IPEの果樹園2019

今週のReview

5/27-6/1

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米中貿易戦争の悪化 ・・・Huawei制裁 ・・・ボルトンとバノン ・・・ボリス・ジョンソンのBrexit ・・・金融市場・インフラ投資・電気自動車 ・・・ギリシャとハゲタカ資本主義 ・・・人の移動と欧州議会選挙 ・・・モディの勝利とポスト真実の時代 ・・・イランの正常化交渉 ・・・デフレからインフレ再現

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 米中貿易戦争の悪化

FT May 17, 2019

Decoding the fickle trade policy of Donald Trump

NYT May 17, 2019

Did China Break the World Economic Order?

By Yukon Huang

先週、金曜日、ホワイトハウスは、2000億ドルの中国からの輸入品に対する関税率を25%に引き上げた。月曜日、中国はそれに対して報復した。しかし、貿易戦争は貿易に関して全部終わった、というだけではない。

中国がアメリカの貿易赤字の最大のシェアを占めるのではない。多くの専門家が言うように、2国間の貿易赤字は問題ではない。それは他の問題の兆候でしかない。フェルドスタインMartin Feldsteinは、「アメリカのグローバルな貿易全体が、アメリカの経済状態、すなわち、貯蓄に対する投資の超過を示している」と論じた。アメリカが中国との貿易赤字を消滅させても、それは他の国に移るだけである。

アメリカの交渉チームは、中国の貿易ではなく、投資ルールを変えようとしている。特に、外国企業から中国企業への技術移転だ。しかし、彼らは、第2次世界大戦後の貿易・金融システムが、積極的に、発展した経済から発展途上の経済へ、「技術の波及」を促したことを無視している。それは西側の利益でもあった。

中国は、持続的な成長を実現しただけではなく、2000年に入った最初の10年の後半、西側の脅威と見えるほどになった。そして、知識の移転は有益だ、という長年の原則を疑問視するようになった。中国がその利益を享受するとしても、グローバルな利益なのか? 中国を例外とするべきなのか?

2018年、アメリカ通商代表部のレポートは、中国が合併企業による技術移転を強いた、外国企業の知的財産権を守らなかった、と非難した。しかし、現実はもっと複雑だ。

中国企業は、ルノー・日産やフォードと協力して、電気自動車を開発している。AmazonMicrosoftは中国企業と一緒に、技術を共有して、中国でのクラウドコンピューティングを提供している。確かに、中国企業が情報の扱い方で訴えられたり、それを盗んだりした場合もあった。

それは現在のルールが不十分であることを意味している。トランプ政権が中国による窃盗と非難する場合も、技術の移転は企業間の交渉と合意によるからだ。

それは経済発展の水準とも関係がある。他のケースでも、例えば、1980年代の日本や韓国も、外国企業の技術の扱いに関して、また、輸出補助金に関して、公平でないと非難された。しかし、所得水準が高まると、技術革新能力も高まり、ルールに対応し始めたのだ。中国における特許権の侵害に対する罰則やその実施体制は弱いと言われる。アメリカとの最新の関税交渉で、中国政府は関連法規の調査が必要であると認めた。

根本的な問題とは、中国の現在の技術移転政策は公平なものか? さらに、中国の経済成長は国際経済秩序を破壊するまでに至ったのか?

その答えは、グローバルに受け入れられたガイドラインの存在、もしくはその欠如、に依存する。IMFは、グローバルな技術移転を支持しているし、中国の成長はグローバルな成長の3分の1を占めた。中国の技術革新が高まることは、アメリカの競争力を削ぐわけではない。同一の製品に至る生産ラインにあるときは、競争しないからだ。中国の生産能力は過大評価されている。中国が西側に輸出する製品(iPhoneなど)の、高度な部品は他国で生産されて、中国で組み立てられているだけだ。

AI5G通信ネットワークの中国への技術輸出を阻止するのは、アメリカの技術専門家たちが指摘するように、アメリカの技術革新力にもダメージとなる。トランプ政権は、WTOや世界銀行を通じて問題を解決しないだろう。そうであれば、日本であるG20サミットで話し合うことだ。

中国の成長は世界の経済秩序に挑戦するように見えるが、システムを脅かすものは、それに対する他国の反応である。

FT May 18, 2019

US-China trade war: who will blink first?

