前半から続く)


 アジア社会に学ぶべきだ

PS May 10, 2019

Can the East Save the West?

PARAG KHANNA

この20年間は、最善の時代か、あるいは、最悪の時代か? それはあなたがいる場所による。グローバル・イーストがグローバル・ウェストと収れんする時代に、2つに地域は心理的にかい離した。欧米は内向きになり、アジアは自信と楽観主義を持ってグローバリゼーションを受け入れた。

アジア人は新しい統治の原理を編み出した。それは人類の多数を統治し、西側の民主主義や開発パラダイムより、急速に広まっている。世界のパワー・バランスは変わったが、それは経済でも、政治でもなく、知的なバランスだ。911テロから、トランプの大統領選挙まで、歴史的な破断が起きた。もはや西側の政治経済的な優位は過去のものだ。

多くの西側社会が望ましくない状態だ。債務に苦しみ、拡大する不平等に怒り、政治的、文化的に、社会が分極化している。アメリカの、2000年以降に生まれた世代は、テロとの戦い、実質賃金の停滞、人種間の緊張、銃の暴力、インターネットが拡散する政治的なデマゴギー、その中で育った。ヨーロッパの若者たちも、経済的な緊縮、高い失業率、ますます遠くない政治家たち、という不満を抱えている。

他方、数十億人のアジア人は、この20年間を成長し、地政学的な安定性、急速に拡大する繁栄、高まる国民的なプライドを経験している。1997年のアジア金融危機以降、ほとんどの国は変動レート制に移行し、貿易黒字、外貨準備を増やして安定した。インフラを整備し、直接投資の流入が増えた。グローバリゼーションのおかげで、アジアは世界の経済成長の最大の部分を占めた。それは西側の支配ではなく、アジアの台頭によって描かれる時代だった。

現在、すべての社会が困難な挑戦に直面している。地政学、経済、技術、社会、環境において複雑な変化が起きているからだ。西側の政府がこれらの点で優れているという証拠はない。西側指導者の多くが好む考えとは逆に、民主主義でも、資本主義でもなく、適応力こそが成功する社会の最も重要な特徴だ。

すべての社会が、繁栄と安定、開放と保護、市民的代表制と効果的な支配、個人主義と結束、自由な選択と社会的厚生、そのバランスを模索する。人々は、その社会が「民主的である」から支持するのではない。都市の暮らしが安全か、住宅を得られるか、雇用は安定しているか、老後の貯蓄はできるか、友人や家族とのつながりを維持できるか、といった視点で判断する。

社会的・経済的なグッズ(財)の追求は、さまざまな程度で、アジア社会に規範を発展させている。21世紀の社会は、3つのタイプによる統治へ向かうだろう。混合型資本主義、テクノクラート型ガバナンス、社会的保守主義である。

新しいアジア国家を知るには、中国やベトナム、シンガポールを見ることだ。戦略的な部門を育成するだけでなく、技術革新を管理する。彼らは、工業化や都市化の西側が示すマイナス面を飛び越え、デジタル・サービス化に進む。その膨大な人口が、多国籍企業による豊富な実験を可能にする。労働者たちへの再訓練を政府は支援し、成長が国民に波及するように保証する。

市場を政府が積極的に誘導するからこそ、アジア諸国では国民がグローバリゼーションを支持している。トランプの最初の方向転換がTPPからの離脱であり、アジア諸国がそれを支持していることは重要だ。彼らはすぐに、もっと大きな合意、東アジア地域的包括連携協定(RCEP)を結ぶだろう。

アジア諸国で政府が支持されるのは、指導者が積極的に、民主的選挙、デジタル調査、ソーシャル・メディアのよるモニタリング、など、市民たちに相談するからだ。中国のような権威主義体制でも、これは正しい。西側メディアが敵視するソーシャル・クレジット・システムも、多くの市民が支持している。

アジアの台頭は、西側が描くような単純な現象、権威主義体制による脅威、ではない。もっとはるかに複雑だ。中国は地域の人口の3分の1でしかなく、民主主義の下で生きる人々の方が多い。

