民族の直線的な歴史に変えようとしている。それはアフリカで人類が誕生したよりも前にさかのぼる。中国文明があったという伝説の王国、殷を発掘する試みもある。

NYT May 22, 2019

China’s Orwellian War on Religion

By Nicholas Kristof


 カリフォルニア

FT May 19, 2019

Universal basic income: money for nothing

NYT May 22, 2019

America’s Cities Are Unlivable. Blame Wealthy Liberals.

By Farhad Manjoo

リベラルで、億万長者が住むカリフォルニアだが、貧困層の生活水準は悪化し、人口の流出が続いている。児童福祉や教育は金持ちだけが利用できる。アメリカ社会の不平等を証明する、ディストピアの展示場だ。


 生産システムの分解

VOX 19 May 2019

The new globalisation and income inequality

Sergi Basco, Martí Mestieri

Baldwinが「ニュー・グローバリゼーション」と呼んだ<生産システムの分解>は、中間財貿易の比率を増大させた。同時に、国際的な資本移動、直接投資も増加した。

その効果は、生産要素によるHeckscher-Ohlin型の貿易モデルで、資本集約度の違いによる貿易の利益の分配を強めただろう。貿易は生産要素の相対的な報酬を変えるからだ。しかし、国際資本移動の増大は、各国の貯蓄の違いを超えて、資本ストックの差を拡大する。

こうして、各国内の分配が影響を受けた。第1に、各国の中間財の生産が増えた。高い生産性の持つ国は、資本集約的な中間財の生産に特化している。第2に、資本に対する需要は、各国が生産する中間財の資本集約度による。

生産性の高い国は、資本ストックが増え、実質賃金と消費が増えた。彼らは<生産システムの分解>による勝者である。主な敗者となるのは、中間的な生産性の諸国である。他方、南の諸国は、グローバル・サプライ・チェーンに参加することで利益を得た。北の諸国も、南の諸国が参加するとき、国の全体的な厚生水準としては上昇する。

国内の不平等が最も拡大するのは、生産性が非常に高いか、非常に低い諸国である。なぜなら、国際資本移動が最も大きいから。発展した諸国の労働者は、資本に比べて、分配が悪化する。その対策としては、グローバル・サプライ・チェーンに反対するより、国内の分配を改善すること、特に、生産性の競争において、教育やインフラへの投資によって生産性を高めることが正しい。

The Guardian, Wed 22 May 2019

The Guardian view on British Steel’s collapse: productive v predatory capitalism

Editorial

FT May 22, 2019

British industry needs its own version of the moon shot

Mariana Mazzucato

アポロ計画は50年前に行われた。月に着陸するために、多くの研究や投資、協力が刺激された。イギリスにも新しい産業政策が重要だ。


 温暖化

FP MAY 19, 2019

Leaving the Paris Agreement Is a Bad Deal for the United States

BY RICK DUKE

FT May 21, 2019

Why BP supports a fast shift to low carbon

Helge Lund


 アベノミクス

FT May 20, 2019

Shinzo Abe contemplates one last throw of the economic dice

Gavyn Davies

日本は、国債累積と低インフレの、世界における実験室であった。その結末として、M.Wolfの予測では3つある。

1.ハイパーインフレーション。2.債務のデフレーション。3.財政・金融の協力による長期的な債務/GDP比率の低下。

安倍首相と黒田日銀総裁とのアベノミクスは。一定の成果を得た。しかし、デフレは止まったものの、出口戦略は見えない。経済は、米中貿易戦争の影響で、悪化すると予想される。

日銀のフォワード・ガイダンスは効いていない。インフレ予想がまるでないからだ。安倍首相は、10月に消費税引き上げを、幼稚園無料化などと組み合わせて断行するかもしれない。明らかにデフレ的だが、リスク・テイカーである。


 スティグリッツ

FP MAY 20, 2019

An Icon of the Left Tells Democrats: Don’t Go Socialist

BY MICHAEL HIRSH

スティグリッツは市場を信用しないが、民主党が左派の「民主的社会主義」に向かうのを止めようとしている。2020年の大統領選挙でトランプが再選されるのを阻止するためだ。民主党が左派に偏るのは間違いだ、と考える。「民主的な社会主義」ではなく、「進歩的資本主義」を提唱する。