Sam Fleming and James Politi in Washington and Tom Mitchell in Beijing

木曜日の朝、ウォルマートは明確に警告した。ドナルド・トランプの中国に対する貿易戦争はアメリカ消費者にとって価格の引き上げをもたらす、と。しかし、ヴァージニアの店の前で、John Flynnは大統領を擁護した。「彼は正しいことをしていると思う。アメリカは非常に多くの物資を中国からの輸入に頼っている。」 彼は55歳の不動産業者で、ペンシルベニア州西部の鉄鋼の町で育った。

「もし価格が上がるなら、上がればいい。それは長期的には彼ら(中国人)を苦しめる。つまり、どちらが先に降参するか、ということだ。」 そういって、彼は自分のホンダ・アコードに乗った。

2週間前、トランプは両国で合意する予定だった通商交渉に噛みついた。北京の役人たちが約束を破った、と。そして合意よりも、新しい数十億ドルの関税を中国製品に課して、世界経済、金融市場、そして、自分の2020年再選に向けた賭け金を増やしたのだ。

今秋、アメリカがHuaweiを輸出禁止のブラックリストに載せて攻撃したとき、対立が長引くという不安はさらに高まった。「われわれはルビコン川を渡ったのだ。」 アナリストであるChris Kruegerは言った。「キッシンジャー・コンセンサスは死んだ。中国は戦略的なライヴァルだ。それがすべてだ。」

トランプの賭けはアメリカ経済の好調さによる。第1四半期の成長率は、年率で3.2%だった。中国との貿易戦争の痛みは耐えられる、と考えたのだ。しかし、ディールがすぐに成立しないなら、アメリカ経済は関税のコストを負わされ、広い範囲で増税したように作用する。来年、GDP0.5%が失われ、消費者たちもインフレを感じる。

金融市場には重大な下振れのリスクがある。さらに、長期的な懸念がある。ビジネスマンはすでに、サプライ・チェーンを中国から外へ移し始めており、2つの緊密に結びついた経済を切り離す懸念が強まっている。競争を抑え、海外市場を閉ざす、こうした行動はアメリカ経済を損なうだろう。Mary Lovely the Peterson Institute for International Economics)は、「われわれは後ろ向きであり、アメリカの技術革新と成長は遅くなる。」と言う。

トランプの戦略が将来の貿易で正当化されることはない。しかし、マクロ経済の悪化によって対立がすぐに終わる、ということもないだろう。

25%の関税がすべて適用された場合、中国の方が大きな打撃を受けるだろう。しかし、中国の財政には刺激策をとる余裕がある。人民元とドルとの為替レートや、様々な分野で国有企業や銀行が経済を管理している。トランプの行動は中国側の姿勢を硬化させ、ナショナリズムを強めた。

ライトハイザーや、トランプ政権のタカ派は、知的財産の保護や補助金カットを目指しており、中国が降伏するまで続ける、と言う。

しかし、ウォルマートの買い物客は心配している。気まぐれにツイートするだけで、トランプには戦略がない。

FT May 20, 2019

Xi Jinping is preparing China for a long trade war

Tom Mitchell

PS May 20, 2019

The Global Consequences of a Sino-American Cold War

NOURIEL ROUBINI

数年前に、西側の代表団として中国に行った。そのとき人民大会堂で、習近平主席は、中国の台頭は平和的なものであり、他の諸国、特にアメリカは「ツキディデスの罠」を心配する必要がない、と主張した。

歴史は不可避的ではないが、米中双方が「ツキディデスの罠」を意識したにも関わらず、そこに落ち込みつつあるようだ。

アメリカは中国を非難する。中国は、2001年、WTO加盟後、グローバルな貿易や投資から利益を得たが、他方で、その義務を果たさず、ルールにただ乗りした。知的財産を盗み、技術を移転させ、中国企業に補助金を与えて、国家資本主義を駆使した。同時に、政府はますます権威主義的になり、オーウェル的な監視国家になった。

中国から見れば、アメリカは中国の台頭を妨げるのが真の目的ではないか、アメリカの法の権限を拡大し、影響力を及ぼそうとしている。世界第2の経済となった中国が国際的舞台で役割を果たすのは当然だ。西側の政治システムに縛られずに、中国は14億人の国民の福祉を急速に改善した。