シンガポールは、アジア的な価値観と、混合型資本主義、テクノクラート型ガバナンス、社会的保守主義を融合している。こうした知的趨勢と地理的趨勢の合流点である。毎週、the Lee Kuan Yew School of Public PolicyUrban Redevelopment Authorityとが、アジア諸国(India, China, Saudi Arabia, Kazakhstanなど)の公共政策スタッフたちの訪問を受け入れている。出席者たちが学ぶのは、持続可能なアーキテクチュア、公共住宅部門の管理、衛生・循環システムのアップグレイド、政府と民間と大学のパートナーシップ、技術革新を促す産業集積、などだ。

これらこそが21世紀の高いパフォーマンスを示すガバナンスの根幹である。中東やアフリカの政府にもアジア型のマスター・プランは広まっている。世界人口の多数は、西側モデルではなく、アジア・モデルに向かっている。

文明間の模倣は、もはや一方通行ではない。もちろん、アジア社会は完ぺきではない。中国やミャンマーの大規模な少数民族の弾圧は国際的な非難を受けてきた。インドやパキスタンなどの報道の抑圧もそうだ。教育システム、所得分配、など、問題は深刻だ。

しかし、アジアは成長しないままパイを奪い合うのではなく、長期の包括的な発展を目指すようになった。その方向性は、西側の社会。政治制度、行政機構から学んだものであり、欧米が陥った短期思考や超個人主義とは異なる修正を経てきた。西側社会もアジアから得るところがあるはずだ。


 トルコ

FP MAY 10, 2019

Erdogan Just Committed Political Suicide

BY HENRI J. BARKEY


 貿易と安全保障

FP MAY 10, 2019

China’s New Carrier Shows Beijing Is Done Playing Defense

BY SAM ROGGEVEEN

FT May 16, 2019

China’s global ambitions retrace Britain’s imperial past

Jonathan Hillman

イギリスの経験が示すのは、中国のHuaweiに対する外国政府の不信を解消する良い方法は、中国自身を外国の通信や金融システムに開放することだ。


 外交官

FP MAY 10, 2019

Once Upon a Time, Americans Believed in America

BY JAMES TRAUB

ホルブルックの新しい伝記から何がわかるか。


 Facebook分割

NYT May 11, 2019

Breaking Up Facebook Is Not the Answer

By Nick Clegg

FT May 13, 2019

Strengthen digital election rules before the next vote

Philip Howard


 種の絶滅

NYT May 11, 2019

Life as We Know It

By The Editorial Board

NYT May 13, 2019

Surviving Despair in the Great Extinction

By Margaret Renkl

PS May 16, 2019

The Rising Tide of Sustainable Seafood

TERESA ISH , HENRIK ÖSTERBLOM


 ドイツ・モデル

FT May 12, 2019

Changing the German growth model will not be easy

Wolfgang Münchau

SPIEGEL ONLINE 05/13/2019

Climate Stasis

German Failure on the Road to a Renewable Future

By Frank Dohmen, Alexander Jung, Stefan Schultz and Gerald Traufetter


 ドルの時代は終わるか

FT May 12, 2019

Federal Reserve rethink faces a credibility challenge

Megan Greene

PS May 16, 2019

Modern Monetary Disasters

SEBASTIÁN EDWARDS

現代通貨理論(MMT)は、ラテンアメリカで取られた同様の政策から学ぶべきだ。

MMTの支持者たちによれば、アメリカ連銀は、公共投資に必要な巨額の資金を供給し、同時に、完全雇用のための「雇用保障プログラム」にも、紙幣を印刷して財源を供給することができる。アメリカのように、自国通貨で債券を発行できる国は、公共部門の赤字を心配する必要がない。

尊敬されるマクロ経済学者たちは、その主張をナンセンスと考える。

いくつかの自国通貨を持つラテンアメリカ諸国が、特に、Chile, Argentina, Brazil, Ecuador, Nicaragua, Peru, and Venezuelaのポピュリスト政府は、その政策を実際に行った。公共部門の赤字を中央銀行が貨幣を追加供給して賄ったのだ。その結果は、歯止めないインフレーション、通貨価値の暴落、実質賃金の大幅下落であった。

FT May 17, 2019

The dollar will dominate for a while yet

Gillian Tett

今週、中国がアメリカ財務省証券を売ったことが債券市場で緊張を生んだ。それは205億ドルであり、大きな額ではない。しかし貿易戦争の中で、次の疑念を生じる。資本市場や通貨の戦争になるのか? その結果、アメリカドルの支配は終わるのか?