FP MAY 21, 2019

Big Business Is Big Politics

BY NICHOLAUS D. SORRENTINO


 ロボット

PS May 21, 2019

Robo-Apocalypse? Not in Your Lifetime

J. BRADFORD DELONG

FT May 22, 2019

Technology platforms are losing control

John Gapper


 アラブの暴力

FT May 22, 2019

Syria is braced for new spasms of violence

David Gardner

FP MAY 22, 2019

The Counterrevolution Begins in Sudan

BY JUSTIN LYNCH


 デフレからインフレ再現

PS May 22, 2019

How Inflation Could Return

MOHAMED A. EL-ERIAN

先進経済諸国におけるインフレ論争は、この10年間で大きく変化した。今や、低インフレが成長を損なうことが議論されている。

11兆ドルにおよぶグローバルな債券市場、マイナス金利は、将来の資源配分の悪化や、資産価格上昇、金融不安をもたらすだろう。投資家たちはあまりにも大きく中央銀行に頼っている。

インフレをもたらそうとする政策担当者たちの思考は、景気循環や総需要の不足を解決することに限定されている。欧米の金融政策担当者がQEに頼り、「日本化Japanification」を懸念することがそうだ。しかし、それは現状を正しく見ていない。

中長期の変化を見るなら、インフレを抑える強力な構造的諸力が働いている。私はこれをthe Amazon/Google/Uber effectと呼ぶ。AIやビッグ・データ、移動性の技術革新は、市場を通じてデフレ圧力を広めている。伝統的な経済関係を破壊し、価格支配力を溶解したのだ。Amazonは、高い価格を要求する中間業者を避けて、消費者が商品を購入できるようにし、価格を下げた。Googleは、検索のコストを引き下げて、またUberは、既存の資産を市場化することで、確立された大企業の価格支配力を掘り崩した。

それはグローバリゼーションの加速と並行してインフレの低下をもたらした。低コストの生産がインターネット上で利用でき、先進経済の組織労働者のパワーが失われた。こうした傾向はしばらく続くが、その先にはインフレ的な影響が生じるだろう。労働市場にはゆるみがなくなり、特に技術分野では、生産の集中と価格支配力が高まっている。

現在の政治的な変化も影響する。不平等に対する怒りが高まるのは当然であり、ますます多くの政治家がポピュリズムを受け入れ、財政政策による積極的な刺激を支持し、労働者に比べて強い資本のパワーを抑えるようになる。中央銀行は、(QEのように)資産市場を通じてではなく、もっと直接に経済を刺激するよう求められる。

グローバリゼーションに反対する政治的主張も強くなる。関税などの経済政策が政治的武器として利用され、グローバルな経済・金融関係が分割される。それはより価格の高い経済、企業や消費者にとって(分断化への)保険となるようなコストのかかる行動を促す。

つまり、政策担当者や企業はインフレが再現することを無視してはならない、ということだ。当面は、the Amazon/Google/Uber effectが優勢かもしれないが、労働市場のひっ迫、ポピュリストたちのナショナリズム、産業の集中が新技術の影響を超える第2の局面に変わるだろう。そして第3の局面で、インフレの高進に驚いた政策担当者や投資家が、極端な反応を示して、事態を悪化させる。

インフレは、循環的要因だけでなく、もっと広い範囲で、ダイナミックな可能性がすべて検討されねばならない。

PS May 22, 2019

Has Austerity Been Vindicated?

ROBERT SKIDELSKY

NYT May 22, 2019

There’s Only One Way to Stop Predatory Lending

By The Editorial Board

VOX 23 May 2019

Public debt and the risk premium: A dangerous doom loop

Cinzia Alcidi, Daniel Gros


 南アフリカ

FT May 23, 2019

Cyril Ramaphosa must find a way to make South Africa fairer

David Pilling


 ドイツ

FT May 23, 2019

Why Germany really needs to blow out its budget

Sylvain Broyer


 バイデン

FT May 23, 2019

Joe Biden’s back-to-the-future campaign is intrinsically flawed

Edward Luce


 MMT

FT May 23, 2019

Modern monetary theory offers insights into the eurozone

Eric Lonergan

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The Economist May 11th 2019

Collision course

Trade talk: Deal or no deal

Latin America: Under the volcano

Latin America: The 40-year itch

Lexington: Peace in the Middle East

Russia: Workers of Russia, unite!