どちらの主張に従うかとは別に、経済、貿易、技術、地政学の緊張が高まることは避けられない。アメリカは重要な分野への中国の直接投資を制限し、AI5G通信ネットワークのような、戦略的産業で西側の支配を確立する他の手段を追求しつつある。同盟国や友好国には、中国の一帯一路に参加しないよう圧力をかけている。アメリカ海軍は東シナ海や南シナ海における警戒活動を強めている。

米中対立は、かつての米ソ冷戦よりも、はるかに深刻な結果を意味する。アメリカとソ連との貿易は非常に少なかったが、中国は完全にグローバル経済に統合されており、特にアメリカと緊密に結びついているからだ。米中冷戦は、グローバリゼーションの逆転や、少なくとも、グローバル経済を2つの対立する経済ブロックに分割してしまう。

もし関係を正しく扱うことに失敗すれば、冷戦から熱戦に向かうことも排除できない。

NYT May 21, 2019

China Deserves Donald Trump

By Thomas L. Friedman

FP MAY 21, 2019

China Raises Threat of Rare-Earths Cutoff to U.S.

BY KEITH JOHNSON, ELIAS GROLL

FP MAY 21, 2019

Democrats Won’t Win by Being Trump Lite on Trade

BY EDWARD ALDEN

FT May 22, 2019

The US-China conflict challenges the world

Martin Wolf

米中貿易戦争は、他の世界、そしてアメリカの同盟諸国を何に向けるだろうか?

ドナルド・トランプの下で、アメリカは無法の超大国になった。通商システムや国際機関に対して敵意を示し、ルールに従わない。アメリカの同盟諸国も、アメリカの嫌がらせの標的である。

アメリカの保守派の思考が大きく変化した。かつて、R.ゼーリックは、中国が国際システムの「責任ある大国」になるよう求めた。しかし、今、ポンぺオ国務長官の発言は全く違う。アメリカはもはや、国際システムの「責任ある大国」ではないのだ。19世紀の大国による支配、強者が弱者を食い物にする世界である。

米中貿易戦争により、アメリカは保護主義の国になった。TPPからの離脱が、それを示している。EUや日本は、中国との貿易や技術に関する対立で、アメリカを支持できる点を示すだろう。しかし、WTOの下で、多角的な通商システムを維持しようとする。米中の利益を優先しない、リベラルな貿易の可能性を追求する。日本とカナダはTPPに変わる合意を結んだ。

さらに、諸国は「グローバルFTA」を有志連合として築くべきである。

FT May 22, 2019

Emerging markets suffer collateral damage from US-China trade war

Hung Tran

PS May 22, 2019

Can the Belt and Road Become a Trap for China?

YASHENG HUANG

FT May 23, 2019

Trade war sparks fears of China weaponising US Treasuries

Joe Rennison and Colby Smith in New York

PS May 23, 2019

The Real Cost of Trump’s Tariffs

JEFFREY FRANKEL


 Huawei制裁

NYT May 17, 2019

America Needs Huawei

By Catherine Chendirector of the board at Huawei

トランプ大統領は、「国家非常事態」を宣言して、Huaweiの製品を購入することを禁止する大統領令に署名した。またWilbur Ross商務長官は、アメリカ政府の許可なく、アメリカ企業からHuaweiが部品や技術を購入することを禁止する命令を出した。

この禁止は、Huaweiと取引するアメリカ企業で雇用されている多くの人々の利益を損なうだろう。Huawei1年間に購入する額は110億ドル以上である。

最も重要な点は、禁止によって、国家のデジタル・ネットワークを安全にする、という目的が達成できないことだ。

アメリカ政府は、中国製品を利用することが、電話やエネルギー、銀行、その他の重要なサービスの遮断を行う権力を中国に与える、と心配する。われわれの通信ネットワークの安全性確保は、オペレーター、製品の売り手、サービスの供給者が、責任を共有して、確実に、かつ、透明に、リスクを抑えるようになっている。情報通信のオペレーターがネットワークとそこにおけるデータの移動を管理しており、それを妨害することは非常に困難だ。Huaweiは、利用者への攻撃やいかなる諜報行為も拒否する、と繰り返し述べてきた。