今週初め、チューリッヒでthe IMF and Swiss National Bankが主催する中央銀行の会合があった。それはBarry Eichengreenの研究から始まった。USドルが国際通貨システムの実質的なアンカーであることに関して、学者たちの間には意見の対立がある。

Eichengreenは、ドルによる支配は最終的に終わり、世界が複数通貨によるシステムに移行する、と考える。19世紀のスターリングもそうだった。新興市場はドル建債務を増やし過ぎだし、アメリカの金融政策にとっても不利益だ。アメリカでは過度のドル高や低金利を生じる。

他方で、Gita GopinathIMF主任エコノミスト)を含むハーヴァード大学のエコノミストたちは、ドルの優位が「粘着的」であるという実証的な議論を示す。世界の貿易や融資に占めるドル建の比率が非常に高い。特に、人民元が国際的な利用を制限している限り、この状態は続くだろう。

20177月から20187月、ロシアの中央銀行は、ドルの外貨準備を減らして、ユーロと人民元に代えようとした。ロシアとアメリカの貿易額はGDP1.5%でしかなく、EUと中国と合わせたロシアの貿易額は24.3%だった。しかし、貿易の契約は55%がドル建であり、ロシア企業の債務や収入も54%はドル建だった。

ロシアは特別だが、新興市場の傾向はドルに依存している現状を認めている。どの政府もドル準備を減らすことを考えていない。

しかし、会議に参加したFintech企業の姿勢は違った。彼らはブロックチェーンや暗号通貨が支配的になると確信している。もしドルの支配が終わる予兆を探すなら、中国ではなく、シリコンバレーを見るべきだ。


 インド

The Guardian, Mon 13 May 2019

Is India the frontline in big tech’s assault on democracy?

John Harris

FT May 13, 2019

Mud-slinging in India’s marathon election stains the body politic

Amy Kazmin

インドは多くの重要な課題に対して政策論争しなければならない。成長の原則、職場の不足、軍の近代化、中国の強まる攻勢、などだ。しかし、国家の指導者をめぐる論争は、政治家たちが互いに侮辱する泥仕合である。

FT May 14, 2019

India’s fragile economy threatens second term for Modi

Simon Mundy in Mumbai

FP MAY 14, 2019

India Is Trapping Its Young People

BY NEHA THIRANI BAGRI

若者たちは大学を卒業しても仕事がない。主な雇用先である政府部門を探すが、容易に就職できない。

インドの雇用は、経済成長に見合って増えていない。13億人の人口の、半数が27歳以下であり、130万人の若者が、毎月、労働人口に加わる。世界銀行の予測では、インド経済は7.3%という優れた成長率を維持するだろうが、毎年、十分な数の新しい職場を創ることはできていない。

昨年、インドの失業率は45年ぶりの高い水準に達した。

モディ首相の与党Bharatiya Janata Party (BJP)は、失業問題を悪化させたと批判されている。高額紙幣の廃止や、税制改革が、ともに中小企業を苦しめたのだ。

他方、ガンディーの国民会議派は、雇用問題を選挙戦のテーマに掲げてきた。産業・サービス・雇用に関する省を新設し、政府雇用の200万人の空きを充足し、最低所得を保障して貧困層への現金給付(年1022ドル)を行う、と公約した。問題は、有権者が彼の実行力を信用するかどうかだ。

いずれの政党も、問題を解決できない、と思われている。モディはパキスタンとの紛争と安全保障で支持を高めた。

NYT May 15, 2019

India’s Most Oppressed Get Their Revenge

By Meena Kandasamy


 欧州議会選挙

FT May 13, 2019

Expanding the EU benefits all of Europe

Andrzej Duda (president of Poland)

15年前、ポーランドは他の中欧9か国と一緒に、EUに参加した。われわれがNATOに参加してから、9年後だった。

ポーランドはEU加盟によって利益を受けた。それは西側のパートナー諸国も同じだろう。自由な市場で、外国投資家に好ましい環境を用意した。ポーランドは豊かになったし、ドイツの自動車メーカー、フランスの銀行、スペインの衣服メーカーも利潤を上げた。