Charlemagne: Between somewhere and anywhere

US-China trade (1): Speaking softly

US-China trade (2): Shock therapy

(コメント) いまのところ、衝突を予想させるのはアメリカとイランです。中国ではありません。しかし、米中貿易の関税は何を意味するのか? アメリカはどこまで要求するのか? 中国はどこまで報復するのか? 中国は国内の成長や債務の削減、改革の見通しと一致すれば妥協できます。他方、アメリカは交渉を有利にするための過剰な要求をしている、と中国は長期戦を好むでしょう。

ラテンアメリカの民主主義に限界が見え始めました。他方、ロシアでは非政府系の労働組合が再生し、プーチンを批判する声を集めます。

欧州議会選挙で、選挙戦の最前線はどこにあるのか? それは都市と農村の間、富裕層のクラス都市中心部や、階級対立、懐古趣味、その他の支配が確立せず、混在した郊外である、と。ポピュリストたちはそれを知っており、最初に、ここで成功します。

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IPEの想像力 5/27/19

トランプのアメリカは、開放型の市場・経済統合や、多国間合意と国際機関が監督するルール、リベラルな価値を重視する市民的な秩序を否定し、2国間のパワーによる支配、特権的な地位と一方的な介入、嫌がらせや制裁・軍事的圧力による利益の再分配を要求しています。

米中間の対立が、通商摩擦から、次第に経済体制や政治体制の根本原理をめぐる、譲れない対立に変わろうとしています。もし、今、キッシンジャーがヨーロッパから亡命するとしたら、アメリカではなく、中国に向かうかもしれません。あるいは、Mr. Xの長文電報が、ソ連の政治経済体制は長期的に崩壊する、と分析し、封じ込めを唱えたように、ワシントンの中国大使館から北京に長文電報が送られるでしょう。

中国は、保有するアメリカ財務省証券を貿易戦争の武器にすることはないだろう、と言われます。しかし、Huaweiの制裁は、次のステージを開きました。その結果、中国はその外貨準備を着実にドルから他の資産に移すでしょう。ドルに依存する国際通貨システムは終わるに違いない、と皆が知っており、それが明確になるほど、改革は公然と議論され始めます。

このようなときに、トランプの言動は、すべての参加者に最も嫌われるでしょう。ボリス・ジョンソンが合意なきBrexitを実行するときも同じです。

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「なぜアメリカでもイギリスでも、反対する勢力がほぼ等しい割合に維持されるのか?」 BS-TBSの「報道1930」で、松原耕二が2人の解説者に問いました。これでは民主主義が機能しない。・・・しかし、答えはありません。

単純化した国民投票という形が、極論を掲げるポピュリスト政治家に有利な条件を与えました。複雑な、中間的な、現実的選択肢の支持を弱めた、と思います。しかも、失われたコミュニティーの代わりに、人々は主権・国籍という再分配や雇用の「特権」を強調します。実際にはそれが答えにならないのに。民主的な政治の条件として、代表たちの議会ではなく、工場や銀行をスマートフォンが飲み込み、生産や市民の組織化を溶解するグローバリゼーションの圧力に、現状を拒否する投票で、対抗しているのです。

2つの均衡する政治勢力・理念とは、一方に、もっとローカルな部族主義、それを利用するポピュリストたち。リベラルな経済・社会再編成のグローバル化と、それを利用する超富裕層の政治介入です。他方で、国民国家政府に依拠する国際機関と、空洞化するグローバリズム。民主的な制度や政治介入の再生、ポピュリストや超資産家に対する批判が強まります。

インターネットとスマホ、Amazon/Google/Uber効果、Facebook/Twitter/Instagram効果、ソーシャル・メディア、・・・経済と政治を組織化する条件が大きく変化しました。

ローカルなコミュニティーとリベラルな経済再編成とを調整できる、市民的秩序の協議体制を、グローバルな政治は求めています。その限界は、各地において、グローバル・サプライ・チェーンの海に浮かぶ群島のように、打破され始めるのではないでしょうか?

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