もしHuaweiの本社が中国にあることを理由にHuaweiを攻撃するのであれば、それは意味がない。Nokia でも Ericssonでも、情報通信企業は、グローバル・サプライ・チェーンを利用している。Huaweiと同じだ。彼らも中国の製品や部品を利用する。それは、インターネットや情報通信のアメリカのネットワークに、現時点でも装備されている。1つの企業をブラックリストに載せても、安全は得られず、コストが増すだけだ。

アメリカ政府はNokia Ericssonと、政府が監視するリスク抑制の協定を結んでいる。彼らはヨーロッパに依拠し、その合意によってアメリカでも利用されているが、中国でも広く利用されている。Huaweiは、同様の合意を話し合う機会があれば歓迎する。

企業の排除は、ましてや、指導的なHuaweiを排除することは、競争を弱め、5Gの採用を遅らせ、技術革新を抑えて、アメリカの消費者と企業が世界の最先端技術にアクセスすることを妨げるものだ。

FP MAY 17, 2019

Huawei Ban Means the End of Global Tech

BY CHARLES ROLLET

Huaweiだけを敵視しても、問題は解決しない。アメリカが劇的に対立をエスカレートしたことでグローバル化した秩序は混乱している。Huaweiは世界第1の情報通信企業であり、世界第2のスマートフォン生産者である。アメリカの製造業と複雑に結びついた中国企業は何千社もある。トランプ政権が技術に関する「戦争」を行うなら、最近の歴史にないような、技術の分断が始まる。

この大統領令の範囲が見過ごされている。この命令は、「外国の敵」によって作られた「情報通信技術やサービス」に関して、アメリカとの取引をすべて禁止する権利をアメリカに与える。こうした技術について命令の定義は極めて広い。今日、ほとんどいかなる技術もこれに含まれる。アメリカは技術のグローバル・サプライ・チェーンに対して、イランのような敵に対してグローバルな金融取引に行使する権力と、同様の権力を得ることになる。

技術のグローバルモデルは崩壊した。太平洋の両側で、企業はこれに適応する。

FT May 19, 2019

Global co-operation on cyber security is long overdue

Michael Chertoffa former US secretary of homeland security

The Guardian, Mon 20 May 2019

The Guardian view on Google versus Huawei: no winners

Editorial

Googleにとって、そのコストはほとんどないように見える。Googleはすでに中国市場から撤退しており、Androidフォンは生産者から独立して販売されている。消費者は、Huaweiの製品がなければ、他社の製品を買うだけだ。

しかし、中長期的には、この決定は大きなダメージをもたらす。Androidはそれ自体では価値がないオープン・システムであり、だれでも自由に利用できる。しかし、今や、その利用をGoogleがアメリカ政府の圧力で遮断する可能性が示された。そのようなパートナーに頼ることができるのか?

複雑に絡み合ったグローバルな相互依存の網の目が、ハードウェアとソフトウェア、中国と西側を超えて、包み込んでいる。双方にとってそれが非常に脆弱であり、技術的な自立性を確立することは不可能に近い。これは技術の問題ではなく、支配の問題だ。誰が支配者か? それが中国であれ、アメリカであれ、最も苦しむのはUKのような第3国である。

FT May 21, 2019

Huawei suffers hammer blow with Android ban

Nic Fildes in London and Louise Lucas in Hong Kong

FP MAY 22, 2019

The 5G Fight Is Bigger Than Huawei

BY ELSA B. KANIA


 ボルトンとバノン

FT May 17, 2019

John Bolton, Donald Trump’s foreign policy bad cop

Demetri Sevastopulo

ボルトンは大統領の無原則な姿勢を利用している、という批判がある。しかし、大統領はボルトンを有益な「悪い警官」とみなしている。

大統領は、ボルトンやポンぺオが外国の敵や同盟者に、イランに対する強硬な主張を取る、とみなされていることを喜んでいる。外交の余地を広げるからだ。「12万人の米兵を送るより、もっと悪いことを起こすことができるぞ。」・・・「だがここで終わってやってもいい。電話しろよ。」