われわれはこのプラスの傾向を維持したい。そのために、クロアチアとともにthe Three Seas Initiative(アドリア海、バルチック海、黒海)を立ち上げた。われわれは中央を統合して、ヨーロッパの南北をつなぐ基軸となりたい。

国民経済を発展させるには、輸送とエネルギーのグリッドを含めた、大規模なインフラ投資、the Via Carpathiaハイウェイに向けた政治合意が形成されている。安全保障も必要だ。

1989年以前の分断状態を思い出すなら、われわれは新しい政策決定の世代である。ヨーロッパの歴史を共有する。2003年にEU加盟の国民投票でYESと答えたように、すべてのヨーロッパ諸国民が、今また、YESと答えるだろう。

PS May 14, 2019

Democratic Lessons from the EU

MACIEJ KISILOWSKI, WOJCIECH PRZYBYLSKI

FT May 15, 2019

European elections: is the party over for the centre-right?

Alex Barker in Brussels

FT May 15, 2019

Nigel Farage and the strange case of the European elections

Roula Khalaf

FT May 15, 2019

The EU must not cut the Balkans adrift

Tony Barber

The Guardian, Thu 16 May 2019

Why is Labour just letting the Brexit party win the European elections?

Mary Kaldor

労働党は、離脱派と残留派とをまとめることができる唯一の政党である。しかし、それはBrexit推進派とのあいまいな三角取引ではない。労働党は明確にEU残留の立場を取らねばならない。そして、EU改革と財政緊縮策の否定とを、組み合わせる必要がある。これこそがBrexitの淵源であるからだ。

FT May 16, 2019

The EU’s centre-right should reject the Orban model


 マクロ経済政策のリバランス

PS May 13, 2019

The Return of Fiscal Policy

BARRY EICHENGREEN

Thomas Pikettyは、5年まで、拡大する不平等に関する本を書いて、ベストセラーとなった。金利が成長率よりも高い、r>gという状態が、資本家の所得が成長率を超えて増える原因だ、と説いた。

Olivier Blanchardは、今年初め、先進諸国の債務負担能力は、一般に思われているよりも大きい、と主張した。金利が成長率よりも低い、r< gという状態が、債務が増えてもGDP比率を抑制するからだ。

John Williamsは、この20年間、実質金利が低下傾向を示す、という統計を発表した。

PikettyBlanchardは、異なるrを使っているから、同時に成立する。前者は投資の利潤率、後者は金利・国債利回りであり、その差がリスク・プレミアムである。

Pikettyは、富裕層への増税を支持する。Blanchardは、政府が債務を増やすことを支持する。ここで、Lawrence Summersの議論が関係する。Summersは、低金利にもかかわらず、貯蓄に比べて投資が伸びないことを「長期停滞」として問題視した。

つまり、財政赤字、債務累積にもかかわらず、再び財政政策が重視されるだろう。

VOX 13 May 2019

Evolution or revolution: An afterword

Olivier Blanchard, Lawrence H. Summers

1970年代の不況とインフレーションでそうだったように、マクロ政策の見直しが進むだろう。通貨、財政、金融政策のバランスが変わる。

ゼロに近い水準では金融政策の効果に限界がある。財政政策がもっと重視されるだろう。日本の例が示唆的だ。ゼロ金利、積極的な量的緩和、財政支出の拡大は、失敗とみなされてきたが、正しかった。

ゼロ近辺まで下がらない国でも、同じような見直しが必要だ。しかし、日本の債務がGDP比で150%を超えても増大したことには、疑問が生じている。投資家たちは高い金利を求めるだろう。その場合の対策には何があるか。

FT May 15, 2019

How the long debt cycle might end

Martin Wolf

世界経済は、激しいインフレに向かうのか、デフレに苦しむのか? あるいは、どちらにもならないと、楽観しているべきか?

1930年代や1970年代の失敗が繰り返されるとは限らない。しかし、よく考えて、準備しておくことだ。グローバルな政治・経済秩序の崩壊もありうる。特に、ナショナリズムを強める指導者たちは、間違いが起きても、決して協力しない。

PS May 14, 2019

America’s Illusions of Growth

JEFFREY D. SACHS


 ECB

PS May 13, 2019

The ECB Song Contest?