イランとの戦争が起きれば、それはボルトンにとってクリスマスと感謝祭、そして誕生日のプレゼントを合わせたものになる。・・・しかし、ボルトンは軍隊を支配できない。彼の居場所は地獄の中にある。

NYT May 18, 2019

Steve Bannon Is a Fan of Italy’s Donald Trump

By Roger Cohen

イタリアは政治の実験室だ。冷戦時代には、問題はアメリカが共産党に権力を執らせないことだった。その後、イタリアはベルルスコーニSilvio Berlusconiを生んだ。アメリカでドナルド・トランプが選出される前の、スキャンダルにまみれたショーマンの政治である。今、欧州議会選挙の前だが、その結果は右派に傾くだろう。反移民、ポピュリスト政府の強力な指導者、Matteo Salviniサルヴィーニは、支持者たちが「キャプテン」と呼ぶ、新しい非リベラリズムの魅力に富んだ演技者だ。

トランプの元主任戦略家であったバノンSteve Bannonは、しばらく、サルヴィーニの友人であった。当然だ。バノンは、グローバルなナショナリスト運動、反エスタブリッシュメントの、傑出した理論家でプロパガンダの発信者であるのだから。彼は、ポピュリスト・インターナショナルのトロツキーだ。彼は西側民主主義をむしばむ病気に、だれよりも気づいていた。すなわち、グローバル化したエリートが労働者階級や後背地を見捨てたことだ。彼は見えない市民を見えるようにした。彼が「全体主義的経済覇者」と呼んだ中国人から、製造業の雇用を救済するように求めて反乱を起こした。

バノンは、ヨーロッパが半年から1年、すべてにおいてアメリカよりも進んでいる、と確信する。Brexitがトランプの当選を予見したように、ヨーロッパにおける右派の勝利は2020年に向けてわれわれの支持基盤を強化するだろう、と。

サルヴィーニは、1年前に5つ星運動との連立で政権に就いたが、その中心人物である。この連立が主流派政党を葬った。彼は、今や、右派の最も重要な人物である、とバノンは私に言った。「カリスマ的で、わかりやすい。政権の仕組みを理解している。彼の政治集会は、トランプと同じように、強烈だ。イタリアは政治の中心だ。グローバリズムに対してナショナリズムを掲げ、ステレオタイプの政治を破壊し、右派と左派の旧式な思考を粉砕した。」

新しい右派は過去から学んだ。人民から離れず、軍事化を進めない。より目立たない形で、移民をスケープゴートにする。不安を掻き立て、幻想的な過去を称賛する。男性的なパワーを称え、善良なだけのリベラリズムを嘲笑し、ソーシャル・メディアの怒りの鼓動を、催眠術的な政治集会で時々刻々に盛り上げる。

毎日、30回更新する、サルヴィーニのFacebookにはフォロワーが370万人いる。ヨーロッパの政治家で最大だ。マクロンのフォロワーは260万人である。女性がギャングに強姦されたとき、サルヴィーニは「化学的な去勢」を求めて、24時間、ニュースの話題を独占した。トランプと同じように、サルヴィーニには、ふつうは言えないようなことを言うことで、人々の気持ちを動かす天分がある。

「われわれには支持者を動員することが必要だ。」と、バノンは私に言った。「説得の時代ではなく、動員の時代である。今や人々は部族として移動する。説得は過大評価されている。」

思想の雪崩が起きている。彼はアメリカ政治を簡潔に解剖した。・・・ブルーカラー労働者の家族は職場が消えた。彼らの息子や娘は勝利できない戦争で死んだ。保有した株式の価値は2008年の崩壊で蒸発し、「金融の大量破壊兵器」で壊された。彼らの仕事は中国に移ったのだ。誰かが彼らにわかる言葉で発言すべきだった。無制限な移民の流入を止める、アメリカの偉大さを回復する、と約束する必要があった。それがトランプだ。

「マクロンはヨーロッパ合衆国を構想し、イタリアはサウス・カロライナ、フランスはノース・カロライナだ。」と、バノンは私に言った。「しかし、イタリアはイタリアになりたい。サウス・カロライナではない。」

EUが平和と安定性をもたらした。それは20世紀後半の偉大な奇跡である。しかし、EUはまた、イデオロギー的に枯渇し、人心が離れ、分裂し、効果的な共通の移民政策を合意できない。サルヴィーニは、アフリカからの移民が最初に入ってくるイタリアを支配する。。

イタリアがEUから離脱するとか、ファシストがよみがえるというのが危険なのではない。むしろ、「オルバン化」である。サルヴィーニは、オルバンやプーチンのような権力を求めており、オルバンは独立したチェック・アンド・バランスを無視している。EUのオルバンに対する攻撃は効果がなかった。トランプのアメリカのように、EUは高徳的な崩壊が進んでいる。サルヴィーニは、「ポスト・ファシスト」であり、21世紀の聴衆に向けてその手法を洗練させている。

見捨てられた地方の人々がサルヴィーニの台頭を支えている。小さな病院が閉鎖され、小さな鉄道や高校が閉鎖された。イタリア国土のおよそ65%、人口の25%が財政削減の影響を受けた。こうした人々にサルヴィーニは宣言する。・・・私があなたたちを守る。しかし、その時期、実際には移民が減少していた。それはリビア政府との合意ができたからだ。

FP MAY 19, 2019

The Heart and Hypocrisy of the American Empire

BY DANIEL SARGENT

FP MAY 20, 2019

Be Afraid of the World, Be Very Afraid

BY STEPHEN M. WALT

世界政治の将来に向けて、悲観主義が楽観主義を抑えて広まる5つの事情。

1.気候変動、2.中東和平(2国家案)、3EU崩壊、4.イランの核武装、5.アメリカのアジア同盟関係からの離脱

PS May 21, 2019

Looking Back at 100

RICHARD N. HAASS


 ボリス・ジョンソンのBrexit

FT May 17, 2019

Voters want to move on but Brexit Britain is stuck

Camilla Cavendish

Brexitをめぐっては、多数派の意見がない、と言うのが通説だ。しかし、そうではない。合意はあるのだ。すなわち、早くBrexitを終わってしまいたい、ということだ。最も熱烈な離脱派でも、われわれは「それをやってしまう」と言い、嵐の雲のように、それが行き過ぎると思っている。

彼らは、メイに辞任の日を迫っている。だが、Brexitの迷走を終えるのは、それほど容易ではない。Brexitは簡単だ、と3年間も言われてきた。EUとの自由貿易を決めるだけだ。アイルランドの国境問題も、最新技術が解決する、と。

メイの「合意」は、最も困難な交渉を先送りする内容だった。合意なき離脱の結果も、何か素晴らしい孤立状態ではなく、何が起きても、われわれの最も近接する隣国たちと、複雑な対話を始めることでしかない。

私は、官僚制がEU離脱を不可能にしている、と言うのではない。Brexitのプロセスには痛みを伴う取引が多く含まれており、それが国民を驚かせたり、怒らせたりする、と言うのだ。保守党の党首候補たちは、離脱すれば、そのあとは「国内的な課題」に戻る、と空想している。

メイは、労働党との妥協案作りが、時間稼ぎと、失敗の目隠しになると期待していた。しかし、労働党は保守党政権が生き延びることなど望まない。

投票結果にかかわらずメイが辞任することを示唆したために、保守党の党首争いが始まった。ボリス・ジョンソンが有力であるのは、2つの理由による。それは保守党の議員たちが強硬派を望んでいるからだ。特に、ファラージのBrexit党を黙らせることができるのはジョンソンだけだ、と。

ジョンソンはまた、コービンに対して勝てることを意識してアピールする。保守党員が最も恐れるのは、労働党の指導者である。

しかし、だれがメイの後に首相となっても、議会の数字合わせと拷問的な複雑さから逃れられない。合意なしのBrexitで多数は取れない。進展がないまま10月末になれば、決定は国民に戻されて、再度、国民投票になるだろう。保守党も、労働党も、それを支持していないが。