STEFAN GERLACH


 発展途上国の金融

PS May 13, 2019

Dirty Floating in Emerging Markets

ANDRÉS VELASCO

発展途上国の「原罪」と言われた、外貨建て債務の問題は解決したか? 政府の自国通貨建て債務が増えているが、変動レートでも通貨安になると介入し、国内金利が上昇する。そして、同じ債務危機が起きる。中央銀行はどうするべきか?

FT May 15, 2019

The IMF should enforce strict targets in Pakistan


 暴力の広がり

FP MAY 13, 2019

Cameroon’s Separatist Movement Is Going International

BY GARETH BROWNE

FP MAY 16, 2019

In Africa, All Jihad Is Local

BY HILARY MATFESS

テロ活動に、国際的な組織の影響を重視することは、間違った対策に向かわせる。

FP MAY 16, 2019

The Possibility of Violence Is Very Real’

BY JEFCOATE O'DONNELL

スーダンでは何が起きているのか? 軍事評議会と民主化を求めるデモの代表たちとの合意は可能か? 軍にも、デモ隊にも、統一と組織された制度要求はあるのか? どのような合意が可能か? 次に何が起きるのか? 大統領選挙か? 軍は強権を発動するか? 双方の妥協はなるか? 周辺諸国の対応は? 軍事介入もあるか?


 香港

FP MAY 13, 2019

Hong Kong is Set for a U.S.-China Showdown

BY BEN BLAND

権威主義的政府は、権力を維持するために様々な手段を用いる。ある時は、市民を脅して従わせる。または、もっとソフトな形で、安定と繁栄を脅かすものとして、民主的な抗議をやめるように説得する。その中間の方法は、人々が抵抗することに疲れ、変化に向けた希望を失うまで、消耗させる。

香港で、中国は最後のゲームを行っている。ここでは、あまりにやり過ぎると、亜米利加や西側政府が介入してくる。

しかし近年、北京が香港に影響力を強め、その自由と自律を急速に奪っている。選出された議員を排除し、若い活動家の立候補を阻み、政党を禁止し、民主化を求める指導者を投獄し、外国人ジャーナリストを追放している。香港で、北京はその敵を誘拐した。

最新の動きは、香港政庁が中国本土の司法システムに身柄を引き渡す、ブラックホールへの移管を合法化する法案だ。

香港の自由はグローバルな問題だ。ボールは西側のコートにある。西側は、北京の方針を変えるうえでも重要な、金融センターである香港を失うのか? 香港人民の未来を見捨てるのか?

FP MAY 16, 2019

The End of Hong Kong Is Almost Here

BY HILTON YIP


 不平等

FT May 14, 2019

Inequality in America has lessons for Britain

Angus Deaton


 堕胎禁止

PS May 15, 2019

How Banning Abortion Will Transform America

MARIA BUCUR, KRISTEN R. GHODSEE


 開発銀行

PS May 15, 2019

Why the World Needs National Development Banks

STEPHANY GRIFFITH-JONES, JOSÉ ANTONIO OCAMPO

国立開発銀行(NDBs)が重視されるべきだ。国際開発機関(MDBs)に比べて、その重要性が再評価されている。最近の研究は、7か国(China, Germany, Brazil, Mexico, Chile, Colombia, and Peru)を取り上げて、その優秀さを示している。

特に、NBDsの優れた点は、1.景気循環に対して逆の、抑制する効果、2.技術革新と構造転換を助ける、3.金融への包摂を高める、4.インフラ整備を融資する、5.環境の持続可能性、特に、地球温暖化の対する準備を助ける。


 核廃絶

NYT May 15, 2019

The Nuclear Weapons Sisterhood

By Carol Giacomo

******************************** 

The Economist May 4th 2019

Tech’s ride on the banks

India’s election: Agent orange

Crisis in the Sahel: The West’s forgotten war

Political demonstrations: Tiananmen in 1919

Bagehot: The followership problem

Banking: A bank in your pocket

The Sahel: The new war on jihadism

Global meat-eating is on the rise, bringing surprising benefits

(コメント) スマートフォンがあれば、他は何にも要らないような生活に慣れてしまった世代が増えてくるなら、銀行業も視点で待っているのでは死滅します。スマホのアプリで金融サービスを売るしかありません。