Brexitを終えることも単純ではない。新しい首相は、Brexitは簡単だ、というふりを続けるより、それがなぜ簡単ではないか、説明する機会にするのが良いだろう。

FT May 19, 2019

Brexit wrangles intrude on EU job allocation

Wolfgang Münchau

The Guardian, Sun 19 May 2019

If I were Jeremy Corbyn I’d be praying for a Boris Johnson victory

Matthew d’Ancona

The Guardian, Mon 20 May 2019

Boris Johnson in No 10 will be a fitting finale to this dark decade

Polly Toynbee

破滅が待っている。ジョンソンBoris Johnsonが首相官邸に入ろうとしている。どれほど不正直で、悪評を得た、スキャンダルに満ちた人物でも、保守党が彼を選ぶのを止めることはできない。保守党員たちは、彼の嘘、怠慢、うぬぼれを知っているが、そんなことは気にしない。木曜日の欧州議会選挙で屈辱的な敗北を喫した後(保守党からは一桁しか当選しないだろう)、この落ち目の政党は、ファラージ主義者たちの攻勢から自分たちを救済するために、麦わら帽のショーマンに頼るのだ。まあ、この真っ暗な10年を閉じるために、ジョンソン首相が登場するのはふさわしいのかもしれないが。

ジョンソンが保守党の党首になったら、何が起きるのか? 彼は「合意なしの離脱」で議会の承認を得ることはできないだろう。ハロウィーンになっても、UKは何の合意案もないまま、衝突の期限が来る。カレー海峡では国境が閉ざされ、アイルランドの国境でも同じだ。アイルランドは統一のための住民投票に向かう。同様に、スコットランドも独立を問うだろう。すべてが襲いかかってくるが、ブリテンはジョンソンの無謀な指示に頼るしかない。燃料も、食糧も、医薬品も、ビザも、輸送トラックの列も、ポンド急落も。

ジョンソンには何の計画もない。彼は首相になりたいだけだ。衝動を抑えて、その結果を彼が見るなら、1031日までに、労働党が不信任決議案を提出することがわかるだろう。反対派の保守党議員がそれに賛成し、彼は議会を解散して選挙を要求する。そうなることが分かってしまえば、ジョンソンは確実に、自分で選挙を要求する。首相になってすぐだ。最も短い在任期間というリスクを冒しても、彼は慢心の極みにあるだろうから。ファラージは保守党の議席(そして労働党からも)を奪い、自民党は残留派と穏健派から支持を吸収する。どう考えても、ジョンソンの破滅は避けがたい。数年後、保守党がそれに続く。しかし、それはこの国全体の破滅ではない。

総選挙で労働党が勝利するとは思えない。労働党の支持者たちは大規模に残留派の政党に移るだろう。コービンは、党内の説得を無視して、2度目の国民投票を避け、あいまいな姿勢を続けてきた。たとえ勝利しても、コービンはもう1人のBrexitに苦しむ首相となる。

保守党はジョンソンを党首に選出することで自ら破滅するが、労働党は、コービンがその生涯においてヨーロッパに関して主張したことは嘘だった、と認めるしか、ジョンソンに勝てないのだ。

FT May 21, 2019

Emmanuel Macron and David Cameron’s failed courtships of Angela Merkel

Gideon Rachman

FT May 21, 2019

Nigel Farage gives Remainers reason to fear a second Brexit vote

Robert Shrimsley

FT May 23, 2019

Violent legacy of Empire forces British Asians into an identity dilemma

Avani Lal


 金融市場・インフラ投資・電気自動車

FT May 17, 2019

Why China will resist dumping US Treasuries in retaliation

Michael Mackenzie

米中の2国間貿易と経済関係の重要な地位を占めるのは、16兆ドルのアメリカ財務省証券(T-bond)市場である。2大経済が対立をエスカレートさせれば、中国がその保有する11000億ドルのT-bondを貿易戦争の武器として使用するだろう、という不安が証券市場に波紋を広げている。

T-bondの売却という脅しは、完全な張子の虎だ。中国と他の外交投資家を合わせて、市場の40%を占めるが、彼らは数年もアメリカ金利を低く抑えて、ワシントンが支出し、財政赤字を増やすことを助けてきた。

中国から市場を拒むような反応があれば、金融の不安定性が世界に及ぶリスクを意味するだろう。しかし、それは短期間で終わり、アメリカよりも中国に大きなダメージが生じる。北京はすでに成長減速や高債務経済の調整を始めているからだ。

そのことが中国の意図を縛るわけではない。最新のデータで、T-bondの最大の売り手であった海外保有者は中国だ。それは中国の長期的な姿勢であった。201311月、中国のアメリカ証券の保有額は13160億ドルでピークに達したのだ。2008年に日本を抜いて最大の保有国になり、2010年以降は1兆ドルを超えた。

北京は、2015年に人民元が価値を下げてから、金融的な安定性を求めて、急激な減価を抑えるためいつでもドルを売却する用意があった。外国の投資ファンドが中国の株や債券を買うようになれば、突然の流入停止が起こりうる。人民元の価値を維持するためのドル売却は、貿易戦争の武器ではない。

中国が世界最大の債券市場に残ると考える理由はいくつかある。アメリカの国債市場は、その深さ、流動性、利回りにおいて優れている。2つの主要な競争相手である日本とドイツの国債市場と比べれば、それは明白だ。

金の保有も、アメリカ国債の保有に代わるものではない。

中国が売却しようとすれば、それはT-bondの価格を大きく下げ、保有しているT-bondの価値を損なってしまう。

16兆ドルという債券市場の規模は、中国の売却も、売買の一部でしかない。経済成長の期待とインフレ予想が債券価格の究極の決定要因だ。最新の景気循環で、アメリカのT-bond価格は上昇局面にある。もし中国が売却すれば、それは他者に購入の機会を与えるだけである。

明らかに、中国は長期のゲームを覚悟している。それは、債券価格の高い時期に円滑に重心を他へ移し、国内の経済調整を維持することだ。

FT May 21, 2019

The Belt and Road Initiative is short of ‘Chinese characteristics’

Harry Broadman

FT May 22, 2019

Electric cars: China powers the battery supply chain 

Henry Sanderson in Xinyu, China

NYT May 23, 2019

Who Is Playing Politics With the Port of Piraeus?

By Nikos Konstandaras


 ギリシャとハゲタカ資本主義

PS May 17, 2019

A Greek Canary in a Global Goldmine

YANIS VAROUFAKIS

ユーロ圏諸国の債務支払い不能であったものが、今ではある人々にとっての宝の山になっている。

2013年、ドイツ国債を買った者には7%の利回りがあるけれど、ギリシャが債務危機の頂点にあった2012年にその国債を買った者には231%の利回りがある。

印象的な数字にかかわらず、ギリシャ危機が終わったというのは幻想であると言いたくなる。ギリシャ国債や株式は、憂鬱な経済の現実と、持続不可能な、高揚する金融市場との間にある、大きな裂け目を示しているからだ。

なぜアテネ株式市場は高騰するのか? 経済活動を害する高課税、不良債権が累積する中での銀行業、労働者の海外流出と不安定な職場が増えたことを反映するだけの失業率低下、高付加価値の貿易財を生産するような民間投資が欠如したままであるのに。

ギリシャ債務の最初の2度にわたる救済融資は、債務負担を民間からヨーロッパの納税者に移した。その結果、ギリシャ債務の85%は市場の外にある。その返済は2032年まで延期されている。投資家たちは、民間の手に残されたごく一部に注目している。

彼らが見逃しているのは、債権者たちが付けた厳しい条件だ。それは、ギリシャ政府が2060年まで永久にGDP2.2-3.5%の黒字予算(元利払いを除く)を続ける、という不可能なほどの緊縮財政である。ギリシャ企業は利潤の75%を納税し続けねばならない。

ギリシャはユーロ危機の爆心地であったが、EU諸機関による管理失敗の顕著な例であり、金融的な利益が経済的困難を条件としていかに潤沢に得られるかを示す完璧な例でもある。

アメリカ連銀によれば、過剰なレバレッジン位夜貸し出しが2018年には20.1%も増えた。融資の基準が下げられている、という報告もある。格付けの低い、多くの債務を負った企業に融資が流れて、より安全な高利回りの債券市場を圧倒する。

ギリシャはこの傾向の最先端にある。慎重な投資家なら、経済が回復しているとは見ない。2008年以後、ギリシャはグローバル資本主義の、融資や貿易を均衡させる点での失敗を象徴してきた。今、経済の現実と金融的な利回りとの差が拡大するとき、新しいグローバル危機の明白な危険がある。

ハゲタカは死体に群がるが、彼らが再生をもたらすことはない。


(後半へ続く)