もう1つ、驚く記事は、世界の肉食化です。それは環境に負担となりますが、中国だけでなく、おそらく中東やインドも、そしてアフリカも、何億人が鶏や豚、牛肉を食べるようになるのです。

アフリカのサヘル地方では、西側の支援を受けて、破綻国家が再建され、聖戦主義者の浸透と暴力の蔓延を抑え込もうとしています。

****************************** 

IPEの想像力 5/20/19

The Economist May 4th 2019の特集記事Bankingを読めば、人によっては、目が覚めるでしょう。あるいは、息が止まるかもしれません。

Bagehotの考察と、サヘルに広がるイスラム国についても、優れた、思わず考え込む記事です。

****

イギリス政治の「指導力の危機」が言われます。日本など、多くの豊かな国でも、それに同意する人がいるでしょう。現代では、さまざまな有権者の気持ちに応える人間でなければ、指導者になるのはむつかしい。

しかし、かつてPeter Druckerは、「指導力Leadership」ではなく、「支持者の姿勢Followership」こそが問題だ、と主張しました。イギリス議会には多くの優れた政治家がいるけれど、これほど敵意に満ちた有権者の声に応えることはできません。

Walter Bagehotによれば、政治体制が生き残るには、市民から権威・権力を得て、それを行使することで政府が成果を示さねばなりません。イギリス政府が伝統的に権威を得る方法は3つありました。1.有権者の地位を守ってやる。2.階級的な忠誠心を満たす。3.政府が問題を解決できる。政府はこれら3つを組み合わせました。

しかし、現代はそれができません。地位を守ることはむつかしい。階級意識は薄れた。そして、戦争でも金融危機でも、Brexit交渉でも、政府は多くの失敗を重ねた。

権威や指導力の崩壊は、支持者の姿勢の変化によって強まった、と記事は「政治文化」を指摘します。1963年の重要な研究は、イギリス人の政治制度に寄せる信頼が、ローカルな市民生活の繁栄と結びついている、と論じていたからです。今や、労働組合はすたれ、行政は中央集権化し、地域の産業も空洞化してしまいました。

誰も指導者を信用しない。それは政治に、シニシズム(冷笑)や突発的な過激化をもたらします。怒り、失望、そして暴力が結びつく「怨嗟の政治」が広まるのです。記事は、欧州議会選挙で最大支持率を得たのがBrexit党であり、「怨嗟」を操縦するNigel Farageの才能を憂慮します。

****

銀行Bankingの特集記事はどうか? ネットによる銀行業の浸食・解体が進んでいることを記事は紹介します。特に、中国、韓国、インドネシアであり、シンガポールやイギリスに注目します。

アメリカや日本では、多くの複雑な規制や行政が、自国の銀行業を保護しています。

しかし、銀行業の優位は、そもそも、根本から失われてしまうでしょう。若い人たちは、常に、スマホを駆使して生活しています。Amazonで何でも買うように、銀行のサービスもスマホで利用できなければ無意味です。銀行業がAmazonAlibabaになるか、その逆の方が早いか、と問うなら、答えは明白です。巨大な組織、プライド、老人たちの支配する銀行は、滅びる恐竜です。

すでに、中国のスマホでは支払いや預金ができるし、韓国のスマホのアプリには楽しいアイコンで銀行サービスが並んでいます。発展途上諸国の、貧しい、数十億の人々は、これまで銀行と全く縁のない暮らしでした。しかし、安価な携帯電話で、支払いや口座を通じた少額の借入れができるのです。ややこしい暗証番号ではなく、QRコードや顔認証などが組み合わされます。

コストのかかる支店網やスタッフに支出することなく、ネットの「銀行」業は新しいアプリや顧客の開拓で優位に立ち、利用者への魅力を高めることに集中し、既存の銀行が提供するサービスを仲介して収入を得ます。旧銀行は、顧客を提供してもらうために競って価格を下げ、注文に応じてサービスを改善します。超巨大スーパーに農作物を売る、農家のような存在になるかもしれません。

旧銀行の支店が町から消滅し、ネットで仲介するネオバンクたちの消費者優先時代に、シンガポールやイギリスのような、有能で、積極的な銀行行政のセンターに「ネオバンク」は集まります。

******************************